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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099607
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】O-置換セリン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 269/04 20060101AFI20230706BHJP
   C07D 333/16 20060101ALI20230706BHJP
   C07D 307/42 20060101ALI20230706BHJP
   C07C 271/22 20060101ALI20230706BHJP
   C07C 227/04 20060101ALI20230706BHJP
   C07C 229/22 20060101ALI20230706BHJP
   C07D 291/04 20060101ALN20230706BHJP
   C07D 291/06 20060101ALN20230706BHJP
【FI】
C07C269/04
C07D333/16
C07D307/42
C07C271/22
C07C227/04
C07C229/22
C07D291/04
C07D291/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077853
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2020555577の分割
【原出願日】2019-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2018209602
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】石澤 武宣
(57)【要約】
【課題】医薬中間体として有用なO-置換セリン誘導体およびその製造に有用なスルファミダートを、優れた位置選択性、化学収率および光学純度で製造する方法を提供する。
【解決手段】アミノ酸誘導体を環化試薬と反応させることで環状スルファミダートを製造できることを見出した。また環状スルファミダートをアルコールと反応させることで、O-置換セリン誘導体を製造できることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品中間体として有用なO-置換セリン誘導体とその製造に有用な環状スルファミダートおよびそれらの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク―タンパク相互作用の阻害に代表される、tough targetへのアクセスは、低分子化合物と比較して、中分子化合物(分子量500~2000)の方が優れている可能性がある。また、抗体と比較して、中分子化合物は細胞内に移行できる点でも優れている可能性がある。生理活性をもつ中分子化合物の中でもペプチド医薬品はすでに40種類以上が上市されている価値の高い分子種である(非特許文献1)。ペプチド医薬品の代表例として、シクロスポリンAやポリミキシンBが挙げられる。これらの構造に着目してみると、いくつかの非天然アミノ酸を含むペプチド化合物であることがわかる。非天然アミノ酸とは、天然でmRNA上にコードされていないアミノ酸のことで、天然由来のシクロスポリンAやポリミキシンBに非天然アミノ酸が含まれていることに加え、これら非天然の構造部位が生体内の作用部位と相互作用をして薬理活性を発現することは非常に興味深い。非天然のアミノ酸が生体内の作用部位と相互作用する例として、ラコサミドのO-置換セリン部位とナトリウムチャネルとの相互作用の研究(非特許文献2)が知られている。
【0003】
O-置換セリン誘導体を製造する方法のうち、O-アルキル置換セリン誘導体を製造する方法として、以下の方法が知られている。
1.Williamsonエーテル合成法を利用して塩基存在下でセリンとアルキルハライドから製造する方法、あるいはその改良法(非特許文献3)。
2.酸触媒存在下でセリンとトリクロロアセトイミダートから製造する、SchmidtGlycosylationを応用した合成法(非特許文献4)。
3.パラジウム触媒存在下でセリンと炭酸アリルエステルから製造する合成法(非特許文献5)。
これらは、セリンにアルキル基を直接的に導入する方法である。
4.セリンから誘導したアジリジン化合物をルイス酸もしくはブレンステッド酸触媒の存在下でアルコールと反応する合成法(特許文献1、2)。
5.セリンから誘導した環状スルファミダートを塩基の存在下でアルコールと反応させる方法(非特許文献6)。
これらはセリンから誘導した中間体を介してO-アルキル置換セリン誘導体を製造する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57-159747号公報
【特許文献2】国際公開第2010/053050号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Future Med. Chem. 2009, 1,1289-1310
【非特許文献2】J. Med. Chem., 2010, 53(15),5716-5726
【非特許文献3】Tetrahedron Letters, 2012, 53,3225-3229
【非特許文献4】Bioorganic & MedicinalChemistry Letters, 1992, 2, 579-582
【非特許文献5】Journal of the American ChemicalSociety, 2014, 136, 12469-12478
【非特許文献6】Organic and BiomolecularChemistry, 2014, 12, 6507-6515
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載のセリンから誘導したアジリジンを用いる方法では、反応点の位置選択性の課題を有する。
非特許文献2に記載のセリンから誘導したアジリジンを用いる方法では、反応点の位置選択性の課題を有する。
非特許文献3に記載の塩基存在下での方法では、セリンの水酸基が脱離することが知られており、反応性の高いベンジルエーテルの製造に限定される。
非特許文献4に記載のトリクロロアセトイミダートから製造する方法では、製造できるO-置換セリン誘導体の酸素上の置換基がアリル基に限定される。
非特許文献5に記載のアリルエーテルのカップリング反応による方法では、製造できるO-置換セリン誘導体の酸素上の置換基がアリル基に限定される。
非特許文献6に記載のセリンから誘導したスルファミダートを用いる方法では、高収率で製造可能なO-置換セリン誘導体は、もっぱらフェノール等の芳香環で置換されたO-置換セリンに限られていて、アルキルアルコールと反応させることで得られるO-アルキル置換セリン誘導体の合成はわずか16%の収率で得られる一例が報告されているのみである。すなわち、環状スルファミダートとアルコールを作用させて満足できる位置選択性と収率と光学純度を達成したO-アルキル置換セリン誘導体の合成例は極めて限定的と言える。
【0007】
本発明は、満足できる位置選択性、化学収率および光学純度を伴って、医薬中間体として有用なO-置換セリン誘導体およびその製造に有用なスルファミダートを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、アミノ酸誘導体から誘導した環状スルファミダートとアルコールとの反応を鋭意検討した結果、以下のスキーム1またはスキーム2を用いる、光学純度を保持しながら優れた位置選択性と化学収率を有するO-置換セリン誘導体(I)の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【化1】
【0009】
本発明は、非限定の具体的な一態様において以下を包含する。
〔1〕以下の工程を含む、一般式(I):
【化2】

[式中、
は置換基を有していてもよいC-Cアルキル、置換基を有していてもよいC-Cシクロアルキル、置換基を有していてもよいアラルキル、または置換基を有していてもよいヘテロアラルキルであり、
はC-Cアルキルまたはアミノ基の保護基であり、
はカルボキシル基の保護基であり、
は単結合または-CH-であり、
は単結合または-CH-であり、
nは1または2であり、
但し、Lが-CH-である場合、Lは単結合であり、Lが-CH-である場合、Lは単結合である。]
で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法:
工程A:環化試薬と、一般式(V):
【化3】

[式中、R、R、L、L2、及びnは上記と同義である。]
で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物とを反応させて、一般式(IV):
【化4】

[式中、R、R、L、L2、及びnは上記と同義である。]
で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程、
工程B:一般式(IV)で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を酸化剤と反応させて、一般式(II):
【化5】

[式中、R、R、L、L2、及びnは上記と同義である。]
で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程、および
工程C:一般式(II)で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物をROH(式中、Rは上記と同義である)と反応させて、一般式(I)で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程。
〔2〕以下の工程を含む、一般式(I):
【化6】

[式中、
は置換基を有していてもよいC-Cアルキル、置換基を有していてもよいC-Cシクロアルキル、置換基を有していてもよいアラルキル、または置換基を有していてもよいヘテロアラルキルであり、
は水素であり、
はカルボキシル基の保護基であり、
は単結合または-CH-であり、
は単結合または-CH-であり、
nは1または2であり、
但し、Lが-CH-である場合、Lは単結合であり、Lが-CH-である場合、Lは単結合である。]
で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を製造する方法:
工程A:環化試薬と、一般式(V’):
【化7】

[式中、R2’はアミノ基の保護基であり、R、L、L2、及びnは上記と同義である。]
で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物とを反応させて、一般式(IV’):
【化8】

[式中、R2’、R、L、L2、及びnは上記と同義である。]
で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程、
工程B:一般式(IV’)で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を酸化剤と反応させて、一般式(II’):
【化9】

[式中、R2’、R、L、L2、及びnは上記と同義である。]
で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程、および
工程C:一般式(II’)で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物をROH(式中、Rは上記と同義である)と反応させて、前記一般式(I)で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程。
〔3〕一般式(I)で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物のRで表されるカルボキシル基の保護基を脱保護して、一般式(I’):
【化10】

[式中、R、R、L、L2、及びnはそれぞれ〔1〕または〔2〕と同義である。]
で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程(工程D)をさらに含む、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕一般式(I’)で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物のアミノ基にRで表される基を導入して、一般式(I’’):
【化11】

[式中、R、R、L、L2、及びnはそれぞれ〔1〕または〔2〕と同義であり、Rはアミノ基の保護基またはC-Cアルキルである。]
で表される化合物、その化学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を得る工程(工程E)をさらに含む、〔3〕に記載の方法。
〔5〕Rが、ハロゲン、ハロゲンで置換されていてもよいアリール、または水酸基から独立して選択される1つまたは複数の置換基を有していてもよい、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アラルキル、またはヘテロアラルキルであり、
が、Boc基、Fmoc基、Cbz基またはAlloc基から選択され、
が、ベンジルまたはtert-Buである、
〔1〕、〔3〕、または〔4〕に記載の方法。
〔6〕Rが、ハロゲン、ハロゲンで置換されていてもよいアリール、または水酸基から独立して選択される1つまたは複数の置換基を有していてもよい、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アラルキル、またはヘテロアラルキルであり、
2’が、Boc基、Fmoc基、Cbz基、またはAlloc基から選択され、
が、ベンジル、またはtert-Buである、
〔2〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕Rが、Boc基、Fmoc基、Cbz基、Alloc基またはメチルから選択される、〔4〕に記載の方法。
〔8〕工程Aで用いられる環化試薬が、塩化チオニルである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕工程Bで用いられる酸化剤が、過ヨウ素酸塩とルテニウム触媒の組み合わせである、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕一般式(IV)で表される化合物、その化学的に許容される塩、もしくはそれらの溶媒和物、または一般式(IV’)で表される化合物、その化学的に許容される塩、もしくはそれらの溶媒和物に対して、1.5~5当量の過ヨウ素酸塩、および0.01~0.2当量のルテニウム触媒が用いられる、〔9〕の方法。
〔11〕工程Bが、アセトニトリルと水の混合溶媒中で行われる、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕工程Cが、酸性塩の存在下で行われる、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕酸性塩がNaHPO、KHPOまたはCsHPOである、〔12〕に記載の方法
〔14〕一般式(II)で表される化合物、その化学的に許容される塩、もしくはそれらの溶媒和物、または一般式(II’)で表される化合物、その化学的に許容される塩、もしくはそれらの溶媒和物に対して、2~5当量のNaHPO、KHPOまたはCsHPOが用いられる、〔13〕に記載の方法。
〔15〕工程Cが、2、2、2-トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、または2-メチルテトラヒドロフラン中で行われる、〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕工程Cが、-20℃~当該工程で用いられる溶媒の沸点付近の温度で行われる、〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の方法。
〔17〕工程Cが、反応混合物を有機溶媒で抽出する工程をさらに含み、その抽出液が濃縮乾固されずに工程Dで用いられる、〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の方法。
〔18〕工程Dが、Pd触媒の存在下で行われる、〔3〕~〔17〕のいずれかに記載の方法。
〔19〕工程Dが、水素ガス、ギ酸、またはギ酸アンモニウムの存在下で行われる、〔18〕の方法。
〔20〕工程Aが、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、または酢酸ブチル中で行われ、かつ一般式(V)で表される化合物、その化学的に許容される塩、もしくはそれらの溶媒和物、または一般式(V’)で表される化合物、その化学的に許容される塩、もしくはそれらの溶媒和物に対して、1.5~5当量の塩化チオニルが用いられる、〔1〕~〔19〕のいずれかに記載の方法。
〔21〕工程Aが、-30℃~0℃の温度で行われる、〔20〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ペプチド医薬品の探索、および/または医薬品の原薬供給に有用な非天然アミノ酸を高い位置選択性、化学収率、および光学純度を伴って提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において使用される略語を以下に記す。
AcOEt:酢酸エチル
Alloc基:アリルオキシカルボニル基
t-Bu基:tert-ブチル基
Boc基:tert-ブトキシカルボニル基
Cbz基:ベンジルオキシカルボニル基
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMA:N,N-ジメチルアセトアミド
DME:1,2-ジメトキシエタン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EtOH:エタノール
Fmoc基:9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基
MeCN:アセトニトリル
NMP:N-メチルピロリドン
TEA:トリエチルアミン
TFE:2,2,2-トリフルオロエタノール
THF:テトラヒドロフラン
【0012】
本明細書において「アルキル」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基であり、骨格中にヘテロ原子(炭素及び水素原子以外の原子をいう。)または不飽和の炭素-炭素結合を含有せず、水素及び炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素基構造の部分集合を有する。該アルキル基は直鎖状、又は分枝鎖状のものを含む。アルキル基としては、炭素原子数1~20(C-C20、以下「C-C」とは炭素原子数がp~q個であることを意味する。)のアルキル基であり、好ましくはC-Cアルキル基が挙げられる。アルキルとして具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、tert-ブチル基、sec-ブチル基などが挙げられる。
【0013】
本明細書において「シクロアルキル」とは、飽和または部分的に飽和した環状の1価の脂肪族炭化水素基を意味し、単環、ビシクロ環、スピロ環を含む。好ましくはC-Cシクロアルキルが挙げられる。シクロアルキル基は、部分的に不飽和であってもよい。シクロアルキルとしては具体的には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0014】
本明細書において「アリール」とは、1価の芳香族炭化水素環を意味し、好ましくはC-C10アリールが挙げられる。アリールとしては具体的には、たとえば、フェニル、ナフチル(たとえば、1-ナフチル、2-ナフチル)などが挙げられる。
【0015】
本明細書において「ヘテロアリール」とは、環を構成する原子中(本明細書において「環内」ともいう。)に好ましくは1~4個のヘテロ原子を含有する芳香族性の環の1価の基を意味し、部分的に飽和されていてもよい。環は単環、または2個の縮合環(たとえば、ベンゼンまたは単環へテロアリールと縮合した2環式ヘテロアリール)であってもよい。環を構成する原子の数は好ましくは5~10である(5員-10員ヘテロアリール)。ヘテロアリールとしては具体的には、たとえば、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニルなどが挙げられる。
【0016】
本明細書において「アリールアルキル(アラルキル)」とは、アリールとアルキルを共に含む基であり、例えば、前記アルキルの少なくとも一つの水素原子がアリールで置換された基を意味し、好ましくは、「C-C10アリールC-Cアルキル」が挙げられる。アリールアルキルとして具体的には、たとえば、ベンジル、フェネチルなどが挙げられる。
【0017】
本明細書において「ヘテロアリールアルキル(ヘテロアラルキル)」とは、ヘテロアリールとアルキルを共に含む基であり、例えば、前記アルキルの少なくとも一つの水素原子がヘテロアリールで置換された基を意味し、好ましくは、「5員-10員ヘテロアリールC-Cアルキル」が挙げられる。ヘテロアリールアルキルとして具体的には、たとえば、ピリジルメチル、チエニルメチル、フラニルメチルなどが挙げられる。
【0018】
本明細書において「アルキレン」とは、前記「アルキル」からさらに任意の水素原子を1個除いて誘導される二価の基を意味し、アルキレンとしては好ましくはC-Cアルキレンが挙げられる。このようなアルキレンとして具体的には、たとえば、メチレン、1,2-エチレン、1,1-エチレン、1,3-プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンなどが挙げられる。
【0019】
本明細書において「リン酸塩」とは、陰イオンがリン酸イオン(PO 3-)、またはリン酸水素イオン(HPO 、またはHPO 2-)であり、陽イオンが金属イオンである塩を意味する。ここで、金属イオンはアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンから選ばれ、好ましくはアルカリ金属イオンであり、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、またはセシウムイオンである。リン酸塩は、好ましくはリン酸水素二ナトリウム無水物、リン酸水素二カリウム無水物、またはリン酸水素二セシウム無水物、およびこれらの水和物が挙げられる。
【0020】
本明細書において「酸性塩」とは、溶媒に溶解させたときに水素イオンを生じる塩を意味し、リン酸二水素ナトリウム無水物(NaHPO)、リン酸二水素カリウム無水物(KHPO)、リン酸二水素セシウム無水物(CsHPO)、リン酸水素二ナトリウム無水物、リン酸水素二カリウム無水物、リン酸水素二セシウム無水物、硫酸水素ナトリウム無水物、硫酸水素カリウム無水物、硫酸水素セシウム無水物、およびこれらの水和物が挙げられる。
【0021】
なお、後述する製造方法において、定義した基が実施方法の条件下で望まない化学的変換を受けてしまう場合、例えば、官能基の保護、脱保護等の手段を用いることにより、本発明の化合物の製造を実施することができる。ここで保護基の選択および脱着操作は、例えば、「Greene’s,“Protective Groups in Organic Synthesis″(第5版,John Wiley & Sons 2014)」に記載の方法を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜用いればよい。また、必要に応じて置換基導入等の反応工程の順序を変えることもできる。たとえば、アミノ基の保護基は、Fmoc、Boc、Cbz、またはAlloc基などが例示される。これらカーバメート基は、アミノ基をカーバメート化剤と塩基触媒の存在下で、反応させることで導入することができる。カーバメート化剤は、例えばBocO、BocOPh、FmocOSu、FmocCl、CbzCl、AllocCl等が挙げられる。塩基触媒としては例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、N-メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン等を挙げることができる。アミノ基の保護基であるカーバメート基は、塩基性条件下、酸性条件下、または加水素分解反応の条件下などで除去することができる。
【0022】
カルボキシル基の保護基は、アルキル基やベンジル基などが例示される。アルキル基やベンジル基などの保護基は、塩基性条件下または酸性条件下での加水分解反応や、遷移金属触媒存在下での加水素分解反応などにより、除去することができる。
【0023】
本発明の各式で表される化合物は、その化学的に許容される塩またはそれらの化学的に許容される溶媒和物であってよい。各式で表される化合物の化学的に許容される塩には、例えば、塩酸塩;臭化水素酸塩;ヨウ化水素酸塩;リン酸塩;ホスホン酸塩;硫酸塩;メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩;酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、サリチル酸塩などのカルボン酸塩;または、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩などが含まれる。これらの塩は、当該化合物と、医薬品の製造に使用可能である酸または塩基とを接触させることにより製造される。本発明の各式で表される化合物の化学的に許容される溶媒和物とは、溶液中で溶質分子が溶媒分子を強く引き付け、一つの分子集団をつくる現象をいい、溶媒が水であれば水和物と言う。また、本発明の化合物の溶媒和物には、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなど)、ジメチルホルムアミドなどの単独の溶媒との溶媒和物だけでなく、複数の溶媒との溶媒和物も含まれる。
【0024】
本明細書における「アミノ酸」には、天然アミノ酸、及び非天然アミノ酸(アミノ酸誘導体)が含まれる。本発明の化合物はアミノ酸、好ましくはアミノ酸誘導体であってもよい。本明細書における「天然アミノ酸」とは、Gly、Ala、Ser、Thr、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、His、Glu、Asp、Gln、Asn、Cys、Met、Lys、Arg、Proを指す。非天然アミノ酸は特に限定されないが、N-アルキルアミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、D型アミノ酸、N-置換セリン、α,α-二置換セリン、側鎖が天然アミノ酸と異なるアミノ酸、O-置換セリンなどが例示される。アミノ酸の主鎖に結合している置換基(アミノ酸の側鎖という)の選択は特に制限を設けないが、水素原子の他にも例えばアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、またはシクロアルキル基などから自由に選択され、これらの基の中のアミノ酸の主鎖に直結していない1または2個のメチレン基は酸素原子、窒素原子、カルボニル基(-CO-)、またはスルホニル基(-SO-)からなる群から選ばれる原子または基で置換されていてもよく、それぞれは任意の置換基で置換されていてもよく、それら置換基も制限されない。例えば、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、シクロアルキル基、またはアルコキシアルキル基(例えば、メトキシメチル基など)などが例示される。また、本明細書におけるアミノ酸は、同一分子内にカルボキシ基とアミノ基を有する化合物であってよい。本明細書におけるアミノ酸としては、任意の立体配置が許容される。
【0025】
アミノ酸の主鎖アミノ基は、非置換(NH基)でもよく、置換されていてもよい。アミノ酸の主鎖カルボキシル基は、非置換(COH基)でもよく、置換されていてもよい。本明細書における「アミノ酸」にはそれぞれに対応する全ての同位体を含む。「アミノ酸」の同位体は、少なくとも1つの原子が、原子番号(陽子数)が同じで、質量数(陽子と中性子の数の和)が異なる原子で置換されたものである。本明細書における「アミノ酸」に含まれる同位体の例としては、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子などがあり、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、17O、18O、32P、35S、18F、36Cl等が含まれる。
【0026】
本明細書において「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを意味する。
【0027】
本明細書において、ハロゲン原子が芳香族炭素環、芳香族ヘテロ環などの置換基となる場合、好ましいハロゲン原子として、フッ素原子または塩素原子が挙げられる。具体的には、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、5-フルオロ-2-ピリジル基、または5-フルオロ-3-ピリジル基などが挙げられる。
【0028】
本明細書においてハロゲン原子がアルキル基、またはアルコキシ基の置換基となる場合、好ましいハロゲン原子として、フッ素原子が挙げられる。具体的には、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基,ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基,ペンタフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基などが挙げられる。
【0029】
本明細書において、「ヘテロ原子を環内に有する」とは、環を構成する原子中にヘテロ原子を含有することを意味し、そのような基としては、ピリジル基またはチエニル基などのヘテロアリール基、ピペリジル基、モルホリノ基などが例示される。また、前記ヘテロ原子が酸素原子の場合に、「環内に酸素原子を有する」などと表記される。
【0030】
本明細書において、「酸化剤」は環状スルファミダイトの環内硫黄原子をスルホキシドからスルフォンへと酸化することで環状スルファミダートを得る反応に用いられ、過酸化水素、有機過酸化物、過硫酸塩、ハロゲン酸化物塩、またはハロゲン酸化物塩と遷移金属触媒との組み合わせが例示される。好ましくは、3-クロロ過安息香酸、オキソン、過ヨウ素酸塩とルテニウム触媒の組み合わせが例示される。過ヨウ素酸塩は、過ヨウ素酸ナトリウムまたは過ヨウ素酸カリウムが例示される。ルテニウム触媒は、三塩化ルテニウム無水物または三塩化ルテニウム水和物が挙げられる。
【0031】
本発明の一態様は、ペプチド医薬品の探索に有用な非天然アミノ酸を提供することである。また、本発明の別の態様は、医薬品の原薬供給のための高品質な非天然アミノ酸の製造法を提供することである。
【0032】
(一般的製造方法)
次に本発明の化合物の一般的な製造方法について説明する。
ある局面において、式(I)で示される化合物は、例えば、以下に示す工程C(付加開環反応)を含む製造方法1により製造することができる。
製造方法1:
【化12】
【0033】
式中のRは、置換基を有していてもよいC-Cアルキル、置換基を有していてもよいC-Cシクロアルキル、置換基を有していてもよいアラルキル、または置換基を有していてもよいヘテロアラルキルである。Rとして好ましくは、ハロゲン、アリール(該アリールはハロゲンなどによって置換されていてもよい)、または水酸基から独立して選択される1つまたは複数の置換基を有していてもよい、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アラルキル、またはヘテロアラルキルである。Rとして、具体的には、例えば、メチル、エチル、i-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、i-ペンチル、3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル、シクロプロピル、ベンジル、フルオロベンジル、チエニルメチル、フラニルメチルなどが挙げられる。
【0034】
式中のRは、C-Cアルキルまたはアミノ基の保護基である。このようなRには、例えば、メチル、エチル、ベンジル、Fmoc、Boc、Cbz、またはAlloc基等が含まれる。
【0035】
式中のRは、カルボキシル基の保護基である。このようなRには、例えば、t-ブチルなどのアルキルや、トリチル、クミル、アリル、ベンジル等が含まれる。
【0036】
式中のLは単結合または-CH-であり、Lは単結合または-CH-である。ここで、Lが-CH-である場合、Lは単結合であり、Lが-CH-である場合、Lは単結合である。すなわち、LとLの組み合わせとして、具体的には、(i) L=単結合、L=単結合、(ii)L=-CH-、L=単結合、(iii) L=単結合、L=-CH-の3通りが挙げられる。
【0037】
式中のnは、メチレン基の数を表し、nは1又は2である。
【0038】
製造方法1の工程C(付加開環反応)は、環状スルファミダート誘導体(II)にアルコール誘導体(III)を求核置換反応させることにより、Rを導入して、O-置換セリン誘導体(I)を製造する工程である。この工程は、溶解補助溶媒の存在または非存在下、酸性塩の存在または非存在下、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは0℃~180℃の温度で、反応混合物を1時間~48時間攪拌することで行うことができる。
【0039】
-OHで表されるアルコール誘導体(III)としては、先に定義されたRを有する任意のアルコール誘導体を用いることができる。このようなアルコール誘導体の非限定的な例として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、3-メチルブタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1,2-ジオール、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアルコール、2-ヒドロキシプロピルアルコール、2-メチルプロパン-1,2-ジオール、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチルアルコール、シクロプロピルアルコール、ベンジルアルコール、3-フルオロベンジルアルコール、2-チオフェンメタノール、2-フルフリルアルコールなどが挙げられる。
【0040】
溶解補助溶媒としては、例えば、2,2,2-トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、メチル第三ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエータエル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、トルエン、ベンゾトリフルオリド等のベンゼン系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができ、これらのうちでは2、2、2-トリフルオロエタノールまたは1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、2-メチルテトラヒドロフランが好ましく用いられる。
【0041】
酸性塩としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム無水物(NaHPO)、リン酸二水素カリウム無水物(KHPO)、リン酸二水素セシウム無水物(CsHPO)、リン酸水素二ナトリウム無水物、リン酸水素二カリウム無水物、リン酸水素二セシウム無水物、硫酸水素ナトリウム無水物、硫酸水素カリウム無水物、硫酸水素セシウム無水物、およびこれらの水和物等を挙げることができ、これらのうちではNaHPO、KHPO、またはCsHPOが好ましい。また出発物質に対して2~5当量のこれらの酸性塩を用いることが好ましい。酸性塩を用いることにより、効率よく目的化合物を得ることができる。
【0042】
工程Cは、反応混合物を有機溶媒で抽出する工程をさらに含むことができ、その抽出液を濃縮乾固することなく次の工程で用いることができる。
【0043】
ある局面において、前記式(I)で示される本発明の化合物は、例えば、以下に示す工程C(付加開環反応)を含む製造方法2により製造することができる。
製造方法2:
【化13】
【0044】
式中のRは、置換基を有していてもよいC-Cアルキル、置換基を有していてもよいC-Cシクロアルキル、置換基を有していてもよいアラルキル、または置換基を有していてもよいヘテロアラルキルである。Rとして好ましくは、ハロゲン、アリール(該アリールは、ハロゲンなどによって置換されていてもよい)、または水酸基から独立して選択される1つまたは複数の置換基を有していてもよい、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、アラルキル、またはヘテロアラルキルである。Rとして、具体的には、例えば、メチル、エチル、i-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、i-ペンチル、3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル、シクロプロピル、ベンジル、フルオロベンジル、チエニルメチル、フラニルメチルなどが挙げられる。
【0045】
式中のRは、水素である。
【0046】
式中のR2’は、アミノ基の保護基である。このようなR2’には、例えば、Fmoc、Boc、Cbz、またはAlloc基等が含まれる。
【0047】
式中のRは、カルボキシル基の保護基である。このようなRには、例えば、t-ブチルなどのアルキルや、トリチル、クミル、アリル、ベンジル等が含まれる。
【0048】
式中のLは単結合または-CH-であり、Lは単結合または-CH-である。ここで、Lが-CH-である場合、Lは単結合であり、Lが-CH-である場合、Lは単結合である。すなわち、LとLの組み合わせとして、具体的には、(i) L=単結合、L=単結合、(ii)L=-CH-、L=単結合、(iii) L=単結合、L=-CH-の3通りが挙げられる。
【0049】
式中のnは、メチレン基の数を表し、nは1又は2である。
【0050】
製造方法2の工程C(付加開環反応)は、環状スルファミダート誘導体(II’)にアルコール誘導体(III)を求核置換反応させることにより、Rを導入すると共にR2’を除去して、遊離のアミノ基を有するO-置換セリン誘導体(I)を製造する工程である。この反応は、溶解補助溶媒の存在または非存在下、酸性塩の存在または非存在下、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは0℃~180℃の温度で、反応混合物を1時間~48時間攪拌することで行うことができる。
【0051】
-OHで表されるアルコール誘導体(III)としては、先に定義されたRを有する任意のアルコール誘導体を用いることができる。このようなアルコール誘導体の非限定的な例として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、3-メチルブタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1,2-ジオール、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアルコール、2-ヒドロキシプロピルアルコール、2-メチルプロパン-1,2-ジオール、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチルアルコール、シクロプロピルアルコール、ベンジルアルコール、3-フルオロベンジルアルコール、2-チオフェンメタノール、2-フルフリルアルコールなどが挙げられる。
【0052】
溶解補助溶媒は、製造方法1の工程Cの溶解補助溶媒と同じものを用いることができる。
【0053】
酸性塩は、製造方法1の工程Cの酸性塩と同じものを用いることができる。
【0054】
工程Cは、反応混合物を有機溶媒で抽出する工程をさらに含むことができ、その抽出液を濃縮乾固することなく次の工程で用いることができる。
【0055】
工程Cを経て得られた式(I)の化合物は、さらに以下の工程D(脱保護反応)に供することができ、この工程も製造方法1または製造方法2に含まれる。
【化14】
【0056】
式中のR、R、R、L、L2、およびnは、製造方法1および製造方法2のR、R、R、L、L2、およびnとそれぞれ同義である。
【0057】
この工程は、式(I)のO-置換セリン誘導体のカルボキシル基の保護基(R)を脱保護することにより、O-置換セリン誘導体(I’)を製造する工程である。この反応は、金属触媒、好ましくはPd触媒、もしくは酸触媒の存在下または非存在下、および水素源の存在下または非存在下、0℃~溶媒の沸点付近の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することによって行うことができる。
【0058】
金属触媒としては、例えば、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素に代表される、金属触媒を活性炭に代表される固体に担持させたものや、酸化パラジウム、酸化白金、ラネーニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、酢酸パラジウム等を挙げることができる。
【0059】
酸触媒としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸等を挙げることができる。
【0060】
水素源としては、水素ガス、ギ酸、またはギ酸アンモニウムなどを挙げることができる。
【0061】
反応は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メタノール、エタノールなどの溶媒中で行うことができる。
【0062】
工程Dを経て得られた式(I’)の化合物は、さらに以下の工程E(Rの導入反応)に供することができ、この工程も製造方法1または製造方法2に含まれる。
【化15】
【0063】
式中のR、R、L、L2、およびnは、製造方法1および製造方法2のR、R、L、L2、およびnとそれぞれ同義である。
【0064】
式中のRはアミノ基の保護基またはC-Cアルキルである。アミノ基の保護基として好ましくは、Boc基、Fmoc基、Cbz基またはAlloc基などが挙げられ、C-Cアルキルとして好ましくは、メチル、エチルまたはプロピルである。
【0065】
アミノ基への保護基(R)の導入は、O-置換セリン誘導体(I’)のα-アミノ基部位をカーバメート化剤と反応させることにより行うことができる。この反応は、塩基触媒の存在または非存在下、-10℃~溶媒の沸点付近の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することによって行うことができる。
【0066】
カーバメート化剤としては、例えば、BocO、BocOPh、FmocOSu、FmocCl、CbzCl、AllocCl等が挙げられる。
【0067】
塩基触媒としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、N-メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン等を挙げることができる。
【0068】
溶媒としては、アセトニトリル、DMF、またはNMPなどを好ましく用いることができる。
【0069】
またアミノ基へのアルキル基(R)の導入は、O-置換セリン誘導体(I’)のα-アミノ基部位を、溶媒中、酸触媒存在下、アルキルアルデヒドと反応させてオキサゾリジノン環を形成し、次いで、酸の存在下、トリアルキルシランを用いて開環還元する、Freidingerらの方法(米国特許第4535167号)を用いて行うことができる。これらの反応は、0℃から溶媒の沸点付近の反応温度で、1~24時間反応混合物を攪拌することによって行うことができる。
【0070】
オキサゾリジノン環の形成工程に関し、アルキルアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、2-メチルプロパナールなどが挙げられ、トリアルキルシランとしては、トリエチルシランなどが挙げられ、酸触媒としては、4-トルエンスルホン酸やカンファースルホン酸などが挙げられ、溶媒としては、トルエンやTHFなどが挙げられる。開環還元工程に関し、酸としては、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0071】
アミノ基へのアルキル基(R)の導入は、N末端が保護されたアミノ酸に、アルキル化剤を有機溶媒中、塩基の存在下で作用させてN-アルキルアミノ酸を得る、Shimokawaら(Bioorg. Med. Chem. Lett., 2009,19(1), 92-95)またはPrashadら(Org.Lett., 2003, 5(2), 125-128)の方法を用いて行うこともできる。この反応は、0℃から溶媒の沸点付近の反応温度で、1~24時間反応混合物を攪拌することによって行うことができる。
【0072】
この場合、アルキル化剤としては、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチルなどのハロゲン化アルキル、または、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸、ジブチル硫酸などのジアルキル硫酸が挙げられ、有機溶媒としては、THF、DMF、DMAまたはNMPなどが挙げられ、塩基としては、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどが挙げられる。
【0073】
ある局面において、本発明の化合物は、以下に示す製造方法3により製造することができる。この製造方法は、製造方法1の一態様であり、式(II)の化合物のRがFmocである、式(IIb)の化合物を出発物質に用い、工程Cおよび工程Dを経て、式(I’b)の化合物を得る方法である。
製造方法3:
【化16】
【0074】
式中のR、R、L、L2、およびnは、製造方法1のR、R、L、L2、およびnとそれぞれ同義である。
【0075】
工程C(付加開環反応)は、Fmoc基によって保護された環状スルファミダート誘導体(IIb)にアルコール誘導体(III)を求核置換反応させることにより、Rを導入して、Fmoc基によって保護されたO-置換セリン誘導体(Ib)を製造する工程である。この反応は、溶解補助溶媒の存在または非存在下、酸性塩の存在または非存在下、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは0℃~180℃の温度で、反応混合物を1時間~48時間攪拌することで行うことができる。
【0076】
溶解補助溶媒および酸性塩は、製造方法1の工程Cの溶解補助溶媒および酸性塩とそれぞれ同じものを用いることができる。この製造方法では、溶解補助溶媒として、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、NMPを、酸性塩としてNaHPO、KHPO、またはCsHPOを用いることが好ましい。
【0077】
工程D(脱保護反応)は、Fmoc基によって保護されたO-置換セリン誘導体(Ib)のカルボキシル基の保護基(R)を脱保護することにより、アミノ基がFmoc基によって保護されたままカルボキシル基が脱保護されたO-置換セリン誘導体(I’b)を製造する工程である。この反応は、金属触媒、好ましくはPd触媒、もしくは酸触媒の存在下または非存在下、および水素源の存在下または非存在下、0℃~溶媒の沸点付近の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することによって行うことができる。
【0078】
金属触媒、酸触媒、水素源、および溶媒は、製造方法1の工程Dの金属触媒、酸触媒、水素源、および溶媒とそれぞれ同じものを用いることができる。この製造方法では、金属触媒として例えば、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素に代表される、金属触媒を活性炭に代表される固体に担持させたものや、酸化パラジウム、酸化白金、ラネーニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、酢酸パラジウム等を、酸触媒として例えば、塩酸、臭化水素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸等を、水素源として水素ガス、ギ酸、またはギ酸アンモニウムなどを、溶媒としてメタノール、エタノールなどの短鎖アルキルアルコール、酢酸エチルや酢酸イソプロピルなどの酢酸エステル誘導体を用いることが好ましい。
【0079】
ある局面において、本発明の化合物は、以下に示す製造方法4-1により製造することができる。この製造方法は、製造方法1の一態様であり、式(II)の化合物のRがアルキルである、式(IIc)の化合物を出発物質に用い、工程Cおよび工程Dを経て、N-アルキルアミノ酸である式(I’c)の化合物を得、さらに工程Eを経て式(I’’c)の化合物を得る方法である。
製造方法4-1:
【化17】
【0080】
式中のR、R、R、L、L2、およびnは、製造方法1のR、R、R、L、L2、およびnとそれぞれ同義であり、Alkは、C-Cアルキルである。
【0081】
工程C(付加開環反応)は、アルキル基で置換された環状スルファミダート誘導体(IIc)にアルコール誘導体(III)を求核置換反応させることにより、Rを導入して、アルキル基で置換されたO-置換セリン誘導体(Ic)を製造する工程である。この反応は、溶解補助溶媒の存在または非存在下、酸性塩の存在または非存在下、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは0℃~180℃の温度で、反応混合物を1時間~48時間攪拌することで行うことができる。
【0082】
溶解補助溶媒および酸性塩は、製造方法1の工程Cの溶解補助溶媒および酸性塩とそれぞれ同じものを用いることができる。この製造方法では、溶解補助溶媒として、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、NMPを、酸性塩としてNaHPO、KHPO、またはCsHPOを用いることが好ましい。
【0083】
工程D(脱保護反応)は、アルキル基で置換されたO-置換セリン誘導体(Ic)のカルボキシル基の保護基(R)を脱保護することにより、アミノ基がアルキル基で置換されたままカルボキシル基が脱保護されたO-置換セリン誘導体(I’c)を製造する工程である。この反応は、金属触媒、好ましくはPd触媒、もしくは酸触媒の存在下または非存在下、および水素源の存在下または非存在下、0℃~溶媒の沸点付近の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することによって行うことができる。
【0084】
金属触媒、酸触媒、水素源、および溶媒は、製造方法1の工程Dの金属触媒、酸触媒、水素源、および溶媒とそれぞれ同じものを用いることができる。この製造方法では、金属触媒として例えば、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素に代表される、金属触媒を活性炭に代表される固体に担持させたものや、酸化パラジウム、酸化白金、ラネーニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、酢酸パラジウム等を、酸触媒として例えば、塩酸、臭化水素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸等を、水素源として水素ガス、ギ酸、またはギ酸アンモニウムなどを、溶媒としてメタノール、エタノールなどの短鎖アルキルアルコール、酢酸エチルや酢酸イソプロピルなどの酢酸エステル誘導体を用いることが好ましい。
【0085】
工程E(保護基の導入反応)は、アミノ基がアルキル基で置換され、カルボキシル基が脱保護されたO-置換セリン誘導体(I’c)のアミノ基をカーバメート化剤を反応させることにより、アミノ基に保護基(R)を導入して、O-ジ置換セリン誘導体(I’’c)を製造する工程である。この反応は、塩基触媒の存在または非存在下、-10℃~溶媒の沸点付近の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することによって行うことができる。
【0086】
カーバメート化剤、塩基触媒、および溶媒は、製造方法1の工程Eのカーバメート化剤、塩基触媒、および溶媒とそれぞれ同じものを用いることができる。この製造方法では、カーバメート化剤として例えばBocO、BocOPh、FmocOSu、FmocCl、CbzCl、AllocCl等を、塩基触媒として例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、N-メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン等を、溶媒として、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、NMP等を用いることが好ましい。
【0087】
ある局面において、本発明の化合物は、以下に示す製造方法4-2により製造することができる。この製造方法は、製造方法2の一態様であり、工程Cおよび工程Dを経て合成した、遊離のアミノ基を有する式(I’)の化合物を工程Eに供してN-アルキルアミノ酸である式(I’’c)の化合物を得る方法である。
製造方法4-2:
【化18】
【0088】
式中のR、R、L、L2、およびnは、製造方法2のR、R、およびL、L2、nとそれぞれ同義であり、Alkは、C-Cアルキルである。
【0089】
工程E(アルキル基の導入反応)は、先に述べたとおり、Freidingerらの方法(米国特許第4535167号)、またはShimokawaら(Bioorg. Med. Chem. Lett., 2009, 19(1), 92-95)もしくはPrashadら(Org. Lett., 2003, 5(2), 125-128)の方法を用いることによって行うことができる。
【0090】
ある局面において、本発明の化合物は、以下に示す製造方法5-1によって製造することができる。この製造方法は、製造方法1の一態様であり、式(II)の化合物のRが-C(Rである、式(IId)の化合物を出発物質に用い、工程Cを経て、式(I’d)の化合物を得る方法である。
製造方法5-1:
【化19】
【0091】
式中のR、R、L、L2、およびnは、製造方法1のR、R、L、L2、およびnとそれぞれ同義である。
【0092】
式中のRは置換基を有していてもよいC-Cアルキル基または芳香環である。このようなRには、例えば、メチル、エチル、フェニル等が含まれる。
【0093】
この工程C(付加開環反応)は、環状スルファミダート誘導体(IId)にアルコール誘導体(III)を求核置換反応させることにより、N,O-ジ置換セリン誘導体(I’d)を製造する工程である。この反応は、溶解補助溶媒の存在または非存在下、酸性塩の存在または非存在下、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは0℃~180℃の温度で、反応混合物を1時間~48時間攪拌することで行うことができる。
【0094】
溶解補助溶媒および酸性塩は、製造方法1の工程Cの溶解補助溶媒および酸性塩とそれぞれ同じものを用いることができる。この製造方法では、溶解補助溶媒として、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、NMPを、酸性塩としてNaHPO、KHPO、またはCsHPOを用いることが好ましい。
【0095】
ある局面において、本発明の化合物は、以下に示す製造方法5-2によって製造することができる。この製造方法は、製造方法2の一態様であり、式(II)の化合物のRが-C(Rである、式(II’d)の化合物を出発物質に用い、工程Cを経て、式(I’d)の化合物を得る方法である。
製造方法5-2:
【化20】
【0096】
式中のR、R、R2’、L、L2、およびnは、製造方法2のR、R、R2’、L、L2、およびnとそれぞれ同義である。
【0097】
式中のRは置換基を有していてもよいC-Cアルキル基または芳香環である。このようなRには、例えば、メチル、エチル、フェニル等が含まれる。
【0098】
この工程C(付加開環反応)は、環状スルファミダート誘導体(II’d)にアルコール誘導体(III)を求核置換反応させることにより、O-置換セリン誘導体(Id)を製造する工程である。この反応は、溶解補助溶媒の存在または非存在下、酸性塩の存在または非存在下、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは0℃~180℃の温度で、反応混合物を1時間~48時間攪拌することで行うことができる。
【0099】
溶解補助溶媒および酸性塩は、製造方法2の工程Cの溶解補助溶媒および酸性塩とそれぞれ同じものを用いることができる。この製造方法では、溶解補助溶媒として、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、NMPを、酸性塩としてNaHPO、KHPO、またはCsHPOを用いることが好ましい。
【0100】
ある局面において、本発明の化合物は、例えば、以下に示す製造方法6によって製造することができる。この製造方法は、製造方法2の一態様であり、式(II’)の化合物のR2’がBoc基であり、RがC(Rである、式(II’e)の化合物を出発物質に用い、工程C~工程Eを経て、式(I’’e)の化合物を製造する方法である。
製造方法6:
【化21】
【0101】
式中のR、R、R、L、L2、およびnは、製造方法2のR、R、R、L、L2、およびnとそれぞれ同義である。
【0102】
式中のRは置換基を有していてもよいC-Cアルキルまたは芳香環である。このようなRには、例えば、メチル、エチル、フェニル等が含まれる。
【0103】
工程C(付加開環反応)は、N-Boc環状スルファミダート誘導体(II’e)にアルコール誘導体(III)を求核置換反応させることにより、遊離のアミノ基を有するO-置換セリン誘導体(Ie)を製造する工程である。この反応は、溶解補助溶媒の存在または非存在下、酸性塩の存在または非存在下、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは0℃~180℃の温度で、反応混合物を1時間~48時間攪拌することで行うことができる。
【0104】
溶解補助溶媒および酸性塩は、製造方法2の工程Cの溶解補助溶媒および酸性塩とそれぞれ同じものを用いることができる。この製造方法では、溶解補助溶媒として、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、NMPを、酸性塩としてNaHPO、KHPO、またはCsHPOを用いることが好ましい。
【0105】
工程D(脱保護反応)は、O-置換セリン誘導体(Ie)のカルボキシル基の保護基(C(R)を脱保護することにより、遊離のアミノ基および遊離のカルボキシル基を有するO-置換セリン誘導体(I’e)を製造する工程である。この反応は、金属触媒、好ましくはPd触媒、もしくは酸触媒の存在下または非存在下、および水素源の存在下または非存在下、0℃~溶媒の沸点付近の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することによって行うことができる。
【0106】
金属触媒、酸触媒、水素源、および溶媒は、製造方法1の工程Dの金属触媒、酸触媒、水素源、および溶媒とそれぞれ同じものを用いることができる。この製造方法では、金属触媒として例えば、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素に代表される、金属触媒を活性炭に代表される固体に担持させたものや、酸化パラジウム、酸化白金、ラネーニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、酢酸パラジウム等を、酸触媒として例えば、塩酸、臭化水素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸等を、水素源として水素ガス、ギ酸、またはギ酸アンモニウムなどを、溶媒としてメタノール、エタノールなどの短鎖アルキルアルコール、酢酸エチルや酢酸イソプロピルなどの酢酸エステル誘導体を用いることが好ましい。
【0107】
工程E(保護基の導入反応)は、O-置換セリン誘導体(I’e)のアミノ基にR(すなわち、アミノ基の保護基またはアルキル基)を導入して遊離のカルボキシル基を有するO-置換セリン誘導体(I’’e)を製造する工程である。
【0108】
アミノ基の保護基を導入する場合は、O-置換セリン誘導体(I’e)のα-アミノ基部位にカーバメート化剤を反応させる。この反応は、塩基触媒の存在または非存在下、-10℃~溶媒の沸点付近の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することで行うことができる。
【0109】
カーバメート化剤、塩基触媒、および溶媒は、それぞれ製造方法2の工程Eのカーバメート化剤、塩基触媒、および溶媒と同じものを用いることができる。この製造方法では、カーバメート化剤として、例えばBocO、BocOPh、FmocOSu、FmocCl、CbzCl、AllocCl等を、塩基触媒として、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、N-メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン等を、溶媒としてアセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、NMP等を用いることが好ましい。
【0110】
アルキル基を導入する場合は、先に述べたとおり、Freidingerらの方法(米国特許第4535167号)、またはShimokawaら(Bioorg. Med. Chem. Lett., 2009, 19(1), 92-95)もしくはPrashadら(Org. Lett., 2003, 5(2), 125-128)の方法を用いることができる。
【0111】
ある局面において、製造方法1の工程Cの出発物質として用いられる本発明の環状スルファミダート誘導体(II)は、公知の化合物を出発物質に用いて以下に示す工程Aおよび工程Bを含む方法により製造することができる。
【化22】
【0112】
式中のRは、C-Cアルキル基またはアミノ基の保護基である。このようなRには、例えば、メチル、エチル、ベンジル、Fmoc、Boc、Cbz、またはAlloc基等が含まれる。
【0113】
式中のRは、カルボキシル基の保護基である。このようなRには、例えば、t-ブチルなどのアルキルや、トリチル、クミル、アリル、ベンジル等が含まれる。
【0114】
式中のLは単結合または-CH-であり、Lは単結合または-CH-である。ここで、Lが-CH-である場合、Lは単結合であり、Lが-CH-である場合、Lは単結合である。すなわち、LとLの組み合わせとしては、(i) L=単結合、L=単結合、(ii)L=-CH-、L=単結合、(iii) L=単結合、L=-CH-の3通りが挙げられる。
【0115】
式中のnはメチレン基の数を表し、nは1又は2である。
【0116】
工程Aは、水酸基を有するα-アミノ酸(V)を、環化試薬を用いて環化し、環状スルファミダイト誘導体(IV)を製造する工程である。この反応は、溶媒の存在または非存在下、塩基の存在または非存在下、-40℃~25℃の温度、好ましくは-40℃~0℃の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することにより行うことができる。
【0117】
環化試薬として具体的には塩化チオニル、塩化スルフリルなどが挙げられ、塩化チオニルが好ましく用いられる。また、出発物質に対して1.5~5当量の環化試薬を好ましく用いることができる。
【0118】
溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、アセトニトリルなどを挙げることができる。
【0119】
塩基としては、ピリジン、TEA、DIPEAなどが挙げられ、ピリジンが好ましく用いることができる。
【0120】
工程Bは、環状スルファミダイト誘導体(IV)の環内の硫黄原子を、酸化剤を用いて、スルフォンへと酸化して、環状スルファミダート誘導体(II)を製造する工程である。この反応は、溶媒の存在または非存在下、-20℃~25℃の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することにより行うことができる。
【0121】
酸化剤として具体的には、過酸化水素、有機過酸化物、過硫酸塩、ハロゲン酸化物塩、またはハロゲン酸化物塩と遷移金属触媒との組み合わせが挙げられる。これらのうちでは、3-クロロ過安息香酸、オキソン、過ヨウ素酸塩とルテニウム触媒との組み合わせが好ましく用いられ、過ヨウ素酸塩として、より具体的には、過ヨウ素酸ナトリウムまたは過ヨウ素酸カリウムを好ましく用いることができる。ルテニウム触媒として、より具体的には、三塩化ルテニウム無水物または三塩化ルテニウム水和物が好ましく用いられる。また、酸化剤として過ヨウ素酸塩とルテニウム触媒の組み合わせを用いる場合、出発物質に対して、1.5~5当量の過ヨウ素酸塩、および0.01~0.2当量のルテニウム触媒が好ましく用いられる。
【0122】
溶媒として、好ましくは、アセトニトリル、水、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、およびこれらの組み合わせが用いられ、アセトニトリルと水の混合溶媒がより好ましく用いられる。
【0123】
ある局面において、製造方法2の工程Cの出発物質として用いられる本発明の環状スルファミダート誘導体(II’)は、公知の化合物を出発物質に用いて、以下に示す工程Aおよび工程Bを含む方法により製造することができる。
【化23】
【0124】
式中のR2’は、アミノ基の保護基である。このようなR2’には、例えば、Fmoc、Boc、Cbz、またはAlloc基等が含まれる。
【0125】
式中のRは、カルボキシル基の保護基である。このようなRには、例えば、t-ブチルなどのアルキルや、トリチル、クミル、アリル、ベンジル等が含まれる。
【0126】
式中のLは単結合または-CH-であり、Lは単結合または-CH-である。ここで、Lが-CH-である場合、Lは単結合であり、Lが-CH-である場合、Lは単結合である。すなわち、LとLの組み合わせとしては、(i) L=単結合、L=単結合、(ii)L=-CH-、L=単結合、(iii) L=単結合、L=-CH-の3通りが挙げられる。
【0127】
式中のnはメチレン基の数を表し、nは1又は2である。
【0128】
工程Aは、水酸基を有するα-アミノ酸(V’)を、環化試薬を用いて環化し、環状スルファミダイト誘導体(IV’)を製造する工程である。この反応は、溶媒の存在または非存在下、塩基の存在または非存在下、-40℃~25℃の温度、好ましくは-40℃~0℃の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することにより行うことができる。
【0129】
環化試薬として具体的には塩化チオニル、塩化スルフリルなどが挙げられ、塩化チオニルが好ましく用いられる。また、出発物質に対して1.5~5当量の環化試薬を好ましく用いることができる。
【0130】
溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、アセトニトリルなどを挙げることができる。
【0131】
塩基としては、ピリジン、TEA、DIPEAなどが挙げられ、ピリジンを好ましく用いることができる。
【0132】
工程Bは、環状スルファミダイト誘導体(IV’)の環内の硫黄原子を、酸化剤を用いて、スルフォンへと酸化して、環状スルファミダート誘導体(II’)を製造する工程である。この反応は、溶媒の存在または非存在下、-20℃~25℃の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することにより行うことができる。
【0133】
酸化剤として具体的には、過酸化水素、有機過酸化物、過硫酸塩、ハロゲン酸化物塩、またはハロゲン酸化物塩と遷移金属触媒との組み合わせが挙げられる。これらのうちでは、3-クロロ過安息香酸、オキソン、過ヨウ素酸塩とルテニウム触媒との組み合わせが好ましく用いられ、過ヨウ素酸塩として、より具体的には、過ヨウ素酸ナトリウムまたは過ヨウ素酸カリウムを好ましく用いることができる。ルテニウム触媒として、より具体的には、三塩化ルテニウム無水物または三塩化ルテニウム水和物が好ましく用いられる。また、酸化剤として過ヨウ素酸塩とルテニウム触媒の組み合わせを用いる場合、出発物質に対して、1.5~5当量の過ヨウ素酸塩、および0.01~0.2当量のルテニウム触媒が好ましく用いられる。
【0134】
溶媒として、好ましくは、アセトニトリル、水、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびこれらの組み合わせが用いられ、アセトニトリルと水の混合溶媒がより好ましく用いられる。
【0135】
ある局面において、工程Cの出発物質として用いられる環状スルファミダート誘導体(IIdまたはIIe)は、公知の化合物を出発物質に用いて、以下に示す工程Aおよび工程Bを含む方法により製造することができる。
【化24】
【0136】
式中のRは、置換基を有していてもよいC-Cアルキルまたは芳香環であり、好ましくは、例えば、メチル、エチル、フェニル等である。
【0137】
式中のLは単結合または-CH-であり、Lは単結合または-CH-である。ここで、Lが-CH-である場合、Lは単結合であり、Lが-CH-である場合、Lは単結合である。すなわち、LとLの組み合わせとしては、(i) L=単結合、L=単結合、(ii)L=-CH-、L=単結合、(iii) L=単結合、L=-CH-の3通りが挙げられる。
【0138】
式中のnはメチレン基の数を表し、nは1又は2である。
【0139】
工程Aは、水酸基を有するα-アミノ酸(Vd)または(Ve)を、環化試薬を用いて環化し、環状スルファミダイト誘導体(IVd)または(IVe)を製造する工程である。この反応は、溶媒の存在または非存在下、塩基の存在または非存在下、-40℃~25℃の温度、好ましくは-40℃~0℃の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することにより行うことができる。
【0140】
工程Bは、環状スルファミダイト誘導体(IVd)または(IVe)の環内の硫黄原子を、酸化剤を用いて、スルフォンへと酸化して、環状スルファミダート誘導体(IId)または(IIe)を製造する工程である。この反応は、溶媒の存在または非存在下、-20℃~25℃の温度で、反応混合物を1時間~24時間攪拌することにより行うことができる。
【0141】
工程Aと工程Bでは、それぞれ先に述べたとおりの環化試薬、酸化剤、溶媒、および塩基を用いて反応を行うことができる。また、得られる環状スルファミダート誘導体(IId)または(IIe)は、製造方法1だけでなく、製造方法2の出発物質として用いることができる。この場合、式中のRはR2’と読み替える。
【0142】
上述の各反応工程を経て得られる目的化合物の単離・精製は、抽出、濃縮、留去、結晶化、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィーなどの通常の化学操作を適用して行うことができる。
【0143】
また、本発明の化合物およびその化学的に許容し得る塩には、上述の各反応工程を経て得られる目的化合物の全ての立体異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー(シス及びトランス幾何異性体を含む。))、前記異性体のラセミ体、およびその他の混合物が含まれる。例えば、本発明の化合物は、前記式(I)、(I’)、(I’’)、および前記式(II)は1以上の不斉点を有していてもよく、本発明には、そのような化合物のラセミ混合物、ジアステレオマー混合物、およびエナンチオマーが含まれる。
【0144】
本発明に係る化合物がフリー体として得られる場合、当該化合物は、当該化合物が形成していてもよい塩またはそれらの水和物もしくは溶媒和物の状態に、常法に従って変換することができる。
【0145】
また、本発明に係る化合物が、当該化合物の塩、水和物、または溶媒和物として得られる場合、当該化合物は、そのフリー体に常法に従って変換することができる。
【0146】
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例0147】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0148】
高速液体クロマトグラフィーの条件1
装置:Waters社製UPLC ACQUITY;
カラム:BEH(1.7μm,2.1mmI.D.x50mm,Waters社製);
移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含有する水(A)及び0.05%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル(B);
溶出法:5%Bから100%B(4.0分)、100%Bで保持(0.5分)のステップワイズな溶媒勾配溶出;
流速:0.5mL/分。
カラム温度:35℃。
【0149】
高速液体クロマトグラフィーの条件2
装置:Waters社製UPLC ACQUITY;
カラム:BEH(1.7μm,2.1mmI.D.x50mm,Waters社製);
移動相:0.1%ギ酸を含有する水(A)及び0.1%ギ酸を含有するアセトニトリル(B);
溶出法:5%Bから100%B(4.0分)、100%Bで保持(0.5分)のステップワイズな溶媒勾配溶出;
流速:0.5mL/分。
カラム温度:25℃。
【0150】
高速液体クロマトグラフィーの条件3
装置:Waters社製UPLC ACQUITY;
カラム:CHIRALCELL OD-3R(3.0μm,4.6mmI.D.x50mm,ダイセル社製);
移動相:0.1%ギ酸を含有する水(A)及び0.1%ギ酸を含有するアセトニトリル(B);
溶出法:5%Bから100%B(4.0分)、100%Bで保持(0.5分)のステップワイズな溶媒勾配溶出;
流速:1.5mL/分。
カラム温度:25℃。
【0151】
高速液体クロマトグラフィーの条件4
装置:Waters社製UPLC ACQUITY;
カラム:CHIRALPAK IA-3(3.0μm,4.6mmI.D.x50mm,ダイセル社製);
移動相:10mM酢酸アンモニウムを含有する水(A)及び10mM酢酸アンモニウムを含有するメタノール(B);
溶出法:5%Bから60%B(0.5分)、60%Bから80%B(3.0分)、80%Bから100%B(0.5分)、100%Bで保持(0.5分)のステップワイズな溶媒勾配溶出;
流速:1.2mL/分。
カラム温度:25℃。
【0152】
高速液体クロマトグラフィーの条件5
装置:Waters社製UPLC ACQUITY;
カラム:CHIRALPAK IG-3(3.0μm,4.6mmI.D.x50mm,ダイセル社製);
移動相:10mM酢酸アンモニウムを含有する水(A)及び10mM酢酸アンモニウムを含有するメタノール(B);
溶出法:5%Bから60%B(0.1分)、60%Bから100%B(3.4分)、100%Bで保持(1.0分)のステップワイズな溶媒勾配溶出;
流速:1.2mL/分。
カラム温度:25℃。
【0153】
H-NMRスペクトルは、AVANCE III HD 400BBFO-SMART probe(Bruker製)を用いて測定し、内部標準物質として用いたMeSiのケミカルシフトを0ppmとし、サンプル溶媒からの重水素ロック信号を参照した。分析対象化合物のシグナルのケミカルシフトはppmで表記した。シグナルの分裂の略語は、s=シングレット、brs=ブロードシングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、dd=ダブルダブレット、m=マルチプレットで表記し、シグナルの分列幅はJ値(Hz)で表記した。シグナルの積分値は、各シグナルのシグナル面積強度の比をもとに算出した。
【0154】
Boc-Ser-OBzlを出発原料とする製造例
実施例1:(4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダート-4-カルボン酸ベンジル
【化25】

1) 塩化チオニル 16.1g(135mmol)、酢酸エチル 400mLからなる溶液を-15℃に冷却し、Boc-Ser-OBzl 20g(68mmol)、酢酸エチル 50mLからなる溶液を5分かけて滴下した。そのままの温度で5分撹拌した後、ピリジン 26.8g(338mmol)を5分かけて滴下した。そのままの温度で15分撹拌した後、室温で22時間撹拌した。反応混合物に水 200mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を1N-塩酸 200mLおよび10%食塩水 200mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで(4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダイトカルボン酸ベンジル 23.9gの粗精製物をジアステレオ混合物として得た。
【0155】
2) (4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダイトカルボン酸ベンジル粗精製物 23.9g、アセトニトリル 100mLからなる溶液を0℃に冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム 21.7g(101mmol)、塩化ルテニウム水和物 0.14g(0.68mmol)、水 300mLからなる溶液を8分かけて滴下した。そのままの温度で22分撹拌した後、室温で1時間撹拌した。反応混合物に10%炭酸ナトリウム水 60mL、水 100mL、酢酸エチル 220mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた水層を再び酢酸エチル 100mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を併せて10%食塩水 200mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで(4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 22.3gを粗精製物として得た。
【0156】
3) (4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル粗精製物 22.3g、酢酸エチル 70mLからなる混合物を50℃に加熱し、その溶液にヘキサン 280mLを加え析出物が出現した後、室温で2時間撹拌して、析出物を減圧ろ取した。得られた結晶を減圧下乾燥し(4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 19.8g(収率:2工程81.6%)を白色結晶として得た。
【0157】
(4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダート-4-カルボン酸ベンジル
【化26】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間:2.87分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:99.2%(検出波長205nm、保持時間:2.77分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
H-NMR(CDCl、400MHz)δ:1.50(9H、s)、4.67(1H、dd、J=9.6、2.0)、4.76(1H、dd、J=9.6、6.4)、4.80-4.86(1H、m)、5.23(1H、d、J=12.0)、5.32(1H、d、J=12.0)、7.30-7.42(5H、m)
【0158】
実施例2:Fmoc-Ser(n-Pr)-OH
【化27】

1) (4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 6.00g(16.7mmol)、1-プロパノール 120mLからなる混合物を90℃に加熱しながら12時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル 240mL、5%炭酸水素ナトリウム水 240mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を10%食塩水 240mLで洗浄することでH-Ser(n-Pr)-OBzlを酢酸エチル溶液として得た。
【0159】
H-Ser(n-Pr)-OBzl
【化28】

光学純度:99.5%ee(検出波長205nm、保持時間2.76分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
UV強度比:87.3%(検出波長205nm、保持時間1.42分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0160】
2) H-Ser(n-Pr)-OBzl酢酸エチル溶液に10%パラジウム炭素 0.6g、メタノール 30mLの混合物を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で2時間撹拌した。パラジウム触媒をセライトを用いて減圧ろ別して得られた混合物を減圧濃縮することでH-Ser(n-Pr)-OH 7.82gを粗精製物として得た。
【0161】
3) H-Ser(n-Pr)-OH 7.82g、水 96mL、炭酸ナトリウム 4.80g(45.2mmol)からなる溶液を0℃に冷却し、FmocOSu 4.00g(11.8mmol)、アセトニトリル 96mLからなる溶液を5分かけて滴下した。室温で24時間撹拌した後、反応混合物に2N-塩酸 48mL、水 48mLを10分かけて加え析出物が出現した後、室温で2時間撹拌した。反応混合物に水 24mLを加え1時間撹拌、さらに水24mLを加え2時間撹拌した後、析出物を減圧ろ取した。得られた結晶を減圧下乾燥しFmoc-Ser(n-Pr)-OH 3.60g(収率:3工程58.4%)を白色結晶として得た。
【0162】
Fmoc-Ser(n-Pr)-OH
【化29】

光学純度:99.6%ee(検出波長205nm、保持時間3.35分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:96.2%(検出波長205nm、保持時間2.74分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:0.84(3H、t、J=7.2)、1.42-1.56(2H、m)、3.28-3.42(2H、m)、3.56-3.70(2H、m)、4.16-4.34(4H、m)、7.32(2H、dt、J=7.2、0.8)、7.42(2H、t、J=7.6)、7.61(1H、d、J=8.0)、7.74(2H、d、J=7.8)、7.89(2H、d、J=7.6)、12.76(1H、brs)yy
【0163】
実施例3:Fmoc-Ser(i-Pr)-OH
【化30】

1) (4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジルエステル 1.00g(2.8mmol)、2-プロパノール 20mLからなる混合物を80℃に加熱しながら36時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル 20mL、5%炭酸水素ナトリウム水 20mL、10%食塩水 20mLを加えた後、有機層と水層に分離した。有機層をH-Ser(i-Pr)-OBzlを酢酸エチル溶液として得た。
【0164】
H-Ser(i-Pr)-OBzl
【化31】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
UV強度比:84.4%(検出波長205nm、保持時間1.38分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0165】
2) H-Ser(i-Pr)-OBzl酢酸エチル溶液に10%パラジウム炭素 0.15g、メタノール 5mLの混合物を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で2時間撹拌した。パラジウム触媒をセライトを用いて減圧ろ別して得られた混合物を減圧濃縮することでH-Ser(i-Pr)-OH 842mgを粗精製物として得た。
【0166】
3) H-Ser(i-Pr)-OH 842mg、水 6mL、炭酸ナトリウム 0.31g(2.9mmol)からなる溶液を0℃に冷却し、FmocOSu 0.66g(2.0mmol)、アセトニトリル 6mLからなる溶液を2分かけて滴下した。室温で3時間撹拌した後、反応混合物に1N-塩酸 10mLを5分かけて加え析出物が出現した後、室温で3時間撹拌した。反応混合物を3時間撹拌した後、析出物を減圧ろ取した。得られた結晶を減圧下乾燥しFmoc-Ser(i-Pr)-OH 667mg(収率:3工程63.5%)を白色結晶として得た。
【0167】
Fmoc-Ser(i-Pr)-OH
【化32】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間3.25分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:98.7%(検出波長205nm、保持時間2.74分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:1.06(3H、d、J=6.0)、1.08(3H、d、J=6.0)、3.48-3.66(3H、m)、4.10-4.32(4H、m)、7.33(2H、dt、J=7.6、0.8)、7.42(2H、t、J=7.0)、7.56(1H、d、J=8.0)、7.74(2H、d、J=7.8)、7.89(2H、d、J=7.6)、12.73(1H、brs)
【0168】
実施例4:H-Ser(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-OBzl
【化33】

(4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジルエステル 50mg(0.10mmol)、2-メチルプロパン-1,2-ジオール 1.00mLからなる混合物を80℃に加熱しながら30時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0169】
H-Ser(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-OBzl
【化34】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間1.78分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
UV強度比:73.3%(検出波長205nm、保持時間1.22分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0170】
実施例5:H-Ser(n-Bu)-OBzl
【化35】

(4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジルエステル 25mg(0.07mmol)、1-ブタノール 0.50mLからなる混合物を80℃に加熱しながら24時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0171】
H-Ser(n-Bu)-OBzl
【化36】

UV強度比:77.0%(検出波長205nm、保持時間1.83分、高速液体クロマトグラフィーの条件1)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:252.48(M+H
【0172】
実施例6:H-Ser(3-メチルブチル)-OBzl
【化37】

(4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジルエステル 25mg(0.07mmol)、3-メチルブタノール 0.50mLからなる混合物を80℃に加熱しながら24時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0173】
H-Ser(3-メチルブチル)-OBzl
【化38】

UV強度比:73.9%(検出波長205nm、保持時間2.00分、高速液体クロマトグラフィーの条件1)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:266.52(M+H
【0174】
実施例7:(4S)-1,2,5-スルファミダート-4-カルボン酸ベンジルエステル
【化39】

(4S)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 1.00g(2.8mmol)、2,2,2-トリフルオロエタノール 10mLからなる混合物を70℃に加熱しながら4時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル 20mL、5%食塩水 40mLを加えた後、有機層と水層に分離した。有機層を減圧下濃縮して(4S)-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジルエステル 734mgを粗精製物として得た。
得られた粗精製物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル-ヘキサン)で精製し(4S)-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 649mg(収率:90.2%)を淡黄色固体として得た。
【0175】
(4S)-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル
【化40】

UV強度比:99.6%(検出波長205nm、保持時間1.94分、高速液体クロマトグラフィーの条件1)
H-NMR(CDCl、400MHz)δ:4.44-4.52(1H、m)、4.56(1H、dd、J=8.8、5.6)、4.74(1H、dd、J=8.8、7.6)、5.09-5.18(1H,m)、5.27(1H、d、J=11.6)、5.30(1H、d、J=11.6)、7.32-7.44(5H、m)
【0176】
D-Boc-Ser-OBzlを出発原料とする製造例
実施例8:(4R)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダート-4-カルボン酸ベンジル
【化41】

1) 塩化チオニル 8.05g(67.7mmol)、アセトニトリル 140mLからなる溶液を-40℃に冷却し、D-Boc-Ser-OBzl 10.0g(33.8mmol)、アセトニトリル 30mLからなる溶液を5分かけて滴下した。そのままの温度で5分撹拌した後、ピリジン 13.4g(169mmol)を5分かけて滴下した。そのままの温度で5分撹拌した後、室温で4時間撹拌した。反応混合物に水 340mL、および、酢酸エチル 170mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を5%炭酸水素ナトリウム水 170mL、および、0.5N-塩酸 170mLと10%食塩水 170mLの混合溶液で洗浄した後、減圧下濃縮することで(4R)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダイトカルボン酸ベンジル 10.76gの粗精製物をジアステレオ混合物として得た。
【0177】
2) (4R)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダイトカルボン酸ベンジル粗精製物 10.76g、アセトニトリル 160mLからなる溶液を0℃に冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム 10.7g(50mmol)、塩化ルテニウム水和物 62mg(0.30mmol)、水 160mLからなる溶液を15分かけて滴下した。そのままの温度で2時間撹拌した。反応混合物に5%炭酸水素ナトリウム水 160mL、酢酸エチル 160mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた水層を再び酢酸エチル 160mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を併せて10%食塩水 160mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで(4R)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 10.44gを粗精製物として得た。
【0178】
3) (4R)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル粗精製物 10.44g、酢酸エチル 30mLからなる混合物を40℃に加熱し、その溶液にヘキサン 120mLを加え析出物が出現した後、室温で2時間撹拌して、析出物を減圧ろ取した。得られた結晶を減圧下乾燥し(4R)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 9.00g(収率:2工程74.5%)を白色結晶として得た。
【0179】
(4R)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル
【化42】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間2.93分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:97.7%(検出波長205nm、保持時間2.77分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
H-NMR(CDCl、400MHz)δ:1.49(9H、s)、4.67(1H、dd、J=9.6、2.2)、4.76(1H、dd、J=9.6、6.4)、4.80-4.86(1H、m)、5.23(1H、d、J=12.0)、5.32(1H、d、J=12.0)、7.30-7.42(5H、m)
【0180】
実施例9:D-H-Ser(n-Pr)-OBzlのラセミ化
【化43】

1)反応混合物:(4R)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 1.00g(2.8mmol)、1-プロパノール 20mLからなる混合物を90℃に加熱しながら15時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0181】
D-H-Ser(n-Pr)-OBzl
【化44】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間2.54分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
UV強度比:82.1%(検出波長205nm、保持時間1.40分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0182】
2)酢酸エチル溶液1:反応混合物に酢酸エチル 40mL、5%炭酸水素ナトリウム水 40mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層をHPLCを用いて分析した。
光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間2.55分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
UV強度比:84.7%(検出波長205nm、保持時間1.42分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0183】
3)酢酸エチル溶液2:得られた酢酸エチル溶液1を2つに分けてその一方を10%食塩水 20mLで2回洗浄し、得られた有機層をHPLCを用いて分析した。
光学純度:99.8%ee(検出波長205nm、保持時間2.55分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
UV強度比:85.1%(検出波長205nm、保持時間1.42分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0184】
4)粗精製物1:得られた酢酸エチル溶液2を2つに分けて、一方は水浴を25℃に設定して減圧下濃縮し、得られたD-H-Ser(n-Pr)-OBzlの粗精製物をHPLCを用いて分析した。
光学純度:82.8%ee(検出波長205nm、保持時間2.54分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
UV強度比:79.7%(検出波長205nm、保持時間1.39分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0185】
5)粗精製物2:2つに分けたもう一方の有機層は水浴を50℃に設定して減圧下濃縮し、得られたD-H-Ser(n-Pr)-OBzlの粗精製物をHPLCを用いて分析した。
光学純度:72.6%ee(検出波長205nm、保持時間2.53分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
UV強度比:79.1%(検出波長205nm、保持時間1.39分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0186】
実施例10:D-H-Ser(n-Pr)-OBzlの光学純度安定性
1)実施例9で製造した2種類の酢酸エチル溶液を室温で3日間静置し、HPLCを用いて分析した。
酢酸エチル溶液1:
光学純度:91.5%ee(検出波長205nm、保持時間2.54分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
酢酸エチル溶液2:
光学純度:94.7%ee(検出波長205nm、保持時間2.54分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
【0187】
2)実施例9で製造した2種類の酢酸エチル溶液を室温で5日間静置し、HPLCを用いて分析した。
酢酸エチル溶液1:
光学純度:85.6%ee(検出波長205nm、保持時間2.56分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
酢酸エチル溶液2:
光学純度:88.9%ee(検出波長205nm、保持時間2.55分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
【0188】
3)実施例9で製造した2種類の酢酸エチル溶液を室温で10日間静置し、HPLCを用いて分析した。
酢酸エチル溶液1:
光学純度:76.8%ee(検出波長205nm、保持時間2.55分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
酢酸エチル溶液2:
光学純度:82.9%ee(検出波長205nm、保持時間2.54分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
【0189】
実施例11:D-Fmoc-Ser(n-Pr)-OH
【化45】

1) 実施例9で製造し、2つに分けた酢酸エチル溶液1のもう一方に10%パラジウム炭素 0.15g、メタノール 5mLの混合物を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で2時間撹拌した。パラジウム触媒をセライトを用いて減圧ろ別して得られた混合物を減圧濃縮することでD-H-Ser(n-Pr)-OH 854mgを粗精製物として得た。
【0190】
2) D-H-Ser(n-Pr)-OH 845mg、水 8mL、炭酸ナトリウム 0.40g(3.77mmol)からなる溶液を0℃に冷却し、FmocOSu 337mg(1.00mmol)、アセトニトリル 8mLからなる溶液を5分かけて滴下した。室温で3時間撹拌した後、反応混合物に1N-塩酸 8mLを加え析出物が出現した後、室温で1時間20分撹拌した。反応混合物に0.1N-塩酸 2mLを加え、さらに1時間20分撹拌した後、析出物を減圧ろ取した。得られた結晶を減圧下乾燥しD-Fmoc-Ser(n-Pr)-OH 3.60g(収率:3工程58.4%)を白色結晶として得た。
【0191】
D-Fmoc-Ser(n-Pr)-OH
【化46】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間3.12分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:97.3%(検出波長205nm、保持時間2.74分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:0.84(3H、t、J=7.2)、1.42-1.56(2H、m)、3.28-3.42(2H、m)、3.56-3.70(2H、m)、4.16-4.34(4H、m)、7.32(2H、dt、J=7.2、0.8)、7.42(2H、t、J=7.6)、7.61(1H、d、J=8.0)、7.74(2H、d、J=7.8)、7.89(2H、d、J=7.6)、12.76(1H、brs)
【0192】
実施例12:D-Fmoc-Ser(i-Pr)-OH
【化47】

1) (4R)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 50mg(0.14mmol)、2-プロパノール 1mLからなる混合物を80℃に加熱しながら30時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル 1mL、5%炭酸水素ナトリウム水 0.5mL、10%食塩水 0.5mLを加えた後、有機層と水層に分離した。有機層をD-H-Ser(i-Pr)-OBzlを酢酸エチル溶液として得た。
【0193】
D-H-Ser(i-Pr)-OBzl
【化48】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間2.21分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
UV強度比:78.5%(検出波長205nm、保持時間1.36分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0194】
2) D-H-Ser(i-Pr)-OBzl酢酸エチル溶液に10%パラジウム炭素 15mg、メタノール 1mLの混合物を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で1時間撹拌した。パラジウム触媒をセライトを用いて減圧ろ別して得られた混合物を減圧濃縮することでD-H-Ser(i-Pr)-OH 27mgを粗精製物として得た。
【0195】
3) D-H-Ser(i-Pr)-OH 27mg、水 0.5mL、炭酸ナトリウム 25mg(0.235mmol)からなる溶液を0℃に冷却し、FmocOSu 33mg(0.098mmol)、アセトニトリル 0.5mLからなる溶液を2分かけて滴下した。室温で5時間撹拌した後、反応混合物に1N-塩酸 10mLを5分かけて加え析出物が出現した後、室温で2時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0196】
D-Fmoc-Ser(i-Pr)-OH
【化49】

光学純度:>95%ee、光学異性体と不純物が分離せず正確な値は不明(検出波長205nm、保持時間3.05分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:85.6%(検出波長205nm、保持時間2.70分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0197】
実施例13:D-H-Ser(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-OBzl
【化50】

(4R)-5-t-ブトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジルエステル 50mg(0.14mmol)、2-メチルプロパン-1,2-ジオール 1mLからなる混合物を80℃に加熱しながら30時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0198】
D-H-Ser(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-OBzl
【化51】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間2.16分、高速液体クロマトグラフィーの条件4)
UV強度比:73.4%(検出波長205nm、保持時間1.22分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0199】
Fmoc-Ser-OBzlを出発原料とする製造例
実施例14:(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダート-4-カルボン酸ベンジル
【化52】

1) 塩化チオニル 14.3g(120mmol)、酢酸エチル 350mLからなる溶液を-15℃に冷却し、Fmoc-Ser-OBzl 25g(60mmol)、酢酸エチル 100mLからなる溶液を10分かけて滴下した。そのままの温度で5分撹拌した後、ピリジン 23.7g(300mmol)を10分かけて滴下した。そのままの温度で5分撹拌した後、室温で24時間撹拌した。反応混合物に水 200mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を1N-塩酸 200mLおよび10%食塩水 200mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダイトカルボン酸ベンジル 28.0gの粗精製物をジアステレオ混合物として得た。
【0200】
2) (4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダイトカルボン酸ベンジル粗精製物 28.0g、アセトニトリル 200mLからなる溶液を-10℃に冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム 19.3g(90mmol)、塩化ルテニウム水和物 0.12g(0.6mmol)、水 300mLからなる溶液を15分かけて滴下した。そのままの温度で15分撹拌した後、室温で23時間撹拌した。反応混合物に水 100mL、酢酸エチル 300mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を10%食塩水 200mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 28.7gを粗精製物として得た。
【0201】
3) 得られた粗精製物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル-ヘキサン)で精製し(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 15.2g(収率:2工程53.0%)を白色粉体として得た。
【0202】
(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル
【化53】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間4.02分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:95.2%(検出波長205nm、保持時間3.31分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
H-NMR(CDCl、400MHz)δ:4.22-4.34(1H、m)、4.46(1H、dd、J=10.4,7.2)、4.58(1H、dd、J=10.4,7.2)、4.70-4.96(3H、m)、5.20-5.32(2H、m)、7.28-7.38(7H、m)、7.42(2H、t、J=7.6)、7.62-7.80(4H、m)
【0203】
実施例15:Fmoc-Ser(i-Pr)-OBzl(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化54】

1) (4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 1.00g(2.0mmol)、リン酸二水素ナトリウム 1.00g、2-プロパノール 4mL、2,2,2-トリフルオロエタノール 2mLからなる混合物を70℃に加熱しながら6時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル 20mL、10%食塩水 20mLを加えた後、有機層と水層に分離した。有機層をFmoc-Ser(i-Pr)-OBzl酢酸エチル溶液として得た。
【0204】
Fmoc-Ser(i-Pr)-OBzl
【化55】

UV強度比:82.4%(検出波長205nm、保持時間3.54分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0205】
Fmoc-Ser(i-Pr)-O(i-Pr)
【化56】

UV強度比:1.0%(検出波長205nm、保持時間3.41分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0206】
Fmoc-Ser-OBzl
【化57】

UV強度比:7.7%(検出波長205nm、保持時間2.87分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
目的物が82.4%で生成し、2-プロパノールと反応せずにスルファミダートが開環したFmoc-Ser-OBzlが7.7%生成した。酸性塩(この場合はリン酸二水素ナトリウム)を用いた場合、同一出発原料を用い、酸性塩を使用していない実施例16と比較して、副生成物の生成が3倍近く減少した。
【0207】
2) Fmoc-Ser(i-Pr)-OBzl酢酸エチル溶液に10%パラジウム炭素 0.10g、メタノール 4mLの混合物を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で1時間30分撹拌した。パラジウム触媒をセライトを用いて減圧ろ別して得られた混合物を減圧濃縮することでFmoc-Ser(i-Pr)-OH 0.80gを粗精製物として得た。
【0208】
Fmoc-Ser(i-Pr)-OH
【化58】

UV強度比:77.8%(検出波長205nm、保持時間2.70分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0209】
3) Fmoc-Ser(i-Pr)-OH 0.80g、水 6mL、炭酸ナトリウム 0.30g(2.8mmol)、アセトニトリル 2mLからなる溶液を室温で3時間撹拌した後、反応混合物に酢酸エチル 5mLを加えて有機層と水層に分離した。水層をFmoc-Ser(i-Pr)-OH水溶液として得た。得られたFmoc-Ser(i-Pr)-OH水溶液に1N-塩酸 6mLを加え析出物が出現した後、室温で4時間撹拌した。析出物を減圧ろ取して、得られた湿性末をHPLCを用いて分析した。
【0210】
Fmoc-Ser(i-Pr)-OH
【化59】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間3.25分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:87.0%(検出波長205nm、保持時間2.70分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0211】
実施例16:Fmoc-Ser(i-Pr)-OBzl(リン酸二水素ナトリウム非添加)
【化60】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 50mg(0.10mmol)、2-プロパノール 0.30mLからなる混合物を80℃に加熱しながら2時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0212】
Fmoc-Ser(i-Pr)-OBzl
【化61】

UV強度比:70.1%(検出波長205nm、保持時間3.53分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0213】
Fmoc-Ser(i-Pr)-O(i-Pr)
【化62】

UV強度比:1.93%(検出波長205nm、保持時間3.42分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0214】
Fmoc-Ser-OBzl
【化63】

UV強度比:21.6%(検出波長205nm、保持時間2.87分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0215】
実施例17:Fmoc-Ser(n-Pr)-OBzl(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化64】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 50mg(0.10mmol)、リン酸二水素ナトリウム 24mg、1-プロパノール 0.20mL、2,2,2-トリフルオロエタノール 0.10mLからなる混合物を70℃に加熱しながら2時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0216】
Fmoc-Ser(n-Pr)-OBzl
【化65】

UV強度比:81.3%(検出波長205nm、保持時間3.56分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0217】
Fmoc-Ser(n-Pr)-O(n-Pr)
【化66】

UV強度比:1.4%(検出波長205nm、保持時間3.46分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0218】
Fmoc-Ser-OBzl
【化67】

UV強度比:3.5%(検出波長205nm、保持時間2.87分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
目的物が81.3%で生成し、目的物がさらに1-プロパノールと反応しエステル交換がおこった副生成物(Fmoc-Ser(n-Pr)-O(n-Pr)が1.4%生成した。酸性塩(この場合はリン酸二水素ナトリウム) を用いた場合、同一出発原料を用い、酸性塩を用いずに反応を行った実施例18と比較して、目的物の収率が10%近く改善し、副生成物の生成が6倍近く減少した。
【0219】
実施例18:Fmoc-Ser(n-Pr)-OBzl(リン酸二水素ナトリウム非添加)
【化68】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 0.59g(1.23mmol)、1-プロパノール 2.4mL、2,2,2-トリフルオロエタノール 1.2mLからなる混合物を70℃に加熱しながら2時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0220】
Fmoc-Ser(n-Pr)-OBzl
【化69】

UV強度比:68.2%(検出波長205nm、保持時間3.56分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0221】
Fmoc-Ser(n-Pr)-O(n-Pr)
【化70】

UV強度比:8.0%(検出波長205nm、保持時間3.46分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0222】
Fmoc-Ser-OBzl
【化71】

UV強度比:4.1%(検出波長205nm、保持時間2.87分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0223】
実施例19:Fmoc-Ser(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-OBzl(リン酸二水素ナトリウム非添加)
【化72】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 0.59g(1.23mmol)、2-メチルプロパン-1,2-ジオール 2.4mL、2,2,2-トリフルオロエタノール 1.2mLからなる混合物を70℃に加熱しながら4時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0224】
Fmoc-Ser(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-OBzl
【化73】

UV強度比:42.8%(検出波長205nm、保持時間3.09分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0225】
Fmoc-Ser(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-OH
【化74】

UV強度比:11.3%(検出波長205nm、保持時間2.31分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0226】
Fmoc-Ser-OBzl
【化75】

UV強度比:20.0%(検出波長205nm、保持時間2.87分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0227】
Fmoc-Ser-OH
【化76】

UV強度比:3.8%(検出波長205nm、保持時間2.08分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
【0228】
実施例20:Fmoc-Ala(Cl)-OBzl
【化77】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 50mg(0.1mmol)、ピリジン塩酸塩 23mg(0.2mmol)、1-プロパノール 0.20mL、2,2,2-トリフルオロエタノール 0.10mLからなる混合物を70℃に加熱しながら1時間撹拌し、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0229】
Fmoc-Ala(Cl)-OBzl
【化78】

UV強度比:91.5%(検出波長205nm、保持時間3.36分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:436.41(M+H
酸性塩としてピリジン塩酸塩を用いたところ、原料と1-プロパノールが反応せずにピリジン塩酸塩由来の塩化物イオンにより開環したクロロ体(Fmoc-Ala(Cl)-OBzl)が得られた。酸性塩としてリン酸二水素ナトリウムを用いると目的物を効率的に与えることがわかった。
【0230】
Fmoc-Ser-Ot-Buを出発原料とする製造例
実施例21:(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダート-4-カルボン酸第三ブチル
【化79】

1) 塩化チオニル 1.61g(13.5mmol)、ジクロロメタン 20mLからなる溶液を-40℃に冷却し、Fmoc-Ser-Ot-Bu 2.00g(5.2mmol)、ジクロロメタン 5mLからなる溶液を5分かけて滴下した。そのままの温度で15分撹拌した後、ピリジン 2.68g(33.8mmol)を5分かけて滴下した。そのままの温度で20分撹拌した後、0℃で20分、室温で1時間30分撹拌した。反応混合物に水 30mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた水層にジクロロメタン 20mLを加えて、再度有機層と水層に分離した。得られた有機層を併せて5%NaHCO 30mLおよび10%食塩水 30mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダイトカルボン酸第三ブチル 2.22gの粗精製物をジアステレオ混合物として得た。
【0231】
2) (4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダイトカルボン酸第三ブチル粗精製物 2.22g、アセトニトリル 30mLからなる溶液を0℃に冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム 1.67g(7.8mmol)、塩化ルテニウム水和物 11mg(0.05mmol)、水 30mLからなる溶液を5分かけて滴下した。そのままの温度で1時間30分撹拌した後、室温で20分撹拌した。反応混合物に5%NaHCO 60mL、水 60mL、酢酸エチル 40mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた水層に酢酸エチル 40mLを加えて、再度有機層と水層に分離した。得られた有機層を併せて10%食塩水 30mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸第三ブチル 2.25gを粗精製物として得た。
【0232】
3) 得られた粗精製物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル-ヘキサン)で精製し(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸第三ブチル 1.87g(収率:2工程83.9%)を白色粉体として得た。
【0233】
(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸第三ブチル
【化80】

UV強度比:96.9%(検出波長205nm、保持時間3.24分、高速液体クロマトグラフィーの条件1)
H-NMR(CDCl、400MHz)δ:1.50(9H、s)、4.35(1H、t、J=7.6)、4.48(1H、dd、J=10.4,7.6)、4.61(1H、dd、J=10.4,7.6)、4.70-4.88(3H、m)、7.31-7.37(2H、m)、7.39-7.45(2H、m)、7.58-7.80(4H、m)
ESI(LC/MSネガティブモード)m/z:444.33(M‐H
【0234】
H-MeSer-OBzlを出発原料とする製造例
実施例22:(4S)-5-メチル-1,2,5-スルファミダート-4-カルボン酸ベンジル
【化81】

1) 塩化チオニル 2.38g(20mmol)、ジクロロメタン 50mLからなる溶液を-15℃に冷却し、H-MeSer-OBzl塩酸塩 2.50g(10mmol)を加えた。そのままの温度で5分撹拌した後、ピリジン 4.75g(60mmol)を5分かけて滴下した。そのままの温度で5分撹拌した後、室温で1時間撹拌した。反応混合物に水 25mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を1N-塩酸 25mLおよび10%食塩水 25mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで(4S)-5-メチル-1,2,5-スルファミダイトカルボン酸ベンジル 2.06gの粗精製物をジアステレオ混合物として得た。
【0235】
2) (4S)-5-メチル-1,2,5-スルファミダイトカルボン酸ベンジル粗精製物 2.06g、アセトニトリル 20mLからなる溶液を-5℃に冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム 3.21g(15mmol)、塩化ルテニウム水和物 62mg(0.3mmol)、水 30mLからなる溶液を5分かけて滴下した。そのままの温度で5分撹拌した後、室温で30分間撹拌した。反応混合物に水 20mL、酢酸エチル 40mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を10%食塩水 20mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで5-メチル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 1.87gを粗精製物として得た。
【0236】
3) 得られた粗精製物、酢酸エチル 4mLからなる混合物を40℃に加熱し、その溶液にヘキサン 12mLを加え析出物が出現した後、室温で50分間撹拌して、析出物を減圧ろ取した。得られた結晶を減圧下乾燥し(4S)-5-メチル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 1.14g(収率:2工程42.0%)を淡黄色結晶として得た。
光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間2.58分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
【0237】
(4S)-5-メチル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル
【化82】

UV強度比:96.3%(検出波長205nm、保持時間2.29分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
H-NMR(CDCl、400MHz)δ:2.95(3H、s)、4.10(1H、dd、J=7.6、6.4)、4.60-4.72(2H、m)、5.24(1H、d、J=12.0)、5.28(1H、d、J=12.0)、7.32-7.44(5H、m)
【0238】
実施例23:H-MeSer(n-Pr)-OBzl
【化83】

(4S)-5-メチル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 0.28g(1.0mmol)、2-プロパノール 5.6mLからなる混合物を90℃に加熱しながら13時間撹拌した。反応混合物にジクロロメタン 16.4mL、5%炭酸水素ナトリウム水 16.4mLを加えた後、有機層と水層に分離した。有機層をH-MeSer(n-Pr)-OBzlを酢酸エチル溶液として得て、HPLCを用いて分析した。
UV強度比:91.8%(検出波長205nm、保持時間1.65分、高速液体クロマトグラフィーの条件1)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:252.48(M+H
【0239】
実施例24:Fmoc-Ser(CH CH(OH)CF )-OH(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化84】

1)(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸ベンジル 100mg(0.208mmol)、リン酸二水素ナトリウム 100mg、3,3,3-トリフルオロプロパン-1,2-ジオール 0.543g(4.17mmol)、2,2,2-トリフルオロエタノール 0.2mLからなる混合物を70℃に加熱しながら48時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル 1mL、2N塩酸水 1mLを加えた後、有機層と水層に分離した。水層はさらに酢酸エチル 1mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を併せてFmoc-Ser(CHCH(OH)CF)-OBzl酢酸エチル溶液とした。
【0240】
Fmoc-Ser(CH CH(OH)CF )-OBzl
【化85】

UV強度比:50.9%(検出波長205nm、保持時間3.24分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:530.59(M+H
【0241】
2) Fmoc-Ser(CHCH(OH)CF)-OBzl酢酸エチル溶液に10%パラジウム炭素 20mgを加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で3時間撹拌することでFmoc-Ser(CHCH(OH)CF)-OH酢酸エチル溶液として得た。
【0242】
Fmoc-Ser(CH CH(OH)CF )-OH
【化86】

UV強度比:52.3%(検出波長205nm、保持時間2.52分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSネガティブモード)m/z:438.39(M‐H
【0243】
実施例25:Fmoc-Ser(Bzl)-OH(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化87】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸第三ブチル 50mg(0.11mmol)、リン酸二水素ナトリウム 50mg、ベンジルアルコール 0.30mL(2.91mmol)からなる混合物を90℃に加熱しながら2時間撹拌した後、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0244】
Fmoc-Ser(Bzl)-OH
【化88】

UV強度比:39.5%(検出波長205nm、保持時間2.93分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSネガティブモード)m/z:416.43(M‐H
【0245】
Fmoc-Ser(Bzl)-Ot-Bu
【化89】

UV強度比:22.9%(検出波長205nm、保持時間3.72分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:474.68(M+H
【0246】
Fmoc-Ser(Bzl)-OBzl
【化90】

UV強度比:22.9%(検出波長205nm、保持時間3.65分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:474.68(M+H
【0247】
実施例26:Fmoc-Ser(CH -3F-C )-OH(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化91】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸第三ブチル 50mg(0.11mmol)、リン酸二水素ナトリウム 50mg、3-フルオロベンジルアルコール 0.30mL(2.78mmol)からなる混合物を90℃に加熱しながら2時間撹拌した後、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0248】
Fmoc-Ser(CH -3F-C )-OH
【化92】

UV強度比:38.4%(検出波長205nm、保持時間2.95分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSネガティブモード)m/z:434.51(M‐H
【0249】
Fmoc-Ser(CH -3F-C )-Ot-Bu
【化93】

UV強度比:2.90%(検出波長205nm、保持時間3.71分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:492.65(M+H
【0250】
Fmoc-Ser(CH -3F-C )-OCH -3F-C
【化94】

UV強度比:8.35%(検出波長205nm、保持時間3.71分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:544.67(M+H
【0251】
実施例27:Fmoc-Ser(CH -2-チエニル)-OH(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化95】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸第三ブチル 45mg(0.11mmol)、リン酸二水素ナトリウム 45mg、2-チオフェンメタノール 0.27mL(2.86mmol)からなる混合物を室温で48時間撹拌した後、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
Fmoc-Ser(CH -2-チエニル)-OH
【化96】

UV強度比:8.61%(検出波長205nm、保持時間2.85分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:422.37(M+H
【0252】
Fmoc-Ser(CH -2-チエニル)-Ot-Bu
【化97】

UV強度比:23.3%(検出波長205nm、保持時間3.63分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSネガティブモード)m/z:480.70(M‐H
【0253】
実施例28:Fmoc-Ser(CH -2-フリル)-Ot-Bu(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化98】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダートカルボン酸第三ブチル 45mg(0.11mmol)、リン酸二水素ナトリウム 45mg、2-フルフリルアルコール 0.27mL(3.11mmol)からなる混合物を室温で48時間撹拌した後、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
Fmoc-Ser(CH -2-furyl)-Ot-Bu
【化99】

UV強度比:18.6%(検出波長205nm、保持時間3.49分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:464.64(M+H
【0254】
Boc-homoSer-OBzlを出発原料とする製造例
実施例29:(4S)-3-t-ブトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-4-カルボン酸ベンジル
【化100】

1) 塩化チオニル 7.46g(62.7mmol)、酢酸エチル 200mLからなる溶液を-15℃に冷却し、Boc-homoSer-OBzl 10.00g(31.3mmol)、酢酸エチル 30mLからなる溶液を5分かけて滴下した。そのままの温度で5分撹拌した後、ピリジン 12.4g(157mmol)を5分かけて滴下した。-15℃で5分撹拌した後、室温で3時間撹拌した。反応混合物に水 100mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層に1N HCl 100mLを加えて、再度有機層と水層に分離した。得られた有機層を10%食塩水 100mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで(4S)-3-t-ブトキシカルボニル-2-オキソ-1,2,3-オキサチアジナン-4-カルボン酸ベンジル 10.90gをジアステレオ混合物の粗精製物として得た。
【0255】
2) (4S)-3-t-ブトキシカルボニル-2-オキソ-1,2,3-オキサチアジナン-4-カルボン酸ベンジル粗精製物 10.90g、アセトニトリル 90mLからなる溶液を-10℃に冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム 10.05g(47.0mmol)、塩化ルテニウム水和物 195mg(0.94mmol)、水 150mLからなる溶液を10分かけて滴下した。-10℃で15分撹拌した後、室温で1時間40分撹拌した。反応混合物に水 50mL、酢酸エチル 150mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた水層に酢酸エチル 40mLを加えて、再度有機層と水層に分離した。得られた有機層を2N HCl水 20mLおよび10%食塩水 200mLからなる混合物で洗浄した後、減圧下濃縮することで(4S)-3-t-ブトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-4-カルボン酸ベンジル 6.72gを粗精製物として得た。
【0256】
3) 得られた粗精製物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル-ヘキサン)で精製し(4S)-3-t-ブトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-4-カルボン酸ベンジル 1.75g(収率:2工程15.1%)を白色粉体として、(S)-Boc-Gly(2-クロロエチル)-OBzl 2.50g(収率:2工程22.5%)を淡黄色粉体として得た。
【0257】
(4S)-3-t-ブトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-4-カルボン酸ベンジル
【化101】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間:2.90分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:96.3%(検出波長205nm、保持時間2.83分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
H-NMR(CDCl、400MHz)δ:1.43(9H、s)、2.35-2.50(1H、m)、2.60-2.70(1H,m)、4.55-4.65(1H,m)、4.72(1H、dt、J=11.2,4.8)、5.21(2H、d、J=2.4)、5.24(1H、dd、5.6,2.4)、7.30-7.40(5H、m)
【0258】
(S)-Boc-Gly(2-クロロエチル)-OBzl
【化102】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間:3.07分、高速液体クロマトグラフィーの条件5)
UV強度比:98.3%(検出波長205nm、保持時間3.71分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
H-NMR(CDCl、400MHz)δ:1.44(9H、s)、2.08-2.20(1H、m)、2.28-2.40(1H,m)、3.57(2H、t、7.2)、4.43-4.53(1H,m)、5.08-5.20(1H、m)、4.18(2H、dd、J=14.8,12.0)、7.31-7.41(5H、m)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:328.57、330.55(M+H
【0259】
実施例30:H-homoSer(n-Pr)-OH
【化103】

(4S)-3-t-ブトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-4-カルボン酸ベンジル 50mg(0.134mmol)、1-プロパノール 1mLからなる混合物を80℃に加熱しながら40時間撹拌した後、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0260】
H-homoSer(n-Pr)-OBzl
【化104】

UV強度比:87.5%(検出波長205nm、保持時間1.50分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:252.60(M+H
【0261】
実施例31:H-homoSer(i-Pr)-OH
【化105】

(4S)-3-t-ブトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-4-カルボン酸ベンジル 50mg(0.134mmol)、2-プロパノール 1mLからなる混合物を80℃に加熱しながら40時間撹拌した後、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0262】
H-homoSer(i-Pr)-OBzl
【化106】

UV強度比:84.2%(検出波長205nm、保持時間1.47分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:252.60(M+H
【0263】
実施例32:H-homoSer(3-メチルブチル)-OBzl
【化107】

(4S)-3-t-ブトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-4-カルボン酸ベンジル 50mg(0.134mmol)、3-メチルブタノール 1mLからなる混合物を80℃に加熱しながら40時間撹拌した後、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0264】
H-homoSer(3-メチルブチル)-OBzl
【化108】

UV強度比:84.8%(検出波長205nm、保持時間1.84分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:280.62(M+H
【0265】
実施例33:H-homoSer(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-OBzl
【化109】

(4S)-3-t-ブトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-4-カルボン酸ベンジル 50mg(0.134mmol)、2-メチルプロパン-1,2-ジオール 1mLからなる混合物を80℃に加熱しながら40時間撹拌した後、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0266】
H-homoSer(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-OBzl
【化110】

UV強度比:70.9%(検出波長205nm、保持時間1.29分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:282.60(M+H
【0267】
Fmoc-Asp(Ot-Bu)-OLを出発原料とする製造例
実施例34:(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダート-4-酢酸第三ブチル
【化111】

1) 塩化チオニル 2.38g(20.0mmol)、酢酸エチル 80mLからなる溶液を-40℃に冷却し、Fmoc-Asp(Ot-Bu)-OL 4.00g(10.0mmol)、ジクロロメタン 12mLからなる溶液を5分かけて滴下した。そのままの温度で5分撹拌した後、ピリジン 3.96g(50.0mmol)を5分かけて滴下した。-40℃で5分撹拌した後、室温で2間撹拌した。反応混合物に水 40mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層に1N HCl 40mLを加えて、再度有機層と水層に分離した。得られた有機層を10%食塩水 40mLで洗浄した後、減圧下濃縮することで(4R)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダイト-4-酢酸第三ブチル 4.65gをジアステレオ混合物の粗精製物として得た。
【0268】
2) (4R)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダイト-4-酢酸第三ブチル粗精製物 4.65g、アセトニトリル 20mLからなる溶液を-10℃に冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム 3.21g(15.0mmol)、塩化ルテニウム水和物 21mg(0.1mmol)、水 60mLからなる溶液を10分かけて滴下した。-20℃で5分撹拌した後、室温で3時間撹拌した。反応混合物に炭酸ナトリウム 1.20g(11.3mmol)、水 60mL、酢酸エチル 90mLを加えた後、有機層と水層に分離した。得られた有機層をNaCl 6.00g(102mmol)、水 54mLからなる混合物で洗浄した後、減圧下濃縮することで(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダート-4-酢酸第三ブチル 4.31gを粗精製物として得た。
【0269】
(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダート-4-酢酸第三ブチル
【化112】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間:3.63分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:79.2%(検出波長205nm、保持時間3.43分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
H-NMR(CDCl、400MHz)δ:1.44(9H、s)、2.68-2.80(1H、m)、2.82-2.96(1H,m)、4.33(1H、t、J=7.2)、4.48-4.53(4H、m)、4.81(1H、dd、9.6,6.0)、7.31-7.45(4H、m)、7.66-7.79(4H、m)
ESI(LC/MSネガティブモード)m/z:504.49(M+HCO
【0270】
実施例35:(3S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ-4-n-プロポキシ酪酸(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化113】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダート-4-酢酸第三ブチル 50mg(0.108mmol)、リン酸二水素ナトリウム 50mg、1-プロパノール 1mLからなる混合物を70℃に加熱しながら2時間撹拌した後、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0271】
(3S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ-4-n-プロポキシ酪酸
【化114】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間:3.21分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:24.6%(検出波長205nm、保持時間2.67分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSネガティブモード)m/z:428.42(M+HCO
【0272】
(3S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ-4-n-プロポキシ酪酸第三ブチル
【化115】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間:3.89分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:29.9%(検出波長205nm、保持時間3.61分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:440.70(M+H
【0273】
実施例36:(3S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ-4-i-プロポキシ酪酸(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化116】

(4S)-5-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-1,2,5-スルファミダート-4-酢酸第三ブチル 30mg(0.065mmol)、リン酸二水素ナトリウム 30mg、2-プロパノール 0.6mLからなる混合物を70℃に加熱しながら2時間撹拌した後、反応混合物をHPLCを用いて分析した。
【0274】
(3S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ-4-i-プロポキシ酪酸
【化117】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間:3.16分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:7.2%(検出波長205nm、保持時間2.64分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSネガティブモード)m/z:382.63(M‐H
【0275】
(3S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ-4-i-プロポキシ酪酸第三ブチル
【化118】

光学純度:99.9%ee(検出波長205nm、保持時間:3.82分、高速液体クロマトグラフィーの条件3)
UV強度比:22.2%(検出波長205nm、保持時間3.57分、高速液体クロマトグラフィーの条件2)
ESI(LC/MSポジティブモード)m/z:440.70(M+H
【0276】
(2S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ-2-ヒドロキシメチルプロピオン酸ベンジルを出発原料とする製造例
実施例37:(5S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジル
【化119】

1) 塩化チオニル 2.38g(20.0mmol)、酢酸エチル 80mLからなる溶液を-40℃に冷却し、(2S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ‐2‐ヒドロキシメチルプロピオン酸ベンジル 4.32g(10.0mmol)、ジクロロメタン 12mLからなる溶液を5分かけて滴下する。そのままの温度で5分撹拌してから、ピリジン 3.96g(50.0mmol)を5分かけて滴下する。-40℃で5分撹拌してから、室温で2間撹拌する。反応混合物に水 40mLを加えた混合物を有機層と水層に分離する。得られた有機層に1N HCl 40mLを加えた混合物を再度有機層と水層に分離する。得られた有機層を10%食塩水 40mLで洗浄してから減圧下濃縮することで(5S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジルをジアステレオ混合物の粗精製物として得る。
【0277】
2) (5S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジルの上記粗精製物、アセトニトリル 20mLからなる溶液を-10℃に冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム 3.21g(15.0mmol)、塩化ルテニウム水和物 21mg(0.1mmol)、水 60mLからなる溶液を10分かけて滴下する。-20℃で5分撹拌してから、室温で3時間撹拌する。反応混合物に炭酸ナトリウム 1.20g(11.3mmol)、水 60mL、酢酸エチル 90mLを加えた混合物を有機層と水層に分離する。得られた有機層をNaCl 6.00g(102mmol)、水 54mLからなる混合物で洗浄してから、減圧下濃縮することで(5S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジルを粗精製物として得る。
【0278】
実施例38:(2S)-2-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノメチル-3-n-プロポキシプロピオン酸ベンジル(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化120】

(5S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジル 50mg(0.104mmol)、リン酸二水素ナトリウム 50mg、1-プロパノール 1mLからなる混合物を70℃に加熱しながら2時間撹拌してから反応混合物をHPLCを用いて分析する。
【0279】
実施例39:(2S)-2-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノメチル-3-i-プロポキシプロピオン酸ベンジル(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化121】

(5S)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジル 50mg(0.104mmol)、リン酸二水素ナトリウム 50mg、2-プロパノール 1mLからなる混合物を70℃に加熱しながら2時間撹拌してから反応混合物をHPLCを用いて分析する。
【0280】
(2R)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ‐2‐ヒドロキシメチルプロピオン酸ベンジルを出発原料とする製造例
実施例40:(5R)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジル
【化122】

1) 塩化チオニル 2.38g(20.0mmol)、酢酸エチル 80mLからなる溶液を-40℃に冷却し、(2R)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノ‐2‐ヒドロキシメチルプロピオン酸ベンジル 4.32g(10.0mmol)、ジクロロメタン 12mLからなる溶液を5分かけて滴下する。そのままの温度で5分撹拌してから、ピリジン 3.96g(50.0mmol)を5分かけて滴下する。-40℃で5分撹拌してから、室温で2間撹拌する。反応混合物に水 40mLを加えた混合物を有機層と水層に分離する。得られた有機層に1N HCl 40mLを加えた混合物を再度有機層と水層に分離する。得られた有機層を10%食塩水 40mLで洗浄してから減圧下濃縮することで(5R)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジルをジアステレオ混合物の粗精製物として得る。
【0281】
2) (5R)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジルの上記粗精製物、アセトニトリル 20mLからなる溶液を-10℃に冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム 3.21g(15.0mmol)、塩化ルテニウム水和物 21mg(0.1mmol)、水 60mLからなる溶液を10分かけて滴下する。-20℃で5分撹拌してから、室温で3時間撹拌する。反応混合物に炭酸ナトリウム 1.20g(11.3mmol)、水 60mL、酢酸エチル 90mLを加えた混合物を有機層と水層に分離する。得られた有機層をNaCl 6.00g(102mmol)、水 54mLからなる混合物で洗浄してから、減圧下濃縮することで(5R)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジルを粗精製物として得る。
【0282】
実施例41:(2R)-2-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノメチル-3-n-プロポキシプロピオン酸ベンジル(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化123】

(5R)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジル 50mg(0.104mmol)、リン酸二水素ナトリウム 50mg、1-プロパノール 1mLからなる混合物を70℃に加熱しながら2時間撹拌してから反応混合物をHPLCを用いて分析する。
【0283】
実施例42:(2R)-2-(9-フルオレニル)メトキシカルボニルアミノメチル-3-i-プロポキシプロピオン酸ベンジル(リン酸二水素ナトリウム添加)
【化124】

(5R)-3-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル-2,2-ジオキソ-1,2,3-オキサチアジナン-5-カルボン酸ベンジル 50mg(0.104mmol)、リン酸二水素ナトリウム 50mg、2-プロパノール 1mLからなる混合物を70℃に加熱しながら2時間撹拌してから反応混合物をHPLCを用いて分析する。
【産業上の利用可能性】
【0284】
本発明は、O-置換セリン誘導体の新規な製造方法を提供するものである。本発明の製造方法を用いることにより、ペプチド医薬品の探索、および/または医薬品の原薬供給に有用な非天然アミノ酸を高い位置選択性、化学収率、および光学純度を伴って提供することができる。