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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099413
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230706BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065391
(22)【出願日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0194290
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ドン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、デ ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、スー ジェオン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH06
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ02
5E082AB03
5E082BC19
5E082EE35
5E082FG26
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG28
5E082LL03
5E082MM24
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】積層セラミック電子部品の耐湿信頼性及び高温IR特性を向上させるとともに、内部電極と外部電極との間の結合力を向上させて外部からの水分及びめっき液の浸透を防止し、さらに、内部電極に過度な合金形成によるクラックの発生を防止することができる積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで積層され、第1金属を含む複数の内部電極を含む本体と、上記本体の外側に配置され、第2金属を含む外部電極と、を含み、上記複数の内部電極のうち少なくとも一部は、上記第1及び第2金属を含むコア-シェル領域を含み、上記コア-シェル領域のコア部及びシェル部は、上記第2金属の平均含量が互いに異なる積層セラミック電子部品を提供することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層を間に挟んで積層され、第1金属を含む複数の内部電極を含む本体と、
前記本体の外側に配置され、第2金属を含む外部電極と、を含み、
前記複数の内部電極のうち少なくとも一部は、前記第1金属及び前記第2金属を含むコア-シェル領域を含み、
前記コア-シェル領域のコア部及びシェル部は、前記第2金属の平均含量が互いに異なる、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記シェル部は、前記コア部よりも前記第2金属の平均含量が高い、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記コア-シェル領域は、前記内部電極と外部電極との界面から1~10μm以内の領域で形成される、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記コア-シェル領域は、前記第2金属の含量の勾配を有する、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記コア部から前記内部電極の厚さ方向に遠ざかるにつれて、前記シェル部の前記第2金属の含量は増加した後に減少する、請求項4に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記複数の内部電極のうち少なくとも一部は、前記コア-シェル領域を複数個含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記複数の内部電極のうち少なくとも一部は、前記第1金属及び第2金属の合金領域を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記内部電極の厚さに対する前記シェル部の厚さの割合は、0.12~0.23である、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記シェル部の前記第2金属の含量の最大値は、3at%~20at%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記コア部の前記第2金属の含量の最小値は、1at%~1.5at%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記コア部の前記第2金属の含量の最小値に対する前記シェル部の前記第2金属の含量の最大値の割合は、3.0~14.2である、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記第1金属はニッケル(Ni)を含み、前記第2金属は銅(Cu)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
前記外部電極は、前記本体上に配置され、前記第2金属を含む第1電極層と、 前記第1電極層上に配置され、第3金属を含む第2電極層と、を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項14】
前記第2電極層は、前記第3金属としてニッケル(Ni)を含む第1層と、前記第3金属としてスズ(Sn)を含む第2層と、を含む多層構造である、請求項13に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品(MULTILAYER CERAMIC ELECTRONIC COMPONENT)のうちの一つである積層セラミックキャパシタ(MULTILAYER CERAMIC CAPACITOR)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながら高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。高信頼性が要求される分野における多くの電子製品の機能が電子化され、需要が増加するにつれて、積層セラミックキャパシタに対しても高信頼性が要求される。かかる積層型キャパシタの高信頼性において問題となる要素としては、めっき工程時に発生するめっき液の浸透、外部衝撃によるクラックの発生、及び外部からの水分浸透などがある。
【0004】
このような問題を解決すべく、従来には、内部電極のうち外部電極と接続される端部にニッケル(Ni)-銅(Cu)合金領域を形成することで内部電極と外部電極との間の結合力を向上させ、水分及びめっき液の浸透を防止する積層セラミックキャパシタが開発されてきた。
【0005】
しかしながら、合金領域が過度に形成されると、内部電極の体積膨張により放射クラックが発生し、発生したクラックによる曲げ強度の低下及びクラックからの水分浸透という問題点が依然として存在する。これにより、内部電極の過度な体積膨張を防止するとともに、耐湿信頼性が向上した積層セラミックキャパシタの開発が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2016-0110123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の様々な目的の一つは、積層セラミック電子部品の耐湿信頼性及び高温IR特性を向上させることにある。
【0008】
本発明の様々な目的の一つは、内部電極と外部電極との間の結合力を向上させて外部からの水分及びめっき液の浸透を防止することにある。
【0009】
本発明の様々な目的の一つは、内部電極に過度な合金形成によるクラックの発生を防止することにある。
【0010】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで積層され、第1金属を含む複数の内部電極を含む本体と、上記本体の外側に配置され、第2金属を含む外部電極と、を含み、上記複数の内部電極のうち少なくとも一部は、上記第1及び第2金属を含むコア-シェル領域を含み、上記コア-シェル領域のコア部及びシェル部は、上記第2金属の平均含量が互いに異なる積層セラミック電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の様々な効果の一つは、積層セラミック電子部品の耐湿信頼性及び高温IR特性を向上させることである。
【0013】
本発明の様々な効果の一つは、内部電極と外部電極との間の結合力を向上させて外部からの水分及びめっき液の浸透を防止することである。
【0014】
本発明の様々な効果の一つは、内部電極に過度な合金形成によるクラックの発生を防止することである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品を概略的に示した斜視図である。
図2】積層セラミック電子部品の本体を概略的に示した斜視図である。
図3図1のI-I'に沿った切断面を概略的に示した断面図である。
図4図1のII-II'に沿った切断面を概略的に示した断面図である。
図5図3のB領域を拡大して示した拡大図である。
図6】内部電極のコア-シェル領域を概略的に示したものである。
図7】外部電極と接続される領域の内部電極をSTEM-EDS(Scanning transmission electron microscopy-Energy dispersive x-ray spectroscopy)分析したイメージである。
図8図7のコア-シェル領域を点線方向に分析し、銅(Cu)の検出量を示すEDS line profile分析結果を示すグラフである。
図9図7の合金領域を点線方向に分析し、銅(Cu)の検出量を示すEDS line profile分析結果を示すグラフである。
図10】実施形態に係る耐湿信頼性テストの結果を示したグラフである。
図11】比較例に係る耐湿信頼性テストの結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0017】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
図面において、第1方向は長さL方向、第2方向は厚さT方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品を概略的に示した斜視図であり、図2は、積層セラミック電子部品の本体を概略的に示した斜視図であり、図3は、図1のI-I'に沿った切断面を概略的に示した断面図であり、図4は、図1のII-II'に沿った切断面を概略的に示した断面図であり、図5は、図3のB領域を拡大して示した拡大図であり、図6は、内部電極のコア-シェル領域を概略的に示したものである。
【0020】
図1図6を参照すると、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品100は、誘電体層111及び誘電体層111を間に挟んで積層され、第1金属を含む複数の内部電極121、122を含む本体110と、本体110の外側に配置され、第2金属を含む外部電極131、132と、を含み、複数の内部電極121、122のうち少なくとも一部は、上記第1及び第2金属を含むコア-シェル領域12を含み、コア-シェル領域12のコア部12a及びシェル部12bは、上記第2金属の平均含量が互いに異なることができる。
【0021】
上述したように、積層セラミック電子部品の耐湿信頼性を向上させるために内部電極のうち外部電極と接続される端部に合金領域が形成されると、内部電極の体積膨張により放射クラックが発生し、発生したクラックにより外部から水分が浸透する恐れがある。
【0022】
これに対し、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品100は、複数の内部電極121、122のうち少なくとも一部が上記第1及び第2金属を含むコア-シェル領域12を含むことで積層セラミック電子部品100の耐湿信頼性を向上させる一方、内部電極121、122の体積膨張による放射クラックを防止することができる。
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品100に含まれるそれぞれの構成についてより詳細に説明する。
【0024】
本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示されたように、本体110は六面体形状やこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0025】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2と、上記第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4と、第1面1、第2面2、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6と、を有することができる。
【0026】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0027】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤、及びバインダーを含むセラミックグリーンシートの焼成によって形成されることができる。セラミック粉末は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム系(BaTiO)材料、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系材料などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
このとき、誘電体層111の厚さは、本体110の大きさと容量を考慮して10μm以下であることができ、セラミック電子部品100の小型化及び高容量化のために、0.6μm以下、より好ましくは、0.4μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
ここで、誘電体層111の厚さは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向断面を1万倍率の走査電子顕微鏡を用いてスキャンして測定することができる。より具体的には、任意の誘電体層111の多数の地点、例えば、第1方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を求めることができる。また、このような平均値の測定を多数の誘電体層111に拡張して求めると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0030】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、容量形成部Acの上部に配置される第1カバー部112と、容量形成部Acの下部に配置される第2カバー部113とを含むことができる。
【0031】
カバー部112、113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第2方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。カバー部112、113は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と同じ構成を有することができる。カバー部112、113の平均厚さは20μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。カバー部112、113の厚さとは、カバー部112、113の第2方向への長さを意味し、本体110の第1方向及び第2方向断面において第1方向に等間隔である30個の地点における厚さを測定した平均値を意味することができる。
【0032】
本体110は、第3方向を基準に容量形成部Acの側面に配置されるマージン部114、115を含むことができる。マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置される第1マージン部114と、第6面6に配置される第2マージン部115とを含むことができる。マージン部114、115は、本体110を第2方向及び第3方向に切断した断面において内部電極121、122の両端と本体110との境界面の間の領域を意味することができる。マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。マージン部114、115は、誘電体層111と同じ又は異なる材料を含むことができる。
【0033】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される個所を除いて、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することによりなるものであることができる。或いは、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極121、122が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの第3方向両側面に積層してマージン部114、115を形成することもできる。マージン部114、115の平均厚さは20μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。マージン部114、115の厚さとは、マージン部114、115の第3方向への長さを意味し、本体110の第2方向及び第3方向断面において第2方向に等間隔である30個の地点における厚さを測定した平均値を意味することができる。
【0034】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に配置されることができ、複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122は、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置されることができる。即ち、第1及び第2内部電極121、122は、互いに異なる極性を有する一対の電極であり、誘電体層111の積層方向に沿って本体110の第1面1及び第2面2に交互に露出するように形成されることができる。例えば、複数の第1内部電極121のそれぞれは、第2面2と離隔して第1面1に露出することができる。且つ、複数の第2内部電極122のそれぞれは、第1面1と離隔して第2面2に露出することができる。複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122は、その間に配置されている誘電体層111により互いに電気的に分離されることができる。複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122は、第2方向に交互に積層されることができるが、これに限定されるものではなく、第3方向に交互に積層されてもよい。
【0035】
内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に所定の厚さで第1金属を含む内部電極用導電性ペーストを印刷することで形成されることができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
内部電極121、122に含まれる第1金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1種以上を含むことができ、より好ましくは、ニッケル(Ni)を含むことができる。
【0037】
このとき、内部電極121、122の厚さは、本体110の大きさと容量を考慮して10μm以下であることができ、積層セラミック電子部品100の小型化及び高容量化のために、0.8μm以下、より好ましくは、0.4μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
ここで、内部電極121、122の厚さは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。内部電極121、122の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向断面を1万倍率の走査電子顕微鏡を用いてスキャンして測定することができる。より具体的には、任意の内部電極の多数の地点、例えば、第1方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を求めることができる。このような平均値の測定を多数の内部電極に拡張して求めると、内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0039】
外部電極131、132は、本体110の第1面1及び第2面2に配置され、第3面3、第4面4、第5面5、及び第6面6のそれぞれの一部まで延長されることができる。外部電極131、132は、複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。
【0040】
外部電極131、132は、第2金属を含み、外部電極131、132に含まれる第2金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)、及びこれらの合金のうち1種以上を含むことができ、より好ましくは、銅(Cu)を含むことができる。
【0041】
外部電極131、132は、本体110の第1面1及び第2面2を上記第2金属粉末及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(dipping)した後、焼成することで形成されることができる。或いは、導電性金属及びガラスを含むシートを転写する方式で形成されてもよい。これによって、外部電極131、132は、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であることができる。
【0042】
図面では、積層セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、これに限定されるものではなく、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形状やその他の目的に応じて変更可能である。
【0043】
図5は、第1内部電極121及び第1外部電極131の一部領域を拡大して図示しているが、第1外部電極131は第1内部電極121と接続し、第2外部電極132は第2内部電極122と接続するという違いがあるだけで、その構成は類似している。したがって、以下では、第1内部電極121及び第1外部電極131を基準に説明するが、これは、第2内部電極122及び第2外部電極132に対する説明も含むものとする。
【0044】
複数の内部電極121のうち少なくとも一部は、上記第1及び第2金属を含むコア-シェル領域12を含むことができる。即ち、コア-シェル領域12は、コア部12aと、コア部12aを取り囲むシェル部12bとを含むことができる。
【0045】
シェル部12bは、第2金属の含量が2at%以上である領域と定義されることができ、コア部12aは、シェル部12bにより取り囲まれる領域と定義されることができる。このとき、コア部12aの第2金属含量は2at%未満であることができる。上記第2金属の含量(at%)は、本体110の第1方向及び第2方向断面においてSTEM-EDS分析によって上記第2金属をマッピング(mapping)し、コア-シェル領域12のラインプロファイル(line profile)によって測定することができる。
【0046】
コア部12a及びシェル部12bは、上記第2金属の平均含量が互いに異なることができる。シェル部12bの上記第2金属の平均含量は、任意のコア-シェル領域12においてP1~P4の各地点の上記第2金属の含量(at%)を測定して、4地点のデータの平均値として導出することができる。また、コア部12aの上記第2金属の平均含量は、任意のコア-シェル領域12においてP5~P8の各地点の上記第2金属の含量(at%)を測定して、4地点のデータの平均値として導出することができる。上述したように、上記第2金属の含量は、本体110の第1方向及び第2方向断面をSTEM-EDS(Scanning Transmission Electron Microscopy-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)及びラインプロファイル(line-profile)によって測定することができる。
【0047】
このとき、シェル部12bは、コア部12aよりも上記第2金属の平均含量が高くなることができる。例えば、上記第1金属がニッケル(Ni)を含み、上記第2金属が銅(Cu)を含む場合、シェル部12bはコア部12aよりも銅(Cu)の平均含量が高くなることができる。複数の内部電極121のうち少なくとも一部がコア-シェル領域12を含むことで、過度な合金領域を形成しなくても、積層セラミック電子部品100の耐湿信頼性を向上させ、内部電極121の体積膨張による放射クラックを防止することができる。即ち、上記第2金属の含量が高いシェル部12bにより積層セラミック電子部品100の耐湿信頼性が向上することができ、シェル部12bに比べて厚さの厚いコア部12aの第2金属含量が低いことから、内部電極121の体積膨張によるクラックの発生を防止することができる。
【0048】
コア-シェル領域12は、外部電極用導電性ペーストを本体110に塗布し焼成する過程において、第2金属が内部電極121、122側に拡散することで形成されることができる。これにより、コア-シェル領域12は、内部電極121と外部電極131との界面から1μm~10μm以内の領域で形成されることができる。拡散によってコア-シェル領域12が形成されるため、複数の内部電極121のうち少なくとも一部は、コア-シェル領域12を複数個含み得る。また、上記第2金属の拡散によって、複数の内部電極121のうち少なくとも一部は、上記第1及び第2金属の合金領域12cを含むことができる。これにより、積層セラミック電子部品100の耐湿信頼性がさらに向上するようになる。
【0049】
このとき、外部電極131の焼成温度が高すぎると、合金領域12cが過度に形成されることがある。これによって、内部電極121の体積が膨張し、本体110で放射クラックが発生する恐れがある。また、焼成温度が低すぎると、コア-シェル領域12が形成されないこともある。したがって、焼成温度は、700℃~900℃に設定されることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
また、積層セラミック電子部品100の第1方向及び第2方向断面において、外部電極131と内部電極121が接する界面の長さ、即ち、本体110の第1面及び第2面1、2の第2方向長さにおいて上記ガラスにより覆われた第2方向長さの割合(以下、ガラスカバレッジと定義する)が2%~33%を満たすようにして、コア-シェル領域12を容易に形成することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
上記ガラスカバレッジが2%~33%を満たす場合、内部電極121のうち少なくとも一部において、上記第2金属が内部電極121の厚さ方向中心部に拡散せず、内部電極121と誘電体層111との間の界面を介して拡散することで、コア-シェル領域12が形成されることができる。
【0052】
上記ガラスにより覆われた長さの割合が2%未満であると、合金領域12cが過度に形成されることがある。これによって、内部電極121の体積膨張による放射クラックが発生する恐れがある。上記ガラスにより覆われた長さの割合が33%を超えると、上記ガラスが上記第2金属の拡散を防止し、コア-シェル領域12が形成されないこともある。これによって、耐湿及び高温絶縁抵抗信頼性が低下する恐れがある。
【0053】
ここで、ガラスは、酸化物が混合された組成であることができ、亜鉛(Zn)などの転移金属酸化物及び/またはカルシウム(Ca)などのアルカリ土金属酸化物を含んでもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。このとき、上記ガラスカバレッジを調整するためには、上記ガラスの軟化温度(glass softening point)が600℃~700℃であってもよく、上記軟化温度を調整するためには、上記ガラスが、ZnO、BaO、B、SiO、CaO、AlO3、LiO、KO、及びVのうち1種以上を含んでもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
外部電極用導電性ペーストに含まれたガラス含量は、上記第2金属粉末100重量%に対して1重量%~20重量%であることができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、外部電極用導電性ペーストの組成及び焼成条件に応じて変更可能である。
【0055】
一実施形態において、コア-シェル領域12は、上記第2金属含量の勾配(gradient)を有することができ、例えば、コア部12aから内部電極121の厚さ方向に遠ざかるにつれて、シェル部12bの上記第2金属含量は増加した後に減少することがある。これにより、シェル部12bにおいて上記第2金属含量が最大となる地点は、シェル部12bの厚さ方向中心部に形成されることができる。即ち、シェル部12bは、第2金属含量のピーク(peak)値を有することができる。
【0056】
本発明の一実施形態において、シェル部12bの上記第2金属含量の最大値は、3at%~20at%であることができる。また、一実施形態において、コア部12aの上記第2金属含量の最小値は、1at%~1.5at%であることができる。さらに、一実施形態において、任意のコア-シェル領域12においてコア部12aの第2金属含量の最小値に対するシェル部12bの第2金属含量の最大値の割合は、3.0~14.2を満たすことができる。
【0057】
したがって、第2金属の含量が高いシェル部12bによって積層セラミック電子部品100の耐湿信頼性を向上させる一方、第2金属の含量が低いコア部12aによって内部電極121の体積膨張を最小限に抑え、クラックの発生を防止することができる。
【0058】
本発明の一実施形態において、内部電極121の厚さT1に対するシェル部12bの厚さT2の割合は、0.12~0.23を満たすことができる。このとき、内部電極121の厚さは、本体110の第1方向及び第2方向断面をSTEM-EDS分析することで測定することができる。シェル部12bの厚さは、コア-シェル領域12のEDS line-profileによって上記第2金属含量の勾配を測定した後、コア部12aの中心から遠ざかるにつれて現れる上記第2金属の含量が2at%となる地点から、コア部12aの中心からさらに遠ざかるにつれて現れる第2金属の含量が2at%となる別の地点までの長さを意味することができる。このとき、シェル部12bの厚さT2は、例えば、70nm~150nmであることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
本発明の一実施形態において、外部電極131、132は、本体110上に配置され、上記第2金属を含む第1電極層131a、132aと、第1電極層131a、132a上に配置され、第3金属を含む第2電極層131b、132bとを含むことができる。このとき、第1電極層131a、132aは、上記第2金属及びガラスを含む焼成電極であることができる。第1電極層131a、132aは、上記第2金属粉末及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(dipping)した後、焼成することで形成されることができる。
【0060】
第2電極層131b、132bは、実装特性を向上させることができる。第2電極層131b、132bの種類は特に限定されず、上記第3金属としてニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及び/または、これを含む合金などを含むめっき層であることができ、複数の層からなってもよい。第2電極層131b、132bは、例えば、ニッケル(Ni)めっき層又はスズ(Sn)めっき層であることができ、ニッケル(Ni)めっき層及びスズ(Sn)めっき層が順に形成された形態であってもよい。また、第2電極層131b、132bは、複数のニッケル(Ni)めっき層及び/または複数のスズ(Sn)めっき層を含んでもよい。
実施形態
【0061】
セラミックグリーンシート上に第1金属粉末としてニッケル(Ni)粉末を含む内部電極用導電性ペーストを印刷して内部電極パターンを形成した後、上記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層してセラミック積層体を設けた。
【0062】
上記セラミック積層体を焼成して誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110を形成した後、本体110の第1面1及び第2面2を第2金属粉末として銅(Cu)粉末及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピングし、焼成することで外部電極131、132を形成した。
【0063】
図7は、外部電極と接続される領域の内部電極をSTEM-EDS分析したイメージである。より具体的には、本体110の第1方向及び第2方向断面において外部電極131、132と接続される領域の内部電極121、122を9900倍の倍率で撮影した後、銅(Cu)元素をマッピング(mapping)したイメージである。このとき、領域が明るいほど、銅(Cu)元素の含量が高いことを意味する。
【0064】
図7を参照すると、コア-シェル領域12は、銅(Cu)の含量が高いことから明るく現れるシェル部12bと、銅(Cu)の含量が低いことから暗く現れるコア部12aとを明確に区別することができる。また、合金領域12cは、内部電極121、122の厚さ方向中心部までの銅(Cu)の拡散によって、コア-シェル領域12と区別することができる。
【0065】
次いで、図7において、コア-シェル領域12を点線方向に対してラインプロファイル(line-profile)分析した。また、図7において、第1及び第2金属の合金領域12cを点線方向に対してラインプロファイル(line-profile)分析した。
【0066】
図8は、図7のコア-シェル領域を点線方向に分析し、銅(Cu)の検出量を示すEDS line profile分析結果を示すグラフである。図9は、図7の合金領域を点線方向に分析し、銅(Cu)の検出量を示すEDS line profile分析結果を示すグラフである。
【0067】
図8及び図9を参照すると、コア-シェル領域12は、シェル部12bにおいて銅(Cu)含量のピーク(peak)が発生したことが分かる。これによって、外部から浸透した水分と最初に接触するシェル部12bは、銅(Cu)の含量が高いことから耐湿信頼性を向上させる一方、厚さの厚いコア部12aは、銅(Cu)の含量が低いことから内部電極の体積膨張を最小限に抑え、クラックの発生を防止できることが分かる。したがって、合金領域12cとともに耐湿信頼性を向上させることができ、さらに、内部電極の体積膨張によるクラックの発生を防止することができる。
【0068】
上記EDS line profile分析結果から、外部電極と内部電極との間の界面からの距離が1μm~10μmである領域に配置されたコア-シェル領域12において、内部電極の厚さT1に対するシェル部12bの厚さT2の割合、シェル部12bの第2金属含量の最大値、コア部12aの第2金属含量の最小値、及びコア部12aの第2金属含量の最小値に対するシェル部12bの第2金属含量の最大値の割合を測定し、下記表1に記載した。このとき、各試料番号ごとに準備した5個のサンプルから測定した値を平均して記載した。
【0069】
【表1】
【0070】
表1を参照すると、シェル部12bの厚さT2は70nm~150nmと、内部電極の厚さT1に対するシェル部12bの厚さT2の割合は0.12~0.23を満たしていることが分かる。また、シェル部12bの銅(Cu)の含量の最大値は3at%~20at%を満たしていることが確認でき、コア部12aの銅(Cu)の含量の最小値は1at%~1.5at%を満たしていることが確認でき、さらに、コア部12aの銅(Cu)の含量の最小値に対するシェル部12bの銅(Cu)の含量の最大値の割合が3.0~14.2を満たしていることが分かる。
【0071】
コア-シェル領域12が形成された内部電極を含む実施形態と、コア-シェル領域12及び合金領域12cが形成されない内部電極を含む比較例に対して、耐湿信頼性テストを行った。40個のサンプルチップそれぞれに対して、相対湿度85%、85℃の条件で定格電圧4Vを24時間印加しながら絶縁抵抗を測定した。
【0072】
図10は、実施形態に係る耐湿信頼性テストの結果を示したグラフである。図11は、比較例に係る耐湿信頼性テストの結果を示したグラフである。図10及び図11を参照すると、コア-シェル領域12が形成された内部電極を含む実施形態の場合、1つのサンプルを除いて、すべてのサンプルの絶縁抵抗が10Ω以上を維持していることが確認できた。これに対し、比較例では、ほとんどのサンプルの絶縁抵抗が10Ω以上を維持していないことが確認できた。
【0073】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当該技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0074】
100 積層セラミック電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a 第1電極層
131b、132b 第2電極層
12 コア-シェル領域
12a コア部
12b シェル部
12c 合金領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11