(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099472
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230706BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 201F
H01G4/30 201K
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
H01G4/30 512
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183886
(22)【出願日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0194277
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0102850
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、オグ スーン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チェ ドン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ウォン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF06
5E001AH01
5E001AJ03
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC31
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG12
5E082GG28
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部電極の浮き上がりや破裂不良を抑制する。
【解決手段】積層型電子部品の外部電極131、132は、導電性金属及び樹脂を含む導電性樹脂層131b、132bを含み、FT-IR分析により得られた導電性樹脂層の波数に対するスペクトル強度の関係線を示す2軸グラフ中、関係線において波数1420cm
-1のスペクトル強度と波数1520cm
-1のスペクトル強度とを繋ぐ基準直線Laを引き、波数1420cm
-1~1520cm
-1の領域のうちLaから関係線までのスペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをA、関係線において波数3100cm
-1のスペクトル強度と波数3700cm
-1のスペクトル強度とを繋ぐ基準直線Lcを引き、波数3100cm
-1~3700cm
-1の領域のうちLcから関係線までのスペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをCとするとき、AとCは、0.337≦2×C/A≦0.367を満たす。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体、並びに前記本体上に配置される外部電極を含み、
前記外部電極は、導電性金属及び樹脂を含む導電性樹脂層を含み、
FT-IR分析により得られた前記導電性樹脂層の波数に対するスペクトル強度の関係線を示す2軸グラフ中、
前記関係線において波数1420cm-1のスペクトル強度と波数1520cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Laを引き、波数1420cm-1~1520cm-1の領域のうち前記Laから前記関係線までのスペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをA、
前記関係線において波数3100cm-1のスペクトル強度と波数3700cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lcを引き、波数3100cm-1~3700cm-1の領域のうち前記Lcから前記関係線までの前記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをCとするとき、
前記A及びCは、0.337≦2×C/A≦0.367を満たす、積層型電子部品。
【請求項2】
前記関係線において波数1650cm-1のスペクトル強度と波数1800cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lbを引き、波数1650cm-1~1800cm-1の領域のうち前記Lbから前記関係線までの前記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをBとするとき、
前記A及びBは、0.048≦B/A≦0.14を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記導電性樹脂層は、ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂を含む、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂の総含有量に対するビフェニル(Biphenyl)系樹脂の含有量比率は、10wt%以上50wt%以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記外部電極は本体上に配置され、導電性金属及びガラスを含む電極層を含み、
前記導電性樹脂層は前記電極層上に配置される、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記導電性樹脂層はGC-MS分析時に、
ビスフェノール A ピーク(Bisphenol A peak)が検出され、メチル-ビフェニル ピーク(Methyl-biphenyl peak)及びジメチル-ビフェニル ピーク(Dimethyl-biphenyl peak)のうち一つ以上が検出される、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記外部電極は本体上に配置され、導電性金属及びガラスを含む電極層を含み、
前記導電性樹脂層は前記電極層上に配置される、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記A及びCは、0.344≦2×C/A≦0.367を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記関係線において波数1650cm-1のスペクトル強度と波数1800cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lbを引き、波数1650cm-1~1800cm-1の領域のうち前記Lbから前記関係線までの前記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをBとするとき、
前記A及びBは、0.048≦B/A≦0.14を満たす、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記外部電極は、前記本体上に配置される電極層及び前記導電性樹脂層上に配置されるめっき層をさらに含み、前記導電性樹脂層は電極層上に配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記電極層は導電性金属及びガラスを含む、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記導電性樹脂層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記導電性樹脂層に含まれた導電性金属は、複数の金属粒子及び金属間化合物を含む、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記誘電体層の平均厚さは、前記内部電極の平均厚さより2倍以上大きい、請求項1から13のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記内部電極の平均厚さは1μm未満であり、前記誘電体層の平均厚さは2.8μm未満である、請求項14に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
誘電体層及び内部電極を含む本体、並びに前記本体上に配置される外部電極を含み、
前記外部電極は前記本体上に配置され、導電性金属及びガラスを含む電極層及び前記電極層上に配置される導電性樹脂層を含み、
前記導電性樹脂層は、導電性金属、ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂を含む、積層型電子部品。
【請求項17】
前記導電性樹脂層はGC-MS分析時に、
ビスフェノール A ピーク(Bisphenol A peak)が検出され、メチル-ビフェニル ピーク(Methyl-biphenyl peak)及びジメチル-ビフェニル ピーク(Dimethyl-biphenyl peak)のうち一つ以上が検出される、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
FT-IR分析により得られた前記導電性樹脂層の波数に対するスペクトル強度の関係線を示す2軸グラフ中、
前記関係線において波数1420cm-1のスペクトル強度と波数1520cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Laを引き、波数1420cm-1~1520cm-1の領域のうち前記Laから前記関係線までのスペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをA、
前記関係線において波数3100cm-1のスペクトル強度と波数3700cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lcを引き、波数3100cm-1~3700cm-1の領域のうち前記Lcから前記関係線までの前記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをCとするとき、
前記A及びCは、0.337≦2×C/A≦0.367を満たす、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項19】
前記関係線において波数1650cm-1のスペクトル強度と波数1800cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lbを引き、波数1650cm-1~1800cm-1の領域のうち前記Lbから前記関係線までの前記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをBとするとき、
前記A及びBは、0.048≦B/A≦0.14を満たす、請求項18に記載の積層型電子部品。
【請求項20】
前記ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂の総含有量に対するビフェニル(Biphenyl)系樹脂の含有量比率は、10wt%以上50wt%以下である、請求項16から19のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項21】
FT-IR分析により得られた前記導電性樹脂層の波数に対するスペクトル強度の関係線を示す2軸グラフ中、
前記関係線において波数1420cm-1のスペクトル強度と波数1520cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Laを引き、波数1420cm-1~1520cm-1の領域のうち前記Laから前記関係線までのスペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをA、
前記関係線において波数3100cm-1のスペクトル強度と波数3700cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lcを引き、波数3100cm-1~3700cm-1の領域のうち前記Lcから前記関係線までの前記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをCとするとき、
前記A及びCは、0.344≦2×C/A≦0.367を満たす、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項22】
前記関係線において波数1650cm-1のスペクトル強度と波数1800cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lbを引き、波数1650cm-1~1800cm-1の領域のうち前記Lbから前記関係線までの前記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをBとするとき、
前記A及びBは、0.07≦B/A≦0.14を満たす、請求項18に記載の積層型電子部品。
【請求項23】
前記ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂の総含有量に対するビフェニル(Biphenyl)系樹脂の含有量比率は、10wt%以上40wt%以下である、請求項16から19のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layer Ceramic Capacitor)製品群は大きくIT用と電装用とに分けられる。
【0004】
電装用MLCCの場合、IT用MLCCと同様にコンデンサの役割を果たすことは同じであるが、電装用MLCCは、外部電極と基板間の実装部分に応力が集中する環境に晒されやすく、このような応力を解消するために曲げ強度に優れることが求められる。
【0005】
優れた曲げ強度を確保するために、従来の電極層で構成される外部電極を電極層及び導電性樹脂層の二層構造に変更する方案が提案されている。
【0006】
電極層及び導電性樹脂層の二層構造は、電極層上に導電性物質を含有する樹脂組成物を塗布して外部衝撃を吸収し、めっき液の浸透を防ぎ、信頼性を向上させることができる。
【0007】
しかし、導電性樹脂層の樹脂が酸化するにつれてセラミック本体と電極層との接着力が減少することがあり、当該過程で発生したガス副産物(水素、二酸化炭素など)が電極層と導電性樹脂層との間に分布することにより外部電極の浮き上がりや破裂不良が発生するおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明のいくつかの目的の一つは、外部電極が導電性樹脂層を含む場合に発生する外部電極の浮き上がりや破裂不良を抑制することにある。
【0009】
本発明のいくつかの目的の一つは、導電性樹脂層の固着強度を確保することにある。
【0010】
本発明のいくつかの目的の一つは、導電性樹脂層の酸化を抑制することにある。
【0011】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体、並びに上記本体上に配置される外部電極を含み、上記外部電極は、導電性金属及び樹脂を含む導電性樹脂層を含み、FT-IR分析により得られた上記導電性樹脂層の波数に対するスペクトル強度の関係線を示す2軸グラフ中、上記関係線において波数1420cm-1のスペクトル強度と波数1520cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Laを引き、波数1420cm-1~1520cm-1の領域のうち上記Laから上記関係線までの上記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをA、上記関係線において、波数3100cm-1のスペクトル強度と波数3700cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lcを引き、波数3100cm-1~3700cm-1の領域のうち上記Lcから上記関係線までの上記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをCとするとき、上記A及びCは、0.337≦2×C/A≦0.367を満たすことができる。
【0013】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体、並びに上記本体上に配置される外部電極を含み、上記外部電極は上記本体上に配置され、導電性金属及びガラスを含む電極層及び上記電極層上に配置される導電性樹脂層を含み、上記導電性樹脂層は、導電性金属、ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂を含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の様々な効果の一つは、FT-IR分析により得られた導電性樹脂層の波数に対するスペクトル強度の関係線で測定されるピークの比率を制御することにより、外部電極の浮き上がりや破裂不良を抑制したことである。
【0015】
本発明の様々な効果の一つは、導電性樹脂層にビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂を同時に含むことで、外部電極の浮き上がり及び破裂不良を抑制したことである。
【0016】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の本体を分解して示す分解斜視図である。
【
図5】FT-IR分析のために本体の第3面上に配置された導電性樹脂層を露出させた積層型電子部品の斜視図である。
【
図6】FT-IR分析により得られた関係線でA及びBを測定する方法を説明するためのグラフである。
【
図7】FT-IR分析により得られた関係線でCを測定する方法を説明するためのグラフである。
【
図8】外部電極の浮き上がり不良が発生したチップ(サンプル1及び2)と、外部電極の浮き上がり不良が発生していないチップ(サンプル3)に対するTGA分析結果である。
【
図9】外部電極の浮き上がり不良が発生したチップ(サンプル1及び2)と、外部電極の浮き上がり不良が発生していないチップ(サンプル3)に対するEGA-MS分析結果である。
【
図11】アルコール基の酸化反応を示した式である。
【
図13】導電性樹脂層に含まれた樹脂がビスフェノールA系樹脂である場合(実験例1)、導電性樹脂層に含まれた樹脂がビスフェノールA系樹脂50wt%及びビフェニル系樹脂50wt%を含む場合(実験例2)、及び導電性樹脂層に含まれた樹脂がビフェニル系樹脂である場合(実験例3)、FT-IR分析時に得られた各関係線を比較するために一つのグラフに示したものである。
【
図14】ビスフェノールA系樹脂(実験例1)、ビフェニル系樹脂(実験例3)及びそれらの混合物(実験例2)に対するGC-MS分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張されてもよく、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0019】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示したものであるため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されるものではない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0020】
図面において、第1方向は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図であり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図であり、
図4は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の本体を分解して示す分解斜視図であり、
図5は、FT-IR分析のために本体の第3面上に配置された導電性樹脂層を露出させた積層型電子部品の斜視図であり、
図6は、FT-IR分析により得られた関係線でA及びBを測定する方法を説明するためのグラフであり、
図7は、FT-IR分析により得られた関係線でCを測定する方法を説明するためのグラフである。
【0022】
以下、
図1~
図7を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100について説明する。
【0023】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110、並びに上記本体上に配置される外部電極131、132を含み、上記外部電極は、導電性金属及び樹脂を含む導電性樹脂層131b、132bを含み、FT-IR分析により得られた上記導電性樹脂層の波数に対するスペクトル強度の関係線を示す2軸グラフ中、上記関係線において波数1420cm-1のスペクトル強度と波数1520cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Laを引き、波数1420cm-1~1520cm-1の領域のうち上記Laから上記関係線までの上記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをA、上記関係線において波数3100cm-1のスペクトル強度と波数3700cm-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lcを引き、波数3100cm-1~3700cm-1の領域のうち上記Lcから上記関係線までの上記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズをCとするとき、上記A及びCは、0.337≦2×C/A≦0.367を満たすことができる。
【0024】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができる。
【0025】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。
【0026】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0027】
優れた曲げ強度を確保するために、外部電極131、132に導電性樹脂層131b、132bを含ませる構造が提案されており、外部電極の導電性樹脂層に含まれる樹脂は一般にビスフェノールA(bisphenol A、BPA)系樹脂を使用している。
【0028】
外部電極の導電性樹脂層に含まれるビスフェノールA系樹脂の代表的な例としては、DGEBA(Bisphenol A diglycidyl ether)がある。DGEBA構造を示す
図10を参照すると、DGEBAは高分子の末端にエポキシ基(C-O-C)を保有しており、接着性及び反応性を高めるために高分子の骨格(back bone)構造内に多量のアルコール基(-OH)を保有している。アルコール基は、水素結合を介して接着性を形成するだけでなく、酸素が有する共有電子対であって化学反応基としても使用することができる。しかし、
図11のように金属触媒及び高温環境でアルコール基の酸化反応が起こる場合、アルコール基の数が減少することで本体と電極層との接着力が減少することがあり、当該過程で発生する水素、二酸化炭素など、ガス副生成物が電極層と導電性樹脂層との間に分布することによって、外部電極の浮き上がり及び破裂不良が発生する可能性があった。このとき、金属触媒は、導電性樹脂層組成物に含まれた導電性金属粒子であることができ、高温環境とは200℃~400℃を意味することができる。
【0029】
そこで、本発明では、導電性樹脂層のFT-IR(Fourier transform infrared spectroscopy)分析時に観察されるAromatic ring peak intensityとアルコール(-OH)peak intensityの比を制御することにより、導電性樹脂層131b、132bの酸化を抑制して外部電極131、132の浮き上がり及び破裂不良を抑制しながらも、優れた固着強度を確保しようとした。
【0030】
FT-IR分析により得られた導電性樹脂層131b、132bの波数に対するスペクトル強度の関係線を示す2軸グラフで観察されるピークとしては、Aromatic ring peak、アルコール(-OH)peak、カルボニル(C=O)peakなどがある。FT-IRは、Fourier Transform-InfraRedの略字であって、フーリエ変換赤外線分光器を意味する。このとき、導電性樹脂層131b、132bが外部電極の内部に配置される場合、破壊分析(Destractive Physical Analysis、DPA)によって本体の第3面上に配置された導電性樹脂層131bを
図5のように露出させた後、FT-IR装備で露出した導電性樹脂層131bを分析することができ、FT-IR装備のSpectral rangeは4000~650cm
-1と指定することができる。
【0031】
図6を参照すると、Aromatic ring peak intensityは、波数1420cm
-1のスペクトル強度と波数1520cm
-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Laを引き、波数1420cm
-1~1520cm
-1の領域のうち上記Laから上記関係線までの上記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズと定義することができ、以下「A」とする。また、カルボニル(C=O)peak intensityは、波数1650cm
-1のスペクトル強度と波数1800cm
-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lbを引き、波数1650cm
-1~1800cm
-1の領域のうち上記Lbから上記関係線までの上記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズと定義することができ、以下「B」とする。
【0032】
図7を参照すると、アルコール(-OH)peak intensityは、波数3100cm
-1のスペクトル強度と波数3700cm
-1のスペクトル強度とをつなぐ基準直線Lcを引き、波数3100cm
-1~3700cm
-1の領域のうち上記Lcから上記関係線までの上記スペクトル強度軸と平行な方向への最大サイズと定義することができ、以下「C」とする。
【0033】
図6及び
図7において、X軸は波数(Wavenumber)であり、単位はcm
-1であり、Y軸はスペクトル強度(Intensity)であり、単位はa.u.(Arbitrary unit)である。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、外部電極131、132は本体110上に配置され、導電性金属及び樹脂を含む導電性樹脂層131b、132bを含み、FT-IR分析により得られた上記導電性樹脂層の波数に対するスペクトル強度の関係線を示す2軸グラフにおいて、上記A及びCが0.337≦2×C/A≦0.367を満たすことによって、外部電極の浮き上がり及び破裂不良を抑制しながらも、優れた固着強度を確保することができる。
【0035】
2×C/Aが0.367を超える場合には、外部電極の浮き上がり及び破裂不良が発生するおそれがある。これに対し、2×C/Aが0.337未満である場合には、外部電極の固着強度が低下するおそれがあり、2×C/Aは0.337以上であることが好ましく、より優れた固着強度を確保するためには、2×C/Aが0.344以上であることがより好ましいと言える。
【0036】
一実施形態において、A及びBはB/A≦0.14を満たすことができる。より好ましくは、A及びBは0.048≦B/A≦0.14を満たすことができ、より好ましくは0.07≦B/A≦0.14を満たすことができる。
【0037】
カルボニルpeak intensity(B)の場合、導電性樹脂層を硬化する前には観察されないが、導電性樹脂層を硬化した後に外部電極の浮き上がり及び破裂不良が発生した場合、導電性樹脂層をFT-IR分析すると、カルボニルpeak intensity(B)が観察される。カルボニル(C=O)peakは導電性樹脂層内の樹脂が硬化過程で酸化しながら発生でき、樹脂の酸化はCO2が発生する主な原因となる。
【0038】
図8は、外部電極の浮き上がり不良が発生したチップ(サンプル1及び2)と外部電極の浮き上がり不良が発生していないチップ(サンプル3)に対するTGA分析結果であり、
図9は、外部電極の浮き上がり不良が発生したチップ(サンプル1及び2)と外部電極の浮き上がり不良が発生していないチップ(サンプル3)に対するEGA-MS分析結果である。
図8を参照すると、外部電極の浮き上がり不良が発生したチップ(サンプル1及び2)の場合、300℃以前に熱分解が始まり、浮き上がり不良が発生していないチップ(サンプル3)より熱分解の開始温度が早いことが確認でき、
図9を参照すると、サンプル1及び2が300℃付近でCO
2が多量に発生することが確認できる。したがって、カルボニルpeak intensity(B)が小さいほど樹脂の酸化が抑制され、CO
2の発生量を減少させることにより、外部電極の浮き上がり及び破裂不良を抑制することができる。
【0039】
B/Aが0.14を超える場合には、樹脂の酸化が多量に発生し、外部電極の浮き上がり及び破裂不良が発生することがあるため、B/Aは0.14以下であることがより好ましいと言える。これに対し、B/Aが0.048未満である場合には、外部電極の固着強度が低下するおそれがあり、B/Aは0.048以上であることが好ましく、より優れた固着強度を確保するためには、B/Aが0.07以上であることがより好ましいと言える。
【0040】
一実施形態において、導電性樹脂層131b、132bは、ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂を含むことができる。
【0041】
ビスフェノールA(Bisphenol A)は、一般に、BPAと呼ばれる分子式C
15H
16O
2、化学構造式(CH
3)
2C(C
6H
4OH)
2であるジフェニルメタン系列の化合物を意味する。ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂とは、ビスフェノールA(Bisphenol A)の重合反応によって生成される高分子化合物を意味する。ビスフェノールA系の代表的な樹脂としてはDGEBA(Bisphenol A diglycidyl ether)がある。DGEBA構造を示す
図10を参照すると、DGEBAは高分子の末端にエポキシ基(C-O-C)を保有しており、接着性及び反応性を高めるために高分子の骨格(back bone)構造内にアルコール基(-OH)を保有している。
【0042】
ビフェニル(Biphenyl)は、ジフェニル(diphenyl)とも呼ばれ、化学式C
12H
10、フェニル基-C
6H
5の2つが互いに結合した構造を有する。ビフェニル(Biphenyl)系樹脂とは、ビフェニル(Biphenyl)の重合反応によって生成される高分子化合物を意味する。ビフェニル(Biphenyl)系樹脂としては、4,4'-diglycidyl biphenyl novolac epoxyを例として挙げることができる。ビフェニル系樹脂構造を示す
図12を参照すると、骨格(back bone)構造内にアルコールが存在せず、高分子の末端にエポキシ基(C-O-C)を保有している。このようなビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂を混合することにより、高分子樹脂内のアルコール基の数を調節し、樹脂の酸化を抑制しながらも接着性及び反応性を確保して、固着強度を確保することができる。
【0043】
図13は、導電性樹脂層に含まれた樹脂がビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂である場合(実験例1)、導電性樹脂層に含まれた樹脂がビスフェノールA系樹脂50wt%及びビフェニル系樹脂50wt%を含む場合(実験例2)、及び導電性樹脂層に含まれた樹脂がビフェニル(Biphenyl)系樹脂である場合(実験例3)、FT-IR分析時に得られた各関係線を比較するために、一つのグラフに示したものである。なお、下記表1は、各関係線を分析してA(Aromatic ring peak intensity)、B(カルボニルpeak intensity)、C(アルコールpeak intensity)、2×C/A及びB/Aを測定して記載したものである。
【0044】
【0045】
図13及び表1を参照すると、樹脂の種類及び混合の有無に応じてA、B及びCの値が異なることが確認でき、ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂を混合した場合に、A及びCが0.337≦2×C/A≦0.367を満たし、A及びBはB/A≦0.14を満たすことが確認できる。
【0046】
したがって、導電性樹脂層131b、132bがビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂を含む場合、外部電極の浮き上がり及び破裂不良を抑制しながらも、優れた固着強度を確保することができる。
【0047】
このとき、導電性樹脂層131b、132bに含まれたビスフェノールA(BisphenolA)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂の総含有量に対するビフェニル(Biphenyl)系樹脂の含有量比率は、10wt%以上50wt%以下であり得る。
【0048】
ビフェニル(Biphenyl)系樹脂の含有量比率が10wt%未満である場合には、樹脂の酸化を抑制する効果が不十分である可能性があり、外部電極の浮き上がり及び破裂不良が発生することがある。
【0049】
これに対し、ビフェニル(Biphenyl)系樹脂の含有量比率が50wt%を超える場合には、導電性樹脂層内のアルコール基(-OH)の数が少なく、接着力不足により外部電極の固着強度が低下するおそれがある。したがって、ビフェニル(Biphenyl)系樹脂の含有量比率は50wt%以下であることが好ましく、より優れた固着強度を確保するためには、ビフェニル(Biphenyl)系樹脂の含有量比率が40wt%以下であることがより好ましいと言える。
【0050】
一実施形態において、導電性樹脂層131b、132bは、GC-MS分析時に、Bisphenol A peak(ビスフェノール A ピーク)が検出され、Methyl-biphenyl peak(メチル-ビフェニル ピーク)及びDimethyl-biphenyl peak(ジメチル-ビフェニル ピーク)のうち一つ以上が検出されることができる。GC-MSは、Gas Chromatograph-Mass Spectrometer(ガスクロマトグラフ質量分析計)を意味する。
【0051】
図14を参照すると、ビスフェノールA系樹脂の場合、Retention time(滞留時間) 22.5~25.0minの間にBisphenol A peak(ビスフェノール A ピーク)が検出され、ビフェニル系樹脂は、Retention time(滞留時間) 15~18minの間にMethyl-biphenyl peak(メチル-ビフェニル ピーク)及びDimethyl-biphenyl peak(ジメチル-ビフェニル ピーク)が検出されることが分かる。ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂が混合された場合には、Bisphenol A peak(ビスフェノール A ピーク)、Methyl-biphenil peak(メチル-ビフェニル ピーク)及びDimethyl-biphenil peak(ジメチル-ビフェニル ピーク)がいずれも観察されることが確認できる。
図14において、X軸はRetention time(滞留時間)(min)であり、Y軸はAbsolute unit(絶対単位)である。
【0052】
但し、Bisphenol A peak(ビスフェノール A ピーク)及びMethyl-biphenyl peak(メチル-ビフェニル ピーク)及びDimethyl-biphenyl peak(ジメチル-ビフェニル ピーク)の他にも、ビスフェノールA系樹脂にのみ現れる固有のピーク、及びビフェニル系樹脂にのみ現れる固有のピークが同時に検出される場合、導電性樹脂層131b、132bにビスフェノールA系樹脂及びビフェニル系樹脂の両方が含まれていることを立証することができる。
【0053】
導電性樹脂層131b、132bに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属としては、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0054】
導電性樹脂層131b、132bに含まれる導電性金属は、球状粒子及びフレーク状粒子のうち1以上を含むことができる。すなわち、導電性金属はフレーク状粒子のみからなってもよく、球状粒子のみからなってもよく、フレーク状粒子と球状粒子とが混合した形態であってもよい。ここで、球状粒子は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下である形態を含むことができる。フレーク状粒子とは、平たい且つ細長い形態を有する粒子を意味し、特に制限されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。上記球状粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、セラミック電子部品の第3方向の中央部で切断した第1方向及び第2方向の断面(L-T断面)を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)でスキャンして得られたイメージから測定することができる。
【0055】
また、導電性樹脂層131b、132bに含まれた導電性金属は、複数の金属粒子及び金属間化合物を含むことができる。すなわち、導電性樹脂層131b、132bは、複数の金属粒子、金属間化合物及び樹脂を含むことができる。上記金属間化合物を含むことにより、電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。上記金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を取り囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0056】
このとき、上記金属間化合物は、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、上記金属間化合物が樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融し、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を取り囲むようになる。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0057】
例えば、213~220℃の融点を有するSnを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融し、溶融したSnがAg、Ni又はCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により湿らせ、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応してAg3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5、Cu3Snなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に関与しなかったAg、Ni又はCuは金属粒子の形態で残るようになる。
【0058】
したがって、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち一つ以上を含み、上記金属間化合物は、Ag3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5及びCu3Snのうち一つ以上を含むことができる。
【0059】
一実施形態において、外部電極131、132は、導電性樹脂層131b、132bだけでなく、本体110上に配置される電極層131a、132aを含むことができ、上記導電性樹脂層131b、132bは上記電極層上に配置されることができる。
【0060】
外部電極131、132の浮き上がり不良は、電極層131a、132aと導電性樹脂層131b、132bとの間の界面で主に発生し得るため、電極層131a、132a上に導電性樹脂層131b、132bが配置される構造を有する場合、本発明の浮き上がり不良を抑制する効果がより顕著になり得る。
【0061】
電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であってもよい。電極層131a、132aが導電性金属及びガラスを含む場合、本体と外部電極間の結合力を向上させることができ、本発明の浮き上がり不良を抑制する効果がさらに顕著になり得る。
【0062】
電極層131a、132aに使用される導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極と電気的に連結できる材質であれば特に制限されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成できる。
【0063】
但し、電極層131a、132aを、ガラスを含むものに限定しようとする意図ではなく、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよく、めっきで形成されたものであってもよい。
【0064】
一実施形態において、導電性樹脂層131b、132b上にめっき層131c、132cが配置されることができる。
【0065】
めっき層131c、132cは実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131c、132cの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0066】
めっき層131c、132cに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131c、132cはNiめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a、131b、132b上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0067】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0068】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0069】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2、上記第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4、第1面1及び第2面1、2と連結され、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0070】
一実施形態において、本体110は、第1面と第3面を連結する第1-3コーナー、上記第1面と第4面を連結する第1-4コーナー、上記第2面と第3面を連結する第2-3コーナー、上記第2面と第4面を連結する第2-4コーナーを含み、上記第1-3コーナー及び第2-3コーナーは、上記第3面に近づくほど、上記本体の第1方向の中央に収縮した形態を有し、上記第1-4コーナー及び第2-4コーナーは、上記第4面に近づくほど、上記本体の第1方向の中央に収縮した形態を有することができる。
【0071】
誘電体層111上に内部電極121、122が配置されていないマージン領域が重なることによって、内部電極121、122の厚さによる段差が発生し、第1面と第3~第5面を連結するコーナー及び/又は第2面と第3~第5面を連結するコーナーは、第1面又は第2面を基準としてみたとき、本体110の第1方向の中央側に収縮した形態を有することができる。あるいは、本体の焼結過程における収縮挙動により、第1面1と第3~第6面3、4、5、6を連結するコーナー及び/又は第2面2と第3~第6面3、4、5、6を連結するコーナーは、第1面又は第2面を基準としてみたとき、本体110の第1方向の中央側に収縮した形態を有することができる。あるいは、チッピング不良などを防止するために本体110の各面を連結する角を別途の工程を行ってラウンド処理することにより、第1面と第3~第6面を連結するコーナー及び/又は第2面と第3~第6面を連結するコーナーは、ラウンド形状を有することができる。
【0072】
上記コーナーは、第1面と第3面を連結する第1-3コーナー、第1面と第4面を連結する第1-4コーナー、第2面と第3面を連結する第2-3コーナー、第2面と第4面を連結する第2-4コーナーを含むことができる。また、コーナーは、第1面と第5面を連結する第1-5コーナー、第1面と第6面を連結する第1-6コーナー、第2面と第5面を連結する第2-5コーナー、第2面と第6面を連結する第2-6コーナーを含むことができる。本体110の第1~第6面は、概して平坦な面であることができ、平坦でない領域をコーナーと見なすことができる。以下、各面の延長線とは、各面の平坦な部分を基準に延びた線を意味することができる。
【0073】
このとき、外部電極131、132のうち、本体110のコーナー上に配置された領域をコーナー部、本体110の第3面及び第4面上に配置された領域を接続部、本体の第1面及び第2面上に配置された領域をバンド部とすることができる。
【0074】
一方、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成する場合には、第1面と第5面及び第6面を連結する部分、並びに、第2面と第5面及び第6面を連結する部分が収縮した形態を有していなくてもよい。
【0075】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0076】
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り、特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)等が挙げられる。
【0077】
また、上記誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0078】
本体110は本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0079】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を繰り返し積層して形成することができる。
【0080】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び上記容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0081】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0082】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0083】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0084】
また、上記容量形成部Acの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0085】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1マージン部114と、第6面6に配置された第2マージン部115とを含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記本体110の幅方向の両端面(end surfaces)に配置されることができる。
【0086】
マージン部114、115は、
図3に示すように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面(cross-section)において、第1内部電極121及び第2内部電極122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0087】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0088】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであってもよい。
【0089】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0090】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に配置されることができる。内部電極121、122は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0091】
図2を参照すると、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体の第3面3には第1下地電極層131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体の第4面4には第2下地電極層132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0092】
すなわち、第1内部電極121は第2下地電極層131とは連結されず、第1下地電極層131と連結され、第2内部電極122は第1下地電極層131とは連結されず、第2下地電極層131と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4において一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3において一定距離離隔して形成されることができる。
【0093】
このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0094】
本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0095】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0096】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はない。
【0098】
但し、一実施形態において、誘電体層111の平均厚さtdと上記内部電極121、122の平均厚さteはtd>2×teを満たすことができる。すなわち、一実施形態によれば、上記誘電体層111の平均厚さtdは、上記内部電極121、122の平均厚さteよりも2倍以上大きいことを特徴とすることができる。
【0099】
一般に、高電圧電装用電子部品は、高電圧環境下で絶縁破壊電圧の低下による信頼性の問題が主なイシューである。一実施形態に係る積層型電子部品は、高電圧環境下で絶縁破壊電圧の低下を防ぐために、上記誘電体層111の平均厚さtdを上記内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりも大きくして、内部電極間の距離である誘電体層の厚さを増加させることにより、絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。上記誘電体層111の平均厚さtdが上記内部電極121、122の平均厚さteの2倍以下である場合には、内部電極間の距離である誘電体層の厚さが薄くなり、絶縁破壊電圧が低下する可能性がある。このとき、内部電極の平均厚さteは1μm未満であってもよく、上記誘電体層の平均厚さtdは2.8μm未満であってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0100】
誘電体層111の平均厚さtd及び内部電極の平均厚さteは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの誘電体層の内部電極を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層及び内部電極に拡張して平均値を測定すると、誘電体層の平均厚さ及び内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0101】
(実施例)
下記表2は、導電性樹脂層131b、132bに含まれたビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂の混合比率による2×C/A及びB/A、固着強度不良の個数及び浮き上がり不良の個数を測定して記載したものである。
【0102】
まず、焼成電極が形成されたサンプルチップを用意した後、下記表2の樹脂の混合比率を満たすペーストを塗布し、乾燥を行う。その後、200℃以上300℃以下で硬化熱処理を行って導電性樹脂層を形成したサンプルチップを設けた。
【0103】
2×C/A及びB/Aは、各サンプルチップの導電性樹脂層をFT-IR分析して得られた波数に対するスペクトル強度の関係線から求め、Spectral range(スペクトル範囲)は4000~650cm-1と指定した。
【0104】
固着強度不良の個数は、各試験番号当たり20個のサンプルを基板に実装し、プレスツールで18Nのせん断応力(shear stress)を60秒間加えてサンプルが基板から分離されたり、サンプルにせん断が発生した場合を不良と判断し、不良のサンプルの個数を記載した。
【0105】
浮き上がり不良の個数は、各試験番号当たり20個のサンプルを基板に実装し、当該基板を260℃以上のリフローオーブンに投入し、これを3回以上繰り返した。その後、サンプルが実装された基板をX-ray(X線)により分析し、サンプルの電極層と導電性樹脂層の界面が広がった場合、浮き上がり不良が発生したと判断し、不良のサンプルの個数を記載した。
【0106】
【0107】
試験番号2~4の場合、2×C/Aが0.337以上0.367以下を満たし、固着強度に優れ、浮き上がり不良も発生していないことが確認できる。
【0108】
試験番号1は2×C/Aが0.367超過であって、浮き上がり不良が多数発生し、試験番号5は2×C/Aが0.337未満であって、浮き上がり不良は発生していないが、固着強度の不良が多数発生していた。
【0109】
したがって、浮き上がり不良を抑制しながらも、優れた固着強度を確保するためには、樹脂層をFT-IR分析して得られた波数に対してスペクトル強度の関係線における2×C/Aが0.337以上0.367以下を満たさなければならないことが確認できる。
【0110】
一方、試験番号4の場合、固着強度の不良が10%以下と良好であったが、より優れた固着強度を確保するためには、試験番号2及び3のように2×C/Aが0.344以上0.367以下を満たすことがより好ましいことが分かる。
【0111】
なお、ビスフェノールA(Bisphenol A)系樹脂及びビフェニル(Biphenyl)系樹脂が混合された試験番号2~4は、2×C/Aが0.337以上0.367以下を満たしている。
【0112】
また、ビフェニル系樹脂の含有量比率が増加するにつれて2×C/A減少し、これは、浮き上がり不良は抑制されるものの、固着強度は低下する傾向を確認することができる。
【0113】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0114】
また、本発明で使用される「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明した事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明と理解することができる。
【0115】
本発明で使用される用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0116】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:マージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a:電極層
131b、132b:導電性樹脂層
131c、132c:めっき層