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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009938
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20230113BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G01L9/00 303P
H01L29/84 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113620
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】521515735
【氏名又は名称】MMIセミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永友 康貴
(72)【発明者】
【氏名】笠井 隆
(72)【発明者】
【氏名】森原 大輔
【テーマコード(参考)】
2F055
4M112
【Fターム(参考)】
2F055BB01
2F055CC02
2F055DD04
2F055EE13
2F055FF38
2F055GG11
2F055HH11
4M112AA01
4M112BA01
4M112CA01
4M112CA03
4M112CA04
4M112CA13
4M112CA14
4M112EA11
4M112FA20
4M112GA01
(57)【要約】
【課題】ピエゾ抵抗式の圧力センサにおいて、耐塵埃性を向上させるとともに、外気導入孔の配置レイアウトの制約を無くすことのできる技術を提供する。
【解決手段】ピエゾ抵抗素子を備える圧力センサ素子と、前記圧力センサ素子を収容するとともに、前記圧力センサ素子の前記ピエゾ抵抗素子が配置される空間に気体を導入するための外気導入孔を備える筐体と、前記外気導入孔から導入された前記気体が前記ピエゾ抵抗素子に向けて流れる流路を確保した態様で前記ピエゾ抵抗素子を含む領域を非接触的に覆うように、前記筐体内に配置されるカバープレートと、外部配線と接続される電極と、を有する、圧力センサ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピエゾ抵抗素子を備える圧力センサ素子と、
前記圧力センサ素子を収容するとともに、前記圧力センサ素子の前記ピエゾ抵抗素子が配置される空間に気体を導入するための外気導入孔を備える筐体と、
前記外気導入孔から導入された前記気体が前記ピエゾ抵抗素子に向けて流れる流路を確保した態様で前記ピエゾ抵抗素子を含む領域を非接触的に覆うように、前記筐体内に配置されるカバープレートと、
外部配線と接続される電極と、
を有する、圧力センサ。
【請求項2】
前記外気導入孔は、前記筐体における前記ピエゾ抵抗素子を含む領域と対向する位置に設けられ、
前記カバープレートは、前記外気導入孔と前記ピエゾ抵抗素子を含む領域とを遮るように配置される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記カバープレートは、少なくとも表面が金属で構成されている、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記カバープレートは、グランドと接続される前記電極又は電源と接続される前記電極に、電気的に接続される、
ことを特徴とする、請求項3に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記カバープレートが導電性を有する樹脂により前記筐体に実装されている、
ことを特徴とする、請求項4に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記電極はリードフレームとして設けられており、
前記リードフレームは、少なくとも前記筐体内の前記圧力センサ素子が配置される領域においては、前記ピエゾ抵抗素子から見て前記カバープレートとは反対側に位置するように設けられる、
ことを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記リードフレームは少なくとも前記筐体内の前記圧力センサ素子が配置される領域においては前記筐体の内壁に埋設されることにより前記内壁表面に露出しない、
ことを特徴とする、請求項6に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、圧力センサとして、ダイアフラム等の感圧素子により検知されたひずみを、ピエゾ抵抗等により電気信号に変換することで圧力を検知する方式が知られている。また、このような方式による感圧ユニットをパッケージングするとともに、パッケージに設けた外気導入孔を介して感圧素子を外気(圧力測定対象の気体又は大気圧取得用の外気)に曝す構造が公知となっている(例えば、特許文献1、2など)。また、このような感圧ユニットを、圧力伝達媒体を兼ねたシリコーンオイルなどで液封する構造も知られている(例えば、特許文献3など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-185214号公報
【特許文献2】米国特許第10654709号明細書
【特許文献3】特許第6820247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1、2において開示されているような圧力センサによると、感圧素子が外気導入孔から導入された外気に曝されることになるため、外気に含まれる塵埃による悪影響を受けやすい構造となっている。特に、感圧素子と外気導入孔とが対面するような配置になっているとその悪影響の度合いが大きくなるため、このような配置を避けようとすると、外気導入孔の配置に制約が生じることになる。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ピエゾ抵抗式の圧力センサにおいて、耐塵埃性を向上させるとともに、外気導入孔の配置レイアウトの制約を無くすことのできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明は、以下の構成を採用する。即ち、
ピエゾ抵抗素子を備える圧力センサ素子と、
前記圧力センサ素子を収容するとともに、前記圧力センサ素子の前記ピエゾ抵抗素子が配置される空間に気体を導入するための外気導入孔を備える筐体と、
前記外気導入孔から導入された前記気体が前記ピエゾ抵抗素子に向けて流れる流路を確保した態様で前記ピエゾ抵抗素子を含む領域を非接触的に覆うように、前記筐体内に配置されるカバープレートと、
外部配線と接続される電極と、
を有する、圧力センサである。
【0007】
ここで、圧力センサ素子は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサチップなどであってもよい。また、外気導入孔から導入される気体は、圧力測定対象としての気体であってもよいし、大気圧取得用の外気であってもよい。このような構成であると、外気に含まれる塵埃に対する耐性を向上させた圧力センサを提供することが可能になる。
【0008】
また、前記外気導入孔は、前記筐体における前記ピエゾ抵抗素子を含む領域と対向する位置に設けられ、前記カバープレートは、前記外気導入孔と前記ピエゾ抵抗素子を含む領域とを遮るように配置されるものであってもよい。
【0009】
このような構成であると、外気導入孔がピエゾ抵抗素子と対面する位置に設けられる構造であっても、外気導入孔から導入された気体は、圧力センサ素子のピエゾ抵抗素子を備える側の面に直接吹き付けることなくカバープレートを迂回して流れることになるため、外気導入孔の配置レイアウトの制約を無くすことができる。
【0010】
また、前記カバープレートは、少なくとも表面が金属で構成されているものであってもよい。即ち、カバープレートは金属製のメタルプレートであってもよいし、樹脂のプレートの表面をメッキなどにより金属でコーティングしたものであってもよい。
【0011】
このような構成であると、例えば圧力センサが急激な温度変化に晒され、結露が発生するような状況であっても、圧力センサ素子表面(ピエゾ抵抗素子が配置される面)ではなく、カバープレート表面に結露が生じるため、結露から圧力センサ素子を保護することができる。
【0012】
また、前記カバープレートは、グランドと接続される前記電極又は電源と接続される前記電極に、電気的に接続されるものであってもよい。電極は、例えばリードフレームのインナーリード或いは圧力センサ素子が搭載される電極パッドであってもよい。このような構成であると、カバープレートとグランド(又は電源)電極とが同電位となり、電気的なノイズの影響を抑止することができる。また、帯電した塵埃を電気的にトラップ(吸着)することができ、圧力センサ素子にこのような塵埃が付着する可能性を低減できるため、より耐塵埃性を向上させることができる。なお、例えば、前記カバープレートが導電性を有する樹脂により前記筐体に実装されていることにより、上記構成が実現されていてもよい。
【0013】
また、前記電極はリードフレームとして設けられており、前記リードフレームは、少なくとも前記筐体内の前記圧力センサ素子が配置される領域においては、前記リードフレームは、少なくとも前記筐体内の前記圧力センサ素子が配置される領域においては、前記ピエゾ抵抗素子から見て前記カバープレートとは反対側に位置するように設けられる構成であってもよい。このような構成であると、導電性を有するカバープレートを電磁シールドとしても効果的に機能させることが可能になる。
【0014】
また、前記リードフレームは、少なくとも前記筐体内の前記圧力センサ素子が配置される領域においては、前記筐体の内壁に埋設されることにより前記内壁表面に露出しない、ものであってもよい。このような構成によると、前記圧力センサ素子を筐体にダイボンディングする際に、ダイボンド樹脂と筐体との密着性が増し、圧力センサ素子内部空洞からの漏気耐性を向上させることができる。
【0015】
なお、上記構成の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ピエゾ抵抗式の圧力センサにおいて、耐塵埃性を向上させるとともに、外気導入孔の配置レイアウトの制約を無くすことのできる技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1Aは、本発明の実施例1に係る圧力センサの外観を示す上面図である。図1Bは、実施例1に係る圧力センサの内部構造を示す第1の概略断面図である。図1Cは、実施例1に係る圧力センサの内部構造を示す第2の概略断面図である。
図2図2は、実施例1に係る圧力センサ内に導入された気体の流れを示す説明図である。
図3図3は、本発明の実施例1に係る圧力センサの内部構造を示す透過上面図である。
図4図4Aは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第1の図である。図4Bは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第2の図である。図4Cは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第3の図である。図4Dは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第4の図である。図4Eは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第5の図である。図4Fは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第6の図である。
図5図5Aは、実施例1の第1の変形例に係る圧力センサの概略上面図である。図5Bは、実施例1の第1の変形例に係る圧力センサの内部構造を示す概略断面図である。
図6図6Aは、実施例1の第2の変形例におけるカバープレートを示す上面図である。図6Bは、実施例1の第2の変形例におけるカバープレートを示す断面図である。図6Bは、実施例1の第2の変形例に係る圧力センサの内部構造を示す概略断面図である。
図7図7Aは、本発明の実施例2に係る圧力センサの外観を示す上面図である。図7Bは、実施例2に係る圧力センサの内部構造を示す第1の概略断面図である。図7Cは、実施例2に係る圧力センサの内部構造を示す第2の概略断面図である。
図8図8は、本発明の実施例2に係る圧力センサの内部構造を示す透過上面図である。
図9図9Aは、実施例2の変形例に係る圧力センサの外観を示す上面図である。図9Bは、実施例2の変形例に係る圧力センサ内部構成を示す概略断面図である。図9Cは、実施例2の変形例に係る圧力センサの内部構造を示す透過上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<適用例>
以下に本発明の適用例の概要について一部の図面を用いて説明する。本発明は図1に示すような圧力センサに適用することができる。図1Aは、適用例に係る圧力センサ1の外観を示す上面図である。図1B図1Aに示す圧力センサ1のAA断面を示す概略断面図である。図1C図1Aに示す圧力センサ1のBB断面を示す概略断面図である。なお、図1Aにおいては、外部配線との接続端子であるリードのアウターリード部分が省略されている。
【0019】
図1A図1B図1Cに示すように、圧力センサ1は概略、ステム部30及びポートカバー部40からなるパッケージ内に、MEMSセンサチップ10及びMEMSセンサチップ10と接続されるASIC(Application Specific Integrated Circuit)20とを収容した構成となっている。ASIC20は、圧力センサ1に必須ではなく、センササイズを小さくしたり低コストにしたりしたい場合にはMEMSセンサチップ10のみが含まれる形態でもよい。ASIC20には、電源回路、信号調整回路およびアナログデジタル変換回路などが内蔵されており、ASIC20とMEMSセンサチップ10と同一パッケージ内に含まれると、信号や電源の取り扱いのし易さや低ノイズ化の観点で優位である。なお、本適用例におけるステム部30及びポートカバー部40によって形成されるパッケージが、本発明の筐体に該当する。
【0020】
MEMSセンサチップ10には、圧力基準室11や、ダイアフラム12、ダイアフラム12の周縁に沿って設けられた複数のピエゾ抵抗素子13(図1においては省略)を含む。ピエゾ抵抗素子13は、ダイアフラム12が、圧力基準室11内の圧力と外部の圧力の差によって変形した場合に、この変形に応じた電気信号を発生可能なセンサの一形態である。本適用例では、ダイアフラム12の周縁に沿って等間隔に4つのピエゾ抵抗素子13が設けられる。なお、これに限らずMEMSセンサチップ10は求められる精度に応じて任意の数のピエゾ抵抗素子13を備える構成であってもよい。
【0021】
圧力基準室11は、ステム部30に設けられる基準圧導入孔31と連通しており、基準圧導入孔31から基準圧力となる外気が導入される。一方、ポートカバー部40に設けられた導圧孔41からは、圧力測定対象となる気体がパッケージ内部に導入される。即ち、本適用例に係る圧力センサは、基準圧導入孔31から導入される外気を基準圧力とした差圧センサである。なお、本適用例においては導圧孔41が本発明に係る外気導入孔に相当する。
【0022】
ここで、図1B図1Cに示すように、導圧孔41とMEMSセンサチップ10の表面(即ち、ピエゾ抵抗素子13の設けられる側)とは、対向する位置関係に配置されているものの、両者を遮る位置にカバープレート50が設けられている。ここで、カバープレート50は例えば導電性の金属素材により形成される板状部材である。
【0023】
このように、本適用例に係る圧力センサ1はカバープレート50を備えていることにより、導圧孔41からパッケージ内部に導入された気体はMEMSセンサチップ10表面に直接吹き付けることがなく、カバープレート50を迂回する気流でパッケージ内を移動する。図2に、導圧孔41から導入された気体の流れを白矢印で示す。導圧孔41から流入した気体は、カバープレート50とポートカバー部40の狭い空間を通り、ついでカバープレート50の側面とステム部30の側壁の間を通り、MEMSセンサチップ10に到達する。迂回し、狭い空間を通ることで気体に含まれる塵埃がMEMSセンサチップ10に付着する可能性が低くなる。
【0024】
以上のように、本適用例に係る圧力センサ1によれば、導圧孔41とMEMSセンサチップ10の表面とが、対向する位置関係で配置された場合であっても、塵埃の悪影響を抑制することができる。即ち、カバープレート50が設けられることにより、導圧孔41がどこの位置にあったとしても、カバープレート50により迂回した流路となるため、導圧孔41の配置を塵埃の悪影響を考えずに自由にレイアウトすることが可能になる。また、カバープレート50を金属素材により形成することにより、圧力センサ1が急激な温度変化に晒され、結露が発生するような状況であっても、MEMSセンサチップ10ではなく、カバープレート50に結露が生じるため、結露からMEMSセンサチップ10を保護することができる。金属素材は熱伝導率がよく、樹脂で形成されたステム部30よりも先に結露が発生するためである。
【0025】
<実施例1>
以下に、各図面(上記の適用例で一旦説明した図も含む)を順次参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいてさらに詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている具体的構成は、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
(圧力センサの構成)
本実施例に係る圧力センサ1は、図1A図1B図1Cに示すように、ステム部30及びポートカバー部40からなる矩形のパッケージ内に、MEMSセンサチップ10及びMEMSセンサチップ10と接続されるASIC20とを収容した構成となっている。即
ち、適用例において説明した圧力センサ1と同様の構成を有するため、適用例において説明した内容については、詳細な説明は省略する。また、本明細書では同一の構成要素については同一の符号を用いて説明を行う。
【0027】
MEMSセンサチップ10及びASIC20はリードフレーム上にダイボンド樹脂60を用いたダイボンディングによって設置される。図3に、圧力センサ1のポートカバー部40及びカバープレート50を透過させた状態の上面図を示す。圧力センサ1は複数のリード33、MEMSセンサチップ10(及びASIC20)をダイボンディングする電極パッド32を備えるリードフレーム(全体は図示せず)を用いて形成される。
【0028】
図3に示すように、MEMSセンサチップ10は、表面側にダイアフラム12の周縁に沿って設けられた複数のピエゾ抵抗素子13及び、複数の電極パッド14を備えている。また、ASIC20もその表面側に複数の電極パッド21を備えており、MEMSセンサチップ10の電極パッド14とASIC20の電極パッド21の一部が導電性のワイヤー71で接続される。また、ASIC20の電極パッド21は、外部配線との接続端子となるリード33(より詳細にはそのインナーリード部分)や、ダイパッド及びリードを兼ねる電極パッド32とワイヤー71で接続されている。なお、ワイヤー71と各電極との接続はワイヤーボンディングによって行われる。
【0029】
また、図1B図1C及び図3において示すように、矩形のパッケージの一方の対向する両辺(図3における左右方向)には複数のリード33が設けられており、他方の対向する両辺(図3における上下方向)の近傍には、カバープレート50を保持するための接着剤61が塗布される領域が設けられる。
【0030】
そして、図1Bに示すように、カバープレート50は接着剤61で接着されるとともに、MEMSセンサチップ10(及びASIC20)の表面よりも高い位置に支持される。このような構成により、MEMSセンサチップ10表面とカバープレート50との間に空間を設けることができ、MEMSセンサチップ10表面をカバープレート50で非接触的に覆うことが可能になる。
【0031】
以上のような本実施例に係る圧力センサ1によれば、カバープレート50は接着剤61で固定されている二辺と、接着されていない二辺を備えるため、接着されている二辺でパッケージに固定されるとともに、圧力測定対象の気体が接着されていない二辺の空間からMEMSセンサチップ10に到達することができる。また、このような空間があることにより、ASIC20とリード33(及びMEMSセンサチップ10)とを接続するワイヤー71を配することができる。このように、カバープレート50において、接着剤61で固定される辺とワイヤー71を配する辺とが別々の辺であることで、作製時に接着剤61がワイヤー71と接続するリード33に付着する可能性が低くなり、生産性も良好となる。
【0032】
(圧力センサの製造フロー)
なお、以下では、図4A乃至図4Fに基づいて、本実施例に係る圧力センサ1の製造の流れを説明する。図4Aは、圧力センサ1の製造フローにおいて、電極パッド32及びリード33を備えるリードフレームと、基準圧導入孔31を備えるステム部30とを結合した状態を示す概略断面図である。このような状態のリードフレームの電極パッド32に、ダイボンド樹脂60を用いて、MEMSセンサチップ10及びASIC20を実装(ダイボンディング)するとともに、電極パッド14、電極パッド21、リード32、33に対してワイヤー71によるワイヤーボンディングを行い、これらを接続する(図4B)。
【0033】
その後、ステム部30の接着剤塗布領域に接着剤61を塗布し(図4C)、接着剤61
によりカバープレート50をステム部30に固定する(図4D)。さらに、ステム部30の上端近傍にカバーボンド樹脂62を塗布し、カバーボンド樹脂62により、導圧孔41を備えるポートカバー部40をステム部30に結合させるとともに、パッケージを封止する。なお、カバーボンド樹脂62は、気体の漏気を防ぐためにポートカバー部40とステム部30を完全に封止する必要がある。これに対し、接着剤61は、固定および電気的接続を得るためのものであるため、漏気を気にする必要がない。そして、リードフレームを個片化することにより、圧力センサ1チップが完成する。
【0034】
(変形例1)
なお、上記実施例1では、導圧孔41がMEMSセンサチップ10の直上(即ち、両者が対向する箇所)に設けられている例を示したが、導圧孔41が設けられる位置はポートカバー部40のどこであっても構わない。図5に、導圧孔41の位置を変更した実施例1の変形例に係る圧力センサ2を示す。図5Aは圧力センサ2の概略上面図(図5Aにおけるリードの図示は省略)、図5B図5AのBB断面を示す概略断面図である。図5に示すように、カバープレート50がMEMSセンサチップ10の表面側を覆っているため、導圧孔41はポートカバー部40のどこに配置されていてもよい。
【0035】
(変形例2)
また、上記実施例1においては、カバープレート50は単純な平板であったが、カバープレートはこれ以外の形状を有するものであってもよい。図6に、実施例1とは異なる形状のカバープレート55、及びこれを適用した圧力センサ3を示す。図6Aは、本変形例に係るカバープレート55の上面図であり、図6B図6AのAA断面を示す断面図である。また、図6Cは、カバープレート55を適用した圧力センサ3の概略断面図である。
【0036】
図6Bに示すように、カバープレート55は、図面上下方向の両端付近においてそれぞれ二回屈曲することにより、全体として幅広の凸字状の形状を有している。このような形状であることにより、図6Cに示すように、カバープレート55と、MEMSセンサチップ10及びASIC20の表面との間の空間を広く確保することができる。そのため、ASIC20とリード33(及びMEMSセンサチップ10)とを接続するワイヤー71がプレートに接触する(即ち短絡する)リスクを軽減することができる。これにより、圧力センサ製造時の生産性向上や、使用時の予期せぬ電気的短絡故障のリスク軽減を図ることができる。
【0037】
<実施例2>
次に、図7及び図8に基づいて、本発明の第二の実施例に係る圧力センサ4について説明する。圧力センサ4は、実施例1の圧力センサ1と多くの構成を共通にしているため、そのような構成については同一の符号を付し、改めての説明は省略する。
【0038】
図7Aは、実施例2に係る圧力センサ4の外観を示す上面図である。図7B図7Aに示す圧力センサ4のAA断面を示す概略断面図である。図7C図7Aに示す圧力センサ4のBB断面を示す概略断面図である。なお、図7Aにおいては、外部配線との接続端子であるリードのアウターリード部分が省略されている。また、図8は、圧力センサ4のポートカバー部40及びカバープレート50を透過させた状態の上面図である。
【0039】
本実施例に係る圧力センサ4についても、図7A図7B図7Cに示すようにステム部30及びポートカバー部40からなる矩形のパッケージ内に、MEMSセンサチップ10及びMEMSセンサチップ10と接続されるASIC20とを収容した構成となっている。MEMSセンサチップ10が圧力基準室11、ダイアフラム12、ピエゾ抵抗素子13を備え、ピエゾ抵抗効果により圧力測定を行うことも実施例1と同様である。
【0040】
図7B及び図8に示すように、本実施例に係る圧力センサ4は、リードフレームにおける電極パッド34が、ステム部30のリード33が形成されていない側の両辺近傍まで延在している点において、実施例1の圧力センサ1と異なっている。より具体的には、MEMSセンサチップ10及びASIC20をダイボンディングするための領域のみならず、カバープレート50を固定するための接着剤塗布領域の全体が含まれるように、電極パッド34が設けられている。
【0041】
そして、図7Bに示すように、本実施例に係るカバープレート50は、電極パッド34に対して塗布される導電性接着剤63によって、電極パッド34を介してステム部30に固定される。このような構造であると、カバープレート50は導電性を有する金属素材により形成されていることから、カバープレート50と電極パッド34(即ちリードフレーム)とが同電位となる。なお、電極パッド34は、グランドまたは電源に接続される電極である。
【0042】
このように、カバープレート50とリードフレームが同電位となることにより、MEMSセンサチップ10及びASIC20を覆う位置に配置されるカバープレート50が電気的なノイズに対するシールドとして機能する。これにより、MEMSセンサチップ10及びASIC20への電気的なノイズの影響を低減することができる。
【0043】
また、カバープレート50とリードフレームが同電位となることにより、導圧孔41から導入される気体に含まれる塵埃について、帯電した塵埃をカバープレート50により電気的にトラップ(吸着)することができる。これにより、MEMSセンサチップ10表面(即ち、ピエゾ抵抗素子13を含む領域)に到達する塵埃を削減することができ、より高い耐塵埃性を備える圧力センサとすることができる。また、MEMSセンサチップ10が電気的に保護されているため、圧力センサ4のESD耐性も向上する。グランドまたは電源に接続された電極は外部からのサージが入った場合の耐性が高く、静電気などによる故障を回避しやすい。
【0044】
即ち、以上のような構成を備える本実施例に係る圧力センサ4によれば、MEMSセンサチップ10への電気的ノイズの影響を低減するとともに、耐塵埃性をより向上させることができる。
【0045】
(変形例)
なお、上記実施例2に係る圧力センサ4では、MEMSセンサチップ10及びASIC20は、電極パッド34上にダイボンド樹脂60で実装(ダイボンディング)される構成であったが、MEMSセンサチップ10及びASIC20は他の態様で実装されるのであっても構わない。図9に、このような実施例2の変形例に係る圧力センサ5を示す。
【0046】
図9Aは、実施例2の変形例に係る圧力センサ5の外観を示す上面図である。図9B図9Aに示す圧力センサ5のAA断面を示す概略断面図である。図9Cは、圧力センサ5のポートカバー部40及びカバープレート50を透過させた状態の上面図である。
【0047】
図9B及び図9Cに示すように、本変形例に係る圧力センサ5においては、リードフレーム(全体は図示せず)の電極パッド36の配置が、実施例2の電極パッド34とは異なっている。具体的には、MEMSセンサチップ10及びASIC20の配置される領域においては、電極パッド36がステム部35内に埋設された構造となっている。即ち、MEMSセンサチップ10及びASIC20は、電極パッド36に実装されるのではなく、ダイボンド樹脂60により、ステム部35の内壁にダイボンディングされている。
【0048】
このような圧力センサ5の構成によれば、電極パッドにダイボンディングするのに比べ
て、ダイボンド樹脂60とステム部35(即ちパッケージ)との密着性が向上し、MEMSセンサチップ10の漏気特性(耐圧性能)を向上させることができる。
【0049】
<その他>
上記実施例の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。例えば、実施例1に係る圧力センサ1に、実施例2の変形例の構成(即ち、リードフレームの電極パッドをステム部に埋設する)構成を採用することもできる。
【0050】
また、上記各例においては、カバープレートは金属製のメタルプレートであったが、カバープレートは樹脂製の部材としてもよい。また、樹脂のプレートにメッキなどで金属をコーティングするのであってもよい。
【0051】
また、上記各例においては、カバープレートはMEMSセンサチップ10及びASIC20の全体を覆う構成となっていたが、MEMSセンサチップ10表面のピエゾ抵抗素子13を含む領域をカバーできてさえいれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、ASIC20を覆わないような構成とすることも可能である。
【0052】
また、上記各例ではリードフレームのリードを外部配線との接続端子とする構成であったが、外部配線と接続可能に構成されていれば、必ずしもリードフレームを用いる必要はない。
【0053】
また、上記各例では圧力センサは差圧センサを例として説明したが、他の方式、即ち絶対圧センサやゲージ圧センサにも本発明を適用することは当然に可能である。
【0054】
<付記1>
ピエゾ抵抗素子(13)を備える圧力センサ素子(10)と、
前記圧力センサ素子を収容するとともに、前記圧力センサ素子の前記ピエゾ抵抗素子が配置される空間に気体を導入するための外気導入孔(41)を備える筐体(40、30)と、
前記外気導入孔から導入された前記気体が前記ピエゾ抵抗素子に向けて流れる流路を確保した態様で前記ピエゾ抵抗素子を含む領域を非接触的に覆うように、前記筐体内に配置されるカバープレート(50、55)と、
外部配線と接続される電極(32、33、34、36)と、
を有する、圧力センサ(1、2、3、4、5)。
【符号の説明】
【0055】
1、2、3、4、5・・・圧力センサ
10・・・MEMSセンサチップ
11・・・圧力基準室
12・・・ダイアフラム
13・・・ピエゾ抵抗素子
14、21、32、34、36・・・電極パッド
20・・・ASIC
30、35・・・ステム部
31・・・基準圧導入孔
33・・・リード
40・・・ポートカバー部
41・・・導圧孔
50、55・・・カバープレート
60・・・ダイボンド樹脂
61・・・接着剤
62・・・カバーボンド樹脂
63・・・導電性接着剤
71・・・ワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9