(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009943
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】機能性樹脂ガラス、及び機能性樹脂ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230113BHJP
C09J 201/06 20060101ALI20230113BHJP
C09J 201/04 20060101ALI20230113BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20230113BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20230113BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230113BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B32B27/00 D
C09J201/06
C09J201/04
C09J133/04
C09J5/00
B32B7/023
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113629
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 元貴
(72)【発明者】
【氏名】杁江 正博
(72)【発明者】
【氏名】酒向 慎貴
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐介
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK25C
4F100AK42B
4F100AK45A
4F100AK49B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02C
4F100CB00C
4F100EC042
4F100EC04C
4F100EC182
4F100EH46C
4F100EJ08C
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100EJ582
4F100EJ91
4F100GB31
4F100JJ03
4F100JJ04
4F100JN01A
4F100JN08B
4F100YY00C
4J040DF021
4J040DF031
4J040DF061
4J040EC022
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040GA08
4J040KA16
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA10
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA17
4J040PA30
4J040PA33
(57)【要約】
【課題】調光機能を十分に発揮することができる機能性樹脂ガラスを提供する。
【解決手段】機能性樹脂ガラス1は、光透過性を有する樹脂層14と、樹脂層14上に配された調光層10と、樹脂層14と調光層10とを接着する接着層12と、を備え、調光層10は、光の透過率を変更可能とされ、接着層12は、水酸基またはカルボキシル基を有する重合体を含むこと。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性樹脂ガラスであって、
光透過性を有する樹脂層と、
前記樹脂層上に配された調光層と、
前記樹脂層と前記調光層とを接着する接着層と、を備え、
前記調光層は、光の透過率を変更可能とされ、
前記接着層は、水酸基またはカルボキシル基を有する重合体を含むことを特徴とする機能性樹脂ガラス。
【請求項2】
前記接着層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルの少なくとも一方が重合した重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の機能性樹脂ガラス。
【請求項3】
前記接着層の厚みは、10μm以上80μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機能性樹脂ガラス。
【請求項4】
光透過性を有する樹脂層と光の透過率を変更可能な調光層とを備える機能性樹脂ガラスの製造方法であって、
前記樹脂層上に接着層を介して前記調光層を積層させて積層体を形成する積層工程と、
前記接着層を圧着させて前記樹脂層と前記調光層とを接着する圧着工程と、を含み、
前記圧着工程では、前記積層体を0.1MPa以上2MPa以下の圧力で加圧し50度以上120度以下の温度で加熱することにより、前記接着層を圧着させることを特徴とする機能性樹脂ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記積層工程では、前記接着層の厚みが10μm以上80μm以下となるように前記接着層を形成することを特徴とする請求項4に記載の機能性樹脂ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機能性樹脂ガラス、及び機能性樹脂ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光の透過について調光可能な機能を有する調光液晶シートの貼り付け方法として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、光の散乱と透過とを電気的に制御する調光液晶シートを、ガラスでできた透明板に接着剤を塗布して貼り付け、調光液晶シートの周辺部を絶縁樹脂で封止すること、が開示されている。さらに、特許文献1には、調光液晶シートを貼り付けるべきガラスは、アクリルやポリカーボネートなどの透明な樹脂板であってもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の方法において、調光液晶シートが接着剤を介して貼り付けられた樹脂板から水が生じることがある。その場合、水が気化してなる気泡により調光液晶シートが部分的に浮いてしまったり、水(水蒸気)が凝集して接着剤が白濁したりすることが懸念される。そうすると、このような樹脂板と調光液晶シートとを備える機能性樹脂ガラスについて、光の透過について調光する機能を十分に発揮することができず、意匠性や視認性が低下する虞がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、調光機能を十分に発揮することができる機能性樹脂ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、機能性樹脂ガラスであって、光透過性を有する樹脂層と、前記樹脂層上に配された調光層と、前記樹脂層と前記調光層とを接着する接着層と、を備え、前記調光層は、光の透過率を変更可能とされ、前記接着層は、水酸基またはカルボキシル基を有する重合体を含むことに特徴を有する。
【0007】
このような機能性樹脂ガラスによると、接着層に含まれる重合体の水酸基またはカルボキシル基に起因して分子内や分子間において架橋構造が形成されることで、重合体の凝集力が高まり、接着層が樹脂層と調光層とを接着する接着力を向上させることができる。上記重合体を含む接着剤を用いれば、接着層と樹脂層および調光層がしっかり接着できるため、樹脂層からアウトガスとして発生する水蒸気の圧力による接着層と樹脂層あるいは調光層の界面の剥がれや浮きを抑制することができる。また、接着層の内部に気泡が生じようとした場合でも、高い凝集力で気泡の成長を抑制できる。これにより、樹脂層から生じる水に起因する調光層の部分的な浮きや接着層の白濁を抑制し、機能性樹脂ガラスが調光機能を十分に発揮することができる。
【0008】
上記構成において、前記接着層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルの少なくとも一方が重合した重合体を含むこととしてもよい。このような機能性樹脂ガラスによると、接着層が極性を有し易くなり、樹脂層から生じる水を接着層に親和させて吸収することができる。
【0009】
上記構成において、前記接着層の厚みは、10μm以上80μm以下としてもよい。接着層の厚みがこのような範囲であると、樹脂層から調光層が剥がれることのない接着力を確保した接着層であって、樹脂層から生じる水を十分に親和させて吸収可能な厚み(量)の接着層を備える機能性樹脂ガラスとすることができる。
【0010】
また、本開示は、光透過性を有する樹脂層と光の透過率を変更可能な調光層とを備える機能性樹脂ガラスの製造方法であって、前記樹脂層上に接着層を形成し、前記調光層を前記接着層上に積層して積層体を形成する積層工程と、前記接着層を圧着させて前記樹脂層と前記調光層とを接着する圧着工程と、を含み、前記圧着工程では、前記積層体を0.1MPa以上2MPa以下の圧力で加圧し50度以上120度以下の温度で加熱することにより、前記接着層を圧着させることに特徴を有する。
【0011】
このような機能性樹脂ガラスの製造方法によると、比較的短時間で接着層を圧着させて、樹脂層と調光層とを上手く接着させることができる。また、調光層を熱で壊すことなく、調光機能を十分に発揮可能な機能性樹脂ガラスを得ることができる。
【0012】
また、前記積層工程では、前記接着層の厚みが10μm以上80μm以下となるように前記接着層を形成してもよい。このような範囲の厚みの接着層を形成すると、樹脂層から調光層が剥がれることのない接着力を確保しつつ、樹脂層から生じる水を十分に親和させて吸収可能な厚み(量)の接着層を備える機能性樹脂ガラスを得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、調光機能を十分に発揮することができる機能性樹脂ガラスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る機能性樹脂ガラスを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本開示の実施形態を
図1よって説明する。本実施形態では、例えば、自動車(乗物)の窓ガラスとして用いられる機能性樹脂ガラス1を説明する。尚、機能性樹脂ガラス1が窓ガラスとして自動車に搭載された場合、
図1において、機能性樹脂ガラス1の上面(表面)1Aが、車室内側を向く面とされ、下面(裏面)1Bが、車室外側を向く面とされる。
【0016】
機能性樹脂ガラス1は、樹脂層14と、樹脂層14の上面側に配された調光層10と、樹脂層14と調光層10との間に配された接着層12と、を備える。
【0017】
樹脂層14の材料としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、アリルジグリコールカーボネート、AS樹脂(アクリロニトリル・スチレン共重合体)、及びMS樹脂(メタクリル酸メチル・スチレン共重合体)の群から選択される1つ又は2つ以上の樹脂を採用することができる。その中でも、樹脂層14の材料としては、剛性や耐久性の向上、軽量化等の観点から、ポリカーボネートが好ましい。
【0018】
また、樹脂層14は、光透過性を有する。例えば、樹脂層14の材料としては、全光線透過率(JIS K 7361-1に基づく値とする。以下同じ)が85%以上となる樹脂が好ましく、90%以上となる樹脂がより好ましい。樹脂層14の厚みは、剛性や耐久性の向上、軽量化等の観点から、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、10mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましく、5mmがさらに好ましい。
【0019】
調光層10は、光透過性を有するフィルム状をなし、上下に対向配置された一対のフィルム(基板)20と、一対のフィルム20の内側面(対向面)に形成された一対の導電層21と、一対の導電層21の間に配された液晶層22と、を備える。液晶層22は、図示しないシール材によって一対の導電層21の間に封入された液晶分子を含む。
【0020】
調光層10は、導電層21に電圧を印加して液晶層22に電界を生じさせ、液晶層22に含まれる液晶分子の配向方向を変更することで、光の透過率を変更することができる。本実施形態における機能性樹脂ガラス1は、導電層21に電圧を印加した場合(ONにした場合)、透明な状態(例えば全光線透過率が90%、ヘイズ値(JIS K 7136に基づく値とする。以下同じ)が数%の状態)となり、導電層21に電圧を印加しない場合(OFFにした場合)、不透明な状態(例えば全光線透過率が80%、ヘイズ値が80%の状態)となる。自動車に搭載された機能性樹脂ガラス1は、透明な状態では、当該機能性樹脂ガラス1を通して乗員が車室外側を視認でき、不透明な状態では、当該機能性樹脂ガラス1を通して乗員が車室外側を視認できない構成とされる。
【0021】
フィルム20の材料としては、例えば、アクリル系イミドやポリエチレンテレフタレート(PET)等を採用することができる。アクリル系イミドとしては、例えば、N-置換マレイミド・(メタ)アクリル酸メチル共重合体;(メタ)アクリル酸メチル重合体、又はスチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体をイミド化剤と反応させてなる重合体;等を採用することができる。フィルム20は、アクリル系イミドからなる層にポリカーボネートからなる層が積層したものでもよい。尚、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸のうち、少なくとも一方の化合物(モノマー)を意味する(以下同じ)。
【0022】
フィルム20の厚みとしては、材料としてPETを用いた場合、30μm以上としてもよく、50μm以上としてもよく、100μm以上としてもよく、125μm以上としてもよく、500μm以下としてもよく、300μm以下としてもよく、200μm以下としてもよく、150μm以下としてもよい。フィルム20の厚みとしては、材料としてアクリル系イミドを用いた場合、50μm以上としてもよく、100μm以上としてもよく、200μm以上としてもよく、500μm以下としてもよく、300μmとしてもよい。フィルム20の厚みがこのような範囲であると、接着層12の効果を向上させることができる。
【0023】
導電層21は、銀や酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)からなる金属薄膜とされ、フィルム20の内側面に対しスパッタリング等により形成されている。尚、導電層21は、銅メッシュにより構成されていてもよい。
【0024】
接着層12は、樹脂層14と調光層10とを接着している。接着層12の厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、23μm以上がさらに好ましい一方、80μm以下としてもよく、70μm以下としてもよく、60μm以下としてもよく、50μm以下としてもよく、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、28μm以下がさらに好ましく、25μmが一層好ましい。接着層12の厚みがこのような範囲であると、接着層12が、樹脂層14と調光層10とを接着する接着力を保ちつつ、樹脂層14から生じる水を十分に親和させて吸収することができる。また、接着層12が、樹脂層14と調光層10とをしっかり接着できるため、樹脂層14からアウトガスとして発生する水蒸気の圧力による接着層12と樹脂層14あるいは調光層10の界面の剥がれや浮きを抑制することができる。
【0025】
接着層12は、光透過性を有する。具体的には、接着層12の全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上とされる。接着層12のヘイズ値は、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.6%以下、さらに好ましくは1.3%以下、一層好ましくは1.0以下とされる。このような範囲によると、好適な光透過性を有する機能性樹脂ガラス1を得ることができる。
【0026】
接着層12は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルの少なくとも一方が重合したアクリル系ポリマー(重合体)を含む。このようなアクリル系ポリマーとしては、ガラス転移温度(Tg)が、-80℃以上10℃以下の範囲にあるものを採用することができる。尚、Tgの下限は、-70℃以上であってもよく、-60℃以上であってもよく、-50℃以上であってもよく、-40℃以上であってもよい。また、Tgの上限は、0℃以下であってもよく、-10℃以下であってもよく、-20℃以下であってもよく、-30℃以下であってもよい。Tgがこのような範囲であると、接着層12の凝集力や接着性を向上させることができる。アクリル系ポリマーは、例えば、接着層12全体の質量に対し、50質量%以上100質量%以下の割合で含有されていてもよい。
【0027】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000以上である。Mwの下限値は、300,000以上であってもよく、600,000以上であってもよく、700,000以上であってもよく、900, 000以上であってもよく、1,000,000以上であってもよい。一方、上限値は、5,000,000以下であってもよく、3,000,000以下であってもよく、2,000,000以下であってもよい。Mwがこのような範囲であると、接着層12の凝集力、接着性、耐熱性、取扱性を向上させることができる。
【0028】
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、接着性向上の観点から、10.0以下であり、好ましくは8.0以下であり、より好ましくは7.0以下であり、さらに好ましくは6.0以下であり、一層好ましくは5.0以下である。
【0029】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、接着性や耐熱性向上の観点から炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的な化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。その中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルがより好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチルが一層好ましい。このようなアクリル系ポリマーによると、接着層12が比較的高極性となり、樹脂層14から生じる水を接着層12に親和させて好適に吸収することができる。
【0030】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルとしては、接着性や耐熱性向上の観点から炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましい。具体的な化合物としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸ブトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸ブトキシブチル等が挙げられる。その中でも、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルとしては、(メタ)アクリル酸メトキシエチルが一層好ましい。このようなアクリル系ポリマーによると、接着層12が比較的高極性となり、樹脂層14から生じる水を接着層12に親和させて好適に吸収することができる。
【0031】
接着層12は、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルに共重合可能な架橋性モノマー(架橋性官能基を有する単量体)を含有して重合した重合体を含む。このような架橋性モノマーとしては、水酸基またはカルボキシル基を有するモノマーを挙げることができ、具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸等を挙げることができる。これらの中でも、接着性向上の観点から、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。
【0032】
接着層12は、アクリル系ポリマー以外にも、架橋剤、ビニル重合体等の粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、防かび剤、シランカップリング剤、充填剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0033】
上記架橋剤としては、エポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。これらのうち、アジリジン化合物、エポキシ化合物及びイソシアネート化合物を用いることが好ましい。接着層12がこのような架橋剤を含有することで、当該接着層12の凝集力や接着力が調整され、高温高湿下での接着性や曲面への接着性を向上させることができる。
【0034】
アジリジン化合物としては、例えば、1,6-ビス(1-アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,1’-(メチレン-ジ-p-フェニレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、1,1’-(ヘキサメチレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、エチレンビス-(2-アジリジニルプロピオネート)、トリス(1-アジリジニル)ホスフィンオキサイド、2,4,6-トリアジリジニル-1,3,5-トリアジン、トリメチロールプロパン-トリス-(2-アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。
【0035】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルキシレンジアミン、N,N,N’,N’- テトラグリシジル-m- キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物が挙げられる。
【0036】
イソシアネート化合物としては、好ましくは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物が用いられる。上記イソシアネート化合物としては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、さらには、これらのイソシアネート化合物の変性物(プレポリマー等)を用いることができる。このようなイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、タケネートD-110N(三井化学社製、固形分濃度75質量%)が挙げられる。
【0037】
芳香族イソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。脂環族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等が挙げられる。また、変性イソシアネートとしては、上記イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
【0038】
上記架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下とすることができる。より好ましい下限は0.03質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上である。また、より好ましい上限は5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。また、より好ましい範囲は0.03質量部以上5量部以下、さらに好ましい範囲は0.05質量部以上2質量部以下である。
【0039】
続いて、機能性樹脂ガラス1の製造方法について説明する。機能性樹脂ガラス1の製造方法は、大別すると、積層体を形成する積層工程と、接着層12を圧着させる圧着工程と、を含む。
【0040】
図1に示すように、積層工程では、樹脂層14の上面に接着層12を介して調光層10を積層させて積層体1Cを形成する。接着層12としては、上記アクリル系ポリマーや上記架橋剤等が混合された接着剤を用いる。樹脂層14の上面に塗布する接着層12の厚み(接着層12を塗布する量)は、10μm以上(好ましくは20μm以上、より好ましくは23μm以上)としてもよく、80μm以下としてもよい(70μm以下としてもよく、60μm以下としてもよく、50μm以下としてもよく、40μm以下としてもよい。好ましくは30μm以下、より好ましくは28μm以下としてもよい)。積層工程では、常温(例えば25度)及び常圧(例えば0.1MPa)の条件で上記接着剤を樹脂層14または調光層10に直接塗布して接着層12を形成してもよく、PET等からなるフィルム(剥離フィルム)上に形成した上記接着層を樹脂層14または調光層10に転写することで接着層12を形成してもよい。尚、樹脂層14や調光層10に液状の接着剤を直接塗布すると、当該樹脂層14や調光層10が一部溶解する可能性が考えられるが、上記剥離フィルムを用いて形成した接着剤(接着層12)を樹脂層14や調光層10に転写する場合、このような事態を防ぐことができる。
【0041】
圧着工程では、積層体1Cを加圧及び加熱することにより、接着層12を圧着させて樹脂層14と調光層10とを接着し、機能性樹脂ガラス1を作製する。積層体1Cを加圧する圧力は、0.1MPa以上(好ましくは0.3MPa以上)としてもよく、2MPa以下(好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下)としてもよく、さらに好ましくは、0.5MPaとしてもよい。積層体1Cを加熱する温度は、50度以上(好ましくは70度以上)としてもよく、120度以下(好ましくは110度以下、より好ましくは90度以下)としてもよい。積層体1Cを加圧及び加熱する時間は、1秒以上としてもよく、3秒以上としてもよく、20分以下としてもよく、5分以下としてもよく、1分以下としてもよく、30秒以下としてもよく、5秒以下としてもよい。このような範囲によると、調光層10の調光機能を壊すことなく、比較的短時間で樹脂層14と調光層10を接着させることができる。
【0042】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、機能性樹脂ガラス1であって、光透過性を有する樹脂層14と、樹脂層14上に配された調光層10と、樹脂層14と調光層10とを接着する接着層12と、を備え、調光層10は、光の透過率を変更可能とされ、接着層12は、水酸基またはカルボキシル基を有する重合体を含む機能性樹脂ガラス1を示した。
【0043】
このような機能性樹脂ガラス1によると、接着層12に含まれる重合体の水酸基またはカルボキシル基に起因して分子内や分子間において架橋構造が形成されることにで、重合体の凝集力が高まり、接着層12が樹脂層14と調光層10とを接着する接着力を向上させることができる。上記重合体を含む接着剤を用いれば、接着層12と樹脂層14および調光層10がしっかり接着できるため、樹脂層14からアウトガスとして発生する水蒸気の圧力による接着層12と樹脂層14あるいは調光層10の界面の剥がれや浮きを抑制することができる。また、接着層12の内部に気泡が生じようとした場合でも、高い凝集力で気泡の成長を抑制できる。これにより、樹脂層14から生じる水に起因する調光層10の部分的な浮きや接着層12の白濁を抑制し、機能性樹脂ガラス1が調光機能を十分に発揮することができる。
【0044】
接着層12は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルの少なくとも一方が重合した重合体を含む。このような機能性樹脂ガラス1によると、接着層12が極性を有し易くなり、樹脂層14から生じる水を接着層12に親和させて吸収することができる。
【0045】
接着層12の厚みは、10μm以上80μm以下である。接着層12の厚みがこのような範囲であると、樹脂層14から調光層10が剥がれることのない接着力を確保した接着層であって、樹脂層14から生じる水を十分に親和させて吸収可能な厚み(量)の接着層を備える機能性樹脂ガラス1とすることができる。
【0046】
また、本実施形態では、光透過性を有する樹脂層14と光の透過率を変更可能な調光層10とを備える機能性樹脂ガラス1の製造方法であって、樹脂層14上に接着層12を形成し、調光層10を接着層12上に積層して積層体1Cを形成する積層工程と、接着層12を圧着させて樹脂層14と調光層10とを接着する圧着工程と、を含み、圧着工程では、積層体1Cを0.1MPa以上2MPa以下の圧力で加圧し50度以上120度以下の温度で加熱することにより、接着層12を圧着させる、機能性樹脂ガラス1の製造方法を示した。
【0047】
このような機能性樹脂ガラス1の製造方法によると、比較的短時間で接着層12を圧着させて、樹脂層14と調光層10とを上手く接着させることができる。また、調光層10を熱で壊すことなく、調光機能を十分に発揮可能な機能性樹脂ガラス1を得ることができる。
【0048】
積層工程では、接着層12の厚みが10μm以上80μm以下となるように接着層12を形成する。このような範囲の厚みの接着層12を形成すると、樹脂層14から調光層10が剥がれることのない接着力を確保しつつ、樹脂層14から生じる水を十分に親和させて吸収可能な厚み(量)の接着層を備える機能性樹脂ガラス1を得ることができる。
【実施例0049】
以下、実施例に基づいて本技術を詳細に説明する。なお、本技術はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0050】
<実施例1-1>
(積層工程)
厚みが38μmのPETフィルム(剥離フィルム)上に、上記アクリル系ポリマーや架橋剤等を含む接着剤を接着層として硬化後の厚みが50μmとなるように塗布し、40度で5日間静置して接着層を硬化させた。硬化した接着層の一方の面(剥離フィルムとは反対側の面)を、厚みが50μmのPETフィルム(フィルム)を基板とする調光層に貼り合わせた。剥離フィルムを剥がして接着層の他方の面(調光層とは反対側の面)を露出させ、当該他方の面を、厚みが5mmのポリカーボネート(樹脂層)上に貼り合わせた。これにより、ポリカーボネート上に、接着層と、調光層と、がこの順で積層した積層体を形成した。
【0051】
(圧着工程)
積層工程で形成した積層体を、オートクレーブによって気圧を0.5MPaとし、温度を50度とする条件で、20分間加圧及び加熱し、機能性樹脂ガラスを得た。
【0052】
<実施例1-2>
圧着工程において、温度を70度とする条件で積層体を加圧及び加熱したこと以外は、実施例1-1と同様にした。
【0053】
<実施例1-3>
積層工程において、ポリカーボネート上に接着層の厚みを25μmとなるように形成したこと以外は、実施例1-1と同様にした。
【0054】
<実施例1-4>
積層工程において、ポリカーボネート上に接着層の厚みを25μmとなるように形成し、圧着工程において、温度を70度とする条件で積層体を加圧及び加熱したこと以外は、実施例1-1と同様にした。
【0055】
<比較例1-1>
圧着工程において、加熱ローラー(圧力0.1MPa)を用いて、温度を70度とする条件で、10秒間加圧及び加熱したこと以外は、実施例1-1と同様にした。
【0056】
[冷熱サイクル試験による評価]
上記実施例及び比較例で得られた各機能性樹脂ガラスに対し、冷熱サイクル試験による評価を行った。具体的には、各機能性樹脂ガラスを恒温槽に入れ、当該恒温槽を、110度で1時間保ち、その後23度に降温して25分保ち、その後-30度に降温して1時間保ち、その後23度に昇温して25分保つ条件となるように、温度を変化させた。この温度変化を1サイクルとし、100サイクル繰り返した。
【0057】
その後、恒温槽から取り出した各機能性樹脂ガラスを、目視にて確認し外観の評価を行った。結果を表1(冷熱サイクル評価)に示す。
尚、表1における各記号の説明は、次の通りである。
「〇」・・・概ね良好
「△」・・・気泡が少量生じている
「×」・・・気泡が多量に生じ、調光層が部分的に浮き上がっている
【0058】
【0059】
圧着工程における圧力は、0.1MPaとする条件(比較例1-1)よりも、0.5MPaとする条件(実施例1-1から実施例1-4)の方が、気泡の発生の抑制に関して効果的である。積層工程で形成する接着層の厚みは、50μm(実施例1-1,1-2、比較例1-1)よりも、25μm(実施例1-3,1-4)である方が、気泡の発生の抑制に関してより効果的である。積層工程において接着層の厚みを25μmとし、圧着工程において圧力を0.5MPaとしたときは、圧着工程における加熱温度を50度とした場合(実施例1-3)、及び70度とした場合(実施例1-4)いずれの場合でも、良好に気泡の発生を抑制できる。
【0060】
<実施例2-1>
積層工程において、接着層の一方の面を、厚みが125μmのPETフィルム(フィルム)を基板とする調光層に貼り合わせたこと以外は、実施例1-4と同様にした。
【0061】
<実施例2-2>
積層工程において、接着層の一方の面を、厚みが300μmのアクリル系イミドフィルム(フィルム)を基板とする調光層に貼り合わせたこと以外は、実施例2-1と同様にした。アクリル系イミドとしては、N-置換マレイミド・(メタ)アクリル酸メチル共重合体を用いた。
【0062】
<参考例2-1>
圧着工程において、加熱ローラー(圧力0.1MPa)を用いて、温度を110度とする条件で、10秒間加圧及び加熱したこと以外は、実施例1-4と同様にした。
【0063】
<参考例2-2,2-3>
積層工程において、接着層の一方の面を、厚みが125μmのPETフィルム(フィルム)を基板とする調光層に貼り合わせたこと、及び、圧着工程において、加熱ローラー(圧力0.1MPa)を用いて、温度を70度とする条件で、10秒間加圧及び加熱したこと以外は、参考例2-1と同様にし、参考例2-2とした。
一方、圧着工程において温度を110度とする条件としたこと以外は、参考例2-2と同様にし、参考例2-3とした。
【0064】
<参考例2-4,2-5>
圧着工程において、加熱ローラー(圧力0.1MPa)を用いて、温度を70度とする条件で、10秒間加圧及び加熱したこと以外は、実施例2-2と同様にし、参考例2-4とした。
一方、圧着工程において、加熱ローラー(圧力0.1MPa)を用いて、温度を110度とする条件で、10秒間加圧及び加熱したこと以外は、実施例2-2と同様にし、参考例2-5とした。
【0065】
[冷熱サイクルによる評価]
上記実施例、参考例及び比較例で得られた各機能性樹脂ガラスに対し、上記冷熱サイクル試験による評価を行った。結果を表2(冷熱サイクル評価)に示す。
【0066】
[高温放置試験による評価]
上記実施例、参考例及び比較例で得られた各機能性樹脂ガラスに対し、高温放置試験による評価を行った。具体的には、各機能性樹脂ガラスを恒温槽に入れ、当該恒温槽を、110度で720時間保つ条件に設定して加熱した。
【0067】
その後、恒温槽から取り出した各機能性樹脂ガラスを、目視にて確認し外観の評価を行った。結果を表2(高温放置評価)に示す。
尚、表2における各記号の説明は、次の通りである。
「〇」・・・概ね良好
「△」・・・気泡が少量生じている
「×」・・・気泡が多量に生じ、調光層が部分的に浮き上がっている
【0068】
【0069】
圧着工程における加圧条件は、フィルムの材料(PET又はアクリル系イミド)に関わらず、0.1MPaの条件(参考例2-1から参考例2-5、及び比較例1-1)よりも、0.5MPaの条件(実施例2-1,2-2)の方が、気泡の発生をより抑制することができる。フィルムの材料としてPETを用いた場合は、フィルムの厚みが125μm、圧着工程において加熱する温度が70度、加圧する圧力が0.5MPaのときに、気泡の発生を良好に抑制することができる(実施例2-1)。同様のフィルムで、圧着工程において加熱する温度が110度、加圧する圧力が0.1MPaの場合は、高温条件下(110度)であったとしても、ある程度気泡の発生を抑制することができる(参考例2-3)。フィルムの材料としてアクリル系イミドを用いた場合は、フィルムの厚みが300μm、圧着工程において加熱する温度が70度、加圧する圧力が0.5MPaのときに、気泡の発生を良好に抑制することができる(実施例2-2)。同様のフィルムで、圧着工程において加熱する温度が110度、加圧する圧力が0.1MPaの場合は、高温条件下(110度)であったとしても、ある程度気泡の発生を抑制することができる(参考例2-5)。
【0070】
<他の実施形態>
本技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本技術の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0071】
(1)接着層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルとが共重合したアクリル系コポリマーを含んでいても良い。また、接着層は、架橋性を有するアクリル系モノマーが重合した架橋性アクリル系ポリマーを含んでいても良い。
【0072】
(2)積層工程において接着層を形成させる方法は特に限定されない。例えば、接着層を形成させる方法として、接着層を構成する接着剤(本願技術に係るモノマー等)を、スプレーにより樹脂層上または調光層上に吹き付ける方法、バーコータにより樹脂層上または調光層上に塗り広げる方法等を用いてもよい。また、積層工程において、第1剥離フィルムと第2剥離フィルムとの間に形成された接着層を樹脂層及び接着層に転写してもよい。その場合、例えば、第1剥離フィルムを剥がして露出した接着層の一方の面を調光層に貼り付け、第2剥離フィルムを剥がして露出した接着層の他方の面を樹脂層に貼り付けることにより、積層体を得ることとしてもよい。
【0073】
(3)上記実施形態以外にも、調光層の調光方法は適宜変更可能である。例えば、調光層は、導電層に印加する電圧の値を制御することにより、ヘイズ値を段階的に変更可能な構成としてもよい。
【0074】
(4)上記実施形態で例示した機能性樹脂ガラスは、車両用に提供されるもの限られず、種々の乗物において提供されるものであってもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記機能性樹脂ガラスを適用することができる。