IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベオリア アンビロンヌマン−ベウの特許一覧

<>
  • 特開-多数の水資源の管理ツール 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099662
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】多数の水資源の管理ツール
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230706BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081579
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2019526378の分割
【原出願日】2017-07-27
(31)【優先権主張番号】1657370
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】519031900
【氏名又は名称】ベオリア アンビロンヌマン-ベウ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マガリ ドシュヌ
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ケシュ
(72)【発明者】
【氏名】ボリ ダビド
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン マツェッラ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール マンデル
(57)【要約】
【課題】水資源と需要との間のバランスに応じて最適化され、エネルギー消費を最適化し、原水及び/又は処理水の移送を効率化するシステムを提供する。
【解決手段】相互接続されている少なくとも2つの水生産設備と、少なくとも1つの生産設備に供給する少なくとも1つの水資源と、需要の時間曲線により規定される少なくとも1つの生産水のユーザと、を備える定量的水管理システムであって、生産設備、水資源及びユーザの間の接続のそれぞれは、最大流量を有する移送構造物により提供され、該移送構造物は相互接続でき、各生産設備及び各水資源はさらに重み関数Pに関連付けられ、需要の時間曲線に適合し、システムの異なる構成要素の最大流量及び/又は最小流量を遵守するという制約への適合を保証しながら、異なる構成要素のすべての重み関数Pの和である、システムの全体の重み関数Pgを最小化するコンピュータを備えるように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接又は間接的に相互接続されている少なくとも2つの水生産設備(U)であって、それぞれが最大生産流量により規定される水生産設備(U)と、
少なくとも1つの生産設備(U)に供給する少なくとも1つの水資源(S)であって、それぞれが最大汲み上げ流量により規定される水資源(S)と、
時間の関数として予め設定された生産水に対する需要の時間曲線により規定される少なくとも1つの生産水のユーザ(D)と、の構成要素を備える定量的に水を管理するシステムであって、
生産設備(U)、水資源(S)、及びユーザ(D)の間の接続のそれぞれは、予め設定された最大流量を有する移送構造物(C)により提供され、該移送構造物(C)は相互接続されることができて、
各生産設備(U)及び各水資源(S)はさらに重み関数Pに関連付けられている、システムにおいて、
予め設定された各ユーザ(D)の生産水に対する需要の時間曲線に適合すること、及び前記システムの異なる構成要素の最大流量及び/又は最小流量を遵守するという制約に適合することを保証しながら、前記システムの異なる構成要素のすべての重み関数Pの和である、前記システムの全体の重み関数Pgを最小化するよう構成されている第1コンピュータを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記予め設定された生産水の各ユーザ(D)の生産水に対する需要の時間曲線の達成が、前記水資源(S)から汲み上げ可能な水の量、前記生産設備(U)により生産される水の量、及びシステム制約を遵守するようにさらに拘束されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
異なる移送構造物(C)は、前記システムが該システムの制約を遵守しながら前記全体の重み関数Pgを最小化する前記予め設定された時間曲線に従ってリアルタイムでユーザ(D)へ生産水を与えるように前記第1コンピュータにより制御されるバルブ(V)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
最も小さい重み関数Pに関連付けられた前記生産設備(U)は、最大の重み関数Pに関連付けられた、前記水生産設備(U)に優先的に生産水を送る、及び/又は前記最大の重み関数Pに関連付けられた前記ユーザ(D)に優先的に生産水を送ることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
多数の水資源(S)に接続されている生産設備(U)は、最も小さい重み関数Pに関連付けられたソースから多量の水をくみ上げることを優先することを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
エネルギー消費を最小化しながら前記需要を満たすために、それぞれが前記ユーザ(D)の前記予め設定された時間曲線の割合に対応する生産戦略を規定するよう構成されている第2コンピュータをさらに備え、該第2コンピュータは前記第1コンピュータが各生産戦略に対する前記全体の重み関数Pgの最小値を生成するように前記第1コンピュータに接続され、前記第2コンピュータはさらに、前記最小化された需要の変動に対する前記全体の重み関数Pgの変動比率に対して最大の需要達成割合を与える戦略として規定される最良の戦略を決定するよう構成されていることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
統計アルゴリズムによって解析された過去データに基づいて、前記資源(S)の水文地質学及び前記予め設定された前記ユーザ(D)の生産水に対する需要の時間曲線を規定するよう構成されている第3コンピュータをさらに備えることを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの水資源(S)は帯水層であり、前記汲み上げ可能な水の量は地下水面水位に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
直接又は間接的に相互接続されている少なくとも2つの水生産設備(U)であって、それぞれが最大生産流量により規定される水生産設備(U)と、
前記生産設備(U)の少なくとも1つに接続されている少なくとも1つの水資源(S)であって、それぞれが最大汲み上げ流量により規定される水資源(S)と、
時間の関数として予め設定された生産水に対する需要の時間曲線により規定される少なくとも1つの生産水のユーザ(D)と、の構成要素を備えるシステムの定量的水管理の方法であって、
生産設備(U)、水資源(S)、及びユーザ(D)の間の接続のそれぞれは、既定の最大移送流量を有する移送構造物(C)により確保され、前記移送構造物(C)は相互接続されていて、
各生産設備(U)及び各水資源(S)はさらに重み関数Pに関連付けられ、
前記方法が、
すべての全体の重み関数Pgを決定するステップと、
前記最も小さい全体の重み関数Pgを選択するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
地下水面水位に基づいて前記システムの水資源から入手可能な、及び/又は汲み上げ可能な量を決定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記地下水面水位に基づいて水資源(S)から入手可能な、及び/又は汲み上げ可能な水の量を決定するステップは、
所定の期間に前記水資源(S)の見掛け静的地下水面水位を測定することで、汲み上げ場所における帯水層の過去の時系列を決定するステップと、
前記見掛け静的地下水面水位と前記汲み上げ場所での透水量係数との間の関係を決定するステップと、
前記汲み上げ場所での臨界作動水位を決定するステップと、
地域の基準地下水面水位を選択するステップと、
前記地域の基準地下水面水位の月平均と前記汲み上げ場所での前記見掛け静的地下水面水位の月平均との間の経験的関係を決定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記地下水面水位に基づいて水資源(S)から入手可能な、及び/又は汲み上げ可能な水の量を決定するステップは、
前記経験的関係を適用することで毎月測定された地域の基準地下水面水位の平均を前記汲み上げ場所での前記見掛け静的地下水面水位の月平均に変換するステップと、
許容される最大の水位低下を線形補間により各瞬間で算出するステップと、
汲み上げ可能な水の最大量を算出するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数個の水資源の配分方法を最適化して少なくとも2つの相互接続されている水生産設備により生産される水に対する需要を満たしてエネルギー消費を削減するとともに水道システムの自律性を強化するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、水に対する緊迫性が、特に局所的水資源に応じて、異なる地域において様々な激しさで存在する。これは水資源の定量的管理ツールに対する必要性を裏付ける。
【0003】
したがって、本発明は、相互接続されている水生産システム、すなわち、
・それぞれが1つ以上の複数の資源により供給される数個の生産設備と、
・水のユーザと、
・水資源と、
を含むシステムに特化した定量的管理ツール又は運用支援ツールに関する。
【0004】
生産設備は、原水又は処理水をお互いへ移送する目的で相互接続されている。この運用支援ツールは、水ストレスの期間の間の水生産サービスの継続性を保証し、あるいはそうでなければ、特に水道システムの運用に関連するエネルギー消費を抑えることで資源と需要の最良のバランスの維持、及び水道システムを使ってシステムの自律性を最大限強化することを保証する。
【0005】
本出願において、処理水は配送の前、特に水のユーザへ送られる前に処理を受けた任意の水を意味すると理解されることに留意されたい。処理水は飲むことができる、又は飲むことができず、農業用途、工業用途、又は地域社会での使用を目的としている。
【0006】
本出願において、原水は、天然又は人工であるかに関わらず水資源から汲み上げされた任意の水を意味すると理解されることに留意されたい。原水又は水資源は、河川、水塊、地下水などの任意の種類のものであってよい。
【0007】
本出願において、水ストレスは、統計的平均より低い水資源の水位を意味すると理解される。
【0008】
本出願において、自律性は、本発明に係るシステム外部の要素、装置、システムから水を取り込むことなく、水需要の少なくとも一部を満たすことのできるシステムであると理解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今日、水資源の定量的管理のための多くのソフトウェアツールが使用され、4つの大きなカテゴリ、すなわち意思決定支援ツール(DST)、汎用インタフェース及びデータ管理プラットフォーム、特定のライブラリに関連付けられた開発環境、そしてセルフモデリングソフトウェア、へ分類することができる。
【0010】
しかし、現在使用されているシステムのいずれも、すべての期待を満たすことはできない。実際、これらのいずれもが、たとえば、将来の水ストレス期間又はすべてのユーザへ水を配分するための複数の配送システムの間での新しい相互接続のシミュレーションを行うことができない。本発明では、配送システムは、配送システムの生産設備の少なくとも1つに接続されているすべての水資源、生産設備及びユーザを意味すると理解される。また、現在使用されているシステムは、水の生産に関連するエネルギー消費基準によって(単一目的の最適化)移送の優先度及び水の配分を決定し、水生産用のエネルギー消費基準及び水資源と需要の間のバランスによって(多目的の最適化)決定することはないことにも留意されたい。さらに、現在、地下水(又は帯水層)は、複雑なシミュレーションモデルが実装される場合のみ(帯水層の2D又は3Dモデル化)、現在使用されているシステムで考慮されるソースになりうる。
【0011】
それゆえ、先行技術のこれらの欠陥、不利益、及び障害を克服する、水資源の定量的管理システムを提供する必要がある。特に、水資源と需要の間のバランスに応じて最適化され、エネルギー消費を最適化し、システムの相互接続されている構成要素間での原水及び/又は処理水の移送を効率化する水生産戦略のシミュレーションを行うためのシステムを提供する必要があり、これは、できる限り最小のエネルギー消費でユーザに水を供給するように大量の水生産設備の移送に関連するエネルギー消費を削減することを目的としている。
【0012】
本発明に関連する戦略とは、それぞれがシステムの複数の構成要素を規定し、特に生産設備及びシステムの水資源のそれぞれを規定する状態のセットであると理解される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の欠点の1つ又は複数を解決するため、本発明は、
・直接又は間接的に相互接続されている少なくとも2つの水生産設備であって、それぞれが最大生産流量により規定される水生産設備と、
・少なくとも1つの生産設備に供給する少なくとも1つの水資源であって、それぞれが最大汲み上げ流量により規定される水資源と、
・時間の関数として予め設定された生産水に対する需要の時間曲線により規定される少なくとも1つの生産水のユーザ、
という構成要素を備える定量的水管理システムに関し、生産設備、水資源、及びユーザの間のつながりのそれぞれは最大移送流量及び/又は予め設定された最小移送流量を持つ移送構造物により提供され、移送構造物は相互接続することができて、各生産設備及び各水資源がさらに重み関数Pに関連付けられている。
【0014】
本発明によれば、水資源は、河川、水塊、地下水などの任意の種類であってよい。
【0015】
水生産設備は、お互いへ直接相互接続することができる、又は共通の構成要素に接続されていることによってお互いへ間接的に接続することができるので、直接又は間接的に相互接続されている、とみなされていることに留意されたい。
【0016】
この目的を考慮し、本発明に係るシステム、さらに上記の前文に係るシステムは、予め設定された各ユーザの生産水に対する需要の時間曲線へ適合することを保証しながら、かつシステムの異なる複数の構成要素の最大流量及び/又は最小流量に適合しながら、システムの異なる構成要素のすべての重み関数の和である、システムの全体の重み関数Pgを最小化する第1コンピュータを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明におけるシステムの構成要素の重み関数Pは、その構成要素を通って流れる水流の乗率として定義される数学的重み関数であると理解される。この乗率は、任意に設定できる値として定義される、又はその構成要素に関連するエネルギー消費に基づいて設定することができる値として定義される。乗率の値は、一定値及び変数値に依存する。
【0018】
本発明における一定値は、システムの複数の構成要素における水の配分の優先順位を示す、ユーザにより規定される任意の値であると理解される。一定値はシステムを拘束する制約を表し、システムの異なる構成要素の間の水の移送を制限する。これらの一定値は、システムの構成要素のそれぞれ、又はシステムの構成要素のセットの特性である。
【0019】
本発明における制約は、システムの構成要素間の移送の最小限度及び/又は最大限度、生産設備及び水資源の水生産能力、ならびに生産設備の貯蔵能力及び水資源の水資源貯蔵能力、又はさらに水資源の下流での排出流量であると理解される。これらの制約は技術的なもの、又は規制によるものでありうる。
【0020】
本発明において変化する値は、システム内の水流の配分に基づく値であると理解される。
【0021】
本発明における移送構造物は、2つの比較的離れた場所の間で水を移送するよう構成されている任意の構造物であると理解される。
【0022】
本発明によれば、重み関数Pはシステムの生産設備のそれぞれ、及びシステムの水資源のそれぞれに関連付けられる。所与の戦略に対して、水資源のそれぞれ、及びシステムの生産設備のそれぞれが重み関数である。
【0023】
本発明の目的のため、用語「全体の重み関数Pg」は、異なる生産設備及びシステムの水資源の異なる複数の重み関数Pの和である。
【0024】
本発明によれば、全体の重み関数Pgは水資源の入手性を考慮して最小化されるべきである。
【0025】
したがって、水資源のそれぞれ及びシステムの生産設備のそれぞれの重み関数Pを最小化するために、ひいては全体の重み関数Pgを最小化するために、重み関数のそれぞれを規定する変数値を最小化する必要がある。
【0026】
第1コンピュータの目的は、水資源のそれぞれ及びシステムの生産設備のそれぞれの重み関数Pを最小化するという目的に基づいて、需要を100%満たす生産戦略を生成することである。第1コンピュータは、生産水に対する需要を満たすためにシステム内の水の配分及び水流の配送を拘束する、単一目的の最適化を行う。単一目的の最適化アルゴリズムは、生産戦略を規定する結果を生成する。
【0027】
本発明における単一目的の最適化アルゴリズムは、システムにより結集される水文地質学的資源を考慮しながら、システムの制約の範囲内で、生産水に対する需要を満たすという目的を達成する最善の戦略を有限個のステップで決定するために、システムの複数の構成要素の有限個のデータを用いて特定の順番で適用される一連の運用ルールであると理解される。
【0028】
有利なことに、予め設定された各生産水ユーザの生産水に対する需要の時間曲線を満たすことは、水資源から汲み上げされる水の量、生産設備により生産される水の量、及びシステム制約を遵守するようにさらに拘束される。
【0029】
有利なことに、異なる複数の移送構造物は、システムがシステムの制約を遵守しながら全体の重み関数Pgを最小化する予め設定された時間曲線に従ってリアルタイムでユーザへ生産水を与えるように第1コンピュータにより制御されるバルブを備える。
【0030】
有利なことに、最も小さい重み関数Pに関連付けられた生産設備は、最大のP重み関数に関連付けられた、水を生産するための設備に優先的に生産水を送る、及び/又は最大の重み関数Pに関連付けられたユーザに優先的に生産水を送る。
【0031】
有利なことに、数個の水資源に接続されている生産設備は、最も小さい重み関数Pに関連付けられたソースから多量の水を汲み上げすることを優先する。
【0032】
有利なことに、本発明に係るシステムは、エネルギー消費を最小化しながら需要を満たすために、それぞれがユーザの予め設定された時間曲線の割合に対応する生産戦略を規定するよう構成されている第2コンピュータをさらに備え、前記第2コンピュータは第1コンピュータが各生産戦略に対する全体の重み関数Pgの最小値を生成するように前記第1コンピュータに接続され、前記第2コンピュータはさらに、全体の重み関数Pgの変動と最小化された需要の変動の比率に対して最大の需要達成割合を与える戦略として規定される最良の戦略を決定するよう構成される。第2コンピュータは、生産水に対する需要を満たし、エネルギー消費を最小化するためにシステム内の水の配分及び水流の配送を拘束する、多目的の最適化を行う。多目的の最適化アルゴリズムは、複数の生産戦略を規定する複数の結果を生成する。
【0033】
本発明における多目的の最適化アルゴリズムは、システムにより結集される水文地質学的資源を考慮しながら、システムの制約の範囲内で、需要を満たすという目的及びシステムのエネルギー消費を最小化するという目的を達成するすべての戦略を有限個の段階で決定するために、システムの複数の構成要素の有限個のデータを用いて特定の順番で適用される一連の運用ルールであると理解される。
【0034】
第2コンピュータは、異なる複数の需要達成割合を規定する、異なる複数のシナリオを生成することを意図している。この第2コンピュータもまた、第1コンピュータとともに、全体の重み関数Pgを需要達成割合のそれぞれに関連付けることを狙いとしている。この全体の重み関数Pgは、選択されたシナリオには申し分のない、より小さな全体の重み関数Pgに対応する。このより小さな全体の重み関数Pgは、生産設備の重み関数Pと水資源の重み関数Pの和により定義され、全体の重み関数Pgは特定のシナリオを満たす最良の戦略を表している。
【0035】
有利なことに、本発明に係るシステムはさらに、統計アルゴリズムによって解析された過去データに基づいて、資源の水文地質学及び予め設定されたユーザの生産水に対する需要の時間曲線を規定するよう構成されている第3コンピュータを備える。
【0036】
この第3コンピュータは、システムの資源の状況を特徴づける、及び/又はユーザの水に対する需要の状況を特徴づける多数のシナリオを生成することを狙いとしている。これらのシナリオは生成することができて、操作者によって入力された生の過去データに統計的に基づくことができる。
【0037】
第3コンピュータは、その使用は随意であるが、最初の2つのコンピュータにより使用される入力データを生成する一連の統計アルゴリズムを含む。これらの入力データは、水資源に関する水文地質学的シナリオ、又は予め設定された生産水に対する需要の時間曲線のいずれかに関する。
【0038】
本出願におけるシナリオは、水資源の水文地質学及び/又はシミュレーションが行われたユーザの水需要に基づく状況の予め設定された、予測された進捗度であると理解される。シナリオは、第1及び第2コンピュータの単一目的又は多目的の最適化アルゴリズムへデータを入力するのに使用される。
【0039】
それゆえ、この第3コンピュータによって、たとえば、操作者が資源の水文地質学についてのデータ及び/又は予め設定された水需要の時間曲線を、統計的モデル化を用いる/用いないに関わらず直接取り込むことが可能となる。
【0040】
なお、最初の2つのコンピュータ、又は前述の3つのコンピュータは、持ち運ぶことが可能で前述の最初の2つ、若しくは3つのコンピュータのあらゆる特徴を有する単一のコンピュータ集合体の一部であってもよい。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つの水資源は帯水層であり、その汲み上げ可能な水の量は地下水面に基づいて決定される。
【0042】
また本発明は、
・直接又は間接的に相互接続されている少なくとも2つの水生産設備であって、それぞれが最大生産流量により規定される水生産設備と、
・生産設備の少なくとも1つに接続されている少なくとも1つの水資源であって、それぞれが最大汲み上げ流量により規定される水資源と、
・時間の関数として予め設定された生産水に対する需要の時間曲線により規定される少なくとも1つの生産水のユーザと、
を備えるシステムにおいて水を管理する定量的方法にも関し、
生産設備、水資源、及びユーザの間の接続のそれぞれは、予め設定された最大移送流量を有する移送構造物により提供され、これらの移送構造物は相互接続することができて、
各生産設備及び各水資源もまた重み関数Pに関連付けられている。
【0043】
この目的を考慮し、本発明に係る方法、さらに上記の前文に係る方法は、
・すべての全体の重み関数Pgを決定するステップと、
・最も小さい全体の重み関数Pgを選択するステップと、
を含むことで本質的に特徴づけられる。
【0044】
決定されたすべての全体の重み関数Pgは、生産設備及び水資源の流量の要件を満たすことに留意されたい。
【0045】
本発明の特定の実施形態では、本発明の方法は、地下水面に基づいてシステムの水資源から入手可能な量及び/又は汲み上げ可能な量を決定するステップをさらに含む。
【0046】
地下水面に基づいてシステムの水資源から入手可能な量及び/又は汲み上げ可能な量を決定する前記ステップは、本発明のシステムと無関係の任意のシステムに適用することができる。このステップを本発明とは関係なく使用して、臨界作動水位の定義及び汲み上げ可能な地下水の量の決定を通じて地下水貯水池の操業慣行を改善することができる。
【0047】
好ましくは、地下水面水位に基づいて水資源から入手可能な量及び/又は汲み上げ可能な量を決定するステップは、
予め設定された時刻に水資源の見掛け静的地下水面水位を測定することで、汲み上げ場所における帯水層の過去の時系列を決定するステップと、
見掛け静的地下水面水位と汲み上げ場所での透水量係数との間の関係を決定するステップと、
汲み上げ場所での臨界作動水位を決定するステップと、
地域の基準地下水面水位を選択するステップと、
地域の基準地下水面水位の月平均と汲み上げ場所での見掛け静的地下水面水位の月平均との間の経験的関係を決定するステップと、
を含む。
【0048】
有利なことに、地下水面水位に基づいて水資源から入手可能な水の量及び/又は汲み上げ可能な水の量を決定するステップは、
経験的関係を適用することで毎月測定された地域の基準地下水面水位の平均を汲み上げ場所での見掛け静的地下水面水位の月平均に変換するステップと、
許容される最大の水位低下を線形補間により絶えず算出するステップと、
汲み上げ可能な水の最大量を算出するステップと、
をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明に係るシステムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、単に例として与えられている以下の説明を読み、本発明に係るシステムの例を示す添付の図を参照することでより良く理解されるであろう。
本発明の目的は、まず、制約を満たしながらも可能な限り最少のエネルギー消費でできるだけ独立したシステムを得るために、定量的水管理システムの全体の重み関数Pgを最小化することである。具体的には、本発明は特に、
a)少なくとも2つの相互接続されている水生産設備Uであって、それぞれが最大生産流量により規定される水生産設備と、
b)生産設備Uの少なくとも1つに接続されている少なくとも1つの水資源Sであって、それぞれが最大汲み上げ流量により規定される水資源Sと、
c)時間の関数として予め設定された生産水に対する需要の時間曲線により規定される少なくとも1つの生産水のユーザと、
を備える定量的水管理システムを記述している。
【0051】
(相互接続されている水生産設備)
本発明の目的のため、用語「水生産設備U」は、携帯型の、又はそうではなければ、水を生産するための任意の設備であって、接続されている任意の要素へ水を移送するよう構成されている任意の設備であると理解され、水は必ずしも処理水ではない。
【0052】
したがって、本発明における生産水、処理水、及び移送された水は、本発明に係る生産システム設備Uのうちの1つからの水のすべての量であると理解される。
【0053】
本発明において、水生産設備Uは、水生産設備Uへ導入される多量の水を加工及び/又は処理することなく水を生産する、又は水生産設備Uが接続されているシステム内の別の設備に多量の水を移送する役割を果たすことに留意されたい。
【0054】
(水資源)
システムの水資源Sは、貯水池を備えた地下の原水資源(湧水、帯水層、カルストなど)でありうる。また、水資源Sは地表水貯水池(湖、河川など)を備えることもありうる。
【0055】
本発明の一変形実施形態によれば、少なくとも1つの生産設備Uが接続されるシステムSの少なくとも1つの水資源は帯水層であり、汲み上げ可能な水の量は地下水面に基づいて決定される。
【0056】
水資源Sは本発明に係るシステムの1つ又は複数の生産設備Uに接続されることがあることに留意されたい。
【0057】
(生産水要素探求者)
生産水のユーザDは、地域社会、産業事業体、農業事業体、又は処理済み若しくは未処理の水を供給されることを希望する任意の他のユーザでありうる。
【0058】
ユーザDは一般的には単一の生産設備Uに接続されている。しかし、本発明によれば、ユーザDは異なる複数の生産設備Uに接続されうる。本発明によるこの構成では、ユーザDは最も小さい重み関数Pに関連付けられた生産設備Uから水を供給される。また、給水塔タイプの要素は1つ又は複数の生産設備Pと1つ又は複数のユーザDの間にありうることに留意されたい。
【0059】
ユーザDは本発明に係るシステムの1つ又は数個の生産設備Uに接続されることがあることに留意されたい。
【0060】
(予め設定された水需要の時間曲線)
ユーザDの水に対する需要は瞬間的であり、時間曲線上で辿ることができる。しかし、既定の期間にわたり汲み上げされる水の量及び生産される水の量を水需要に応じて計画するために、シミュレーションされた需要に基づいて需要を予測する、又は差異を観察するため、シミュレーションにより水需要曲線を作ることもできる。それゆえ、予め設定された水需要の曲線は、第3コンピュータ(下記参照)を使い、システムに関連し、かつ過去の状況に関連する過去データの使用に従って、又は将来の需要を予測するためのデータを使うことで、シミュレーションにより得ることができる。
【0061】
(各設備間の接続)
システムの異なる構成要素がそれらの間で水を交換するために、予め設定された最大移送流量を有し、それゆえシステムの異なる複数の構成要素の間の交換流量を制限する移送構造物Cを介して、生産設備U、水資源S及びユーザDの間の接続のそれぞれがなされることが必要である。
【0062】
本発明によれば、複数の構成要素のそれぞれを接続するシステム移送構造物Cは、本発明に係るシステムの異なる複数の構成要素間での水の交換を制御するためにバルブVを含むことがあることに留意されたい。
【0063】
本発明によれば、使用することのできる移送構造物Cは、たとえば送水路、地下通路、用水路、導管、及び架空又は地下の水移送装置である。
【0064】
(重み関数)
本発明によれば、生産設備Uのそれぞれ、及びシステムの水資源Sのそれぞれは重み関数Pに関連付けられる。この重み関数Pは多くの変数及び一定の技術基準を考慮しており、変数値と一定値の和として定義される。
【0065】
たとえば、一定値は操作者により設定され、かつシステムの複数の構成要素内での水の配分の優先順位を示す任意の値でありうる。
【0066】
そして、変数値は、たとえば
-システム内の流量配分を管理するユーザDに関して操作者によって設定される優先度に基づくようにすることができて、したがって最高の優先度であるユーザDへ最初に供給されて、また、
-システムの移送構造物Cであってそれぞれが係数により特徴づけられるシステムの移送構造物Cに基づくようにすることもできる。この係数が大きいほど、水の移送を実現するために当該移送構造物Cにより消費されるエネルギーが大きくなる。
【0067】
これらの係数は、予め設定された生産水に対する需要の時間曲線を満たすために、各水資源S及び各生産設備Uの重み関数Pに組み込まれる。このように、たとえば、多量のエネルギーを消費する移送構造物Cによりシステムの生産設備Uに接続されているシステムの水資源Sの重み関数Pは、少量のエネルギーを消費する移送構造物Cに関連する関数よりも大きい。
【0068】
本発明によれば、システムの構成要素の重み関数Pが大きいほど、その構成要素が配送する水がより多くのエネルギー消費を必要とし、及び/又はシステムの当該構成要素に適用する水文学的制約、水力学制約、規制による制約がより制限的になる。なお、目標は、本発明のシステムのエネルギー自律性をできるだけ確保しつつ、水資源S及び生産設備Uに対する既存の制約を遵守し、同様にその制約に基づいて、可能な限り少なく消費する水を少なくとも1つのユーザDへ配送することである。したがって好ましくは、数個の水資源Sに接続されている生産設備Uは、重み関数を最小化するように、最も小さい重み関数Pに関連付けられた資源から多量の水をくみ上げることを優先する。
【0069】
特定の戦略に対して、すなわちシステムSの資源を特徴づける状況、及び/又はユーザDの水に対する需要を特徴づける状況に対して、それぞれの水生産設備U及びシステムの水資源Sのそれぞれが、ユーザへの水の配分及び水需要を満たす水の移送に関する数個の重み関数に関連付けられる。したがって、特定の戦略は所与の期間に対して、水資源Sの水文地質学(河川の流量、帯水層の地下水面)及びユーザDの水に対する需要により決定される。
【0070】
いくつかの戦略は、特定のシナリオの結果でありうるということに留意されたい。実際、特定のシナリオに対してシステムは、それぞれの生産設備U及びシステムの水資源Sに割り当てられる重み関数Pのセットにより定義される。しかし、所与のシナリオに対して異なる戦略を取り得て、そのため重み関数Pの異なるセットが考え得る。
【0071】
したがって全体の重み関数Pgは各戦略を規定し、特定のシナリオに対するシステムの複数の構成要素のそれぞれのすべての重み関数Pの和に対応する。
【0072】
特定のシナリオに対する最良の戦略は、最も小さい全体の重み関数Pgに対応することに留意されたい。
【0073】
(第1コンピュータ)
本発明のシステムは、第1ステップにおいてユーザDの水に対する需要を100%満たす特定の戦略に対してシステムの複数の構成要素のそれぞれの重み関数Pのセットを決定、算出するよう構成されている第1コンピュータを含む。第2ステップにおいて第1コンピュータは、システムの複数の構成要素のそれぞれの重み関数の和であり、かつユーザDの水に対する需要を100%満たすことができる、最も小さい全体の重み関数Pgを算出し、決定するよう構成されている。
【0074】
本発明の好ましい実施形態によれば、異なる複数の移送構造物CのバルブVは、全体の重み関数Pgを最小化する予め設定された時間曲線に従って、システムがリアルタイムでユーザDへ生産水を与えるように第1コンピュータにより制御されることに留意されたい。
【0075】
また、本発明によれば、数個の生産設備Uが一緒に接続される。したがって、本発明の好ましい実施形態では、最も小さい重み関数Pに関連付けられた生産設備Uが、最も大きな重み関数Pに関連付けられた水生産設備Uに優先的に生産水を送る。このように、ユーザDが単一の生産設備Uのみに接続されている場合は、可能な限り少ないエネルギー消費でのユーザDへの水の移送を可能にするため、この生産設備Uに接続されている1つ又は複数の他のシステム生産設備Uと水を交換した後に、この生産設備Uの重み関数Pを調整することができる。この水の交換が移送構造物CのバルブVを作動させることができる、又は作動させないことができる第1コンピュータにより制御されることで、相互接続されているシステムの異なる複数の生産設備Uの間で水の交換ができる。
【0076】
また、数個の水生産設備がお互いに接続されている場合は、本発明によれば、最も大きな重み関数Pにより規定される生産設備Uが最も小さい重み関数により規定される生産設備Uに水を送る。順に、大きな重み関数により規定される生産設備Uがより小さな重み関数により規定される生産設備Uへ水を送ることができる。このように、システムの複数の構成要素の重み関数は、可能な限り、最も少ないエネルギーを消費するユーザDへ水を送るように調整される傾向がある。
【0077】
この構成では、重み関数P及び水資源Sと水需要の間のバランスが、需要を100%満たすという単一目的の最適化を実現するために考慮される。
【0078】
(第2コンピュータ)
好ましくは、第2コンピュータもまた、需要を満たすための異なる複数の戦略を規定するように使用、構成することができる。第2コンピュータは、需要を異なる割合で満たすために、シナリオに応じて生産戦略を生成するよう構成される。この異なる達成割合は、たとえば、水需要の70%、80%、85%、92%でありうる。それぞれの達成割合に対して、前記第2コンピュータは、第1コンピュータと協力して、生産戦略において全体の重み関数Pgを関連付けるよう構成される。第2コンピュータはさらに、特定の需要達成割合に対してシステム全体の最も小さい重み関数Pgを強調するよう構成される。
【0079】
したがって、異なる需要達成レベルに応じて、システムの異なる複数の構成要素の間での水の交換及び水資源から汲み上げられる水の量のシミュレーションを行うことができる。
【0080】
また、第2コンピュータはさらに、特に生産設備Uに対してパレート前線(パレートフロント)を形成する最善の戦略を決定するよう構成されることに留意されたい。これらの最善の戦略は、需要の変動に対する、特定の生産設備の重み関数Pが依存するエネルギー消費の変動として定義される最小化された比率に最大の割合を与える戦略として規定される。したがって、シミュレーションにより、本発明に係るシステムの特定の生産設備Uのエネルギー消費に応じて、(%での)需要達成割合の曲線を作ることができる。この曲線を使って、生産設備Uの全体の重み関数Pgが、たとえば99%近くの達成度まで需要を満たすのに基づいて、増加することが観察できる。そして、傾きの変わり目が観測出来て(傾きが減少する)、これは傾きの変わり目の後でエネルギー消費が需要の達成よりも早く増加することを意味する。2番目の傾きの減少は、たとえば需要を99.6%満たすところに位置することがある。
【0081】
それゆえ、最も興味深い結果、つまりそのような需要に対する曲線を考慮しエネルギー消費が最も小さい場合が、傾きの最初の変化に対応する。実際、需要の達成率は重み関数Xに対して99%であり、前記重み関数Xは99%より大きな需要達成よりも早く増加する。したがって、第2コンピュータにより生成されたこの曲線を使って、需要を100%満たすために、システムの外部の別の生産設備Uから水を取り込むのがより良いであろうことは特筆すべきである。
【0082】
すなわち、99%の需要達成から、当該生産設備Uの電力消費が増加する。その結果、本発明によれば、我々の例でこの生産設備Uが99%の達成度を達成した場合には、この生産設備Uはそのエネルギー消費が増加しないように、ひいてはシステム全体の重み関数Pgを増加させないように、別の設備から水を受けることができるので、第1コンピュータはこの生産設備Uを別の設備に接続するバルブVを開けることができる。
【0083】
したがって、第2コンピュータを使って、適切な場合、たとえばシステムの複数の構成要素間で水を交換するよう決定することができる。この構成では、重み関数P及び水資源Sと水のユーザDの間のバランスが、多目的の最適化を実現するために、すなわち水の生産に関連するエネルギー消費を最小化しつつ可能な限り小さな全体の重み関数Pgに対して最大限需要を満たすために考慮される。したがって、2つの相反する目標、すなわち予め設定された時間曲線により規定される需要達成及び関連するエネルギー消費とにより決定される生産水生産戦略を提供することは可能である。
【0084】
(第3コンピュータ)
本発明の好ましい実施形態では、第3コンピュータは、第1コンピュータの入力データと第2コンピュータ、すなわち資源Sの水文地質学的シナリオ(水路の流量、帯水層の地下水面)及び水需要設備Dに関連する生産水に対する需要の時間曲線のシナリオ、を規定するのにも使用することができる。したがって、この第3コンピュータは、資源Sの水文地質学的シナリオ、及び操作者により入力された過去データに基づくユーザDに関連する水需要のシミュレーションを行う。
【0085】
しかし、入力データは第3コンピュータでシミュレーションを行わなくてもよく、操作者が生データから作成することができる。
【0086】
この第3コンピュータは、たとえば、観測された事象の確率的再実行時間を定量化する、各資源Sの過去の時系列データ及びユーザDの統計的頻度分析に基づいて異なる対象期間(1か月、3か月、6か月)に対する一連の予測データを生成するように構成される。
【0087】
水資源Sの状況(流量、地下水面)に関し、第3コンピュータは、たとえば3つの典型的なシナリオ、すなわち降水年(2.5年、5年、10年の再現期間)、平均的年、渇水年(2.5年、5年、10年の再現期間)を提示することができる。
【0088】
水需要に関して、第3コンピュータは最小の需要、平均的需要、ピークの需要、操作者による分位数のセット、というシナリオを提案することができる。
【0089】
(3つのコンピュータ間のつながり)
前述の3つのコンピュータは、異なる期待を満たし、かつ3つのコンピュータと同じ機能性を提供するよう構成されている、たった1つ(又は2つ)のコンピュータでありうる、ということは特筆に値する。
【0090】
3つのコンピュータを使用することで、たとえば既定の期間に対する1つ又は複数の水資源Sの水文地質学のシミュレーションを行い、1つ又はいくつかのユーザDが希望する水量値のシミュレーションを行って、水資源Sから汲み上げることが必要となる水の量と、水需要を満たすためにシステムの生産設備Uにより生産される水の量を最もよく予測することができる。この予測により、生産することができる水の量、及び/又は汲み上げることができる水の量を考慮しながら、水需要が高すぎない範囲でシステムの全体の重み関数Pgを最小化することができて、システムの相互接続されている異なる生産設備Uの間での水の交換を予測することができる。
【0091】
あるいは、3つのコンピュータを、既定の期間にわたり少なくとも1つの水資源Sから汲み上げられる水の量、及び少なくとも1つのユーザDに対する予め設定された時間需要曲線に基づいて生産されるべき水の量を計画するのに使うことができる。
【0092】
この3つのコンピュータの組はさらに、将来の状況をよりよく理解するために、過去の状況を再現して、システムの複数の構成要素の重み関数Pを最小化することでシステムを強化及び/又は改善するように構成される。
【0093】
この3つのコンピュータの組はまた、本発明のシステムにおける変更、すなわち、生産設備Uの除去又は追加、水資源Sの除去又は追加、生産設備Uをシステムの任意の構成要素に接続する移送構造物Cの除去又は追加、及び制約の追加、修正、又は除去、の効果をシミュレーションすることができる。したがって、システム調整のシミュレーションを行って、適用されるシナリオに基づいて、全体の重み関数Pgを含むシステムの複数の構成要素の重み関数Pの変動を制御することができる。
【0094】
この3つのコンピュータのセットは、週間及び月間の汲み上げ・生産計画に対する「運用管理」に使うことができる、又は将来の状況をより良く管理する、若しくは新しい開発の影響を査定するために、過去の状況を再現する「研究開発」方式で使うことができる。
【0095】
(汲み上げ可能量モジュール)
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの生産設備Uが接続されるシステムの少なくとも1つの水資源Sは帯水層であり、その汲み上げ可能な水の量は地下水面水位に基づいて決定される。本発明のこの構成では、地下水位を決定する方法により、帯水層の水文地質学的条件及び帯水層の定量的状態に影響を及ぼす自然現象及び人間現象を間接的に考慮に入れることが可能となる。この方法は単純で安定しており、湧水貯水池以外の汲みあげの複数の形態(掘削孔、集合井、井戸区域)のための連続した(非カルストで、破断していない)帯水層に適用可能である。
【0096】
汲み上げ可能な水の量が地下水面水位の値ではなく水資源Sの流量により決定される場合にこの構成が存在しうることに留意されたい。
【0097】
この方法は本発明で説明されるシステムにかかわらず任意のシステムに適用することができることに留意されたい。
【0098】
この方法により、帯水層から汲み上げ可能な水の量を見積もることが可能となり、したがってそのような水資源Sの重み関数Pを査定するのに不可欠なデータを決定することができる。このデータはその後、リアルタイムでシステムの全体の重み関数Pgを算出して関数を最小化するために第1コンピュータがそのような水資源Sを規定する変数値及びそのようなソースSの重み関数Pを算出するために第1コンピュータへ送信される。
【0099】
地下水の定量的管理及び帯水層又は帯水層系内で汲み上げ可能な量の規定には、まずすべての空間的境界を定義することが必要になることに留意されたい。これらの境界は、局所的な地質学的特徴及び水文地質学的特徴により規定される。
【0100】
また、帯水層又は帯水層系内で汲み上げ可能な地下水の量の規定には、水資源Sの状況について熟知していること、システム内のすべての(天然又は人工の)入力及び出口についての正確な水力学的な報告書、及び固有の貯蔵能力を評価することが必要になる。これらの境界は、使用される貯水池の一般的特徴に基づき規定される。
【0101】
それゆえ、定量的地下水管理には水資源Sの状況、水の汲み上げ、及び水への要求の知識が必要とされる。
【0102】
したがって、本発明によれば、第1コンピュータへ送信される運用データはそれゆえ、
- 貯水池の一般的特徴、たとえば垂直断面上の一連の地質学的な層の概略表現であり関連する等級を示す地質断面図、又は垂直断面上の地下構造物内の機材の特徴及び寸法の概略表現である技術的断面図(例:裸孔、ケーシングを被せる前の特徴、及びケーシング、砂利の濾過、セメント結合、頭部の保護)と、
- 地質学的及び水文地質学的データ、たとえば地域の地下水面、透水量係数又は貯留係数と、
- 運転データ、たとえば水位測定及び基準地下水面水位、汲み上げ量、1つ又は複数のポンプの流量と、
に関連するデータを含む。
【0103】
1日あたりにポンピングする時間数や所与の時間における1日あたりの平均流量などの他の運転データは随意である。
【0104】
さらに、この方法論は、定量的水文地質学で一般に用いられている、Jacob Cooper(Cooper, H.H. and C.E. Jacob, 1946. A generalized graphical method for evaluating formation constants and summarizing well field history, Am. Geophys. Union Trans., vol. 27, pp. 526- 534)の解析解の使用に基づいている。この解析解は、それ自体が帯水層の静的地下水面水位に左右される水位低下に応じて汲み上げ可能な地下水の最大量の推定値を与える。
【0105】
この方法は以下の較正ステップ、すなわち
・既定の期間の水資源Sの見掛け静的地下水面水位を測定することで汲み上げ場所における帯水層の過去の時系列を決定するステップと、
・見掛け静的地下水面水位と汲み上げ場所での透水量係数との間の関係を決定するステップと、
・汲み上げ場所での臨界使用水位を決定するステップと、
・地域の基準地下水面水位を選択するステップと、
・地域の基準地下水面水位の月平均と汲み上げ場所での見掛け静的地下水面水位の月平均との間の経験的関係を決定するステップと、
を含む。
【0106】
たとえば、時系列は最小で2年間分を分析することができる。
【0107】
見掛け静的地下水面水位と汲み上げ場所での透水量係数との間の関係は、Cooper-Jacobの解析的関係を用いて帯水層の運用データを使って決定することができる。
【0108】
井戸又は掘削孔の臨界作動水位は、
・ケーシングの遮蔽された部分の上部高度地下水面水位と、
・帯水層の地下水面の局所的使用限度であって、
・帯水層の状況を維持するための地下水面水位と、
・塩水くさびへ侵入しないための地下水面水位と、
・生産的な地域の排水のための地下水面水位と、
・規制のための地下水面水位(目標地下水面水位、警報しきい値など)、又は
・ポンプの吸い込みストレーナの地下水面水位若しくはポンプの電源をオフにする安全地下水面水位、でありうる局所的使用限度と、によって制限されうることに留意されたい。
【0109】
最も高い地下水面水位はそれゆえ最も悪い地下水面水位であり、構造物に対する臨界作動水位として保持され、zNCと記される。それゆえ臨界水位を決定するには、構造物の技術的断面図及び地質断面図ならびに帯水層管理のため、規制用地下水面の存在可能性を有することが必要とされる。
【0110】
井戸区域の場合は、最も好ましくない臨界水位が選択されて、概念的貯水池へ適用されることになる。地域の基準地下水面を選択するには、研究されている地下水塊をまとめるすべての地下水面水位の一覧を作ることが必要となることに留意されたい。これらの地下水面水位は、たとえばフランスではADESデータベース(www.ades.eaufrance.fr)を閲覧して水塊用の水位監視所を検索することで容易に特定可能である。これらの地下水面水位の中で、活動中で充分な歴史(理想的には10年超)を有するもののみが考慮されることになる。
【0111】
地域の基準地下水面水位は、貯水池での疑似静的地下水面の月平均と日常的な観測期間にピエゾメーターを用いて測定された静的地下水面水位の月平均の移動量との間のRMSEを最小化するという方法で保持されることになる。
【0112】
この移動量(hSptと表記する)は、ピエゾメーターの静的月間列の各値(hSp)に、貯水池での見掛け静的月間地下水面水位の平均(hSc)と静的確率月間ピエゾメーターの平均(hSp)との間の相対的な差を加算することで得られる。
Spt(t)=hSp(t)+(hSc-hSp
【0113】
同様のRMSEを持つ数個のピエゾメーターの場合は、最も長い歴史を持つものが保持されることになる。
【0114】
通常は線形の、又は複数の線形セグメントからなる経験的関係は保持されて、貯水池でのピエゾメーターでの理論的疑似静的地下水面の月平均を基準ピエゾメーターでの地下水面の月平均の関数として表すであろう。この経験的関係は、散布図グラフに対する1つ又は複数の線形回帰を使うことで、又は他の相関関数を有するグラフを使うことで得ることができる。
【0115】
この方法論はさらに以下のシミュレーションステップ、すなわち
経験的関係を適用することで所与の時刻における地域の基準地下水面水位の月平均を汲み上げ場所での見掛け静的地下水面水位の月平均へと変換するステップと、
各瞬間での許容される最大の水位低下を線形補間により算出するステップと、
Cooper-Jacobの関係を使い、許容される最大の水位低下と、疑似静的ピエゾ水頭と収集への透水量係数の間の関係とに応じて、汲み上げ可能な水の最大量をその都度計算するステップと、
を含むことがある。
【0116】
この方法により、見掛け静的地下水面水位及び貯水池の臨界使用水位に基づいて理論的な最大汲み上げ可能量を算出することが可能となることに留意されたい。この理論的な最大汲み上げ可能量は、作動状態では必ずしも達成できない。
【0117】
ピエゾメーターの静的地下水面水位を水資源Sにおける疑似静的地下水面水位へと変換するサブステップは、予測シミュレーションの場合にのみ実行されることになる。地下水面水位の一連の静的水位の月間予測値は、第3コンピュータを使って基準ピエゾメーターに対して生成されることになる。
【0118】
経験的な線形の関係又は先のステップで得られる前記関係のすべては、貯水池での見掛け静的地下水面水位の理論的月間平均を基準ピエゾメーターでの地下水面水位の月間平均の関数として算出するために使用されることになる。
【0119】
地域の監視ピエゾメーターで利用できる履歴の長さ、及び測定データの信頼性により、第3コンピュータをこの場所で使用した方が貯水池で直接使用するよりも信頼性が高くなり、このため、転置方法が使用される。
【0120】
時間tとともに変動する、許容される最大の水位低下、smaxは、見掛け静的地下水面水位hpsとzncと表記される臨界使用水位の間の差として定義される。
max(t)=hps(t)-znc
【0121】
最大汲み上げ可能量Vmaxは、Cooper-Jacob(1946)の関係及び先のステップで得られた関係式、T=f(hps)を使ってシミュレーションの各瞬間で算出される。最大汲み上げ可能量は許容される最大水位低下smaxに依存する。
【0122】
【数1】
【0123】
ここで、texpは最大使用時間である。
【0124】
最大汲み上げ可能量を決定する際に、texpの値はデフォルトで20時間/日に設定される。井戸区域の場合、最大汲み上げ可能量はその中にあるすべての貯水池で汲み上げ可能な量となる。
【0125】
したがって、この方法論では間接的な水文地質学的状況、地下水の復水/減少の影響、及び貯水池で測定される疑似静的地下水面に影響を及ぼす自然現象を考慮している。また、この方法論では帯水層でのすべての汲み上げによる間接的な影響、及び貯水池で測定される見掛け静的地下水面水位に影響を及ぼす人間の活動も考慮している。
【0126】
したがって、本発明のこの好ましい方法によれば、水資源Sの将来の入手可能性を
・日ごとに更新される水の動向と、
・気候変動を中期及び長期のシナリオに変数として統合すること、
とに基づいて予測することが可能となる。
【0127】
地下水の定量的監視は、本発明の好ましい実施形態によれば、帯水層の地下水面内の変動を確認することで実証される。しかし、この定量的監視は排水場所(湧水)での流量を帯水層の種類に応じて測定することでも実証することができる。定量的な地下水管理は、通常は目標の地下水面水位を設定することを意味し、これは汲み上げ可能量を設定することである。
【0128】
本発明は図面及び上記の記述において示され、詳細に説明された。これは例示的であって、例として与えられ、本発明をこの記述のみに限定するものではない、と考えられなければいけない。多くの変形が可能である。
【実施例0129】
本発明によれば、以下の構成要素(図1を参照)、すなわち
-2つの生産設備U1及びU2であって、それぞれがバルブV1、V2を備える2つの移送構造物C1及びC2により相互接続されている第1水生産設備U1と第2水生産設備U2の2つの生産設備U1及びU2と、
-第1生産設備U1は2つの移送構造物C3及びC4により2つの水資源S1及びS1’に接続されており、第2生産設備U2はC5移送構造物により単一の水資源S2に接続されていて、
-移送構造物C6、C7及びC8により第1生産設備U1に接続されている3つのユーザD1、D1’及びD1”であって、単一のユーザD2が移送構造物C9により第2生産設備U2に接続されていて、それぞれのユーザが予め設定された生産水に対する需要の時間曲線により特徴づけられる、ユーザD1、D1’及びD1”と、
を備える定量的水管理システムがありうる。
【0130】
ユーザは、100%達成されないといけない、予め設定された生産水に対する需要の時間曲線により特徴づけられる。しかし、需要を100%満たすことはできない可能性がある。しかし、コンピュータを使って、システムの全体の重み関数Pg’を最小化しながら需要達成を最大化することが可能である。
【0131】
この構成では、各システム設備が重み関数Pに関連付けられる。すなわち、第1生産設備U1は重み関数PU1に関連付けられ、第2生産設備U2は重み関数PU2に関連付けられ、水資源S1、S1’及びS2はそれぞれ重み関数PS1、PS1’及びPS2に関連付けられる。目標は、システムの複数の構成要素のすべての重み関数の和である全体の重み関数Pg’を最小化することである。
【0132】
この目的のため、最適化アルゴリズムが全体の重み関数Pg’のセットを決定し、これによりシステムの異なる複数の構成要素の異なる重み関数Pに応じて予め設定された水需要の時間曲線を満たすことが可能となる。そして、アルゴリズムは最も小さい全体の重み関数Pg’を選択する。
【0133】
本発明によれば、アルゴリズムのデータを集めることができる第1コンピュータが、生産設備U1及びU2がそれらの間で水を交換することで、前記全体の重み関数Pg’がアルゴリズムにより選択されたものに対応するようにシステムの最大の全体の重み関数Pgを減少させるように、バルブV1及びV2を制御する。
【0134】
たとえば、重み関数PU2がPU1のそれよりも大きいと仮定することができる。これは、たとえば、資源S2の運用がS1の運用及び/又はS1’の運用よりもエネルギー集約型である、すなわち、重み関数PS2がPS1又はPS1’よりも大きいという事実のためでありうる。この状況では、第2生産設備U2が第1生産設備U1からユーザD2へ水を送るのが好ましい。実際、第1生産設備U1は第2設備U2により生産される水と比べてより小さい重みで水を生産する。したがって、第2生産設備U2の水の生産を停止する、又は少なくとも資源S2から汲み上げされる水を削減するのが賢明である。
【0135】
生産設備U1と生産設備U2の間のこの交換を使用して、システムの全体の重み関数Pgを、水資源S2の重み関数がもはやまったく考慮されるべきではないという程度まで最小化することができる。
【0136】
したがって、第2生産設備U2はより小さい重みで水をユーザD2へ送り、第1生産設備U1は資源S1及びS1’から来る水をユーザD1、D1’及びD1”へ送る。重み関数PS1がPS1’のそれよりも大きい場合、生産設備U1は資源S1’から水をくみ上げるのを優先することになることに留意されたい。
【0137】
前述の指示は、バルブを制御できる場合に所与の瞬間における構成に対して有効であるが、シミュレーションの形態においても有効である。
【0138】
請求の範囲において、「備える」及び「含む」(comprising)は他の構成要素を排除せず、不定冠詞の「a」は複数を除外しない。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接又は間接的に相互接続されている少なくとも2つの水生産設備(U)であって、それぞれが最大生産流量により規定される水生産設備(U)と、
少なくとも1つの生産設備(U)に供給する少なくとも1つの水資源(S)であって、それぞれが最大汲み上げ流量により規定される水資源(S)と、
時間の関数として予め設定された生産水に対する需要の時間曲線により規定される少なくとも1つの生産水のユーザ(D)と、の構成要素を備える定量的に水を管理するシステムであって、
生産設備(U)、水資源(S)、及びユーザ(D)の間の接続のそれぞれは、予め設定された最大流量を有する移送構造物(C)により提供され、該移送構造物(C)は相互接続されることができて、
各生産設備(U)及び各水資源(S)はさらに重み関数Pに関連付けられている、システムにおいて、
予め設定された各ユーザ(D)の生産水に対する需要の時間曲線に適合すること、及び前記システムの異なる構成要素の最大流量及び/又は最小流量を遵守するという制約に適合することを保証しながら、前記システムの異なる構成要素のすべての重み関数Pの和である、前記システムの全体の重み関数Pgを最小化するよう構成されている第1コンピュータを備えることを特徴とするシステム。
【外国語明細書】