(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099379
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の正極、その製造方法、およびその正極を有するリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20230706BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20230706BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230706BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20230706BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230706BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230706BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20230706BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20230706BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/66 A
H01M4/62 Z
H01M4/70 A
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0525
H01M4/1391
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000004
(22)【出願日】2022-01-01
(71)【出願人】
【識別番号】712006374
【氏名又は名称】CONNEXX SYSTEMS株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕一
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017DD01
5H017EE05
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH06
5H029AJ03
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL07
5H029CJ02
5H029CJ04
5H029CJ08
5H029CJ12
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029DJ07
5H029DJ14
5H029EJ01
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ08
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050DA02
5H050DA08
5H050DA10
5H050FA15
5H050GA02
5H050GA04
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】体積エネルギ密度が大きい、かつ合材層体積抵抗および界面抵抗が十分に小さいリチウムイオン二次電池の正極、その製造方法、およびその正極を有するリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池の正極10は、アルミ箔12と合材層14とを有する。アルミ箔12は、少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたものである。合材層14は、アルミ箔12の凹凸の上に形成されたものである。合材層14の密度は、2.0~4.0g/ccであり、合材層14は、リチウム金属酸化物、CNTおよびバインダを含む。合材層14に対するCNTの質量比は、1.0~3.0%であり、合材層14に対するバインダの質量比は、0.5~2.0%であり、CNTの外径は、8.0~12.0nmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたアルミ箔と、
前記アルミ箔の前記凹凸の上に形成された合材層と、を有し、
前記合材層は、密度が2.0~4.0g/ccであり、リチウム金属酸化物、前記合材層に対する質量比が1.0~3.0%のCNT、および0.5~2.0%のバインダを含み、
前記CNTは、外径が8.0~12.0nmであるリチウムイオン二次電池の正極。
【請求項2】
前記合材層は、密度が2.6~2.9g/ccである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の正極。
【請求項3】
前記合材層は、前記CNTに対する質量比が15~25%の分散剤を含む請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池の正極。
【請求項4】
前記アルミ箔は、厚さが13~19μmであり、
前記凹凸は、ピッチが5~15μmであり、高さが1~5μmである請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の正極。
【請求項5】
前記リチウム金属酸化物は、LiNiCoMnO2、LiNiCoAlMO2、LiNiO2、LiCoO2およびLiMn2O4の内のいずれか1つであり、前記Mは、Na、Sr、Baの内の少なくとも1つである請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の正極。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の正極と、
黒鉛系炭素材料を含む合材層を備えた負極と、
前記正極の合材層と前記負極の合材層との間に配置され、前記正極と前記負極とを電気的に絶縁するセパレータと、を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
乾燥後の合材層に対する質量比がCNT1.0~3.0%、およびバインダ0.5~2.0%になるように、前記CNT入りの導電塗料と前記バインダ入りのバインダ溶液と溶媒とを、リチウム金属酸化物を使用した活物質と混錬してスラリを作製する第1工程と、
前記スラリを真空環境下で脱泡する第2工程と、
脱泡した前記スラリを、少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたアルミ箔の前記凹凸の上に塗工して前記合材層を備えた正極箔を作製する第3工程と、
前記正極箔を2.0~4.0g/ccの密度になるまでプレスする第4工程と、
プレスした前記正極箔を真空高温環境下で乾燥する第5工程と、
乾燥した前記正極箔を所定の寸法に切断する第6工程と、を含み、
前記CNTは、外径が8.0~12.0nmであるリチウムイオン二次電池の正極の製造方法。
【請求項8】
前記第4工程は、前記正極箔を2.6~2.9g/ccの密度になるまでプレスする請求項7に記載のリチウムイオン二次電池の正極の製造方法。
【請求項9】
前記導電塗料は、前記CNTに対する質量比が15~25%の分散剤を含む請求項7または8に記載のリチウムイオン二次電池の正極の製造方法。
【請求項10】
前記アルミ箔は、厚さが13~19μmであり、
前記凹凸は、ピッチが5~15μmであり、高さが1~5μmである請求項7~9のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の正極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の正極、その正極を有するリチウムイオン二次電池、およびその正極の製造方法に関し、特に、CNTを含む低抵抗の正極、その正極を有するリチウムイオン二次電池、およびその正極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車の電動化が世界的に加速する中、乗用車以外の移動体でも電動化が急速に進んでいる。例えば、トラック・バス等の重量車EVや、物流・安全保障用途等で用いられる大型ドローンがこれに該当する。重量車EVでは、乗用車よりもはるかに大きい出力を求められ、大型ドローンでは、離着陸時の数秒間に大出力が必要であり、乗用車に用いられるリチウムイオン二次電池を単に流用するだけでは、性能要求を満足させることができない。
【0003】
このニーズに対応するために、CNTを含む低抵抗の正極が開示されている。例えば、特許文献1には、正極活物質と結着剤とCNTなどの導電助剤とを所定の割合で溶媒中に添加、混合して電極ペーストを調製し、これをアルミ箔からなる集電体の表面に塗布し、乾燥機内で乾燥させた後、ロールプレス等で圧延するリチウムイオン二次電池の正極の作製方法が開示されている。また、例えば、特許文献2には、LFP系リチウムイオン二次電池用正極が、正極活物質、導電材およびバインダを含む合剤層と、合剤層が表面に形成された集電体と、を備えること、ならびに、正極活物質の一部および導電材に含まれた繊維状炭素の一部が、集電体の表面に形成されたピットに入り込んでいることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6040791号
【特許文献2】WO2012/114502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電極および特許文献2の正極では、正極の目標仕様として、合材層体積抵抗および合材層とアルミ箔との界面抵抗を十分に小さくする条件が検討されていないという問題があった。また、特許文献1の電極では、合材層の密度および合材層に対するCNTの質量比の両者とも具体的な数値が記載されていないため、合材層体積抵抗および界面抵抗の少なくとも一方が大きくなりすぎて、二次電池としての性能が著しく低い場合が含まれているという問題があった。さらに、特許文献2の正極では、合材層に対するバインダの質量比が高いので、正極の体積エネルギ密度が低下すると同時に合材層体積抵抗および界面抵抗が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、体積エネルギ密度が大きい、かつ合材層体積抵抗および界面抵抗が十分に小さいリチウムイオン二次電池の正極およびその正極の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記目的に加え、大出力のリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、まず、CNT入りの導電塗料とバインダ入りのバインダ溶液と溶媒とを、リチウム金属酸化物を使用した活物質と混錬してスラリを作製する際のCNTの外径が8.0~12.0nmであること、乾燥後の合材層に対するCNTおよびバインダの質量比がCNT1.0~3.0%、バインダ0.5~2.0%になるような比率で混ぜること、および正極箔を2.0~4.0g/ccの密度になるようにプレスすることによって、体積エネルギ密度を大きくし、合材層体積抵抗および界面抵抗を小さくすることができることを見出した。
【0008】
また、本発明者は、少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたアルミ箔の凹凸の上にスラリを塗工することによって、合材層体積抵抗および界面抵抗をさらに十分に小さくすることができることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明の第1実施形態は、少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたアルミ箔と、アルミ箔の凹凸の上に形成された合材層と、を有し、合材層は、密度が2.0~4.0g/ccであり、リチウム金属酸化物、合材層に対する質量比が1.0~3.0%のCNT、および0.5~2.0%のバインダを含み、CNTは、外径が8.0~12.0nmであるリチウムイオン二次電池の正極を提供するものである。
【0010】
ここで、上記においては、合材層は、密度が2.6~2.9g/ccであるのが好ましい。
合材層は、CNTに対する質量比が15~25%の分散剤を含むのが好ましい。
アルミ箔は、厚さが13~19μmであり、凹凸は、ピッチが5~15μmであり、高さが1~5μmであるのが好ましい。
リチウム金属酸化物は、LiNiCoMnO2、LiNiCoAlMO2、LiNiO2、LiCoO2およびLiMn2O4の内のいずれか1つであり、Mは、Na、Sr、Baの内の少なくとも1つであるのが好ましい。
【0011】
また、本発明の第2実施形態は、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の正極と、黒鉛系炭素材料を含む合材層を備えた負極と、正極の合材層と負極の合材層との間に配置され、正極と負極とを電気的に絶縁するセパレータと、を有するリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【0012】
また、本発明の第3実施形態は、乾燥後の合材層に対する質量比がCNT1.0~3.0%、およびバインダ0.5~2.0%になるように、CNT入りの導電塗料とバインダ入りのバインダ溶液と溶媒とを、リチウム金属酸化物を使用した活物質と混錬してスラリを作製する第1工程と、スラリを真空環境下で脱泡する第2工程と、脱泡したスラリを、少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたアルミ箔の凹凸の上に塗工して合材層を備えた正極箔を作製する第3工程と、正極箔を2.0~4.0g/ccの密度になるまでプレスする第4工程と、プレスした正極箔を真空高温環境下で乾燥する第5工程と、乾燥した正極箔を所定の寸法に切断する第6工程と、を含み、CNTは、外径が8.0~12.0nmであるリチウムイオン二次電池の正極の製造方法を提供するものである。
【0013】
ここで、上記においては、第4工程は、正極箔を2.6~2.9g/ccの密度になるまでプレスするのが好ましい。
導電塗料は、CNTに対する質量比が15~25%の分散剤を含むのが好ましい。
アルミ箔は、厚さが13~19μmであり、凹凸は、ピッチが5~15μmであり、高さが1~5μmであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の正極および本発明の第3実施形態のリチウムイオン二次電池の正極の製造方法によれば、体積エネルギ密度を大きくし、合材層体積抵抗および界面抵抗を十分に小さくすることができる。
また、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池によれば、大出力にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の正極を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池を示す断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態のリチウムイオン二次電池の正極の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を添付の図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。まず、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の正極について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の正極を示す断面図である。
【0017】
本発明のリチウムイオン二次電池の正極10は、アルミ箔12と合材層14とを有する。アルミ箔12は、少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたものである。合材層14は、アルミ箔12の凹凸の上に形成されたものである。
【0018】
まず、アルミ箔12について説明する。
アルミ箔12の厚さは、13~19μmであるのが好ましいが、14~18μmでも良い。アルミ箔12の厚さは、メーカの製品仕様の14~18μm、17~23μm、27~33μmの3種類の中から選択することによって調整することができる。アルミ箔12の厚さが13μm未満の場合には、強度不足で破断する可能性が著しく高くなる。また、アルミ箔12の厚さが19μm超の場合には、正極10の体積エネルギ密度および質量エネルギ密度が著しく低下すると同時に、正極10の積層数が同じであれば正極10を有する二次電池の体積および質量が大きくなる。
【0019】
アルミ箔12の静電容量は、60μF/cm2以上であるのが好ましい。アルミ箔12の静電容量は、メーカの製品仕様の60μF/cm2以上、80μF/cm2以上、100μF/cm2以上の3種類の中から選択することによって調整することができる。
【0020】
アルミ箔12に形成された凹凸のピッチは、5~15μmであるのが好ましいが、8~12μmでも良く、高さは、1~5μmであるのが好ましいが、2~4μmでも良い。凹凸のピッチおよび高さは、アルミ箔12の断面のSEM画像で計測することができる。凹凸のピッチが5μm未満の場合には、凹部に入り込んだ合材層14の突起がちぎれやすくなるので、アルミ箔12と合材層14が剥離する可能性が著しく高くなると同時に、活物質が凹部に入り込めないので、界面に働くアンカー効果が小さくなり、それに伴ってアルミ箔12と合材層14が剥離する可能性が著しく高くなる。また、凹凸のピッチが15μm超の場合には、界面に働くアンカー効果が小さくなるので、それに伴う上記問題が発生する。凹凸の高さが2μm未満の場合には、界面に働くアンカー効果が小さくなるので、それに伴う上記問題が発生すると同時に界面抵抗も大きくなる。また、凹凸の高さが4μm超の場合には、強度不足で破断する可能性が著しく高くなる。
【0021】
次に、合材層14について説明する。
合材層14は、アルミ箔12と共に正極箔を構成するものであり、脱泡したスラリをアルミ箔12の凹凸の上に塗工して作製されたものである。また、スラリは、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)入りの導電塗料とバインダ入りのバインダ溶液と溶媒とを、リチウム金属酸化物を使用した活物質と混錬して作製されたものである。合材層14は、塗工および1次乾燥時点で導電塗料とバインダ溶液のそれぞれに含まれていた液体が除去されて固形分だけになるが、正極箔をプレスした後の2次乾燥で、1次乾燥で除去し切れなかったわずかな溶媒および1次乾燥後に吸湿した水分を再度除去する。固形分は、リチウム金属酸化物、CNTおよびバインダであり、分散剤を含んでも良い。
【0022】
リチウム金属酸化物は、三元系(NCM系)のリチウムイオン二次電池の正極に使用されるLiNiCoMnO2、NCA系のリチウムイオン二次電池の正極に使用されるLiNiCoAlMO2(ここで、Mは、Na、Sr、Baの内の少なくとも1つである)、その他のリチウムイオン二次電池の正極に使用されるLiNiO2、LiCoO2およびLiMn2O4の内のいずれか1つである。なお、本明細書では、1次乾燥または2次乾燥と記載している場合を除き、単に乾燥と記載している場合は2次乾燥を意味する。
【0023】
合材層14の密度は、2.0~4.0g/ccであり、2.6~2.9g/ccでも良く、2.7~2.8g/ccでも良い。合材層14の密度は、正極箔をプレスする際のロール間隔および回数を増減させることによって調整することができる。合材層14の密度が2.0g/cc未満の場合には、正極10の体積エネルギ密度が著しく低下する。また、合材層14の密度が4.0g/cc超の場合には、電解液のイオン輸送抵抗(イオン拡散抵抗ともいう)が大きくなるので、電池出力が低下する。
【0024】
合材層14は、上記リチウム金属酸化物に加えて、CNTおよびバインダを含む。合材層14に対するCNTの質量比は、1.0~3.0%であり、1.4~2.6%でも良く、1.5~2.5%でも良い。合材層14に対するCNTの質量比は、1.0~2.0%でも良く、1.4~1.6%でも良く、1.5%でも良い。合材層14に対するCNTの質量比は、導電塗料とバインダ溶液と溶媒とを活物質と混錬する際の導電塗料の比率を増減させることによって調整することができる。合材層14に対するCNTの質量比が1.0%未満の場合には、合材層体積抵抗が著しく大きくなる。また、合材層14に対するCNTの質量比が3.0%超の場合には、活物質の質量比が低下するので、電池容量が小さくなる。
【0025】
CNTの外径は、8.0~12.0nmであり、8.5~11.5nmでも良く、9~11nmでも良い。CNTの外径は、導電塗料メーカの製品仕様の5~7nm、9~11nm、10~15nmの3種類の中から選択することによって調整することができる。CNTの外径が8.0nm未満の場合には、同じ質量では凝集力が強いため分散が不十分になり、品質が低下すると同時に、コストが著しく上昇する。また、CNTの外径が12.0nm超の場合には、活物質との結合面積が小さくなるので、界面抵抗が著しく大きくなる。
【0026】
CNTの比表面積は、180~270m2/gであり、190~260m2/gでも良く、200~250m2/gでも良い。CNTの比表面積は、導電塗料メーカの製品仕様の200~250m2/g、200~300m2/g、600~800m2/gの3種類の中から選択することによって調整することができる。
【0027】
合材層14に対するバインダの質量比は、0.5~2.0%であり、0.9~1.1%でも良く、1.0%でも良い。合材層14に対するバインダの質量比は、導電塗料とバインダ溶液と溶媒とを活物質と混錬する際のバインダの比率を増減させることによって調整することができる。合材層14に対するバインダの質量比が0.5%未満の場合には、アルミ箔12と合材層14が剥離する可能性が著しく高くなる。また、合材層14に対するバインダの質量比が2.0%超の場合には、活物質の質量比が低下するので、電池容量が小さくなると同時に、バインダ自体が電気抵抗として作用するので、合材層体積抵抗および界面抵抗が大きくなる。
【0028】
次に、分散剤について説明する。
合材層14が分散剤を含む場合には、CNTに対する分散剤の質量比は、15~25%であるのが好ましいが、20~21%でも良い。分散剤は、CNTと共に導電塗料の中に添加されていて、その質量比は、導電塗料メーカの製品仕様によればCNTに対して1種類になっている。したがって、導電塗料とバインダ溶液と溶媒とを活物質と混錬する際に、CNTまたは分散剤を単独で追加しない限り、CNTの比率と無関係に分散剤の比率を増減させることはできない。CNTに対する分散剤の質量比が15%未満の場合には、分散が不十分になり、品質が低下する。また、CNTに対する分散剤の質量比が25%超の場合には、活物質の質量比が低下するので、電池容量が小さくなる。
【0029】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の正極は、予め設定した目標範囲内の抵抗値を達成することができるので、体積エネルギ密度を大きくし、合材層体積抵抗および界面抵抗を十分に小さくすることができる。
【0030】
次に、予め設定した目標値について詳細に説明する。
合材層体積抵抗は、合材層14に対するCNTの質量比が増加するほど小さくなり、減少するほど大きくなる傾向がある。その傾向を考慮した上で、十分に小さい抵抗値として、0.9Ωcm以下という目標範囲を設定した。また、界面抵抗は、表面が平坦なアルミ箔を使用するよりも表面に凹凸が形成されたアルミ箔12を使用する方が小さくなる傾向があり、合材層14の密度が特定の範囲でありかつ合材層14に対するCNTの質量比が特定の範囲である場合に小さくなる傾向がある。その傾向を考慮した上で、十分に小さい抵抗値として、0.03Ωcm2以下という目標範囲を設定した。
本発明の第1形態のリチウムイオン二次電池の正極は、基本的に以上のように構成される。
【0031】
次に、本発明の第2形態のリチウムイオン二次電池について詳細に説明する。
図2は、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池を示す断面図である。
本発明の第2形態のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池20は、リチウムイオン二次電池の正極10と負極30とセパレータ40とを有する。負極30は、銅箔32および合材層34を備え、合材層34は、黒鉛系炭素材料を含む。セパレータ40は、正極10の合材層14と負極30の合材層34との間に配置され、正極10と負極30とを電気的に絶縁する。
【0032】
リチウムイオン二次電池20の正極10は、さらに、アルミ箔12の一部である正極集電部12aを有し、合材層14は、アルミ箔12の正極集電部12a以外の部分に形成される。リチウムイオン二次電池20の負極30は、銅箔32と、銅箔32の一部である負極集電部32aと、合材層34と、を有し、合材層34は、銅箔32の負極集電部32a以外の部分に形成される。
【0033】
正極10および負極30は、セパレータ40を介して交互に積層され、積層方向の両端には、銅箔32の片側または両側に合材層34が形成された負極30が配置される。積層方向の一方の端には、アルミ箔12の片側または両側に合材層14が形成された正極10が配置されても良い。リチウムイオン二次電池20は、アスペクト比の大きな負極30、セパレータ40、正極10をこの順に重ね、ロール状に捲回した構造でも良い。また、セパレータ40は、材料によっては、例えば、合材層14および合材層34の内の一方に塗工することによって、正極10および負極30の内の一方に一体化することができる。
【0034】
このような構成とすることで、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極の体積エネルギ密度が大きい、かつ合材層体積抵抗および界面抵抗が十分に小さいので、大出力にすることができる。
本発明の第2形態のリチウムイオン二次電池は、基本的に以上のように構成される。
【0035】
次に、本発明の第3形態のリチウムイオン二次電池の正極の製造方法について詳細に説明する。
図3は、本発明の第3実施形態のリチウムイオン二次電池の正極の製造方法を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、乾燥後の合材層14に対する質量比がCNT1.0~3.0%、およびバインダ0.5~2.0%になるように、CNT入りの導電塗料とバインダ入りのバインダ溶液と溶媒とを、リチウム金属酸化物を使用した活物質と混錬してスラリを作製する。
【0036】
次に、ステップS12において、スラリを真空環境下で脱泡する。次に、ステップS14において、脱泡したスラリを、少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたアルミ箔12の凹凸の上に塗工した後1次乾燥して合材層14を備えた正極箔を作製する。次に、ステップS16において、正極箔を2.0~4.0g/ccの密度になるまでプレスする。次に、ステップS18において、プレスした正極箔を真空高温環境下で2次乾燥する。次に、ステップS20において、2次乾燥した正極箔を所定の寸法に切断する。
【0037】
ここで、CNTの外径は、8.0~12.0nmである。ステップS16において、正極箔を2.6~2.9g/ccの密度になるまでプレスしても良い。導電塗料が分散剤を含む場合には、CNTに対する質量比は、15~25%であるのが好ましい。アルミ箔12の厚さは、13~19μmであるのが好ましい。アルミ箔12に形成された凹凸のピッチは、5~15μmであるのが好ましく、高さは、1~5μmであるのが好ましい。
【0038】
このような構成とすることで、本発明の第3実施形態のリチウムイオン二次電池の正極の製造方法は、予め設定した目標範囲内の抵抗値を達成することができるので、体積エネルギ密度を大きくし、合材層体積抵抗および界面抵抗を十分に小さくすることができる。
本発明の第3形態のリチウムイオン二次電池の正極の製造方法は、基本的に以上のように構成される。
【実施例0039】
次に、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明についてより詳細に説明する。
まず、以下の手順で配合A~Cの3種類のスラリを作製した。なお、混錬にはARE-310(THINKY)を使用し、混錬する時の温度は、22.5±7.5℃であり、回転刃の回転数と撹拌時間と回数は、2000rpmで1分間を2回である。
(工程1)3.00gの導電塗料、0.83gのバインダ溶液#1120(クレハ)、および2.00gの溶媒NMP(和光純薬)を9.75gの活物質HEN300(XTC New Energy Materials (Xiamen))と混錬して配合Aのスラリを作製した。配合Aのスラリの固形分を計算したところ、合計10.03g(100.0%)に対して活物質が9.75g(97.2%)、CNTが0.15g(1.5%)、分散剤が0.03g(0.3%)、バインダが0.10g(1.0%)になった。
【0040】
(工程2)1.00gの導電塗料、0.83gのバインダ溶液#1120(クレハ)、および3.00gの溶媒NMP(和光純薬)を9.75gの活物質HEN300(XTC New Energy Materials (Xiamen))と混錬して配合Bのスラリを作製した。配合Bのスラリの固形分を計算したところ、合計9.91g(100.0%)に対して活物質が9.75g(98.4%)、CNTが0.05g(0.5%)、分散剤が0.01g(0.1%)、バインダが0.10g(1.0%)になった。
【0041】
(工程3)5.00gの導電塗料、0.83gのバインダ溶液#1120(クレハ)、および1.00gの溶媒NMP(和光純薬)を9.75gの活物質HEN300(XTC New Energy Materials (Xiamen))と混錬して配合Cのスラリを作製した。配合Cのスラリの固形分を計算したところ、合計10.15g(100.0%)に対して活物質が9.75g(96.1%)、CNTが0.25g(2.5%)、分散剤が0.05g(0.5%)、バインダが0.10g(1.0%)になった。
以上の内容をまとめた表を表1に示す。
【0042】
【0043】
次に、以下の手順で正極箔A1、A2、B1、B2、C1、C2を作製する一方、その一部を使用して各正極箔の合材塗布量(目付ともいう)を求めた。なお、脱泡する時の温度は、22.5±7.5℃、真空度は、0.08MPa未満、時間は、30分以上である。また、塗工する時の温度は、22.5±7.5℃、1次乾燥する時の温度は、約90℃である。
(工程4)配合Aのスラリを真空環境下で脱泡した後、脱泡したスラリを、表面に凹凸が形成された厚さ16.0μmのアルミ箔15CB(日本蓄電器工業)の凹凸の上に塗工した後1次乾燥して合材層を備えた正極箔A1を作製した。次に、その正極箔A1の一部を真空高温環境下で2次乾燥した後、直径17.5mmで打ち抜いて正極箔質量を測定したところ、24.7mgであったので、アルミ箔質量10.36mg、合材質量14.29mg、合材塗布量5.94mg/cm2になった。
(工程5)配合Aのスラリを真空環境下で脱泡した後、脱泡したスラリを、表面が平坦な厚さ15.0μmのアルミ箔JIS H4160 A1085-H18(福田金属箔粉工業)の上に塗工した後1次乾燥して合材層を備えた正極箔A2を作製した。次に、その正極箔A2の一部を真空高温環境下で2次乾燥した後、直径17.5mmで打ち抜いて正極箔質量を測定したところ、22.6mgであったので、アルミ箔質量9.82mg、合材質量12.73mg、合材塗布量5.29mg/cm2になった。
【0044】
(工程6)配合Bのスラリを真空環境下で脱泡した後、脱泡したスラリを、工程4のアルミ箔と同じアルミ箔の凹凸の上に塗工した後1次乾燥して合材層を備えた正極箔B1を作製した。次に、その正極箔B1の一部を真空高温環境下で2次乾燥した後、直径17.5mmで打ち抜いて正極箔質量を測定したところ、24.2mgであったので、アルミ箔質量10.36mg、合材質量13.79mg、合材塗布量5.73mg/cm2になった。
(工程7)配合Bのスラリを真空環境下で脱泡した後、脱泡したスラリを、工程5のアルミ箔と同じアルミ箔の上に塗工した後1次乾燥して合材層を備えた正極箔B2を作製した。次に、その正極箔B2の一部を真空高温環境下で2次乾燥した後、直径17.5mmで打ち抜いて正極箔質量を測定したところ、24.2mgであったので、アルミ箔質量9.82mg、合材質量14.33mg、合材塗布量5.96mg/cm2になった。
【0045】
(工程8)配合Cのスラリを真空環境下で脱泡した後、脱泡したスラリを、工程4のアルミ箔と同じアルミ箔の凹凸の上に塗工した後1次乾燥して合材層を備えた正極箔C1を作製した。次に、その正極箔C1の一部を真空高温環境下で2次乾燥した後、直径17.5mmで打ち抜いて正極箔質量を測定したところ、25.4mgであったので、アルミ箔質量10.36mg、合材質量15.04mg、合材塗布量6.25mg/cm2になった。
(工程9)配合Cのスラリを真空環境下で脱泡した後、脱泡したスラリを、工程5のアルミ箔と同じアルミ箔の上に塗工した後1次乾燥して合材層を備えた正極箔C2を作製した。次に、その正極箔C2の一部を真空高温環境下で2次乾燥した後、直径17.5mmで打ち抜いて正極箔質量を測定したところ、23.3mgであったので、アルミ箔質量9.82mg、合材質量13.48mg、合材塗布量5.60mg/cm2になった。
以上の内容をまとめた表を表2に示す。
【0046】
【0047】
次に、以下の手順で実施例1~4を作製する一方、各合材密度を求めた。正極箔の厚さは、ロール状の正極箔の幅方向の位置が互いに異なる3点、例えば、搬送方向に向かって右側、左側、中央の3点で測定した値を平均したものである。なお、プレスする時の温度は、22.5±7.5℃、最大荷重は、2tである。また、2次乾燥する時の温度は、120℃、真空度は、200Pa未満、時間は、16時間である。
【0048】
(工程10)正極箔A1を1回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して実施例1を作製した。次に、その正極箔A1の厚さを測定したところ、43.3μmであったので、合材厚さ27.3μm、合材密度2.17g/ccになった。
(工程11)正極箔A1を2回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して実施例2を作製した。次に、その正極箔A1の厚さを測定したところ、38.0μmであったので、合材厚さ22.0μm、合材密度2.70g/ccになった。
(工程12)正極箔C1を1回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して実施例3を作製した。次に、その正極箔C1の厚さを測定したところ、44.7μmであったので、合材厚さ28.7μm、合材密度2.18g/ccになった。
(工程13)正極箔C1を2回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して実施例4を作製した。次に、その正極箔C1の厚さを測定したところ、38.3μmであったので、合材厚さ22.3μm、合材密度2.80g/ccになった。
【0049】
次に、以下の手順で比較例1~14を作製する一方、各合材密度を求めた。
(工程14)正極箔A1を1回もプレスせずに真空高温環境下で2次乾燥して比較例1を作製した。合材密度は、1.65g/ccになった。
(工程15)正極箔A2を1回もプレスせずに真空高温環境下で2次乾燥して比較例2を作製した。合材密度は、1.57g/ccになった。
(工程16)正極箔A2を1回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して比較例3を作製した。合材密度は、2.15g/ccになった。
(工程17)正極箔A2を2回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して比較例4を作製した。合材密度は、2.65g/ccになった。
【0050】
(工程18)正極箔B1を1回もプレスせずに真空高温環境下で2次乾燥して比較例5を作製した。合材密度は、1.81g/ccになった。
(工程19)正極箔B1を1回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して比較例6を作製した。合材密度は、2.21g/ccになった。
(工程20)正極箔B1を2回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して比較例7を作製した。合材密度は、2.77g/ccになった。
【0051】
(工程21)正極箔B2を1回もプレスせずに真空高温環境下で2次乾燥して比較例8を作製した。合材密度は、1.75g/ccになった。
(工程22)正極箔B2を1回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して比較例9を作製した。合材密度は、2.26g/ccになった。
(工程23)正極箔B2を2回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して比較例10を作製した。合材密度は、2.84g/ccになった。
【0052】
(工程24)正極箔C1を1回もプレスせずに真空高温環境下で2次乾燥して比較例11を作製した。合材密度は、1.48g/ccになった。
(工程25)正極箔C2を1回もプレスせずに真空高温環境下で2次乾燥して比較例12を作製した。合材密度は、1.46g/ccになった。
(工程26)正極箔C2を1回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して比較例13を作製した。合材密度は、2.10g/ccになった。
(工程27)正極箔C2を2回プレスした後、真空高温環境下で2次乾燥して比較例14を作製した。合材密度は、2.71g/ccになった。
以上の内容をまとめた表を表3に示す。
【0053】
【0054】
<合材層体積抵抗および界面抵抗の測定>
電極抵抗測定システムRM2610(HIOKI)を使用し、複数のプローブを合材層の表面に同時に接触させて合材層体積抵抗および界面抵抗を測定した。実施例1の合材層体積抵抗は0.709Ωcmであり、界面抵抗は0.0243Ωcm2であった。実施例2の合材層体積抵抗は0.884Ωcmであり、界面抵抗は0.0098Ωcm2であった。実施例3の合材層体積抵抗は0.446Ωcmであり、界面抵抗は0.0160Ωcm2であった。実施例4の合材層体積抵抗は0.487Ωcmであり、界面抵抗は0.0150Ωcm2であった。
【0055】
また、合材層体積抵抗の目標範囲として設定した0.9Ωcm以下という条件、および界面抵抗の目標範囲として設定した0.03Ωcm2以下という条件を同時に満たすものは、実施例1~4以外に比較例1および比較例11があったが、比較例1は、正極箔A1を1回もプレスせずに作製したものであり、比較例11は、正極箔C1を1回もプレスせずに作製したものであるので、合材密度が2.0g/cc未満であった。
【0056】
この結果から、実施例1~4と同様にリチウムイオン二次電池の正極およびその製造方法を構成することによって、体積エネルギ密度を大きくし、合材層体積抵抗および界面抵抗を十分に小さくすることができるのは明らかである。
【0057】
以上、本発明について実施例1~4を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記記載に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしても良いのはもちろんである。
本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池の正極および本発明の第3実施形態のリチウムイオン二次電池の正極の製造方法は、体積エネルギ密度を大きくし、合材層体積抵抗および界面抵抗を十分に小さくすることができるという効果があり、本発明の第2実施形態のリチウムイオン二次電池は、大出力にすることができるという効果があるので、産業上有用である。
乾燥後の合材層に対する質量比がCNT1.0~3.0%、およびバインダ0.5~2.0%になるように、前記CNT入りの導電塗料と前記バインダ入りのバインダ溶液と溶媒とを、リチウム金属酸化物を使用した活物質と混錬してスラリを作製する第1工程と、
前記スラリを真空環境下で脱泡する第2工程と、
脱泡した前記スラリを、少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたアルミ箔の前記凹凸の上に塗工して前記合材層を備えた正極箔を作製する第3工程と、
前記正極箔を2.6~2.9g/ccの密度になるまでプレスする第4工程と、
プレスした前記正極箔を真空高温環境下で乾燥する第5工程と、
乾燥した前記正極箔を所定の寸法に切断する第6工程と、を含み、
前記CNTは、外径が8.0~12.0nmであるリチウムイオン二次電池の正極の製造方法。
即ち、本発明の第1実施形態は、少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたアルミ箔と、アルミ箔の凹凸の上に形成された合材層と、を有し、合材層は、密度が2.6~2.9g/ccであり、リチウム金属酸化物、合材層に対する質量比が1.0~3.0%のCNT、および0.5~2.0%のバインダを含み、CNTは、外径が8.0~12.0nmであるリチウムイオン二次電池の正極を提供するものである。
また、本発明の第3実施形態は、乾燥後の合材層に対する質量比がCNT1.0~3.0%、およびバインダ0.5~2.0%になるように、CNT入りの導電塗料とバインダ入りのバインダ溶液と溶媒とを、リチウム金属酸化物を使用した活物質と混錬してスラリを作製する第1工程と、スラリを真空環境下で脱泡する第2工程と、脱泡したスラリを、少なくとも一方の面にエッチングによる凹凸が形成されたアルミ箔の凹凸の上に塗工して合材層を備えた正極箔を作製する第3工程と、正極箔を2.6~2.9g/ccの密度になるまでプレスする第4工程と、プレスした正極箔を真空高温環境下で乾燥する第5工程と、乾燥した正極箔を所定の寸法に切断する第6工程と、を含み、CNTは、外径が8.0~12.0nmであるリチウムイオン二次電池の正極の製造方法を提供するものである。