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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099378
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】駐車場
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/10 20060101AFI20230706BHJP
   E04H 6/00 20060101ALI20230706BHJP
   E04H 6/42 20060101ALI20230706BHJP
   E01F 13/02 20060101ALI20230706BHJP
   G08G 1/14 20060101ALI20230706BHJP
   G07B 15/00 20110101ALI20230706BHJP
【FI】
E04H6/10 A
E04H6/00 A
E04H6/42 Z
E01F13/02 Z
G08G1/14 A
G07B15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000001
(22)【出願日】2022-01-01
(71)【出願人】
【識別番号】517115857
【氏名又は名称】高橋 智子
(74)【代理人】
【識別番号】100102680
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 忠則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智和
(72)【発明者】
【氏名】原田 忠則
【テーマコード(参考)】
2D101
3E127
5H181
【Fターム(参考)】
2D101CA02
2D101EA02
3E127AA18
5H181AA01
5H181AA23
5H181KK01
5H181KK10
(57)【要約】
【課題】 身体障碍者等用駐車スペースでの不適正利用が改善されない実態を踏まえ、駐車場のレイアウトを工夫することにより、できるだけ確実に身体障碍者等が乗降する領域を確保する。
【解決手段】 本発明では、駐車場内で身体障碍者等が乗降する専用の領域を設ける。即ち、駐車場敷地101内に駐車領域104と乗降レーン107とを分離して設け、長時間の駐車には駐車領域を利用する。乗降レーン107は、障碍者等が乗降するために一時的に使用する停車乗降領域105と、停車乗降領域の使用を待つ乗降待機列領域106と、を直列に構成し、停車乗降領域の利用を待つ車両があることを容易に意識できるようにするとともに、乗降レーンでの長時間停車に心理的な遠慮を生じさせる。また、駐車領域からの退出車両と乗降レーン再利用車両との通行混乱を避けるため、再乗降進入レーン109と退出レーン108とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が進入する入口と、
車両が退出する出口と、
複数の車両を駐車させられる駐車領域と、を備える駐車場において、
該駐車領域の外周外側に、停車乗降領域と該停車乗降領域に車両を進入させるための乗降待機列領域とを直列した乗降レーンと、
該駐車領域から駐車した車両を該出口に導く退出レーンと、
該駐車領域から駐車した車両を該乗降レーンの該乗降待機列領域の進入側に導く再乗降進入レーンと、
を具備することを特徴とする駐車場。
【請求項2】
前記乗降待機列領域の側方右側に、車両の進入を妨げる車両進入妨害具、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の駐車場。
【請求項3】
前記再乗降進入レーンから乗降レーンに進入する車両と、前記駐車場入り口より入った車両との通行を時間分配によって調停する、通行調停器、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の駐車場。
【請求項4】
前記乗降レーンの停車乗降領域に、更に少なくともひとつの停車乗降領域を直列に設けたことを特徴とする請求項3に記載の駐車場。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体障碍者等のための乗降レーンを付けた駐車場に係る。
【0002】
詳しくは、駐車スペースが併設されている施設に来場する身体障碍者は車両に健常者も同乗していることが多い点に着目し、身体障碍者が乗降するスペースでは一時停止しか許さずに、車両は健常者によって駐車領域に駐車することができるように構成した駐車場に関するものである。
【背景技術】
【0003】
(1. 本発明に至る社会的背景)
我が国における障碍者への配慮の歴史は古い。例えば、1973年(昭和48年)9月15日(当時の敬老の日)には日本国有鉄道(現JR)によってシルバーシートが導入された。
【0004】
法律の面では、平成6年6月29日に施行された「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」や平成12年11月15日に施行された「高齢者、身体障害者等の公共交通機関 を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」を経て、これらを統合した「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が平成18年に制定された。「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」は更に平成30年に改正が行われ、令和2年に一部施行、令和3年4月1日に全面施行となっている。
【0005】
また、国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が制定され、平成28年4月1日から施行されている。更に令和3年5月、同法は改正され(令和3年法律第56号)、公布の日(令和3年6月4日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されることになっている。
【0006】
このように、障碍者に配慮をする長期に渡る社会規範の醸成を背景として、ひとが集まる施設の駐車場では、車椅子を車の側方に置けるスペースを設けるなど、障碍者が車の乗降をする際により広い幅が求められ、これに対応して障碍者用駐車スペースが設けられることも多くなってきている。
【0007】
このような社会状況の下、発明者等は平成27年、千葉県議会での議論に供されることを目的として、市役所、高速道路のパーキングエリア、商業施設から任意で24カ所の障碍者等用駐車場を選び、それぞれ1日~1週間をかけ、障碍者等用駐車場の利用実態を調査した。この「公共施設付属の障がい者用駐車場の利用実態調査」の結果によれば、合計利用台数1528台のうち適正利用と確認されたのはわずか約18・3%の279台であった。場所別では、高速道路のパーキングエリアが25%と比較的高かった一方、公共施設や商業施設は16%にとどまっていた。中には、適正利用と判断できたのが全34台のうち1台のみという公共施設も見受けられた。なお、本調査結果の一部は現実に千葉県定例県議会において用いられ、「千葉県定例県議会会議録(第5号)平成29年2月10日(金曜日)」に収録されている。また、あらためて令和2年2月定例会(2020.03.02)の予算委員会でも取り上げられ、同日の予算委員会会議録に収録されている。
【0008】
調査中のあるとき、健常者ばかりの家族連れが車両を障碍者等用駐車スペースに停めた。そして、ここから降りてきた子供が「こんな広い駐車場に停められてよかったねっ。」と親に告げ、親もこれに何らの反応をしていないことを発明者等は目撃した。
【0009】
即ち、障碍者等が利用する駐車スペースは施設建物に近いところに設けられることが多いこともあり、この駐車スペースが空いているときには健常者がそこを利用してしまうのである。このため、障碍者等用駐車場が設置されているにも拘わらず、本来の利用を望む障碍者が駐車しようとしても、その場所が埋まっていて利用できないことがしばしばおこるのである。
【0010】
これからわかるとおり、障碍者等用駐車スペースの適正利用を巡り、個々人の倫理に任せることには限界があるのである。
【0011】
この調査の後も発明者等は障碍者等用駐車場の観察を続けているが、利用実態に変化は見られない。このような社会的背景を認識しつつ、駐車場における適正な利用を促す方策が求められるのである。
【0012】
(2. 背景技術)
このような社会的背景にあって、社会的に駐車場の適正利用に係る問題意識がないわけではない。たとえば、特許文献1には、障がい者等用駐車スペースに不適合車両を駐車する行為の抑制に資する特定駐車スペースの管理システム技術が開示されている。詳しくは、車載器や車両番号画像などによりゲートを制御して一般車両の進入を抑制する技術や、車内に備えた認証情報記憶媒体を手掛かりとして、適合しない車両に対しては移動を促し不適切な駐車行為を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2018-73307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
確かに、背景技術によれば、健常者の不正利用頻度の低減を期待することができる。しかし、障碍者等用駐車スペースは予め決められていることから、全ての障碍者等用駐車スペースが埋まっているときには、健常者用スペースを利用せざるを得ず、若しくは障碍者等用駐車スペースが空くまで途中で待たざるを得ないことになる。
【0015】
また、背景技術によれば車両の進入を阻害するようなデバイスを用いなければならないところ、これを用いないのであれば管理者など人により障碍者等用駐車スペースの使用誘導することになる。
【0016】
しかし、人により誘導をする場合、スペース利用者と揉め事となることがあり、そのようなときには施設管理者が揉め事を避けようとする傾向がある。このため、結局健常者が障碍者等用駐車スペースを利用することを容認してしまうことになる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1. 課題を解決するための手段の概要)
課題を解決するための手段を説明するに先立ち、障碍者同乗車の実態について簡単に触れておく。障碍者が施設を利用するために自動車を利用するときには、多くの場合、健常者が同乗している。これは前述した「公共施設付属の障がい者用駐車場の利用実態」を調査した際に発明者等が気付いたことである。即ち、このことは、障碍者が降車した際には、同乗していた健常者が駐車スペースまで更に自動車を入庫させられることを意味している。
【0018】
本発明は、このように多くの場合に健常者が同乗していることに着目した上で、上記課題の低減を図るものであって、その要部とするところは、駐車場内で障碍者等が乗降する場所と駐車する場所とを分離して配置する。そして、当該乗降する場所は、車が停車して障碍者の乗降をするために用いる。また、当該駐車する場所は、障碍者等が乗車していない状態で運転者が乗降し、並びに駐車することに用いる。そして、駐車する場所に駐車していた車は再び、乗降する場所に入り、ここで障碍者等を乗車させ、退出するように運用することになる。
【0019】
(2. 本願において用いる文言の定義)
本願において「車両」とは、特に明記しない限り、道路交通法に規定される「車両」から「軽車両」を除いたものをいう。
【0020】
「直列」とは、車両の進行方向に繋がることをいう。
【0021】
「車両の動線」とは、車両が進行する際に車両の平面中心が描く軌跡のことをいう。
【0022】
「車両の動帯」とは、車両が進行する際に車両が車幅も含めた帯状の軌跡のことをいう。
【0023】
「障碍者等」とは、障害者手帳を持つ認定された障碍者は勿論、高齢者、怪我・急性疾病等によって一時的にでも移動に困難をともなう者、も含む趣旨である。
【0024】
「通路」とは、車両が予め定められた道路の部分を通行すべきことが道路標示等により示されている場合における当該道路標示等により示されている道路の部分をいう。
【0025】
「ガイド」とは、車両の進行軌跡を強制するものは勿論、路面に通路であることを標示するものも含む趣旨である。
【0026】
(3. 課題を解決するための手段の説明)
次に、課題を解決するための手段について説明する。
【0027】
(3.1. 請求項1に記載の発明について)
請求項1に係る駐車場は、入口と、出口と、駐車領域と、乗降レーンと、退出レーンと、再乗降進入レーンと、を具備する。
【0028】
入口は本駐車場に駐車を希望する者が一般道等の駐車場外部から車両を入れるところである。
【0029】
出口は本駐車場を利用した者が一般道等の駐車場外部に車両を出すところである。
【0030】
駐車領域は、駐車場敷地の内側にあって、複数台の車両が駐車することができる空間をいう。
【0031】
乗降レーンは、上記駐車領域の外周外側に位置し、(1)停車乗降領域と、(2)その停車乗降領域に車両を進入させるための乗降待機列領域とを直列した通路である。即ち、乗降レーンに入った車両は、停車乗降領域に停車中の車両があるときには、乗降待機列領域で待ち、停車乗降領域に停車中の車両がないときには、乗降待機列領域をそのまま通過した後、停車乗降領域まで進み、ここで障碍者等の乗降をすることができるようにガイドする。停車乗降領域と乗降待機列領域とを直列したことにより、直後に続く停車乗降を希望する車両を一瞥でき、このことが、停車乗降領域に長時間停車させようとした者に心理的圧力を加えるように作用する。
【0032】
退出レーンは、車両が通行できる通路である。そして、上記駐車領域から駐車していた車両を上記出口から駐車場外部に退出させるようにガイドする。
【0033】
再乗降進入レーンは、車両が通行できる通路である。そして、上記駐車領域から駐車していた車両を出庫させ、再び上記乗降レーンの乗降待機列領域進入側に進めるようにガイドする。
【0034】
(3.2. 請求項2に記載の発明について)
請求項2に係る駐車場は、請求項1に係る駐車場に、更に車両進入妨害具を備える。
【0035】
車両進入妨害具は、前記乗降レーンの側方であって、前記駐車領域の側に配置される。そして、乗降レーンの内側と外側との間で車両がレーンを変更することを妨げるように作用する。これにより、車両は乗降レーンに乗降待機列領域の進入側からしか入ることができないように作用する。また、乗降待機列領域の進入側から停車乗降領域まで車両を進めるようにガイドする。
【0036】
(3.3. 請求項3に記載の発明について)
請求項3に係る駐車場は、請求項2に係る駐車場に、更に通行調停器を備える。
【0037】
通行調停器は、再乗降進入レーンから乗降レーンに進入する車両と、前記駐車場入り口より入った車両との通行を調停するようになっている。
【0038】
再乗降進入レーンから乗降レーンに進入する車両の通過線と、前記駐車場入り口より入った車両の通過線とは、交叉する関係にある。上記車両進入妨害具があるゆえに、再乗降進入レーンから乗降レーンに進む車両と、前記駐車場の入口より入った車両と、は狭い乗降レーンの進入口を奪い合うことになる。この背景にあって、通行調停器は、両車両の空間的競合を時間分配によって、即ち、各車両が通過できる時間を振り分けて調停するように作用する。
【0039】
(3.4. 請求項4に記載の発明について)
請求項4に係る駐車場は、請求項3に係る乗降レーンに、更に少なくともひとつの停車乗降領域を備える。
【0040】
これにより、停車乗降領域が都合2以上用意されることになるので、乗降待機列領域から続く乗降領域が複数空いているときには、その先頭から順に停車することができるように作用する。この結果、単位時間あたりの乗降回数を増やすように作用する。
【発明の効果】
【0041】
(1. 各請求項に記載の発明に共通する効果)
本願記載の発明は、障碍者等用駐車領域では障碍者等が乗降するだけに留まるため、長くとも障碍者等の乗降時間を超えれば、確実に障碍者等用駐車領域を空けることができる。即ち、単に障碍者用駐車スペースを用意したときより、降車のための待ち時間を短くすることができ、障碍者等の施設利用の機会喪失を免れることができる。
【0042】
また、再乗降進入レーンと退出レーンとを分離して設けたことで、先行する車両で再乗降進入レーンに満車となっていて、再び乗降レーンに戻ろうとする車両がここに入れない状態であったとしても、駐車場から退出しようとする車両の進行を妨げることがなく、円滑な駐車場運用を図ることができる。
【0043】
(2. 請求項2に記載の発明の効果)
請求項2に記載の発明によれば、車両進入妨害具の作用により、一旦乗降レーンに入った車両はこのレーンから離脱できず、また、乗降レーン外部から乗降レーン内への割り込み進入を妨げることになる。
【0044】
結果として、乗降レーン内の乗降領域に至るためには、乗降待機列領域の進入側から入る経路以外は採れないようになる。このことは、障碍者等が同乗しない車両運転者に、乗降レーンへの進入を妨げる心理的圧力になり、本来の適正な運用に近づけることができる。
【0045】
(3. 請求項3に記載の発明の効果)
請求項3に記載に発明によれば、通行調停器があるために、平面駐車場であれば必ず生じる動線の交叉があるにも拘わらず、安全な駐車場運用が可能となる。
【0046】
(4. 請求項4に記載の発明の効果)
請求項4に記載に発明によれば、停車乗降領域が複数となり、一度に乗降できる車両数を増やすことができる。この場合に乗降レーンの車両の停止・進行の頻度が高まるが、通行調停器があるために、相互作用によって安全性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、第1の実施の形態に係る駐車場レイアウト例図である。
図2図2は、第2の実施の形態に係る駐車場レイアウト例図である。
図3図3は、第3の実施の形態に係る駐車場レイアウト例図である。
図4図4は、第4の実施の形態に係る駐車場レイアウト例図である。
図5図5は、第5の実施の形態に係る駐車場レイアウト例図である。
図6図6は、第6の実施の形態に係る駐車場レイアウト例図である。
図7図7は、乗降レーン周辺レイアウト例図である
図8図8は、車両進入妨害ポールを設置した乗降レーン周辺レイアウト例図である。
図9図9は、複数の乗降領域を設けた場合の乗降レーンレイアウト図である。
図10図10は、複数の乗降レーンを設けた場合の乗降レーンレイアウト図である。
図11図11は、駐車場内での入口・出口・乗降レーンの配置に関するパターン説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本願実施の形態については、以下の目次に沿って説明する。
―――――― 目次 ――――――
(1. 図面と符号の表記について)
(2. 駐車場での外周構成とシナリオについて)
(2.1. 駐車場での外周構成)
(2.2. 駐車場の利用シナリオについて)
(2.2.1. 入庫のシナリオ)
(2.2.2. 出庫のシナリオ)
(3. 第1の実施の形態)
(3.1.第1の実施の形態の構成について)
(3.2.第1の実施の形態の運用について)
(3.2.1. 障碍者等が搭乗する車両について)
(3.2.2. 障碍者等が搭乗しない車両について)
(4. 第2の実施の形態)
(4.1.第2の実施の形態の構成について)
(4.2.第2の実施の形態の運用について)
(5. 第3の実施の形態)
(5.1.第3の実施の形態の構成について)
(5.2.第3の実施の形態の運用について)
(6. 第4の実施の形態)
(6.1.第4の実施の形態の構成について)
(6.2.第4の実施の形態の運用について)
(7. 第5の実施の形態)
(7.1.第5の実施の形態の構成について)
(7.2.第5の実施の形態の運用について)
(8. 第6の実施の形態)
(8.1.第6の実施の形態の構成について)
(8.2.第6の実施の形態の運用について)
(9. その他)
(9.1. 「障碍者専用駐車スペース」の併設について)
(9.2. 人動領域と停車乗降領域とを結ぶスロープとその周辺について)
(9.3. 車両進入妨害具について)
(9.4. 通行調停器について)
(9.5. 停車乗降領域の複数設置化について)
(9.6. 左側通行と右側通行)
(9.7. 障碍者等停車乗降領域利用ポイントサービスについて)
(10. 請求項と実施の形態との対応)
【0049】
―――――― 本文 ――――――
(1. 図面と符号の表記について)
以下の説明では同時に複数の図面を参照する便宜に資するため、図面中の符号中、下2 桁を除く先頭の数値が図面番号を表す表記を採っている。たとえば、「乗降レーン(107)」ならば図1、「乗降レーン(507)」ならば図5を参照する説明となっている。
【0050】
(2. 駐車場での外周構成とシナリオについて)
(2.1. 駐車場での外周構成)
各実施の形態に関する説明に先立ち、駐車場の入口・出口・施設の配置関係について、図11を用いて検討する。
【0051】
一般に地面上に駐車場を展開する場合、駐車場と施設とは、歩道を介して隣接して配置する。そして、駐車場には入口と出口とがある。
【0052】
我が国の道路交通法の下では左側通行が原則であることから、一般道から路側にある駐車場敷地に入り、再びそこから出るために、駐車場内で外周付近に車両が通行できる通路を設け、図11上段に示すように、その外周付近を右方向に旋回するように設計されるのが一般的である。入口から入った車両と出口から出る車両とが交差せずに進行できるからである。また、同乗者は車両左側に着座し、降車の際も車両左側から降車することが多く、停車したときにそこに路肩があれば降車を円滑にすることができるからである。
【0053】
さて、本発明では、一時的に停車して障碍者等が乗降するために用いる、乗降レーンの存在が要部となる。障碍者等が乗降する以上、長い距離の移動を強いるべきではないので、乗降レーンは施設に近いところに設けられることが望ましい。
【0054】
上記様々な背景の下、
・ 入口、
・ 出口、
・ 乗降レーン、
の配置関係によって他の要部の配置も異なることになる。
【0055】
また、これらの位置関係についてレイアウト上の「並び」でみると、入口を起端にするならば、車両の左側通行を原則とする我が国道路交通法の下では、右回りで
(1) 入口 → 乗降レーン → 出口、とするか、
(2) 入口 → 出口 → 乗降レーン、とするか
のいずれかになる。
【0056】
ここで、(1)の場合、入口と出口とが離れて配置(入口出口離隔型)されているならば、出口付近から再び乗降レーンに向かう車両の動線と、入口からそのまま乗降レーンに向かう車両の動線との競合に配慮する必要がある。この点を考慮すると、結果として図11下段に示すように3パターンについて場面を分けて検討すればよいことになる。
【0057】
なお、入口・出口・乗降レーン各配置関係についてその離れ方によって最適な構成等が異なってくるので、本明細書では、6個の実施の形態を挙げて説明する。各実施の形態では駐車場敷地を長方形であるものとして説明するが、いずれを長辺短辺とするのでもよく、また敷地形状が矩形とは異なっていてもよい。
【0058】
(2.2. 駐車場の利用シナリオについて)
上記のように各実施の形態とも、前述した通り、障碍者等が搭乗する車両には多くの場合に健常者が同乗していることに着目した上で、駐車場内で障碍者等が乗降する場所と駐車する場所とを分離して配置する。そして、障碍者等が搭乗する車両は、障碍者等が乗降する「停車乗降領域」と、ここに進むための待機領域である「乗降待機列領域」とを備えた乗降レーンを利用する。このように入口・乗降レーン・出口がある駐車場で、更に駐車領域を含めた、シナリオについては各実施の形態に共通して、概ね以下のようになる。
【0059】
(2.2.1. 入庫のシナリオ)
この駐車場に駐車したい車両が入庫するときには、一般道から駐車場入口を通って駐車場敷地内に入る。そして、障碍者が同乗する車両は、以下のようなシナリオに従うことになる。
(1) 入口から進入してきた車両は、まず、乗降レーンのうち乗降待機列領域に進入する。
(2) 乗降レーンの停車乗降領域と乗降待機列領域とが空いていれば、そのまま進んで停車乗降領域で停車する。一方、停車乗降領域が空いていなければ、乗降待機列領域で待機する。
(3) 車両が停車乗降領域に着いたらここに停車して、障碍者は降車する。
(4) 降車が済むとその車両の運転者は、車両を駐車領域まで移動させて駐車する。
(5) 駐車を完了した運転者はそのまま障碍者等が帰宅しようとするときまで車内で待機するか、降車した障碍者等のところまで徒歩で向かうか、または障碍者等と別行動等を採る。
【0060】
(2.2.2. 出庫のシナリオ)
障碍者を同乗させようとする車両が出庫するときには、以下のようなシナリオに従うことになる。
(6) 運転者は、駐車領域に駐車させている車両に徒歩等で向かう。
(7) 駐車領域に駐車していた車は再び、乗降レーンの乗降待機列領域に進入する。
(8) 乗降レーンに入った車両は停車乗降領域に至ったところで停車し、ここで障碍者等を乗車させる。
(9) 更に車両は乗降レーンから退出し、退出レーンに入り、その退出レーンにガイドされ、駐車場出口に至る。
(10) そして、駐車場出口から一般道に出庫する。
【0061】
(3. 第1の実施の形態)
第1の実施の形態は、駐車場外周辺の一部に入口・出口を「隣接」して設置したものであって、障碍者等を搭乗した車両は入口から進入し、駐車場内を進むうちに乗降レーンに進み、更に駐車領域に至る。また、駐車領域から出た車両は再び乗降レーンに進み、更に出口に至るようになっている。即ち、第1の実施の形態は、入口・乗降レーン・出口が近く、駐車場内を右回りで入口から出口まで移動すると遠いものの代表的なレイアウト例である。
【0062】
(3.1.第1の実施の形態の構成について)
第1の実施の形態の構成について、図1を用いて説明する。
【0063】
[駐車場入口(102)]
駐車場入口(102)は、後述する駐車領域(104)に駐車させる車両を、一般道等の駐車場外部から駐車場敷地(101)内に入れるところである。
【0064】
[駐車場出口(103)]
駐車場出口(103)は、駐車場を利用した車両が、駐車場敷地(101)から一般道等の駐車場外部に出るところである。
【0065】
[駐車領域(104)]
駐車領域(104)は、駐車場敷地(101)内にあって、複数台の車両が駐車することができる空間をいう。この際、この領域に車両があるときに、乗降する者は概ね健常者であると想定されるので、駐車領域での車両一台当たりのスペースは障碍者等への配慮は不要であり、適宜健常者が乗降に要する程度の幅があれば足りる。なお、駐車領域(104)は同駐車領域から出た車両が後述する退出レーン(108)若しくは後述する再乗降進入レーン(109)にたどり着けることができるようになっている。このためたとえば、駐車していた車両がたどり着ける外周付近に、少なくとも車両一台が通行できる程度の幅をもつ通路を設けるようにすればよい。
【0066】
[停車乗降領域(105)]
停車乗降領域(105)は、停車した車両から障碍者等が降りるために利用する領域である。障碍者等が施設等を便利に利用できるようにするためには、停車乗降領域は施設建物(111)の出入り口に出来る限り近いところに設置されるのが望ましい。また、障碍者等の帰宅時などには、この領域は、再び一時停車した車両に障碍者等が乗り込むために利用することになる。
【0067】
このように停車乗降領域(105)が一時停車のみできる場所としていることから、一旦車両が占有したとしても、短時間で離脱することになる。障碍者が乗降にかかる時間を超えるような長時間の占有がされないことから、一定時間を待てば必ずこの領域に空きができるので、施設の利用を希望する障碍者等の乗降待ちが耐えられる程度に抑えられる。
【0068】
ここで、停車乗降領域(105)の広さについて、簡単に触れておく。
【0069】
我が国で多く用いられている小型自動車は、道路運送車両法の規格上、車幅が1.7m以下となっていることから、一般的な駐車場では乗降のための幅として50cm程度が開けられ、概ね2.2m程度となっている。これに対し、障碍者等のために設けられる一般的な駐車スペースは、特に定まった傾向はないものの、これよりさらに1mほど広く、概ね3.2m程度となっているようである。
【0070】
従来から利用されている障碍者等用の一般的な駐車スペースは、乗降の際に障碍者等が要する広さを勘案している。よって、停車乗降領域(105)の幅も同程度の概ね3.2m程度かそれ以上とするのが望ましい。もっとも、後述する(9.2. 人動領域と停車乗降領域とを結ぶスロープとその周辺について)で示す方向転換域(716)のように、停車乗降領域(105)外にこれに連続かつ隣接した空間があるのであれば、健常者が利用する駐車場と同程度の2.2m程度の幅にしても構わない。
【0071】
一方、停車乗降領域(105)の車両進行方向の長さについては、小型自動車が道路運送車両法の規格上車長が4.7m以下となっていることから、障碍者用の一般的な駐車スペースでは5から7m程度になっているようである。もっとも、これは車両長手方向に数珠繋ぎになることが想定されているわけではない。このため、この長さは、車両後方で車椅子に乗った障碍者が回り込める程度の余裕を採り、概ね6.2m程度かそれ以上とするのが望ましい。
【0072】
[乗降待機列領域(106)]
乗降待機列領域(106)は、停車乗降領域(105)に車両を停車させる際、その停車乗降領域(105)が空いていないときに、車両を待機させることになる領域である。乗降待機列領域(106)は順番待ちをするためのものなので、停車乗降領域(105)に直列に、かつ一列で繋がるように構成するのが望ましい。
【0073】
幅については、この領域がそのまま停車乗降領域(105)に直列することを考慮すると、停車乗降領域(105)の幅と同じ程度にすることが望ましい。
【0074】
これに対し、乗降待機列領域(106)の車両進行方向の長さについては、少なくとも1台が待機できる程度が必要である。もっとも、ここでは障碍者等が車間に入り込むことは考えにくいので、最短でも車両1台あたり若干の車両間隔を採った程度、即ち5mに予想待機車両数を掛け合わせた程度か、それ以上の長さとするのが望ましい。なお、予想待機車両数は、後述する駐車領域(104)の規模、並びに障碍者等の施設利用比率などによって、総合的に決定すればよい。
【0075】
なお、乗降待機列領域(106)で待機すべき車両が徒に停車乗降領域(105)に侵入しないように、停車乗降領域(105)と乗降待機列領域(106)との間には停止線や停止標識等を設け、その境界を目視容易な状態にすることが望ましい。
【0076】
[乗降レーン(107)]
乗降レーン(107)は、停車乗降領域(105)と乗降待機列領域(106)とを合わせた通路であって、停車乗降領域(105)と乗降待機列領域(106)とは直列とし、長手方向右側にはガイドを設ける。通常、乗降レーン(107)は障碍者等を乗降させる車両が利用する通路とすることを目的とすることから、更にその右側には、障碍者等以外の者のみを搭乗させる車両が通行する通路が設けられることが望ましい。
【0077】
[退出レーン(108)]
退出レーン(108)は、本駐車場敷地から退出しようとする車両が出口に至るために通る通路である。この通路は、
・ 非障碍者等が搭乗し、駐車領域(104)から直接出てきた車両、若しくは、
・ 障碍者が前記停車乗降領域(105)から出てきた車両、
が通ることになる。
【0078】
[再乗降進入レーン(109)]
再乗降進入レーン(109)は、駐車領域(104)から出て、再び乗降レーン(107)内の乗降待機列領域(106)に入ろうとする車両が、乗降待機列領域に入る前に通る通路である。
【0079】
本実施の形態においては、乗降待機列領域(106)に入ろうとする車両と、駐車場入口から入ってきた車両との間で、両車の動線が交叉し、若しくは動帯が重なることになる。駐車場入口から入ってくる車両が数珠繋ぎになっているとき、駐車領域(104)を出てから乗降待機列領域(106)に入ろうとする車両は、その前で一時待機を余儀なくさせられる。再乗降進入レーン(109)は、この際の一時待機を行う場所として用いられることになる。
【0080】
本実施の形態において、退出レーン(108)と、後述する再乗降進入レーン(109)とは並列させた。並列することにより、駐車場入口から入る車両が多く、障碍者等を乗車させるために駐車領域から出て乗降待機列領域に入ろうとする車両が乗降待機列領域の前で一時待機しなければならない場面でも、駐車場から出庫したい車両が無駄に待つ必要がなく、円滑な駐車場の利用を促すことができる。勿論、乗降待機列領域(106)が満車状態になっているときに、乗降待機列領域を延長する作用も奏することになる。
【0081】
[通行調停域(110)]
通行調停域(110)は、再乗降進入レーン(109)を通って乗降待機列領域(106)に入ろうとする車両の動帯と、駐車場入口(102)から入って駐車領域(104)に入ろうとする車両の動帯とが重なる領域である。通行調停域(110)付近には両車両の衝突について注意を促す標識・標示をしたり、積極的に調停する通行調停器を設置したりするのが望ましい。また、再乗降進入レーン(109)の出口で、一時停止を義務付けてもよい。
【0082】
仮に、通行調停域(110)に通行調停器を設置するならば、その通行調停器は、遮断機など、停止を強制するようなものは勿論、信号機などのように運転者の協力を伴うようなものであってもよい。通行調停器については、(9.4. 通行調停器について)で詳述する。
【0083】
(3.2.第1の実施の形態の運用について)
本実施の形態については、障碍者等が搭乗する車両が乗降レーンを利用する際には、概ね前記シナリオ通りに従う。ここでは、具体的なシナリオを障碍者が搭乗する車両のシナリオと、障碍者等が搭乗しない車両(健常者のみが搭乗する車両)のシナリオと、に分けて詳述する。
【0084】
(3.2.1. 障碍者等が搭乗する車両について)
障碍者等が搭乗する車両は、駐車場入口から入り、駐車場出口から退出するまで、以下のようなシナリオに従うことになる。なお、以下の行頭に付した(番号)は、上記(2.2. 駐車場の利用シナリオについて)に示したシナリオでの行頭番号に対応している。
【0085】
[入庫シナリオ]
(0) 運転者に同乗した障碍者等が施設を利用したいとき、搭乗した車両は、まずはこの施設に併設される駐車場の駐車場入口(102)に至る。
【0086】
(1) 駐車場入口(102)から進入し、障碍者等が搭乗している車両は、通行調停域(110)を通って、乗降レーン(107)内の乗降待機列領域(106)に進む。この際、通行調停域に通行調停器がある場合には、それに従い、通行調停域(110)外で通行が許されるまで停車する。
【0087】
(2) 乗降レーン内の停車乗降領域(105)が空いていればそのまま進み、停車乗降領域(105)で停車する。一方、停車乗降領域が空いていなければ、乗降待機列領域(106)で待機し、停車乗降領域(105)が空いたらここに進む。
【0088】
(3) 車両が停車乗降領域(105)に到着し、ここに停車したところで障碍者は降車する。
【0089】
(4) 降車が済むとその車両の運転者は、車両を駐車領域(104)まで移動させて駐車する。
【0090】
(5) 駐車を完了した運転者はそのまま障碍者等が帰宅するまで車内で待機するか、降車した障碍者等のところまで徒歩で向かうか、または障碍者等と別行動を採る。
【0091】
[出庫シナリオ]
(6) 次に車両がこの駐車場から離れる際には、運転者は一旦、駐車領域(104)で駐車している車両に徒歩等で向かう。
【0092】
(7) 駐車領域に駐車していた車は、再乗降進入レーン(109)に入り、その出口まで進む。そこには通行調停域(110)があるので、駐車場入口からの車両がいない場合には、若しくは通行調停域(110)に通行調停器があるならば、その通行調停器が通行を許した場合には、そのまま再び、乗降レーンのうち乗降待機列領域に進入する。
【0093】
(8) 乗降レーンに入った車両は、乗車レーン中の停車乗降領域(105)が空いているならばそのまま停車乗降領域(105)まで進み、ここで停車して障碍者等を乗車させる。停車乗降領域(105)が空いていないときには空くまで乗降待機列領域(106)で待つことになる。そして停車乗降領域(105)が空いたならば停車乗降領域(105)まで進んで停車し、ここで障碍者等を乗車させる。
【0094】
(9) 障碍者等を乗車させた車両は乗降レーンから退出し、退出レーン(108)に入り、その退出レーンにガイドされ、駐車場出口(103)に至る。
【0095】
(10) 車両はその後安全確認を経て、駐車場出口から一般道に出庫する。
【0096】
(3.2.2. 障碍者等が搭乗しない車両について)
[入庫シナリオ]
障碍者等が搭乗しない車両は、駐車場入口から入り、駐車場出口から退出するまで、以下のようなシナリオを踏むことになる。
【0097】
(0) 障碍者等の同乗しなない運転者等が施設を利用したいとき、その車両は、まずはこの施設に併設される駐車場の駐車場入口(102)に至る。
【0098】
(1) 駐車場入口(102)から進入した車両は、通行調停域(110)を通って、そのまま駐車領域(104)内に入る。
(4) そして、運転者は車両を駐車領域まで移動させて駐車する。
【0099】
(5) 駐車を完了した運転者は施設まで徒歩等で向かう。
【0100】
[出庫シナリオ]
(6) 運転者等がこの駐車場から離れる際には、運転者は、駐車領域(104)で駐車している車両に徒歩等で向かう。
【0101】
(9) 運転者が自分の運転する車両に乗車したら、駐車領域(104)から出て退出レーン(108)に進み、退出レーンにガイドされ、駐車場出口(103)に至る。
【0102】
(10) 車両はその後安全確認を経て、駐車場出口から一般道に出庫する。
【0103】
(4. 第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について、図2を用いて簡単に説明する。
【0104】
(4.1.第2の実施の形態の構成について)
第1の実施の形態では、施設建物(111)並びにこれの近いところに設ける乗降レーン(107)が駐車場入口(102)・駐車場出口(103)の隣辺に置かれたのに対し、第2の実施の形態では、施設建物(211)並びにこれの近いところに設ける乗降レーン(207)が駐車場入口(102)・駐車場出口(103)の対辺に置かれている点で異なる。即ち、第2の実施の形態は、入口・乗降レーン間が遠く、また、乗降レーン・出口間も遠いものの代表的なレイアウト例である。
【0105】
本実施の形態においても、駐車場入口(202)、駐車場出口(203)、駐車領域(204)、停車乗降領域(205)、乗降待機列領域(206)、乗降レーン(207)、退出レーン(208)、再乗降進入レーン(209)、通行調停域(210)について、求められる構成・機能は第1の実施の形態において説明した同名各部と概ね同様なので、説明は割愛する。
【0106】
本実施の形態においては、通行調停域から乗降レーンまでの間が長くなっているので、ここで、再乗降進入レーン(109)を通って乗降待機列領域(106)に入ろうとする車両の動帯と、駐車場入口(102)から入って駐車領域(104)に入ろうとする車両の動帯とは重複することになる。もっとも、通行調停域で通行調停がされているので、両車両は乗降待機列領域(206)の入り口付近までの通路を共用し、縦列でそれぞれ移動すればよい。
【0107】
ところで、図中の通行調停域(210)から乗降待機列領域(106)手前までの間を別レーンのままで並列させれば図示する位置での通行調停域(210)は不要となるが、結局は、乗降待機列領域(206)の入り口付近で動線交叉乃至動帯重複を起こすので、そこで通行調停域(210)が求められることに変わりはない。
【0108】
(4.2.第2の実施の形態の運用について)
本実施の形態においては、第1の実施の形態と概ね同じシナリオで運用されるので、説明は省略する。
【0109】
(5. 第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について、図3を用いて簡単に説明する。
【0110】
(5.1.第3の実施の形態の構成について)
第1の実施の形態では、駐車場入口(102)と駐車場出口(103)とが同一辺に置かれたのに対し、第3の実施の形態では、駐車場入口(302)と駐車場出口(303)とが対辺に置かれている点で異なる。即ち、第3の実施の形態は、駐車場外周を右回りで見ていくと、出口・入口間が遠いものの代表的なレイアウト例である。
【0111】
本実施の形態においても、駐車場入口(302)、駐車場出口(303)、駐車領域(304)、停車乗降領域(305)、乗降待機列領域(306)、乗降レーン(307)、退出レーン(308)、再乗降進入レーン(309)、通行調停域(310)について、求められる構成・機能は第1の実施の形態において説明した同名各部と概ね同様なので、説明は割愛する。
【0112】
本実施の形態において、駐車場外周付近を右回りで見ていくと、駐車場出口(303)から駐車場入口(302)若しくは通行調停域(310)までの間には、再乗降進入レーン(309)のみがあればよいことになる。
【0113】
もっともこの場合、車両が駐車領域(304)のうち図面下側付近から退出レーンに直接入ろうとするならば、再乗降進入レーン(309)を通る必要がある。これを抑制するためには、駐車領域(304)のうち図面下側付近では別の退出レーンを再乗降進入レーン(309)に並列して設けるようにすればよい。
【0114】
本実施の形態では、駐車場出口(303)付近において退出レーン(308)と再乗降進入レーン(309)とが並列している。駐車場から出庫する車両が駐車場出口から一般道に進む際には駐車場出口付近で渋滞することがあるところ、このレイアウトによれば、再乗降進入レーン(309)に進む車両が、その渋滞列に巻き込まれないように円滑な移動をさせることができるようになる。
【0115】
(5.2.第3の実施の形態の運用について)
本実施の形態においては、第1の実施の形態と概ね同じシナリオで運用されるので、説明は省略する。
【0116】
(6. 第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について、図4を用いて簡単に説明する。
【0117】
(6.1.第4の実施の形態の構成について)
第3の実施の形態では、退出レーン(308)と再乗降進入レーン(309)とを一部並列させていたが、第4の実施の形態では、これらが直列するようにレイアウトされている点で異なる。
【0118】
本実施の形態においても、駐車場入口(402)、駐車場出口(403)、駐車領域(404)、停車乗降領域(405)、乗降待機列領域(406)、乗降レーン(407)、退出レーン(408)、再乗降進入レーン(409)、通行調停域(410)について、求められる構成・機能は第1の実施の形態において説明した同名各部と概ね同様なので、説明は割愛する。
【0119】
第3の実施の形態では駐車場出口・駐車場入口間に再乗降進入レーン(309)が配置されたために、乗降待機列領域(306)が満車の際、この乗降待機列領域(306)に入るために再乗降進入レーン(309)で待機しなければならない車両があったとしても、それらが駐車場出口から退出する車両の進行を妨げることがない。また、一般道が混雑し、駐車場出口から退出しようとする車両が退出レーン(308)で待機しなければならない場合でも、再乗降進入レーン(309)から乗降待機列領域(306)に入ろうとする車両の進行を妨げることがない点で、特徴があった。
【0120】
これに対し、本実施の形態では、再乗降進入レーン(409)に進もうとする車両は一旦退出レーン(408)を通り、駐車場出口(403)を出ずにそのまま進行して再乗降進入レーン(409)に進むことになる。
【0121】
このため、乗降レーン(407)が満車であっても、再乗降進入レーン(409)が比較的長い緩衝領域として機能し、駐車場から退出する車両の進行を妨げることは少ない。
【0122】
もっとも、一般道が混雑している場合、本実施の形態では駐車場から出庫しようとする車と再び乗降レーン(407)に進もうとする車がともに退出レーン(408)で渋滞する虞がある。しかし、駐車領域(404)を広く採れるために、駐車場敷地(401)が比較的狭い駐車場では、有意な選択肢となる。
【0123】
(6.2.第4の実施の形態の運用について)
本実施の形態においても、第1の実施の形態と概ね同じシナリオで運用される。ただし、障碍者等が搭乗する車両について、再び乗降待機列領域(406)に進む際のシナリオが以下のように替わる。
【0124】
即ち、「(7) 駐車領域に駐車していた車は、退出レーン(408)を通過した後、再乗降進入レーン(409)に入り、その出口まで進む。そこには通行調停域(410)があるので、駐車場入口からの車両がいない場合には、若しくは通行調停域(410)に通行調停器があるならば、その通行調停器が通行を許した場合には、そのまま再び、乗降レーン(407)内の乗降待機列領域(406)に進入する。」となる。
【0125】
(7. 第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について、図5を用いて簡単に説明する。
【0126】
(7.1.第5の実施の形態の構成について)
第4の実施の形態では、乗降レーンと駐車場出口、並びに駐車場出口と駐車場入口との間が大きく離れていたが、第4の実施の形態では、乗降レーンと駐車場出口との間が接近しているレイアウトである点で異なる。
【0127】
本実施の形態においても、駐車場入口(502)、駐車場出口(503)、駐車領域(504)、停車乗降領域(505)、乗降待機列領域(506)、乗降レーン(507)、退出レーン(508)、再乗降進入レーン(509)、通行調停域(510)について、求められる構成・機能は第1の実施の形態において説明した同名各部と概ね同様なので、説明は割愛する。
【0128】
ところで、乗降レーン(507)から進んできた車両と駐車領域(504)から出て退出しようとする車両との動帯重複は他の実施の形態でも起こることであったが、比較的長い通路上でこれらを解消すればよかったので、特に触れなかったところである。
【0129】
しかし、本実施の形態においては、乗降レーンと駐車場出口との間が接近していることから、乗降レーン(507)から進出してきた車両と駐車領域(504)から出てきて退出しようとする車両とがともに使用する退出レーンが短くならざるをえない。この場合、これら両車両の動線交叉角が鋭くになり、衝突しやすくなる虞がある。このため、通行調停域2(510-2)を設け、ここで両車の通行の調停をすることが望ましい。
【0130】
もっとも、乗降レーン(507)から進出してくる車両は停車状態から通行調停域2(510-2)に入ることになる。これは道路交通法第43条が義務付ける「一時停止」をしているのと同様の状況になっているので、交差道路を通行する車両等の進行妨害回避をしやすいと推測でき、駐車場入口(502)付近に配された通行調停域(510)よりも危険性は低いものと期待できる。
【0131】
(7.2.第5の実施の形態の運用について)
本実施の形態においても、退出レーン直前の通行調停域2(510-2)で他の交通に留意する点を除き、第1の実施の形態と概ね同じシナリオで運用される。
【0132】
(8. 第6の実施の形態)
次に第6の実施の形態について、図6を用いて説明する。
【0133】
(8.1.第6の実施の形態の構成について)
第6の実施の形態は、駐車場外周を右回りに見ていくと、駐車場入口(602)、駐車場出口(603)、乗降レーン(607)の順に配されるレイアウト例である。
【0134】
本実施の形態においても、駐車場入口(602)、駐車場出口(603)、駐車領域(604)、停車乗降領域(605)、乗降待機列領域(606)、乗降レーン(607)、退出レーン(608)、再乗降進入レーン(609)、通行調停域(610)について、求められる構成・機能は第1の実施の形態において説明した同名各部と概ね同様なので、説明は割愛する。
【0135】
本実施の形態では第4の実施の形態同様、退出レーンと再乗降進入レーンとを並列させているが、第5の実施の形態のように、退出レーンと再乗降進入レーンとを直列させてもよい。
【0136】
もっとも、通行調停域(610)は入口付近に設けられるが、他の実施の形態と異なり、乗降レーンを通った車両は再度乗降レーンに入る場合でも、駐車場から出庫する場合でも、全てが通行調停域(610)を通過することになる。また、駐車領域(604)を図面下側から出て退出レーン(608)に向かう健常者のみが搭乗している車両であっても、通行調停域(610)を通過することになる。よってこのようなレイアウトを採るのであれば、一般道との関係で許されるならば、入口・出口の関係を入れ替え第3の実施の形態のようにするのが望ましい。
【0137】
(8.2.第6の実施の形態の運用について)
本実施の形態においても、通行調停域を通過する車両が多くなり、動帯重複がおきやすく、他の交通に留意すべき点が増えることを除き、第1の実施の形態と概ね同じシナリオで運用されるので、説明は割愛する。
【0138】
(9. その他)
(9.1. 「障碍者専用駐車スペース」の併設について)
前述の通り、多くの場合、障碍者が施設を利用するためにその施設に併設される駐車場に車両で到着するときには健常者が同乗している。よって、各実施の形態では、障碍者が降車した後には、同乗していた健常者が駐車スペースまで更に自動車を入庫させることを前提としている。
【0139】
しかし、障碍者が自ら車両を運転し、他に同乗者が居ない場合も皆無ではない。このために、従来通りの障碍者専用駐車スペースを少しでも残しておくことが望ましい。
【0140】
勿論、この場合には健常者が障碍者用駐車スペースに駐車してしまう可能性が残る。このため、障碍者用駐車スペースに駐車した者には呼び出し器を持たせ、同乗者なく単独で運転してきた障碍者等が利用したい場合には、当該スペースに先行駐車している車両の運転者を呼び出すようにするなどの対策を併用するのが望ましい。
【0141】
この場合の呼び出し器として、予め、障碍者用駐車スペースへの駐車検出、並びに呼び出し機能を持たせたアプリケーションを障碍者が持つスマートフォンにインストールさせ、そのアプリケーションによって上記呼び出しを実現すればよい。
【0142】
また、このような対策をしてもなお単独運転してきた障碍者数が、施設の用意する障碍者用駐車スペース数を上回る可能性も考えられないではない。その場合には、そもそも駐車場数が足りないことを意味することになるので、駐車場内に限って運転代行者によって車両を移動するサービスを提供することも有力な選択肢である。
【0143】
(9.2. 人動領域と停車乗降領域とを結ぶスロープとその周辺について)
次に、人動領域と停車乗降領域とを結ぶスロープについて、図7を用いて説明する。
【0144】
[人動領域]
人動領域(712)は、少なくとも停車乗降領域と建物入り口との間でひとが自力で移動できる領域であって、停車乗降領域で降車した障碍者等が建物入り口まで移動できるようになっている。必須ではないものの、人動領域(712)と停車乗降領域との間に段差を設け、車両が人動領域への進入を防ぐようになっていることが望ましい。
【0145】
[スロープ]
スロープ(714)は、停車乗降領域(705)と段差のある人動領域(712)との間を無段階で接続する傾斜である。これにより障碍者等が、両領域間の段差にも拘わらず円滑に移ることができるようになる。
【0146】
[スロープの傾斜方向]
スロープの傾斜方向については、乗降レーンでの車両進行方向に向かって段差ある人動領域面から次第に低くなって停車乗降領域の高さに繋がるように設けるのが望ましい。即ち、スロープでの人若しくは車椅子の進行方向と乗降レーンとは平行とし、車両と車椅子等とが並走する方向(以下、「順傾斜方向」という。)とするのが望ましい。これは第1に、車両が進行してくる際、車両の片輪がスロープに乗り上げて車両自体が浮き上がる事故を防ぐことができるからである。また第2に、この傾斜方向は、万が一車椅子がスロープにあるときにブレーキが故障したり、障碍者等が意識を失うなどしたりしても、車椅子が乗降レーンに突入しない方向であるので、大きな事故になることを防ぐことができるからである。
【0147】
なお、施設と停車乗降領域との位置関係上逆の傾斜方向にしなければならないとき、即ち、乗降レーンでの車両進行方向に向かって停車乗降領域の高さから段差ある人動領域面に次第に高く繋がるように設けるときには、スロープと乗降レーンとの間に人動領域と同じ程度の高さで厚み数十センチ程度の障壁を付設するようにすればよい。これにより車両の乗り上げ事故を防止することができる。なお、上記のようにスロープを順傾斜方向に採ったときも、
【0148】
[方向転換域]
スロープ(714)と停車乗降領域(705)との間には、停車乗降領域と同じ高さである方向転換域(716)を設けるのが望ましい。車両から降りた障碍者等が車椅子に乗り換え、ここで方向転換を容易にするとともに、停車乗降領域(705)から降車したあと、すぐに停車していた車両がここから離脱できるようにさせるからである。これによって、乗降レーンの利用効率を上げることができるようになる。
【0149】
方向転換域(716)の形状について特に条件はないが、一辺が停車乗降領域(705)に、隣接辺がスロープ(714)に繋がる矩形状にするのが望ましい。前述の通り、スロープ状でブレーキが故障等した車椅子が乗降レーンに突入することを防ぐためである。
【0150】
[段差識別具]
また、スロープ並びに方向転換域と人動領域(712)との境界付近には段差識別具(717)を備えることが望ましい。段差識別具(717)は、周囲が暗いときにでも、人動領域(712)上に居るひとが乗降できる場所を明確に目視できるようにすることは勿論、スロープ(714)や方向転換域(716)への落下を防止するようにすることができるからである。
【0151】
このため、段差識別具(717)は、図示したようなポール状のものであっても、車椅子の通常の衝突にも耐えられる硬度をもつことが望ましい。もっとも、この場合、車椅子が衝突しても、車椅子乃至障害者に強いダメージを与えないように、できるだけ柔軟な材質を用いるようにすることが好ましい。
【0152】
段差識別具にポール状のものを用いる場合、段差が生じる縁辺に沿って複数個を設置することになるが、その間隔は、車椅子を通さない程度に密にするのが望ましい。勿論、段差の明示・落下防止を図れるものであるならば、柵・フェンス・手摺り・花壇などを設けたり、ポールも含めてこれらを合わせて設けたりするなどしてもよい。なお、花壇など硬質材を用いた場合には、表面にクッションを付設するなどして衝突時のダメージを緩和するように配慮することが望ましい。
【0153】
なお更に、スロープと乗降レーンとの境界付近にも同様に乗降レーン側段差識別具(718)を設けると、より安全性向上を図ることができるようになる。図では手摺りの例を示したが、ポール・柵・フェンス・花壇など上記段差識別具(717)とデザインを統一することも設計上の選択肢になる。
【0154】
(9.3. 車両進入妨害具について)
車両進入妨害具は、乗降レーン(807)が備える乗降待機列領域(806)の右側に、レーンに沿って設置される。車両進入妨害具は、乗降待機列領域(806)の内側と外側との間で車両がレーンを変更することを妨げるようにするものであるが、車両に乗降レーンに乗降待機列領域の入口側からしか入ることができないように認識させ、規律に従わせることがその機能となる。このため、作用するレーンの変更を物理的に妨げることを確実にするよりも、運転者に進路変更ができない旨の心理的圧力を加えるようにすることが重要である。駐車場内の円滑な利用はその駐車場にあった規律が守られることにより達成されるものだからである。
【0155】
この点、図8を用いて説明する。図8では車両進入妨害具として、規制ポール(815)を用いたところを示している。
【0156】
規制ポール(815)は視認性に優れた棒状のもので、車両運転者の目線程度、若しくはそれより若干低い程度の高さをもつものとすることが望ましい。これにより割り込みをしようとする者の視野内に入りやすくなり、心理的圧力が高まるからである。
【0157】
車両進入妨害具としては図示したポール状のもののほか、柵、網状フェンス、色とりどりな植物を植えた花壇など、視認性を高めるものであればどのようなものでも構わない。
【0158】
また、車両進入妨害具として図示したポール状のものなど、色彩が目立たないものを用いた場合には、注意喚起模様を持った危険表示具を表面に施したものにすることにより、その視認性の向上を図ることが望ましい。
【0159】
注意喚起模様としては、様々な色彩をもつものの他、光沢のある模様があることが望ましい。これは、乗降待機列領域で停車する車両や施設側背景に埋まらないように浮き上がらせて見せるようにするためである。注意喚起模様としては、例えば、黄帯と黒帯とを交互に配したようなものとすればよい。よって、車両進入妨害具として、無地のポールの基体にトラテープ(登録商標)として知られる危険表示具を貼付したものを使えばよい。
【0160】
ところで、車両進入妨害具は、原則として乗降レーン中の乗降待機列領域(106)に付設するものである。車両進入妨害具を乗降レーン中の停車乗降領域に備えないのは、運転者自身が同乗した障碍者等の降車・乗車を介助するために降車することを考慮したためである。
【0161】
このため、乗降レーンで左右に十分な空間を確保したのであれば、車両進入妨害具は、乗降レーン(807)の右側全てに渡って設置しても構わない。乗降レーン(107)の右側全てに渡って設置すると、停車乗降領域に車両が停車していないときに、乗降レーンを利用しない他の車両が進入してくることを妨げることができる。いずれを採るかは、駐車場敷地の広さ、施設利用率などを総合的に勘案して決めればよい。
【0162】
(9.4. 通行調停器について)
通行調停器は、第1の実施の形態において触れたとおり、通行調停域(110)に設置することができる。通行調停器は、遮断機のように停止を強制するようなものは勿論、信号機などのように運転者の協力を伴うようなものであってもよい。ここでは、通行調停器の調停タイミングについて説明する。
【0163】
通行調停器は、通行調停域において、動帯が重なる車両の通行を整理するものであるので、一般道で見かける信号機のように、単純に定時間ごとに通過する車両を整理する技法も採れないではない。
【0164】
しかし、駐車場の場合、駐車場入口から入庫してくる車両と、乗降待機列領域に入ろうとする車両との間での調停をするのであるから、動帯が重なるのは、主に障碍者を搭乗させるようとする車両があるときである。
【0165】
よって、円滑で効率的な駐車場の運用を目指すならば、原則として駐車場入口から入庫してくる車両を優先して通過させ、再乗降進入レーンに車両が進入したときに、その通行を許すとように、柔軟に競合する車両同士に通過させる時間を配分すればよい。
【0166】
このためには、再乗降進入レーンの出口付近に、センサーなど、乗降待機列領域に入ろうとする車両を検知する検知手段を備え、通行調停器は、この検知手段が車両を検知したときに、駐車場入口から入庫してくる車両を抑え、乗降待機列領域に入ろうとする車両を通過させるように制御すればよい。また、乗降待機列領域に入ろうとする車両が数珠繋ぎになったときのことを考慮して、乗降待機列領域に入ろうとする車両を通過が連続するときには時間を区切るなど、検知・時間併用型の制御をすることが望ましい。このとき、時間を決めるのは、一日のうちの時間帯、駐車慮域における混雑状況、駐車場入口から入庫してくる車両の混雑状況などをパラメータとして適宜バランスを採ることが望ましい。
【0167】
ここで乗降待機列領域に入ろうとする車両を検知するセンサーには、車両に超音波を当ててその反射状態をみるものや、路面に磁気ループを埋め込んで浮遊容量の変化や誘導電流の変化を検出するものなど、どのようなものを用いても構わない。
【0168】
(9.5. 停車乗降領域の複数設置化について)
各実施の形態について、停車乗降領域を複数個とすることもできる。
【0169】
(9.5.1. 停車乗降領域のみを複数設置する例)
まず、停車乗降領域のみを複数設置する例について、図9を用いて説明する。
【0170】
本例においては、乗降レーン(907)として、乗降待機列領域(906)・第1停車乗降領域(905-1)・第2停車乗降領域(905-2)を、車両進行方向順に、直列に配置する。
【0171】
このようにすることで、第1停車乗降領域(905-1)で乗降が終わった車両は、第2停車乗降領域(905-2)が空いていればそのまま離脱でき、第2停車乗降領域(905-2)に未だ乗降が終わっていない車両が居れば、その車両が離脱して第2停車乗降領域(905-2)が空くまで第1停車乗降領域(905-1)で待機することになる。
【0172】
第1停車乗降領域(905-1)・第2停車乗降領域(905-2)の両方が空けば乗降待機列領域で待機していた車両は第2停車乗降領域(905-2)に進み、続く乗降待機列領域待機車両も第1停車乗降領域(905-1)に進めばよい。
【0173】
(9.5.2. 停車乗降領域に加え乗降待機列領域も合わせて複数設置する例)
次に、停車乗降領域に加え乗降待機列領域も合わせて複数設置する例について、図10を用いて説明する。
【0174】
本例においては、第1乗降レーン(1007-1)と第2乗降レーン(1007-2)とを備える。第1乗車レーンには、第1乗降待機列領域(1006-1)と第1停車乗降領域(1005-1)とが備わっている。同様に第2乗降レーン(1007-2)には、第2乗降待機列領域(1006-2)と第2停車乗降領域(1005-2)とが備わっている。勿論、同様に第3乗降レーン、第4乗降レーンと増やしても構わない。
【0175】
このようにすることで、乗降レーンを使用しようとしている車両は、空いている乗降レーンを用いることができるようになる。
【0176】
もっとも、この構成にしたときには、一旦乗降待機列領域に入った車両が他の乗降レーンの乗降待機列領域に移ることは難しい。よって、本例はひとつの駐車場に複数の施設があり、これら複数の施設近くにそれぞれ乗降レーンを設けるような場合に好適なものであり、ひとつの駐車場にひとつの施設だけがあるような場合には、前記(9.5.1. 停車乗降領域のみを複数設置する例)に示すようなレイアウトを採る方が望ましい。
【0177】
(9.6. 左側通行と右側通行)
本願においては車両が左側通行となる我が国道路交通法に基づいて説明したが、右折通行となる規定を持つ国では、左右の関係を反転して実施すればよい。
【0178】
(9.7. 障碍者等停車乗降領域利用ポイントサービスについて)
障碍者等が停車乗降領域を利用した際に付するポイントサービスについて、簡単に触れる。
【0179】
障碍者等が搭乗する車両が乗降レーンを利用することで、障碍者等が停車乗降領域を利用した際に、ポイントを付するサービスを行うことは意義がある。即ち、(9.1. 「障碍者専用駐車スペース」の併設について)で触れたように「障碍者専用駐車スペース」を併設した場合には、障碍者が搭乗している場合、乗降レーンよりも「障碍者専用駐車スペース」を使用しようとすることも考えられないではない。
【0180】
しかし、ポイントにより乗降レーンの利用を促がすことができるようになる。
【0181】
この場合、ポイントの付与は乗降レーンを使用したときだけに限りたいのであるから、停車乗降領域の右脇、即ち運転者側であって、運転者から画像を読み込ませることが容易な位置に画像読み取り装置を配する。そして、障碍者等が自分のIDを表示させた自分自身の携帯端末を運転者に渡し、運転者の手によって、携帯端末上に表示したIDを画像読み取り装置に読み取らせるようにする。これは「障碍者専用駐車スペース」を使用した障碍者等が容易に自己のIDを読み込ませることができないようにするためである。即ち、上記画像読み取り装置は、運転者だけが手の届く位置、具体的には停車乗降領域の右側で車両が停止したときに運転者から手が届く付近に設置するのが望ましい。
【0182】
IDとしては、予め施設運営者等が障碍者等に付与した固有の番号/符号に、時刻や車両番号などを鍵とした暗号を、QRコード(登録商標)などの二次元画像コードとして表示させるアプリケーションで生成したものと表示させるのが望ましい。
【0183】
障碍者自身の携帯端末を用いるのは、家族であっても障碍者自身が自分の携帯端末を長時間運転者に渡すことは躊躇することから、障碍者等を乗せていない家族が障碍者等から端末を借りてポイント稼ぎをするような事態を避けることが期待できるからである。
【0184】
また、画像読み取り装置を運転者だけが手の届く位置に設置するのは、ふたり以上の障碍者が同乗していた場合、ふたり目の同乗者が降車後に重複してポイントを得るようなことを防ぐためである。
【0185】
(9.8. 停車乗降領域の乗車専用・降車専用化について)
上記各実施の形態では、停車乗降領域は、障碍者等の乗車・降車をする場所として共用するものとしているが、乗車専用・降車専用の停車領域に分離するレイアウトも考えられる。しかし、平面駐車場でこれを実施しようとすると、車両の動帯が多くの場所で重なることから、その整理が困難であり、運転者に多くの注意を喚起する必要がでてくる。
【0186】
よって、障碍者等の利用が多い施設において、乗車専用・降車専用の停車領域に分離するレイアウトを採るならば、駐車場を2階建て以上とし、いずれかの階の駐車場を乗車専用階・降車専用階とするなど、大規模に構築することになる。
【0187】
(10. 請求項と実施の形態との対応)
本願特許請求の範囲において記載した請求項と本明細書に記載した実施の形態とは概ね以下の関係にある。勿論、各請求項の解釈においては、これら実施の形態に記載した実装に限られるものではない。
【0188】
請求項1に記載の駐車場は、上記全ての実施の形態において、概ね同名の部名を採っている。なお、入口は駐車場入口(102,202,302,402,502,602)に相当する。出口は、駐車場出口(103,203,303,403,503,603)に相当する。
【0189】
請求項2に記載の駐車場は、上記全ての実施の形態において実装でき、概ね同名の部名を採っている。また、車両進入妨害具については、(9.3. 車両進入妨害具について)にその態様に係る記載がある。
【0190】
請求項3に記載の駐車場は、上記全ての実施の形態において実装でき、概ね同名の部名を採っている。また、通行調停器については、第1乃至第5の実施の形態内で、設置する位置については通行調停域(110,210,310,410,510)で、また、調停器の態様については(9.4. 通行調停器について)に記載がある。
【0191】
請求項4に記載の駐車場は、上記全ての実施の形態において実装でき、駐車場内に都合複数の停車乗降領域とする点について、(9.5. 乗降領域の複数設置化について)において説明がある。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明によれば、障碍者等用駐車スペースの不適正利用に悩まされることが少ない駐車場の敷設・建設に利用することができる。
【符号の説明】
【0193】
図面中の符号は、下位2桁を除く先頭の数値が図面番号を表す。なお、異なる図面においても下位2桁が同一のものは概ね同意義のものとなるように配番してある。
【0194】
101、201、301、401、501、601 駐車場敷地
102、202、302、402、502、602 駐車場入口
103、203、303、403、503、603 駐車場出口
104、204、304、404、504、604 駐車領域
105、205、305、405、505、605、705、805 停車乗降領域
106、206、306、406、506、606、806、906 乗降待機列領域
107、207、307、407、507、607、707、807、907 乗降レーン
108、208、308、408、508、608 退出レーン
109、209、309、409、509、609 再乗降進入レーン
110、210、310、410、510、610 通行調停域
510-2 通行調停域2
111、211、311、411、511、611 施設建物
712 人動領域
714 スロープ
716 方向転換域
717 段差識別具
815 規制ポール
905-1 第1停車乗降領域
905-2 第2停車乗降領域
1005-1 第1停車乗降領域
1005-2 第2停車乗降領域
1006-1 第1乗降待機列領域
1006-2 第2乗降待機列領域
1007-1 第1乗降レーン
1007-2 第2乗降レーン

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11