(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099612
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】即席麺用の麺塊の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/113 20160101AFI20230706BHJP
A21C 11/24 20060101ALI20230706BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20230706BHJP
【FI】
A23L7/113
A21C11/24 A
A23L7/109 J
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078245
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2018220077の分割
【原出願日】2018-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000244109
【氏名又は名称】明星食品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 美隆
(72)【発明者】
【氏名】畠山 晃子郎
(57)【要約】
【課題】蒸煮工程を有する麺類の製造において、麺線のウエーブ度合いが均一で、蒸煮ムラや乾燥ムラや糊化度のムラが少なくて、麺線同士の結着がなくてほぐれ易い麺を得るための麺線の切り出し搬送方法および装置を得ることを課題とする。
【解決手段】製麺ライン工程において、一対の切刃ロールより切り出しされた麺線群について、製麺ラインの進行方向に対して下流側の第一切刃ロールより切り出された麺線群と上流側の第二切刃ロールにより切り出された麺線群を、当該製麺ラインの進行方向に対して、それぞれ順方向及び逆方向に搬送し、その後、逆方向の搬送を順方向の搬送に反転する麺線の切り出し搬送方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製麺ライン工程において、一対の切刃ロールより切り出しされた麺線群について、製麺ラインの進行方向に対して下流側の第一切刃ロールより切り出された麺線群と上流側の第二切刃ロールにより切り出された麺線群を、当該製麺ラインの進行方向に対して、それぞれ順方向及び逆方向に搬送し、その後、逆方向の搬送を順方向の搬送に反転する麺線の切り出し搬送し、当該搬送された麺線群を利用して即席麺用の麺塊を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類の製造において、麺帯から麺線を切り出して次工程に搬送する麺線の切り出し搬送方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
即席麺に於いて麺線同士の結着を防止する技術は、従来より切刃にて切り出された麺線を直下のウエーブボックスで麺線に強いウエーブをつける方法やウエーブの少ないストレートタイプの麺線においては麺帯や麺線に粉末油脂を施す方法が行われている。
即席麺に於いて上述のような技術を用いても、熱風乾燥麺やストレート状の麺においては、麺線間の結着による戻りムラや、それによる調理時のほぐれの悪さが問題になる場合がある。即席麺における麺線間の結着を防止する技術は上記以外に、例えば、特許文献1(特開昭52-128254)がある。特許文献1は麺線の表面に食用油脂の水系乳化液を付着した後蒸熱しその後乾燥する即席麺の製造方法で、結着なく均一に復元する即席麺が得られるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかし、特許文献1において、麺線の表面に食用油脂の水系乳化液を付着させた後蒸煮するとあるが、2段にウェーブした麺線表面に均一に水系乳化液を付着させることは難しい。
また均一に付着させるために麺線を水系乳化液に浸漬する方法が考えられるが、水系乳化液に漬ける際に浮力や液体の流れによって麺線の形状が乱れて蒸熱時に麺線同士の結着が発生するなどして蒸後の麺線に均一に熱が伝わらず、品質不安定になる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記従来技術における問題点を解決するものであり、蒸煮工程を有する麺類の製造において、麺線のウエーブ度合いが均一で、蒸煮ムラや乾燥ムラや糊化度のムラが少なくて、麺線同士の結着がなくてほぐれ易い麺を得るための麺線の切り出し搬送方法および装置を得ることを課題とする。
さらには、ウエーブが少ない麺線において、麺線同士の結着がなくてほぐれ易い麺線の切り出し搬送方法および装置を得る事を課題とする。蒸煮ムラや乾燥ムラや糊化度のムラが少なくて、麺線同士の結着がなくてほぐれ易い麺を得るための麺線の切り出し搬送方法および装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの鋭意研究の結果、製麺ライン工程において、一対の切刃ロールより切り出しされた麺線群について、製麺ラインの進行方向に対して下流側の第一切刃ロールより切り出された麺線群と上流側の第二切刃ロールにより切り出された麺線群を当該製麺ラインの進行方向に対して、それぞれ順方向及び逆方向に搬送し、その後、逆方向の搬送を順方向の搬送に反転して搬送することによって、その後の蒸煮等の工程においても好適な麺線を得ることができることを見出して、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、一方の切刃ロールから切り出した麺線群を一旦、製麺ラインとは逆方向に搬送し、当該逆方向に搬送したものをさらに順方向に反転させるため、機械設備も複雑化し、一見すると煩雑になるような構成を敢えて採用することで、麺線同士の結着がなくほぐれ易い麺線とすることが可能となったのである。
【0007】
すなわち、本願第一の発明は、
“製麺ライン工程において、一対の切刃ロールより切り出しされた麺線群について、製麺ラインの進行方向に対して下流側の第一切刃ロールより切り出された麺線群と上流側の第二切刃ロールにより切り出された麺線群を、当該製麺ラインの進行方向に対して、それぞれ順方向及び逆方向に搬送し、その後、逆方向の搬送を順方向の搬送に反転する麺線の切り出し・搬送方法。”、である。
【0008】
次に、上記の切り出し方法は、ウエーブボックスをそれぞれの切刃ロールごとに対して設けることでウエーブ麺に対しても好適に適用することができる。
すなわち、本願第二の発明は、
“前記製麺ラインの進行方向に対して下流側の第一切刃ロールより切り出された麺線群と上流側の第二切刃ロールにより切り出された麺線群のそれぞれについて、別個のウエーブボックスを通過させた後にコンベア搬送する請求項1に記載の麺線の切り出し搬送方法。”、である。
【0009】
次に、本発明においては、前記麺線群の逆方向の搬送を順方向の搬送に反転の後、順方向に搬送する麺線群同士を積層させる方法が好適に利用できる。
すなわち、本願第三の発明は、
“前記麺線群の逆方向の搬送を順方向の搬送に反転の後、順方向に搬送する麺線群同士を積層させて搬送する請求項1又は2に記載の麺線の切り出し搬送方法。”、である。
【0010】
次に、本発明においては、前記の順方向同士の搬送を別個の経路として並列のまま、次の処理工程である蒸煮工程に移行してもよい。
すなわち、本願第四の発明は、
“前記麺線群の順方向の搬送及び逆方向の搬送から反転した順方向の搬送のそれぞれが、別個の経路による搬送のまま蒸煮工程に移行する請求項1~3のいずれかに記載の麺線の切り出し搬送方法。”、である。
【0011】
次に、本発明においては、別個の順方向コンベアで搬送する麺線群のウエーブが略同形状とすることもできる。
すなわち、本願第五の発明は、
“前記別個のコンベアによって搬送される麺線群のウエーブが略同形状である請求項4に記載の麺線の切り出し搬送方法。”、である。
【0012】
次に、本発明おいては、さらに前記搬送中の麺線群に対してほぐれ剤を付与する方法も好ましい。
すなわち、本願第六の発明は、
“前記搬送中の麺線群に対してほぐれ剤を付与する請求項1~5のいずれかに記載の麺線の切り出し搬送方法”、である。
【0013】
次に、本発明においては、上記搬送を実現する麺線の切り出し搬送装置も意図している。
すなわち、本願第七の発明は、
“製麺ライン工程において、一対の切刃ロールより切り出しされた麺線群について、製麺ラインの進行方向に対して下流側の第一切刃ロールより切り出された麺線群と上流側の第二切刃ロールにより切り出された麺線群を当該製麺ラインの進行方向に対して、それぞれ順方向及び逆方向に搬送し、その後、逆方向の搬送を順方向の搬送に反転する麺線の切り出し搬送装置。”、である。
【0014】
次に、本発明においては、前記麺線群の順方向の搬送及び逆方向の搬送から反転した順方向の搬送のそれぞれが、別個のコンベアによる搬送とした装置も可能である。
すなわち、本願第八の発明は、
“前記麺線群の順方向の搬送及び逆方向の搬送から反転した順方向の搬送のそれぞれが、別個のコンベアによる搬送である請求項7に記載の麺線の切り出し搬送装置。”、である。
【0015】
次に、本発明においては、ほぐし剤を付与するための装置を備えることも好ましい。
すなわち、本願第九の発明は、
“前記麺線切り出し搬送装置が、搬送される麺線群に対してほぐし剤を付与するための装置を備えた請求項7又は8に記載の麺線切り出し搬送装置。”、である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の“麺線の切り出し搬送方法”又は“麺線切り出し搬送装置”を利用することで蒸煮工程を有する麺類の製造において、蒸煮ムラや乾燥ムラや糊化度のムラが少なくて、麺線同士の結着がなくてほぐれ易い麺を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一の実施態様の麺線切り出し搬送方法(装置)を示した模式図である。
【
図2】本発明における製麺ラインの進行方向を示した参考図である。
【
図3】麺線切り出し装置における切刃ロールとカスリの位置関係を示した断面模式図である。
【
図4】
図3において麺帯及び麺線を切り出した場合の状態を示した断面模式図である。
【
図5】本発明の第一の実施態様のウエーブボックスを示した断面模式図である。
【
図6】本発明において、ほぐれ剤を付与する場合を示した模式図である。
【
図7】本発明の他の実施態様1の麺線切り出し搬送方法(装置)を示した模式図である。
【
図8】本発明の他の実施態様2の麺線切り出し搬送方法(装置)を示した模式図である。
【
図9】本発明の他の実施態様3の麺線切り出し搬送方法(装置)を示した模式図である。
【
図10】本発明の実施例1の麺線切り出し搬送方法(装置)を示した模式図である。
【
図11】本発明の比較例1の麺線切り出し搬送方法(装置)を示した模式図である。
【
図12】本発明の比較例1の麺線切り出し装置におけるウエーブボックスを示した断面模式図である。
【
図13】本発明の実施例2の麺線切り出し搬送方法(装置)を示した模式図である。
【
図14】本発明の比較例2の麺線切り出し搬送方法(装置)を示した模式図である。
【符号の説明】
【0018】
1 麺線切り出し装置
3 第一切刃ロール
5 第二切刃ロール
7 第一コンベア
9 第二コンベア
11 第三コンベア
13 第四コンベア
15 カスリ
17 ウエーブボックス
18 ウエーブボックス(従来タイプ)
19 噴霧装置(ほぐれ剤用)
21 第五コンベア
23 第六コンベア
25 蒸機
251 第一蒸機
252 第二蒸機
MT 麺帯
MS 麺線
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
図1は本願の麺線の切り出し搬送装置の第一の実施態様について示した側面模式図である。
【0020】
─全体の構成─
本願の第一実施態様の麺線切り出し搬送装置は、製麺ラインの進行方向に対して下流側の第一切刃ロール3及び上流側の第二切刃ロール5からなる一対の切刃ロールを含む麺線切り出し装置1と、第一切刃ロール3より切り出された麺線群MSを製麺ラインの進行方向に対して、順方向に搬送する第一コンベア7と、第二切刃ロールより切り出された麺線群を製麺ラインの進行方向に対して逆方向に搬送する第二コンベア9と、当該第二コンベア9において逆方向に搬送されている麺線群を受け渡し、反転させて順方向に搬送するように第三コンベア11と、当該第三コンベア11より麺線群MSを受け渡し、さらに順方向に搬送する第四コンベア13が備えられている。
そして、先に述べた第一コンベア7により順方向に搬送されている麺線群MSと、第四コンベア13によって順方向に搬送されている麺線群を積層させて搬送するように構成されている。
以下これらの構成について詳細に説明する。
【0021】
─製麺ラインの進行方向─
本発明は、製麺ラインにおいて使用する麺線切り出し搬送装置を意図している。製麺ラインとは、連続的に麺線群を製造するラインを意図している。本発明にいう製麺ラインの進行方向とは、当該麺線群を製造していく場合において、ドウを圧延した麺帯から切り出した麺線群をコンベアで搬送し、次工程に移行していく場合のコンベアの進行方向をいう。
【0022】
例えば、即席麺の製造であると、ドウを圧延した麺帯から切り出した麺線群をコンベアで搬送して、蒸煮工程に移す。蒸煮工程を経た麺線群は必要に応じて着味されて、カットされ、型枠に収納された後に乾燥工程に移る。油熱乾燥や熱風乾燥の乾燥工程を経て麺塊が完成する。すなわち、即席麺の製造工程においては、主な工程として、ドウを圧延後における麺線の切り出し→ 蒸煮→着味→カット→型詰め→油熱又は熱風乾燥の順に進行していくのが一般的である。
【0023】
また、生麺の製造ラインであると、ドウを圧延した麺帯を切り出しした麺線群を所定長さにカットして生麺を完成させる。そして、製麺ラインは、これらの順の工程が連続して実施されるように特定の向きに各工程が進行する。このように特定の方向に向かう一方向のラインを有しているのが一般的である。
以下の、
図2に示すように本発明にいう製麺ラインの進行方向とは当該ラインの進行方向をいうものとする(但し、即席麺の製造ラインの場合を示す)。
【0024】
─一対の切刃ロール─
本発明においては、麺線群を一対の切刃ロールより切り出す構成を備える。当該切刃ロールは
図1、3及び4に示すように、製麺ラインの進行方向に対して下流側の第一切刃ロール3と上流側の第二切刃ロール5が対抗して配置されている。
麺線群MSの調製においは、小麦粉、デンプン等に練り水を加えて混練して調製するドウを圧延して得られる麺帯を当該一対の切刃ロール間に挿入することによって各切刃ロールの溝部に麺帯が押し込まれると同時に麺線が形成される。
そして、当該切刃ロールの溝部に下方部に挿入されるように位置するカスリ15によって麺線群が掻き出されて下方部に落下する。
すなわち、麺帯が一対の切刃ロールによって麺線に切り出しされ、各切刃ロールに押し込まれた麺線群が当該切刃ロールの溝部にその先端部が挿入するように固定されたカスリに接触して外部に掃き出される(
図4)。
【0025】
─製麺ラインの進行方向に対して下流側の切刃ロール─
本発明における製麺ラインの進行方向に対して下流側の第一切刃ロールとは、一対の切刃ロールのうち製麺ラインの進行方向に対して下流側の一方をいう。本発明の第一の実施態様において、当該第一切刃ロール3から、当該第一切刃ロールに挿入されたカスリ15によって一群の麺線群MSが外部に掃き出される。
【0026】
─上流側の切刃ロール─
本発明にいう上流側の第二切刃ロールとは、一対の切刃ロールのうち、製麺ラインの進行方向に対して上流側の切刃ロールをいう。本発明の第一の実施態様においては、一対の切刃ロールのうち、上流側の第二切刃ロール5を指している。当該第二切刃ロール5から、当該第二切刃ロール5に挿入されたカスリ15によって一群の麺線群MSが外部に掃き出される。
【0027】
─第一コンベア─
本発明の第一実施態様においては、第一コンベア7においては、第一切刃ロール3において切り出された麺線群MSを順方向に搬送するコンベアである。以下の図に示すように製麺ラインの進行方向に対して順方向に麺線群を搬送するコンベアである。
第一コンベア7は、第一切刃ロール3からの麺線群MSの落下位置に配置されており、上述のように第一切刃ロール3より切り出された麺線群MSが、当該第一コンベア7上に着地して順方向に麺線群を搬送する(
図1)。
【0028】
─第二コンベア─
本発明の第一実施態様において、第二コンベア9においては、第二切刃ロール5において切り出された麺線群MSを
図2に示すように製麺ラインの進行方向に対して逆方向に搬送するコンベアである。
第二コンベア9は、第二切刃ロール5からの麺線群MSの落下位置に配置されており、上述のように第二切刃ロール5より切り出された麺線群が、当該第二コンベア9上に着地して逆方向に麺線群を搬送する。
【0029】
─順方向及び逆方向への搬送する目的─
本願発明においては、上述のように切刃ロールから切り出された麺線群MSのうち、下流側の第一切刃ロール3から切り出された麺線群を順方向に搬送するとともに、他方の上流側の第二切刃ロール5から切り出された麺線群を逆方向に搬送する。このようにすることで、各切刃ロールから切り出された麺線同士のお互いの麺線群の干渉や接触を避けることができる。
また、各切刃ロール3,5の回転方向と各コンベアの進行方向を同じくすることで、両麺線群のウエーブ形状やウエーブの程度やストレートの程度を同じくすることができる。
【0030】
─逆方向の搬送を順方向の搬送に反転する─
本発明においては、前記逆方向に搬送される麺線群MSを順方向に反転する工程を有する。本発明の第一の実施態様においては、第二コンベア9によって逆方向に搬送される麺線群がその下方部に位置する第三コンベア11に麺線群が受け渡しされる際に方向が逆転して順方向への搬送に反転される。これによって、逆方向に搬送されている麺線群を製麺ラインの進行方向に対して順方向に戻すことができる。
【0031】
また、このように、反転して折り返し麺線群MSを裏返すことによって、第二コンベア9上でのウエーブ形状やウエーブの程度やストレートの程度を変えることなく製麺ラインの進行方向に対して順方向に戻すことができて、第一コンベア7からの麺線群の状態と同様の状態とすることが出来て好適である。
尚、本発明の第一の実施態様においては、第三コンベア11は、順方向に向かって下向きの傾斜を有しているが、本発明は本態様に限定されないことは勿論である。
【0032】
─第四コンベア─
本発明の第一の実施態様においては、第三コンベア11から麺線群を第四コンベア13に受け渡しする。当該第四コンベア13は順方向に向かって上向きに傾斜を有しており、第三コンベア11から上向きに麺線群を搬送する。
また、本発明の第一の実施態様においては、当該第四コンベア13は、その下流において、前記第一コンベア7から搬送されてきた麺線群と合流する態様を採用している。すなわち、第四コンベアの下流側で、第一コンベア7によって搬送されてきた麺線群が上部に積層された状態で搬送される。これによって上段の麺線群及び下段の麺線群の上下二段の状態で麺線群が搬送される。
【0033】
─ウエーブボックス─
本発明の麺線切り出し装置においては、切り出し後の麺線群MSについてウエーブボックス17を経由することによってウエーブ状に形成することも可能である。ウエーブボックス17とは当該ボックス内で切出された麺線群を詰まらせて屈曲させた状態として、順次麺線群を排出させる部材である。すなわち、
図5に示すように、当該ウエーブボックス17を通過させることによってウエーブ状態の麺線群とすることができる。尚、
図5はウエーブボックス17の内部の断面模式図を示す。
尚、当該ウエーブボックスは、
図5に示すように二股状とし、それぞれは曲面状(略円形状)の形状を有することが好ましい。また、切刃装置は水平に位置した状態となっている。
【0034】
─ほぐれ剤─
本発明においては、その途中の搬送工程において、ほぐれ剤を付与してもよい。ほぐれ剤は、麺線間の結着の防止のために使用する。
図6の態様においては、本発明の第一の実施態様において、第一コンベア7及び第二コンベア9及び第四コンベア13において搬送中の麺線群に噴霧装置19によってほぐれ剤を付与している状態を示している。このように切刃ロールごとから切り出される麺線群を直ちに積層するのではなく、別経路で搬送することで、乳化剤を麺線群の表面に漏れを少なくして塗布することができる。
尚、
図6においては、ウエーブボックス17を利用する態様であって、第一コンベア7、第二コンベア9、第四コンベア13に噴霧によりほぐれ剤を噴霧している態様を示しているが、例えば、第一コンベア7及び第二コンベア9のみだけでも良いし、第一コンベア7及び第四コンベア13のみであってもよいことは勿論である。
【0035】
このように、生麺の状態においてほぐれ剤を添付することによって例えば、その後に即席麺を製造した場合において湯戻しした後において、当該即席麺のほぐれを改善することができる。
ほぐれ剤としては、乳化剤や油脂やこれらを水と乳化した乳化油脂や粉末油脂を用いることができる。乳化剤としてはショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン等を利用することができる。
【0036】
また、その他の麺用のほぐれ剤として、粉末油脂を利用することもできる。使用される粉末油脂は、常温で固体の粉末状~微小粒状で、蒸煮時に溶融する粉末油脂が好ましい。具体的には、パーム油や菜種油等の植物性油脂の硬化油脂や分別油脂がよく、好ましくは上昇融点として45~75℃特に好ましくは55~65℃程度のものが使用できる。また、粒度としてはメジアン径で好ましくは20~500μm程度、特に好ましくは50~200μm程度のものが使用でき、あまり大きいと、特に付着後に圧延して固着させる操作を有さない場合には、粉末油脂の脱落が起こり易い。粉末油脂の形状としては、流動性の良いものがよく、球状のものが均一に散布できる点では好ましいが、針状のもの等いずれも使用できる。
さらに、他の麺用のほぐれ剤としては、アラビアガム、大豆由来の水溶性ヘミセルロース等も用いることができる。尚、本発明におけるほぐれ剤としては、粉末状、液体状のいずれも可能である。
【0037】
─その後の工程─
本発明の第一の実施態様においては、前記第四コンベア13が継続して麺線群MSを搬送して、その後必要に応じて、コンベアを乗り移り等をしながら次の工程に移行する。具体的には即席麺であると、続いて蒸煮工程が連続して実施され、それに続いて一定長さにカットされて、枠体(リテーナ)に当該カット後の麺線群が投入されて、油熱乾燥や熱風乾燥によって麺塊が完成する。
乾燥した麺塊には、液体又は粉末スープが添付されて袋入り即席麺やカップ入り即席麺が完成する。
【0038】
─本願の他の実施態様1─
図7は本願の他の実施態様を示したものである。先の本願第一の実施態様においては第四コンベア13の下流側において、第一コンベア7によって搬送されてきた麺線群が上部に積層された状態で搬送される態様を示しているが、
図7のタイプは、第一コンベア7及び第四コンベア13によって搬送される麺線群が、上下の位置関係にある第五コンベア(上側)21及び第六コンベア(下側)23に移送されて、当該第五、第六コンベアのまま、蒸機に導入されるタイプを示している。
通常、蒸し工程の段階で麺線群の重なりが大きいと麺線群同士が結着することが多いため、このように別経路で搬送することによって麺線同士の結着を防止することができる。
【0039】
─本願の他の実施態様2─
図8は本願の他の実施態様2を示したものである。先の他の実施態様1においては、それぞれ上下の位置にある第五コンベア21及び第六コンベア23に移送されて、当該第五、第六コンベアのまま、蒸機に導入されるタイプを示していたが、この他の実施態様2においては、上述の実施態様2において、第五コンベア21と第六コンベア23が別個の蒸機(第一蒸機251及び第二蒸機252)に導入される態様を示している。このような態様であっても可能である。
【0040】
─本願の他の実施態様3─
図9は、他の実施態様3を示したものである。前述のように
図7及び
図8のタイプは、第一コンベア7及び第四コンベア13によって搬送される麺線群がそれぞれ第五コンベア21、第六コンベア23に移送されて、当該第五、第六コンベアのまま、蒸機に導入されるタイプを示していたが、
図9は、
図7及び
図8のタイプにおいて第一コンベア7、第二コンベア9及び第四コンベア13の各コンベアにおいて搬送される麺線群にほぐれ剤を噴霧している態様を示している。
このような態様によって、麺線群にほぐれ剤を十分に供給しつつ搬送することによってこの状態のまま麺線群を蒸煮等の次工程に移行できるため、麺線群同士の結着をより効果的に防止することができる。
【実施例0041】
以下に本発明の実施例について記載する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されないことは勿論である。
【0042】
[実施例1]
本発明の切り出し搬送方法(装置)を利用して麺塊を調製した。小麦粉880g澱粉120gからなる主原料粉1kgに、かん水140gを溶解した練り水430mlを加えて、これをミキサーで良く混練して麺生地を得た。この麺生地を成形して1.25mm厚の麺帯形状とした。
この麺帯を
図10に示す本発明に係る切刃装置(ウエーブボックス17を備えたタイプ)に供して、順方向・逆方向の分離搬送を経て、逆方向の搬送を順方向に反転し、当該搬送中の麺線群の上部に順方向の麺線群が積層するように重ねて、当該状態で蒸機にて蒸煮工程に供した。
【0043】
蒸煮後において、麺線群を冷水層に3秒通過させて、長さ25cmにカットし、当該麺線群を約100g、乾燥用の型枠に入れた後、60分熱風乾燥を実施した。当該乾燥後において得られた麺塊を後のほぐれ試験に供した。
評価は、得られた麺塊にお湯450mlを注加して、4分、保持した後、箸で当該麺塊を攪拌して麺線のほぐれ状態を確認した。評価は熟練の技術者5名が行い以下の評価基準で採点した。評価基準は、◎(ほぐれ最良)〇(ほぐれ良好)〇△(ほぐれやや良)△(ほぐれ普通)×(ほぐれ悪)で評価した。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
実施例1で用いた同じ配合から同様に厚み1.25mmの麺帯を調製した。当該麺帯を
図11のようなウエーブボックス18を備えた従来までの通常の切刃ロール(第一切刃ロール3及び第二切刃ロール5から切り出された麺線群MSを切り出し直後にウエーブボックス内で積層した状態として、同一方向にコンベア搬送するタイプ)に供した。得られた麺線群MSを実施例1と同様に着味・カット・型詰・乾燥することによって麺塊を得た。当該麺塊を後のほぐれ試験に供した。
【0045】
尚、
図11のウエーブボックスは従来までのタイプを示しており、当該ウエーブボックスにおいてはウエーブボックスの内部で
図12に示すような状態で麺線群MSの第一切刃ロール及び第二切刃ロールから切り出された麺線群の積層体が形成された状態となり、この状態でコンベア上で搬送される。
【0046】
[実施例2]
実施例1とは異なり蒸煮する前にほぐれ剤(油脂、モノグリセリド、増粘多糖類を含有する乳化剤)を付与して当該効果を調べた(
図13)。実施例1で用いた配合から同様に厚み1.25mmの麺帯MTを調製した。当該麺帯を上図に示すような本実施例の切刃ロールに供するとともに、切り出し後の麺線群に対して順方向及び逆方向の麺線群にほぐれ剤を付与して、その後は実施例1と同様に着味・カット・型詰・乾燥することによって麺塊を得た。当該麺塊を後のほぐれ試験に供した。
【0047】
[比較例2]
比較例1とは異なり蒸煮する前に実施例2と同様にほぐれ剤を付与してほぐれ剤(油脂、モノグリセリド、増粘多糖類を含有する乳化剤)を付与して当該効果を調べた(
図14)。実施例1で用いた同じ配合から同様に厚み1.25mmの麺帯を調製した。当該麺帯を上図のような通常の切刃ロールに供した。得られた麺線群を実施例1と同様に着味・カット・型詰・乾燥することによって麺塊を得た。当該麺塊を後のほぐれ試験に供した。
【0048】
【表1】
実施例1及び2においては、麺線の結着が少なく、蒸煮ムラも少ない良好な麺塊を製造することができた。本願発明に係る麺線の切り出し搬送方法の効果を示す結果である。