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特開2023-99406室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法
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  • 特開-室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099406
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/08 20060101AFI20230706BHJP
   G01R 33/48 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
G01N24/08 510P
G01R33/48
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022016
(22)【出願日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】202111664901.7
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521300544
【氏名又は名称】西南石油大学
【氏名又は名称原語表記】Southwest Petroleum University
【住所又は居所原語表記】No. 8, Xindu Avenue, Xindu District, Chengdu, Sichuan 610500, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐 雁▲氷▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ミン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 晨曦
(72)【発明者】
【氏名】趙 金洲
(72)【発明者】
【氏名】イヴ ベルナベ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、室内岩石コア実験における多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法を提供する。
【解決手段】その方法として、四つのステップが含まれている。1、岩石コアサンプルを乾燥後、サンプルのパラメータを測定し、真空排気を行って、飽和水又は油を加圧する、2、核磁気共鳴スキャンを行って二次元画像を取得すること、3、岩石コアの三次元データボリュームを取得すること、三次元不規則空隙ネットワークモデルを構築して、三次元データボリュームを当該モデルのノードに代入すること、各隣のノードの穴・スロート半径を計算し、モデルの浸透率の模擬計算を行うことと、4、岩石コアの浸透率が実測値に近いことを確保し、岩石コアの空隙ネットワークモデルを構築して、当該モデルと非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法を結びつけて浸透数値シミュレーションを行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のように、即ち、
ステップ一:まず岩石コアサンプルを選んでから、乾燥した後、岩石コアの穴・スロート長さ、空隙率と浸透率を測定し、それに加えて、岩石コアサンプルに対して真空排気を行って、飽和度について地層水又は地層原油を模擬すること、
ステップ二:岩石コアサンプルに対して核磁気共鳴MRI/T2スキャン測定を行って異なる断面における岩石コアの二次元画像を取得すること、
ステップ三:二次元画像に対して補間を行って、岩石コアMRI/T2の三次元データボリュームを取得すること、
ステップ四:三次元不規則空隙ネットワークモデルを構築して、MRI/T2三次元データボリュームを、三次元不規則空隙ネットワークモデルのノードに代入すること、
ステップ五:変換係数αを通じて、三次元不規則空隙ネットワークモデルにおける各隣のノードの穴・スロート半径を計算して、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルの浸透率の模擬計算を行い、それに加えて、変換係数αの大きさを調整することによって、空隙ネットワークの浸透率が岩石コアの浸透率の実測値に近いことを確保し、それに加えて、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを構築することと、
ステップ六:デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法を結びつけて岩石コア流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーションを行うことという六つのステップが含まれていることを特徴とする室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法。
【請求項2】
前記ステップ二が、具体的に下記の内容、即ち、1、核磁気共鳴装置を利用して、真空排気・飽和度数値シミュレーション後の岩石コアサンプルに対して、核磁気共鳴スキャンを行い、それに加えて、SIRT逆転アルゴリズムを利用してT2分布を生成することと、2、岩石コアの各位置に対して切片処理を行い、それに加えて、核磁気共鳴装置のスキャン精度によって、核磁気共鳴装置の処理可能な範囲内において、適切な切片位置と断面数を選んで岩石コアに対して核磁気共鳴スキャンを行って岩石コアの異なる切片位置における岩石コア核磁気共鳴MRI二次元画像を取得した後、切片位置座標と二次元画像のピクセルデータを、二次元画像TXTテキストに保存することという二つの内容を含むことを特徴とする請求項1に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法。
【請求項3】
前記ステップ三が、具体的に下記の内容、即ち、補間アルゴリズムを利用し、それに加えて、ステップ二で取得した二次元画像TXTテキスト及びステップ一における岩石コア穴・スロート長さに結びついて、核磁気共鳴画像法におけるデータボリューム、即ち、岩石コアの核磁気共鳴MRI二次元画像に対して補間処理を行うことによって、データボリューム規模が、反応岩石の微視的な穴・スロートの特徴面の要件に適合するようにし、これで、岩石コアMRI/T2の三次元テンソルデータボリュームを取得することを含むことを特徴とする請求項1に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法。
【請求項4】
前記ステップが具体的に下記のサブステップ、即ち、
S401:岩石コアのスケールによって、モデルの大きさ、リガンド数と平均穴・スロート長さを設置すること、
S402:コンピュータープログラミング言語とマトリックス・コンピューティングライブラリEigen構造の三次元規則的な立方体ネットワーク構造を採用して、一つのX×Y×Z三次元規則的な立方体ネットワークを生成すること、
S403:立方体ネットワークの総ノード数が(X-1×(Y-1)×(Z-1)であり、各ノードがそれぞれ一つの空隙を表し、ノードとノードとの間に、スロートを通じて繋がり、その他の部分が岩石の骨組であるように設置すること、
S404:1、構築した立方体ネットワークモデルにおいて、空隙を表す各ノードの周辺に、六つのスロートが互いに繋がり、スロート長さが岩石平均穴・スロート長さ<l>であり、立方体ネットワークモデルのx、y、z方向の辺長がそれぞれLx=(X-1)<l>、Ly=(Y-1)<l>とLz =(Z-1)<l>であるようにし、立方体ネットワークモデルにおけるすべてのグリッド・ノードの間に、丸管を通じて完全接続を実現し、且つ、空隙とスロートとの半径比を1にすることと、2、LyとLzを、実際岩石コア径に設定し、且つ、各層のyoz平面における、中心点からの距離がLyを上回る点を全部取り外すことによって、立方体ネットワークモデルが、実際岩石コア形状に一致するプランジャー状モデルになるようにすること及び
S405:1、核磁気共鳴MRI/T2の三次元テンソルデータボリュームにおける数値を、三次元規則的な立方体ネットワークモデルにおける各ノードに代入すること(二つのノードの間の連結線値が穴・スロートの半径Rである)、2、ネットワークにおけるすべての穴・スロートの半径Rについて、隣の二つのノードにおけるMRI/T2値の平均値を取ること、3、モデルにおける各ノードの座標を、球面内のスペース内において無作為に移動することによって、不規則ネットワーク・スペース構造を生成し、且つ、穴・スロート長さの無作為な変化を生じることと4、ネットワーク構造から、一部分の接続を無作為に取り除くことによって、異なる連結性の特徴を持つ空隙ネットワークモデルを取得することという四つのステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法。
【請求項5】
前記ステップ五が具体的に下記のステップ、即ち、1、変換係数の初期値がαであると仮定して、ステップ四の方法に基づき、且つ、変換係数αを通して穴・スロート半径Riを計算することによって、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを取得した後、単相安定浸透空隙ネットワークシミュレーション・アルゴリズムを採用して、構築した岩石コアのデジタル化された空隙ネットワークモデルにおける浸透率を計算した後、シミュレーションで得た浸透率が、岩石コアの浸透率の測定値に一致しているか検証することと2、一致していない場合、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルにおける浸透率が、岩石コアの浸透率の実際測定値に基本的に一致するようになるまで、変換係数αを調整しながら、空隙ネットワークの穴・スロート半径Riを改めて計算し、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを改めて構築し、且つ、その浸透率の値を計算することによって、実際岩石コアのサンプルに相応するデジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを得ることという二つのステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法。
【請求項6】
前記ステップ六が具体的に下記のサブステップ、即ち、
S601:岩石コアサイズの空隙ネットワーク結合非定常流動モデルに基づいて穴・スロートチャンネルにおける流体の非定常流動を分析して、円形管束における流体軸方向速度vr分布を分析すること、
S602:単相液体浸透プロセスが適合すべき仮設条件に基づいて、有限体積法とルノー輸送方程式を採用して、非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを構築すること、
S603:単相ガス浸透プロセスにおけるガス密度ρgとガス圧縮率因子Cgに基づき、且つ、 ルノー輸送方程式に結びついて、低圧と高圧条件に同時に適合する非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを構築すること、
S604:非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルと非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを利用し、且つ、空隙ネットワークモデルにおける混合流体の特性パラメータに結びついて、非混合排除のプロセス下での流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルを構築することと、
S605:デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法を結びつけて岩石コア流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーションを行うことという五つのステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法。
【請求項7】
前記非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルが次の式、即ち、
【数43】
で示す通りであることを特徴とする請求項6に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法(式の中で、Ct=Cρ+Cpであり、Ctが総合圧縮係数であり、Cpが空隙圧縮係数であり(単位:Pa-1)、Cρが液体圧縮係数であり(単位:Pa-1)、Δtが時間ステップであり、qijが管束内流体の体積流量であり、gijが管束内液体の水力伝導率であり、<p>ijが隣のノードiとjとの間の平均圧力であり、Δpijが隣のノードiとjとの間の管束内流体圧力差であり、Vpi0が初期時刻におけるノードiの空隙体積であり、R0ijが初期時刻におけるノードiとjとの間の穴・スロート管束の半径であり、lijが隣のノードiとjとの間の穴・スロート長さであり、nが制御ボリュームの中心ノードiにつながって続いているノード数であり、μが流体粘度である)。
【請求項8】
前記非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルが次の式、即ち、
【数44】
で示す通りであることを特徴とする請求項6に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法(式の中で、ggijが管束内ガス流動の水力伝導率であり、μgがガス黏度であり、p/Zμgが非線形項であり、pが制御ボリューム中心ノード位置の空隙率流体圧力であり、Rgがガス常数である)。
【請求項9】
前記流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルが次の式、即ち、
【数45】
で示す通りであることを特徴とする請求項6に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法(式の中で、gijが管束内流体の水力伝導率であり、pcijがノードiとjとの間の穴・スロートチャンネルの毛管力であり、μeffがノードiとjとの間の混合流体の有効粘度であり、CIとCDがそれぞれ注入流体と被排除流体の圧縮率因子であり、SIとSDがそれぞれiを中心とする制御ボリューム内の注入流体と被排除流体の飽和度である)。
【請求項10】
前記非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法が具体的に下記のステップ、即ち、
S701:まず、流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルにおける非線形毛管圧力項に対して線形化処理を行うことによって、
【数46】
線形化後の流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルを取得すること、
【数47】
S702:陰的数値シミュレーション手法を採用して、ソース・シンク項Qiを導入して線形化後の流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルに対して離散化処理を行った後、
【数48】
を得ること(式の中で、上付き文字tが現在時刻の下での流動状態を表し、上付き文字t+Δtが次の時刻の流動状態を表す)、
S703:ステップ7023公式における異なる時刻の流動状態について分離と合併を行うことによって、
【数49】
を得ること、
S704:空隙ネットワークモデルにおけるすべてのネットワーク・ノードを走査した後、空隙ネットワークモデルにおけるすべての制御ボリュームが、皆現在の時刻と次の時刻の流動状態を、ステップS703の公式に代入して整理してから、下記のマトリックス、即ち、
[A]t+Δt[X]t+Δt=[B]tを形成した後
(式の中で、[A]t+Δtが、N×Nサイズの流体水力伝導率関連スパースマトリックスであり、Nが、空隙ネットワークモデルのノード数であり、[X]t+Δtと[B]tが、長さがNである二つのベクトルであり、[X]t+Δtが次の時刻の圧力場ベクトルであり、[B]tが前の時刻の圧力場と境界条件関連ベクトルである)、GPU代数多重グリッド一般化最小残差アルゴリズムを利用して、以上のマトリックスの解を求めることによって、現在時刻の空隙ネットワークモデルにおける流体圧力場分布を得ること、
S705:非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーションのプロセス中において、固定時間ステップ又は可変時間ステップの方式を採用することによって、当該ステップ幅内の流体界面に変位を発生させ、各時間ステップの下で、界面移動後の新しい流体界面位置を計算し、且つ、全体的な空隙ネットワークモデルにおけるすべての穴・スロートチャンネルの水力伝導率とモデルにおける各相流体の飽和度をアップデートした後、全体的な空隙ネットワーク・スペースに浸入流体がいっぱいになるか、又はある飽和度数値に達するまで、流体圧力場分布の解を求めることという五つのステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油ガス田開発分野に係わり、特に室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法に係わり、一般砂岩の油ガス鉱物に適用され、それに加えて、致密油ガス、頁岩油ガスと天然ガス水和物等の非一般油ガス鉱物にも適用され、更にCO2地質密封貯蔵技術にも適用される。
【背景技術】
【0002】
石油と天然ガスは、国民経済の高速発展を維持する為の重要なエネルギーの一つであるので、石油と天然ガスをどのように合理的に採掘し、且つ、その採取率をどのように向上するかは、長く油ガス田開発プロセス中の重要な問題である。実際に地下埋蔵地層の岩石内部穴・スロート構造が複雑であるので、実験手段でその中での流体浸透規則を明確化し難い。多くの研究者は、多孔媒体モデルを利用して、岩石内部における異なるタイプの流体の流動を模擬することによって、石油採取率の向上に役立つ方法を探す。デジタルコア(デジタル岩石コア)技術は、多孔媒体モデルの一つの分枝として、石油と天然ガス業界における地質、地震、物理検層、開発及び採取率向上等の各分野に用いることができる。デジタルコア技術は、岩石コアの微視的な物理学的特徴を保留できるので、岩石を無限回繰り返して使用するのを確保でき、重要な岩石物理実験数値シミュレーション・プラットフォームであり、岩石コア内部における各種の微視的な要素(例えば、空隙連結性と湿潤性等)による埋蔵地層に対する影響を定量的に研究でき、それに加えて、伝統的な物理実験で直接に測定できない物理的性質(例えば、油ガス水三相の相対浸透率)を計算できる。その広範な応用性に鑑みて、デジタルコアの研究は、石油と天然ガスの採取率向上に対して重要な意義を持っている。
【0003】
デジタルコアを応用して、各種の岩石物理実験研究を行う際に、一番基礎的な業務は、正確で、実際岩石に適合する三次元デジタルコア・モデルを構築することである。過去15年間に、実験用器具の革新と新理論の突破に伴い、国内外の研究チームは、デジタルコア・モデルの新しい構築方法を絶えず提出している。数年間の研究を経て、デジタル岩石コアの構築方法を、三つの種類、即ち、数値再建法、物理実験法と混合法に分ける。数値再建法は、少量の二次元薄片画像を基礎とし、二次元画像に含まれている情報を利用し、それに加えて、無作為シミュレーション法又は沈積岩のプロセスシミュレーション法を通して三次元デジタルコアを再建する方法である。当該方法で構築するモデルの正確度とモデリング効率が比較的低く、且つ、モデリング方法での制約条件の選択により、シミュレーション結果に偶然性があるようになる為、埋蔵地層の真実な岩石コアの特徴を再現し難い。物理実験法は、実験用器具を利用して、岩石コアサンプルを撮影したり、又は走査したりすることによって、大量な岩石コアの二次元写真を取得した後、モデリング・プログラム又はソフトウェアを通して、二次元写真を、三次元デジタルコアに重ね合わせたり、又は再構築したりすることを指す。但し、当該方法は、実験用器具(例えば、CTスキャナー)の解像度と精度によって制限されるので、構築するモデルのスケールが比較的小さく(一般にミリメートルのスケール)、モデルの代表性と工業的な応用は大きく制限される。鍾乳洞裂け目特徴を持つ岩石コアの微視的なパラメータの抽出と分析は、難しく、物理実験のコストが高く、且つ、サイクルが長い。混合法は、多種のモデリング方法を結びつけてそれぞれの長所を取り入れることによって、比較的正確な三次元モデルを構築できるが、構築するモデルのスケールは、依然として実際岩石コアと異なる。これと同時に、空隙スケールの浸透理論体系と数学モデルの不完備性によって制限される為、前記方法で構築するモデルにおけるシミュレーション結果は、実際の実験結果と、様々な程度で異なる。ここ数年来、核磁気共鳴画像法(MRI)の急速な進歩とコンピューターGPUチップの計算力(ハッシュレート)の著しい向上に伴って、室内実験における実際の岩石サンプルに相応するデジタル化された三次元岩石コアの空隙ネットワークモデルを構築し、空隙ネットワークモデル多相浸透理論、数学モデルと数値シミュレーション手法を整備し、それに加えて、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと空隙ネットワークモデル多相浸透数値シミュレーション手法を結びつけて、岩石コア浸透シミュレーション研究を実施する為に、重要な物的基礎を打ち立てた。これと同時に、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと空隙ネットワークモデル多相浸透数値シミュレーション手法という技術手法を生み出したので、石油と天然ガス関連業界の発展に対して重要な意義を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、現有技術の不足点を克服することであり、具体的に言うと、室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法を提供して、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法を結びつけることによって、室内岩石コア流動実験のプロセスを模擬・再現でき、それに加えて、室内岩石コア実験における、デジタル化された単相・多相(油・水、ガス・水と油・ガス)流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション分析とテストを実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
下記の技術的解決手段で本発明の目的を実現する。
【0006】
室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法であり、下記のステップを含む。
【0007】
ステップ一:まず岩石コアサンプルを選んでから、乾燥した後、岩石コアの穴・スロート長さ、空隙率と浸透率を測定し、それに加えて、岩石コアサンプルに対して真空排気を行って、飽和度について地層水又は地層原油を模擬すること、
ステップ二:岩石コアサンプルに対して核磁気共鳴MRI/T2スキャン測定を行って異なる断面における岩石コアの二次元画像を取得すること、
ステップ三:二次元画像に対して補間を行って、岩石コアMRI/T2の三次元データボリュームを取得すること、
ステップ四:三次元不規則空隙回路網モデルを構築して、MRI/T2三次元データボリュームを、三次元不規則空隙ネットワークモデルのノードに代入すること、
ステップ五:変換係数αを通じて、三次元不規則空隙ネットワークモデルにおける各隣のノードの穴・スロート半径を計算して、岩石コアのデジタル化された空隙回路網モデルの浸透率の模擬計算を行い、それに加えて、変換係数αの大きさを調整することによって、空隙ネットワークの浸透率が岩石コアの浸透率の実測値に近いことを確保し、それに加えて、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを構築することと、
ステップ六:デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法を結びつけて岩石コア流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーションを行うことという六つのステップを含むこと。
【0008】
前記ステップ二が、具体的に下記の内容を含む。1、核磁気共鳴装置を利用して、真空排気・飽和度数値シミュレーション後の岩石コアサンプルに対して、核磁気共鳴スキャンを行い、それに加えて、SIRT逆転アルゴリズムを利用してT2分布を生成することと、2、岩石コアの各位置に対して切片処理を行い、それに加えて、核磁気共鳴装置のスキャン精度によって、核磁気共鳴装置の処理可能な範囲内において、適切な切片位置と断面数を選んで岩石コアに対して核磁気共鳴スキャンを行って岩石コアの異なる切片位置における岩石コア核磁気共鳴MRI二次元画像を取得した後、切片位置座標と二次元画像のピクセルデータを、二次元画像TXTテキストに保存することという二つの内容を含むこと。
【0009】
前記ステップ三が、具体的に下記の内容を含む。補間アルゴリズムを利用し、それに加えて、ステップ二で取得した二次元画像TXTテキスト及びステップ一における岩石コア穴・スロート長さに結びついて、核磁気共鳴画像法におけるデータボリューム、即ち、岩石コアの核磁気共鳴MRI二次元画像に対して補間処理を行うことによって、データボリューム規模が、反応岩石の微視的な穴・スロートの特徴面の要件に適合するようにし、これで、岩石コアMRI/T2の三次元テンソルデータボリュームを取得することを含むこと。
【0010】
前記ステップ四が具体的に下記のサブステップを含む。
【0011】
S401:岩石コアのスケールによって、モデルの大きさ、リガンド数と平均穴・スロート長さを設置すること、
S402:コンピュータープログラミング言語とマトリックス・コンピューティングライブラリEigen構造の三次元規則的な立方体ネットワーク構造を採用して、一つのX×Y×Z三次元規則的な立方体回路網を生成すること、
S403:立方体回路網の総ノード数が(X-1×(Y-1)×(Z-1)であり、各ノードがそれぞれ一つの空隙を表し、ノードとノードとの間に、スロートを通じて繋がり、その他の部分が岩石の骨組であるように設置すること、
S404:1、構築した立方体ネットワークモデルにおいて、空隙を表す各ノードの周辺に、六つのスロートが互いに繋がり、スロート長さが岩石平均穴・スロート長さ<l>であり、立方体ネットワークモデルのx、y、z方向の辺長がそれぞれLx=(X-1)<l>、Ly=(Y-1)<l>とLz =(Z-1)<l>であるようにし、立方体ネットワークモデルにおけるすべてのグリッド・ノードの間に、丸管を通じて完全接続を実現し、且つ、空隙とスロートとの半径比を1にすることと、2、LyとLzを、実際岩石コア径に設定し、且つ、各層のyoz平面における、中心点からの距離がLyを上回る点を全部取り外すことによって、立方体ネットワークモデルが、実際岩石コア形状に一致するプランジャー状モデルになるようにすること及び
S405:1、核磁気共鳴MRI/T2の三次元テンソルデータボリュームにおける数値を、三次元規則的な立方体ネットワークモデルにおける各ノードに代入すること(二つのノードの間の連結線値が穴・スロートの半径Rである)、2、ネットワークにおけるすべての穴・スロートの半径Rについて、隣の二つのノードにおけるMRI/T2値の平均値を取ること、3、モデルにおける各ノードの座標を、球面内のスペース内において無作為に移動することによって、不規則ネットワーク・スペース構造を生成し、且つ、穴・スロート長さの無作為な変化を生じることと4、ネットワーク構造から、一部分の接続を無作為に取り除くことによって、異なる連結性の特徴を持つ空隙ネットワークモデルを取得すること。
【0012】
前記ステップ五が具体的に下記のステップ、即ち、1、変換係数の初期値がαであると仮定して、ステップ四の方法に基づき、且つ、変換係数αを通して穴・スロート半径Riを計算することによって、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを取得した後、単相安定浸透空隙ネットワークシミュレーション・アルゴリズムを採用して、構築した岩石コアのデジタル化された空隙ネットワークモデルにおける浸透率を計算した後、シミュレーションで得た浸透率が、岩石コアの浸透率の測定値に一致しているか検証することと、2、一致していない場合、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルにおける浸透率が、岩石コアの浸透率の実際測定値に基本的に一致するようになるまで、変換係数αを調整しながら、空隙ネットワークの穴・スロート半径Riを改めて計算し、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを改めて構築し、且つ、その浸透率の値を計算することによって、実際岩石コアのサンプルに相応するデジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを得ることという二つのステップを含む。
【0013】
前記ステップ六が具体的に下記のサブステップを含む。
【0014】
S601:岩石コアサイズの空隙ネットワーク結合非定常流動モデルに基づいて穴・スロートチャンネルにおける流体の非定常流動を分析して、円形管束における流体軸方向速度vr分布を分析すること、
S602:単相液体浸透プロセスが適合すべき仮設条件に基づいて、有限体積法とルノー輸送方程式を採用して、非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを構築すること、
S603:単相ガス浸透プロセスにおけるガス密度ρgとガス圧縮率因子Cgに基づき、且つ、ルノー輸送方程式に結びついて、低圧と高圧条件に同時に適合する非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを構築すること、
S604:非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルと非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを利用し、且つ、空隙回路網モデルにおける混合流体の特性パラメータに結びついて、非混合排除のプロセス下での流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルを構築することと、
S605:デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法を結びつけて岩石コア流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーションを行うことという五つのステップを含むこと。
【0015】
具体的に、前記非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルが次の式、即ち、
【数1】
で示す通りである(式の中で、Ct=Cρ+Cpであり、Ctが総合圧縮係数であり、Cpが空隙圧縮係数であり(単位:Pa-1)、Cρが液体圧縮係数であり(単位:Pa-1)、Δtが時間ステップであり、qijが管束内流体の体積流量であり、gijが管束内液体の水力伝導率であり、<p>ijが隣のノードiとjとの間の平均圧力であり、Δpijが隣のノードiとjとの間の管束内流体圧力差であり、Vpi0が初期時刻におけるノードiの空隙体積であり、R0ijが初期時刻におけるノードiとjとの間の穴・スロート管束の半径であり、lijが隣のノードiとjとの間の穴・スロート長さであり、nが制御ボリュームの中心ノードiにつながって続いているノード数であり、μが流体粘度である)。
【0016】
具体的に、前記非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルが次の式、即ち、
【数2】
で示す通りである(式の中で、ggijが管束内ガス流動の水力伝導率であり、μgがガス粘度であり、p/Zμgが非線形項であり、pが制御ボリューム中心ノード位置の空隙率流体圧力であり、Rgがガス常数である)。
【0017】
前記流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルが具体的に次の式、即ち、
【数3】
で示す通りである(式の中で、gijが管束内流体の水力伝導率であり、pcijがノードiとjとの間の穴・スロートチャンネルの毛管力であり、μeffがノードiとjとの間の混合流体の有効粘度であり、CIとCDがそれぞれ注入流体と被排除流体の圧縮率因子であり、SIとSDがそれぞれiを中心とする制御ボリューム内の注入流体と被排除流体の飽和度である)。
【0018】
前記非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法が具体的に下記のステップを含む。
【0019】
S701:まず、流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルにおける非線形毛管圧力項に対して線形化処理を行うことによって、
【数4】
線形化後の流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルを取得すること、
【数5】
S702:陰的数値シミュレーション手法を採用して、ソース・シンク項Qiを導入して線形化後の流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルに対して離散化処理を行った後、
【数6】
を得ること(式の中で、上付き文字tが現在時刻の下での流動状態を表し、上付き文字t+Δtが次の時刻の流動状態を表す)、
S703:ステップ7023公式における異なる時刻の流動状態について分離と合併を行うことによって、
【数7】
を得ること、
S704:空隙ネットワークモデルにおけるすべてのネットワーク・ノードを走査した後、空隙ネットワークモデルにおけるすべての制御ボリュームが、皆現在の時刻と次の時刻の流動状態を、ステップS703の公式に代入して整理してから、下記のマトリックス、即ち、 [A]t+Δt[X]t+Δt=[B]tを形成した後(式の中で、[A]t+Δtが、N×Nサイズの流体水力伝導率関連スパースマトリックスであり、Nが、空隙ネットワークモデルのノード数であり、[X]t+Δtと[B]tが、長さがNである二つのベクトルであり、[X]t+Δtが次の時刻の圧力場ベクトルであり、[B]tが前の時刻の圧力場と境界条件関連ベクトルである)、GPU代数多重グリッド一般化最小残差アルゴリズムを利用して、以上のマトリックスの解を求めることによって、現在時刻の空隙ネットワークモデルにおける流体圧力場分布を得ること、
S705:非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーションのプロセス中において、固定時間ステップ又は可変時間ステップの方式を採用することによって、当該ステップ幅内の流体界面に変位を発生させ、各時間ステップの下で、界面移動後の新しい流体界面位置を計算し、且つ、全体的な空隙ネットワークモデルにおけるすべての穴・スロートチャンネルの水力伝導率とモデルにおける各相流体の飽和度をアップデートした後、全体的な空隙ネットワーク・スペースに浸入流体がいっぱいになるか、又はある飽和度数値に達するまで、流体圧力場分布の解を求めることという五つのステップを含むこと。
【0020】
本発明は、核磁気共鳴MRI/T2に基づく、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと非定常流体-構造連成(FSI)浸透数学モデル・シミュレーション手法に係わるので、本発明で提供された方法の詳細な実現プロセスは、具体的に下記の二つのフローが分けられている。
【0021】
1、核磁気共鳴MRI/T2に基づいて、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを構築すること。
【0022】
(1)岩石コアサンプルを選んでから、乾燥した後、岩石コアサンプルの長さ、直径、空隙率と浸透率を測定する。当該岩石コアサンプルに対して真空排気を行って、飽和度について地層水又は地層原油を模擬する。核磁気共鳴スキャンを行って相応な岩石コアサンプルの核磁気共鳴画像法MRIデータと核磁気共鳴T2スペクトルのデータを取得する(スキャンプロセスについて、核磁気共鳴画像学を参照して実現できる(俎棟林、『核磁気共鳴画像学』、2004、高等教育出版社)。岩石コアの異なる位置に対してMRI測定を行って、相応位置における岩石コアのMRI二次元画像を取得する。実験用器具のスキャン精度によって、実験用器具の処理可能な範囲内において、適切な切片位置と断面数を選んで岩石コアの異なる切片位置における核磁気共鳴MRI二次元画像を取得する。切片位置座標とピクセルデータを、TXTテキストに保存する。
【0023】
(2)岩石コアの核磁気共鳴MRI/T2の三次元テンソルデータボリュームを取得する。ステップ(1)で取得した二次元画像TXTテキスト及び岩石コア穴・スロート長さの大まかな範囲によって、核磁気共鳴画像法におけるデータボリュームに対して補間を行うことによって、データボリューム規模が、反応岩石の微視的な穴・スロートの特徴面の要件に適合するようにする。補間アルゴリズムは、トリリニア補間とクリギング補間等のアルゴリズムを採用できる。補間の基本的なパラメータは、岩石コアの実際長さ、直径と二次元画像切片のスペース位置によって決まる。補間を通してMRI/T2三次元テンソルデータボリュームを取得する。
【0024】
(3)スペース不規則空隙ネットワークモデルを構築する。岩石コアのスケールによって、モデルの大きさ、リガンド数と平均穴・スロート長さを設置する。まずC++言語とマトリックス・コンピューティングライブラリEigen構造の規則的な立方体ネットワーク構造を採用して、一つのX×Y×Z三次元規則的な立方体回路網を生成する(X、YとZの値が、ステップで得るMRI/T2三次元テンソルデータボリュームの規模によって決まる)。ネットワークモデルの総ノード数が(X-1×(Y-1)×(Z-1)であると設定し、各ノードがそれぞれ一つの空隙を表し、ノードとノードとの間に、スロートチャンネル(丸管)を通じて繋がり、その他の部分が岩石の骨組であるように設定する。構築したネットワークモデルにおいて、空隙を表す各ノードの周辺に、六つのスロートが互いに繋がり、スロート長さが岩石平均穴・スロート長さ<l>であり、モデルのx、y、z方向の辺長がそれぞれLx=(X-1)<l>、Ly=(Y-1)<l>とLz=(Z-1)<l>であるようにする。モデルにおけるすべてのグリッド・ノードの間に、丸管を通じて完全接続を実現し(この時、任意ノードリガンド数z=6)、且つ、空隙とスロートとの半径比を1にする。LyとLzを、実際岩石コア径に設定し、且つ、各層のyoz平面における、中心点からの距離がLyを上回る点を全部取り外すことによって、モデルが、実際岩石コア形状に一致するプランジャー状モデルになるようにする。核磁気共鳴MRI/T2の三次元テンソルデータボリュームにおける数値を、三次元規則的な立方体ネットワークモデルにおけるノードに代入する(二つのノードの間の連結線値が穴・スロートの半径Rである)。ネットワークにおけるすべての穴・スロートの半径Rについて、隣の二つのノードにおけるMRI/T2値の平均値を取る。ネットワークにおける各ノードの座標を、球面内のスペース内において無作為に移動することによって、不規則ネットワーク・スペース構造を生成し、且つ、穴・スロート長さの無作為な変化を生じる。ネットワーク構造から、一部分の接続を無作為に取り除くことによって、異なる連結性(リガンド数)の特徴を持つ空隙ネットワークモデルを取得する。
【0025】
(4)デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデル。岩石コアサンプルの核磁気共鳴MRI/T2のデータボリュームにより反映されるものは、岩石内部空隙スペースの相対的なサイズ値であり、岩石の穴・スロート半径のサイズを反映しない。従って、ここで試行錯誤法を採用して、岩石の穴・スロート半径Riと相応なMRI/T2データ振幅Aiとの間の変換係数(Ri=αAi)を見積もることによって、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを構築することができる。変換係数の初期値を仮定して、ステップ(3)の方法に基づき、且つ、変換係数αを通して穴・スロート半径Riを計算することによって、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを取得してから、単相安定浸透空隙ネットワークシミュレーション・アルゴリズムを採用して、構築した岩石コアのデジタル化された空隙ネットワークモデルにおける浸透率を計算した後、シミュレーションで得た浸透率が、岩石コアの浸透率の測定値に一致しているか検証する。一致していない場合、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルにおける浸透率が、岩石コアの浸透率の実際測定値に基本的に一致するようになるまで、変換係数αを調整しながら、空隙ネットワークの穴・スロート半径Riを改めて計算し、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを改めて構築し、且つ、その浸透率の値を計算する。これで、実際岩石コアのサンプルに相応するデジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを得る。
【0026】
直径が2.5cmであり、長さが5cmである円筒状の岩石コアサンプルについて、それ相応の岩石コアのデジタル化された空隙ネットワークモデルにおけるノードが100万を上回る。この場合、一般CPUスパースマトリックス方程の求解アルゴリズムでこのような問題を解決することが難しいので、GPUアルゴリズムで計算と求解を行わなければならない。
【0027】
前記方法で構築されたデジタル化された岩石コアのネットワークモデルは、微視的な浸透メカニズムを、岩石コアスケールの孔隙率ネットワークに応用して数値シミュレーション研究を行うことができ、且つ、室内岩石コア実験で得られた巨視的な実験結果と対照検証を行うことができ、更に室内岩石コア分析の基盤の上により大きい規模のスケールアップ分析を行うことができるので、室内岩石コア分析と巨視的なスケールの油ガス鉱物数値シミュレーションの重要な補充であり、室内岩石コア分析と巨視的な油ガス鉱物数値シミュレーションとの間に、一つの橋を架ける。
【0028】
2、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルに適用される非定常流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルと数値シミュレーション手法を運用すること。
【0029】
構築した岩石コアのデジタル化された空隙ネットワークモデルの基盤の上に、多相流体移動プロセス及び流体-岩石骨組の相互作用関係を正しく説明する為に、流体力学のレイノルズ応力輸送方程式、有限体積法と流体-構造連成(FSI)浸透メカニズムを通して、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルに適用される非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルを導き出し、且つ、相応な陰的数値シミュレーション手法を提出して、核磁気共鳴MRI/T2に基づくデジタル化された岩石コアのモデリングと非定常流体-構造連成(FSI)浸透シミュレーションの一揃いの手法を形成する。
【0030】
(1)穴・スロートチャンネルにおける流体の非定常流動
孔隙スケールの非定常流動モデルは、圧力降下が慣性と流体粘度によるものであるという仮説に基づく。流動が層流状態であると仮定すると、Navier-Stokes方程式を簡素化することによって、円形管束内における流体の軸方向速度vrが、下記の通り、即ち、
【数8】
であることを得る。
NguyenとChoi(Nguyen, Q.H., & Choi, S.B., A new approach for an analytical solution of unsteady laminar flow in dispensing processes. Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers, Part C: Journal of Mechanical Engineering Science, 2010, 224(6), 1231-1243.)の研究によって、円形管束内における流体の軸方向速度vrの分布が、下記の通り、即ち、
【数9】
であることを得る。
式の中で、Rが円形管束の半径であり、Δpが管束両端の圧力差であり、lが管束長さであり、μが流体粘度であり、tが流動時間であり、ρが流体密度である。式2を採用して、管束半径R=1ミクロンと10ミクロンである時に、それぞれニュートン流体(水、密度ρ=1000kg/m3、粘度μ=1mPa・s)の流動時の速度を計算すると、次の事項、即ち、時間tがそれぞれ7e-7秒と5e-5秒に達する時に、流体の速度断面が、安定流動時の放物線分布に達することを発見できる。式2によって、微視的な穴・スロートチャンネルにおいて、流体の流動がより速く安定状態に達することを発見できるので、ポアズイユの式を、多孔質媒体中における流体の非定常流動に相変わらず運用できることを表す。(NguyenとChoiは、式2でマイクロナノメートル級の穴・スロートチャンネルにおける流体の流動を分析しなかった)
【0031】
(2)非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデル
有限体積法を採用して結論を導き出す。まず、空隙ネットワークにおける制御ボリュームが、空隙ネットワークにおける任意のノードを中心として、これに繋がるすべての管束の二分の一箇所を境界とする条件の下で含まれるすべての空隙スペースを指し、即ち、空隙ネットワークの総ノード数がNであると、制御ボリュームがN個ある。単相液体浸透プロセスは、下記仮説を満たす。1)流体が空隙ネットワークの管束境界を通り抜けて、管束外に達することができないこと、2)流体が連続相であり、且つ、ニュートン流体であること、3)流体の質量とエネルギーとの間の変換を無視することと4)液体と岩石骨組が、一定の圧縮性を有すること。実際浸透プロセスにおいて、岩石と流体が、微小な圧縮性を有するので、流動プロセス中において圧力伝播が不安定になり、圧力波の伝播を生じるようになる。以下は、非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルの導き出しプロセスである。
【0032】
圧力変化に伴う流体密度と岩石空隙スペース体積の変化は、下記の式を満たす(圧力変化による穴・スロート長さ変化を無視する)。
【数10】
式の中で、ρが流体密度であり(単位:kg/m3)、pが制御ボリューム中心ノード位置の空隙率流体圧力であり、単位がPaであり、Rがパイプ半径であり、Vpがパイプ体積であり(単位:m3)、Cpが空隙圧縮係数であり(単位:Pa-1)、Cρが液体圧縮係数である(単位:Pa-1)。前記式に対して、変量を分離した後、下記を得る。
【数11】
同じ道理で、穴・スロート半径Rが下記を満たす。
【数12】
式の中で、Vp0、R0、ρ0は、それぞれ初期時刻(p0圧力の下で)の空隙体積法、穴・スロート半径と液体密度である。マクローリン級数によって式4を展開した後、前の二項目を取ると、下記を得る。
【数13】
【0033】
空隙ネットワークにおいて、任意の制御ボリューム内における流動の質量保存の法則を、 レイノルズ応力輸送方程式で表す。
【数14】
式の中で、Vが、任意のノードを中心とする制御ボリューム体積を表し、ρvdAが、任意の時刻における、流体が制御ボリュームに流入したり、又はこれらか流出したりする質量流量を表す。レイノルズ応力輸送方程式は、ソース・シンク項がない状況の下で、制御面経由正味出力の当該物理量の流量及び制御ボリューム内の流体品質の地元時間に対する変化率を表す。任意の制御ボリューム内において、
【数15】
となる。
式の中で、4aと4bによって、
【数16】
となる。
【0034】
CpとCρが皆十分小さい数であるので、式7bの中の高次項を無視すると、下記を得る。
【数17】
式の中で、lijが隣のノードiとjとの間の穴・スロート長さである。
【0035】
制御ボリュームの中で任意の方向における穴・スロートチャンネル内の流体の流出入正味流量を下記の通り表す。
【数18】
式の中で、Aijが隣のノードiとjとの間の穴・スロートの断面積である。パイプの変形と圧力変動によって定常層流速度分布が壊される可能性があるが、式2の分析結果から見ると、微視的な穴・スロートチャンネル内の流体の流動速度断面が定常放物線速度分布まで速く回復することを発見できる。従って、任意の穴・スロートチャンネルの流量は、下記を満たす。
【数19】
式9aと9bから、下記導きだすことができる。
【数20】
式の中で、<p>ijが隣のノードiとjとの間の平均圧力であり、Δpijが隣のノードiとjとの間の管束内流体圧力差である。式6、8及び10によって、空隙ネットワークモデルの非定常単相液体流動数学モデルを得る。
【0036】
【数21】
式の中で、Ct=Cρ+Cpであり(Ctが総合圧縮係数である)、方程式両端の流体密度が消去されて、Δtが時間ステップである。(式の中で、qijが管束内流体の体積流量であり、gijが管束内液体の水力伝導率である)。式11が拡散方程式であり、当該方程式は、空隙ネットワークモデルでの流体プロセス中の圧力拡散(伝播)を述べる。Ct=Cρ+Cp=0である場合、式11がキルヒホッフの法則とラプラス方程式(安定単相浸透数学モデル)に退化する。
【0037】
(3)非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデル
実在ガスに対して、ガス密度ρgとガス圧縮率因子Cgの計算式は下記の通りである。
【数22】
式の中で、Mがガス分子のモル質量であり、Zがガス偏差因子であり、pが制御ボリューム中心ノードの圧力であり、Rgがガス常数であり、Tがケルビン温度である。空隙ネットワークモデルにおけるガスの流動プロセスは、相変わらずレイノルズ応力輸送方程式(式6)を満たす。この時、式6の左側第一項を、下記の関係式で表すことができる。
【数23】
式4、5と12から、下記導きだすことができる。
【数24】
その中で、
【数25】
となる。
【0038】
前記と同じように、Cpと比べて、CpCρが十分小さい数であり、当該項を無視した後、式14によって下記を得る。
【数26】
ガス流動について、レイノルズ応力輸送方程式(式6)の左側第二項目が下記の関係式を満たす。
【数27】
この時、ガスが流れて制御面を通り抜ける時の正味流量方程式は、下記の通りである。
【数28】
式6、式15と式17の連立方程式によって、空隙ネットワークに適用される非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルの構造式を得る。
【0039】
【数29】
式18における非線形項p/Zμgに対する処理は、下記の通りである。低圧条件(ガス圧力が10MPaを下回る)の下で、ガスが理想気体であると仮定すると、この時にガス偏差因子Zが1である。ガス粘度μgが、圧力から僅か小さい影響を受けて、μgが常数であると考えても良い。数値解法を採用する場合、式18の中の圧力pについて、前の時間ステップの圧力値を、直接に代入して、次の時間ステップの圧力場を計算することができる。この時に、式18の両側の圧力を消去することができる。高圧条件(ガス圧力が10Mpaを上回る)の下で、p/Zμgが常数に近似的に等しい。以上の二つの条件を満たす時に、式18を下記のように簡略化することができる。
【0040】
【数30】
式の中で、ggijが管束内ガス流動の水力伝導率である。この時、ガス圧縮率因子Cgが、岩石の空隙圧縮率因子Cpより遥かに大きいので、上式の右側項に空隙圧縮率因子が無視されている。式11と式19を比べる時に、非定常単相液体流体コウ構造連成(FSI)浸透(式11)と非定常単相ガス流体コウ構造連成(FSI)浸透(式18と式19)は、異なる制約条件の下で、同じ数学表現式を有することを発見できる。
【0041】
制約条件非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデル
ここでの多相は、油-水両相、ガス-水両相と油-ガス両相を指す。これから油-水両相の排除プロセスを例として説明する。水による油排除プロセスは、下記の仮設を満たす。1)任意の穴・スロートにおける異なる流体の間に、最大に一つの流体界面があること、2)流動プロセスにおいて、混相,プロセス中において、混合相が発生しないこと、3)穴・スロートにおいて、ピストン式排除が発生することと4)重力の影響を無視すること。
【0042】
排除プロセス中において、任意の隣のノードiとjとの間の穴・スロートチャンネル内において、混合流体の密度計算式は下記の通りである。
【数31】
ノードiを中心とする任意の制御ボリューム内において、混合流体の密度計算式は下記の通りである。
【数32】
式の中で、ρIが注入流体の密度であり、ρDが被排除流体の密度であり、VijIとVijDがそれぞれノードiとノードjとの間の穴・スロートチャンネル内における注入流体と被排除流体の体積であり、VIとVDがノードiを中心とする制御ボリューム内における注入流体と被排除流体の体積である。計算プロセスを簡略化する為に、ここで、ノードiを中心とする制御ボリューム内における混合流体の密度が、ノードiとjとの間の穴・スロートチャンネル内における混合流体の密度に近いと仮定するので、制御ボリューム内における混合流体の有効密度ρeffが次の通りであると定義する。
【0043】
【数33】
式の中で、SIとSDがそれぞれiを中心とする制御ボリューム内の注入流体と被排除流体の飽和度である。制御ボリューム内に注入流体に満ちる時に、SI=1となり、制御ボリューム内における流体密度がρeffIとなる。被排除流体に満ちる時に、制御ボリューム内における流体密度がρeffDとなる。空隙ネットワークモデルにおいて、任意の制御ボリューム内において、混合流体の圧縮性は、下記の関係式を満たす。
【数34】
式の中で、Ceffρが、混合流体の有効圧縮率因子であり、ρeff0が、初期条件(圧力p0)の下での混合流体の密度であり、CIとCDが、それぞれ注入流体と被排除流体の圧縮率因子である。非混合相排除プロセス中において、任意の時刻に、空隙ネットワークモデルにおける多相流体の流動プロセスは、皆レイノルズ応力輸送方程式を満たす。非定常単相流体(ガスと液体)流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルの導き出しプロセスにおいて採用される方法と類似して、非混合相排除プロセスの下での流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルを得ることができる。
【0044】
【数35】
式の中で、gijが管束内流体の水力伝導率であり、pcijがノードiとjとの間の穴・スロートチャンネルの毛管力であり(当該穴・スロートチャンネルに、非混合相流体界面が存在する時に、pcij=2γcosθ/Rij,γが非混合相流体の間の界面張力であり、θが湿潤接触角であり、穴・スロートチャンネルが単相流体である時に、pcij=0となる)、μeffがノードiとjとの間の混合流体の有効粘度であり(μeffIXijD(1-Xij)、Xijが、穴・スロートチャンネル内における非混合相流体界面の相対位置であり(0≦Xij≦1)、μIが注入流体の粘度であり、μDが被排除流体の粘度である。制御ボリューム内に注入流体がある時に、μeffIとなる。制御ボリューム内に被排除流体しかない時に、μeffDとなる。二相流体界面が存在するある穴・スロートチャンネルに、Δpij<pcijとなる時に、相応の径・スロートの水力伝導率gij=0となるので、この時、当該流体界面が「ロック」される。空隙ネットワークのすべての制御ボリューム内に、皆単相の流体(ガス、油又は水)しかない時、式23は、式11又は式19に退化する。
【0045】
式23は、油-水、ガス-水と油-ガスの二相浸透に適用される。多相浸透プロセス中において、ある相の流体がガスである時に、ガスの圧縮率因子Cgを、式13で計算する。ガスが理想気体であると仮定すると、ガス圧縮率因子Cg=1/pとなる。
【0046】
(5)非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法
流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデル(式23)は、非定常単相浸透数学モデル(式11と19)の更なる押し広めと見なしても良い。ここで、式23を例として数値シミュレーション手法を説明する。まず、式23における非線形毛管圧力項に対して線形化処理を行う。
【0047】
【数36】
これで、式23aを下記の式に書き直す。
【数37】
式25と式23が完全に同等であるが、数学的モデルの形式が非定常単相浸透数学モデル(式11と19)に一層近い。陰的数値シミュレーション手法を採用して、ソース・シンク項Qiを導入して(あるノード内に外部流体注入がある可能性があるか、又は流体が空隙ネットワークモデルから流出する可能性があることを表す。さもなければ、Qi=0となる)、式25に対して離散処理を行う。
【0048】
【数38】
式の中で、上付き文字tが現在時刻の下での流動状態を表し(流体水力伝導率と圧力)、上付き文字t+Δtが次の時刻の流動状態を表す。式26における異なる時刻の流動状態について分離と合併を行うことによって(現在の流動状態量を、方程式の右側に置き、次の時刻の流動状態量を、方程式の左側に置く)、下記を得る。
【数39】
【0049】
空隙ネットワークモデルにおけるすべてのネットワーク・ノードを走査した後、空隙ネットワークモデルにおけるすべての制御ボリュームが、皆現在の時刻と次の時刻の流動状態を、式26bに代入することによって、式26bと類似するN個の方程式から構成される連立方程式を得ることができる。連立方程式の下付き文字によって、連立方程式を、マトリックス形式[A]t+Δt[X]t+Δt=[B]tに整理することができる。
【0050】
【数40】
その中で、
【数41】
式の中で、[A]t+Δtが、N×Nサイズの流体水力伝導率関連スパースマトリックスであり(Nが、空隙ネットワークモデルのノード数である)、[X]t+Δtと[B]tが、長さがNである二つのベクトルであり、[X]t+Δtが次の時刻の圧力場ベクトルであり、[B]tが前の時刻の圧力場と境界条件関連ベクトルである。以上のマトリックス方程式の解を求めることによって、現在時刻の空隙ネットワークモデルにおける流体圧力場分布を得ることができる。
【0051】
流動プロセス中において、二相の界面が時間に連れて推進されるので、一つの時間ステップを選定することによって、当該時間ステップ内における流体界面に皆適量の変位Δx=Δt(qij/Aij)(Aijが穴・スロートチャンネルの断面積である)が発生するようにしなければならない。ここでの「適量」は、精度を保証する前提の下で、運算回数をできるだけ削減しなければならないことを指す。ここで、固定時間ステップを採用できる。固定時間ステップは、浸透過渡状態を、長さの等しい時間間隔Δtk(k=1,2,…)に分けることを指す。Δtkが十分小さい時に、隣の時間ステップの圧力場変化が安定性と線形性を持つと考えても良い。この時に、単相流と部分的に同じ手法で、圧力場の解を求めることができる。
【0052】
シミュレーションプロセスにおいて、可変時間ステップ手法を採用して、数値シミュレーション計算速度を速めることができる。排除プロセスを、下記の状態になるまで行う。各時間ステップの下で、界面移動後の新しい流体界面位置を計算し、且つ、全体的な空隙ネットワーク・スペースに浸入流体がいっぱいになるか、又はある飽和度数値に達する時に、停止型におけるすべての穴・スロートチャンネルの水力伝導率とモデルにおける各相流体の飽和度をアップデートした後、圧力場の解を求める。シミュレーションプロセス中において、流体界面移動発生後、水力伝導率をアップデートする必要があり、且つ、ひどい場合、流体界面が「ロック」されるので、求解プロセス中において、一つの酷い病態のあるマトリックス(式27)が発生して、計算難度が大きく増加する可能性がある。シミュレーションプロセス中において、AMGCLアルゴリズム・ライブラリの中のGPU代数多重グリッド一般化最小残差アルゴリズム(AMG-GMRES)を使用して、以上のマトリックスの解を求める。全体的なシミュレーションプロセス中において、流量Qが変わらない。
【0053】
本発明は、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法を結びつけることによって、室内岩石コア流動実験のプロセスを模擬・再現でき、それに加えて、室内岩石コア実験における、デジタル化された単相・多相(油・水、ガス・水と油・ガス)流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション分析とテストを実現できる。本発明で提出された流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法と、CTスキャンに基づくデジタル化された岩石コアのネットワークモデル等の関連手法を結びつけることによって、多相浸透シミュレーションと分析を行うことができる。
【0054】
本発明で提出されたシミュレーション技術において、陰的方法で空隙ネットワークモデルにおける、現在時刻の圧力場分布を計算した後、二相の流体界面移動を明示的に計算する。本発明で提出された、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデル構築と多相浸透シミュレーション手法において、GPU計算加速技術を通してモデルスケール、精度と計算効率を向上させることによって、同じ浸透数学モデルに基づく、空隙ネットワーク、室内岩石コアと物理モデル実験から、シャフト-単油井の油鉱物モデルスケールのマルチスケールの飛躍を実現することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明は、下記の有益効果を有することになった。
【0056】
1、高精度核磁気共鳴画像法におけるMRIとT2スペクトルのデータを採用して、補間アルゴリズムと無作為不規則空隙ネットワークモデルを結びつけることによって、室内実験における、デジタル化された岩石コアサンプルの空隙ネットワークモデルを構築したこと、更に当モデルは、早期のデジタル岩石コアのスケールが小さいので、多相浸透分析の実施に不利である問題を克服して、スケールが大きく、精度が高く、且つ、実際岩石サンプルの大きさ及び特徴に直接に相応する利点を有して、岩石の微視的な穴・スロートの非均質性と巨視的な非均質性による浸透プロセスに対する影響を一層全面的に分析することによって、石油と天然ガスの採取率ソリューション研究力を補助的に向上させることができること、
2、単一の微視的な円形チャンネルにおける流体の非定常流動特徴と分析することによって、ポアズイユの式と放物線形態の速度断面が相変わらず空隙スケールの非定常浸透プロセスに適用されるのを証明したことと、
3、単相液体浸透モデルにおいて、液体と岩石骨組の微小な圧縮性特徴とこれらの連成作用関係を分析することによって、単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを得たこと、更に、単相ガス浸透モデルにおいて、岩石骨組の微小な圧縮性及びガスの比較に強い圧縮性を同時に考え、且つ、ガス圧縮と固体岩石骨組形状変化との連成作用関係に基づいて、単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを得ることによって、空隙スケール流体-構造連成(FSI)浸透理論と方法を更に整備したこと、
4、空隙ネットワークモデルにおいて、単相ガス非定常浸透と単相液体非定常浸透が、類似する数学的な表現様式を有するので、多相(油-水、ガス-水と油-ガス)浸透数学モデルをさらに導き出すことができること、更に、空隙ネットワーク多相浸透数学モデルに、流体-構造連成(FSI)を導入することによって(液体と岩石骨組の微小な圧縮性とガスの圧縮性を考えた)、非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルを構築し、且つ、数学モデルに相応する陰的数値シミュレーション手法を導きだすことによって、空隙スケール流体-構造連成(FSI)多相浸透理論と数値シミュレーション手法を更に整備したこと、
5、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法を結びつけることによって、室内実験における岩石コア流動(排除と自己吸収等)の実際実験プロセスと結果を模擬・再現でき、それに加えて、数値シミュレーションと岩石コア流動実験の磁気共鳴MRI画像の分析結果を直接比べて分析することによって、シミュレーション結果の真実性と信頼性を確保すること、
6、GPUアルゴリズムを通して、モデルの構築速度と多相浸透シミュレーション速度を大幅に向上させることができるので、同じ岩石サンプルで、異なる排除速度(又は圧力)の下での浸透シミュレーション研究を実施でき、室内岩石コア実験と比べて、短いサイクル、速い速度、便利な操作と正確な結果等の優位性を有して、室内岩石コア流動実験の重要な補充であること、
7、一部分の室内岩石コア流動実験分析について、高温高圧の下で実施しなければならず、且つ、操作が比較に複雑である状況と比べて、本発明で提出されたモデリングとシミュレーション手法を採用すると、温度と圧力に基づいて、岩石骨組と流体関連パラメータを調整するだけで、高温高圧の下での多相浸透シミュレーション研究と分析を実現でき、且つ、岩石コア流動分析結果を便利に、速く得ることができることと、
8、同じように、本発明で提出された非定常流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法と、CTスキャンに基づくデジタル化された岩石コア/空隙ネットワークモデル等の関連方法を結びづけることによって、多相浸透シミュレーションと分析を行うことができること。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明における技術的なフローチャートである。
図2】核磁気共鳴MRIスキャンのフローチャートである。
図3】岩石コアの異なる位置における核磁気共鳴MRI二次元画像の例示図である。
図4】核磁気共鳴MRI/T2に基づく三次元テンソルデータの可視化画像の模式図である。
図5】スペース不規則ネットワークの構築方法の模式図である。
図6】デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルの模式図である。
図7】デジタル化された岩石コアモデルにおける二相排除プロセスの例示図一である。
図8】デジタル化された岩石コアモデルにおける二相排除プロセスの例示図二である。
図9】デジタル化された岩石コアモデルにおける二相排除プロセスの例示図三である。
図10】デジタル化された岩石コアモデルにおける二相排除プロセスの例示図四である。
図11】デジタル化された岩石コアモデルにおける二相排除プロセスの例示図五である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の技術的特徴、目的と有益効果を、一層明らかに理解する為に、現在本発明の技術的解決手段を、下記の通り説明する。説明している実施形態が明らかに本発明の一部分の実施形態だけであり、全部の実施形態ではなく、且つ、本発明の実施可能な範囲に対する制限と見なしてはいけない。本発明の実施形態に基づき、本分野の普通の技術者が、創造性労働を実施していない前提の下で取得するすべてのその他の実施形態は、皆本発明の保護範囲に属する。
【実施例0059】
当該実施形態において、図1で示すように、室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法であり、技術フローは、下記を含む。まず岩石コアサンプルを選んでから、乾燥した後、岩石コアの穴・スロート長さ、空隙率と浸透率を測定し、それに加えて、岩石コアサンプルに対して真空排気を行って、飽和度について地層水又は地層原油を模擬すること、岩石コアサンプルに対して核磁気共鳴MRI/T2スキャン測定を行って異なる断面における岩石コアの二次元画像を取得すること、二次元画像に対して補間を行って、岩石コアMRI/T2の三次元データボリュームを取得すること、三次元不規則空隙回路網モデルを構築して、MRI/T2三次元データボリュームを、三次元不規則空隙ネットワークモデルのノードに代入すること、変換係数αを通して、三次元不規則空隙ネットワークモデルにおける各隣のノードの穴・スロート半径を計算して、岩石コアのデジタル化された空隙ネットワークモデルの浸透率の模擬計算を行い、それに加えて、変換係数αの大きさを調整することによって、空隙ネットワークの浸透率が岩石コアの浸透率の実測値に近いことを確保し、それに加えて、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを構築することと、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法を結びつけて岩石コア流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーションを行うことという六つのステップを含むこと。
【0060】
本実施形態において、方法の具体的な実現プロセスは、下記の通りである。
【0061】
1、核磁気共鳴MRI/T2に基づく、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデル
(1)核磁気共鳴MRI/T2データによって、岩石コアの二次元画像を取得する。
本発明における核磁気共鳴測定は、MesoMR23-60H-I型核磁気共鳴装置を採用し、且つ、逆パルス配列とCarr-Purcell-Meiboom-Gillパルス配列を採用して、核磁気共鳴信号を測定する。SIRT(同時繰り返し再構築技術)逆転アルゴリズムを利用してT2分布を生成する。磁場強度が0.5tである低い磁場の核磁気共鳴岩石コア分析システム(MesoMR-060H-HTHP-I)を採用して測定する。主なテストパラメータが、主導周波数(21.326MHz)、エコー間隔(TE=0.2ms)、極化時間ステップ(TW=3000ms)とエコー数(NECH=8000)を含む。岩石コアのスキャンプロセスにおいて、長さが5cmであり、直径が2.5cmである標準岩石コアを、定常磁場内に置き、且つ、x、y、zという三つの方向で皆勾配磁場を施すことによって、勾配磁場強度=勾配磁場両端の磁場強度差/勾配磁場の長さにする。サンプルを採取する時に、最初に層内の共鳴を一致させて、磁場に対して位相コード勾配を施してから、位相コード勾配を撤去した後、周波数コード勾配を施してボクセル毎に一つの記号を表記する。このプロセスは、コーディング又はスペース位置決めを称する。ある層に対して、ラジオ周波数パルスを施した後、当該層のMR信号を受信する。これから、ディコーディングを行うことによって、当該層における各ボクセルMR信号の大きさを得た後、層における各ボクセルのコードとの対応関係によって、ボクセル信号のサイズを、スクリーンの相応のピクセルに表示する。核磁気共鳴画像法の具体的なスキャン・フローチャートは図2で示す通りである。信号の大きさは、異なるグレースケール等級で表示されて、信号が大きければ大きいほど、ピクセル輝度が大きくなるが、信号が小さければ小さいほど、ピクセル輝度が小さくなる。岩石コアの異なる位置に対して切片処理を行うことによって、異なる位置における岩石コアMRI二次元画像を取得することができる。実験用器具のスキャン精度によって、実験用器具の処理可能な範囲内において、適切な切片位置と断面数(例えば断面数6、図3)を選んで図4で示すように、岩石コアの異なる切片位置における核磁気共鳴MRI二次元画像を取得する。切片位置座標とピクセルデータを、TXTテキストに保存する。単枚の二次元写真内のピクセル点間隔と二枚の二次元写真の間の間隔は、スキャナーの解像度によって決まる。
【0062】
(2)岩石コアの核磁気共鳴MRI/T2の三次元テンソルデータボリュームの取得
通常の状況の下で、実際埋蔵地層における岩石穴・スロート長さ/変化範囲が50~300ミクロンであり、平均穴・スロート長さ/約100~150ミクロンである(Bernabe, Y., Li, M., Tang, Y. B., & Evans, B., Pore space connectivity and the transport properties of rocks. Oil & Gas Science and Technology, 2016, 71(4), 50)。岩石コア穴・スロート長さの大まかな範囲によって、磁気共鳴画像法におけるデータボリュームに対して補間を行うことによって、データボリューム規模が、反応岩石の微視的な穴・スロートの特徴面の要件に適合するようにする。補間アルゴリズムは、トリリニア補間とクリギング補間等のアルゴリズムを採用できる。補間の基本的なパラメータは、岩石コアの実際長さと二次元画像切片のスペース位置によって決まる。補間後取得するMRI/T2三次元テンソルデータボリュームは、デジタル化された岩石空隙ネットワークモデルの構築為のデータ規模を基本的に満たす(図14で示すように)。
【0063】
(3)スペース不規則構造空隙ネットワークモデルの構築
岩石コアのスケールによって、モデルの大きさ、リガンド数と平均穴・スロート長さを設置する。まずC++言語とマトリックス・コンピューティングライブラリEigen構造の規則的な立方体ネットワーク構造を採用して、一つのX×Y×Z三次元規則的な立方体回路網を生成する。これから、ネットワークモデルの総ノード数が(X-1×(Y-1)×(Z-1)であると設定し、各ノードがそれぞれ一つの空隙を表し、ノードとノードとの間に、スロート(均一な円形パイプ)を通じて繋がり(モデル二次元断面が図6で示すように)、その他の部分が、固体粒子状物質で満ちる。ここで構築されるネットワークにおいて、空隙を表す各ノードの周辺に、六つのスロートが互いに繋がり、スロート長さが、常数l=150μmであると設定し、スロート半径が、単位1であると設定し、且つ、モデルのx、y、z方向の辺長がそれぞれLx=(X-1)×l、Ly=(Y-1)×lとLz=(Z-1)×lであるようにする。ネットワークモデルにおける各ノードの座標を記録する。モデルにおけるすべてのグリッド・ノードの間に、丸管を通じて完全接続を実現し(この時、任意ノードリガンド数z=6)、且つ、空隙とスロートとの半径比を1にする。LyとLzを設定し、且つ、各層のyoz平面における、中心点からの距離が0.5Lyを上回る点を全部取り外すことによって、モデルが、実際岩石コア形状に一致するプランジャー状モデルになるように設定する。核磁気共鳴MRI/T2の三次元テンソルデータボリュームにおける数値を、三次元規則的な立方体ネットワークモデルにおけるノードに代入する(二つのノードの間の連結線値が穴・スロートの半径Rである)。ネットワークにおけるすべての穴・スロートの半径値について、隣の二つのノードにおける数値の平均値を取る。これから、ネットワークにおける各ノードの座標を、球面内のスペース内において無作為に移動することによって、不規則ネットワーク・スペース構造を生成する。図5で示すように、ネットワーク構造から、一部分の接続を無作為に取り除くことによって、異なる連結性(リガンド数)の特徴を持つ空隙ネットワークモデルを取得する。
【0064】
(4)デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデル
以上の方法で、核磁気共鳴MRI/T2に基づく、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデル(図6)を得ることができる。岩石コアサンプルのMRIのデータボリュームにより反映されるものは、岩石内部空隙スペースの相対的なサイズ値であり、岩石の穴・スロート半径のサイズを直接に反映しない。従って、ここで試行錯誤法を採用して、岩石の実際穴・スロート半径とMRIデータボリュームとの間の変換係数を得ることによって、 岩石の穴・スロート半径値を見積もり、且つ、空隙ネットワークモデルの構築に用いることができる。変換係数の初期値を仮定して、変換係数を通して穴・スロート半径Riを計算することによって、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを取得してから、単相安定浸透空隙ネットワークシミュレーション・アルゴリズムを採用して、構築した岩石コアのデジタル化された空隙ネットワークモデルにおける浸透率を計算した後、シミュレーションで得た浸透率が、岩石コアの浸透率の測定値に一致しているか検証する。一致していない場合、空隙ネットワークモデルにおける浸透率が、岩石コアの浸透率の実際測定値に基本的に一致するようになるまで、変換係数αを調整しながら、空隙ネットワークの穴・スロート半径Riを改めて計算し、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを改めて構築し、且つ、その浸透率の値を計算することによって、実際岩石コアのサンプルに相応するデジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを得る。
【0065】
空隙ネットワークモデルにおける浸透率の計算方法(Tang, Y. B., Li, M., Bernabe, Y., & Zhao, J. Z., Viscous fingering and preferential flow paths in heterogeneous porous media. Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 2020, 125(3), e2019JB019306):キルヒホッフの法則によって、ノード内流体の流出入の流量総和がゼロである。流体が空隙ネットワークにおいて移動する時に、ラプラス方程式:
【数42】
を満たす(gが水力伝導率であり、pが圧力である)。ラプラス方程式を、空隙ネットワークモデルに応用することによって、空隙ネットワークモデルにおける、流体定常浸透の時に質量保存の法則:Σjqij=0を満たすことを得る。この関係によって、空隙ネットワークにおけるすべてのノードを走査することによって、線性連立方程式又はスパースマトリックス方程式[A][X]=[B]を構築することができる。本研究において、共役勾配を採用して、前記マトリックス方程式の解を求めることによって、ネットワークモデルにおいて流体が流動する流体圧力場を得ることができる。これから入口端と出口端との圧力差を通して、モデルにおける流体の流入と流出の流量及び、モデルの浸透率を計算する。
【0066】
2、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルに基づく流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション
シミュレーションのプロセス中において、デジタル化された岩石コアのネットワークモデルでの飽和油について、水を定常速度Qで、岩石コアの左端面中心の入口箇所から、モデルに注入して、モデル中の油を排除する。モデル右端出口端の圧力が、大気圧0.1MPaであると設定してから、前記条件を、式27に代入した後、本発明で提出された非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルと数値シミュレーション手法を採用して、岩石コアにおける、水による油排除シミュレーション分析を行う。図7図11は、本発明で構築されたデジタル化された岩石コアモデルにおける二相排除プロセスの例示図であり、t1~t5という異なる時刻において、注入水が侵入して、穴・スロートスペースを占拠する画像を示す。その中で、赤色が排除相流体の侵入により占拠されるパイプであり、被排除相流体が表示されていない。
【0067】
以上内容は、本発明の基本原理、主な特徴と本発明の利点を表示して説明した。本業界の技術者は、下記の内容即ち、本発明が、前記の実施形態により制限されず、前記の実施形態と明細書に記述されているものが、本発明の原理であり、且つ、本発明の宗旨と範囲に背かない前提の下で、本発明に対して各種の変化と改善を行うことができ、これらの変化と改善を、皆保護が要求される本発明の範囲内に取り込む。保護が要求される本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及び等価な文書によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のように、即ち、
ステップ一:まず岩石コアサンプルを選んでから、乾燥した後、岩石コアの穴・スロート長さ、空隙率と浸透率を測定し、それに加えて、岩石コアサンプルに対して真空排気を行って、飽和度について地層水又は地層原油を模擬すること、
ステップ二:岩石コアサンプルに対して核磁気共鳴MRI/T2スキャン測定を行って異なる断面における岩石コアの二次元画像を取得すること、
ステップ三:二次元画像に対して補間を行って、岩石コアMRI/T2の三次元データボリュームを取得すること、
ステップ四:
(4-1):三次元不規則空隙ネットワークモデルを構築して、
(4-2):MRI/T2三次元データボリュームを、三次元不規則空隙ネットワークモデルのノードに代入することにより、完成三次元不規則空隙ネットワークモデルを作成すること
ステップ五:変換係数αを通じて、前記完成三次元不規則空隙ネットワークモデルにおける各隣のノードの穴・スロート半径を計算して、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルの浸透率の模擬計算を行い、それに加えて、変換係数αの大きさを調整することによって、空隙ネットワークの浸透率が岩石コアの浸透率の実測値に近いことを確保し、それに加えて、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを構築することと、
ステップ六:デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法を結びつけて岩石コア流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーションを行うことという六つのステップが含まれており、
前記ステップ二が、具体的に下記の内容、即ち、1、核磁気共鳴装置を利用して、真空排気・飽和度数値シミュレーション後の岩石コアサンプルに対して、核磁気共鳴スキャンを行い、それに加えて、SIRT逆転アルゴリズムを利用してT 2 分布を生成することと、2、岩石コアの各位置に対して切片処理を行い、それに加えて、核磁気共鳴装置のスキャン精度によって、核磁気共鳴装置の処理可能な範囲内において、適切な切片位置と断面数を選んで岩石コアに対して核磁気共鳴スキャンを行って岩石コアの異なる切片位置における岩石コア核磁気共鳴MRI二次元画像を取得した後、切片位置座標と二次元画像のピクセルデータを、二次元画像TXTテキストに保存することという二つの内容を含み、
前記ステップ三が、具体的に下記の内容、即ち、補間アルゴリズムを利用し、それに加えて、ステップ二で取得した二次元画像TXTテキスト及びステップ一における岩石コア穴・スロート長さに結びついて、核磁気共鳴画像法におけるデータボリューム、即ち、岩石コアの核磁気共鳴MRI二次元画像に対して補間処理を行うことによって、データボリューム規模が、反応岩石の微視的な穴・スロートの特徴面の要件に適合するようにし、これで、岩石コアMRI/T 2 の三次元テンソルデータボリュームを取得することを含み、
前記ステップ四が具体的に下記のサブステップ、即ち、
S401:岩石コアのスケールによって、モデルの大きさ、リガンド数と平均穴・スロート長さを設置すること、
S402:コンピュータープログラミング言語とマトリックス・コンピューティングライブラリEigen構造の三次元規則的な立方体ネットワーク構造を採用して、一つのX×Y×Z三次元規則的な立方体ネットワークを生成すること、
S403:立方体ネットワークの総ノード数が(X-1×(Y-1)×(Z-1)であり、各ノードがそれぞれ一つの空隙を表し、ノードとノードとの間に、スロートを通じて繋がり、その他の部分が岩石の骨組であるように設置すること、
S404:1、構築した立方体ネットワークモデルにおいて、空隙を表す各ノードの周辺に、六つのスロートが互いに繋がり、スロート長さが岩石平均穴・スロート長さ<l>であり、立方体ネットワークモデルのx、y、z方向の辺長がそれぞれL x =(X-1)<l>、L y =(Y-1)<l>とL z =(Z-1)<l>であるようにし、立方体ネットワークモデルにおけるすべてのグリッド・ノードの間に、丸管を通じて完全接続を実現し、且つ、空隙とスロートとの半径比を1にすることと、2、L y とL z を、実際岩石コア径に設定し、且つ、各層のyoz平面における、中心点からの距離がL y を上回る点を全部取り外すことによって、立方体ネットワークモデルが、実際岩石コア形状に一致するプランジャー状モデルになるようにすること及び
S405:1、核磁気共鳴MRI/T 2 の三次元テンソルデータボリュームにおける数値を、三次元規則的な立方体ネットワークモデルにおける各ノードに代入すること(二つのノードの間の連結線値が穴・スロートの半径Rである)、2、ネットワークにおけるすべての穴・スロートの半径Rについて、隣の二つのノードにおけるMRI/T 2 値の平均値を取ること、3、モデルにおける各ノードの座標を、球面内のスペース内において無作為に移動することによって、不規則ネットワーク・スペース構造を生成し、且つ、穴・スロート長さの無作為な変化を生じることと4、ネットワーク構造から、一部分の接続を無作為に取り除くことによって、異なる連結性の特徴を持つ空隙ネットワークモデルを取得することという四つのステップを含み、
前記ステップ五が具体的に下記のステップ、即ち、1、変換係数の初期値がαであると仮定して、ステップ四の方法に基づき、且つ、変換係数αを通して穴・スロート半径R i を計算することによって、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを取得した後、単相安定浸透空隙ネットワークシミュレーション・アルゴリズムを採用して、構築した岩石コアのデジタル化された空隙ネットワークモデルにおける浸透率を計算した後、シミュレーションで得た浸透率が、岩石コアの浸透率の測定値に一致しているか検証することと2、一致していない場合、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルにおける浸透率が、岩石コアの浸透率の実際測定値に基本的に一致するようになるまで、変換係数αを調整しながら、空隙ネットワークの穴・スロート半径R i を改めて計算し、デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを改めて構築し、且つ、その浸透率の値を計算することによって、実際岩石コアのサンプルに相応するデジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルを得ることという二つのステップを含み、
前記ステップ六が具体的に下記のサブステップ、即ち、
S601:岩石コアサイズの空隙ネットワーク結合非定常流動モデルに基づいて穴・スロートチャンネルにおける流体の非定常流動を分析して、円形管束における流体軸方向速度v r 分布を分析すること、
S602:単相液体浸透プロセスが適合すべき仮設条件に基づいて、有限体積法とルノー輸送方程式を採用して、非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを構築すること、
S603:単相ガス浸透プロセスにおけるガス密度ρ g とガス圧縮率因子C g に基づき、且つ、 ルノー輸送方程式に結びついて、低圧と高圧条件に同時に適合する非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを構築すること、
S604:非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルと非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルを利用し、且つ、空隙ネットワークモデルにおける混合流体の特性パラメータに結びついて、非混合排除のプロセス下での流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルを構築することと、
S605:デジタル化された岩石コアの空隙ネットワークモデルと非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法を結びつけて岩石コア流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーションを行うことという五つのステップを含むことを特徴とする室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法。
【請求項2】
前記非定常単相液体流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルが次の式、即ち、
【数43】
で示す通りであることを特徴とする請求項に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法(式の中で、Ct=Cρ+Cpであり、Ctが総合圧縮係数であり、Cpが空隙圧縮係数であり(単位:Pa-1)、Cρが液体圧縮係数であり(単位:Pa-1)、Δtが時間ステップであり、qijが管束内流体の体積流量であり、gijが管束内液体の水力伝導率であり、<p>ijが隣のノードiとjとの間の平均圧力であり、Δpijが隣のノードiとjとの間の管束内流体圧力差であり、Vpi0が初期時刻におけるノードiの空隙体積であり、R0ijが初期時刻におけるノードiとjとの間の穴・スロート管束の半径であり、lijが隣のノードiとjとの間の穴・スロート長さであり、nが制御ボリュームの中心ノードiにつながって続いているノード数であり、μが流体粘度である)。
【請求項3】
前記非定常単相ガス流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルが次の式、即ち、
【数44】
で示す通りであることを特徴とする請求項に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法(式の中で、ggijが管束内ガス流動の水力伝導率であり、μgがガス黏度であり、p/Zμgが非線形項であり、pが制御ボリューム中心ノード位置の空隙率流体圧力であり、Rgがガス常数である)。
【請求項4】
前記流体-構造連成(FSI)浸透数学モデルが次の式、即ち、
【数45】
で示す通りであることを特徴とする請求項に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法(式の中で、gijが管束内流体の水力伝導率であり、pcijがノードiとjとの間の穴・スロートチャンネルの毛管力であり、μeffがノードiとjとの間の混合流体の有効粘度であり、CIとCDがそれぞれ注入流体と被排除流体の圧縮率因子であり、SIとSDがそれぞれiを中心とする制御ボリューム内の注入流体と被排除流体の飽和度である)。
【請求項5】
前記非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーション手法が具体的に下記のステップ、即ち、
S701:まず、流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルにおける非線形毛管圧力項に対して線形化処理を行うことによって、
【数46】
線形化後の流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルを取得すること、
【数47】
S702:陰的数値シミュレーション手法を採用して、ソース・シンク項Qiを導入して線形化後の流体-構造連成(FSI)多相浸透数学モデルに対して離散化処理を行った後、
【数48】
を得ること(式の中で、上付き文字tが現在時刻の下での流動状態を表し、上付き文字t+Δtが次の時刻の流動状態を表す)、
S703:ステップ7023公式における異なる時刻の流動状態について分離と合併を行うことによって、
【数49】
を得ること、
S704:空隙ネットワークモデルにおけるすべてのネットワーク・ノードを走査した後、空隙ネットワークモデルにおけるすべての制御ボリュームが、皆現在の時刻と次の時刻の流動状態を、ステップS703の公式に代入して整理してから、下記のマトリックス、即ち、

[A]t+Δt[X]t+Δt=[B]tを形成した後
(式の中で、[A]t+Δtが、N×Nサイズの流体水力伝導率関連スパースマトリックスであり、Nが、空隙ネットワークモデルのノード数であり、[X]t+Δtと[B]tが、長さがNである二つのベクトルであり、[X]t+Δtが次の時刻の圧力場ベクトルであり、[B]tが前の時刻の圧力場と境界条件関連ベクトルである)、GPU代数多重グリッド一般化最小残差アルゴリズムを利用して、以上のマトリックスの解を求めることによって、現在時刻の空隙ネットワークモデルにおける流体圧力場分布を得ること、
S705:非定常流体-構造連成(FSI)多相浸透数値シミュレーションのプロセス中において、固定時間ステップ又は可変時間ステップの方式を採用することによって、当該ステップ幅内の流体界面に変位を発生させ、各時間ステップの下で、界面移動後の新しい流体界面位置を計算し、且つ、全体的な空隙ネットワークモデルにおけるすべての穴・スロートチャンネルの水力伝導率とモデルにおける各相流体の飽和度をアップデートした後、全体的な空隙ネットワーク・スペースに浸入流体がいっぱいになるか、又はある飽和度数値に達するまで、流体圧力場分布の解を求めることという五つのステップを含むことを特徴とする請求項に記載の室内岩石コア実験における、デジタル化された多相流体-構造連成(FSI)浸透数値シミュレーション手法。