(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099517
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料及び製造方法並びに用途
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20230706BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230706BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230706BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20230706BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230706BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M10/0525
H01M10/0568
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211110
(22)【出願日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】202111662231.5
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518246268
【氏名又は名称】貴州振華新材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】周 朝毅
(72)【発明者】
【氏名】余 ▲イエ▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 金
(72)【発明者】
【氏名】王 麗娟
(72)【発明者】
【氏名】向 黔新
(72)【発明者】
【氏名】李 路
(72)【発明者】
【氏名】梅 銘
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ06
5H029HJ07
5H029HJ08
5H029HJ13
5H029HJ14
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良いサイクル特性、高い容量を有するとともに、電池のサイクル中のインピーダンス増加が相対的に小さいリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料、その製造方法及び用途を提供する。
【解決手段】多孔質構造を有し、化学式Li
1+aNi
bMn
cA
dO
2に示される元素組成を有しており、ただし、0.01≦a≦0.24、0.79<b≦0.96、0.01<c≦0.20、0<d≦0.06であり、Aは、Mn、Co、Al、Zr、Y、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、Ca、V、Sc、Sr及びBからいずれか1種又は2種以上の元素が選ばれるか、又は、Ti、Al、Mg、Zr、La及びLiの少なくとも1種の元素を含むリン含有化合物から選ばれる、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造を有し、その化学式1は、Li1+aNibMncAdO2に示される元素組成であり、ただし、0.01≦a≦0.24、0.79<b≦0.96、0.01<c≦0.20、0<d≦0.06であり、Aは、Mn、Co、Al、Zr、Y、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、Ca、V、Sc、Sr及びBからいずれか1種又は2種以上の元素が選ばれるか、又は、Ti、Al、Mg、Zr、La及びLiの少なくとも1種の元素を含むリン含有化合物から選ばれる、
ことを特徴とするリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項2】
窒素吸着法で測定する時、BJH細孔径分布曲線において細孔径1.5~20nmの範囲内でシングルピーク又はマルチピークの細孔径分布を有しており、且つ前記高ニッケル正極材料は、細孔径1.5~20nmの範囲で1点吸着法全細孔容積が0.01g/cm3以内である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項3】
前記高ニッケル正極材料は、細孔径1.5~20nmの範囲で1点吸着法全細孔容積が0.007g/cm3以内である、
ことを特徴とする請求項2に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項4】
前記正極材料の粉末X線回折パターンにおける回折角度2θが36.6°付近の(101)回折ピークの半値幅FWHM(101)は、0.080~0.180である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項5】
前記正極材料のDv50粒径は、3~20μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項6】
前記正極材料の比表面積は、0.33~1.5m2/gである、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項7】
前記正極材料のタップ密度は、1.9g/cm3以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項8】
前記正極材料の総遊離リチウム量は、1800ppm未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項9】
前記化学式1で、0.001≦d≦0.04である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項10】
原料を混合した後に少なくとも2回の焼成及び1回の被覆処理を行うことを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の製造方法。
【請求項11】
1回目の焼成温度は、700~900℃であり、
2回目の焼成温度は、400~800℃である、
ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
1回目の焼成温度は、790~890℃であり、
2回目の焼成温度は、680~800℃である、
ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
1回目の焼成の定温時間が8~40時間であり、
2回目の焼成の定温時間が5~20時間である、
ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
前記焼成雰囲気が酸素である、
ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項15】
前記被覆処理は、最終回の焼成前に行われる、
ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項16】
前記Li源は、リチウム含有酸化物、リチウム含有フッ化物又はリチウム含有塩である、
ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項17】
前記Li源は、無水水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム及びフッ化リチウムから1種又は2種以上選ばれる、
ことを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項10~17のいずれか1項に記載の製造方法から製造される、
ことを特徴とするリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項19】
請求項1~9のいずれか1項に記載の又は請求項10~17のいずれか1項に記載の製造方法から製造される正極材料の2種又は2種以上を含む、
ことを特徴とするリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【請求項20】
集電体と、集電体に担持された正極材料とを含み、前記正極材料が請求項1~9のいずれか1項に記載の又は請求項10~17のいずれか1項に記載の製造方法から製造されるリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料である、
ことを特徴とするリチウムイオン電池正極。
【請求項21】
正極と、負極と、リチウム塩含有電解質とを含み、前記正極が請求項20に記載のリチウムイオン電池正極である、
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に属し、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料及び製造方法並びに用途に関する。
【背景技術】
【0002】
2019年、新エネルギー市場が劇的な変化を迎え、電気自動車が増え続けることで、リチウムイオン電池のエネルギー密度と費用対効果に対するニーズが高まる一方である。そのうち、リチウム・コバルト・ニッケル・マンガン三元系正極材料でコバルトは希少資源であり、価格が高いことから、費用対効果を高めるとともに高エネルギー密度を保証するために、ニッケル又はマンガン元素の含有量を適切に高めることで、コバルトの使用量を減らす。ニッケルの含有量を高めると高容量の電池を提供できるが、ニッケルの含有量が増えると、材料の構造が不安定になり、電解質溶液と反応しやすく、また充放電が繰り返し行われることで、正極材料にクラックが発生して、リチウムイオン電池のサイクル寿命が短縮され、インピーダンスが上昇し、容量が低下してしまう。そのために、新しい材料を開発し又は新しい材料を見つけて、希少資源であるコバルトに取って代わるか材料中のコバルトの使用量を低減させることが急務となる。
【0003】
中国特許CN102280636Aは、正極活物質、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池を開示しており、当該リチウム二次電池の正極活物質は、共沈法で前駆体を調製し、次にリチウム源と混合し焼成処理を行って得られるものであり、当該材料は、約10nm~約60nmの平均直径を有する細孔を含み、且つ当該材料の細孔率は約0.5%~約20%であり、当該材料は良好な粒子強度を有するため、押圧後の破砕は防止又は低減され、当該材料は、電解質と反応しにくく、且つ良好な熱安定性を表しているため、高容量のリチウム二次電池の提供が可能である。しかし、当該材料の化学式LiaNixCoyMnzMkO2(ただし、0.45≦x≦0.65、0.15≦y≦0.25、0.15<z≦0.35)から分かるように、当該材料のコバルト含有量は高く、容量が不十分であるため、費用対効果が要件を満たすことができない。
【0004】
中国特許CN108123119Aは、リチウム二次電池用ニッケル系活物質、その製造方法及びそれを含む正極を備えるリチウム二次電池を開示しており、当該特許では、リチウム前駆体と金属水酸化物の混合物を、酸素雰囲気下で、低温熱処理し、次に高温熱処理することにより、ニッケル系活物質を得て、当該物質は、2つ以上のプレート状の一次粒子の凝集体を含む二次粒子を備え、前記二次粒子の少なくとも一部は、前記プレート状の一次粒子が放射形に配列された構造を含み、前記二次粒子の外部は、前記二次粒子の内部に比べて大きい気孔度(細孔率)を有すると説明しているが、当該特許ではどの分野の課題を改善するかは言及されていない。
【0005】
中国特許CN1856890は、リチウム二次電池正極材料用のリチウム複合酸化物粒子、当該粒子を用いたリチウム二次電池正極及びリチウム二次電池を開示しており、当該特許は、リチウム二次電池電極材料のリチウム複合酸化物粒子を開示し、電池の低温負荷特性を向上させ且つ正極製造時の塗工性を改善することができると説明している。当該材料は、水銀圧入法を用いる測定で、次の条件(A)を満たすと同時に次の条件(B)と条件(C)の少なくとも1つの条件を満たさなければならない。条件(A):水銀圧入曲線において、圧力が50MPaから150MPaに増える時に水銀の圧入量は0.02cm3/g以下である。条件(B):水銀圧入曲線において、圧力が50MPaから150MPaに増える時に水銀の圧入量は0.01cm3/g以上である。条件(C):平均細孔半径は、10~100nmであり、且つ、細孔分布曲線は、上端が細孔半径0.5~50μmに位置するメインピーク、及び上端が細孔半径80~300nmに位置するサブピークを有する。当該特許は、主に低温特性に着眼するもので、高温特性までは配慮していない。
【0006】
中国特許CN104272520Aは、非水電解質二次電池及びその製造方法を開示しており、当該特許では、当該非水電解質二次電池の正極を構成する正極合材層は、水銀ポロシメータで測定される細孔分布曲線において、細孔径が0.05μm~2μmの範囲に微分細孔容量のピークAと当該ピークAより小孔径側に位置するピークBとを有し、前記細孔分布曲線は、前記ピークAと前記ピークBとの間において微分細孔容量が極小値となる極小点Cを有し、前記ピークAの微分細孔容量XA及び前記ピークBの微分細孔容量XBのうち微分細孔容量の大きい方の微分細孔容量XLの前記極小点Cの微分細孔容量XCに対する比(XC/XL)が0.6以上であると説明している。当該特許は、主に、電池を製造するプロセスで、過充電添加剤を添加することによって電池のガス発生などの問題を低減する。
【0007】
中国特許CN112993239Aは、耐高圧・低コバルトの三元系正極材料及びその製造方法を開示しており、当該正極材料は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む前駆体、リチウム源、金属元素を含む添加剤から作製され、主として(Ni0.5Co0.1Mn0.4)(OH)2を前駆体として、低温、中高温及び高温において得られるものであり、当該正極材料は形態の規則性が高く、粒子の粒度が均一であり、且つ当該材料で製造したリチウムイオン電池は高圧下でも依然として低い内部抵抗及び優れた高温サイクル特性を有する。しかし、当該材料の容量が低く、使用上の要件を満たすことができない。
【0008】
中国特許CN108963218Aは、低コバルト・高ニッケルの三元系リチウムの製造方法及び用途を開示しており、当該正極材料は、硝酸ニッケル、硝酸チタン及び硝酸マンガンをモル比8.75:0.25:1で混合して水溶液を得て、噴霧乾燥して前駆体を得て、次に誘導剤を利用してチタンとコバルトの交換を引き起こし、前駆体、誘導剤及び水酸化リチウムから所定のモル比で懸濁液を調製し、噴霧乾燥した後、焼成して得た。当該材料はコバルトの含有量を一層低減させながらも熱安定性、サイクル寿命、及び安全性を大きく向上させている。しかし、当該材料は主に1回の焼成だけで完成品を得たもので、焼成時間が限られているため、十分な時間と運動エネルギーを提供できず、材料の構造はうまく合成できず、必ずしもサイクル特性と熱安定特性を得られるとは限らない。
【0009】
中国特許CN112811475Aは、単結晶正極材料、その製造方法及びリチウムイオン電池を開示しており、当該特許では、多結晶前駆体の大きな粒子を気流粉砕して、単結晶前駆体を得て、リチウムを配合して焼成することで当該正極材料を得ると説明している。当該方法は、プロセスが簡単で、湿式法と比べて、製造コストが低減している。当該材料は1回の焼成だけで完成品を作製し、焼成時間が限られているため、十分な時間と運動エネルギーを提供できず、材料の構造はうまく合成できず、必ずしもサイクル特性と熱安定特性を得られるとは限らない。
【0010】
中国特許CN112750999Aは、正極材料及びその製造方法並びにリチウムイオン電池を開示しており、当該正極材料は、高ニッケル・コバルト不含の多元系正極材料中間体と、前記高ニッケル・コバルト不含の多元系正極材料中間体の外面を被覆したコバルト含有化合物とを含み、且つコバルト化合物でコバルト元素の含有量はニッケルとマンガンの総モル数の0.5~5mol%である。当該方法で製造した材料は、構造が安定しており、エネルギー密度が高く、レート特性が優れており、容量保持率が高い。しかし、当該材料の遊離リチウムは高く、パルプ製造プロセスでゲルが発生して、電池の加工に影響を与える恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
コバルト含有量の低減により、特にコバルト不含材料、三元系材料の構造安定性が低下して、材料の容量、レート特性及びサイクル特性はどれも正常に発揮できなくなる。そのため、異なる仕様要件に応じて様々な方法が提案されており、高いサイクル特性と安全性が求められる場合には、高温焼成を採用して、大型の単結晶材料を得る。高いレート特性が求められる場合には、低温焼成を採用して、一次粒子が非常に小さい二次粒子を得るが、このような方法により、電池の実際の使用に欠陥が存在する。
【0012】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術によるコバルト不含正極材料には高いレート特性、高容量と長いサイクル寿命、低い直流内部抵抗を同時に実現できないことである。本発明は、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料及びその製造方法を提供し、改質元素の添加及び少なくとも2回の焼成と1回の被覆処理により、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を得る。当該正極材料は多孔質構造を有し、リチウムイオンの移動により多くの経路を提供し且つ経路が短いため、リチウムイオン電池はより高い容量を有するだけでなく、良好なレート特性を有する。当該リチウムイオン電池は、優れた構造安定性も有し、リチウムイオン電池の充放電中に、容量の低下が小さく、サイクル特性が優れており、直流内部抵抗の増加が少ない。本発明は、さらに、前記リチウムイオン電池用正極材料を含む正極及びリチウムイオン電池を提供し、さらに、デジタル式電池、パワー電池又は蓄電池の分野における前記リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料又はリチウムイオン電池正極又はリチウムイオン電池の用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の技術的解決手段は、次のとおりである。
本発明は、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を提供し、当該高ニッケル正極材料は多孔質構造を有し、
その化学式1は、Li1+aNibMncAdO2に示される元素組成であり、ただし、0.01≦a≦0.24、0.79<b≦0.96、0.01<c≦0.20、0<d≦0.06であり、Aは、Mn、Co、Al、Zr、Y、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、Ca、V、Sc、Sr及びBからいずれか1種又は2種以上の元素が選ばれるか、又は、Ti、Al、Mg、Zr、La及びLiの少なくとも1種の元素を含むリン含有化合物から選ばれる。
【0014】
好ましくは、窒素吸着法で測定する時、BJH細孔径分布曲線において細孔径1.5~20nmの範囲内でシングルピーク又はマルチピークの細孔径分布を有しており、且つ前記高ニッケル正極材料が細孔径1.5~20nmの範囲で1点吸着法全細孔容積が0.01g/cm3以内であり、好ましくは、0.007g/cm3以内である。
【0015】
好ましくは、前記正極材料の粉末X線回折パターンにおいて、前記正極材料の粉末X線回折パターンにおける回折角度2θが36.6°付近の(101)回折ピークの半値幅FWHM(101)は、0.080~0.180である。
【0016】
好ましくは、前記正極材料のDv50粒径が3~20μmである。
【0017】
好ましくは、前記正極材料の比表面積が0.33~1.5m2/gであり、
且つ/又は、前記正極材料のタップ密度が1.9g/cm3以上であり、
且つ/又は、前記正極材料の総遊離リチウム量が1800ppm未満である。
【0018】
好ましくは、前記化学式1で、0.001≦d≦0.04である。
【0019】
本発明は、さらに、原料を混合した後に少なくとも2回の焼成及び1回の被覆処理を行うことを含む、前記リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の製造方法を提供する。
【0020】
好ましくは、1回目の焼成温度が700~900℃であり、好ましくは、790~890℃であり、より好ましくは、定温時間が8~40時間であり、
且つ/又は、2回目の焼成温度が400~800℃であり、好ましくは、680~800℃であり、より好ましくは、定温時間が5~20時間であり、
さらに好ましくは、前記焼成雰囲気が酸素である。
【0021】
好ましくは、前記被覆処理が最終回の焼成前に行われる。
【0022】
好ましくは、前記製造方法において、前記Li源がリチウム含有酸化物、リチウム含有フッ化物又はリチウム含有塩であり、好ましくは、前記Li源が、無水水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム及びフッ化リチウムから1種又は2種以上選ばれる。
【0023】
好ましくは、前記原料中の前駆体のDv50粒径が2.0~20μmである。
【0024】
本発明は、さらに、前記製造方法から製造されるリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を提供する。
【0025】
本発明は、さらに、前記正極材料の2種又は2種以上を含むリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を提供する。
【0026】
本発明は、さらに、集電体と、集電体に担持された正極材料とを含むリチウムイオン電池正極を提供し、前記正極材料は、前記リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料である。
【0027】
本発明は、さらに、正極と、負極と、リチウム塩含有電解質とを含み、前記正極が前記リチウムイオン電池正極であるリチウムイオン電池を提供する。
【0028】
本発明は、さらに、デジタル式電池、パワー電池又は蓄電池の分野における前記リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料、又は前記リチウムイオン電池正極、又は前記リチウムイオン電池の用途を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。
通常のリチウムイオン電池用正極材料と比べて、本発明は、改質元素の添加及び少なくとも2回の焼成と1回の被覆処理により、コバルト不含の改質リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を得る。それは独特な多孔質構造及び結晶構造を有しており、当該正極材料の多孔質構造がリチウムイオンの移動により多くの経路を提供し且つ経路が短いため、リチウムイオン電池はより高い容量、良好なレート特性を有するだけでなく、当該結晶構造によって材料は優れた構造安定性を有し、リチウムイオン電池の充放電中に、容量の低下が小さく、サイクル特性が優れており、直流内部抵抗の増加が少なく、コバルト不含正極材料の容量、レート特性とサイクル特性に効果的にバランスがとれている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施例7で製造した高ニッケル正極材料の細孔径分布曲線である。
【
図2】
図2は、実施例6で製造した高ニッケル正極材料のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施例の目的、技術的解決手段及び技術的効果がより明瞭になるよう、本発明の実施例に係る技術的解決手段を明瞭かつ完全に説明する。以下に説明する実施例は全ての実施例ではなく、本発明の実施例の一部である。当業者が本発明の実施例から、新規性のある作業をせず他の実施例を得た場合に、そのいずれも本発明の保護範囲に属する。
【0032】
本発明の説明において、用語「マルチピーク」とは、BJH細孔径分布曲線が2つ又は2つ以上の細孔容積の最大値を含む細孔径分布を指し、一般に細孔容積の最大値は0.0008g/cm3又はそれ以上である。
【0033】
本発明の説明において、用語「シングルピーク」とは、BJH細孔径分布曲線が1つの細孔容積の最大値を含む細孔径分布を指し、一般に細孔容積の最大値は0.0008g/cm3又はそれ以上である。
【0034】
以下、前記技術的解決手段をよりよく理解するために、本発明をより詳しく説明する。
【0035】
本発明は、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を提供し、当該高ニッケル正極材料は多孔質構造を有し、その化学式1は、Li1+aNibMncAdO2に示される元素組成であり、ただし、0.01≦a≦0.24、0.79<b≦0.96、0.01<c≦0.20、0<d≦0.06であり、Aは、Mn、Co、Al、Zr、Y、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、Ca、V、Sc、Sr及びBからいずれか1種又は2種以上の元素が選ばれるか、又は、Ti、Al、Mg、Zr、La及びLiの少なくとも1種の元素を含むリン含有化合物から選ばれる。
なお、リン含有化合物としては、Li3PO4、リン酸チタンアルミニウムリチウム(LATP)または[LiAlXTi(2ーX)(PO4)3]の1種または2種以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、窒素吸着法で測定する時、BJH細孔径分布曲線において細孔径1.5~20nmの範囲内でシングルピーク又はマルチピークの細孔径分布を有しており、且つ前記高ニッケル正極材料は、細孔径1.5~20nmの範囲で1点吸着法全細孔容積が0.01g/cm3以内であり、好ましくは、0.007g/cm3以内である。
【0037】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、前記高ニッケル正極材料の粉末X線回折パターンにおける回折角度2θが36.6°付近の(101)回折ピークの半値幅FWHM(101)は、0.080~0.180である。
【0038】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、前記高ニッケル正極材料のDv50粒径は、3~20μmである。
【0039】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、前記高ニッケル正極材料の比表面積は、0.33~1.5m2/gであり、
且つ/又は、前記高ニッケル正極材料のタップ密度は、1.9g/cm3以上であり、
且つ/又は、前記高ニッケル正極材料の総遊離リチウム量は、1800ppm未満である。
【0040】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、前記化学式1で、0.001≦d≦0.04である。
【0041】
本発明は、さらに、原料を混合した後に少なくとも2回の焼成及び1回の被覆処理を行うことを含む、前記リチウムイオン電池用正極材料の製造方法を提供する。
【0042】
ただし、前記原料は、Li源、金属A源、ニッケル・マンガン水酸化物前駆体を含む。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、1回目の焼成温度は、700~900℃であり、好ましくは、790~890℃であり、より好ましくは、定温時間が8~40時間であり、
且つ/又は、2回目の焼成温度は、400~800℃であり、好ましくは、680~800℃であり、より好ましくは、定温時間が5~20時間であり、
さらに好ましくは、前記焼成雰囲気が酸素である。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、前記リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の製造方法で、前記被覆処理は最終回の焼成前に行われる。
【0045】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、前記製造方法で、前記Li源は、リチウム含有酸化物、リチウム含有フッ化物又はリチウム含有塩であり、好ましくは、前記Li源が、無水水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム及びフッ化リチウムから1種又は2種以上選ばれる。
【0046】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、前記原料中の前駆体のDv50粒径は2.0~20μmである。
【0047】
本発明は、さらに、前記製造方法から製造されるリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を提供する。
【0048】
本発明は、さらに、前記正極材料の2種又は2種以上を含むリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を提供する。
【0049】
本発明は、さらに、集電体と、集電体に担持された正極材料とを含むリチウムイオン電池正極を提供し、前記正極材料は、前記リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料である。
【0050】
本発明は、さらに、正極と、負極と、リチウム塩含有電解質とを含み、前記正極が前記リチウムイオン電池正極であるリチウムイオン電池を提供する。
【0051】
本発明のリチウムイオン電池は、セパレータと、アルミラミネートフィルムとをさらに含む。具体的に言えば、その電極は正極と負極とを含み、正極は、正極集電体、正極集電体にコーティングされた正極活物質、接着剤、導電助剤などの材料から作製され、正極活物質は、前記リチウムイオン電池用正極材料である。負極は、集電体、集電体にコーティングされた負極活物質、接着剤、導電助剤などの材料から作製され、セパレータは、当業界で正極と負極を互いに隔離させるために一般に使用されるPP/PEフィルムであり、アルミラミネートフィルムは、正極、負極、セパレータ及び電解質の被覆材である。
【0052】
前記接着剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシ化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジェンゴム、アクリル酸(エステル)化スチレンブタジェンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなど、及びそれらの組み合わせを含み、役割は、正極活物質粒子同士間及び正極活物質粒子と集電体の接着性を改善させることである。
【0053】
前記導電助剤は、炭素系材料、金属系材料及び導電性ポリマーの1種又は2種以上を含む。前記炭素系材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック及び炭素繊維の1種又は2種以上であり、前記金属系材料は、銅、ニッケル、アルミニウム又は銀の金属粉末又は金属繊維であり、前記導電性ポリマーは、ポリフェニレン誘導体である。
【0054】
本発明は、さらに、デジタル式電池、パワー電池又は蓄電池の分野における前記リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料、又は前記リチウムイオン電池正極、又は前記リチウムイオン電池の用途を提供する。
【0055】
以下、特定の実施例で本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0056】
以下の実施例で使用する試薬及び装置の情報は、表1-1、表1-2及び表2に示すとおりである。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
(実施例1)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、31.78kgの無水水酸化リチウム、3.44kgの酸化セリウム、100kgの粒径Dv50が8.5μmの水酸化ニッケル・マンガン前駆体Ni0.9Mn0.1(OH)2(広東英徳佳納能源公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を840℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は10L/分であり、混合後の原料を匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を35時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して、1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を700℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は10L/分であり、1回目の焼成半製品を匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を8時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して、2回目の焼成半製品を得た。
被覆処理:2回目の焼成半製品を撹拌タンクに入れ、起動して撹拌し、150kgの脱イオン水を加え、1.05kgのチタン酸テトラブチルを加えて、50分間混合し、濾過してケーキを得た。
3回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を600℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は10L/分であり、被覆処理後のケーキを匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を4時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0061】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.24Ni0.9Mn0.1Ti0.0051Ce0.02O2であった。
【0062】
(実施例2)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、48.99kgの水酸化リチウム一水和物、1.2kgの酸化コバルト、100kgの粒径Dv50が4μmの水酸化ニッケル・マンガン前駆体Ni0.8Mn0.2(OH)2(広東英徳佳納能源公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を890℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は8L/分であり、混合後の原料を匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を28時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して、1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を750℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は8L/分であり、1回目の焼成半製品を匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を6時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して、2回目の焼成半製品を得た。
被覆処理:2回目の焼成半製品を撹拌タンクに入れ、起動して撹拌し、120kgの脱イオン水を加え、1.02kgのチタン酸テトラブチルを加えて、60分間混合し、濾過してケーキを得た。
3回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を700℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は8L/分であり、被覆処理後のケーキを匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を5時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0063】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.01Ni0.8Mn0.2Co0.016Ti0.0046O2であった。
【0064】
(実施例3)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、48.18kgの水酸化リチウム一水和物、2.319kgの酸化タングステン、2kgの炭酸コバルト、100kgのDv50粒径が15μmの水酸化ニッケル・マンガン前駆体Ni0.9Mn0.1(OH)2(広東英徳佳納能源公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を830℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は15L/分であり、混合後の原料を匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を30時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して、1回目の焼成半製品を得た。
被覆処理:1回目の焼成半製品を撹拌タンクに入れ、起動して撹拌し、100kgの脱イオン水を加え、25.4kgの炭酸ルビジウム溶液(炭酸ルビジウムと水を1:10の比率で混合したもの)を加えて、40分間混合し、濾過してケーキを得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を700℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は15L/分であり、被覆処理後のケーキを匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を9時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0065】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.06Ni0.9Mn0.1Co0.02W0.01Rb0.02O2であった。
【0066】
(実施例4)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、46.06kgの水酸化リチウム一水和物、100kgの粒径Dv50が2.0μmの水酸化ニッケル・マンガン前駆体Ni0.85Mn0.15(OH)2(貴州中偉正源新材料有限公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を840℃に設定し、酸素(酸素流量12L/分)を流し込み、混合後の原料を装置に投入して1回目の焼成を行い、定温16時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して、1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を800℃に設定し、酸素(酸素流量8L/分)を流し込み、前記1回目の焼成半製品を36メートルのローラーハースキルンに投入して2回目の焼成を行い、定温18時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、次に脱磁して2回目の焼成半製品を得た。
被覆処理:2回目の焼成半製品を撹拌タンクに入れ、起動して撹拌し、100kgの脱イオン水を加えて、10分間撹拌し、吸引濾過し、ベーキングして、ベーキング後の半製品をミキサーに入れ、起動して撹拌し、1.77kgの七モリブデン酸アンモニウムを加えて、30分間混合した。
3回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を600℃に設定し、酸素(酸素流量5L/分)を流し込み、被覆処理後の原料を36メートルのローラーハースキルンに投入して3回目の焼成を行い、定温10時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0067】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.04Ni0.85Mn0.15Mo0.01O2であった。
【0068】
(実施例5)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、46.94kgの水酸化リチウム一水和物、100kgの粒径Dv50が14.0μmの水酸化ニッケル・マンガン前駆体Ni0.85Mn0.15(OH)2(貴州中偉正源新材料有限公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を810℃に設定し、酸素(酸素流量12L/分)を流し込み、混合後の原料を装置に投入して1回目の焼成を行い、定温12時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して、1回目の焼成半製品を得た。
被覆処理:1回目の焼成半製品を撹拌タンクに入れ、起動して撹拌し、100kgの脱イオン水を加えて、20分間撹拌し、吸引濾過し、ベーキングして、ベーキング後の半製品をミキサーに入れ、起動して撹拌し、0.4kgの酸化ホウ素を加えて、30分間混合した。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を400℃に設定し、酸素(酸素流量5L/分)を流し込み、被覆処理後の原料を36メートルのローラーハースキルンに投入して3回目の焼成を行い、定温5時間とし、原料を室温に冷却し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0069】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.06Ni0.85Mn0.15B0.005O2であった。
【0070】
(実施例6)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、29.07kgの無水水酸化リチウム、2.95kgの炭酸ストロンチウム、100kgのDv50粒径が8.0μmの水酸化ニッケル・マンガン前駆体Ni0.95Mn0.05(OH)2(広東英徳佳納能源公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を790℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は10L/分であり、混合後の原料を匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を40時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して、1回目の焼成半製品を得た。
被覆処理:1回目の焼成半製品を撹拌タンクに入れ、起動して撹拌し、100kgの脱イオン水を加えて、28.5kgの酢酸マグネシウム溶液(酢酸マグネシウムと水を1:10の比率で混合したもの)を加えて、60分間混合し、濾過してケーキを得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を680℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は10L/分であり、被覆処理後のケーキを匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を5時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0071】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.14Ni0.95Mn0.05Sr0.02Mg0.02O2であった。
【0072】
(実施例7)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、48.18kgの水酸化リチウム一水和物、1.9kgの炭酸ストロンチウム、100kgのDv50粒径が3.5μmの水酸化ニッケル・マンガン前駆体Ni0.9Mn0.1(OH)2(広東英徳佳納能源公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を860℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は15L/分であり、混合後の原料を匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を35時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して、1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を750℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は15L/分であり、1回目の焼成半製品を匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を7時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して、2回目の焼成半製品を得た。
被覆処理:2回目の焼成半製品を撹拌タンクに入れ、起動して撹拌し、100kgの脱イオン水を加え、8.4kgの硝酸アルミニウム九水和物溶液(硝酸アルミニウム九水和物と水を1:5の比率で混合したもの)を加えて、40分間混合し、濾過してケーキを得た。
3回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、温度を700℃に設定し、酸素を流し込み、ガス流量は15L/分であり、被覆処理後のケーキを匣鉢に入れて、ローラーハースキルンに送り込んで焼成し、定温時間を9時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0073】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.1Ni0.9Mn0.1Sr0.015Al0.003O2であった。
【0074】
(実施例8)
実施例3と実施例7の正極材料を質量比1:1で混合して、混合正極材料を得た。
【0075】
(実施例9)
実施例3と実施例7の正極材料を質量比7:3で混合して、混合正極材料を得た。
【0076】
(試験例1)
下記の方法で、実施例1~9で製造した高ニッケル正極材料の特性パラメータを測定した。
【0077】
(1)細孔径分布曲線の測定方法
自動比表面積・細孔分布測定装置(TriStarII3020)を利用して、4gの正極粉末材料を測定用のサンプル管に入れ、200℃で1時間脱気処理を行うことにより、測定サンプルから水分を十分に除去させた。続いて、液体窒素を用いた窒素吸着法を利用して、相対圧力P/P0(P0≒665mmHg)が0.01~0.995の範囲で吸着側及び脱着側の等温線を測定した。脱着側等温線を利用し、BJH法で計算して、細孔径を横軸、細孔容積を縦軸とする細孔径分布曲線を得て、実施例7で製造した高ニッケル正極材料の細孔径分布曲線は、
図1に示すとおりである。
図1から分かるように、細孔径分布曲線において細孔径1.5~20nmの範囲内で1つのシングルピークを有している。実施例1~9で製造した高ニッケル正極材料の細孔径範囲、及び細孔径が1.5~20nmである1点吸着法全細孔容積の測定結果は、表3に示すとおりである。
【0078】
(2)比表面積の測定方法
本発明で比表面積はGB/T 19587-2004ガス吸着BET法の重量法を参照して、自動比表面積・細孔分布測定装置(TriStarII3020)で測定し、測定結果は、表3に示すとおりである。
【0079】
(3)粒径の測定方法
本発明で粒径はGB/T19077-2016粒度分布分析・レーザー回折法を参照して、Malvern Master Size 2000レーザー式粒度分布測定装置で測定し、1gの粉末を秤量して、60mLの純水に加え、5分間超音波処理して、サンプルをサンプルインジェクターに注入して測定し、測定データを記録した。測定結果は、表3に示すとおりである。
【0080】
Master Size 2000レーザー式粒度分布測定装置を使用し、検出角度は0~135°とし、試験原理はミー理論(Mie theory)であり、超音波強度は40kHz 180Wとし、粒子屈折率は1.692とし、粒子吸收率は1とし、サンプル測定時間は6秒とし、バックグラウンド測定のスナップ数は6000回とし、遮光度は8~12%とした。
【0081】
(4)XRD測定方法
X’Pert PRO MPD回折装置を使用し、Cu管球であり、波長は1.54060であり、Beウィンドウであった。入射光路において、ソーラースリットは0.04radであり、発散スリットは1/2°であり、遮光板は10mmであり、散乱防止スリットは1°であった。回折光路において、散乱防止スリットは8.0mmであり、ソーラースリットは0.04radであり、大型Niフィルターであった。走査範囲は10~80°であり、走査ステップ幅は0.013°であり、1ステップ当たりの測定時間は30.6秒であり、電圧は40kVであり、電流は40mAであり、解析ソフトウェアはHigh-Score Plusであった。実施例6で製造した高ニッケル正極材料のX線回折パターンは、
図2に示すとおりであり、実施例1~9で製造した高ニッケル正極材料の回折角度2θが36.6°付近の(101)回折ピークに対応する半値幅FWHM(101)の測定結果は、表3に示すとおりである。
【0082】
(5)タップ密度の測定方法
100mLメスシリンダを用いて、m(50±0.5)gの粉状物質を秤量し、メスシリンダの底部を敷き詰めるように原料をメスシリンダに入れ、原料の上縁の目盛りを読み取り、V1と記録し、粉状物質を入れたメスシリンダをBT-303タップ密度試験機に置いて固定し、振幅3±0.1mm、振動数3000回とパラメータを設定し、装置を起動して、振動が終了したら、メスシリンダを取り外して、粉状物質の上縁の目盛りV2を読み取り、タップ密度は(V1-V2)/mであった。測定結果は、表3に示すとおりである。
【0083】
(6)総遊離リチウム量の測定方法
30g±0.01gのサンプルを正確に秤量し、サンプルを250mL三角フラスコに加え、マグネチックスターラーを入れて、100mLの脱イオン水を加えた。三角フラスコをマグネチックスターラーに置いて、装置を起動して30分間撹拌した。定性濾紙、漏斗で混合溶液を濾過した。50mLピペットで50mLの濾液を取り出して、100mLビーカーに加え、攪拌子を入れた。ビーカーをマグネチックスターラーに置いて、2滴のフェノールフタレイン指示薬を加えた。0.05mol/L塩酸標準液で、溶液の色が赤色から無色となるまで滴定し、0.05mol/L塩酸標準液の体積V1(終点1)を記録した。2滴のメチルレッド指示薬を加えて、指示薬の色が無色から黄色となった。0.05mol/L塩酸標準液で、溶液の色が黄色からオレンジ色となるまで滴定した。ビーカーを加熱炉に置いて、溶液が沸騰するまで加熱した(溶液の色はオレンジ色から黄色となった)。ビーカーを撤去して、室温に冷却した。さらにビーカーをマグネチックスターラーに置いて、0.05mol/L塩酸標準液で、溶液の色が黄色から淡赤色となるまで滴定し、0.05mol/L塩酸標準液の体積V2(終点2)を記録した。下式により総遊離リチウム量を計算し、測定結果は、表3に示すとおりである。
【0084】
総遊離リチウム量=V2×0.05×6.94×2×100%/(m×1000)、
総遊離リチウム量は、単位は100%であり、
mはサンプルの質量で、単位はgであり、
V2は第2の滴定終点で、単位はmLであり、
6.94はリチウムの原子量である。
【0085】
【0086】
(試験例2)
リチウムイオン電池の製造及び特性評価:
下記の方法でパウチセル454261を製造した。
正極の製造:本発明の実施例1~9で製造した高ニッケル正極材料のそれぞれと、導電性カーボンブラック(S.P)、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比94:3:3でN-メチルピロリドン(NMP)に加えて(正極材料とNMPの重量比は2.1:1)十分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成させ、アルミ箔集電体にコーティングして、乾燥し、プレスして極板を得た。
【0087】
負極の製造:負極用人造黒鉛と、導電性カーボンブラック(S.P)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、接着剤(SBR)を重量比95:1:1:3で十分な量の純水に加えて混合し、撹拌して均一なスラリーを形成させ、銅箔集電体にコーティングさせ、乾燥し、プレスして極板を得た。
【0088】
セパレータはPP/PE複合フィルム材料であった。プレス後の正極板、負極板にタブをスポット溶接して、セパレータを挿入した後、巻取機において巻き取ってからパウチ用治具に入れて、上部と側面を封止し、次にオーブンに入れて加熱乾燥し、その後、相対湿度が1.5%未満の環境で9gの電解液を注入し、電解液として質量比がEC:DEC:DMC=1:1:1の混合溶媒を使用し、電解質は1M 六フッ化リン酸リチウムであり、注液して、48時間化成した後、真空引きして封止した。セル型番は454261であった。
【0089】
下記の方法でバッテリテスター(浙江杭可科技提供)において電池の特性試験を行った。
【0090】
1)容量試験
製造したパウチセルをテストラックに接続させ、テストプログラムを立ち上げた。次のとおりにステップを設定した。試験温度を25℃に設定し、4時間静置して、定電流定電圧で4時間充電し(例えば、1/3Cで4.2Vに充電)、一旦停止して、静置し、定電流放電し(例えば、1/3Cで電圧3.0Vまで)、当該電流及び電圧下の容量を得て、前記ステップを繰り返すことにより、異なる電流及び電圧条件下の容量データを得ることができる。
【0091】
2)サイクル試験
前記容量試験を経た電池を、テストラックに接続させて、テストプログラムを立ち上げ、次のとおりにステップを設定した。試験温度を45℃に設定し、4時間静置して、定電流で4時間充電し(例えば、1Cで4.2Vに充電、または1Cで4.3Vに充電)、定電圧に切り替えて充電し(例えば、2時間で4.2Vに、または2時間で4.3Vに充電)、5分間静置して、定電流で4時間放電して(例えば、1Cで電圧3.0Vまで)、5分間静置し、前記定電流充電から始まるステップを繰り返して、サイクル試験を行うことにより、異なる電圧で異なるサイクル回数での容量保持率を得ることができる。
【0092】
3)サイクル後直流内部抵抗(DCR)増加試験
2)のサイクル試験ステップにおいて、定電流放電前に、定電流30秒放電のステップを追加し(30秒内の電圧差を記録し、電流で割って、DCRを得た)、他は同じであった。前記定電流充電から始まるステップを繰り返して、サイクル試験を行うことにより、異なるサイクル回数でのDCR増加率(当該サイクル後のDCRと1回目のサイクル後のDCRの差を1回目のサイクル後のDCRで割った)を得ることができ、試験結果は、表4に示すとおりである。
【0093】
4)レート特性
製造したパウチセルをテストラックに接続させ、テストプログラムを立ち上げた。次のとおりにステップを設定した。試験温度を25℃に設定し、4時間静置して、1/3Cでの定電流定電圧で4.2Vに充電し、電流が0.02Cになったら、一旦停止して、静置し、1/3Cで電圧3.0Vまで放電して、電池の1/3C放電容量を記録した。4時間を静置して、1Cでの定電流定電圧で4.2Vに充電し、電流が0.02Cになったら、一旦停止して、静置し、1Cで電圧3.0Vまで定電流放電して、電池の1C放電容量を記録した。4時間静置し、2Cでの定電流定電圧で4.2Vに充電し、電流が0.02Cになったら、一旦停止して、静置し、2Cで電圧3.0Vまで定電流放電して、電池の2C放電容量を記録した。
【0094】
【0095】
表3から分かるように、本発明の実施例1~9で製造したリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料は、窒素吸着法で測定する時、細孔径1.5~20nmでの1点吸着法全細孔容積が0.0043g/cm3以内であるため、当該正極材料は多孔質構造であり、細孔径範囲は1.7~19nm以内であった。本発明で製造した高ニッケル正極材料のタップ密度は1.9g/cm3を超えており、比表面積は0.33~0.95m2/gであり、Dv50粒径は3.3~17.3μmであった。XRD回折パターンでは、当該正極材料の粉末X線回折パターンにおける回折角度2θが36.6°付近の(101)回折ピークの半値幅FWHM(101)が0.093~0.133であることが示されている。
【0096】
表4から分かるように、本発明の実施例1~9で製造したリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料所で製造したリチウムイオン電池は、1/3C電流と4.2V電圧での容量が181~200.7mAh/gであり、2C電流での放電容量が175.3~194.6mAh/gであり、4.2Vでサイクル200回での容量保持率は87~94%であり、4.2Vでサイクル200回後のDCR増加率は19~30%であった。本発明で製造した高ニッケル正極材料は小さな細孔径を有しており、リチウムイオンの移動により多くの経路を提供し且つ経路が短いため、高い容量、良いレート特性を得て、当該正極材料の粉末X線回折パターンにおける回折角度2θが36.6°付近の(101)回折ピークの半値幅FWHM(101)は0.093~0.133であることから、材料の構造安定性は良く、良い容量保持率を有しており、直流内部抵抗の増加が少ない。本発明の実施例8と9では異なる粒径の正極材料を混合することにより、リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料のタップ密度が一層高められ、容量とサイクル特性によいバランスがとれており、直流内部抵抗の増加も小さくなる。
【0097】
以上をまとめると、通常のリチウムイオン電池用正極材料と比べて、本発明は、改質元素の添加及び少なくとも2回の焼成と1回の被覆処理により、コバルト不含の改質リチウムイオン電池用高ニッケル正極材料を得る。それは独特な多孔質構造及び結晶構造を有しており、当該正極材料の多孔質構造がリチウムイオンの移動により多くの経路を提供し且つ経路が短いため、リチウムイオン電池はより高い容量、良好なレート特性を有するだけでなく、当該結晶構造によって材料は優れた構造安定性を有し、リチウムイオン電池の充放電中に、容量の低下が小さく、サイクル特性が優れており、直流内部抵抗の増加が少なく、コバルト不含正極材料の容量、レート特性とサイクル特性に効果的にバランスがとれている。
【0098】
上述したのは、本発明の実施に係る好ましい実施例に過ぎず、本発明への何らかの限定ではない。本発明の趣旨と原理から逸脱せず修正、同等な置換又は改善などを行った場合に、本発明の保護範囲に含むものとする。
【0099】
(付記)
(付記1)
多孔質構造を有し、その化学式1は、Li1+aNibMncAdO2に示される元素組成であり、ただし、0.01≦a≦0.24、0.79<b≦0.96、0.01<c≦0.20、0<d≦0.06であり、Aは、Mn、Co、Al、Zr、Y、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、Ca、V、Sc、Sr及びBからいずれか1種又は2種以上の元素が選ばれるか、又は、Ti、Al、Mg、Zr、La及びLiの少なくとも1種の元素を含むリン含有化合物から選ばれる、
ことを特徴とするリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0100】
(付記2)
窒素吸着法で測定する時、BJH細孔径分布曲線において細孔径1.5~20nmの範囲内でシングルピーク又はマルチピークの細孔径分布を有しており、且つ前記高ニッケル正極材料は、細孔径1.5~20nmの範囲で1点吸着法全細孔容積が0.01g/cm3以内である、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0101】
(付記3)
前記高ニッケル正極材料は、細孔径1.5~20nmの範囲で1点吸着法全細孔容積が0.007g/cm3以内である、
ことを特徴とする付記2に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0102】
(付記4)
前記正極材料の粉末X線回折パターンにおける回折角度2θが36.6°付近の(101)回折ピークの半値幅FWHM(101)は、0.080~0.180である、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0103】
(付記5)
前記正極材料のDv50粒径は、3~20μmである、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0104】
(付記6)
前記正極材料の比表面積は、0.33~1.5m2/gである、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0105】
(付記7)
前記正極材料のタップ密度は、1.9g/cm3以上である、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0106】
(付記8)
前記正極材料の総遊離リチウム量は、1800ppm未満である、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0107】
(付記9)
前記化学式1で、0.001≦d≦0.04である、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0108】
(付記10)
原料を混合した後に少なくとも2回の焼成及び1回の被覆処理を行うことを含む、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料の製造方法。
【0109】
(付記11)
1回目の焼成温度は、700~900℃であり、
2回目の焼成温度は、400~800℃である、
ことを特徴とする付記10に記載の製造方法。
【0110】
(付記12)
1回目の焼成温度は、790~890℃であり、
2回目の焼成温度は、680~800℃である、
ことを特徴とする付記10に記載の製造方法。
【0111】
(付記13)
1回目の焼成の定温時間が8~40時間であり、
2回目の焼成の定温時間が5~20時間である、
ことを特徴とする付記10に記載の製造方法。
【0112】
(付記14)
前記焼成雰囲気が酸素である、
ことを特徴とする付記10に記載の製造方法。
【0113】
(付記15)
前記被覆処理は、最終回の焼成前に行われる、
ことを特徴とする付記10に記載の製造方法。
【0114】
(付記16)
前記Li源は、リチウム含有酸化物、リチウム含有フッ化物又はリチウム含有塩である、
ことを特徴とする付記10に記載の製造方法。
【0115】
(付記17)
前記Li源は、無水水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム及びフッ化リチウムから1種又は2種以上選ばれる、
ことを特徴とする付記16に記載の製造方法。
【0116】
(付記18)
付記10~17のいずれか1つに記載の製造方法から製造される、
ことを特徴とするリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0117】
(付記19)
付記1~9のいずれか1つに記載の又は付記10~17のいずれか1つに記載の製造方法から製造される正極材料の2種又は2種以上を含む、
ことを特徴とするリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料。
【0118】
(付記20)
集電体と、集電体に担持された正極材料とを含み、前記正極材料が付記1~9のいずれか1つに記載の又は付記10~17のいずれか1つに記載の製造方法から製造されるリチウムイオン電池用高ニッケル正極材料である、
ことを特徴とするリチウムイオン電池正極。
【0119】
(付記21)
正極と、負極と、リチウム塩含有電解質とを含み、前記正極が付記20に記載のリチウムイオン電池正極である、
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【外国語明細書】