(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099515
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】補強構造を有する音響共振器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/17 20060101AFI20230706BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20230706BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20230706BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H3/02 B
B81B3/00
B81C1/00
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210465
(22)【出願日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】202111659817.6
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522504282
【氏名又は名称】杭州星▲闔▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 林萍
(72)【発明者】
【氏名】盛 ▲荊▼浩
(72)【発明者】
【氏名】江 舟
【テーマコード(参考)】
3C081
5J108
【Fターム(参考)】
3C081AA07
3C081AA18
3C081BA01
3C081BA22
3C081BA45
3C081BA46
3C081BA55
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3C081CA20
3C081DA03
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3C081DA45
3C081EA22
5J108AA07
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5J108CC11
5J108EE03
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5J108KK07
5J108MM11
(57)【要約】
【課題】本出願は、補強構造を有する音響共振器及びその製造方法を開示している。
【解決手段】補強構造を有する音響共振器を提出し、基板、及び基板に形成されたキャビティを含み、基板には圧電層が設けられ、圧電層の周辺領域には圧電層を貫通した開口が設けられ、補強構造は補強層を含み、補強層の一部は開口の縁に貼合されるように形成され、開口の縁の付近の共振機能層を補強し、キャビティが開放された後、開口の縁の付近の圧電層及び下部電極の応力変化を低減させることで、圧電層及び下部電極は応力の問題による崩壊が容易ではなく、さらに、機器性能を保証する。また、本出願は補強構造を有する音波機器の製造方法を提出し、当該製造方法において、上部電極と補強層とを同時に形成することで、製造された補強層は、圧電層及び下部電極が応力の問題による崩壊が容易ではないという効果だけではなく、補強層の製造過程が簡単且つ効率的であるという効果を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強構造を有する音響共振器であって、
少なくとも、
基板、及び、
前記基板に形成された共振機能層を含み、
前記共振機能層は、
基板との間にキャビティを有する下部電極と、
下部電極の上方に位置する上部電極と、
前記下部電極と前記上部電極との間に位置する圧電層であって、周辺領域には前記圧電層を貫通した開口が設けられ、前記開口の一部が前記キャビティに連通する圧電層と、を含み、
前記補強構造は、一部が前記開口の縁に貼合されるように形成され、前記開口に露出した前記下部電極に接触し、前記開口の縁の付近の共振機能層を補強する補強層を含むことを特徴とする補強構造を有する音響共振器。
【請求項2】
前記下部電極の縁は、前記開口から露出していることを特徴とする請求項1に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項3】
前記補強層は、前記開口の縁から前記圧電層の上面まで延在することを特徴とする請求項1に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項4】
前記補強層の延在部分は、前記開口の両側の圧電層に架け渡されていることを特徴とする請求項3に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項5】
前記補強層の延在部分は、前記開口の縁から前記共振器の中央に向かって、前記圧電層まで延在することを特徴とする請求項3に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項6】
前記補強層は、前記下部電極の、前記開口から露出した部分を覆うことを特徴とする請求項2に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項7】
前記補強層は、金属材料又は非金属材料から製造されることを特徴とする請求項1に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項8】
前記補強層は、タングステン、イリジウム、モリブデン、チタン、クロム、銅、マグネシウム、銀、アルミ、金又はルテニウムのうちの1種又は多種から製造されることを特徴とする請求項7に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項9】
前記補強層と前記上部電極とは互いに離間し、その間には電気連通が生じていないことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項10】
前記補強層と前記上部電極の縁との間に存在する隙間は少なくとも2ミクロンより大きいことを特徴とする請求項9に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項11】
前記補強層の、前記基板の表面に平行する方向での断面は、多角形形状を有することを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項12】
前記キャビティの少なくとも一側には、それと連通している放出通路が設けられ、前記開口の、放出通路に連通する部分には放出孔が形成され、前記補強層は放出孔の周囲を取り囲むことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項13】
前記補強層は、積層された2層構造を含むことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項14】
前記2層構造のうちの少なくとも何れか1層は高硬度材料によって製造されることを特徴とする請求項13に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項15】
前記補強層及び前記上部電極には何れも不活性化層が被覆され、前記不活性化層は前記補強層と前記上部電極との間の隙間を被覆することを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項16】
基板表面に垂直する方向から見れば、前記放出通路の一部又は全ての角部は鈍角又は弧状であることを特徴とする請求項12の何れか一項に記載の補強構造を有する音響共振器。
【請求項17】
補強構造を有する音波機器の製造方法であって、
基板を提供するステップと、
キャビティを形成するための犠牲層を基板に製造するステップと、
前記犠牲層が形成された基板に下部電極及び圧電層を順に形成するステップと、
前記圧電層に開口を形成して、下部電極の一部を露出させ、前記開口を前記犠牲層に連通させるステップと、
上部電極及び補強層を前記圧電層に製造するステップであって、前記補強層の一部が前記開口の縁に貼合されるように形成され、前記開口の縁の付近の共振機能層を補強するステップと、
前記犠牲層を放出させることで、前記キャビティを形成するステップと、を含む製造方法。
【請求項18】
前記下部電極の縁の一部は前記開口から露出し、前記補強層は前記下部電極の縁を被覆することを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記補強層の一部はさらに前記圧電層の一部を被覆することを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
金属材料から前記補強層及び前記上部電極を同時に形成して、前記補強層と前記上部電極とを互いに離間させることを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バルク音響共振器の技術分野に関して、特に補強構造を有する音響共振器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜バルク音響共振器(Film Bulk Acoustic Resonator)の構造本体は、電極―圧電薄膜―電極からなる「サンドイッチ」構造であり、即ち、2層の金属電極層の間には1層の圧電材料が挟まれる。2つの電極の間に電気信号を入力することで、圧電薄膜は逆圧電効果によって入力された電気信号を機械的共振波に変換して、圧電効果によって機械的共振波を電気信号に変換して出力し、大部分の共振器はキャビティ構造を使用して音波を圧電発振スタック内に制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術において、圧電層及び底電極のうちの何れか1層又は多層に対してエッチングを行って、放出孔を形成することで、犠牲材料を放出させる必要がある。ところが、エッチングは圧電層及び下部電極を損傷し、犠牲材料を放出させた場合、損傷された圧電層及び下部電極は応力の問題で崩壊しやすく、共振器の性能に影響する。
【0004】
機械的強度が弱い時、上記キャビティの縁の上部の圧電発振スタックは崩壊変形しやすいという問題に対して、本出願は補強構造を有する音響共振器及び製造方法を提出する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様によれば、本出願は補強構造を有する音響共振器を提出し、少なくとも、
基板、及び前記基板に形成された共振機能層を含み、前記共振機能層は、
基板との間にはキャビティを有する下部電極と、
下部電極の上方に位置する上部電極と、
前記下部電極と前記上部電極との間に位置する圧電層であって、周辺領域には前記圧電層を貫通した開口が設けられ、前記開口の一部が前記キャビティに連通する圧電層と、を含み、
前記補強構造は、一部が前記開口の縁に貼合されるように形成され、前記開口の縁の付近の共振機能層を補強する補強層を含む。
【0006】
上記技術案によれば、補強構造は補強層を含み、前記補強層の一部が前記開口の縁に貼合されるように形成され、補強層は開口の縁の付近の圧電層及び下部電極に対して補強作用を発揮して、キャビティが開放された後、開口の縁の付近の圧電層及び下部電極の応力変化を低減させることで、圧電層及び下部電極は応力の問題による崩壊が容易ではなく、音響共振器の一致性及び良品率を高めて、機器の設計性能を保証する。
【0007】
好ましくは、前記下部電極の縁は前記開口から露出し、前記補強層は、前記開口に露出した前記下部電極に接触している。
【0008】
上記技術案によれば、下部電極の縁は前記開口から露出し、前記補強層は、前記開口に露出した前記下部電極に接触しているため、補強層及び下部電極は一体として形成され、下部電極に対して支持作用を発揮する。
【0009】
好ましくは、前記補強層は前記開口の縁から前記圧電層の上面まで延在する。
【0010】
上記技術案によれば、補強層はさらに圧電層の上面まで延在することで、圧電層に掛け渡された構造を形成して、補強層の、開口の付近の機能層に対する補強作用を保証する。
【0011】
好ましくは、前記補強層の延在部分は前記開口の両側の圧電層に架け渡されている。
【0012】
上記技術案によれば、前記補強層の延在部分は前記開口の両側の圧電層に架け渡されているため、補強層は開口の両側の圧電層に支持され、開口の縁の付近の共振機能層に対して支持作用をよりよく発揮する。
【0013】
好ましくは、前記補強層の延在部分は、前記開口の縁から前記共振器の中央に向かって、前記圧電層まで延在する。
【0014】
上記技術案によれば、補強層の延在部分は、前記開口の縁から前記共振器の中央に向かって、前記圧電層まで延在するため、共振器の中央領域の圧電層を補強層の支持領域とし、さらに、補強層は開口の縁の付近の共振機能層に対して支持作用を発揮して、共振機能層は応力の問題による崩壊が容易ではない。
【0015】
好ましくは、前記補強層は前記下部電極の、前記開口から露出した部分を覆う。
【0016】
上記技術案によれば、補強層は前記下部電極の、前記開口から露出した部分を覆うため、補強層は露出した下部電極の露出部分を補強して、下部電極は応力の問題による崩壊が容易ではない。
【0017】
好ましくは、前記補強層は金属材料又は非金属材料から製造される。
【0018】
上記技術案によれば、補強層は主に補強作用を発揮するため、金属材料から製造された補強層は、下部電極によりよく接続され、ある程度で一体構造を形成する。
【0019】
好ましくは、前記補強層はタングステン、イリジウム、モリブデン、チタン、クロム、銅、マグネシウム、銀、アルミ、金又はルテニウムのうちの1種又は多種から製造される。
【0020】
上記技術案によれば、上記の単一金属又は合金から製造された補強層の硬度が高くて、補強層は優れた補強作用を有し、上記材料は電極の好適な材料でもあり、補強層の材料と電極材料とは同様であると、同一の工程ステップで、上部電極と同時に加工されて完成でき、コストを節約する。
【0021】
好ましくは、前記補強層と前記上部電極とは互いに離間し、その間には電気連通が生じていない。
【0022】
上記技術案によれば、補強層と下部電極とが接触して、補強層と上部電極との間には電気連通が生じると、上部電極と下部電極とを直接的に連通させ、さらに、音響共振器の無効を招致する。
【0023】
好ましくは、前記補強層と前記上部電極の縁との間に存在する隙間は少なくとも2ミクロンより大きい。
【0024】
上記技術案によれば、圧電層と上部電極との隙間は2ミクロン以上であると、上部電極と補強層との間を完全に隔離させ、共振器の性能に影響しない。
【0025】
好ましくは、前記補強層の、前記基板の表面に平行する方向での断面は、多角形形状を有する。
【0026】
上記技術案によれば、補強層の、前記基板の表面に平行する方向での断面は、多角形形状を有するため、開口の縁の付近の共振機能層の全体的な機械的構造の強度をさらに強化させる。
【0027】
好ましくは、前記キャビティの少なくとも一側には、それと連通している放出通路が設けられ、前記開口の、放出通路に連通する部分には放出孔が形成され、前記補強層は放出孔の周囲を取り囲む。
【0028】
上記技術案によれば、補強層は前記放出孔の孔口の周囲を取り囲むため、放出孔及び放出通路の周囲の全体的な機械的構造の強度をさらに強化させる。
【0029】
好ましくは、前記補強層は積層された2層構造を含む。
【0030】
上記技術案によれば、補強層を積層された2層構造に配置することで、補強層の強固性を強化させ、さらに、共振器の安定性を強化させる。
【0031】
好ましくは、前記2層構造のうちの少なくとも何れか1層は高硬度材料によって製造される。
【0032】
上記技術案によれば、2層構造のうちの1層又は2層は高硬度材料によって製造されるため、補強層の強固及び支持効果をさらに強化させる。
【0033】
好ましくは、前記補強層及び前記上部電極には何れも不活性化層が被覆され、前記不活性化層は前記補強層と前記上部電極との間の隙間を被覆する。
【0034】
上記技術案によれば、補強層に不活性化層を追加することで、前記補強層及び上部電極を保護する。
【0035】
好ましくは、基板表面に垂直する方向から見れば、前記放出通路の一部又は全ての角部は鈍角又は弧状である。
【0036】
上記技術案によれば、放出通路の一部又は全ての角部を鈍角又は弧状にすることで、当該部分から生じた余分な応力を減少させ、当該部分の応力変化の、圧電層の応力変化に対する影響を低減させる。
【0037】
第2態様によれば、本出願は、補強構造を有する音波機器の製造方法をさらに提出し、
基板を提供するステップと、
キャビティを形成するための犠牲層を基板に製造するステップと、
前記犠牲層が形成された基板に下部電極及び圧電層を順に形成するステップと、
前記圧電層に開口を形成して、下部電極の一部を露出させ、前記開口を前記犠牲層に連通させるステップと、
上部電極及び補強層を前記圧電層に製造するステップであって、前記補強層の一部が前記開口の縁に貼合されるように形成され、前記開口の縁の付近の共振機能層を補強するステップと、
前記犠牲層を放出させることで、前記キャビティを形成するステップと、を含む。
【0038】
上記技術案によれば、上部電極及び補強層を前記圧電層に製造し、補強層は前記下部電極の、前記開口から露出した部分を被覆することで、補強層は開口の縁の付近の圧電層及び下部電極に対して補強作用を発揮して、キャビティが開放された後、開口の縁の付近の圧電層及び下部電極の応力変化を低減させ、圧電層及び下部電極は応力の問題による崩壊が容易ではなく、音響共振器の一致性及び良品率を高める。当該製造方法において、上部電極及び補強層は一体として形成され、製造された補強層は、圧電層及び下部電極が応力の問題による崩壊が容易ではないという効果だけではなく、補強層の製造過程が簡単且つ効率的であるという効果を有する。
【0039】
好ましくは、前記下部電極の縁の一部は前記開口から露出し、前記補強層は前記下部電極の縁を被覆する。
【0040】
上記技術案によれば、補強層及び下部電極は一体構造として形成され、下部電極に対して支持作用を発揮する。
【0041】
好ましくは、前記補強層の一部はさらに前記圧電層の一部を被覆する。
【0042】
上記技術案によれば、補強層はさらに延在して、前記圧電層を被覆することで、圧電層に掛け渡された構造を形成して、補強層の、開口の付近の機能層に対する補強作用を保証する。
【0043】
好ましくは、金属材料から前記補強層及び前記上部電極を同時に形成して、前記補強層と前記上部電極とを互いに離間させる。
【0044】
上記技術案によれば、補強層と前記上部電極とは同時に形成されるため、音響共振器は上部電極を製造するとともに、補強層を製造でき、これによって、補強層の製造過程が簡単且つ効率的になる。
【0045】
本出願は補強構造を有する音響共振器を提出し、補強構造は補強層を含み、前記補強層の一部が前記開口の縁に貼合されるように形成され、補強層は開口の縁の付近の圧電層及び下部電極に対して補強作用を発揮して、キャビティが開放した後、開口の縁の付近の圧電層及び下部電極の応力変化を低減させ、圧電層及び下部電極は応力の問題による崩壊が容易ではなく、音響共振器の一致性及び良品率を高めて、機器の設計性能を保証する。また、本出願は補強構造を有する音波機器の製造方法をさらに提出し、当該製造方法において、上部電極と補強層とを同時に形成することで、製造された補強層は、圧電層及び下部電極が応力の問題による崩壊が容易ではないという効果だけではなく、補強層の製造過程が簡単且つ効率的であるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図面を結合して実施例に対するさらなる理解を提供し、図面は本明細書に結合されて本明細書の一部を構成する。図面は実施例を示し、明細書とともに、本発明の原理を解釈する。他の実施例及び実施例の多くの予期の利点は容易に想到し得て、以下の詳しい記載を援用することで、これらはより分かりやすくなる。図面の素子は必ずしも互いに比率に従うわけではない。同じ図面符号は、対応する類似部材を示す。
【
図1】本出願の実施例が開示する補強構造を有する音響共振器の平面図である。
【
図2】音響共振器の、
図1のA―A’方向に沿う断面模式図である。
【
図3】音響共振器の、
図1のB―B’方向に沿う断面模式図である。
【
図4】本出願の1つの好適な実施例において、補強層の、開口領域に位置する部位の構造拡大模式図である。
【
図5】本出願の1つの好適な実施例において、補強層の、開口領域に位置する部位の構造拡大模式図である。
【
図6】本出願の1つの好適な実施例において、音響共振器の平面図における補強層部分の拡大模式図である。
【
図7】本出願の1つの好適な実施例において、音響共振器の平面図における補強層部分の拡大模式図である。
【
図8】本出願の1つの好適な実施例において、音響共振器の補強層部分の平面図である。
【
図9】本出願の1つの好適な実施例において、音響共振器の補強層部分の平面図である。
【
図10】本出願の1つの実施例において、補強構造を有する音響共振器の補強層の構造模式図である。
【
図11】本出願の1つの実施例において、補強構造を有する音響共振器の補強層の構造模式図である。
【
図12】本出願の1つの実施例において、補強構造を有する音響共振器の放出通路の構造模式図である。
【
図13】本出願の1つの実施例において、補強構造を有する音響共振器の放出通路の構造模式図である。
【
図14】1つの従来技術における音響共振器の構造模式図である。
【
図15】1つの従来技術における音響共振器の構造模式図である。
【
図16】
図15における音響共振器に対して改良の構造模式図である。
【
図17a】本出願による補強構造を有する音波機器の製造方法のフロー模式図である。
【
図17b】本出願による補強構造を有する音波機器の製造方法のフロー模式図である。
【
図17c】本出願による補強構造を有する音波機器の製造方法のフロー模式図である。
【
図17d】本出願による補強構造を有する音波機器の製造方法のフロー模式図である。
【
図17e】本出願による補強構造を有する音波機器の製造方法のフロー模式図である。
【
図17f】本出願による補強構造を有する音波機器の製造方法のフロー模式図である。
【
図17g】本出願による補強構造を有する音波機器の製造方法のフロー模式図である。
【
図18】従来技術の音響共振器の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の目的、技術案及び利点をより明らかにするために、以下、図面を結合して本発明をさらに詳しく記載し、明らかに、記載の実施例は全ての実施例ではなく、本発明の一部の実施例のみである。本発明の実施例に基づいて、当業者が進歩性に値する労働をしないことを前提として取得した他の全ての実施例は、何れも本発明の保護範囲に属する。
【0048】
従来技術において、
図18の共振器構造において、下部電極103は上に突出してキャビティ110を形成し、圧電層104に対してエッチングを行って、放出孔108を形成し、放出通路109はキャビティ110の内部から外へ延在し、点線ボックスが示す領域Cにおいて、放出通路109の上部の電極は完全に吊り下げられ、支持されていない。機械的強度が弱い時、放出通路109の上部の発振スタックは崩壊変形しやすく、領域Cは、隣接する有效領域、即ち、領域Dの性能に影響するため、有效領域の圧電薄膜の性能の一致性が破壊される。本出願は音響共振器及びその製造方法を改良する。
【0049】
図1は、本出願の実施例が開示する補強構造を有する音響共振器の平面図であり、
図2は音響共振器の、
図1のA―A’方向に沿う断面図であり、
図1及び
図2を結合して参照し、当該音響共振器は具体的に、基板101及び基板101に形成された共振機能層を含み、共振機能層は下部電極103、上部電極105及び圧電層104を含み、下部電極103と基板101との間にはキャビティ110を有し、上部電極105は下部電極103の上方に位置し、圧電層104は下部電極103と上部電極105との間に位置し、圧電層104の周辺領域には、圧電層104を貫通した開口111及び108が設けられ、開口の一部はキャビティ110に連通し、開口の一部は外部に連通して放出孔108を形成する。音響共振器には放出通路109がさらに設けられ、放出孔108は放出通路109によってキャビティ110に連通することで、キャビティ110における犠牲材料を放出させる。
【0050】
補強層106の一部は開口111の縁に貼合されるように形成され、開口111の縁の付近の共振機能層を補強し、具体的な例示において、補強層106は開口111の縁の付近の圧電層104及び下部電極103に対して補強作用を発揮し、キャビティ110が開放した後、開口111の縁の付近の圧電層104及び下部電極103の応力変化を減少させ、さらに、圧電層104及び下部電極103は応力の問題による崩壊が容易ではなく、音響共振器の一致性及び良品率を高める。
【0051】
下部電極103の縁は開口111から露出して、補強層106は、開口111に露出した下部電極103に接触し、さらに、補強層106は下部電極103の、開口111から露出した部分を覆う。下部電極103の縁は開口111から露出して、補強層106は、開口111に露出した下部電極103に接触するため、補強層106及び下部電極103は一体構造として形成され、下部電極103に対して支持作用を発揮し、さらに、補強層106は下部電極103の、開口111から露出した部分を覆うため、補強層106は下部電極103の、開口111に露出した部分を補強し、さらに、下部電極103は応力の問題による崩壊が容易ではない。
【0052】
また、
図2から分かるように、補強層106の一部(下部電極103とともに)は実質に、放出通路109の上面を形成する。これによって、下部電極103及び圧電層104の共振有效領域の縁の開口部分は、何れも補強層106によって補強され、崩壊のリスクが大幅に低減する。
【0053】
補強層106と上部電極105とは互いに離間し、その間には電気連通が生じていない。補強層106は下部電極103に接触し、補強層106と上部電極105との間に電気連通が生じると、上部電極105と下部電極103とを直接的に連通させ、音響共振器の無効を招致する。具体的な例示において、補強層106と上部電極105の縁との間に存在する隙間が2ミクロンより大きく、上部電極105と補強層106との間を完全に隔離させ、共振器の性能に影響しない。
【0054】
1つの具体的な実施例において、
図2に示すように、補強層106の延在部分は開口111の縁から、共振器の中央に向かって圧電層104まで延在し、補強層106は開口111の縁から圧電層104の上面まで延在することで、圧電層104に掛け渡された構造を形成し、さらに、補強層106の、開口の付近の機能層に対する補強作用を保証する。キャビティ110が開放されると、圧電層104の上面の応力変化が大きいため、補強層106を開口111の縁から圧電層104の上面まで延在させることで、圧電層104は応力の問題による崩壊が容易ではない。
【0055】
具体的な実施例において、
図3に示すように、補強層106の延在部分は開口111の両側の圧電層104に架け渡されることで、補強層106は開口111の両側の圧電層104に支持され、さらに、開口111の縁の付近の共振機能層に対して支持作用を発揮し、共振機能層は応力の問題による崩壊が容易ではない。
【0056】
ここで、好適な例示において、
図3のような延在部分が開口111の両側の圧電層104に架け渡される場合、共振器の中央へ延在する部位(即ち、
図1の灰色領域106の右側長辺部位、又は
図2の開口111の右側に対応する部分)で、補強層106は下部電極103のみに接触し、圧電層104に接触しないか(拡大
図4に示すように)、又は、共振器の中央へ延在する部位で、補強層106は下部電極103に接触して、圧電層104に貼合される(拡大
図5に示すように)。
【0057】
異なる実施例において、
図6及び
図7に示すように、補強層106は架け渡されず、ただ圧電層104及び下部電極103に接触してもよい。この場合、好ましくは、
図2に示すように、補強層106は内部に向かって、有效共振領域の圧電層104まで伸びている(延在する)。
【0058】
さらなる実施例において、補強層106は金属材料から製造され、補強層106は主に補強作用を発揮するため、金属材料から製造された補強層106はよい補強作用を有する。そして、重要なのは、金属補強層106及び下部電極103は一体として形成されてもよいため、両者の間の電界は等しくて、電位差がなく、圧電層104を「挟持」する部分には圧電効果が存在しない。これによって、補強層106の各種の設計又は構造は寄生効果及びスプリアス信号をもたらすことがないことを保証して、共振器機器の性能に影響しない。
【0059】
さらなる実施例において、補強層106はタングステン、イリジウム、モリブデン、チタン、クロム、銅、マグネシウム、銀、アルミ、金又はルテニウムのうちの1種又は多種から製造され、以上の単一金属又は合金から製造された補強層106の硬度が高いため、補強層106は優れた補強作用を有し、上記材料は電極の好適な材料でもあり、補強層106の材料と電極材料とは同様であると、同一工程ステップで、上部電極105と同時に加工して完成でき、コストを節約する。
【0060】
さらなる実施例において、
図8に示すように、補強層106の、基板101の表面に平行する方向での断面は多角形状を有し、補強層106の、基板101の表面に平行する方向での断面は多角形状を有するため、開口111の縁の付近の共振機能層の全体的な機械的構造の強度をさらに強化させる。
【0061】
さらなる実施例において、
図9に示すように、開口111の、放出通路109とキャビティ110とを連通させる部分は放出孔108を形成し、補強層106は放出孔108の周囲を取り囲んで、具体的に、環状の補強層106の中央部には透かし部が設けられ、透かし部は放出孔108の上方に位置し、補強層106は放出孔108の周辺部分全体を取り囲んで、環状を形成することで、補強層106は放出孔108の周囲全体に対する補強を実現する。
【0062】
さらなる実施例において、補強層106は積層された2層構造を含み、2層構造のうちの少なくとも何れか1層は高硬度材料によって製造される。電極と同様な材料から補強層106を製造する場合、高導電性を有するが、高硬度を有していない場合、高硬度材料によって製造された1層の構造を追加することで、補強層106の強固及び支持効果を強化させる。具体的な例示において、
図10に示すように、補強層106は互いに積層された2層構造である高硬度材料層106a、及び高導電性材料層106a’を含み、2層構造は異なる材料から製造され、高硬度材料層106aの好適な材料はタングステン、イリジウム、モリブデン、チタン、クロム、銅、マグネシウム、銀、アルミ、金又は以上の金属、或いはその合金などであり、高導電性材料層106a’ の好適な材料は銀、銅、金、アルミ、マグネシウム、モリブデン、イリジウム、タングステン、クロム、チタンなど、又はその合金などである。他の実施例において、補強層106は非金属材料から形成されてもよく、ここで、特に限定しない。
【0063】
さらなる実施例において、
図11に示すように、補強層106及び上部電極105には何れも不活性化層107が被覆され、不活性化層107は補強層106と上部電極105層との間の空隙を被覆する。不活性化層107は、共振器の表面を酸化から保護し、共振器の使用寿命を向上させる。補強層106に不活性化層107を追加することで、同じように、補強層106の強固及び支持の強化効果を発揮できる。この場合、他の材料を補強層106に形成する必要がなく、工程ステップを節約する。補強層106はよい強固及び支持の効果を達成した場合、不活性化層107を敷設しなくてもよい。
【0064】
さらなる実施例において、
図12を参照して、放出孔108の、共振器の周辺に近接する縁部分の角部は鈍角であり、放出孔108の、共振器の周辺に近接する縁部分の角部を鈍角に設定することで、当該部分から生じる余分な応力を減少させ、当該部分の応力変化の、圧電層104の応力変化に対する影響を低減させる。
【0065】
さらなる実施例において、
図13を参照して、放出通路109の、共振器の周辺に近接する縁部分の角部は弧状であり、放出通路109の、共振器の周辺に近接する縁部分の角部を弧状に設定することで、同じように、当該部分から生じる余分な応力を減少させ、当該部分の応力変化の、圧電層104の応力変化に対する影響を低減させる。
【0066】
以上の実施例は以下の効果をさらに有し、従来技術において、放出孔は一般的に圧電層に設けられ、放出の際、放出孔をエッチングして犠牲層に連通し、
図14に示すように、開示番号がCN111342809Aである特許において、以下のように記載し、即ち、放出孔131から下部電極までの距離S1は約1~3ミクロンであり、空気の誘電率は圧電材料の誘電率より遥かに低いため、静電破壊の経路は放出孔131に沿ってより容易に延在する。つまり、圧電層はエッチングされた後、その断面が露出し、露出した断面はエッチングのため、材料結晶構造が断面で破断し、材料の最も弱くなった箇所は、静電により破壊されやすくなる。従って、ある場合、上部電極と下部電極との間の電荷は空気によって導通を形成し、圧電層はその断面の破断から、高圧静電(例えば、3000V)によって破壊され、機器無効、即ち、共振器の静電破壊防止性能の無効を招致し、当該性能は、製造工程過程の良品率の制御及び機器動作寿命に影響する。本技術案において、
図2に示すように、共振領域のエンド部分で、下部電極103及び補強層106は圧電層104に対して「挟持」効果を形成し、補強層106は圧電層104の上方から圧電層104の断面を包んで、下部電極103に接続され、断面を完全に保護し、補強層106と上部電極105との間の圧電層104は破断断面がないため、静電破壊のリスクを有しない。
【0067】
本出願の補強層構造は同じように、従来技術の、放出孔を有する任意の構造に適用される。例えば、
図15に示すように、開示番号がCN1019313808Bである特許において、当該共振器は基板201、キャビティ202、下部電極203、圧電層204、上部電極205、橋部206及び接触部207を含み、具体的に実践する場合、そのキャビティ202は同じように、犠牲材料を放出させることで形成される。補強層を追加した構造は
図16に示すように、放出孔210は圧電層204を貫通して放出通路209に連通し、犠牲材料を放出させ、当該従来技術において補強層208を追加することで、同じように、放出孔及び放出通路の周囲の全体的な機械的構造の強度を強化させることができる。
【0068】
図17a~
図17gを参照して、本出願は補強構造を有する音波機器の製造方法の実施例をさらに開示し、当該製造方法は以下のステップを含み、
ステップS1:基板を提供する;
ステップS2:キャビティを形成するための犠牲層を基板に製造する;
具体的な実施例において、
図17aに示すように、S2は具体的に、犠牲材料を基板101に堆積して、犠牲材料に対してパターン化を行って犠牲層102を形成するステップを含む。好ましくは、犠牲層102に対してCMP(化学機械研磨)を行う。基板101の好適な材料はSi/サファイア/スピネルなどであり、犠牲層102の好適な材料はPSG(即ち、Pが添加されたSiO2)である。
【0069】
ここで、異なる実施例において(図示せず)、さらに、1つの溝部を基板101に加工してから、犠牲材料によって前記溝部を充填して、キャビティを形成しようとする犠牲層を基板101に製造してもよい。
【0070】
ステップS3:下部電極及び圧電層を前記犠牲層が形成された基板に順に形成する;
具体的な実施例において、
図17b~17cを参照して、S3は具体的に以下のステップを含み、
S31:
図17bに示すように、スパッタリング、リソグラフィ又はエッチング工程によって、下部電極103を犠牲層102に製造し、下部電極103の好適な材料はMoである;
S32:
図17cに示すように、圧電層104を下部電極103に成長させ、圧電層104は下部電極103、犠牲層102及び基板101を被覆する。
【0071】
ステップS4:前記圧電層に開口を形成して、下部電極の一部を露出させ、前記開口を前記犠牲層に連通させる。
具体的な実施例において、
図17dを参照して、S4は具体的に以下のステップを含み、即ち、圧電層104に対してエッチングを行うことで、下部電極103の縁の一部、及び犠牲層102の、下部電極103の縁に近接する一部を露出させ、開口111及び108を形成し、なお、開口の、犠牲層102に連通する部分は放出孔108を形成し、下部電極103の縁の一部は開口111から露出する。
【0072】
ステップS5:上部電極及び補強層を前記圧電層に製造し、前記補強層の一部が前記開口の縁に貼合されるように形成され、前記開口の縁の付近の共振機能層を補強する;
具体的な実施例において、
図17e~17fを参照して、S5は具体的に以下のステップを含み、
S51:
図17eに示すように、スパッタリング、リソグラフィ又はエッチング工程によって、電極材料層105Aを圧電層104に製造して、電極材料層105Aは下部電極103及び犠牲層102の、圧電層104から露出した部分を被覆する;
S52:電極材料層105Aの、開口111の縁から音響共振器の有效領域に向かって、圧電層104の上方まで延在した部分と、電極材料層105Aの他の部分とを離間させることで、補強層106を形成する。
【0073】
図17fに示すように、補強層106は前記下部電極103の、前記開口111から露出した部分を被覆して、前記開口111の付近の圧電層104を補強し、補強層106の一部はさらに前記圧電層104の一部を被覆し、電極材料層105Aの、保留された部分は上部電極105である。好ましくは、上部電極105と補強層106とのピッチは2ミクロンより大きく、両者の間に電気連通のリスクが存在しないことを保証する。
【0074】
ステップS6:前記犠牲層を放出させることで、前記キャビティを形成する。
【0075】
具体的な実施例において、
図17gに示すように、S6は具体的に、例えば、フッ化水素酸エッチャントによって犠牲層102を放出させることで、キャビティ110を露出させるステップを含む。
【0076】
以上、本発明の好適な実施例を結合して、本発明の原理を詳しく記載したが、当業者であれば分かるように、上記の実施例は本発明の範囲を限定せず、本発明の模式的な実現形態に対する解釈のみである。実施例における細部は、本発明の範囲を限定せず、本発明の精神及び範囲から逸脱しない場合、本発明の技術案による何れかの等価変換、簡単な差替などの自明な変更は、何れも本発明の保護範囲内に該当する。
【符号の説明】
【0077】
101 ・・・基板;
102 ・・・犠牲層;
103 ・・・下部電極;
104 ・・・圧電層;
105 ・・・上部電極;
106 ・・・補強層;
107 ・・・不活性化層;
108 ・・・放出孔;
109 ・・・放出通路;
110 ・・・キャビティ。