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特開2023-99434ロープ移動機械及びマルチ機械移動システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099434
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】ロープ移動機械及びマルチ機械移動システム
(51)【国際特許分類】
   B62D 59/04 20060101AFI20230706BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
B62D59/04
B25J5/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156645
(22)【出願日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】202210000130.X
(32)【優先日】2022-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黎 ▲しん▼
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707CS08
3C707HT04
3C707WA16
3C707WA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】吸着機構を必要とせずに対象物体を鉛直又は傾斜した対象表面上を移動させることができるロープ移動機械を提供する。
【解決手段】機械本体と、機械本体に接続されるロープ機構と、表面接続機構とを備え、ロープ機構はロープ巻き取り・巻き出し機構とロープを備え、ロープ巻き取り・巻き出し機構はロープに接続され、表面接続機構はロープを対象物体に接続し、対象物体に1つ又は複数の接続点を形成し、接続点はロープにより前記機械本体の一部又は全部の重力を受け、ロープ巻き取り・巻き出し機構は接続点と機械本体との間のロープの長さを変更可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物体上を移動可能な機械本体を備えるロープ移動機械であって、
機械本体に接続されるロープ機構と、表面接続機構とをさらに備え、ロープ機構はロープ巻き取り・巻き出し機構とロープを備え、ロープ巻き取り・巻き出し機構はロープに接続され、表面接続機構はロープを前記対象物体に接続し、対象物体に1つ又は複数の接続点を形成し、接続点はロープにより前記機械本体の一部又は全部の重力を受け、ロープ巻き取り・巻き出し機構は接続点と機械本体との間のロープの長さを変更可能であることを特徴とするロープ移動機械。
【請求項2】
前記表面接続機構は接着剤を用いてロープを前記対象物体に接着することを特徴とする請求項1に記載のロープ移動機械。
【請求項3】
前記表面接続機構は機械的接続を利用してロープを対象物体に接続することを特徴とする請求項1に記載のロープ移動機械。
【請求項4】
前記表面接続機構はロープを対象物体に打ち付けることを特徴とする請求項3に記載のロープ移動機械。
【請求項5】
前記表面接続機構はロープの異なる位置に固定される1つ又は複数のフックを備え、フックを対象物体に引っ掛けることにより接続点を形成することを特徴とする請求項3に記載のロープ移動機械。
【請求項6】
前記表面接続機構はロープと対象物体との接続を解除する接続解除機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のロープ移動機械。
【請求項7】
前記表面接続機構は、ロープが緊張部分と緩んだ部分となるように、ロープを係止可能なロープ係止機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のロープ移動機械。
【請求項8】
前記機械本体は、機械本体を対象物体に吸着する吸着機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のロープ移動機械。
【請求項9】
前記機械本体は、機械本体を駆動して対象物体上を移動させる移動機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のロープ移動機械。
【請求項10】
前記表面接続機構は、ロボットアーム、接着剤吐出ヘッド、吐出ヘッドプッシュロッド、ロープ係止機構を備え、ロープ係止機構は、ロープを係止して緊張部分と緩んだ部分にするために用いられ、ロボットアームは回転軸を介して機械本体に接続され、接着剤吐出ヘッド及び吐出ヘッドプッシュロッドはロボットアームに設けられてロープの緩んだ部分を対象物体に接着することを特徴とする請求項1に記載のロープ移動機械。
【請求項11】
マルチ機械移動システムであって、
2つ以上の請求項1~10のいずれか1項に記載のロープ移動機械を備え、且つ少なくとも2つの異なるロープ移動機械は機械接続ロープを介して互いに接続され、前記機械接続ロープの長さが調整可能であることを特徴とするマルチ機械移動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着及び移動の技術分野に属し、ロープ移動機械及びマルチ機械移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜面上を機械が移動して作業する際に、機械自体の重力の傾斜面方向の分力が機械を落下させる原因となる。傾斜面方向の重力の分力を克服するために、技術者は通常、機械に吸着機構を取り付ける。発明特許出願202111135155.2は反発力により吸着する機械車を開示する。該機械車は、ホイール型移動車体と反発力吸着機構とを備え、傾斜した、又は鉛直の壁面上を移動可能である。反発力吸着機構はホイール型移動車体に取り付けられる。反発力吸着機構は、高速回転する羽根によって反発力を発生させ、ロボットを壁面に吸着させる。車輪と壁面との間で接触力が発生し、これにより摩擦力が発生する。摩擦力はロボットの重力を克服し、ロボットに移動の駆動力を提供する。このタイプの壁面移動ロボットには以下の欠点がある。
【0003】
(1)エネルギー消費が大きいこと
反発力吸着機構は、吸着力を保持してロボットを傾斜面に吸着させるのに常にエネルギーを消費しなければならない。機械車は携帯電池を用いて給電すると、反発力吸着機構の高エネルギー消費は電池の航続時間を大幅に短縮させ、機械車は、傾斜面に長時間保持されて動作することができない。
【0004】
(2)騒音が大きいこと
反発力吸着機構の機械的運動と気流運動は高デシベルの機械的騒音と空力騒音を生成する。吸着力が大きいほど騒音が大きくなる。このようにして、機械車が傾斜面上で何らかの特殊な作業(例えば、対テロ偵察)を行うと、高デシベルの騒音が機械車の行方を暴露させてしまう。
【0005】
エネルギー消費及び騒音を低減するために、技術者はロープによって吊り上げられる高所作業機械を開発している。例えば、傾斜面の上方には、ロープ巻き取り・巻き出しを行うことができるロープリール機構が固定される。ロープの一端は作業機械に接続される。作業機械は吊り下げ方向に移動可能である。作業機械が壁面上を二次元的に移動できるようにするために、発明特許出願202110088053.3では、複数のロープによって吊り下げる方法がさらに提案される(図1)。しかしながら、複数のロープによって吊り下げるタイプの高所作業機械には次のような欠点がある。
【0006】
(1)壁面の上方に複数のロープリール機構が固定されるため、作業フローが煩雑になり、作業の難易度が高い。
【0007】
(2)高所作業機の移動範囲はロープリール機構によって規制される。例えば、図1には、高所作業機100の横方向の移動範囲は2つのロープリール機構400の間のみである。また、高所作業機械は1つの壁面上を移動することしかできず、直角をなす隣接する壁面を乗り越えることができない。例えば、図1には、高所作業機械100は壁面A上のみを移動可能であり、壁面Bに移動できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の不足に対し、クモの糸張り、糸引きの動きを模倣することによってエネルギー消費が高く、騒音が大きく、運動範囲が限られるという、従来技術(例えば、傾斜面移動ロボットなど)に通常存在している技術的課題を解決できるロープ移動機械及びマルチ機械移動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の解決手段を採用する。
対象物体上を移動可能な機械本体を備えるロープ移動機械であって、機械本体に接続されるロープ機構と、表面接続機構とをさらに備え、ロープ機構はロープ巻き取り・巻き出し機構とロープを備え、ロープ巻き取り・巻き出し機構はロープに接続され、表面接続機構はロープを前記対象物体に接続し、対象物体に1つ又は複数の接続点を形成し、接続点はロープにより前記機械本体の一部又は全部の重力を受け、ロープ巻き取り・巻き出し機構は接続点と機械本体との間のロープの長さを変更可能である。
【0010】
さらに、前記表面接続機構は接着剤を用いてロープを前記対象物体に接着するようにしてもよい。
【0011】
さらに、前記表面接続機構は機械的接続を利用してロープを対象物体に接続するようにしてもよい。さらに、前記表面接続機構はロープを対象物体に打ち付けるようにしてもよい。前記表面接続機構は、ロープの異なる位置に固定される1つ又は複数のフックを備え、フックを対象物体に引っ掛けることにより接続点を形成するようにしてもよい。
【0012】
さらに、前記表面接続機構はロープと対象物体との接続を解除する接続解除機構を備えてもよい。
【0013】
さらに、前記表面接続機構は、ロープが緊張部分と緩んだ部分になるように、ロープを係止可能なロープ係止機構を備えてもよい。
【0014】
さらに、前記機械本体は、機械本体を対象物体に吸着する吸着機構を備えてもよい。
【0015】
さらに、前記機械本体は、機械本体を駆動して対象物体上を移動させる移動機構を備えてもよい。
【0016】
さらに、前記表面接続機構は、ロボットアーム、接着剤吐出ヘッド、吐出ヘッドプッシュロッド、ロープ係止機構を備え、ロープ係止機構は、ロープを係止して緊張部分と緩んだ部分にするために用いられ、ロボットアームは回転軸を介して機械本体に接続され、接着剤吐出ヘッド及び吐出ヘッドプッシュロッドはロボットアームに設けられてロープの緩んだ部分を対象物体に接着する。
【0017】
本発明のマルチ機械移動システムは、2つ以上の上記ロープ移動機械を備え、且つ少なくとも2つの異なるロープ移動機械は機械接続ロープを介して互いに接続され、前記機械接続ロープの長さが調整可能である。
【発明の効果】
【0018】
従来技術に比べ、本発明のロープ移動機械及びマルチ機械移動システムは以下の利点を有する。
【0019】
本発明のロープ移動機械は、吸着機構を必要とせずに対象物体を鉛直又は傾斜した対象表面上を移動させることができる。本発明のロープ移動機械は、吸着機構を使用しても、吸着機構が弱い吸着力を提供するだけで動作のニーズを満たすことができる。そのため、本発明のロープ移動機械は大電力の吸着機構を備えず、つまり高速の機械的運動及び気体流動が存在せず、これにより、機械的損失及び流体流動損失が発生せず、つまり機械的騒音及び空力騒音が発生せず、又は発生した機械的騒音及び空力騒音が従来技術の機械よりもはるかに低い。また、本発明のロープ移動機械は、ロープを対象物体の複数箇所に接続して複数の接続点を形成することによって、面一ではない2つの対象表面を乗り越えることができ、また、エネルギー消費がゼロの場合には、鉛直又は傾斜した対象表面に長時間保持することができる。そして、ロープ移動機械の組み合わせによりマルチ機械移動システムを形成し、対象物体上での効率的な移動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は従来技術における解決手段の1つである。
図2図2は本発明のロープ移動機械に係る実施例1の側面構造概略図である。
図3図3は本発明のロープ移動機械に係る実施例1の正面構造概略図である。
図4図4は本発明のロープ移動機械に係る実施例1のロープ係止機構の概略図であり、図2の平面図の一部である。
図5a図5aは実施例1に係るロープ移動機械の動作過程において、ロープ係止機構がロープを係止した後の状態概略図である。
図5b図5bは実施例1に係るロープ移動機械の動作過程において、ロボットアームの回転概略図である。
図5c図5cは本発明の実施例1に係るロープ移動機械の動作過程において、接続点を形成する状態概略図である。
図5d図5dは本発明の実施例1に係るロープ移動機械の動作過程において、吐出ヘッドプッシュロッドに増設されたロープクリップがロープを挟む概略図である。
図5e図5eは本発明の実施例1に係るロープ移動機械の動作過程において、接続点を形成した後にロープ係止機構が解放したときの状態概略図である。
図6図6は釘でロープと対象物体の表面を接続する概略図である。
図7図7は釘でロープと対象物体の表面を接続する概略図である。
図8a図8aは本発明の実施例2に係るロープ移動機械の動作過程において、ロープ移動機械が対象表面1上にある概略図である。
図8b図8bは本発明の実施例2に係るロープ移動機械の動作過程において、ロープ移動機械が対象表面2に移動する概略図である。
図8c図8cは本発明の実施例2に係るロープ移動機械の動作過程において、ロープ移動機械が対象表面2に新たな接続点を形成したときの状態概略図である。
図9図9は本発明の実施例3に係るロープ移動機械の構造概略図である。
図10図10は本発明の実施例4に係るロープ移動機械が対象表面1から対象表面2へ移動する動作概略図であって、ロボットアームの回転後の状態概略図である。
図11図11は本発明の実施例4に係るロープ移動機械が対象表面1から対象表面2へ移動する動作概略図であって、ロボットアーム2が所望の位置まで回転したときの状態概略図である。
図12図12は本発明の実施例5に係るロープ移動機械の横方向移動方法の概略図である。
図13図13は本発明の実施例6に係るマルチ機械移動システムの構造概略図である。
図14図14は本発明の実施例6に係るマルチ機械移動システムの動作概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下、図面及び実施例を参照しつつ本発明をさらに詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施例は本発明を説明するために用いられるにすぎず、本発明を限定するものではないと理解すべきである。
【実施例0022】
本発明のロープ移動機械100は、機械本体110と、表面接続機構120と、ロープ機構130とを備える。ロープ機構130は、ロープ131とロープ巻き取り・巻き出し機構132を備える。機械本体110には、ロープを対象物体300の表面(以下、対象表面という)の1つ又は複数の箇所に接続して対象表面に1つ又は複数の接続点200を形成する表面接続機構120が取り付けられる。ロープ機構130は、機械本体110と対象物体表面上の接続点200を接続し、ロープ巻き取り・巻き出し機構132は、機械本体110と接続点200との間のロープ131の長さを変更可能である。接続点200はロープ131により機械本体110の一部又は全部の重力を受ける。
【0023】
本実施例(図2及び図3)では、機械本体110は、4つの駆動車輪112が取り付けられた車体111である。ロープ巻き取り・巻き出し機構132は、車体111に取り付けられたロープリール132-1である。ロープリールはシーブを内部に有し、片端がシーブに接続され、シーブを正転、逆転制御することによってロープ巻き取り・巻き出しを実現する。本実施例では、表面接続機構120は接着剤を用いてロープを対象表面に接着し、接着剤はホットメルト接着剤である。ホットメルト接着剤は、加熱されると、スプレーすることができる液状のメルト接着剤になり、冷却されると固体となり、接着力を発生させ、ロープ131と対象表面を接続することができる。表面接続機構120は、1つのロボットアーム121、ホットメルト接着剤吐出ヘッド122、吐出ヘッドプッシュロッド123、ロープ係止機構124で構成される。ロボットアーム121は、長尺状のプレートである。ロボットアーム121の一端に吐出ヘッドプッシュロッド123が設けられ、吐出ヘッドプッシュロッド123の先端にホットメルト接着剤吐出ヘッド122が設けられる。ホットメルト接着剤吐出ヘッド122は、メルト接着剤を加熱して吐出する機能を有する。ロープは、ロボットアーム121のロープ通し孔121-1に通される。ロボットアーム121の他端は、ロボットアーム回転軸121-2を介して車体111に接続される。ロボットアーム回転軸121-2はロボットアーム121を駆動して回転させることができる。表面接続機構120はロープ係止機構124をさらに備え、ロープ係止機構124はロープを係止して、ロープ131が緊張部分と緩んだ部分となるようにする。本実施例のロープ係止機構124はロープクランプ124-1である。図4に示すように、ロープクランプ124-1は2つの回転可能なクランプ片124-2で構成され、2つのクランプ片124-2は回転可能である。2つのクランプ片124-2が開いているとき、ロープクランプ124-1はロープ131を締め付けていない。2つのクランプ片124-2が閉じられると、ロープ131がロープクランプ124-1に締め付けられる。
【0024】
本実施例のロープ移動機械は、ホットメルト接着剤を用いてロープを対象物体の表面に接着する。機械がロープによって傾斜した対象表面に吊り下げられると仮定すると、重力の作用下でロープが緊張状態にあり、図5はロープを対象表面に接着する過程を示す。
【0025】
(1)図5(a)に示すように、ロープクランプ124-1はロープ131を締め付ける。その後、ロープリール132-1はロープ131を巻き出す。このように、ロープクランプ124-1とロープリール132-1との間のロープは緩んだ状態にあるが、ロープクランプ124-1の上部のロープは緊張状態のままである。
【0026】
(2)図5(b)に示すように、ロボットアーム121は所定位置まで揺動する。ロープはロボットアーム121のロープ通し孔121-1を貫通するので、ロボットアーム121はロープを引っ張ってそれを同期して回転させることができる。また、ロープクランプ124-1とロープリール132-1との間のロープは緩んだ状態にあるので、緩んだ状態のロープはロボットアーム121の回転を妨げることはない。
【0027】
(3)図5cに示すように、吐出ヘッドプッシュロッド123が伸び、これによりホットメルト接着剤吐出ヘッド122を駆動して前へ移動させる。それと同時に、ホットメルト接着剤吐出ヘッド122は少量の高温メルト接着剤を吐出し、高温メルト接着剤はロープ通し孔121-1の先端のロープをホットメルト接着剤吐出ヘッド122の先端に接着する。続いて、吐出ヘッドプッシュロッド123が伸び続け、これによりホットメルト接着剤吐出ヘッド122が対象表面に当接する。その後、ホットメルト接着剤吐出ヘッド122は、大量の高温メルト接着剤を吐出し始める。高温メルト接着剤はロープと対象表面を接着する。十分なメルト接着剤を吐出した後、ホットメルト接着剤吐出ヘッド122はメルト接着剤の吐出を停止する。続いて、吐出ヘッドプッシュロッド123及びホットメルト接着剤吐出ヘッド122は後退し始める。高温メルト接着剤は徐々に冷却し、十分な接着力を有する接着点(すなわち接続点200)を形成する。接着点はロープを対象表面に強固に接着する。図5dに示すように、ロープを対象表面により確実に接着するために、発明者らは吐出ヘッドプッシュロッド123の先端にロープクリップ123-1を増設してもよい。ロープクリップ123-1は、吐出ヘッドプッシュロッド123に取り付けられ、2つの移動可能なクランプ片を備える。2つのクランプ片が下へ移動すると、ロープ通し孔121-1の先端のロープが締め付けられるので、吐出ヘッドプッシュロッド123はロープを対象表面に確実に押し当てることができ、これは次の接着作業の円滑化に寄与する。
【0028】
(4)図5(e)に示すように、ロボットアーム121は中間位置に戻る。その後、ロープクランプ124-1はロープを放す。ロープ移動機械は接着点の下方に吊り下げられる。
【0029】
本実施例では、ロープ巻き取り・巻き出し機構132は車体に取り付けられたロープリール132-1であり、ロープ巻き取り・巻き出し機構132はロープの巻き取り、巻き出しが可能な他のいずれかの構成であってもよい。
【0030】
本実施例はホットメルト接着剤を例としてロープと対象表面を接続する過程を説明した。接着剤による接着方式によってロープを対象表面に接続するという革新的な設計は、クモがクモ糸をくっつけることを模倣する生体模倣設計である。接着剤はホットメルト接着剤に限定されない。本発明の接着剤は硬化及び/又は化学反応及び/又は他の接着原理によってロープ及び対象表面と力学的接続を確立することができる。接着剤は各種のゴム糊、溶接棒、テープ、グラウト等であってもよく、いくつかの必要なステップ(例えば、本実施例のホットメルト接着剤の場合、加熱、スプレー、冷却凝固は必要なステップである)を行った後、接着剤は対象表面に接着点(すなわち接続点200)を形成することができ、接着点はロープにより機械本体110の全部又は一部の重力を受ける。
【0031】
本発明の実際の適用では、ロープを対象表面に接続し、接続点200を形成するように、対象物体300の表面状況に応じて適切な方式を選択してもよい。例えば、機械的接続の方式を採用してもよい。図6に示すように、対象表面が木製表面又は柔らかい表面である場合、ホットメルト接着剤吐出ヘッド122及び吐出ヘッドプッシュロッド123に代えて釘打機122-1を用いてもよい。釘打機122-1は釘122-2を高速射出することができる。釘122-2は、ロープ通し孔121-1の先端のロープに当たって、ロープを伴って対象表面に当たる。このようにして、図7に示すように、釘122-2によってロープが対象表面に固定され、接続点200が形成される。また例えば、対象表面が金網構造である場合、表面接続機構120はロープの異なる位置に固定される複数のフックを備えてもよく、ロープのフックを金網に掛けることによって接続点200が形成される。
【実施例0032】
図8aに示すように、実施例1のロープ移動機械を建物の天井面(図8aの対象表面310)に置く。ロープ移動機械は、第1対象表面310で第1接着点210を作製してロープを第1対象表面310に接着する。その後、図8bに示すように、ロープ移動機械を左方向に移動させて第1対象表面310から外させることで、ロープ移動機械が第2対象表面320に吊り下げられる。ロープリールのロープ巻き取り・巻き出しによってロープ移動機械が鉛直方向に速やかに上下移動することができる。図8c(該図は対象表面320の正面図)に示すように、ロープ移動機械は、第2接着点220を作製し、第2接着点220の下に吊り下げられる。このようにして、ロープ移動機械は第1接着点210と第2接着点220との間の横方向の距離だけの横方向の移動を完了する。
【0033】
ロープ移動機械は、第2対象表面320に新たな接着点を作製することにより横方向移動を行うとともに、ロープリールによるロープ巻き取り・巻き出しにより上下移動する。
【実施例0034】
図8cに示すように、ロープ移動機械はロープリールによるロープ巻き取りによって上へ移動することができる。しかし、接着点220によりロープが対象表面に接着されるため、機械は、接着点220の上方まで上へ移動できない。これにより、ロープ移動機械の昇降範囲が制限される。この問題を解決するために、表面接続機構120に接続解除機構140を増設する。本実施例では、図9に示すように、接続解除機構140は熱風機である。熱風機はロボットアーム121に取り付けられる。熱風機は熱風を吹き出し、硬化したメルト接着剤を高温にして溶融させ、ロープが対象表面から離脱するようにする。そして、ロープ移動機械は接着点の規制を破って、上へ移動し続けることができる。
【0035】
本実施例では、接続解除機構は熱風機として実装される。本発明では、接続解除機構は他の方式で実装されてもよく、具体的な接続解除方法は、接続点200を形成する方式に対応し、例えば、接着剤によって接続点200を形成すれば、接着剤解除溶液又は加熱等の方式を用いて接着接続を解除することができる。釘を用いて接続点200を形成すれば、釘を引き抜くことにより接続を解除することができる。フックを金網に引っ掛けることにより接続を形成すれば、フックを取り外すことにより接続を解除することができる。
【実施例0036】
図10図11に示すように、本実施例では、第1対象表面310と第2対象表面320は、面一ではない2つの対象表面である(本実施例では、2つの対象表面の夾角は90度である)。ロープ移動機械は第1対象表面310に吊り下げられる。本実施例のロープ移動機械のロボットアーム121は、第1ロボットアームプレート121-3と第2ロボットアームプレート121-4で構成される。2枚のアームプレートは、関節回転軸によって接続される。関節回転軸モータ121-5は、第2ロボットアームプレートを駆動して回転させることができる。吐出ヘッドプッシュロッド123、ホットメルト接着剤吐出ヘッド122、ロープ通し孔121-1は第2ロボットアームプレートの先端に取り付けられる。
【0037】
関節回転軸モータ121-5は第2ロボットアームプレートを駆動して90度回転させる。第2ロボットアームプレートは、吐出ヘッドプッシュロッド123、ホットメルト接着剤吐出ヘッド122を連れて第2対象表面320に回転する。このようにして、ロープ移動機械は第2対象物体表面320に接着点を作製してから、第2対象物体表面320に吊り上げられる。すなわち、ロープ移動機械は直角をなす2つの対象表面を乗り越えることができる。そのため、本発明のロープ移動機械は、面一ではない2つの対象表面上を移動することができる。
【実施例0038】
上記実施例では、ロープ移動機械は対象表面に接着点を作製することで横方向移動を実現する。接着点を作製するには複数の動作が必要であり、各動作には時間がかかり、且つ、ロボットアーム121の長さが限られているため、各接着点はロープ移動機械を1つのロボットアーム121の距離だけ横方向に移動させることしかできず、そのため、このような横方向移動の方式は効率が比較的低い。
【0039】
本実施例はより効率的な横方向移動方法を提案する。図12に示すように、ロープ移動機械は第2接着点220の下方に吊り下げられる。第2接着点220とロープ移動機械との間のロープは対象表面と一定の角度をなす(図2参照)。そのため、ロープは対象表面に向かう分力(図2のロープ引張力表記参照)をロープ移動機械に与える。このロープの分力の作用下で車体の車輪と対象表面との間で接触力が発生し、これにより摩擦力が発生する。本実施例では、この摩擦力を利用してロープ機械を駆動して横方向移動させる。各車輪は駆動輪であり、且つ、車輪の向きは0~90°の範囲で変更可能である。まず、車輪112の向きを水平方向に回転させ、次に、車輪を回転駆動させる。ロープ移動機械は、車輪と対象表面との間の摩擦力によって駆動されて横方向に移動可能になる。第2接着点220とロープ移動機械との間のロープ長さを一定に保つと、移動の軌跡は円弧線(図12の破線軌跡)となる。移動中にロープ長さを変更すると、移動の軌跡はそれに対応して他の形状の軌跡になり、ここでは詳しく説明しない。ロープ移動機械の移動に伴い、ロープに横方向の分力が発生し、機械の横方向移動を妨げる。ロープの横方向の分力と車輪の摩擦力の横方向の分力が釣り合う場合、ロープ移動機械の横方向の移動距離は最大となる。
【0040】
車輪と対象表面との間の摩擦力が大きいほど、横方向移動距離が大きくなることは明らかである。本実施例では、車輪と対象物体表面との間の摩擦力を高めるために、機械本体110に吸着機構113を増設する。吸着機構113は対象表面に吸着力を印加することで、車輪と対象表面との間の接触力を増加させることができ、すなわち摩擦力を増加させ、横方向移動の距離を増加させ、横方向移動の効率を向上させることができる。また、吸着機構がロープ移動機械を対象表面に吸着することは、ロープ移動機械の吊り下げ状態での安定性にも寄与し、高空横風などの外乱要因により揺れが生じない。
【0041】
本発明では、吸着機構は真空吸着、磁気吸着(対象表面は磁性材質)、回転翼反発力、粘性付着等の複数の方式を採用するようにしてもよい。本発明では、機械自体の大部分の重力はロープの引張力に相殺され、そのため、小さな吸着力だけで横方向移動の摩擦力のニーズを満たすことができる。そのため、吸着機構は比較的小さい電力状態で動作すればよい。
【実施例0042】
本実施例はマルチ機械移動システムを利用して移動効率を向上させる解決手段を提案する。マルチ機械移動システムは2つ以上のロープ移動機械を備える。ロープ移動機械の間には機械接続ロープがある。そして、互いに接続されるロープ移動機械間の機械接続ロープの長さが可変である。
【0043】
図13は2つのロープ移動機械を備えるマルチ機械移動システムである。第1ロープ移動機械100-1は第1接着点240の下方に吊り下げられ、第2ロープ移動機械100-2は第2接着点250の下方に吊り下げられる。機械接続ロープ400には2つのロープ移動機械が接続される。本実施例の機械接続ロープ400はロープリール410によってロープ巻き取り・巻き出しを実現する。ロープリール410は第1ロープ移動機械100-1に取り付けられる。ロープは、一端がロープリールに接続され、他端が第2ロープ移動機械100-2に接続される。ここでは、機械接続ロープは、ロープ長さの調整を実現できる他のいずれかの構成であってもよい。
【0044】
ロープリール410は、ロープを引き締め、機械接続ロープを短縮させて緊張させる。機械接続ロープの短縮に伴い、第1ロープ移動機械100-1は、右上方に引っ張られ、これにより高速、長距離の横方向移動を実現し、且つ第1接着点240の上方への移動を実現する。
【0045】
以上の実施例は本発明のロープ移動機械の構成と動作原理を詳細に説明しており、本発明は以下の利点を有する。
【0046】
(1)実施例1~4及び実施例6では、本発明のロープ移動機械は吸着機構を必要とせず、吸着機構による騒音やエネルギー消費が発生しない。本発明のロープ移動機械は、エネルギー消費ゼロ、騒音ゼロの状態で対象物体表面に長時間保持することができる。実施例5では、横方向移動の距離を増加させるために吸着機構を用いるが、機械自体の重力の大部分はロープの引張力によって相殺され、吸着機構は、小さな吸着力を生じるだけで横方向移動の摩擦力のニーズを満たすことができ、そのため、吸着機構の騒音とエネルギー消費はいずれも非常に低い状態を維持することができる。
【0047】
(2)本発明のロープ移動機械は、ロープを対象表面の複数の箇所に接続して複数の接続点を形成することによって対象表面上を移動でき、且つ面一ではない対象表面間を移動できる。
【0048】
(3)本発明は接着剤によりロープを対象表面に接続して接続点を形成する。この方法はクモがクモ糸をくっつける生体模倣設計である。また、この方法は対象表面の材質、形状、硬度などの状況に制限されず、非常に強い適用性を有する。
【0049】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び原則を逸脱することなく行われるすべての修正、同等置換及び改良などは、本発明の特許範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0050】
100 ロープ移動機械
100-1 第1ロープ移動機械
100-2 第2ロープ移動機械
110 機械本体
111 車体
112 車輪
113 吸着機構
120 表面接続機構
121 ロボットアーム
121-1 ロープ通し孔
121-2 ロボットアーム回転軸
121-3 第1ロボットアームプレート
121-4 第2ロボットアームプレート
121-5 関節回転軸モータ
122 ホットメルト接着剤吐出ヘッド
122-1 釘打機
122-2 釘
123 吐出ヘッドプッシュロッド
123-1 ロープクリップ
124 ロープ係止機構
124-1 ロープクランプ
124-2 クランプ片
130 ロープ機構
131 ロープ
132 ロープ巻き取り・巻き出し機構
132-1 ロープリール
140 接続解除機構
200 接続点
210 第1接着点
220 第2接着点
230 接着点
240 第1接着点
250 第2接着点
300 対象物体の表面
310 第1対象表面
320 第2対象表面
330 第3対象表面
400 機械接続ロープ
410 ロープリール
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9
図10
図11
図12
図13
図14