(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099534
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A62B 18/08 20060101AFI20230706BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
A62B18/08 D
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067450
(22)【出願日】2023-04-17
(62)【分割の表示】P 2022529373の分割
【原出願日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020100511
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】512086219
【氏名又は名称】株式会社クロスエフェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】西村 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】白石 公
(72)【発明者】
【氏名】土井 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】竹田 正俊
(72)【発明者】
【氏名】畑中 克宣
(72)【発明者】
【氏名】亀川 和義
(72)【発明者】
【氏名】石田 寿人
(72)【発明者】
【氏名】柳原 和貴
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン ダヴー
(72)【発明者】
【氏名】西村 智明
(57)【要約】
【課題】カートリッジが汚れたり、損傷するのを防止することができるマスクを提供する。
【解決手段】本発明に係るマスクは、フィルタを有するカートリッジを着脱自在に取り付け可能なマスクであって、貫通孔を有し、当該貫通孔の延びる軸方向の両端部に第1開口部及び第2開口部をそれぞれ有する本体部と、貫通孔を有し、当該貫通孔の延びる軸方向の両端部に第1開口部及び第2開口部をそれぞれ有し、当該第1開口部の周縁が、前記本体部の第2開口部の周縁に固定され、装着者の顔に接触可能な接触部と、前記本体部の第1開口部を塞ぐように着脱自在に取り付けられ、少なくとも1つの通気孔が形成されたカバー部材と、を備え、前記本体部の第1開口部と前記カバー部材との間に、前記本体部の貫通孔を塞ぐように、前記カートリッジを収容する収容空間が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタを有するカートリッジを取り付け可能なマスクであって、
貫通孔を有し、当該貫通孔の延びる軸方向の両端部に第1開口部及び第2開口部をそれぞれ有する本体部と、
貫通孔を有し、当該貫通孔の延びる軸方向の両端部に第1開口部及び第2開口部をそれぞれ有し、当該第1開口部の周縁が、前記本体部の第2開口部の周縁に固定され、装着者の顔に接触可能な接触部と、
前記本体部の第1開口部を塞ぐように取り付けられ、少なくとも1つの通気孔が形成されたカバー部材と、
を備え、
前記本体部の第1開口部と前記カバー部材との間に、前記本体部の貫通孔を塞ぐように、前記カートリッジを収容する収容空間が形成されている、マスク。
【請求項2】
前記本体部は、当該本体部の前記貫通孔の内周に沿って形成される、支持面を備え、
前記カートリッジの周縁部が、前記本体部の支持面と前記カバー部材によって挟持されるように構成されている、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記通気孔が形成された前壁部と、前記前壁部の周縁に連結され、前記本体部の第1開口部の周縁に着脱自在に固定される連結部と、を備え、
前記前壁部と前記フィルタとの間に隙間が形成されている、請求項1または2に記載のマスク。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記本体部の第1開口部の周縁に対しネジ止めによって固定される、請求項1から3のいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
前記接触部は、前記本体部より突出し、前記接触部の厚みは、前記本体部の厚みよりも小さい、請求項1から4のいずれかに記載のマスク。
【請求項6】
前記接触部は、前記第2開口部にいくにしたがって厚みが小さくなるテーパ部または楔形部を有している、請求項1から5のいずれかに記載のマスク。
【請求項7】
前記接触部の第2開口部側の端部は、当該接触部の貫通孔の径方向内方に延びるように形成されている、請求項1から6のいずれかに記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルタを有するカートリッジが本体に着脱されるマスクが提案されている。このマスクは、カートリッジと、マスクを装着する装着者の顔面に接触する接顔部と、カートリッジ及び接顔部を接続するコネクタとを備える。カートリッジを交換することによって、装着者は清潔なフィルタを使用することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のマスクは、カートリッジが露出しているため、例えば、この膜巣を装着している装着者が作業を行っている際に、カートリッジに汚れが付着する場合がある。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、カートリッジが汚れたり、損傷するのを防止することができる、マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るマスクは、フィルタを有するカートリッジを取り付け可能なマスクであって、貫通孔を有し、当該貫通孔の延びる軸方向の両端部に第1開口部及び第2開口部をそれぞれ有する本体部と、貫通孔を有し、当該貫通孔の延びる軸方向の両端部に第1開口部及び第2開口部をそれぞれ有し、当該第1開口部の周縁が、前記本体部の第2開口部の周縁に固定され、装着者の顔に接触可能な接触部と、前記本体部の第1開口部を塞ぐように取り付けられ、少なくとも1つの通気孔が形成されたカバー部材と、を備え、前記本体部の第1開口部と前記カバー部材との間に、前記本体部の貫通孔を塞ぐように、前記カートリッジを収容する収容空間が形成されている。
【0006】
この構成によれば、本体部とカバー部材との間に、カートリッジが収容可能な収容空間を形成している。そのため、収容されたカートリッジは、本体部とカバー部材とで保護されるため、カートリッジが、空気の濾過以外で汚れたり、損傷するのを防止することができる。
【0007】
上記マスクにおいて、前記本体部は、当該本体部の前記貫通孔の内周に沿って形成される、支持面を備えることができ、前記カートリッジの周縁部が、前記本体部の支持面と前記カバー部材によって挟持されるように構成することができる。
【0008】
この構成によれば、カートリッジの周縁部をカバー部材と本体部の支持面との間で挟持するように構成されているため、カートリッジを強固に本体部に取り付けることができる。したがって、カートリッジと本体部の貫通孔との間に隙間が形成されるのを抑制することができ、装着者の呼気や吸気がフィルター以外から漏れるのを防止することができる。
【0009】
上記マスクにおいて、前記カバー部材は、前記通気孔が形成された前壁部と、前記前壁部の周縁に連結され、前記本体部の第1開口部の周縁に着脱自在に固定される連結部と、を備えることができ、前記前壁部と前記フィルタとの間に隙間を形成することができる。
【0010】
この構成によれば、取り付けられたカートリッジとカバー部材の前壁部との間に隙間が形成されているため、例えば、前壁部の通気孔から液体などの汚物が侵入したとしても、隙間によってカートリッジに達するのを抑制することができる。
【0011】
上記マスクにおいて、前記カバー部材は、前記本体部の第1開口部の周縁に対しネジ止めによって固定することができる。
【0012】
この構成によれば、カバー部材の取り付けが簡単である。また、例えば、カートリッジの周縁部をカバー部材と本体部の支持面との間で挟持するように構成する場合、カバー部材をねじ込むことで、カートリッジの周縁を強く押圧することができるため、カートリッジをさらに支持面に対してさらに強く密着させることができる。
【0013】
上記マスクにおいて、前記接触部は、前記本体部より突出し、前記接触部の厚みを、前記本体部の厚みよりも小さくすることができる。
【0014】
この構成によれば、本体部の厚みを大きくすることで、カートリッジをしっかりと支持することができる。一方、接触部の厚みを小さくすることで、変形しやすくなるため、装着者の顔に対する負荷を軽減することができる。
【0015】
上記マスクにおいて、前記接触部は、前記第2開口部にいくにしたがって厚みが小さくなるテーパ部または楔形部を有することができる。
【0016】
接触部の第2開口部側に近い部分は、装着時に顔に接触しやすいので、厚みを小さくすることで、顔への負荷を低減することができる。一方、接触部における第1開口部側は、装着時に顔から離れた位置にあるので、厚みを大きくすることで、強度を高めることができる。
【0017】
上記マスクにおいて、前記接触部の第2開口部側の端部は、当該接触部の貫通孔の径方向内方に屈曲するように延びるように形成することができる。
【0018】
この構成によれば、装着時に、接触部を面として装着者の顔に接触させることができるため、高い圧力が顔に作用することを防止できる。
【0019】
本発明に係る他のマスクは、フィルタを有するカートリッジが着脱可能に取り付け可能なマスクであって、カートリッジが取り付けられる本体部と、前記本体部の後側に設けられ、装着者の顔に接触する接触部とを備え、前記本体部及び前記接触部は一体成形されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るマスクによれば、カートリッジが汚れたり、損傷するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るマスクの一実施形態を前方から見た斜視図である。
【
図10】
図9の接触部を後方から見た斜視図である。
【
図20】本発明に係るマスクにおけるマスク本体の他の例を示す断面図である。
【
図21】
図20のマスク本体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るマスクの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
<1.マスクの概要>
図1は、本実施形態に係るマスクを前方から見た斜視図、
図2は
図1のマスクを後方から見た斜視図、
図3は
図1の正面図、
図4は
図1の背面図、
図5は
図1の断面図である。なお、以下では、説明の便宜のため、
図4及び
図5に示す方向にしたがって、説明を行う。また、以下の記載では、本体部及び接触部の貫通孔の延びる方向を軸方向と称し、この軸方向と直交する方向を径方向と称することがある。但し、本発明はこれらの方向に限定して発明が特定されるものではない。
【0024】
図1~
図5に示すように、このマスクは、貫通孔10を有し、両端に第1開口部11及び第2開口部12をそれぞれ有する本体部1と、本体部1の第1開口部11を塞ぐように着脱自在に取り付けられるカバー部材4と、本体部1の第2開口部12の周縁に固定され、装着者の顔に接触する接触部2と、接触部2のフランジ24の後方側を保持するリング部材3と、を備えている。そして、本体部1とカバー部材4とで形成される収容空間100には、カートリッジ5が着脱自在に収容されるようになっている。以下、各部材について、詳細に説明する。
【0025】
<1-1.本体部>
図6は本体部を前方から見た斜視図、
図7は
図6の背面図、
図8は
図6の断面図である。
図6~
図8に示すように、本体部1は、前後方向に延びる貫通孔10を有し、その前後の両端に第1開口部11及び第2開口部12をそれぞれ有している。第1開口部11は円形状に形成されているが、第2開口部12は、第1開口部11よりも大きく、上端部が上方に突出した滴形状に形成されている。すなわち、
図7に示すように、第2開口部12の下端及び両側は第1開口部11と同心の円弧状に形成されているが、上端部111は上方に突出し、内縁の曲率半径が小さくなっている。そして、後述するように、この上端部側に装着者の鼻が収容されるようになっている。
【0026】
このように、第1開口部11と第2開口部12とは形状が相違するため、
図6に示すように、本体部1の側面13は、第1開口部11の周縁から第2開口部12の周縁に向かってなだらかに広がる曲面により形成されている。
【0027】
第1開口部11の内縁から後方に向かっては、軸方向の長さの短い円筒状の内壁面14が形成され、その下端部に径方向内方に延びるフランジ15が形成されている。そして、この内壁面14には、後述するように、カバー部材4を取り付けるための雌ネジ16が形成されている。なお、フランジ15の前側の面が本発明の支持面に相当する。
【0028】
一方、本体部1の側面13の第2開口部12側の端部には、径方向外方に延びる段部17と、この段部17から後方に延びる延在部18と、が設けられており、延在部18に囲まれる空間が第2開口部12を形成している。また、段部17と延在部18とで形成される断面矩形状の空間には、後述するように、接触部2の前端のフランジ24が収容されるようになっている。
【0029】
また、延在部18の外面には、前後方向に延びる貫通孔が形成された複数の挿入部19が設けられている。より詳細に説明すると、延在部18の右側に2個の挿入部19が上下方向に所定間隔をおいて形成され、延在部18の左側に2個の挿入部19が上下方向に所定間隔をおいて形成さている。すなわち、右側の2個の挿入部19と、左側の2個の挿入部19とは左右対称となるように設けられている。そして、これら挿入部19の貫通孔には、後述するように、紐30が挿入される。
【0030】
本体部1は、上述した部位を有するように、樹脂材料などで一体的に形成されている。樹脂材料としては、洗浄及び滅菌が可能で繰り返し使用に耐え得る樹脂材料が好ましく、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド合成樹脂、不飽和ポリエステル樹脂材、シリコーン樹脂材、または尿素樹脂材等を採用することができる。
【0031】
<1-2.接触部>
図9は、接触部を前方から見た斜視図、
図10は
図9の接触部を後方から見た斜視図、
図11は
図9の縦断面図、
図12は
図9の横断面図である。
図9~
図12に示すように、接触部2は、装着者の顔の表面形状に対応するように、設計されている。接触部2は、前後方向に延びる貫通孔20を有し、その前後の両端に第1開口部21及び第2開口部22をそれぞれ有している。第1開口部21の縁部には、径方向外方に延びるフランジ24が形成されており、このフランジ24は、本体部1の第2開口部12と対応する形状に形成されている。後述するように、このフランジ24は、本体部1の段部17の後面に配置される。但し、フランジ24の幅は、段部17の幅よりも狭くなっている。
【0032】
接触部2の側面23は、第1開口部21から後方に延びる第1部位231と、この第1部位231の後端から円弧状に屈曲し、径方向内方に延びる第2部位232と、を有している。そして、第2部位232の内縁によって囲まれる空間が、第2開口部22を形成している。第2部位232は、径方向内方に突出しており、この第2部位232が面として装着者の顔に接触するので、高い圧力が顔に作用することを抑制することができる。また、後述するように、接触部2は変形しやすい比較的柔らかい材料で形成されるため、装着者の顔の形状に沿って変形しやすい。このように、接触部2の形状は、装着者の顔の表面に接触するので、マスクの用途上、その機能を実現するために、重要な形状である。
【0033】
図10に示すように、第2部位232の上部における左右方向の中央部は前方に向けて窪んでいる。同様に、第2部位232の下部における左右方向の中央部は前方に向けて窪んでいる。これにより、装着時に、後述する弾性部材からなる紐30(
図21参照)の弾性復元力によって、接触部2の上部は装着者の鼻に接触し、下部は装着者の顎に接触する。鼻及び顎は頬に比べて前方に突出しており、マスクを装着した場合、高い圧力が作用しやすい。そのため、接触部2の上部及び下部を、前方に向けて窪ませることによって、鼻及び顎に高い圧力が作用することを抑制できる。
【0034】
図11に示すように、第2部位232の上部及び下部は、前側且つ径方向内方に向かって、巻き込まれるように湾曲している。このように湾曲させることによって、鼻及び顎に対応した形状となり、鼻及び顎に密着しやすくなる。
【0035】
一方、第2部位232の左部及び右部は装着者の頬に接触する。
図12に示すように、第2部位232の左部及び右部は、上部及び下部ほどに前方に巻き込まれておらず、径方向内方に向かって貫通孔の軸方向と概ね垂直な方向に延びている。そのため、装着者の頬には、第2部位232の後面が概ね全体に亘って接触するので、第2部位232の後縁が接触する場合に比べて、頬に作用する圧力を低減させることができ、また第2部位232は頬に密着しやすくなる。
【0036】
図11及び
図12に示すように、接触部2の第1部位231側の厚みをd1とし、第2部位232の先端側(換言すれば接触部2の後端側)の厚みをd2とした場合、d2<d1としている。すなわち、接触部2は、後端側の厚みが前端側(第1開口部21側)の厚みよりも小さいテーパ形又はくさび形をなしており、後端側に向かうにしたがって徐々に小さくなる。すなわち、接触部2は、テーパ部又は楔部を有する。接触部2の後端側に近い部分(例えば、第2部位232)は、装着時に顔に接触しやすいので、厚みを小さくし、顔への負荷を低減させる。一方、接触部2における第1開口部21側は、装着時に顔から離れた位置にあるので、厚みを大きくし、強度を高める。上述した厚みd1,d2は、接触部2を形成する材料にもよるが、例えば、d2<d1になる限りにおいて、d1を1.0~8.0mm、d2を0.5~4.0mmとすることができ、より好ましくはd1を1.5~6.0mm、d2を0.5mm~3.0mmとすることができる。なお、接触部2は、全体的にテーパ形又はくさび形に形成されていてもよいし、例えば、第2部位232のみなど、部分的にテーパ形又はくさび形に形成されていてもよい。また、接触部2の厚みは、少なくとも一部が本体部1の厚みよりも小さくすることができる。例えば、接触部2の厚みを、全体に亘って本体部1よりも小さくしてもよいし、第2部位232の厚みのみ本体部1より小さくすることもできる。
【0037】
接触部2を構成する材料は特には限定されないが、柔軟性を有し、装着時に容易に変形する材料であることが好ましい。一方、本体部1は、カートリッジを支持したり、カバー部材4がネジ止めされるため、変形しがたい材料であることが好ましいが、接触部2は、本体部1よりも硬度の低い材料であることが好ましい。そのような材料としては、例えばポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーンゴム等のシリコーン樹脂材、フッ素樹脂、エラストマー等を採用することができる。
【0038】
<1-3.本体部と接触部との連結構造>
【0039】
リング部材3は、平面視の形状が接触部2のフランジ24とほぼ同じ形状の薄い板状の部材である。但し、リング部材3の幅は、フランジ24よりもやや広く、フランジ24よりもやや径方向外方に延びている。また、リング部材3は、本体部1と同じ材料で一体的に成形されており、本体部1の段部17とリング部材3との間に接触部2のフランジ24が挟持されている。
【0040】
<1-4.カバー部材>
図13はカバー部材の斜視図、
図14はカバー部材の背面図である。
図13及び
図14に示すように、カバー部材4は、円板状の前壁部41と、この前壁部41の周縁から後方に延びる円筒状の側壁部42と、側壁部42の後端から後方へ延びる円筒状の連結部43と、を備えている。前壁部41には、その中央付近に円形の部位が形成されており、その周囲には放射状に配置された複数の通気孔411が形成されている。各通気孔411は、概ね円弧状に形成されており、通気孔411が円弧状に形成されることで、使用者がカートリッジに触れにくく、また適切に通気を行うことができる。例えば、通気孔の幅411は、特には限定されないが、例えば、0.5~5mm程度にすることができる。側壁部42は、後方にいくにしたがって径が大きくなるように形成されており、その外面には、周方向に並ぶ略矩形状の凹部421が形成されている。これら凹部421は、手でカバー部材4を回転させるときの滑り止めの役割を果たす指載置部として機能する。また、連結部43の外径は、側壁部42の後端の外径よりも小さく形成されており、連結部43の外周面には、雄ネジ431が形成されている。この雄ネジ431は、本体部1の雌ネジ16に螺合する。
【0041】
<1-5.カートリッジ>
図15はカートリッジの斜視図、
図16はカートリッジの断面図である。
図15及び
図16に示すように、カートリッジ5は、矩形状に形成されたフィルタ51と、このフィルタ51の外周に連結され、外形が円板状に形成された固定部52と、を備えている。フィルタ51は、例えば、N95規格相当のフィルタ、即ち、空力学的質量径0.3μmの粒子の捕集効率試験で95%以上捕集することができるフィルタとすることができる。なお、フィルタ51はN95規格相当のフィルタに限定されず、N99、N100、R95、R99、R100、P95、P99又はP100規格相当のフィルタなどを使用してもよい。フィルタ51としては、例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタを用いることができるが、これに限られない。
【0042】
固定部52は、例えば、樹脂材料などで形成され、その外径が、本体部1のフランジ15の外径とほぼ同じになっている。したがって、カートリッジ5を本体部1のフランジ15に載せると、固定部52の周縁がフランジ15上に配置され、前後方向に延びる本体部1の貫通孔10を塞ぐことができる。
【0043】
<2.マスクの組立方法>
次に、上記のように形成されたマスクの組立方法について、
図17及び
図18も参照しつつ説明する。まず、
図17及び
図18に示すように、カートリッジ5を本体部1のフランジ15に載せる。これに続いて、カバー部材4を本体部1に取り付ける。このとき、
図5に示すように、カバー部材4の連結部43の後端部は、カートリッジ5の固定部52上に配置され、この固定部52を挟んで、連結部43の後端部がフランジ15と対向する位置に配置される。したがって、カバー部材4を本体部1に対してねじ込むと、連結部43がカートリッジ5の固定部52をフランジ15に押しつける。これにより、カートリッジ5の固定部52がフランジ15に気密に密着し、本体部1の貫通孔10がカートリッジ5により塞がれる。この状態で、カートリッジ5とカバー部材4の前壁部41との間には隙間が形成される。なお、カートリッジ5を交換する際には、カバー部材4を本体部1から取り外し、これに続いて、カートリッジ5を交換すればよい。
【0044】
<3.マスクの使用方法>
使用に際しては、
図19に示すように、挿入部19の貫通孔に、弾性力を有する紐30を挿入する。されている。上側の二つの挿入部19それぞれから延びる紐30の端部にアジャスター31が取り付けられている。また下側の二つの挿入部19それぞれから延びる紐30の端部にもアジャスター31が取り付けられている。紐30及びアジャスター31によって、二つの環状部が形成され、これら二つの環状部の内側に、装着者の頭部が挿入される。装着者はアジャスター31を操作し、環状部の大きさを調整することができる。
【0045】
また、使用後には、カバー部材4、及びマスク本体を洗浄および滅菌することが好ましい。滅菌の方法としては、煮沸消毒、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)、酸化エチレンガス滅菌、放射線滅菌(ガンマ線滅菌)、紫外線殺菌、ホルムアルデヒド等の消毒薬による滅菌が挙げられるが、作業の容易性と滅菌の確実性を兼ね備える観点では、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)がより好ましい。
【0046】
<4.特徴>
以上のように構成されたマスクは、以下の特徴を有する。
(1)カートリッジ5によって本体部1の貫通孔10が塞がれるため、
図5の矢印に示すように、装着者の口及び鼻は、カートリッジ5のフィルタ51及びカバー部材4の通気孔411を通じて、外部と連通する。したがって、装着者の吸気のみならず、装着者の呼気もフィルタ51により濾過される。そのため、外部からのウイルス等の粒子を装着者が吸引するのを防止することができる。その一方で、例えば、装着者がウイルスに感染していたとしても、呼気に含まれるウイルス等をフィルタ51によって捕捉することができる。したがって、ウイルスの感染が広がるのを防止することができる。
【0047】
(2)カートリッジ5がカバー部材4によって覆われているため、例えば、装着者が作業中に、血液などの液体や異物がカバー部材4に付着したとしても、これがカートリッジ5まで達するのを防止することができる。したがって、作業中に微粒子以外の異物などの付着によってフィルタ51の性能が低下するのを防止することができる。特に、収容空間100に収容されたカートリッジ5とカバー部材4の前壁部41との間には隙間が形成されているため、カートリッジ5への異物の付着をさらに防止することができる。また、外力によってカートリッジが損傷するのを防止することができる。
【0048】
(3)カバー部材4をねじ込むことで、カートリッジ5の固定部52を本体部1のフランジ15に押しつけることができるため、カートリッジ5を本体部1に対して強固に密着することができる。したがって、呼気や吸気がフィルタ51以外を通過するのを防止することができる。
【0049】
(4)上記のように接触部2を形成しているため、装着者の顔に密着しやすくすることができ、呼気や吸気が装着者の顔と接触部2との間から漏れるのを防止することができる。
【0050】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜、組み合わせることができる。
【0051】
(1)カートリッジ5の構造は特には限定されず、フィルタを有し、本体部1とカバー部材4とで形成される収容空間100に収容されて本体部1の貫通孔10を塞ぐように構成されていればよい。カバー部材4の前壁部41とカートリッジ5との間に隙間が形成されることが好ましいが、両者が接触していてもよい。したがって、フィルタ51の構成も特には限定されず、要求に応じた粒子を捕捉できるものを用いればよい。例えば、フィルタを複数層に積層してもよい。
【0052】
また、密度の異なる複数のフィルタを使用して、複数種類のカートリッジを作製してもよい。この場合、装着者は、使用環境に対応した適切なフィルタ密度を有するカートリッジを選択することができる。またフィルタの密度に応じて、カートリッジにおける固定部の色が異なっていてもよい。装着者が、使用環境に対応していないフィルタ密度を有するカートリッジを選択することを抑制するためである。
【0053】
(2)本体部1と接触部2との固定方法は、上記実施形態以外でもよい。したがって、本体部1と別体のリング部材3とを接着剤を用いて固定し、これらの間に接触部2のフランジ24を挟んでもよい。また、リング部材3を用いず、本体部1と接触部2とを接着剤や溶着によって直接固定することもできる。
【0054】
あるいは、
図20に示すように、本体部1と接触部2とを同じ樹脂材料で一体的に成形することもできる。
図2022の例では、本体部1と接触部2との連結部分の外周面に径方向外方に突出する補強リブ28を形成し、連結部分の厚みを大きくしている。但し、補強リブは必ずしも必要ではない。
【0055】
この場合の、マスク本体の製造方法について、
図21を参照しつつ説明する。
図23は、マスク本体の製造工程を示すフローチャートである。まず、顔の表面形状を元にしたマスク本体の3次元データを作成する(S1)。この顔の表面形状は、マスクを使用する利用者の個々の顔面を測量すると好ましいが、既存のデータを使用してもよい。次に、光造形法によって、マスク本体を製造するための型を作製する(S2)。このとき、上記実施形態において示したマスク本体の形状を特徴とする型が作製される。
【0056】
次に、作製された型に、原料の樹脂材が注入される(S3)。樹脂材は、液状を硬化させて成型できるものであれば限定されないが、洗浄および滅菌が可能で、繰り返し使用に耐えうる樹脂材が好ましい。例えばポリウレタン樹脂材を用いることができる。なおポリウレタン樹脂材に限定されず、不飽和ポリエステル樹脂材、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素樹脂、エラストマー、シリコーン樹脂材、または尿素樹脂材など、他の樹脂材を使用してもよい。次に、型に注入された樹脂剤を硬化させる(S4)。樹脂材に応じた硬化方法によって、硬化される。例えば、樹脂材に熱を与えて硬化させる。次に、型から、硬化された樹脂材を取り出し(S5)、余剰部分を除去し(S6)、マスク本体が製造される。
【0057】
異なる寸法のマスク本体を作製する場合、異なる寸法に対応した複数の型を作製すればよい。この場合、寸法毎に異なる色を付し、各寸法を容易に区別できるようにしてもよい。
【0058】
以上のマスク本体の製造方法にあっては、本体部1及び接触部2は、樹脂材によって一体成形される。そのため、本体部1及び接触部2の間に隙間が生じることを防止することができる。
【0059】
この製造方法にあっては、光造形法によりマスク本体を製造するための型を製造しているが、この型の製造方法は例示であって、光造形法以外の型の製造方法を用いてもよい。例えば、機械加工や電鋳等によることができる。この型は、金型であってもよいし、樹脂型であってもよい。
【0060】
(3)上記実施形態の接触部2の形状は一例であり、装着者の顔に密着できるのであれば、厚みを含めた形状は特には限定されない。また、本体部1の形状も特には限定されず、貫通孔10を有する形状であれば、外形は特には限定されない。
【0061】
(4)上記実施形態では、カバー部材4を本体部1に対してネジ止めしているが、これに限定されるものではなく、着脱自在に取り付けることができるのであれば、スナップ式などの他の固定方法を採用することができる。また、カバー部材4の形状も特には限定されない。したがって、本体部1とカバー部材4とで形成されるカートリッジ5の収容空間100の正面視の形状も円形以外でもよく、これに合わせてカートリッジ5の外形も調整すればよい。
【0062】
(5)上記実施形態では、カバー部材4によってカートリッジ5を本体部1のフランジ15に押しつけ、本体部1の貫通孔10を気密に塞いでいるが、カバー部材4以外の手段でカートリッジ5を本体部1に対して気密に取り付けることもできる。また、本発明の支持面は、フランジ15以外で構成することもでき、カートリッジ5の周縁部が接するように構成されていればよい。また、カバー部材4に設けられる通気孔411の形状は特には限定されず、上記実施形態で示したもの以外であっても、呼気及び吸気が通過するように構成されていればよい。また、紐30を通す挿入部の形状、数、位置についても特には限定されず、使用する紐の種類や用途によって適宜変更すればよい。あるいは、紐30をマスク本体に予め固定していてもよい。
【0063】
上記実施形態では、カバー部材4を着脱自在にしているが、本体部1がカバー部材4と着脱不可能に固定されているようであってもよい。すなわち、一旦、カバー部材4が取り付けられれば、取り外し不能な構成とすることもできる。同様に、カートリッジも、着脱自在でなくてもよく、一旦、マスクに取り付けられれば、取り外し不能な構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 本体部
10 貫通孔
11 第1開口部
12 第2開口部
15 フランジ(支持面)
2 接触部
20 貫通孔
21 第1開口部
22 第2開口部
4 カバー部材
41 前壁部
411 通気孔
5 カートリッジ