(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099377
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】骨つぼ
(51)【国際特許分類】
A61G 17/08 20060101AFI20230706BHJP
【FI】
A61G17/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215504
(22)【出願日】2021-12-31
(71)【出願人】
【識別番号】510032737
【氏名又は名称】株式会社パイル21
(74)【代理人】
【識別番号】230125243
【弁護士】
【氏名又は名称】石井 善之
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 浩司
(57)【要約】
【課題】本発明は、土壌中の遺骨の風化を促進し、焼骨に含まれる六価クロムを還元させ環境負荷の少ない生分解性に優れた紙製骨つぼを提供することを目的とする。
【解決手段】筒状の壁部と円盤状の底部からなり内部に収納空間を有する紙製の骨つぼ本体、前記骨つぼ本体にはめ込まれる紙製の蓋、および紙製のセパレートリングとからなり、前記蓋は縁部を有し、前記骨つぼ本体の壁部は外側から順に外装部、内装部第一層、内装部第二層からなり、セパレートリングは中央に開口部を有し、内装部第一層の内径と略同じ直径の円盤状であって前記セパレートリングは内装部の内側にはめ込まれて設置可能であることを特徴とする骨つぼ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の壁部と円盤状の底部からなり内部に収納空間を有する紙製の骨つぼ本体、前記骨つぼ本体にはめ込まれる紙製の蓋、および紙製のセパレートリングとからなり、前記蓋は縁部を有し、前記骨つぼ本体の壁部は外側から順に外装部、内装部第一層、内装部第二層からなり、セパレートリングは中央に開口部を有し、内装部第一層の内径と略同じ直径の円盤状であって前記セパレートリングは内装部の内側にはめ込まれて設置可能であることを特徴とする骨つぼ。
【請求項2】
前記開口部は円形であることを特徴とする、請求項1に記載の骨つぼ。
【請求項3】
前記セパレートリングの上面にアスコルビン酸が設置されたことを特徴とする、請求項1または2に記載の骨つぼ。
【請求項4】
前記セパレートリングの開口部を塞ぐようにアスコルビン酸が設置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の骨つぼ。
【請求項5】
内装部第一層の内径と略同じ外径の円筒形状の紙製の底上げリングからなり、前記底上げリングは内装部の内側にはめ込まれて設置可能であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の骨つぼ。
【請求項6】
内装部第一層の内径と略同じ外径の円筒形状の紙製の底上げリングからなり、前記底上げリングは内装部の内側にはめ込まれて設置可能であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の骨つぼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌内において遺骨の風化を促進させ、埋葬後の雨水の流入により六価クロムを還元させ生解性に優れた紙製の骨つぼに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人口減少、少子化、晩婚化、無信仰、経済的負担などによるお墓の跡継ぎ不足が社会的な問題になってきており、従来の継承型の墓石を使用したお墓ではなく、個人墓として直接土に埋める樹木葬が急増している。
また、自然に還ることを望む個人も増えており、さらにはペットの遺骨を庭に埋葬するケースも増えてきている。
【0003】
遺骨がリン酸カルシウムと炭酸カルシウムが主成分であることから、遺骨を土に還す、すなわち風化させる主なメカニズムは酸化である。なお、微生物分解も風化を補助する。土中の遺骨の酸化に必要な要素は、酸性の土壌または雨水と、酸素である。日本の土壌は酸性傾向の土地が多く、また雨水も酸性傾向である。また樹木葬は、地表より50cm以内の比較的浅い場所に埋葬されることが多いため、土中酸素濃度も高く、風化の条件は整っている。
【0004】
しかし、土中に埋葬した遺骨は、土圧により締め固められ、土中において遺骨が再固結し、酸素と触れ合う面積が小さくなり、風化が極めて遅くなる。また墓地の効率を上げるために墓地面積を小さくし早く土へ還すために遺骨を粉状に粉骨する場合も多い。粉骨した遺骨は土圧により柱のように固結してしまい、ほとんど風化しない。また、遺骨は強いアルカリ性を示すため、遺骨内においては微生物の生存が難しく、生分解もほとんど生じない。
さらに、日本において遺骨のほとんどは火葬された遺骨であり、火葬遺骨は加熱により焼結体となる(いわゆるセラミックス)ことから、より一層風化しなくなる。
【0005】
粉骨した遺骨の場合、墓地のカロート内に撒かれてから数年で土に還ることが確認されているが、粉骨されていない焼骨の場合、撒かれてから70年以上経っても土に還らずに残っていることが多い。
遺骨の風化速度は環境に左右されやすく、粘性土の土壌で埋葬された場合、酸素が流入しないため酸性土壌であっても遺骨の風化が進まない。沼地、河川、海沿い付近の平地で土中水位に変化が常に生じている場所、カロート内部の土が砂地であるところなどは、多くの酸素が移動するため早く遺骨が風化し骨量が大きく減少する。また、樹木葬での改葬による遺骨返還の為に掘り起こした遺骨は塊となって出てくる場合が多く見受けられる。またペットの遺骨を埋葬した土地を売却等する際、墓地を他の目的へ転用する際にも土中の遺骨が土に還っていることが必要となる。
【0006】
火葬した遺骨は耐熱ステンレス台と耐火壁が高温にさらされるためクロム成分が溶出し六価クロムを生成してしまう。そのために環境基準を超える六価クロムがほとんどの遺骨から検出され容易に地下水へ流出する。
火葬した遺骨について重金属の検査を行った結果、砒素化合物、ホウ素、フッ素、セレン、ダイオキシン類、水銀、において環境基準を下回る結果となったが六価クロムは、ほとんどの遺骨から環境基準を超えた数値が示され、中には環境基準値の30倍を超えた遺骨も多くあった。六価クロムは自然環境において有機質土壌ではフルボ酸、フミン酸で還元されるが、樹木葬において切土、盛土した造成が行われた土地には有機質から生成されるフルボ酸やフミン酸ができないため遺骨より溶出した六価クロムは還元されず雨水により地下へと容易に流出してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-224640号公報
【特許文献2】特開平11-313860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、雨水を遺骨に浸透し易くして、遺骨の風化を促進し、火葬時に付着する六価クロムを三価クロムに還元させ生分解性を有する骨つぼを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の骨つぼは、紙製であって、内部の中央に開口部を有するセパレートリングを備えているため、雨水を骨つぼ内部に流入させることができる。
【0010】
生分解性を有し、製造コストを低減し、更には遺骨に含まれる六価クロムの還元を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における骨つぼ100は、
図1に示すように、円柱形であり、
図2に示すように、紙製の容器本体200と、紙製の蓋300、及び紙製のセパレートリング400とからなる。全体が紙製であることにより、生分解性を有すると同時に、製造コストを低減することができる。
【0013】
容器本体200は、
図3に示すように、筒状の壁部210と円盤状の底部220からなり、
図4に示すように、内部に収納空間を有する。容器本体200の壁部210は、外側から順に外装部212、内装部第一層214、内装部第二層216からなる。
【0014】
蓋300は、
図5に示すように、容器本体200の内装部第一層214の外側壁面に摺動可能にはめ込まれるように形成され、外装部212の上部で係止される。蓋300は、覆部320と縁部310とからなり、この覆部320と縁部310との間から雨水を容器本体200の内部に浸透させることができる。これにより、遺骨が雨水にさらされることにより風化が促進される。
【0015】
なお、この覆部320と縁部310の間には、複数の孔が設けられることで、雨水が骨つぼ内部に浸透することをより一層促進することができる。
【0016】
骨つぼ本体200は紙製であり、紙パルプ繊維が規則的な織り目となっているものが望ましい。紙パルプ繊維が不規則に並ぶ水溶性紙を使用した場合、土中での紙の溶解速度が速く、生分解より先に土壌の水分により紙が溶解することで骨つぼが崩壊し、結果として粉体の遺骨が固結化しやすくなってしまう。紙パルプが均一な紙を使用した場合、土壌の水分による溶解が遅くなり、骨つぼの崩壊を遅くなり、骨つぼ内開口部から流入する雨水が遺骨中心部に集中しやすくなり、風化に必要な酸素を多く運び骨つぼが生分解が進むまで、雨水の経路が確保できる。
【0017】
セパレートリング400は、
図6に示すように、円盤状であり、その外径は、
図5で示したように、容器本体200の内装部第一層214の内径より小さいが略同じであり、内装部第二層216の内径よりも大きい。これにより、セパレートリング400は容器本体200の内装部第一層214の内側に沿って挿入可能とされ、挿入されたセパレートリング400は内装部第二層216の上部で係止される。これにより、容器本体200の内部は、第一室240と第二室250に分けることが可能になる。そして、
図7および
図8に示すように、第一室240に遺骨を収納し、第二室250に花を収納することにより、故人や遺族の意思を尊重することができる。また、第二室250に収納するものは、遺品や生前飼っていた愛玩動物の遺骨などでもよい。
【0018】
また、セパレートリング400は、
図6に示したように、その中心に開口部410が設けられている。これにより、骨つぼの上部から侵入した雨水等が、第一室240から第二室250に流れ込むことができ、第一室240に保管される遺骨の風化を早めることができる。開口部410の形状は円形でも、多角形状などでもよい。
第二室250の空洞は土壌の中での多くの空気を蓄えることで、埋葬後の土盛りによる急速な圧密を防ぐことができ、また、雨水が通過するたびに新たな空気入る為風化を促進できる。
【0019】
土中に埋設した骨つぼの生分解に関する検証実験を行った。紙パルプが均一な材料を使用した場合、埋設から1カ月経過後、骨つぼは変色が見られたものの、骨つぼの上部においては雨水浸透により土が締め固まり、骨つぼは圧密による一部変形にとどまった。埋設から3カ月経過後、骨つぼの生分解進み骨つぼの一部崩壊が始まり、またセパレートリングには変色が見られ生分解が始まっている兆候を示したものの、骨つぼは一部変形にとどまった。
【0020】
図9に示すように、前記セパレートリング400の上面または開口部410を塞ぐようにアスコルビン酸420が設置されてもよい。このアスコルビン酸420の形状は、顆粒、粉末を押し固めた錠剤、水溶性袋に封入されたもの、もしくはゼラチン等に封入されたカプセル剤でもよい。
これにより、第一室240に雨水が流入し、セパレートリング400の上面または開口部のアスコルビン酸420が雨水に溶け出して第二室250に流れ込むことで、遺骨に含まれる六価クロムを三価クロムへと還元することができる。
【0021】
底上げリング500は、
図10に示すように、円筒形であり、その外径は、容器本体200の内装部第一層214の内径より小さいが略同じであり、内装部第二層216の内径よりも大きい。底上げリング500は、容器本体200の内装部第一層214の内側に沿って挿入可能とされ、
図11に示すように、底上げリング500を先に、次にセパレートリング400を骨つぼ本体に挿入すると、底上げリング500は内装部第一層214の内側に沿って挿入されて内装部第二層216の上端で係止され、次にセパレートリング400は内装部第一層214の内側に沿って挿入されて底上げリング500の上端で係止されるため、
図12に示すように、第一室240の容積を大きくすることができる。したがって、遺骨の量が多い場合、例えば大柄な男性の遺骨を収納する場合や夫婦の遺骨を混ぜて収納する場合などは、この底上げリング500を先に挿入して第一室240を広くすることで、量の多い遺骨を十分に収納することができる。
【0022】
また、
図13に示すように、先にセパレートリング400を挿入し、次に底上げリング500を挿入することにより、セパレートリング400が、底上げリング500の下端に挟まれて保持されることにより、セパレートリング400を安定して保持することができる。
【符号の説明】
【0023】
100 骨つぼ
200 骨つぼ本体
210 壁部
212 外装部
214 内装部第一層
216 内装部第二層
220 底部
240 第一室
250 第二室
300 蓋
310 縁部
320 覆部
400 セパレートリング
410 開口部
420 アスコルビン酸
500 底上げリング