(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099385
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】光学系およびそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/02 20060101AFI20230706BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20230706BHJP
【FI】
G02B13/02
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000012
(22)【出願日】2022-01-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】仲田 丈晴
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA02
2H087MA07
2H087MA09
2H087NA07
2H087PA09
2H087PA10
2H087PA11
2H087PA16
2H087PB14
2H087PB15
2H087PB16
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA12
2H087QA14
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA37
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA32
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】良好な光学性能に加えて、小型化、軽量化が可能な複数の合焦群と防振群を備えた光学系を提供する。
【解決手段】光学系は、物体側より順に配置された、正の第1レンズ群L1、負の第1フォーカスレンズ群LF1、後群Rからなる。後群は、像振れ補正に際して光軸に垂直な方向の成分を含む方向へ移動する負の屈折力の防振群LIS、正の第2フォーカスレンズ群LF2、最も像側に配置された最終レンズ群を含む。無限遠から最至近へのフォーカシングに際して、第1レンズ群及び最終レンズ群は不動であり、第1フォーカスレンズ群は像側へ移動し、第2フォーカスレンズ群は物体側へ移動する。最も像側に配置されたレンズ成分は負の屈折力を有する。第1レンズ群におけるレンズ間隔の最大値LD1、無限遠合焦時における最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上での距離LDは所定の条件式を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第1フォーカスレンズ群、複数のレンズ群を含む後群からなり、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する光学系であって、
前記後群は、像振れ補正に際して光軸に垂直な方向の成分を含む方向へ移動する負の屈折力の防振群、正の屈折力の第2フォーカスレンズ群、最も像側に配置された最終レンズ群を含み、
無限遠から最至近へのフォーカシングに際して、前記第1レンズ群及び前記最終レンズ群は不動であり、前記第1フォーカスレンズ群は像側へ移動し、前記第2フォーカスレンズ群は物体側へ移動し、
最も像側に配置されたレンズ成分は負の屈折力を有し、
前記第1レンズ群におけるレンズ間隔の最大値をLD1、無限遠合焦時における最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上での距離をLDとするとき、
0.03<LD1/LD<0.25
なる条件式を満足することを特徴とする光学系。
【請求項2】
無限遠合焦時における最も像側のレンズ面から像面までの光軸上での距離をBFとするとき、
0.2<LD1/BF<2.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記光学系の焦点距離をfとするとき、
0.02<LD1/f<0.22
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記第1レンズ群の焦点距離をfL1、前記光学系の焦点距離をfとするとき、
0.2<fL1/f<1.4
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記レンズ成分の焦点距離をfLNとするとき、
-0.95<fLN/f<-0.13
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項6】
無限遠合焦時における前記第1レンズ群と前記第1フォーカスレンズ群の合成焦点距離をfL1LF1、前記光学系の焦点距離をfとするとき、
0.4<fL1LF1/f<2.8
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項7】
前記防振群の焦点距離をfLIS、前記光学系の焦点距離をfとするとき、
-0.77<fLIS/f<-0.21
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項8】
前記光学系の焦点距離をfとするとき、
LD/f<1.5
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項9】
無限遠合焦時における最も像側のレンズ面から像面までの光軸上での距離をBF、前記光学系の焦点距離をfとするとき、
BF/f<0.3
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項10】
前記第1レンズ群を構成するレンズ成分のレンズ面のうち物体側へ凸であるレンズ面は、非球面形状を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項11】
前記第1レンズ群において最も物体側に配置されたレンズ成分は、正の屈折力を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項12】
前記後群は、物体側から像側へ順に配置された、前記防振群であるレンズ群、前記第2フォーカスレンズ群、前記最終レンズ群からなることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項13】
前記後群は、物体側から像側へ順に配置された、レンズと前記防振群とを備えるレンズ群、前記第2フォーカスレンズ群、前記最終レンズ群からなることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項14】
前記後群は、物体側から像側へ順に配置された、前記第2フォーカスレンズ群、前記最終レンズ群からなり、前記防振群は、前記最終レンズ群の最も物体側に配置されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光学系と、該光学系によって形成される像を受光する撮像素子を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系に関し、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ、車載カメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
無限遠から最至近へのフォーカシングに際して移動する複数の合焦群と、像ぶれを補正するための防振群を備えた望遠レンズにおいては、良好な光学性能に加えて、レンズ系全体の小型化、軽量化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、複数のフォーカス群と、防振群を備えた望遠レンズを開示している。特許文献1に開示されている望遠レンズでは、軸上光束の大きい最も物体側に配置されたレンズ群において、外径の大きい各レンズ成分が密に配置されている。このため、最も物体側に配置されたレンズ群の軽量化が難しい。すなわち、レンズ系全体の総重量に対して最も物体側に配置されたレンズ群の重量が占める割合が高い傾向にあるため、レンズ系全体の軽量化が難しい。
【0005】
本発明は、良好な光学性能に加えて、小型化、軽量化が可能な、複数の合焦群と防振群を備えた光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光学系は、物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第1フォーカスレンズ群、複数のレンズ群を含む後群からなり、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する光学系であって、前記後群は、像振れ補正に際して光軸に垂直な方向の成分を含む方向へ移動する負の屈折力の防振群、正の屈折力の第2フォーカスレンズ群、最も像側に配置された最終レンズ群を含み、無限遠から最至近へのフォーカシングに際して、前記第1レンズ群及び前記最終レンズ群は不動であり、前記第1フォーカスレンズ群は像側へ移動し、前記第2フォーカスレンズ群は物体側へ移動し、最も像側に配置されたレンズ成分は負の屈折力を有し、前記第1レンズ群におけるレンズ間隔の最大値をLD1、無限遠合焦時における最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上での距離をLDとするとき、
0.03<LD1/LD<0.25
なる条件式を満足することを特徴とする。
【0007】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な光学性能に加えて、小型化、軽量化が可能な、複数の合焦群と防振群を備えた光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の光学系の無限遠合焦時における断面図である。
【
図2】実施例1の光学系の(a)無限遠合焦時、(b)最至近距離合焦時における収差図である。
【
図3】実施例2の光学系の無限遠合焦時における断面図である。
【
図4】実施例2の光学系の(a)無限遠合焦時、(b)最至近距離合焦時における収差図である。
【
図5】実施例3の光学系の無限遠合焦時における断面図である。
【
図6】実施例3の光学系の(a)無限遠合焦時、(b)最至近距離合焦時における収差図である。
【
図7】実施例4の光学系の無限遠合焦時における断面図である。
【
図8】実施例4の光学系の(a)無限遠合焦時、(b)最至近距離合焦時における収差図である。
【
図9】実施例5の光学系の無限遠合焦時における断面図である。
【
図10】実施例5の光学系の(a)無限遠合焦時、(b)最至近距離合焦時における収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の光学系及びそれを有する撮像装置の実施例について、添付の図面に基づいて説明する。
【0011】
図1、
図3、
図5、
図7、
図9は、それぞれ実施例1乃至5の光学系の無限遠合焦時における断面図である。各実施例の光学系はデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ等の撮像装置に用いられる光学系である。
【0012】
各レンズ断面図において左方が物体側で、右方が像側である。各実施例の光学系は複数のレンズ群を有して構成されている。本願明細書においてレンズ群とは、フォーカシングに際して一体的に移動または静止するレンズのまとまりである。すなわち、各実施例の光学系では、無限遠から最至近へのフォーカシングに際して隣接するレンズ群同士の間隔が変化する。なお、レンズ群は1枚のレンズから構成されていても良いし、複数のレンズから成っていても良い。また、レンズ群は開口絞りを含んでいても良い。
【0013】
また、SPは開口絞りである。IPは像面であり、各実施例の光学系をデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面が配置される。各実施例の光学系を銀塩フィルム用カメラの撮影光学系として使用する際には像面IPにはフィルム面に相当する感光面が置かれる。GBは像面IPの物体側に置かれる光学ブロックを示している。光軸方向の矢印は無限遠から最至近へのフォーカシングに際してフォーカスレンズ群LF1,LF2の移動方向を示している。
【0014】
図2、
図4、
図6、
図8、
図10は、それぞれ実施例1乃至5の光学系の収差図である。各収差図において(a)は無限遠合焦時の収差図、(b)は最至近距離に合焦した時の収差図である。
【0015】
球面収差図においてFnoはFナンバーであり、d線(波長587.6nm)、g線(波長435.8nm)に対する球面収差量を示している。非点収差図においてdSはサジタル像面における非点収差量、dMはメリディオナル像面における非点収差量を示している。歪曲収差図においてd線に対する歪曲収差量を示している。色収差図ではg線における色収差量を示している。ωは撮像半画角(近軸計算における画角)(°)である。
【0016】
次に、各実施例の光学系における特徴的な構成について述べる。
【0017】
各実施例の光学系は、物体側より像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第1フォーカスレンズ群LF1、複数のレンズ群を含む後群Rからなる。各実施例の光学系では、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する。
【0018】
後群Rは、像振れ補正に際して光軸に垂直な方向の成分を含む方向へ移動する負の屈折力の防振群LIS、正の屈折力の第2フォーカスレンズ群LF2、最も像側に配置された最終レンズ群LRを含む。
【0019】
無限遠から最至近へのフォーカシングに際して、第1レンズ群L1及び最終レンズ群LRは不動であり、第1フォーカスレンズ群LF1は像側へ移動し、第2フォーカスレンズ群LF2は物体側へ移動する。
【0020】
最も像側に配置されたレンズ成分LNは負の屈折力を有する。なお、レンズ成分とは単レンズあるいは接合レンズを意味する。
【0021】
フォーカシング時に第1フォーカスレンズ群LF1と第2フォーカスレンズ群LF2を移動させることにより、フォーカシング時に生じる球面収差変動を良好なレベルに補正することが可能となる。
【0022】
防振群LISに負の屈折力を持たせることにより、防振群LISへの入射光線高を下げることができ、防振群LISのユニット径を小さくできる。このため、光学系全体の小型化、軽量化に有利である。
【0023】
最も像側に配置されたレンズ成分LNに負の屈折力を持たせることにより、撮像素子に対して光線を斜めに入射させることができる。このため、バックフォーカスを短くすることができ、光学系の小型化に好適である。
【0024】
さらに、各実施例の光学系は、以下の条件式(1)を満足する。
【0025】
0.03<LD1/LD<0.25 ・・・(1)
ここで、LD1は第1レンズ群L1におけるレンズ間隔の最大値(最大の空気間隔)である。レンズ間隔とは、隣接する二つのレンズ間の光軸上での距離である。LDは、無限遠合焦時(光学系が無限遠に合焦した状態)における最も物体側のレンズ面から像面IPまでの光軸上での距離である。
【0026】
条件式(1)は、最も物体側に配置された第1レンズ群L1におけるレンズ間隔の最大値LD1と距離LDとの比を規定した条件式である。条件式(1)の下限値を下回ると、第1レンズ群L1を構成する各レンズ成分が密に配置されることなり、第1レンズ群L1の軽量化が難しい。条件式(1)の上限値を上回ると、第1レンズ群L1の軽量化には有利となるが、軸上光束の大きい位置に各レンズ成分を配置するのが難しくなるため、球面収差や軸上色収差の補正には不利となる。
【0027】
さらに、条件式(1)の数値範囲を以下の条件式(1a)の範囲とすることがより好ましい。
【0028】
0.038<LD1/LD<0.180 ・・・(1a)
また、条件式(1)の数値範囲は、以下の条件式(1b)の範囲とすることが更に好ましい。
【0029】
0.045<LD1/LD<0.110 ・・・(1b)
以上説明したように、各実施例によれば、上記構成および条件式(1)を満足することにより、良好な光学性能に加えて、小型化、軽量化が可能な、複数のフォーカスレンズ群と防振群を備えた光学系(望遠レンズ)を提供することができる。
【0030】
次に、各実施例の光学系において、満足することが好ましい構成について述べる。
【0031】
第1レンズ群L1を構成するレンズ成分のレンズ面のうち物体側に凸であるレンズ面は、非球面形状を有することが好ましい。これにより、第1レンズ群L1にて発生する球面収差を良好なレベルに補正することができ、光学系全体の小型化に有利となる。
【0032】
また、第1レンズ群L1において最も物体側に配置されたレンズ成分は、正の屈折力を有することが好ましい。最も物体側のレンズ成分により軸上光束を収斂させることにより、それよりも像側のレンズ成分の外径を小さくすることができるため、光学系全体の軽量化に有利となる。
【0033】
次に、各実施例の光学系が満足することが好ましい条件について述べる。各実施例の光学系は、以下の条件式(2)から(9)のうち1つ以上を満足することが好ましい。
【0034】
0.2<LD1/BF<2.0 ・・・(2)
0.02<LD1/f<0.22 ・・・(3)
0.2<fL1/f<1.4 ・・・(4)
-0.95<fLN/f<-0.13 ・・・(5)
0.4<fL1LF1/f<2.8 ・・・(6)
-0.77<fLIS/f<-0.21 ・・・(7)
LD/f<1.5 ・・・(8)
BF/f<0.3 ・・・(9)
ここで、BFはバックフォーカスであり、無限遠合焦時における最も像側のレンズ面から像面IPまでの光軸上での距離(空気換算長)である。fは、光学系の焦点距離である。fL1は、第1レンズ群L1の焦点距離である。fLNは、最終レンズ群LRにおいて最も像側に配置されたレンズ成分LNの焦点距離である。fL1LF1は、無限遠合焦時における第1レンズ群L1と第1フォーカスレンズ群LF1の合成焦点距離である。fLISは、防振群LISの焦点距離である。
【0035】
条件式(2)は、最も物体側に配置された第1レンズ群L1におけるレンズ間隔の最大値LD1とバックフォーカスBFとの比を規定した条件式である。条件式(2)の下限値を下回ると、レンズ全長の増大を招き好ましくない。条件式(2)の上限値を上回ると、レンズ全長の小型化には有利となるが、球面収差や軸上色収差の補正が難しくなり好ましくない。
【0036】
条件式(3)は、最も物体側に配置された第1レンズ群L1におけるレンズ間隔の最大値LD1と光学系の焦点距離fとの比を規定した条件式である。条件式(3)の下限値を下回ると、レンズ全長の増大を招き好ましくない。条件式(3)の上限値を上回ると、レンズ全長の小型化には有利となるが、球面収差や軸上色収差の補正が難しくなり好ましくない。
【0037】
条件式(4)は、第1レンズ群L1の焦点距離fL1と光学系の焦点距離fとの比を規定した条件式である。条件式(4)の下限値を下回るほど第1レンズ群L1の屈折力が強くなると、レンズ全長の小型化には有利となるが、球面収差や軸上色収差の補正が難しくなり好ましくない。条件式(4)の上限値を上回るほど第1レンズ群L1の屈折力が弱くなると、レンズ全長の増大を招き好ましくない。
【0038】
条件式(5)は、最も像側に配置されたレンズ成分LNの焦点距離fLNと光学系の焦点距離fとの比を規定した条件式である。条件式(5)の下限値を下回るほどレンズ成分LNの屈折力が弱くなると、カメラマウント近傍のユニット径が大きくなり、光学系の径方向への大型化を招き好ましくない。条件式(5)の上限値を上回るほどレンズ成分LNの屈折力が強くなると、撮像素子へ斜めに入射する光線によるシェーディングが問題となり好ましくない。
【0039】
条件式(6)は、無限遠合焦時における第1レンズ群L1と第1フォーカスレンズ群LF1の合成焦点距離fL1LF1と光学系の焦点距離fとの比を規定した条件式である。条件式(6)の下限値を下回るほど第1レンズ群L1及び第1フォーカス群LF1の屈折力が強くなると、レンズ全長の小型化には有利となるが、球面収差や軸上色収差、倍率色収差の補正が難しくなり好ましくない。条件式(6)の上限値を上回るほど第1レンズ群L1及び第1フォーカスレンズ群LF1の屈折力が弱くなると、レンズ全長の増大を招き好ましくない。
【0040】
条件式(7)は、防振群LISの焦点距離fLISと光学系の焦点距離fとの比を規定した条件式である。条件式(7)の下限値を下回るほど防振群LISの屈折力が弱くなると、防振敏感度を適切に設定することが困難となり、レンズ全長の増大を招き好ましくない。条件式(7)の上限値を上回るほど防振群LISの屈折力が強くなると、防振敏感度を適切に設定することが困難となり、防振時の光学性能が低下し好ましくない。
【0041】
条件式(8)は、無限遠合焦時における最も物体側のレンズ面から像面IPまでの光軸上での距離LDと光学系の焦点距離fとの比を規定した条件式である。各実施例の光学系は所謂望遠レンズであることが好ましいため、条件式(8)を満足する。
【0042】
条件式(9)は、バックフォーカスBFと光学系の焦点距離fとの比を規定した条件式である。条件式(9)の上限値を上回ると、レンズ全長の増大を招き好ましくない。
【0043】
なお、条件式(2)乃至(9)の数値範囲は、以下の条件式(2a)乃至(9a)の範囲とすることがより好ましい。
【0044】
0.28<LD1/BF<1.45 ・・・(2a)
0.03<LD1/f<0.17 ・・・(3a)
0.30<fL1/f<1.05 ・・・(4a)
-0.80<fLN/f<-0.16 ・・・(5a)
0.58<fL1LF1/f<2.10 ・・・(6a)
-0.66<fLIS/f<-0.26 ・・・(7a)
LD/f<1.28 ・・・(8a)
BF/f<0.23 ・・・(9a)
また、条件式(2)乃至(9)の数値範囲は、以下の条件式(2b)乃至(9b)の範囲とすることがさらに好ましい。
【0045】
0.35<LD1/BF<0.90 ・・・(2b)
0.045<LD1/f<0.110 ・・・(3b)
0.4<fL1/f<0.7 ・・・(4b)
-0.65<fLN/f<-0.19 ・・・(5b)
0.75<fL1LF1/f<1.40 ・・・(6b)
-0.55<fLIS/f<-0.30 ・・・(7b)
LD/f<1.05 ・・・(8b)
BF/f<0.15 ・・・(9b)
次に、各実施例の光学系について詳細に述べる。
【0046】
実施例1の光学系は、物体側から像側へ順に配置された、第1レンズ群L1、第1フォーカスレンズ群LF1、後群Rからなる。後群Rは、物体側から像側へ順に配置された、防振群LISであるレンズ群、第2フォーカスレンズ群LF2、最終レンズ群LRからなる。開口絞りSPは、第1フォーカスレンズ群LF1と防振群LISであるレンズ群の間に配置されている。光学ブロックGBは、像面IPの物体側に配置されている。
【0047】
実施例2の光学系は、物体側から像側へ順に配置された、第1レンズ群L1、第1フォーカスレンズ群LF1、後群Rからなる。後群Rは、物体側から像側へ順に配置された、レンズと防振群(部分群)LISとを備えるレンズ群、第2フォーカスレンズ群LF2、最終レンズ群LRからなる。レンズと防振群(部分群)LISとを備えるレンズ群については、該レンズと防振群LISを合わせて一つのレンズ群とみなしている。開口絞りSPは、第1レンズ群L1と第1フォーカスレンズ群LF1の間に配置されている。光学ブロックGBは、像面IPの物体側に配置されている。
【0048】
実施例3の光学系は、物体側から像側へ順に配置された、第1レンズ群L1、第1フォーカスレンズ群LF1、後群Rからなる。後群Rは、物体側から像側へ順に配置された、レンズと防振群(部分群)LISとを備えるレンズ群、第2フォーカスレンズ群LF2、最終レンズ群LRからなる。開口絞りSPは、第1フォーカスレンズ群LF1と防振群LISを備えるレンズ群の間に配置されている。光学ブロックGBは、像面IPの物体側に配置されている。
【0049】
実施例4の光学系は、物体側から像側へ順に配置された、第1レンズ群L1、第1フォーカスレンズ群LF1、後群Rからなる。後群Rは、物体側から像側へ順に配置された、第2フォーカスレンズ群LF2、最終レンズ群LRからなる。最終レンズ群LRの最も物体側に防振群(部分群)LISが配置されている。開口絞りSPは、第1フォーカスレンズ群LF1と第2フォーカスレンズ群LF2の間に配置されている。光学ブロックGBは、像面IPの物体側に配置されている。
【0050】
実施例5の光学系は、物体側から像側へ順に配置された、第1レンズ群L1、第1フォーカスレンズ群LF1、後群Rからなる。後群Rは、物体側から像側へ順に配置された、レンズと防振群LIS(部分群)とを備えるレンズ群、第2フォーカスレンズ群LF2、最終レンズ群LRからなる。開口絞りSPは、第1フォーカスレンズ群LF1と防振群LISを備えるレンズ群の間に配置されている。光学ブロックGBは、像面IPの物体側に配置されている。
【0051】
以下に、実施例1~5にそれぞれ対応する数値実施例1~5を示す。
【0052】
各数値実施例の面データにおいて、rは各光学面の曲率半径、d(mm)は第m面と第(m+1)面との間の軸上間隔(光軸上での距離)を表わしている。ただし、mは光入射側から数えた面の番号である。また、ndは各光学部材のd線に対する屈折率、νdは光学部材のアッベ数を表わしている。なお、ある材料のアッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd、NF、NCとするとき、
νd=(Nd-1)/(NF-NC)
で表される。
【0053】
なお、各数値実施例において、d、焦点距離(mm)、Fナンバー、半画角(°)は全て各実施例の光学系が無限遠物体に焦点を合わせた時の値である。「バックフォーカスBF」は、レンズ最終面(最も像側のレンズ面)から近軸像面までの光軸上での距離を空気換算長により表記したものである。「レンズ全長」は、光学系の最前面(最も物体側のレンズ面)から最終面までの光軸上での距離にバックフォーカスを加えた長さである。「レンズ群」は、複数のレンズから構成される場合に限らず、1枚のレンズから構成される場合も含むものとする。
【0054】
また、光学面が非球面の場合は、面番号の右側に、*の符号を付している。非球面形状は、Xを光軸方向の面頂点からの変位量、hを光軸と垂直な方向の光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、A4、A6、A8、A10、A12を各次数の非球面係数とするとき、
x=(h2/R)/[1+{1-(1+k)(h/R)2}1/2]+A4×h4+A6×h6
+A8×h8+A10×h10+A12×h12
で表している。なお、各非球面係数における「e±XX」は「×10±XX」を意味している。
【0055】
(数値実施例1)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
1 123.084 8.15 1.48749 70.2
2 323.360 2.91
3 80.070 12.53 1.43875 94.7
4 247.663 20.00
5 60.411 14.30 1.49700 81.5
6 -1649.369 2.11 1.72047 34.7
7 149.836 0.40
8* 52.593 1.56 1.85135 40.1
9 32.389 14.66 1.49700 81.5
10 162.354 (可変)
11 96.412 3.56 1.98612 16.5
12 207.658 1.32 1.67300 38.3
13 31.544 (可変)
14(絞り) ∞ 3.00
15 207.006 1.20 2.00069 25.5
16 49.781 3.00
17 -77.191 1.58 1.83400 37.2
18 32.647 6.25 1.85478 24.8
19 -98.165 (可変)
20 56.482 9.66 1.66565 35.6
21 -38.983 2.48 1.98612 16.5
22 -63.502 (可変)
23 -342.856 4.81 1.84666 23.8
24 -49.585 2.08
25 -42.437 2.03 2.00100 29.1
26 410.149 20.56
27 ∞ 1.50 1.51633 64.1
28 ∞ 0.80
像面 ∞
非球面データ
第8面
K= 0.00000e+00 A4=-2.85989e-07 A6=-9.93124e-11 A8=-4.64036e-14
各種データ
焦点距離 195.00
Fナンバー 2.05
半画角(°) 6.33
像高 21.64
レンズ全長 184.49
BF 22.35
無限遠 最至近
d10 1.68 6.36
d13 22.38 6.76
d19 11.44 2.28
d22 9.06 18.21
(数値実施例2)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
1 91.943 11.24 1.48749 70.2
2 297.714 0.40
3 72.670 12.76 1.43875 94.7
4 203.740 13.00
5 67.486 11.98 1.49700 81.5
6 533.244 2.15 1.73037 32.2
7 101.441 5.59
8* 77.137 1.64 1.85400 40.4
9 35.624 13.58 1.49700 81.5
10 515.880 2.60
11(絞り) ∞ (可変)
12 142.276 3.08 1.98612 16.5
13 -908.537 1.25 1.66565 35.6
14 32.748 (可変)
15 31.800 3.36 1.48749 70.2
16 47.169 4.46
17 243.622 1.08 2.00069 25.5
18 51.478 3.92
19 -99.841 1.12 1.76200 40.1
20 37.330 7.09 1.85478 24.8
21 -128.890 (可変)
22 68.194 10.88 1.74951 35.3
23 -45.139 2.04 1.92286 20.9
24 -83.371 (可変)
25 1168.798 7.36 1.69895 30.1
26 -33.396 1.15 2.00330 28.3
27 148.750 21.34
28 ∞ 1.50 1.51633 64.1
29 ∞ 0.80
像面 ∞
非球面データ
第8面
K= 0.00000e+00 A4=-5.20255e-07 A6=-1.03596e-10 A8= 1.95038e-14
各種データ
焦点距離 194.99
Fナンバー 2.05
半画角(°) 6.33
像高 21.64
レンズ全長 184.49
BF 23.12
無限遠 最至近
d11 2.99 10.74
d14 11.03 3.28
d21 8.55 4.35
d24 17.06 21.25
(数値実施例3)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
1 100.457 9.59 1.48749 70.2
2 281.439 20.00
3 70.214 14.75 1.43875 94.7
4 451.777 0.39
5 73.098 13.19 1.49700 81.5
6 -702.915 2.01 1.72047 34.7
7 123.640 1.15
8* 58.617 1.31 1.85135 40.1
9 37.178 13.38 1.49700 81.5
10 169.033 (可変)
11 167.206 3.11 1.98612 16.5
12 -712.610 1.27 1.67300 38.3
13 33.287 (可変)
14(絞り) ∞ 3.00
15 108.726 1.54 1.80400 46.5
16 163.246 3.00
17 116.157 1.01 2.00069 25.5
18 42.246 2.98
19 -115.506 1.04 1.77250 49.6
20 34.888 4.28 1.85478 24.8
21 -301.638 (可変)
22 55.021 8.35 1.67003 47.2
23 -42.643 1.01 1.92286 20.9
24 -71.653 (可変)
25 -642.856 4.34 1.78470 26.3
26 -49.683 1.95
27 -43.574 1.15 2.00100 29.1
28 435.786 22.92
29 ∞ 1.50 1.51633 64.1
30 ∞ 0.80
像面 ∞
非球面データ
第8面
K= 0.00000e+00 A4=-2.96320e-07 A6=-9.63532e-11 A8=-3.88811e-14
各種データ
焦点距離 195.00
Fナンバー 2.05
半画角(°) 6.33
像高 21.64
レンズ全長 184.49
BF 24.71
無限遠 最至近
d10 6.70 11.58
d13 20.39 15.51
d21 10.06 3.99
d24 8.84 14.90
(数値実施例4)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
1 83.316 18.17 1.43875 94.7
2 -2642.520 10.01
3 80.308 16.82 1.49700 81.5
4 -296.610 3.02 1.66565 35.6
5 572.828 5.90
6* 197.928 2.50 1.59551 39.2
7 49.435 9.51 1.49700 81.5
8 123.578 (可変)
9 3568.030 3.67 1.94594 18.0
10 -204.653 2.02 1.58144 40.8
11 58.665 (可変)
12(絞り) ∞ (可変)
13 293.536 4.14 1.95375 32.3
14 -100.174 1.16 1.92286 20.9
15 -238.870 (可変)
16 119.709 1.09 2.00100 29.1
17 51.343 4.02
18 -118.840 1.51 1.77250 49.6
19 40.012 6.46 1.77047 29.7
20 -110.022 3.00
21 49.199 6.02 1.49700 81.5
22 -331.966 23.48
23 -175.538 2.06 1.92286 20.9
24 187.908 23.80
25 ∞ 1.50 1.51633 64.1
26 ∞ 0.80
像面 ∞
非球面データ
第6面
K= 0.00000e+00 A4=-5.11837e-07 A6=-3.31746e-11 A8= 1.23353e-14
各種データ
焦点距離 195.00
Fナンバー 2.05
半画角(°) 6.33
像高 21.64
レンズ全長 199.49
BF 25.59
無限遠 最至近
d 8 5.74 14.83
d11 33.06 23.99
d12 8.52 1.99
d15 2.00 8.51
(数値実施例5)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd
1 239.899 4.59 1.48749 70.2
2 694.025 0.40
3 123.175 11.82 1.43875 94.7
4 -1106.622 12.50
5 87.366 15.20 1.49700 81.5
6 -246.391 2.44 1.66565 35.6
7 175.616 0.40
8 49.068 11.58 1.49700 81.5
9 119.236 1.46
10* 61.868 2.62 1.85400 40.4
11 39.909 (可変)
12 1152.649 4.13 1.94594 18.0
13 -196.928 2.08 1.59551 39.2
14 53.821 (可変)
15(絞り) ∞ 2.49
16 107.686 2.19 1.83481 42.7
17 716.084 2.99
18 74.046 1.03 2.00069 25.5
19 40.531 3.89
20 -353.315 1.07 1.80100 35.0
21 34.342 4.84 1.92286 20.9
22 249.854 (可変)
23 59.700 7.66 1.61772 49.8
24 -55.120 2.03 1.92286 20.9
25 -89.831 (可変)
26 -104.567 1.16 1.92286 20.9
27 -1508.744 22.19
28 ∞ 1.50 1.51633 64.1
29 ∞ 0.80
像面 ∞
非球面データ
第10面
K= 0.00000e+00 A4=-2.13929e-07 A6=-1.67464e-11 A8=-7.12394e-14
A10= 2.72845e-17
各種データ
焦点距離 195.00
Fナンバー 2.05
半画角(°) 6.33
像高 21.64
レンズ全長 194.49
BF 23.98
無限遠 最至近
d11 13.42 22.37
d14 26.23 17.28
d22 7.49 13.48
d25 24.79 18.79
各数値実施例における種々の値を、以下の表1にまとめて示す。
【0056】
【0057】
[撮像装置]
次に、本発明の光学系を撮像光学系として用いたデジタルスチルカメラ(撮像装置)1の実施例について、
図11を用いて説明する。
図11において、13はカメラ本体、11は実施例1乃至5で説明したいずれかの光学系によって構成された撮影光学系である。12はカメラ本体に内蔵され、撮影光学系11によって形成された光学像を受光して光電変換するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。カメラ本体13はクイックターンミラーを有する所謂一眼レフカメラでも良いし、クイックターンミラーを有さない所謂ミラーレスカメラでも良い。
【0058】
このように本発明の光学系をデジタルスチルカメラ等の撮像装置に適用することにより、レンズが小型である撮像装置を得ることができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
L1 第1レンズ群
LF1 第1フォーカスレンズ群
R 後群
LF2 第2フォーカスレンズ群
LR 最終レンズ群
LIS 防振群