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特開2023-99663ヒト血清アルブミン変異体およびその使用
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  • 特開-ヒト血清アルブミン変異体およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099663
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】ヒト血清アルブミン変異体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/765 20060101AFI20230706BHJP
   C12N 15/14 20060101ALN20230706BHJP
【FI】
C07K14/765 ZNA
C12N15/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081671
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2020521872の分割
【原出願日】2018-10-18
(31)【優先権主張番号】2017904211
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】516179960
【氏名又は名称】シーエスエル リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】セービン ロース
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ハメット
(72)【発明者】
【氏名】キルステン エドワーズ
(72)【発明者】
【氏名】コン パヌーシス
(57)【要約】
【課題】血清アルブミン変異体またはその機能的断片の提供。
【解決手段】本開示は、以下の:(i)(522)位にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシン;(ii)(552)位にてアラニンを置換するバリン;および(iii)(572)位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニン、から成る群から選択される1もしくは複数のアミノ酸置換を含む、血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸;
(ii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;
(iii)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;および
(iv)その組み合わせ、
から成る群から選択される1もしくは複数のアミノ酸置換を含む血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
【請求項2】
前記血清アルブミン変異体またはその機能的断片が、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、高い親和性でFcRnと結合する、請求項1に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
【請求項3】
前記結合親和性が酸性pHにて計測される、請求項2に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
【請求項4】
前記血清アルブミン変異体またはその機能的断片が、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、延長された血清半減期を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
【請求項5】
以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン;または、
(ii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;または
(iii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;または
(iv)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン、ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸、
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
【請求項6】
配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
【請求項7】
以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン;および/または
(ii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;および/または
(iii)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
【請求項8】
以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン;または
(ii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;または
(iii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン;または
(iv)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(v)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(vi)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(vii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン;または
(viii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(ix)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(x)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片、および化合物を含む血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項10】
前記血清アルブミンコンジュゲートが、配列番号1に規定される血清アルブミンを含む血清アルブミンコンジュゲートと比較してより長い血清半減期を有する、請求項9に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項11】
前記血清アルブミンコンジュゲートが、配列番号1に規定される血清アルブミンを含む血清アルブミンコンジュゲートと比較して、FcRnに対する増強された結合親和性を有する、請求項9または10に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項12】
前記化合物が、タンパク質、抗体可変領域を含むタンパク質、抗体模倣体、ドメイン抗体、毒素、放射性同位元素、検出可能な標識、ペプチド、ポリペプチド、コロイド、化学療法薬、核酸、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)、siRNA、干渉RNA(RNAi)、リボザイム、マイクロRNA、マイクロRNA適応shRNA(shRNAmir)、DNA酵素(DNAzyme)およびその混合物である、請求項9~11のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項13】
前記化合物がFvを含むタンパク質である、請求項12に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項14】
前記タンパク質が、以下の:
(i)一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(ii)二量体scFv(di‐scFv);または
(iii)ダイアボディ;
(iv)トリアボディ;
(v)テトラボディ;
(vi)Fab;
(vii)F(ab')2;
(viii)Fv;または
(ix)抗体の定常領域、Fcまたは重鎖定常ドメイン(C)2および/またはC3に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、
から成る群から選択される、請求項13に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項15】
前記タンパク質が治療用タンパク質である、請求項12に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項16】
前記化合物が、フォンヴィレブランド因子またはその修飾形態である、請求項9~15のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項17】
前記フォンヴィレブランド因子がD’D3ドメインを含む、請求項16に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項18】
前記化合物が、補体阻害因子またはその修飾形態である、請求項9~15のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項19】
前記化合物が、血液凝固因子であるかまたはそれに結合する、請求項9~15のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項20】
前記血液凝固因子が、第I因子、第II因子(プロトロンビン)/トロンビン、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子および上記のいずれかの活性型から成る群から選択される、請求項19に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
【請求項21】
請求項9~20のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲート、ならびに医薬担体および/または賦形剤を含む組成物。
【請求項22】
対象の疾患または病態を治療または予防における使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片、請求項9~20のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲートまたは請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
対象の疾患または病態を治療または予防する方法であって、その方法が、請求項9~20のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲートまたは請求項21に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項24】
対象の疾患または病態の治療または予防のための薬剤の製造における、請求項9~20のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲートまたは請求項21に記載の組成物の使用。
【請求項25】
前記疾患または病態が出血性障害である、請求項22に記載の使用、請求項23に記載の方法または請求項24に記載の使用のための血清アルブミン変異体、コンジュゲートまたは組成物。
【請求項26】
前記対象が、出血性障害またはその症状を発症するリスクがある、請求項22または25に記載の使用、請求項23または25に記載の方法、または請求項24または25に記載の使用のための血清アルブミン変異体、コンジュゲートまたは組成物。
【請求項27】
前記出血性障害が、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド病、第I因子欠乏症、第II因子欠乏症、第V因子欠乏症、複合型第V因子/第VIII因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XI因子欠乏症または第XIII因子欠乏症である、請求項22、25または26のいずれか一項に記載の使用、請求項23、25または26のいずれか一項に記載の方法または請求項24~26のいずれか一項に記載の使用のための血清アルブミン変異体、コンジュゲートまたは組成物。
【請求項28】
対象の出血性障害の治療または予防における使用のためのキットであって、そのキットが、以下の
(a)請求項9~20のいずれか一項に記載の少なくとも1つの血清アルブミンコンジュゲートまたは請求項21の組成物;
(b)対象における出血性障害の治療または予防においてそのキットを使用するための取扱説明書;および
(c)任意選択で、少なくとも1つの更なる治療的に活性な化合物または薬物、
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本願は、2017年10月18日付で出願された「ヒト血清アルブミン変異体およびその使用(Human serum albumin variant and uses thereof)」と題するオーストラリア特許出願第2017904211号の優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
配列表
本願は電子形式の配列表と共に出願される。配列表の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0003】
分野
本開示は、ヒト血清アルブミン変異体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
血清アルブミンは、血液の浸透圧の維持、ならびに血流中の様々な物質の転送において主要な役割を有する、ヒト血漿中で最も豊富な、天然に生じるタンパク質である。
血清アルブミンは、インビトロにおいて、胎児性Fc受容体(FcRn)を含めた多くのタンパク質に結合することが知られており、そして、この相互作用がアルブミンの血漿半減期にとって重要であることが知られている。FcRnは、多くの細胞や組織型(例えば、内皮細胞)で発現される膜結合タンパク質であり、絶えず取り込まれ、そして、再生されている。アルブミンは中性pHにてFcRnに結合しないが、しかし、一度細胞内に取り込まれたアルブミンは、エンドソームの酸性条件下でFcRnに結合する。FcRnに結合したアルブミンは、分解から救い出され、そして、生理的pHにて、それがFcRnから解離する細胞表面に、FcRnと共に再生して戻される。
【0005】
アルブミンは約19日間の長い血漿半減期を有する。この長い半減期は、医薬化合物の半減期を延長するためのアルブミンの使用につながった。例えば、アルブミンはヒト血液凝固第IX因子(FIX)に融合され、そして、FIX(IDELVION(登録商標))の延長された半減期をもたらした。アルブミンはまた、薬物半減期や薬物蓄積を増強するために化学療法化合物(パクリタキセルなど)に結合させた(例えば、Abraxane(登録商標))。
天然型血清アルブミンと比較してFcRnに対して改善された結合または親和性をもたらす1もしくは複数のアミノ酸置換を有するヒト血清アルブミン変異体が、これまでに記載された(例えば、WO2011051489)。
【0006】
しかしながら、例えば、FcRnに対する高い親和性、長い血漿半減期、および/または低減されたクリアランスなどの改善された薬物動態学的特性を有する血清アルブミン変異体が当該技術分野において未だに必要とされていることは、当業者にとって明白である。薬剤投与および蓄積を最適化するために、血漿中での薬物の血漿半減期を制御する方法を開発することもまた、当該技術分野に必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、血清アルブミンにおける特定のアミノ酸置換が、胎児性Fc受容体(FcRn)へのその結合を改善または増強するという発明者らの同定に基づいている。特定のアミノ酸置換を有する血清アルブミン変異体は、高められた血漿半減期が可能である。
発明者らは、配列番号1の第522、552、および572残基がFcRnへの結合に重要であることを究明した。さらに、発明者らは、特定のアミノ酸によるこれらの残基における置換が酸性pHにおけるFcRnへの結合を増大または促進することを同定した。
【0008】
発明者らによる知見は、配列番号1の第522、552または572アミノ酸に対応する残基にて1もしくは複数のアミノ酸置換を含む血清アルブミン変異体に関する根拠を提供する。発明者らによる知見はまた、対象の障害、例えば出血性障害、を治療するための方法に関する根拠を提供する。
【0009】
本開示は、以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸;
(ii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;
(iii)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;および
(iv)その組み合わせ、
から成る群から選択される1もしくは複数のアミノ酸置換を含む血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
【0010】
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸を含む。
【0011】
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するイソロイシンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するリジンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するメチオニンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するフェニルアラニンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するトリプトファンを含む。
【0012】
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するチロシンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するバリンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するアラニンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸を含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアラニンを含む。
【0013】
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するグルタミン酸を含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するヒスチジンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するセリンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するリジンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するバリンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸、配列番号1の第552アミノ酸、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にて先に提示したアミノ酸置換を含む。
【0014】
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸、配列番号1の第552アミノ酸、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にて先に提示したアミノ酸置換に加え、1もしくは複数のアミノ酸置換、欠失または挿入を任意選択で含む。本開示における使用に好適な追加アミノ酸置換は、当業者に明らかであり、そして、天然に存在する置換と遺伝子操作された置換、例えば、WO2011051489に記載されていたものなどを含む。
【0015】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して改善された薬物動態学的特性を有する。血清アルブミンの薬物動態学的特性は、当業者に明らかであり、そして、例えば、FcRnへの結合の親和性、血漿半減期、および/または血漿クリアランス速度を含む。本開示の血清アルブミン変異体の薬物動力学的特性を測定する方法は、当業者に明らかであり、および/または本明細書中に記載されている。
【0016】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較してFcRnに対する高い親和性で結合する。FcRnに対する血清アルブミン変異体またはその機能的断片の親和性を測定する方法は、当業者に明らかであり、および/または本明細書中に記載されている。一例では、FcRnに対する血清アルブミン変異体またはその機能的断片の結合親和性はフローサイトメトリーによって測定される。例えば、血清アルブミン変異体またはその機能的断片を安定して発現するCHO細胞は、(標的結合を検出するための)alexa‐488標識FcRn/β2mおよび(発現を検出するための)抗myc‐alexa647を用いて酸性(pH5.5)および中性(pH7.4)のpHにて染色され、そして、フローサイトメトリーによって分析される。一例では、FcRn/β2mに対する血清アルブミン変異体またはその機能的断片の親和性は、(例えば、配列番号1に規定される)未修飾血清アルブミンに対する平均蛍光強度を計算することによって測定される。一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片の親和性は、(例えば、表面プラズモン共鳴法(SPR)アッセイを使用した)バイオセンサ分析によって測定される。例えば、固定されたFcRnに対する血清アルブミン変異体またはその機能的断片の結合親和性(すなわち、相互作用の強さ)は、pH5.4および/またはpH7.4かつ37℃にて決定される。別の例では、FcRnに対する固定された血清アルブミン変異体またはその機能的断片の結合親和性(すなわち、相互作用の強さ)は、pH5.4および/またはpH7.4かつ37℃にて測定される。一例では、親和定数(KD)、解離定数(Kd)および結合定数(ka)が測定される。例えば、親和定数(KD)は、解離定数(Kd)と結合定数(ka)の比である(すなわち、KD=Kd/ka)。
【0017】
一例では、結合親和性は、酸性pHで計測される。例えば、酸性pHは、pH6.0より低いpH、例えば、pH5.9、pH5.8、pH5.7、pH5.6、pH5.5、pH5.4、pH5.3、pH5.2、pH5.1、またはpH5.0などである。一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、酸性pHにて高い親和性でFcRnに結合する。例えば、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、低いpH、例えば、約pH6.0、にて高い親和性でFcRnに結合し、エンドソーム内での結合を容易にする。一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、約pH7.4でのその親和性と比較して、約6.0のpHにて高い親和性でFcRnに結合し、そしてそれが、細胞での再生に続く、血清アルブミン変異体の血液中への再放出を容易にする。本開示のアミノ酸置換は、FcRn媒介性再生を増強し、その結果、血液からのクリアランスを低減することによって、タンパク質の半減期を延長するのに有用である。
【0018】
一例では、FcRnへの本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片の結合レベルは、細胞結合試験によって測定した場合、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較してpH5.4にて増強された。一例では、FcRnへの本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片の結合レベルは、細胞結合試験によって測定した場合、pH7.4でのその親和性と比較してpH5.4にて増強された。一例では、FcRnへの本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片の結合レベルは、SPR分析によって測定した場合、pH7.4でのその親和性と比較してpH5.4にて増強された。一例では、FcRnへの本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片の結合レベルは、フローサイトメトリーによって測定した場合、pH7.4でのその親和性と比較してpH5.4にて増強された。
【0019】
一例では、FcRnへの本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、少なくとも約2倍、少なくとも約4倍少なくとも5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約15倍増強される。一例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、約2倍~約5倍増強される。例えば、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3倍、約3.25倍、約3.5倍、約3.75倍、約4倍、約4.25倍、約4.5倍、約4.75倍、または約5倍増強される。一例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、約2.4倍、約2.8倍、約3.1倍、約3.4倍、約3.7倍、約3.9倍、約4倍、または約4.8倍増強される。
【0020】
一例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、約5倍~約15倍増強される。例えば、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約10.5倍、約11倍、約11.5倍、約12倍、約12.5倍、約13倍、約13.5倍、約14倍、約14.5倍、または約15倍増強される。一例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して約7.6倍、約8.6倍、または約13.8倍増強される。
【0021】
一例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して約15倍~約50倍増強される。例えば、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、または約50倍増強される。一例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して約42倍、約43倍、約47倍、または約48倍増強される。
【0022】
別の例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、約50~100倍増強される。例えば、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して約50倍、約55倍、約60倍、約65倍、約70倍、約75倍、約80倍、約85倍、約90倍、約95倍、または約100倍増強される。一例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して約57倍または約58倍増強される。
【0023】
更なる例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較した約100倍~約250倍増強される。例えば、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して
約100倍、約110倍、約120倍、約130倍、約140倍、約150倍、約160倍、約170倍、約180倍、約190倍、約200倍、約210倍、約220倍、約230倍、約240倍、または約250倍増強される。一例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、
配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して約180倍、または約240倍増強される。
【0024】
一例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して少なくとも250倍増強される。例えば、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して約200倍、約250倍、約300倍、約350倍、約400倍、約450倍、または約500倍増強される。一例では、FcRnへの血清アルブミン変異体の結合レベルは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して約410倍増強される。
【0025】
一例では、血清アルブミン変異体の血清半減期は、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して延長される。例えば、本開示の血清アルブミン変異体の血清半減期は、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して少なくとも約1.5倍延長される。一例では、本開示の血清アルブミン変異体の血清半減期は、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、または約10倍延長される。一例では、本開示の血清アルブミン変異体の血清半減期は、約5日間~約10日間以上延長される。例えば、本開示の血清アルブミン変異体の血清半減期は、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約25日間、約30日間、約35日間、約40日間、約45日間、または約50日間増強される。血清アルブミン変異体の半減期を測定する方法は、当業者に明らかであり、および/または本明細書中に記載されている。一例では、血清アルブミン変異体の半減期は、インビボアッセイを使用して測定される。一例では、血清アルブミン濃度は、ヒト血清アルブミン特異的抗体を使用した酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で計測される。例えば、ELISAは、市販の方法を使用して実施される。別の例では、血清アルブミン変異体は、マウスまたはカニクイザルに静脈内注射され、そして、血漿濃度が時間の関数として定期的に計測される。一例では、血清アルブミン変異体の血漿中濃度は、注射後3分~72時間にて計測される。一例では、血清アルブミン変異体の血漿中濃度は、最大で注射後60日後に計測される。一例では、血清アルブミン変異体は放射性標識される。一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片のインビトロ半減期は、ベータ相におけるクリアランス速度を計算することによって測定される。一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片のインビトロ半減期は、(例えば、配列番号1に規定される)未修飾血清アルブミンのインビトロ半減期と比較される。
【0026】
一例では、血清アルブミン変異体のクリアランス(すなわち、再生と取り込み)の速度は、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して低下する。血清アルブミン変異体のクリアランス(すなわち、再生と取り込み)の速度を測定する方法は、当業者に明らかであり、および/または本明細書中に記載されている。一例では、血清アルブミン変異体が再生される場合、共焦点蛍光顕微鏡が測定に使用される。例えば、血清アルブミン変異体が再生されるかどうか決定する場合、蛍光性標識血清アルブミン変異体は、細胞表面にヒトFcRn受容体を発現する細胞と共にインキュベートされ、そして、共焦点蛍光顕微鏡によって視覚化される。
【0027】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン;または、
(ii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;または
【0028】
(iii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;または
(iv)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン、ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸、
を含む。
【0029】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリンを含む。
【0030】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸;ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸を含む。
【0031】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸を含む。
【0032】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン、ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸を含む。
【0033】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンをさらに含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
【0034】
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリンを含み、かつ、配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
【0035】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン、ならびに配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
【0036】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
【0037】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
【0038】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン、配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
【0039】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン;および/または
(ii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;および/または
(iii)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、
を含む。
【0040】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシンを含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリンを含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニンを含む。
【0041】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン;または
(ii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;または
(iii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン;または
【0042】
(iv)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(v)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(vi)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(vii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン;または
【0043】
(viii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(ix)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(x)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン、
を含む。
【0044】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニンを含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリンを含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニンを含む。
【0045】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
【0046】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニンを含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
【0047】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを含む。
本開示は、本開示による血清アルブミン変異体またはその機能的断片および化合物を含む血清アルブミンコンジュゲートを提供する。
一例では、本開示の血清アルブミンコンジュゲートは、配列番号1に規定される血清アルブミンを含む血清アルブミンコンジュゲートと比較してより長い血清半減期を有する。長い血清半減期および血清半減期を測定するためのアッセイの例は、本明細書中に記載され、そして、その開示のこの例に必要な変更を加えるようにすべきである。
【0048】
別の例では、本開示の血清アルブミンコンジュゲートは、配列番号1に規定される血清アルブミンを含む血清アルブミンコンジュゲートと比較して、FcRnに対する増強された結合親和性を有する。例えば、FcRnに対する血清アルブミンコンジュゲートの結合レベルは、少なくとも約2倍、4倍、5倍または10倍増強される。例えば、FcRnに対する結合レベルは、少なくとも約2倍、10倍、40倍、100倍または150倍増強される。FcRnに対する高い親和性およびそれを測定するためのアッセイは、本明細書中に記載されており、その開示のこの例に必要な変更を加えるようにすべきである。
【0049】
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、別の化合物にコンジュゲートされる、および/または別の化合物をカプセル化する。本開示によって企図される化合物は、天然型化合物、化学的小分子化合物または生体学的化合物を含めたさまざまな形態のいずれかをとり得る。
【0050】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、化合物にコンジュゲートされ、そしてそれは、血清アルブミン変異体またはその機能的断片に直接的または間接的に結合される。
【0051】
例示的な化合物としては、タンパク質、抗体可変領域を含むタンパク質、抗体模倣体、ドメイン抗体、毒素、放射性同位元素、検出可能な標識、ペプチド、ポリペプチド、コロイド、化学療法薬、核酸、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)、siRNA、干渉RNA(RNAi)、リボザイム、マイクロRNA、マイクロRNA適応shRNA(shRNAmir)、DNA酵素(DNAzyme)およびその混合物が挙げられる。一例では、検出可能な標識は造影剤である。
【0052】
一例では、例えば、化合物は、タンパク質ベースの化合物、例えば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である。一例では、タンパク質は治療用タンパク質である。
別の例では、化合物は、例えば、アドネクチン、アフィボディ、アトリマー、エバシン、設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)またはアンチカリンなどの非抗体抗原結合ドメインを含むタンパク質(例えば、治療用タンパク質)である。
【0053】
一例では、化合物は、可変領域フラグメント(Fv)を含むタンパク質(例えば、治療用タンパク質)である。例えば、そのタンパク質は、以下の:
(i)一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(ii)二量体scFv(di‐scFv);または
(iii)ダイアボディ;
(iv)トリアボディ;
(v)テトラボディ;
(vi)Fab;
(vii)F(ab‘)2;
(viii)Fv;または
(ix)抗体の定常領域、Fcまたは重鎖定常ドメイン(CH)2および/またはCH3に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、
から成る群から選択される。
【0054】
一例では、そのタンパク質は、抗体または抗原結合フラグメントである。
一例では、本開示の抗体または抗原結合フラグメントは、遺伝子組み換え、キメラ、CDRグラフト化、ヒト化、シンヒューマナイズド(synhumanized)、霊長類化、脱免疫化またはヒトのものである。
【0055】
一例では、本開示は、フォンヴィレブランド因子またはその修飾形態にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。例えば、その化合物は、フォンヴィレブランド因子またはその修飾形態である。一例では、フォンヴィレブランド因子はD‘D3ドメインを含む。
【0056】
一例では、本開示は、補体阻害因子またはその修飾形態にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。例えば、その化合物は、補体阻害因子またはその修飾形態である。一例では、補体阻害因子は、第I因子、(fI)、H因子(fH)、C4b‐結合タンパク質(C4bp)、可溶性CD55(崩壊促進因子(DAF))、C1阻害因子(C1‐INHまたはC1エステラーゼ阻害因子);可溶性CD35(sCR1);可溶性CD46(膜補因子タンパク質(MCP))、可溶性CD59(プロテクチン)、TT30(CR2‐fH)、コブラ毒因子(CVF)およびその機能的断片または変異体から成る群から選択される。
【0057】
一例では、補体阻害因子は、可溶性補体阻害因子、例えばsCR1など、またはその機能的断片もしくは変異体である。一例では、補体阻害因子は、変異体または修飾sCR1である。
一例では、補体阻害因子は、C1阻害因子(すなわち、C1‐INH)、またはその機能的断片もしくは変異体である。一例では、補体阻害因子は、変異体または修飾C1‐INHである。
【0058】
一例では、本開示は、血液凝固因子にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
別の例では、本開示は、血液凝固因子に結合する化合物にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。例えば、化合物は、血液凝固因子であるか、またはそれに結合する。
【0059】
一例では、血液凝固因子は、第I因子、第II因子(プロトロンビン)/トロンビン、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子および上記のいずれかの活性型から成る群から選択される。例えば、血液凝固因子は、第IX因子および/または第IXa因子である。別の例では、血液凝固因子は、第X因子および/または第Xa因子である。更なる例では、血液凝固因子は、第IX/IXa因子および第X/Xa因子である。一例では、血液凝固因子は、第VII因子および/または第VIIa因子である。別の例では、血液凝固因子は、第VIII因子および/または第VIIIa因子である。
【0060】
本開示はまた、開示の血清アルブミンコンジュゲート、ならびに医薬担体および/または賦形剤を含む組成物を提供する。
一例では、その組成物は、配列番号1に規定される配列を含む血清アルブミンを含む血清アルブミンコンジュゲートを含む組成物と比較して、FcRnに対する結合親和性を増強した。
【0061】
一例では、その組成物は、配列番号1に規定される配列を含む血清アルブミンを含む血清アルブミンコンジュゲートを含む組成物と比較して、血清半減期を延長した。
本開示はまた、対象の疾患または病態を治療するかまたは予防する方法も提供し、そして、その方法は、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片を含む血清アルブミンコンジュゲートもしくは組成物を投与することを含む。一例では、その対象は前記疾患の治療を必要としている。
【0062】
一例では、本開示は、対象の疾患または病態を治療するかまたは予防する際の使用のための、血清アルブミン変異体またはその機能的断片、あるいは、血清アルブミン変異体またはその機能的断片を含む血清アルブミンコンジュゲートもしくは組成物を提供する。
一例では、本開示は、対象の疾患または病態の治療または予防のための薬剤の製造における、本開示の血清アルブミンコンジュゲート、あるいは本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片を含む組成物の使用を提供する。
【0063】
一例では、疾患または病態は出血性障害である。
【0064】
一例では、対象は出血性障害に罹患している。一例では、対象は、出血性障害に罹患していると診断されている。一例では、対象は、出血性障害の治療を受けている。
【0065】
本明細書に記載の任意の方法の一例では、本開示の血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物を出血性障害の発症の前または後に投与する。本明細書に記載の任意の方法の一例では、本開示の血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物を出血性障害の発症の前に投与する。本明細書に記載の任意の方法の一例では、本開示の血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物を出血性障害の発症の後に投与する。
【0066】
本明細書に記載の任意の方法の一例では、本開示の血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物を出血イベントの発現の前または後に投与する。一例では、本開示の血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物を出血イベントの発現の前に投与する。別の例では、本開示の血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物を出血イベントの発現の後に投与する。
【0067】
出血イベントは当業者に明らかであり、例えば小出血イベントおよび/または大出血イベントを含む。一例では、出血イベントは大出血イベントである。例えば、大出血イベントは、≧5g/dL以上の還元ヘモグロビンまたは≧15%以上のヘマトクリット値の絶対的減少を引き起こす出血の任意のエピソードである。一例では、出血イベントは小出血イベントである。例えば、小出血イベントは、≦4g/dL以下の還元ヘモグロビンまたは≧10%以上のヘマトクリット値の絶対的減少を引き起こす出血の任意のエピソードである。
【0068】
一例では、対象は、出血性障害を発症するリスクがある。例えば、出血性障害を発症するリスクがある対象は血液凝固因子、例えば第VIII因子の突然変異、欠失もしくは再構成を有する対象、または血小板障害を有する対象を含むが、これらに限定されない。一例では、対象は、出血性障害を発症した近親者を有する。例えば、出血性障害は遺伝性である。一例では、出血性障害は後天性である。
【0069】
一例では、血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物を出血性障害の症状の発現の前または後に投与する。一例では、血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物を出血性障害の症状の発現の前に投与する。一例では、血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物を出血性障害の症状の発現の後に投与する。一例では、本開示の血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物を、出血性障害の症状の1つ以上を緩和または軽減する用量で投与する。
【0070】
出血性障害の症状は当業者に明らかであり、例えば、以下の:
あざができやすいこと;
歯肉の出血;
小さな切り傷または歯科治療痕からの多量の出血;
原因不明の鼻血;
多量の月経出血;
関節内出血;および/または
手術後の過度の出血、
を含む。
【0071】
一例では、出血性障害は血液凝固障害に起因する。例えば、血液凝固障害は血友病、フォンヴィレブランド病、第I因子欠乏症、第II因子欠乏症、第V因子欠乏症、複合型第V因子/第VIII因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XI因子欠乏症または第XIII因子欠乏症である。一例では、血友病は血友病Aまたは血友病Bである。一例では、対象は予防的治療を要する病態を有する。
【0072】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物は、対象における出血の重症度を軽減する量で対象に投与される。
【0073】
本明細書に記載の任意の方法の一例では、対象は哺乳動物、例えばヒトなどの霊長類である。
【0074】
本明細書に記載の治療方法は、出血性障害の影響を軽減、治療または予防するために更なる化合物を投与することを付加的に含み得る。
【0075】
本開示は、出血性障害の治療または予防に使用される、血液凝固因子に結合する血清アルブミン変異体またはその機能的断片を含む組成物も提供する。
【0076】
本開示は、出血性障害を治療または予防する薬剤の製造における血液凝固因子に結合する血清アルブミン変異体またはその機能的断片を含む組成物の使用も提供する。
【0077】
本開示は、対象における出血性障害の治療または予防への使用のための説明書と共にパッケージ化された、血液凝固因子に結合する本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物のうちの少なくとも1つを含むキットも提供する。任意選択で、キットは治療的に活性な化合物または薬物を付加的に含む。
【0078】
本開示は、出血性障害に罹患しているまたは罹患しているリスクがある対象にそのコンジュゲートまたは組成物を投与するための説明書と共にパッケージ化された、血液凝固因子に結合する本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片を含む血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物のうちの少なくとも1つを、任意選択で治療的に活性な化合物または薬物と組み合わせて含むキットも提供する。
【0079】
血液凝固因子に結合する本開示の血清アルブミンコンジュゲートまたは組成物の例示的な効果は、本明細書に記載され、先の5段落に提示される本開示の例に変更すべき点を変更して適用されるとみなすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1図1は、ヒトFcRn受容体を発現するマウスに注射したHSA変異体の血清HSA濃度を示すグラフ表示である(μg/mL;平均±SEM)。
【発明を実施するための形態】
【0081】
配列表の要点
配列番号1 ヒト血清アルブミンのアミノ酸配列
配列番号2 ヒト血液凝固第VIII因子のアミノ酸配列
配列番号3 ヒト血液凝固第IX因子のアミノ酸配列
配列番号4 ヒト血液凝固第X因子のアミノ酸配列
配列番号5 ヒト血液凝固第VII因子のアミノ酸配列
配列番号6 ヒトフォンヴィレブランド因子のアミノ酸配列
【0082】
詳細な説明
総則
本明細書全体を通して、別段の明記のない限りまたは文脈上、他の意味に解すべき場合を除き、単一の工程、物質の組成物、工程の群または物質の組成物の群への言及は、これらの工程、物質の組成物、工程の群または物質の組成物の群の1つおよび複数(すなわち、1つ以上)を包含するとみなされるものとする。
【0083】
本開示に具体的に記載されるもの以外の変更および修正の余地があることが当業者には認識される。本開示が全ての斯かる変更および修正を含むことを理解すべきである。本開示は、本明細書で個別にまたはまとめて言及または指示される工程、特徴、組成物および化合物の全て、ならびに上記工程または特徴のいずれか2つ以上のあらゆる組み合わせも含む。
【0084】
本開示の範囲は、例示のみを目的とすることが意図された本明細書に記載の具体例によって限定されない。機能的に同等の生成物、組成物および方法が明らかに本開示の範囲に含まれる。
【0085】
本明細書中の本開示の任意の例は、他に特に指定のない限り、本開示の任意の他の例に変更すべき点を変更して適用されるとみなされるものとする。言い方を変えると、本開示の任意の具体例を本開示の任意の他の具体例と組み合わせることができる(相互排他的である場合を除く)。
【0086】
特定の特徴または特徴の群または方法または方法工程を開示する本開示の任意の例は、特定の特徴または特徴の群または方法または方法工程を放棄する(disclaiming)明示的な支持を与えるとみなされる。
【0087】
他に特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者(例えば細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学および生化学の当業者)により一般に理解されるものと同じ意味を有するとみなされるものとする。
【0088】
他に指定のない限り、本開示において利用される組み換えタンパク質法、細胞培養法および免疫学的技法は、当業者に既知の標準的な手順である。斯かる技法は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984)、J. Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989)、T.A. Brown (editor), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991)、D.M. Glover and B.D. Hames (editors), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1‐4, IRL Press (1995 and 1996)、およびF.M. Ausubel et al. (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley‐Interscience (1988)(現在までの全ての改訂版を含む)、Ed Harlow and David Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988), and J.E. Coligan et al. (editors) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons(現在までの全ての改訂版を含む)などの情報源の文献全体を通して記載および説明されている。
【0089】
本明細書の可変領域およびその一部、抗体およびそのフラグメントの説明および定義は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987 and 1991, Bork et al., J Mol. Biol. 242, 309‐320, 1994, Chothia and Lesk J. Mol Biol. 196:901 ‐917, 1987, Chothia et al. Nature 342, 877‐883, 1989 and/or or Al‐Lazikani et al., J Mol Biol 273, 927‐948, 1997における論考によって更に明確化され得る。
【0090】
「および/または」、例えば「Xおよび/またはY」という用語は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解されるものとし、両方の意味またはいずれかの意味の明示的な支持を与えるとみなされるものとする。
【0091】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」という単語、または変形したもの、例えば、「comprises」もしくは「comprising」など、は、明記した要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を含むが、任意の他の要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を除外しないことを示唆すると理解される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「から誘導される」という用語は、指定の整数を特定の起源から、必ずしもその起源から直接とは限らずに得ることができることを示すとみなされるものとする。
【0093】
選択的定義
血清アルブミンまたは血清アルブミンは、最も豊富な血液タンパク質であり、血液中のステロイド、脂肪酸および甲状腺ホルモンの担体タンパク質として機能し、ならびに細胞外液量を安定させる際に大きな役割を果たす。限定ではなく、命名のみを目的として、ヒト血清アルブミンの例示的な配列はNCBI GenBank受託ID:AEE60908および配列番号1に提示されている。「血清アルブミン」または「アルブミン」への言及にはプレプロアルブミンが含まれていると理解されるべきであり、そしてそれは、N末端ペプチド、プロアルブミン、および分泌アルブミンを含む。アミノ酸の位置は、(例えば、配列番号1に提示した)585個のアミノ酸から成る分泌アルブミンタンパク質を参照することによって本明細書中において言及される。アルブミンは3つの相同ドメインを含み、ここで、各ドメインは、共通の構造モチーフを有する2つのサブドメインから成る生成物である。ドメインI、IIおよびIIIは、(配列番号1に規定される)ヒト血清アルブミンに関して規定され得る。例えば、ドメインIは配列番号1の第1(±1~15アミノ酸)~第194(±1~15アミノ酸)アミノ酸を含み、ドメインIIは配列番号1の第192(±1~15アミノ酸)~第387(±1~15アミノ酸)アミノ酸を含み、そしてドメインIIIは配列番号1の第381(±1~15アミノ酸)~第585(±1~15アミノ酸)アミノ酸残基を含む。「±1~15アミノ酸」という語句は、アミノ酸残基が、記載のアミノ酸位置のC末端および/またはN末端へと1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸逸脱してもよいことを意味する。例示的なドメインI、IIおよびIIIは、Dockalら(The Journal of Biological Chemistry, 1999, Vol. 274(41): 29303‐29310)およびKjeldsenら(Protein Expression and Purification, 1998, Vol 13: 163‐169)によって記載されている。
【0094】
他の種からの血清アルブミン(例えば、霊長類の血清アルブミン(例えば、チンパンジー血清アルブミン、ゴリラ血清アルブミンなど)、齧歯動物の血清アルブミン(例えば、ハムスター血清アルブミン、モルモット血清アルブミン、マウスアルブミンおよびラット血清アルブミンなど)、ウシ血清アルブミン、ウマ血清アルブミン、ロバ血清アルブミン、ウサギ血清アルブミン、ヤギ血清アルブミン、ヒツジ血清アルブミン、イヌ血清アルブミン、ニワトリ血清アルブミンならびにブタ血清アルブミン)の更なる配列は、本明細書中に提供した配列を使用して、および/または公的に入手可能なデータベース内で、および/または(例えば、Ausubel et al., (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley‐Interscience (1988、存在まですべてのアップデートを含む) or Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載の)標準的な技術を使用して決定され得る。
【0095】
本明細書中で使用される場合、配列番号1内のアミノ酸の位置に言及する際の「に対応する」という語句は、アルブミン配列内のアミノ酸残基または位置への言及として理解されるべきであり、必ずしも配列番号1を含む配列でなくともよい。例えば、10アミノ酸のN末端切断を含むアルブミン配列における「配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置」への言及は、必ず第512位のアミノ酸を指すことになる。一例では、血清アルブミンは配列番号1に規定される配列を含む。
【0096】
血清アルブミンの「機能的断片」への言及は、保有および提示されている血清アルブミンの機能性(すなわち、FcRnに結合する能力)を有する血清アルブミンの断片に対する言及と理解されるべきである。断片は、もうひとつのアルブミンのドメイン、斯かるドメインの断片またはその組み合わせを含んでも、またはそれらから成ってもよい。
【0097】
本明細書中で使用される場合、「アミノ酸置換」は、別のアミノ酸による、ポリペプチド配列内の特定の位置でのアミノ酸の置換を指す。
本明細書中に使用される場合、「FcRn」という用語は、Brambell受容体としても知られている胎児性Fc受容体を指し、主要組織適合性複合体クラスl様Fc受容体(FCGRT)の短縮重鎖とβ‐2‐ミクログロブリンとのヘテロ二量体である。
【0098】
本明細書中に使用される場合、「変異体」または「突然変異体」もしくは「突然変異という用語は、部位特異的突然変異誘発のための周知の技術またはその他の従来法を使用した1もしくは複数のアミノ酸の置換を受けた血清アルブミンを指す。
本明細書中に使用される場合、FcRnと血清アルブミンの相互作用に関する「結合する」という用語は、相互作用が、細胞またはタンパク質上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存していることを意味する。
【0099】
本明細書中に使用される場合、FcRnと血清アルブミン変異体の相互作用に関連して「増強された親和性」、「増強された結合」または「より高いレベルにある結合」に言及する語句は、血清アルブミン変異体またはその機能的断片が、配列番号1に規定されるヒト血清アルブミンと比較して、より長い持続性および/またはより高い親和性で、より頻繁に、より急速に、FcRnに結合するかまたは会合することを意味すると理解される(例えば、1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、40倍、60倍、80倍、100倍、150倍または200倍)。明確化の目的のため、かつ、本明細書中に例示された内容に基づいて当業者に明らかであるように、この明細書における「親和性」への言及は、FcRnと血清アルブミン変異体の相互作用、結合または会合への言及である。
【0100】
明確化の目的のため、かつ、本明細書中に説明に基づいて当業者に明らかであるように、「少なくとも約~の親和性」への言及は、その親和性が列挙した値と等しいかまたはそれより高い(すなわち、親和性として列挙した値はより小さい)すなわち、2nMの親和性は3nMの親和性より高いことを意味すると理解される。別の言い方をすれば、この用語は、「X以下の親和性」であり得、ここで、Xは本明細書中に列挙された値である。
【0101】
本明細書中に使用される場合、「血清半減期」または「血漿半減期」という用語は、本開示との関連で、体内の血清アルブミンの濃度または量が、例えば、天然の機構による分解および/またはクリアランスもしくは隔離により50%(すなわち、半分)まで低減されるのに必要な時間を指す。当業者は、対象の血清アルブミンの血清半減期が様々な生理的条件(例えば、健康状態、体格/体重)に依存していることを認識しているであろう。健常ヒト対象において、血清アルブミンの血清半減期は19日である。血清アルブミンの血清半減期を測定する方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、薬物動力学的解析が挙げられる。本開示の目的のために、「延長された」または「向上した」血清半減期とは、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、血清アルブミン変異体の血清中濃度が50%低減されるためにかかる時間の上昇または延長を指す。
【0102】
「組み換え」という用語は、人工遺伝的組換えの産物を意味すると理解されるものとする。したがって、抗体またはその抗原結合ドメインを含む組み換えタンパク質との関連で、この用語は、B細胞成熟中に起こる天然組換えの産物である対象の身体内で自然発生する抗体を包含するものではない。しかしながら、斯かる抗体を単離する場合、この抗体は抗体抗原結合ドメインを含む単離タンパク質とみなすべきである。同様に、タンパク質をコードする核酸を単離し、組み換え手段を用いて発現させる場合、得られるタンパク質は、抗体抗原結合ドメインを含む組み換えタンパク質である。組み換えタンパク質は、細胞、組織または対象内、例えばそれが発現された細胞、組織または対象内に存在する場合、人工組み換え手段によって発現されたタンパク質も包含する。
【0103】
「タンパク質」という用語は単一ポリペプチド鎖、すなわちペプチド結合によって連結した一連の連続アミノ酸、または互いに共有結合的もしくは非共有結合的に連結した一連のポリペプチド鎖(すなわち、ポリペプチド複合体)を含むとみなされるものとする。例えば、一連のポリペプチド鎖は、好適な化学結合またはジスルフィド結合を用いて共有結合的に連結することができる。非共有結合の例としては、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力および疎水性相互作用が挙げられる。
【0104】
「ポリペプチド」または「ポリペプチド鎖」という用語は、ペプチド結合によって連結した一連の連続アミノ酸を意味することが前段落から理解される。
【0105】
本明細書では、「抗原結合ドメイン」という用語は、抗体で抗原に特異的に結合することのできる領域、すなわちVH、またはVL、またはVHとVLの両方を含むFvを意味すると理解される。抗原結合ドメインは、抗体全体の文脈である必要はなく、例えば、単離形態または別の形態(例えば本明細書に記載したようにscFvなど)であることが可能である。
【0106】
本開示の目的では、「抗体」という用語は、抗原結合ドメインがFvに含まれることが理由で、1個または数個の密接に関係した抗原(例えば、血液凝固因子)に特異的に結合することのできるタンパク質を含んでいる。この用語は、4本鎖抗体(例えば2本の軽鎖と2本の重鎖)、組み換え抗体または改変された抗体(例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、CDR移植抗体、霊長類化抗体、脱免疫化抗体、シンヒューマナイズド抗体、半抗体、二重特異性抗体)を含んでいる。抗体は、任意のタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、 IgY)、またはクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)、またはサブクラスのものが可能である。一例では、抗体は齧歯類(マウスまたはラット)抗体、または霊長類(ヒトなど)抗体である。一例では、抗体重鎖は、C末端リシン残基を欠いている。一例では、抗体は、ヒト化抗体、シンヒューマナイズド抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、脱免疫化抗体のいずれかである。
【0107】
本明細書で使用される場合、「可変領域」は、抗原に特異的に結合可能であり、相補性決定領域(CDR)、すなわちCDR1、CDR2およびCDR3、ならびにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む、本明細書で規定される抗体の軽鎖および/または重鎖の部分を指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「Fv」という用語は、複数のポリペプチドから構成されるかまたは単一のポリペプチドから構成されるかを問わず、軽鎖の可変領域(VL)および重鎖の可変領域(VHが会合し、抗原結合ドメインを有する、すなわち抗原に特異的に結合することが可能な複合体を形成する任意のタンパク質を意味するとみなされるものとする。抗原結合ドメインを形成するVHおよびVLは、単一のポリペプチド鎖中にあってもまたは異なるポリペプチド鎖中にあってもよい。さらに、本開示のFv(および本開示の任意のタンパク質)は、同じ抗原に結合してもまたは結合しなくてもよい複数の抗原結合ドメインを有し得る。この用語は、抗体に直接由来するフラグメントおよび組み換え手段を用いて作製される、斯かるフラグメントに対応するタンパク質を包含すると理解されるものとする。幾つかの例では、VHは重鎖定常ドメイン(CH)1に連結せず、および/またはVLは軽鎖定常ドメイン(CL)に連結しない。例示的なFv含有ポリペプチドまたはタンパク質としては、Fabフラグメント、Fab‘フラグメント、F(ab‘)フラグメント、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディもしくはより高次の複合体、または定常領域もしくはそのドメイン、例えばCH2もしくはCH3ドメインに連結した上述のいずれか、例えばミニボディが挙げられる。「Fabフラグメント」は、免疫グロブリンの一価抗原結合フラグメントから成り、無傷軽鎖と重鎖の一部分とから成るフラグメントを生じる、酵素パパインによる完全抗体の消化によって作製するか、または組み換え手段を用いて作製することができる。抗体の「Fab‘フラグメント」は、無傷軽鎖とVHおよび単一定常ドメインを含む重鎖の一部分とから成る分子が生じるように、完全抗体をペプシンで処理し、続いて還元することによって得ることができる。このように処理された抗体1つ当たり2つのFab‘フラグメントが得られる。Fab‘フラグメントは、組み換え手段によっても作製することができる。抗体の「F(ab‘)2フラグメント」は、2つのジスルフィド結合によって会合した2つのFab‘フラグメントの二量体から成り、完全抗体分子を酵素ペプシンで処理し、続いて還元せずに得られる。「Fab2」フラグメントは、例えばロイシンジッパーまたはCH3ドメインを用いて連結された2つのFabフラグメントを含む組み換えフラグメントである。「一本鎖Fv」または「scFv」は、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域が好適な可動性ポリペプチドリンカーによって共有結合的に連結した、抗体の可変領域フラグメント(Fv)を含有する組み換え分子である。
【0109】
抗体の「抗原結合フラグメント」は、無傷抗体の1つ以上の可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab‘、F(ab‘)2およびFvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体(linear antibodies);一本鎖抗体分子、半抗体および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「病態」という用語は、正常機能の破壊または干渉を指し、任意の特定の病態に限定されず、複数の疾患または複数の障害を含む。
【0111】
本明細書で使用される場合、「出血性病態」または「出血性障害」という用語は、異常な血液凝固、例えば低下したもしくは不十分な血液凝固能、および/または異常出血(内部および/または外部)、例えば過度の出血が見られる病態を指す。
【0112】
本明細書で使用される場合、「凝固因子」は血餅の形成、すなわち血液凝固と関連する因子を指す。一例では、凝固因子は凝固促進活性を有する。凝固因子は当該技術分野で既知であり、第I因子、第II因子、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子および第XIII因子、または上記のいずれかの活性型を含むが、これらに限定されない。この用語は、例えば当該技術分野で既知のようにおよび/または本明細書に記載のように、凝固因子の組み換え形態および/またはその修飾形態も含む。
【0113】
本明細書で使用される場合、疾患もしくは病態の発症、またはその再発、あるいは再発することの「リスクがある」対象は、本開示による治療の前に検出可能な疾患または疾患の症状を有していてもまたは有していなくてもよく、検出可能な疾患または疾患の症状を示していてもまたは示していなくてもよい。「リスクがある」とは、対象が当該技術分野で既知のおよび/または本明細書に記載の疾患または病態の発症と相関する測定可能なパラメーターである1つ以上のリスク因子を有することを表す。
【0114】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療する」または「治療」という用語は、本明細書に記載の血清アルブミン変異体コンジュゲートを投与し、それにより指定の疾患もしくは病態の少なくとも1つの症状を軽減もしくは解消するか、または疾患もしくは病態の進行を遅くすることを含む。
【0115】
本明細書で使用される場合、「予防すること」、「予防する」または「予防」という用語は、個体における出血性疾患または出血性疾患の症状の発生または再発に対する予防法を与えることを含む。個体は、疾患の発症または疾患の再発の素因を有するかまたはそのリスクがある可能性があるが、未だ疾患または再発とは診断されていない。
【0116】
「有効量」は、少なくとも必要な投与量および期間で所望の結果を達成するのに効果的な量を指す。例えば、所望の結果は治療的結果または予防的結果であり得る。有効量は、1回以上の投与で与えることができる。本開示の幾つかの例では、「有効量」という用語は、上に記載される疾患または病態の治療を達成するのに必要な量を意味する。本開示の幾つかの例では、「有効量」という用語は、上に記載される疾患または病態と関連する因子の変化を達成するのに必要な量を意味する。例えば、有効量は、凝固レベルの変化を達成するのに十分であり得る。有効量は、治療すべき疾患もしくは病態、または変化させるべき因子に応じて、更には体重、年齢、人種的背景、性別、健康および/または身体状態、ならびに治療される哺乳動物に関連する他の因子に応じて変化し得る。通例、有効量は、医師による日常的な試験および実験によって決定することができる比較的広い範囲(例えば、「投与量」範囲)に含まれる。したがって、この用語は、結合タンパク質の特定の量、に本開示を限定すると解釈すべきではない。有効量は、単回投与または治療期間にわたる1回もしくは数回の反復投与で投与することができる。
【0117】
「治療有効量」は、少なくとも特定の疾患または病態の測定可能な改善を達成するのに必要とされる最低濃度である。本明細書の治療有効量は患者の病状、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を引き起こすアルブミンコンジュゲートの能力などの因子に応じて変化し得る。治療有効量は、アルブミンコンジュゲートの任意の毒性作用または有害作用を治療上有益な効果が上回る量でもある。一例では、治療有効量は、出血性障害またはその合併症の1つ以上の症状を軽減または抑制するのに十分なアルブミンコンジュゲートの量を意味するとみなされるものとする。
【0118】
本明細書で使用される場合、「予防有効量」という用語は、出血性障害またはその合併症の1つ以上の検出可能な症状の発現を予防するまたは阻害するまたは遅らせるのに十分なアルブミンコンジュゲートの量を意味するとみなされるものとする。
【0119】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語はヒト、例えば哺乳動物を含む任意の動物を意味するとみなされるものとする。例示的な対象としては、ヒトおよびヒト以外の霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、対象はヒトである。
【0120】
血清アルブミン変異体
本開示は、配列番号1に規定される配列と比較して、規定したアミノ酸置換を有する血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその断片は、本明細書中に開示した配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%または99%同一の配列を含み、ここで、その血清アルブミン変異体またはその断片は、いずれかの実施例に従って本明細書中に記載したFcRnに結合する。
【0121】
本開示は、以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸;
(ii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;
(iii)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;および
(iv)その組み合わせ、
から成る群から選択される1もしくは複数のアミノ酸置換を含む血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
【0122】
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンを更に含む。
例えば、発明者らは、機能の喪失なしに置換され得る、または改善された機能をもたらす、配列番号1に規定される配列中のいくつかのアミノ酸残基を同定した。一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、
配列番号1に規定される配列と比較して第522、552および/または572アミノ酸に対応する位置での1~3個のアミノ酸置換を含む。例えば、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列と比較して、第522、552、および/または572アミノ酸に対応する位置にて1、2または3回のアミノ酸置換を含む。
【0123】
任意選択で、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、、配列番号1に規定される配列と比較して、第573アミノ酸に対応する位置にて1つのアミノ酸置換を追加的に含む。
【0124】
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列と比較して、第522、552、および/または572アミノ酸、さらに任意選択で第573アミノ酸に対応する位置にて1~4個のアミノ酸置換を含む。
例えば、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、
配列番号1に規定される配列比較して、第522、552および/または5723アミノ酸、さらに任意選択で第573アミノ酸に対応する位置にて1、2、3または4個のアミノ酸置換を含む。
【0125】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグリシンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてイソロイシンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてリジンを少なくとも含む。
【0126】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてメチオニンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてフェニルアラニンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてトリプトファンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてチロシンを少なくとも含む。
【0127】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸対応する位置にてにバリンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてロイシンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてアラニンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてバリンを少なくとも含む。
【0128】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてアラニンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグルタミン酸を少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてヒスチジンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてセリンを少なくとも含む。
【0129】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてリジンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてアルギニンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてバリンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてロイシン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてアルギニンを少なくとも含む。
【0130】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてロイシン、および配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてバリンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてロイシン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてチロシンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてバリン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてチロシンを少なくとも含む。
【0131】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてチロシンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてバリン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてアルギニンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてバリン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてチロシンを少なくとも含む。
【0132】
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてロイシン、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてチロシンを少なくとも含む。
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される配列の変異体を含み、ここで、その変異体配列は、配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてバリン、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてチロシンを少なくとも含む。
【0133】
変異型の血清アルブミンを作製する例示的な方法は、本明細書中に記載されているか、または当該技術分野で既知であり、以下の:
・DNAの突然変異誘発(Thie et al., Methods Mol. Biol. 525: 309‐322, 2009)またはRNAの突然変異誘発(Kopsidas et al., Immunol. Lett. 107:163‐168, 2006; Kopsidas et al. BMC Biotechnology, 7: 18, 2007;およびWO1999/058661);
・ポリペプチドをコードする核酸を変異誘起細胞、例えば、XL‐1Red細菌細胞、XL‐mutS細菌細胞およびXL‐mutS‐Kanr細菌細胞(Stratagene)に導入する;
・例えば、Stemmer, Nature 370: 389‐91, 1994に開示されるDNAシャッフリング;ならびに
・例えば、Dieffenbach (ed) and Dveksler (ed)(In: PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, NY, 1995)に記載の部位特異的突然変異誘発、
を含む。
【0134】
本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片の生物学的活性を測定するための例示的な方法は、当業者に明らかであり、本明細書中に記載されている、例えば、FcRn親和性である。例えば、親和性、会合、解離および治療効率を含めた、血清アルブミン変異体またはその機能的断片の親和性を測定するための方法が、本明細書中に記載されている。
【0135】
例えば、発明者らは、血清アルブミンの半減期を延長するために置換され得る配列番号1に規定される配列のいくつかのアミノ酸残基を同定した。例えば、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、胎児性Fc受容体(FcRn)に対するアルブミンの親和性を増強する1もしくは複数のアミノ酸置換を含む。一例では、変異体またはその機能的断片は、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、FcRnに対して高い親和性で結合する。例えば、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、より低いpH、例えば、約pH6.0にてFcRnに対する高い親和性を有するため、エンドソームの中でアルブミン/FcRn結合が容易になる。一例では、アルブミンは、pH7.4でのその親和性と比較して、約pH6にてFcRnに対する親和性が増大し、そしてそれは、細胞での再生後の血中へのアルブミンの再放出を容易にする。これらのアミノ酸置換は、血液からのクリアランスを低減することによってタンパク質の半減期を延長するのに有用である。
【0136】
一例では、例示的なアミノ酸置換としては、Q522G、Q522I、Q522K、Q522M、Q522L、Q522F、Q522W、Q522Y、Q522V、A552V、G572A、G572E、G572H、G572S、G572KおよびG572Rが挙げられる。
別の例では、例示的なアミノ酸置換としては、Q522G、Q522I、Q522K、Q522M、Q522L、Q522F、Q522W、Q522Y、Q522V、Q522A、A552V、G572A、G572E、G572H、G572S、G572K、G572VおよびG572Rが挙げられる。
【0137】
コンジュゲート
一例では、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、化合物にコンジュゲートされる、および/または別の化合物をカプセル化する。例えば、その化合物は、放射性同位元素、検出可能な標識、治療用化合物、治療用タンパク質、造影剤、コロイド、毒素、核酸、ペプチド、タンパク質、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)、siRNA、干渉RNA(RNAi)、リボザイム、マイクロRNA、マイクロRNA適応shRNA(shRNAmir)、DNA酵素およびその混合物から成る群から選択される。
【0138】
その化合物は、血清アルブミン変異体または機能的断片に直接的または間接的に結合され得る(例えば、間接的結合の場合にはリンカーを含み得る)。化合物の例としては、放射性同位元素(例えば、ヨウ素‐131、イットリウム‐90またはインジウム‐111)、検出可能な標識(例えば、フルオロフォア、蛍光ナノ結晶または量子ドット)、治療用化合物またはタンパク質(例えば、化学療法剤、抗炎症剤または凝固因子)、コロイド(例えば、金)、毒素(例えば、リシンまたは破傷風トキソイド)、核酸、タンパク質(例えば、抗体の抗原結合ドメインを含むタンパク質)、ならびにその混合物が挙げられる。一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、凝固因子にコンジュゲートされる。
【0139】
例えば、その化合物は、タンパク質であり、血清アルブミン変異体またはその機能的断片にアミン結合によってコンジュゲートされる。
一例では、開示は、血清アルブミン変異体またはその機能的断片と化合物(例えば、治療用タンパク質、例えば、凝固因子など)を含む融合タンパク質を提供する。例えば、その化合物は、血清アルブミン変異体またはその機能的断片のN末端に配置されるか、血清アルブミン変異体またはその機能的断片のC末端に配置されるか、血清アルブミン変異体またはその機能的断片のループ内に挿入されるか、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0140】
本開示の血清アルブミン変異体にコンジュゲートされ得る例示的な化合物、および斯かるコンジュゲーションのための方法は、当該技術分野で公知であり、さらに、本明細書中に記載されている。
【0141】
放射性同位元素
一例では、本開示は、放射性同位元素にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
【0142】
本開示における使用のための好適な放射性同位元素は、当業者に明らかであり、例えば、ヨウ素‐123(123I)、ヨウ素‐125(125I)、ヨウ素‐130(130I)、ヨウ素‐133(133I)、ヨウ素‐135(135I)、スカンジウム‐47(47Sc)、ヒ素‐72(72As)、スカンジウム‐72(72Sc)、イットリウム‐90(90Y)、イットリウム‐88(88Y)、ルテニウム‐97(97Ru)、パラジウム‐100(100Pd)、ロジウム‐101m(101mRh)、アンチモン‐119(119Sb)、バリウム‐128(128Ba)、水銀‐197(197Hg)、アスタチン‐211(211At)、ビスマス‐212(212Bi)、サマリウム‐153(153Sm)、ユーロピウム‐169(169Eu)、鉛‐212(212Pb)、パラジウム‐109(109Pd)、インジウム111(111In)、67Gu、68Gu、銅‐67(67Cu)、臭素‐75(75Br)、臭素‐76(76Br)、臭素‐77(77Br)、テクネチウム99m(99mTc)、炭素‐11(11C)、窒素‐13(13N)、酸素‐15(15O)、ヨウ素‐18(18I)、レニウム‐188(188Re)、鉛‐203(203Pb)、銅64(64Cu)、ロジウム‐105(105Rh)、金‐198(198Au)、アルゴン‐199(199Ag)またはルテチウム‐177(177Lu)が挙げられる。
【0143】
検出可能な標識
一例では、本開示は、検出可能な標識に結合させた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。例えば、検出可能な標識は、フルオロフォア、蛍光ナノ結晶または量子ドットである。
【0144】
「フルオロフォア」という用語は、特定の波長の光を吸収し、そして、蛍光を発するか、またはより長い波長の光を再び放出する化学物質を指す。フルオロフォアは、紫外スペクトル(10nm~400nm)、可視スペクトル(400nm~700nm)、または近赤外域(680nm~100,000nm)の蛍光を発し得る。
【0145】
本開示における使用のための好適なフルオロフォアは、熟練者に明らかであり、例えば、インドシアニングリーン、IRDye78、IRDye80、IRDye38、IRDye40、IRDye41、IRDye700、IRDye800、IRDye800CW、Cy5、Cy5.5、Cy7、IR‐786、DRAQ5NO、Licor NIR、Alexa Fluor488、Alexa Fluor680、Alexa Fluor700、Alexa Fluor750、La Jolla Blue、R‐フィコエリトリン(PE)、ヒドロキシクマリン、メトキシクマリン、アミノクマリン、Fluorescein FITC、Rhodamine Red‐X、Texas Red、Allophycocyanin(APC)およびその類似体が挙げられる。
【0146】
一例では、検出可能な標識は量子ドットである。量子ドットは、サイズ依存性の光学および電子特性を有する半導体ナノ結晶である。量子ドットとしての使用に好適な例示的な物質としては、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、GaΝ、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、Sb、AlS、AlP、AlAs、AlSb、PbS、PbSe、Ge、およびSi、ならびにその三成分および四成分混合物が挙げられる。
【0147】
一例では、検出可能な標識は蛍光タンパク質である。本開示における使用のための好適な蛍光タンパク質は、当業者に明らかであり、例えば、Renillaルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFB)およびその誘導体が挙げられる。
【0148】
生物学的実体
凝固因子
本開示は、凝固因子にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
【0149】
血液凝固は、幾つかの凝固因子の放出を伴う一連の段階を経て起こり、最終的に不溶性フィブリンを含有する血餅の形成が生じる。例示的な凝固因子としては、第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン/トロンビン)、第III因子(組織因子)、第V因子(不安定因子)、第VII因子(プロコンバーチン)、第VIII因子(抗血友病因子)、第IX因子(クリスマス因子)、第X因子(スチュアート‐ブラウアー因子)、第XI因子(血漿トロンボプラスチン前駆物質)、第XII因子(ハーゲマン(接触)因子)および第XIII因子(フィブリン安定化因子/プレカリクレイン(フレッチャー)因子/HMWK(フィッツジェラルド)因子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
例えば、その化合物は、凝固因子であり、アミン結合によって血清アルブミン変異体またはその機能的断片にコンジュゲートされる。
一例では、開示は、血清アルブミン変異体またはその機能的断片および凝固因子を含む融合タンパク質を提供する。例えば、凝固因子は、血清アルブミン変異体またはその機能的断片のN末端に配置されるか、血清アルブミン変異体またはその機能的断片のC末端に配置されるか、血清アルブミン変異体またはその機能的断片のループ内に挿入されるかまたはそれらの任意の組み合わせである。
【0151】
一例では、その凝固因子は第VIII因子である。限定ではなく、命名のみを目的として、ヒト第VIII因子の例示的な配列は、NCBI Ref Seq ID NP_000123、タンパク質受入番号NM_000132.3および配列番号2に提示される。
一例では、凝固因子は第IX因子である。限定ではなく、命名のみを目的として、ヒト第IX因子の例示的な配列は、GenBank ID AAA98726.1および配列番号3に提示される。
【0152】
一例では、凝固因子は第X因子である。限定ではなく、命名のみを目的として、ヒト第X因子の例示的な配列は、Gene ID:2159および配列番号4に提示される。
一例では、凝固因子は第VII因子である。限定ではなく、命名のみを目的として、ヒト第VII因子の例示的な配列は、Ref Seq ID NM_00131および配列番号5に提示される。
【0153】
限定ではなく、命名のみを目的として、ヒト第I因子の例示的な配列は、NCBI Ref Seq ID NM_000508(α鎖)およびNM_005141(β鎖)に提示され、ヒト第II因子の例示的な配列は、Ref Seq ID NM_000506に提示され、ヒト第III因子の例示的な配列は、Ref Seq ID NM_001993に提示され、ヒト第V因子の例示的な配列は、Ref Seq ID NM_000130に提示され、ヒト第XI因子の例示的な配列は、Ref Seq ID NM_000128に提示され、ヒト第XII因子の例示的な配列は、Ref Seq ID NM_000505に提示され、ヒト第XIII因子の例示的な配列はRef Seq ID NM_000129(A鎖)およびNM_001994(B鎖)に提示される。
【0154】
凝固因子の付加的な配列は、本明細書でおよび/または一般に公開されているデータベースに提示される配列を用いて決定することができ、および/または標準的な技法(例えば、Ausubel et al., (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley‐Interscience (1988)(現在までの全ての改訂版を含む)またはSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載される)を用いて決定することができる。
【0155】
例示的な凝固因子は、ドナーに由来する血漿または組み換えタンパク質であり得る。例えば、凝固因子は、血漿由来のまたは組み換え凝固因子タンパク質である。例えば、治療用タンパク質は第I因子(フィブリノゲン)、第II因子((プロトロンビン)/トロンビン)、第III因子(組織因子)、第V因子(不安定因子)、第VII因子(プロコンベルチン)、第VIIa因子(例えば、NovoSeven(登録商標))、第VIII因子(抗血友病因子;例えばZollner et al., Thromb Res. 132:280‐287, 2013に記載されるような一本鎖組み換え第VIII因子;またはFEIBA(登録商標)、Monoclate‐P(登録商標)もしくはBiostate(登録商標)などの血漿由来第VIII因子製品;またはAdvate(登録商標)、Eloctate(登録商標)、Recombinate(登録商標)、Kogenate Fs(登録商標)、Helixate(登録商標) Fs、Helixate(登録商標)、Xyntha(登録商標)/Refacto Ab(登録商標)、Hemofil‐M(登録商標)、Monarc‐M(登録商標)、Alphanate(登録商標)、Koate‐Dvi(登録商標)、Nuwiq(登録商標)もしくはHyate:C(登録商標)などの組み換え第VIII因子製品など)、第IX因子(クリスマス因子、例えばBerinin(登録商標) P、MonoFIX(登録商標)もしくはMononine(登録商標)などの血漿由来第IX因子製品;またはAlphanine SD(登録商標)、Alprolix(登録商標)、Bebulin(登録商標)、Bebulin VH(登録商標)、Benefix(登録商標)、Ixinity(登録商標)、Profilnine SD(登録商標)、Proplex T(登録商標)もしくはRixubis(登録商標)などの組み換え第IX因子製品)、第X因子(スチュアート‐ブラウアー因子)、第XI因子(血漿トロンボプラスチン前駆物質)、第XII因子(ハーゲマン(接触)因子)および第XIII因子(フィブリン安定化因子/プレカリクレイン(フレッチャー)因子/HMWK(フィッツジェラルド)因子;例えばFibrogammin(登録商標)P、Corifact(登録商標)、Cluvot(登録商標)またはCluviat(登録商標))から成る群から選択される。一例では、治療用タンパク質は、フォンヴィレブランド因子/FVIII複合体(例えばHumate‐P(登録商標)、Haemate(登録商標)‐P、Biostate(登録商標)またはVoncento(登録商標))である。代替的な例では、治療用タンパク質は、プロトロンビン複合体(例えば、Beriplex(登録商標) P/N、Confidex(登録商標)またはKcentra(登録商標))である。別の例では、治療用タンパク質は、フィブリノゲン(例えばRiaSTAP(登録商標)、Haemocomplettan(登録商標)P)である。
【0156】
フォンヴィレブランド因子
本開示は、フォンヴィレブランド因子にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
【0157】
本明細書中で使用される場合、「フォンヴィレブランド因子」(vWF)という用語は、天然に存在する(天然)vWFを含むが、天然に存在するvWFの生物学的活性を保有するその変異体、例えば、断片、融合タンパク質もしくはコンジュゲート、または1もしくは複数の残基が挿入、欠失もしくは置換された配列変異体も含む。限定ではなく、命名のみを目的として、ヒト天然vWFの例示的な配列は、NCBI Ref Seq ID:NP_000543.2および配列番号6に提示される。当業者は、天然vWFが複数のドメインを含むことを理解している。本開示の目的のために、以下の注釈:D1‐D2‐D‘‐D3‐A1‐A2‐A3‐D4‐C1‐C2‐C3‐C4‐C5‐C6‐CK(式中、D‘ドメインは配列番号6の第764~865アミノ酸から成り、D3ドメインは配列番号6の第866~1242アミノ酸から成り、C1ドメインは配列番号6の第2255~2328アミノ酸から成る)が定められた。
【0158】
一例では、そのvWFは、修飾、突然変異体または変異体vWFである。例えば、本開示における使用のための修飾vWFは、D’D3ドメインおよびその修飾形態、例えば、その切断型または突然変異型など、を含む。例えば、修飾vWFは、配列番号6の第764~1242アミノ酸を含む。
一例では、フォンヴィレブランド因子は、遺伝子組み換えフォンヴィレブランド因子である。
【0159】
可溶性補体阻害因子
本開示は、可溶性補体阻害因子にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
【0160】
補体系には、外来性微生物の排除に役割を果たす多くの細胞表面および可溶性タンパク質が含まれ、さらに、補体関連の損傷から宿主を保護している。補体系の3つの経路としては、古典的経路(C1q、C1r、C1s、C4、C2およびC3成分に関与する)、レクチン経路および代替経路が挙げられる。4つの補体受容体CR1(CD35)、CR2(CD21)、CR3(CD11b/CD18)およびCR4(CD11c/CD18)が記載されている。CR1は、血漿タンパクの補体系の活性化の主要な調節物質である。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、可溶性補体阻害因子に結合されるかまたはその修飾(すなわち、変異体)形態である。
【0161】
本開示における使用のための好適な補体阻害因子は、当業者に明らかであり、例えば、第I因子(fI)、H因子(fH)、C4b‐結合タンパク質(C4bp)、可溶性CD55(崩壊促進因子(DAF))、C1阻害因子(C1‐INHまたはC1エステラーゼ阻害因子);可溶性CD35(sCR1);可溶性CD46(膜補因子タンパク質(MCP))、可溶性CD59(プロテクチン)、TT30(CR2‐fH)、コブラ毒因子(CVF)およびその機能的断片もしくは変異体が挙げられる。
【0162】
一例では、補体阻害因子は、1型補体受容体としても知られている可溶性補体受容体1型(sCR1);CD35;C3BR;C3b/C4b受容体、およびTP10である。例えば、本開示における使用のための可溶性補体阻害因子は、修飾または変異sCR1である。sCR1および変異sCR1分子は、当業者に明らかであり、例えばWO1991016437、WO1994000571およびWO1997031944に記載されている。
【0163】
一例では、補体阻害因子は、C1エステラーゼ阻害因子、セルピンファミリーGメンバー1(SERPING1)、HAE1、HAE2、C1NHおよびC1INとしても知られているC1阻害因子(C1‐INH)である。例えば、本開示における使用のための補体阻害因子は、修飾または変異C1‐INHである。一例では、C1‐INHは、血漿由来C1‐INHである。別の例では、C1‐INHは、遺伝子組み換えC1‐INHである。C1‐INHおよび変異C1‐INH分子は、当業者に明らかであり、例えば、Berinert(登録商標)が挙げられる。他の好適なC1‐INHおよび変異C1‐INH分子は、例えば、WO2016070156に記載されている。
【0164】
毒素
本開示は、毒素にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
【0165】
本開示における使用のための好適な毒素は、当業者に明らかであり、例えば、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、破傷風トキソイド、シュードモナス外毒素A(PE)およびリボソーマル不活化タンパク質、例えば、ゲロニン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質やサポリンなど、が挙げられる。
【0166】
化学療法化合物
本開示は、化学療法化合物にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
【0167】
本開示における使用のための好適な化学療法化合物は、当業者に明らかであり、例えば、カボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、デセタキセル、ドキソルビシン、エルロチニブ、エトポシド、フルオロウラシル、イリノテカン、メトトレキサート、パクリタキセル、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキサート、l‐アスパラギナーゼ、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ダノルビシン、シタラビン、イダルビシン、ミトキサントロン、シクロホスファミド、フルダラビン、クロラムブシル、およびその誘導体が挙げられる。
【0168】
抗体または抗原結合フラグメント
一例では、本開示は、抗体または抗原結合フラグメントにコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的断片を提供する。
【0169】
本開示における使用のための例示的な抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書中に記載されているか、または当該技術分野で既知であり、そして、以下のものが挙げられる:
・ヒト化抗体またはそのフラグメント、例えば、ヒト様可変領域を含むタンパク質、ヒト抗体からのFRにグラフトしたかまたは挿入されたヒト以外の種(例えば、マウス、ラットまたはヒト以外の霊長類)からの抗体からのCDRを含む(例えば、US5225539、US6054297、US7566771またはUS5585089に記載の方法によって作製される)。
【0170】
・ヒト抗体またはそのフラグメント、例えば、ヒト、例えば、ヒト生殖系もしくは体細胞に見られる、または斯かる領域を使用して作成されたライブラリからの可変領域、および任意選択で、定常抗体領域を有する抗体。「ヒト」抗体は、ヒト配列によってコードされていないアミノ酸残基、例えば、インビトロにおけるランダムまたは部位特異的突然変異によって導入された突然変異(例えば、US5565332に記載の方法によって作製されたもの)および斯かる抗体の親和性成熟形態、を含み得る。
【0171】
・シンヒューマナイズド抗体またはそのフラグメント、例えば、新世界霊長類抗体可変領域からのFRおよび非新世界霊長類抗体可変領域のCDRを含む可変領域を含む(例えば、WO2007019620に記載の方法によって作製された)抗体。
・霊長類化抗体またはそのフラグメント、例えば、ヒト以外の霊長類(例えば、カニクイザルマカク)の免疫化に続いて作製された抗体からの抗体(単数もしくは複数の)可変領域を含む(例えば、US6113898に記載の方法によって作製されたもの)。
【0172】
・キメラ抗体またはキメラ抗原結合フラグメント、例えば、可変ドメインの1つ以上が特定の種(例えば、マウスまたはラットなどのネズミ科)に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属し、抗体またはフラグメントの残りが別の種(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類など)に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体またはフラグメント(例えば、US6331415;US5807715;US4816567およびUS4816397に記載の方法によって作製されたもの)。
【0173】
・脱免疫抗体またはその抗原結合フラグメント、例えば、(例えば、WO2000034317およびWO2004108158に記載のとおり)対象が抗体またはタンパク質に対して免疫応答を生じる見込みをそれにより低減するように取り除かれた(すなわち、変異させた)1もしくは複数のエピトープ、例えば、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープ、を有する抗体とまたはフラグメント。
【0174】
・二特異性抗体またはそのフラグメント、例えば、(例えば、US5731168に記載の)異なった抗原またはエピトープに対する特異性を有する2つのタイプの抗体または抗体フラグメント(例えば、2つの半抗体)を含む抗体。
【0175】
本開示における使用のための追加の例示的な抗体フラグメントは、本明細書中に記載されているか、または当該技術分野で既知であり、そして、以下のものが挙げられる:
・単一ドメイン抗体(ドメイン抗体またはdAb)、例えば、抗体の重鎖可変ドメインのすべてまたは一部を含む単一のペプチド鎖。
【0176】
・ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディまたは高次タンパク質複合体(例えば、WO98/044001および/またはWO94/007921に記載のもの)。
・一本鎖Fv(scFv)フラグメント、例えば、単一のポリペプチド鎖中のVHおよびVL領域と、scFvが抗原結合について所望される構造を形成する(すなわち、単一のポリペプチド鎖のVHおよびVLが互いに会合してFvを形成する)のを可能にするVHとVLとの間のポリペプチドリンカーとを含むフラグメント。
・半抗体または半分子、例えば、単一の重鎖および単一の軽鎖を含むタンパク質。
【0177】
本開示はまた、
(i)例えば、US5837821に記載されるミニボディ、
(ii)例えば、US4676980に記載されるヘテロ共役タンパク質、
(iii)例えば、US4676980に記載される化学架橋剤を用いて作製されるヘテロ共役タンパク質、および、
(iv)(例えば、EP19930302894に記載の)Fab3、
などの他の抗体および抗体フラグメントも企図する。
【0178】
タンパク質骨格
一例では、本開示は、タンパク質骨格にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的フラグメントを提供する。例えば、そのタンパク質骨格は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントである。
【0179】
本開示における使用のための好適なタンパク質骨格は、本明細書中に記載されているか、または当業者に明らかであり、そして、以下のものが挙げられる:
・重鎖免疫グロブリン、例えば、軽鎖を含まない免疫グロブリン(例えば、抗体)(例えば、WO9404678、WO9749805およびWO9749805に記載のとおりのもの)。
・V様タンパク質、例えば、抗体のFvモジュールに類似した構造に組み合わせられた2つのVドメインを有するT細胞受容体(例えば、Novotny et al., Proc Natl Acad Sci USA 88: 8646‐8650, 1991、WO1999045110またはWO2011107595に記載のとおりのもの)。
【0180】
・アドネクチン、例えば、そこで抗原結合をもたらすようにループ領域が変更されたヒトフィブロネクチンの10番目のフィブロネクチンIII型(10Fn3)ドメインをベースとする免疫グロブリン(例えば、US20080139791またはWO2005056764に記載のとおりのもの)。
【0181】
・アンチカリン、例えば、抗原に結合するように改変され得る円錐構造の開口端に複数のループを有する剛性βシート二次構造を有する、リポカリン由来の免疫グロブリン(例えば、US7250297またはUS20070224633に記載のとおりのもの)。
【0182】
・アフィボディ、例えば、抗原に結合するように改変され得るスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のプロテインAのZドメイン(抗原結合ドメイン)に由来する足場(例えば、EP1641818に記載のとおりのもの)。
【0183】
・アビマー、例えば、Aドメイン足場ファミリーに由来するマルチドメインタンパク質(例えば、WO2002088171に記載のとおりのもの)。
・アンキリンリピートタンパク質(DARPin)、例えば、異なる標的抗原に結合するように改変され得る、細胞骨格への必須膜タンパク質の付着を媒介するタンパク質のアンキリンファミリーに由来するもの(例えば、US20040132028に記載のとおりのもの)。
【0184】
小分子
別の一例では、結合分子は小分子である。そのような小分子はライブラリから単離することができる。化学的小分子ライブラリは、市販のものを入手すること、あるいは本分野で知られている方法(例えば、US5,463,564に記載されている方法)を利用して作製することができる。
【0185】
小さな有機化合物を合成する技術は化合物に応じて大きく異なるであろうが、斯かる方法は当業者に知られているであろう。
【0186】
一例では、インフォマティクスを利用して既知の化合物から適切な化学的建築ブロックを選択し、コンビナトリアルライブラリを作製する。例えばQSAR(定量的構造活性関係)モデリングというアプローチでは、適切さを判断するのに化合物構造の線形回帰または回帰ツリーを用いる。Chemical Computing Group, Inc.(Montreal, Canada)のソフトウエアは、活性な化合物と不活性な化合物に関するハイスループットスクリーニングの実験データを用いて確率的QSARモデルを作り出した後、そのモデルを用いてリード化合物を選択する。2項QSAR法は、特定の化合物が要求される機能(部分電荷、モル屈折率(結合相互作用)、logP(分子の親油性))を満たすか満たさないかの可能性の「記述子」を形成する化合物の3つの特徴的な特性に基づいている。各原子は分子内に表面積を持っていて、その表面積が、原子と関係するこれら3つの特性を有する。ある範囲の部分電荷を持つ化合物のすべての原子が明らかにされ、表面積(ファンデルワールス表面積記述子)が合計される。その後、2項QSARモデルを用いて活性モデルまたはADMETモデルを作り、それらのモデルを用いてコンビナトリアルライブラリを構築する。したがって初期スクリーニングで同定されたリード化合物を用いるとスクリーニングされる化合物のリストを拡張できるため、非常に活性な化合物が同定される。
【0187】
核酸ベースの剤
一例では、本開示は、核酸ベースの剤にコンジュゲートさせた血清アルブミン変異体またはその機能的フラグメントを提供する。好適な剤は、当業者に明らかであり、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)、siRNA、干渉RNA(RNAi)、リボザイム、マイクロRNAおよびDNA酵素が挙げられる。
【0188】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
一例では、核酸ベースの剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンス核酸である。
【0189】
「アンチセンス核酸」という用語は、本開示の任意の例における本明細書に記載のポリペプチドをコードする特定のmRNA分子の少なくとも一部に対して相補的であり、mRNA翻訳などの転写後イベントを干渉する能力があるDNAもしくはRNAまたはその誘導体(例えば、LNAまたはPNA)、あるいはその組み合わせを意味するものとする。アンチセンス法の使用は、当技術分野で周知である(例えば、Hartmann and Endres (editors), Manual of Antisense Methodology, Kluwer (1999)を参照)。
【0190】
本開示のアンチセンス核酸は、生理的条件下で標的核酸にハイブリダイズする。アンチセンス核酸は、構造遺伝子もしくはコーティング領域に対応する配列または遺伝子発現もしくはスプライシングのコントロールに影響を及ぼす配列を包含する。例えば、アンチセンス核酸は、核酸の標的コーティング領域、または5‘‐非翻訳領域(UTR)または3‘‐UTRまたはこれらの組み合わせに対応してもよい。アンチセンス核酸は、例えば、標的遺伝子のエクソン配列のみへと転写中または転写後にスプライシングで切り出されうるイントロン配列に部分的に相補的であってもよい。アンチセンス配列の長さは、核酸の少なくとも19の連続したヌクレオチド、例えば、少なくとも100、200、500または1000ヌクレオチドなどの少なくとも50ヌクレオチドであるべきである。全遺伝子転写物に対して相補的である全長配列を用いてもよい。長さは、100~2000ヌクレオチドでありうる。標的転写物に対するアンチセンス配列の同一性の度合いは、少なくとも90%、例えば、95~100%であるべきである。
【0191】
触媒核酸
一例では、核酸ベースの剤は触媒核酸である。
【0192】
「触媒核酸」という用語は、個別の基質を特異的に認識し、この基質の化学的変更を触媒するDNA分子もしくはDNA含有分子(当技術分野で「デオキシリボザイム」または「DNAザイム」としても知られる)またはRNA分子もしくはRNA含有分子(「リボザイム」または「RNAザイム」としても知られる)を意味する。触媒核酸中の核酸塩基は、塩基A、C、G、T(およびRNAにはU)でありうる。
【0193】
典型的には、触媒核酸は、標的核酸の特異的認識のためのアンチセンス配列および核酸切断酵素活性(本明細書において「触媒ドメイン」とも称する)を含む。本開示において有用なリボザイムのタイプは、ハンマーヘッドリボザイムおよびヘアピンリボザイムである。
【0194】
RNA干渉
一例では、核酸ベースの剤は低分子干渉RNA(“siRNA”)分子である。
【0195】
RNA干渉(RNAi)は、特定のタンパク質の産生を特異的に阻害するために有用である。特定の理論に縛られることを望むものではないが、この技術は、対象の遺伝子のmRNAと本質的に同一である配列またはその一部を含むdsRNA分子の存在に依存する。好都合なことに、組み換えベクター宿主細胞内のシングルプロモーターからdsRNAを産生することができ、ここで、センスおよびアンチセンス配列は、センスおよびアンチセンス配列がハイブリダイズして、ループ構造を形成する非関連配列をもつdsRNA分子を形成するのを可能にする非関連配列によって隣接される。本開示のための適当なdsRNA分子の設計および作成は、当業者の能力の範囲内にある。
【0196】
ハイブリダイズするセンスおよびアンチセンス配列の長さは、それぞれ、少なくとも19の連続したヌクレオチド、例えば、少なくとも100、200、500または1000ヌクレオチドなどの少なくとも30または50ヌクレオチドであるべきである。全遺伝子転写物に対して相補的である全長配列を用いてもよい。長さは、100~2000ヌクレオチドでありうる。標的転写物に対するセンスおよびアンチセンス配列の同一性の度合いは、少なくとも85%、例えば、95~100%などの少なくとも90%であるべきである。
【0197】
例示的な小干渉RNA(siRNA)分子は、標的mRNAの約19~21個の連続したヌクレオチドと同一であるヌクレオチド配列を含む。例えば、siRNA配列は、ジヌクレオチドAAで開始し、約30~70%(例えば、30~60%、40~60%、約45%~55%など)のGC含量を含み、例えば、標準的BLASTサーチによって決定されるように、それが導入された対象のゲノム中の標的以外の任意のヌクレオチド配列に対して高いパーセンテージの同一性を有さない。
【0198】
血清アルブミン変異体の活性のアッセイ
本開示の血清アルブミン変異体は、例えば、以下に記載するように、生物学的活性について容易にスクリーニングされる。
【0199】
親和性の決定
任意選択で、血清アルブミン変異体またはその機能的フラグメントの解離定数(Kd)、結合定数(Ka)または親和定数(KD)が決定される。
親和性測定は、標準的な方法論、例えば、免疫測定法、表面プラズモン共鳴(SPR;例えば、BIAcore表面プラズモン共鳴(BIAcore, Inc.、Piscataway, NJ)(Rich and Myszka Curr. Opin. Biotechnol 11: 54, 2000; Englebienne Analyst. 123: 1599, 1998)を使用したもの)、等温滴定熱量測定(ITC)または当該技術分野で知られている他の動力学的相互作用アッセイによって測定され得る。
【0200】
いくつかの例では、血清アルブミン変異体またはその機能的フラグメントは、配列番号1に規定される血清アルブミンに比べて、類似したKDまたは改善されたKD(すなわち、それより低いKD値)を有する。FcRnに対する結合親和性はまた、フローサイトメトリーを使用して非量的に決定されることもできる。例えば、血清アルブミン変異体またはその機能的断片を安定して発現するCHO細胞は、(標的結合を検出するための)alexa‐488標識FcRn/β2mおよび(発現を検出するための)抗myc‐alexa647を用いて酸性(pH5.5)および中性(pH7.4)のpHにて染色され、そして、フローサイトメトリーによって分析される。FcRn/β2mへの相対的結合は、例えば(例えば、配列番号1に規定される)未修飾血清アルブミンに対する平均蛍光強度を計算することによって決定される。
【0201】
半減期の決定
本開示に包含される血清アルブミン変異体またはその機能的断片は、改善された半減期を有する、例えば、配列番号1に規定される血清アルブミン(すなわち、未修飾血清アルブミン)と比較して、半減期が長くなるように改変されている。延長された半減期を有する血清アルブミン変異体またはその機能的断片を特定する方法は、当業者には明らかであろう。例えば血清アルブミン変異体またはその機能的断片が胎児性Fc受容体(FcRn)に結合する能力を評価する。この点に関し、FcRnに対する結合親和性が増大すると、血清アルブミン変異体またはその機能的断片の血清半減期が長くなる(例えば、Kim et al., Eur J Immunol., 24:2429, 1994を参照)。
【0202】
本開示のCD131結合タンパク質の半減期は、例えばKim et al, Eur J of Immunol 24:542, 1994に記載されている方法に従う薬物動態研究によって測定することもできる。この方法によれば、放射性標識したCD131結合タンパク質をマウスに静脈内注射し、その血漿濃度を時間の関数として定期的に(例えば注射後3分~72時間の時点で)測定する。このようにして得られたクリアランス曲線は、2相性、すなわちα相とβ相になっているはずである。このタンパク質の生体内半減期を求めるには、β相におけるクリアランス速度を計算し、(すなわち、配列番号1に規定される)野生型または改変されていないタンパク質のクリアランス速度と比較する。
【0203】
インビトロ細胞アッセイ
様々なインビトロアッセイが、本明細書中に記載した疾患または病態を治療するための、血清アルブミン変異体またはその機能的断片の能力を評価するために利用可能である。
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片の取り込みおよび再生をインビトロ細胞アッセイにおいて試験する。
【0204】
細胞取り込みおよび再生を評価する方法は当該技術分野で既知であり、および/または本明細書で例示される。例えば、蛍光標識血清アルブミン変異体またはその機能的断片を、ヒトFcRn受容体を細胞表面上に発現する細胞と共にインキュベートする。標識血清アルブミン変異体の添加後に、フローサイトメトリーと蛍光顕微鏡(例えば、共焦点蛍光顕微鏡検査)を取り入れた方法によってタンパク質再生の経過を追跡し、非修飾血清アルブミンタンパク質と比較することができる。特定の血清アルブミン変異体についての正常再生経路の変化を特定し、特性化することができる。
【0205】
効果的に再生されることが見出される血清アルブミン変異体またはその機能的断片が、本開示の変異体として特定される。
【0206】
薬物動力学的解析
一例では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片の薬物動態学的(PK)特性が評価される。
PK特性を評価する方法は、当該技術分野で既知であり、および/または本明細書中に例示されている。例えば、血清アルブミン変異体は、ヒトFcRnが受容体を発現するトランスジェニックマウスまたは他の好適な哺乳類宿主(例えば、ラット、カニクイザル)に注射される。一例では、ヒトFcRn受容体を発現するトランスジェニックマウスは、「hFcRn Tg32」ホモコンジュゲートマウス(すなわち、B6.Cg‐Fcgrttm1Dcr Tg(FCGRT)32Dcr/DcrJ;The Jackson Laboratoryストック番号No.014565;またはRoopenian et al., J. Immunol 2003; 170:3528-3533に記載のとおりのもの)である。血清アルブミンの血漿レベルは、市販の方法を使用したELISAを使用することで評価される。
【0207】
医薬組成物
適切には、本開示の血清アルブミン変異体またはその機能的断片を対象に投与するための組成物または方法では、血清アルブミン変異体またはその機能的断片(すなわち、化合物にコンジュゲートされた血清アルブミン変異体またはその機能的断片)を、当該技術分野で理解されるように薬学的に許容可能な担体と組み合わせる。したがって、本開示の一例では、本開示の血清アルブミンコンジュゲートを薬学的に許容可能な担体と組み合わせて含む組成物(例えば、医薬組成物)が提供される。
【0208】
概して、「担体」とは、任意の対象、例えばヒトに安全に投与することができる固体または液体の充填剤、結合剤、希釈剤、封入物質、乳化剤、湿潤剤、溶媒、懸濁化剤、コーティング剤または潤滑剤を意味する。特定の投与経路に応じて、例えばRemington‘s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co. N.J. USA, 1991)に記載されるように、当該技術分野で既知の様々な許容可能な担体を使用することができる。
【0209】
本開示の血清アルブミンコンジュゲートは、予防的または治療的処置のための非経口投与、局所(topical)投与、経口投与、または局部(local)投与、エアロゾル投与、または経皮投与に有用である。一例では、血清アルブミンコンジュゲートは非経口的に、例えば皮下にまたは静脈内に投与される。例えば、血清アルブミンコンジュゲートは静脈内に投与される。
【0210】
投与される血清アルブミンコンジュゲートの配合物は、選択される投与経路および配合(例えば溶液、エマルション、カプセル)に応じて異なる。投与される血清アルブミンコンジュゲートを含む適切な医薬組成物は、生理学的に許容可能な担体中で調製することができる。溶液またはエマルションについては、好適な担体として、例えば生理食塩水および緩衝媒体を含む、水性またはアルコール/水性の溶液、エマルションまたは懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルは塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース(Ringer‘s dextrose)、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液(lactated Ringer‘s)または不揮発性油を含み得る。様々な適切な水性担体は当業者に既知であり、水、緩衝用水、緩衝生理食塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、デキストロース溶液およびグリシンが含まれる。静脈内ビヒクルは様々な添加剤、保存料、または体液、栄養もしくは電解質の補液を含み得る(概して、Remington‘s Pharmaceutical Science, 16th Edition, Mack, Ed. 1980を参照)。組成物は、生理的条件に近づけるために必要に応じて、pH調整剤および緩衝剤および毒性調整剤、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムおよび乳酸ナトリウムなどの薬学的に許容可能な補助物質を任意に含有していてもよい。血清アルブミンコンジュゲートは、液体状態で保管してもよく、または当該技術分野で既知の凍結乾燥および再構成の技法に従って保管のために凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成してもよい。
【0211】
治療される病態
本明細書で論考されるように、本開示は、対象における疾患または病態を治療または予防する方法であって、本開示の血清アルブミンコンジュゲートまたは本開示の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。一例では、本開示は、治療を必要とする対象において疾患または病態を治療する方法を提供する。
【0212】
本開示は、対象において疾患または病態を治療または予防するための本開示の血清アルブミンコンジュゲートの使用であって、本開示の血清アルブミンコンジュゲートまたは本開示の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、使用も提供する。一例では、本開示は、治療を必要とする対象において疾患または病態を治療するための本開示の血清アルブミンコンジュゲートの使用を提供する。
一例では、疾患または病態は出血性障害である。
【0213】
一例では、対象が出血性障害に罹患している。出血性障害は遺伝性であってもまたは後天性であってもよい。例えば、出血性障害に罹患している対象は、例えば、以下の:
あざができやすいこと;
歯肉の出血;
小さな切り傷または歯科治療痕からの多量の出血;
原因不明の鼻血;
多量の月経出血;
関節内出血;および/または
手術後の過度の出血、
などの出血性障害の症状を患っている。
【0214】
一例では、対象は出血性障害を発症するリスクがある。対照集団よりも出血性障害を発症するリスクが高い場合に、対象はリスクがある。対照集団は狭心症、脳卒中および/
または心臓発作を患っていない、または狭心症、脳卒中および/または心臓発作の家族歴を有する一般集団(例えば年齢、性別、人種および/または民族性によってマッチングした)からランダムに選択される1人以上の対象を含み得る。対象は、出血性障害と関連する「リスク因子」がその対象と関連することが見出される場合に、出血性障害のリスクがあると考えることができる。リスク因子は、例えば対象の集団に対する統計学的または疫学的研究による所与の障害と関連する任意の活性、形質、イベントまたは特性を含み得る。このため、潜在的リスク因子を特定する研究が対象を明確に含まなかった場合であっても、対象を出血性障害のリスクがあると分類することができる。例えば、過度の出血を有する対象の集団において、出血性障害の頻度が過度の出血を有しない対象の集団と比較して増加することから、過度の出血を有する対象は、出血性障害を発症するリスクがある。
【0215】
一例では、対象は出血性障害を発症するリスクがあり、血清アルブミンコンジュゲートを出血性障害の症状の発現の前または後に投与する。一例では、血清アルブミンコンジュゲートを出血性障害の症状の発現の前に投与する。一例では、血清アルブミンコンジュゲートを出血性障害の症状の発現の後に投与する。一例では、本開示の血清アルブミンコンジュゲートを、リスクがある対象における出血性障害の症状の1つ以上を緩和または軽減する用量で投与する。
【0216】
本開示の方法は、対象における任意の形態の出血性障害に容易に適用することができる。
【0217】
本開示の方法は、出血性障害の予防または治療のための別の治療的に活性な作用物質の投与と併せた本開示による血清アルブミンコンジュゲートの同時投与も含み得る。
【0218】
一例では、本開示の血清アルブミンコンジュゲートを、出血性障害の予防または治療のための現在使用されているかまたは開発中である少なくとも1つの付加的な既知の化合物または治療用タンパク質と組み合わせて使用する。出血性障害の治療に現在使用されている化合物は、当該技術分野で既知である。例示的な治療用タンパク質は、ドナーに由来する血漿または組み換えタンパク質であり得る。例えば、治療用タンパク質は、血漿由来のまたは組み換え凝固因子タンパク質である。例えば、治療用タンパク質は第I因子、第II因子((プロトロンビン)/トロンビン)、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIIa因子(例えば、NovoSeven(登録商標))、第VIII因子(例えばZollner et al., Thromb Res. 132:280-287, 2013に記載されるような一本鎖組み換え第VIII因子;またはFEIBA(登録商標)、Monoclate‐P(登録商標)もしくはBiostate(登録商標)などの血漿由来第VIII因子製品;またはAdvate(登録商標)、Eloctate(登録商標)、Recombinate(登録商標)、Kogenate Fs(登録商標)、Helixate(登録商標) Fs、Helixate(登録商標)、Xyntha(登録商標)/Refacto Ab(登録商標)、Hemofil‐M(登録商標)、Monarc‐M(登録商標)、Alphanate(登録商標)、Koate‐Dvi(登録商標)、Nuwiq(登録商標)もしくはHyate:C(登録商標)などの組み換え第VIII因子製品など)、第IX因子(例えばBerinin(登録商標) P、MonoFIX(登録商標)もしくはMononine(登録商標)などの血漿由来第IX因子製品;またはAlphanine SD(登録商標)、Alprolix(登録商標)、Bebulin(登録商標)、Bebulin VH(登録商標)、Benefix(登録商標)、Ixinity(登録商標)、Profilnine SD(登録商標)、Proplex T(登録商標)もしくはRixubis(登録商標)などの組み換え第IX因子製品)、第X因子、第XI因子、第XII因子および第XIII因子(例えばFibrogammin(登録商標) P、Corifact(登録商標)、Cluvot(登録商標)またはCluviat(登録商標))から成る群から選択される。一例では、治療用タンパク質は、フォンヴィレブランド因子/FVIII複合体(例えばHumate‐P(登録商標)、Haemate(登録商標)‐P、Biostate(登録商標)またはVoncento(登録商標))である。代替的な例では、治療用タンパク質は、プロトロンビン複合体(例えば、Beriplex(登録商標) P/N、Confidex(登録商標)またはKcentra(登録商標))である。別の例では、治療用タンパク質は、フィブリノゲン(例えばRiaSTAP(登録商標)、Haemocomplettan(登録商標) P)である。一例では、治療用タンパク質は、凝固因子の修飾形態、例えば本明細書に記載される凝固因子の修飾形態である。
【0219】
上記の内容から明らかなように、本開示は、対象の併用治療的処置の方法であって、有効量の第1の作用物質および第2の作用物質を、それを必要とする対象に投与することを含み、第1の作用物質が本開示の血清アルブミンコンジュゲートであり、第2の作用物質も出血性障害の予防または治療のためのものである、方法を提供する。
【0220】
本明細書で使用される場合、「併用治療的処置」という句に見られるような「併用」という用語は、第1の作用物質を第2の作用物質の存在下で投与することを含む。併用治療的処置の方法には、第1、第2、第3のまたは付加的な作用物質を同時投与する方法が含まれる。併用治療的処置の方法には、第1のまたは付加的な作用物質を第2のまたは付加的な作用物質の存在下で投与する、例えば第2のまたは付加的な作用物質を予め投与している方法も含まれる。併用治療的処置は、異なる行為者(actors)により段階的に実行されてもよい。例えば、或る行為者が対象に第1の作用物質を投与することができ、第2の行為者が対象に第2の作用物質を投与することができ、第1の作用物質(および/または付加的な作用物質)が投与後に第2の作用物質(および/または付加的な作用物質)の存在下にある限りにおいて、投与工程は同時に、またはほぼ同時に、または異なる時点で(at distant times)実行することができる。行為者および対象は、同じ実体(例えばヒト)であってもよい。
【0221】
選ばれた媒体中の活性成分(複数の場合もある)の最適濃度は、当業者に既知の手順に従って実験的に決定することができ、所望の最終医薬配合物によって決まる。
【0222】
本開示の結合タンパク質の投与のための投与量範囲は、所望の効果をもたらすのに十分に大きい。例えば、組成物は、有効量の血清アルブミンコンジュゲートを含む。一例では、組成物は、治療有効量の血清アルブミンコンジュゲートを含む。別の例では、組成物は、予防有効量の血清アルブミンコンジュゲートを含む。
【0223】
投与量は、奇異出血(paradoxical bleedings)およびインヒビターの発生などの有害な副作用を引き起こすほど大きくないものとする。概して、投与量は患者の年齢、状態、性別および疾患の程度によって変化し、当業者が決定することができる。任意の合併症の場合には個々の医師が投与量を調整することができる。
【0224】
投与量は、1日または数日間にわたって毎日1回以上の投与で約0.1mg/kg~約300mg/kg、例えば約0.2mg/kg~約200mg/kg、例えば約0.5mg/kg~約20mg/kgと様々であり得る。
【0225】
幾つかの例では、血清アルブミンコンジュゲートを、後続の(維持用量)よりも高い初回(または負荷)用量で投与する。例えば、vを約10mg/kg~約30mg/kgの初回用量で投与する。次いで、結合タンパク質を約0.0001mg/kg~約10mg/kgの維持用量で投与する。維持用量は7日~35日に1回、例えば7日または14日または28日に1回投与することができる。
【0226】
幾つかの例では、血清アルブミンコンジュゲートを初めに後続の投与に用いられるよりも低い用量で投与する用量漸増計画が用いられる。この投与計画は、対象が初めに有害事象を受ける場合に有用である。
【0227】
治療に対して適切に応答しない対象の場合には、1週間に複数回の投与を行うことができる。代替的または付加的には、漸増用量を投与することができる。
【0228】
対象は、2回以上の曝露または投与、例えば少なくとも約2回の結合タンパク質の曝露、例えば約2回~60回の曝露、より具体的には約2回~40回の曝露、最も具体的には約2回~20回の曝露を行うことによって血清アルブミンコンジュゲートで再治療することができる。
【0229】
一例では、疾患の兆候または症状、例えば出血エピソードが再発した場合に任意の再治療を行うことができる。
【0230】
別の例では、任意の再治療を規定の間隔で行うことができる。例えば、後続の曝露を、例えば約24週間~28週間もしくは48週間~56週間、またはそれ以上の様々な間隔で行うことができる。例えば、斯かる曝露は約24週間~26週間、または約38週間~42週間、または約50週間~54週間の各々の間隔で行われる。
【0231】
治療に対して適切に応答しない対象の場合には、1週間に複数回の投与を行うことができる。代替的または付加的には、漸増用量を投与することができる。
【0232】
別の例では、有害反応を生じている対象については、初回(または負荷)用量を、1週間のうち数日にわたってまたは連続数日間にわたって分割することができる。
【0233】
本開示の方法による血清アルブミンコンジュゲートの投与は、例えば受容者の生理的状態、投与の目的が治療的であるかまたは予防的であるかおよび当業者に既知の他の因子に応じて、連続的であってもまたは断続的であってもよい。投与は、事前に選択された期間にわたって本質的に連続していても、または例えば病態の発症時もしくは発症後のいずれかの一連の間隔を空けた投与であってもよい。
【0234】
キットおよび物質の他の組成物
本開示の別の例では、上記のような出血性障害の治療または予防に有用な本開示の血清アルブミンコンジュゲートを含むキットが提供される。
【0235】
一例では、キットは、(a)任意に薬学的に許容可能な担体または希釈剤中の血清アルブミンコンジュゲートの入ったコンテナと、(b)対象における出血性障害の治療または予防のための説明書を含む添付文書とを含む。
【0236】
一例では、キットは、(a)少なくとも1つの血清アルブミンコンジュゲートと、(b)対象における出血性障害の治療または予防にキットを使用するための説明書と、(c)任意選択で、少なくとも1つの更なる治療的に活性な化合物または薬物とを含む。
【0237】
本開示の本例によると、添付文書はコンテナに付けられているか、またはコンテナに付属する。好適なコンテナとしては、例えばボトル、バイアル、シリンジなどが挙げられる。コンテナは、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。コンテナは、出血性障害を治療または予防の治療に効果的な組成物を収容または含有し、減菌アクセスポート(sterile access port)を有していてもよい(例えば、コンテナは皮下注射針が貫通可能なストッパーを有する静注液バッグ(intravenous solution bag)またはバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤が血清アルブミンコンジュゲートである。ラベルまたは添付文書には、組成物が治療の対象となる対象、例えば出血性障害を有するまたは出血性障害を発症する素因を有する対象の治療に使用され、血清アルブミンコンジュゲートおよび任意の他の薬剤の投与量および投与間隔についての特定の指針が与えられることが示される。キットは、無菌注射用水(bacteriostatic water for injection;BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液および/またはデキストロース溶液などの薬学的に許容可能な希釈バッファーを含む付加的なコンテナを更に含んでいてもよい。キットは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針およびシリンジを含む商業的観点および利用者の観点から望ましい他の物質を更に含んでいてもよい。
【0238】
キットは任意に、第2の薬剤の入ったコンテナを更に含み、血清アルブミンコンジュゲートが第1の薬剤であり、この物品は、対象を有効量の第2の薬剤で治療するための説明書を添付文書に更に含む。第2の薬剤は、上記の治療用タンパク質であり得る。
本開示は、以下の非限定的な実施例を含む。
【実施例0239】
実施例1:ヒト血清アルブミン変異体の作出
ヒト血清アルブミン(HSA)のランダム突然変異変異体のライブラリを、ヒト血清アルブミンの標準的なエラー‐プローンPCRを使用して作成した。短縮およびフレームシフト変異体を、Gerth et al.(Protein Eng Des Sel 2004 17 (7):595-602)において以前に記載されたように、インテインベースのオープンリーディングフレーム(ORF)選択を使用して取り除いた。
【0240】
次に、HSA変異体クローンをサブクローニングし、そしてFlp‐In(商標)CHO細胞(Invitrogen)の中に形質移入して、突然変異アルブミン融合タンパク質の単一コピーをそれぞれ含んでいる、形質移入された安定細胞株のライブラリを作成した。簡単に言えば、統合Flp組み換え標的(FRT)部位を含有するFlp‐In(商標)CHO宿主細胞株を入手した。HSA変異体のライブラリを、ヒトCMVプロモーターの制御下の血小板誘導成長因子受容体(PDGF(登録商標))膜貫通ドメインおよびMycタグをフレーム内に有するpcDNA5/FRTの発現プラスミド内にクローニングした。ヒトCMVプロモーターの制御下でFlpリコンビナーゼを構成的に発現する、HSAライブラリを含有するpcDNA5/FRTベクターおよびpOG44プラスミドを、Flp‐In(商標)宿主細胞株内に同時形質移入し、そして、1コピーの突然変異アルブミン融合タンパク質を担持するFlp触媒組換えを首尾よく受けた全形質移入細胞をもたらした。PDGFR膜貫通領域を有する融合タンパク質としてのHSA変異体の発現は、哺乳類細胞の表面における膜連結変異体の細胞外提示を可能にした。安定形質移入細胞を、約14日間選択培地中で培養して、非形質移入細胞を取り除いた。
【0241】
実施例2:FcRn/β2mに対する高い親和性に関連する残基の同定
胎児性Fc受容体(FcRn/β2m)に対するHSA変異体の結合親和性を測定するために、HSA変異体を安定して発現するCHO細胞の個々のプールを、pH5.4およびpH7.3にて
alexa‐488標識FcRn/β2m(pH5.4では10μg/ml、pH7.3では100μg/ml;標的結合を検出するため)および抗myc‐alexa647(構築物の発現を検出するため)で染色し、そしてフローサイトメトリーによって分析した。それぞれのHSA変異体を発現する細胞に結合した標識FcRnの量を、染色された細胞の幾何平均蛍光強度(geoMFI)データとして定量化し、その細胞への標識FcRnの非特異的結合によるバックグラウンド蛍光を差し引いて、そして、野生型HSAおよび(Anderson et al,. (2014) J Biol Chem, 289:13492に記載される)HSA変異体K573Yと比較した、FcRn/β2mに対する相対的結合を決定した。
【0242】
2つのクローン(クローン3.9およびクローン5.6)を、親和性に基づく更なる分析のために選択し、そして、各クローン内の個々の突然変異を切り出して、親クローンの全般的な親和性に対するそれぞれの突然変異の寄与を決定した。
【0243】
それぞれHSA変異体に結合するFcRnを、2回の独立した実験においてフローサイトメトリーによって計測した。HSA変異体を発現する細胞に結合した標識FcRnの量を、染色細胞の幾何平均蛍光強度(geoMFI)として定量化した。その細胞への標識FcRnの非特異的結合によるバックグラウンド蛍光を、得られた値から差し引いた。野生型を超えるFcRn/β2mへの改善された結合を、陽性対照HSA変異体K573Y、ならびに単一置換を有するHSA変異体Q522L、G572RおよびA552Vに関してpH5.4にて観察した。表1に示すように、T133I、K162N、K317E、F377I、I388T、F157L、P282SおよびY452Sを含めた多くのクローンが、野生型を上回る結合の改善を示さなかった。pH7.3にてFcRn/β2mに対するいずれかの相当な結合を示したクローンは存在しなかった。
【0244】
実施例3:単独アミノ酸置換を有するHSA変異体の作出
アミノ酸残基Q522、G572およびA552を着目の残基として選択した。HSA変異体のパネルを、残基Q522またはG572にて、システインを除くあらゆるアミノ酸の単一置換を用いて作出し、そしてCHO細胞において安定して発現させた。FcRn/β2mへのHSA変異体の結合を、4回の独立した実験におけるフローサイトメトリーによって前記のとおり測定した。それぞれのHSA変異体を発現する細胞に結合した標識FcRnの量を、染色細胞に関する幾何平均蛍光強度(geoMFI)データとして定量化した。その細胞への標識FcRnの非特異的結合によるバックグラウンド蛍光を差し引き、そして、それぞれの実験的に決定した平均値に対する上下の信頼区間(95%CI)を算出した。
【0245】
pH5.5およびpH7.4の両方にてすべてのHSA変異体のFcRnの結合強度(geoMFI)を別々に正規化して、実験間の計測強度の系統的な差を調整した。両pH条件に関して、所定のHSA変異体の結合の反復測定値を、繰り返しを通じた平均に対して調整した(Dudoit et al. 2002 Statistica Sinica 12, 111-139に記載のマイクロアレイデータの強度正規化に類似)。pH5.5でのFcRn結合の計測に関して、繰り返しには、試験した変異体のすべてに関して計測したgeoMFI値の範囲を通じて明らかな非線型相違があった。二次関数を、log2スケールのすべてのgeoMFI値を用いて、それぞれの繰り返しの結合強度対(4回の繰り返しを通じた)平均結合に対するロバスト回帰によって当てはめた。その調節によって、それぞれの予測された実験特有の結合強度は、実験を通じた平均結合強度によって置換されたが、その一方で、それぞれの変異体の残基は同じままであった。pH7.4にて結合するFcRnの計測のために、線形関数を当てはめた(すなわち、調節ステップは、実験特有の(小さい)切片定数を差し引くことに、実験特有のスケーリング定数による除算を加えることと同等である)。
【0246】
9つのQ522変異体:Q522G、Q522I、Q522K、Q522M、Q522F、Q522W、Q522Y、Q522VおよびQ522Lは、野生型HSAに対して、酸性pH5.5におけるFcRn/β2m結合を統計的に有意に増強することを実証した(表2)。6つのG572変異体:G572A、G572E、G572H、G572S、G572KおよびG572Rは、野生型HSAに対して、酸性pH5.5におけるFcRn/β2m結合を統計的に有意に増強することを実証した(表3)。FcRn/β2mへの有意な結合はいずれのHSA変異体でもpH7.4にて観察されなかった。Q522L、A552V、G572RおよびK573Yでの置換は、野生型HSAに比べて、酸性pH5.5でのFcRn/β2mへの結合において最も有意な増大を示した(表4)。
【0247】
実施例4:複数のアミノ酸置換を有するHSA変異体の作出
FcRn/β2m結合に対する変異の相加効果または相乗効果を試験するために、二重、三重および四重アミノ酸置換を担持したHSA変異体を先に記載のとおり作出した。
【0248】
表5に示したように、二重HSA変異体Q522L/A552V、Q522L/G572RおよびA552V/G572Rは、野生型HSAおよび単独アミノ酸置換を有する対応するHSA変異体を上回る、pH5.5での有意に改善されたFcRn/β2m結合を実証した。
【0249】
K573Y突然変異(Q522L/K573Y、A552V/K573YおよびG572R/K573Y)を担持する二重HSA変異体は、野生型HSAおよび単独HSA変異体Q522L A552V、G572Rを上回る、pH5.5での有意に改善されたFcRn/β2m結合を示した。二重HSA変異体Q552L/K573YおよびA552V/K573Y(しかしG572R/K573Yではない)はまた、HSA変異体K573Yを上回る、pH5.5での有意に改善されたFcRn/β2m結合を示した。
【0250】
三重HSA変異体Q522L/A522V/G572Rは、野生型HSAおよび一重および二重アミノ酸置換を有する対応するHSA変異体を上回り、pH5.5での有意に改善されたFcRn/β2m結合だけでなく、HSA変異体K573Yと比較して、約2倍の結合レベルも実証した(表5)。
【0251】
三重HSA変異体Q522L/A552V/K573YおよびQ522L/G572R/K573Yは、野生型HSAおよび一重アミノ酸置換を有する対応するHSA変異体を上回る、pH5.5での有意に改善されたFcRn/β2m結合だけでなく、HSA変異体K573Yを上回る、有意に改善された結合を実証した。
【0252】
四重HSA変異体Q522L/A552V/G572R/K573Yは、野生型HSAおよび一重アミノ酸置換を有する対応するHSA変異体を上回る、pH5.5での有意に改善されたFcRn/β2m結合を実証した。しかしながら、四重変異体はまた、野生型HSAを上回る、pH7.4での有意に増強されたFcRn/β2m結合も実証した。
【0253】
実施例5:一重、二重および三重アミノ酸置換を有するHSA変異体の結合動力学
FcRn/β2m結合に対する突然変異の効果を試験するために、一重、二重および三重HSA変異体を先に記載したとおりに作出した。結合動力学を、BIAcore(商標)4000(GE Healthcare Life Sciences)を用いたSPRを使用して計測した。遺伝子組み換えhFcRn/β2Mを、化学的にビオチン化し、そして、GEストレプトアビジンセンサーチップ(GE Healthcare Life Sciences)につなぎ留めた。簡単に言えば、ヒトFcRn/β2Mを、
氷上で2時間、1:0.25のモル比にて調製した伸長ビオチンリンカー(Sulfo NHS‐LC‐LC Biotin)を使用してPBS中での低タンパク質:ビオチン比にて、化学的に修飾した(すなわち、最小限のビオチン化)。反応ミックスを、製造業者の取扱説明書に従ってスピンカラム(10000NMW)を使用することで脱塩した。
【0254】
HSA変異体を、5、1.7、0.6および0μMの濃度にて注射した。アッセイを、四連でpH6.0、37℃にて、10mMのHEPES;150mMのNaCl中で実施した。結合相と解離相を100秒間観察し、そして、それぞれのサイクルを中性、pH7.4にて90秒間の再生ステップを用いて終了させた。センソグラムを、各実行の中の基準バッファー注射(スポット3)およびブランクバッファー注射から二重に差し引いた。
【0255】
速度定数および総合親和率を、pH6にて最小限ビオチン化したヒトFcRnに対してスクリーニングしたすべてのHSA変異体に関して得た。1.7μMおよび0.6μMの注射から得られたデータを、1:1結合モデルに十分に当てはめ、5μMの注射から得られたデータを飽和応答により当てはめたモデルに使用した。
【0256】
表6に示したように、8つのQ522変異体:Q522F、Q522G、Q522M、Q522K、Q522Y、Q522I、Q522AおよびQ522Lは、野生型HSAに比べて、酸性pH6.0にて増強されたFcRn/β2m結合を実証した。6つのG572変異体:G572R、G572K、G572V、G572A、G572SおよびG572Hは、野生型HSAに比べて、酸性pH6.0にて増強されたFcRn/β2m結合を実証した(表6)。二重HSA変異体A522V/G572R、Q522L/A552Vおよび三重HSA変異体Q522L/A552V/G572Rはすべて、野生型HSAに比べて、酸性pH6.0にて増強されたFcRn/β2m結合を実証した(表6)。
【0257】
実施例6:一重、二重および三重アミノ酸置換を有するHSA変異体の結合動力学
FcRn/β2m結合に対する一重、二重および三重HSA変異体の結合動力学を、BIAcore(商標)8000(GE Healthcare Life Sciences)を用いたSPRを使用して計測した。HSA[H464Q]を陰性対照として使用した。
【0258】
遺伝子組み換えhFcRn/β2Mを、化学的にビオチン化し、そして、先に記載したとおりGEのストレプトアビジンセンサーチップにつなぎ留めた。HSA変異体を、2~0.015μMの範囲に及ぶ濃度にて注射した。アッセイを、三連で37℃にて、10mMのHEPES;150mMのNaCl(pH6.0)中で実施した。結合相を120秒間にわたり、および解離相を240秒間にわたり観察した。それぞれのサイクルを、90秒間の塩基性条件(すなわち、pH8.0)下での再生ステップを用いて終了させた。センソグラムを、各実行の中の基準バッファー注射およびブランクバッファー注射から二重に差し引いた。
【0259】
酸性条件下で得られたデータを、1:1結合モデルに十分に当てはめる。速度定数および結合親和性を先に記載のとおり定めた。
【0260】
表7に示したように、大部分のHSA変異体は、野性型HSAと比較して、結合親和性(KD)における改善(最大3倍)を示した。二重HSA変異体[Q522L/A552V]、[Q522L/G572R]および[A552V/G572R]は、遺伝子組み換え野生型HSAと比較して、hFcRn/β2mに対する10倍改善された結合親和性を示す。三重HSA変異体[Q522L/A552V/G572R]は、約25nMにて最も強い結合を有した。陰性対照HSA[H464Q]はhFcRn/β2mに結合しなかった。
【0261】
実施例7:酸性および中性pHにおける哺乳類FcRn/β2mに対する選抜HSA変異体の結合親和性
一重HSA変異体G572RおよびK573Y、二重HSA変異体Q522L/A552V、Q522L/G572RおよびA552V/G572R、ならびに三重HSA変異体Q522L/A552V/G572Rを先に記載したとおり作出し、そして、BIAcore(商標)4000(GE Healthcare Life Sciences)を用いたSPRを使用して結合動態を計測した。
【0262】
HSA変異体を、1μg/mLに希釈し、そして、アミンカップリング化学(NHS/EDC)を使用して、カルボキシメチルデキストラン(CM‐5)センサーチップ(GE Healthcare Life Sciences)の2つの表面部位に直接固定した。HSA変異体を、それぞれのフローセルの外側のスポット(1および5)における100~500RUおよび内側のスポット(2および4)における200~1000RUの値に固定した。それぞれのフローセルのスポット3を活性化/脱活性化し、基準を差し引くために使用した。FcRn/β2mの流速を30μL/分にて一定に維持した。
【0263】
固定したHSA変異体への可溶性組み換えヒト、カニクイザル(「cyno」)、ラットおよびマウスFcRn/β2mの結合を、酸性(pH6.0)および中性pH(pH7.3)にて試験した。2~0.007μM(pH6.0)および20~0.078μM(pH7.3)の濃度範囲を使用し、そして結合相および解離相をそれぞれ180および600秒間観察した。表面の再生を先に記載したように実施した。酸性条件下で得られたセンソグラムデータを、1:1結合モデルに十分に当てはめた。しかしながら、pH7.3で得られたセンソグラムは、器具の検出限界近くでオフレートを示し、そして、分析のために定常型結合モデルを必要とした。
【0264】
表8に示したとおり、pH6.0にてヒトおよびcyno FcRn/β2mは、ナノモルの結合親和性を示した。ヒトおよびcyno FcRn/β2mは、pH6にて野生型HSAと比較して、HSA K573Yに関しては20倍改善された親和性、およびHSA G572Rに関しては約5倍改善された親和性を示した。二重HSA変異体Q522L/A552V、Q522L/G572RおよびA552V/G572Rの親和性は、それぞれ、ヒトFcRn/β2mに対して約50nM、約27nMおよび約27nM、およびそれぞれ、cyno FcRn/β2mに対して約84nM、49nMおよび48nMであった。
【0265】
相対的に、ラットおよびマウスFcRn/β2mは、同じ条件下で結合しないほどの弱さを示した。ラットFcRn/β2mは、HSA変異体に対して100倍弱い親和性を示し、そして、野生型HSA、HSA変異体Q522L/A552VおよびHSA変異体G572Rに結合しなかった。ラットFcRn/β2mは、これらの条件下で約1μMにてHSA K573Yに結合したが、HSA G572Rについては、結合が検出されなかった。マウスFcRn/β2mは、試験したHSA変異体のいずれにも結合しなかった。
【0266】
表8に示したとおり、pH7.3にてヒトおよびcyno FcRn/β2mは、野生型HSAに結合せず、そして、pH7.3にてHSA K573Yに弱い結合(>50μM)を示した。他のHSA変異体への結合親和性は、7~63μMの範囲に及んだ。ラットおよびマウスFcRn/β2mは、pH7.3にて試験したHSA変異体のいずれにも結合しなかった。
【0267】
実施例8:ヒトFcRnを発現するマウスにおけるHSA変異体の薬物動態学的(PK)特性
HSA変異体のPK特性を評価するために、ヒトFcRn受容体(「hFcRn Tg32」ホモ接合性マウス(すなわち、B6.Cg‐Fcgrttm1Dcr Tg(FCGRT)32Dcr/DcrJ)を発現するトランスジェニックマウスを使用した。性別および年齢が入り混じった動物(10‐14週齢;1時点につき3匹の動物)に、10mg/kgの野生型HSA、一重HSA変異体K573Y、二重HSA変異体Q522L/A552Vまたは三重HSA変異体Q522L/A552V/G572Rを静脈内注射した。
【0268】
血液を採取し、そして、ヒト血清アルブミンの血漿レベルを、個々の基準曲線を作成するためにそれぞれの試験物品を使用したこと除いて、製造業者の取扱説明書に従ってヒトアルブミンELISAキット(Bethyl Laboratories, cat no. E88‐129)を使用して評価した。データを、分析前にそれぞれの時点について平均し、そして、データを、カスタムMATLAB(登録商標)プログラムNCAPKfitを使用して当てはめた非線形(Marquandt‐Levenberg)最小化によって分析した。モデルの当てはめを、最小二乗法を使用した1/Y^2加重当てはめを用いておこない、さらに以下の方程式:
PK2(t)=Aexp(‐log(2)t/T1)+Bexp(‐log(2)t/T2)
を使用した。
【0269】
平均滞留時間(MRT)、曲線下面積(AUC)およびクリアランス速度を、標準的な統計式を使用して算出した。
【0270】
以下の図1、表9および表10に示したとおり、野生型HSAの薬物動態学的特性は3つのHSA変異体のすべてと有意に異なっており、野生型HSAはより短い平均滞留時間(MRT)、より小さい曲線下面積(AUC)、およびより速いクリアランスを有していた。一重HSA変異体K573Y、二重HSA変異体Q522L/A552Vおよび三重HSA変異体Q522L/A552V/G572Rはすべて、野生型HSAと比較して、3つの基準(すなわち、MRT、AUCおよびクリアランス)のすべてに基づいて有意に良好な薬物動態を有した。
【0271】
【表1】
【0272】
【表2】
【0273】
【表3】
【0274】
【表4】
【0275】
【表5-1】
【表5-2】
【0276】
【表6】
【0277】
【表7】
【0278】
【表8】
【0279】
【表9】
【0280】
【表10】
図1
【配列表】
2023099663000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0280
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0280】
【表10】

本発明は以下の態様を含み得る。
[1] 以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸;
(ii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;
(iii)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;および
(iv)その組み合わせ、
から成る群から選択される1もしくは複数のアミノ酸置換を含む血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
[2] 前記血清アルブミン変異体またはその機能的断片が、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、高い親和性でFcRnと結合する、項目1に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
[3] 前記結合親和性が酸性pHにて計測される、項目2に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
[4] 前記血清アルブミン変異体またはその機能的断片が、配列番号1に規定される血清アルブミンと比較して、延長された血清半減期を有する、項目1~3のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
[5] 以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン;または、
(ii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;または
(iii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;または
(iv)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸、配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン、ならびに配列番号1の572位にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸、
を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
[6] 配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシンをさらに含む、項目1~5のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
[7] 以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン;および/または
(ii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;および/または
(iii)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、
を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
[8] 以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン;または
(ii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;または
(iii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン;または
(iv)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(v)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(vi)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(vii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン;または
(viii)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(ix)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン;または
(x)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するロイシン、配列番号1の552位にてアラニンを置換するバリン、配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアルギニン、および配列番号1の第573アミノ酸に対応する位置にてリジンを置換するチロシン、
を含む、項目1~7のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
[9] 項目1~8のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片、および化合物を含む血清アルブミンコンジュゲート。
[10] 前記血清アルブミンコンジュゲートが、配列番号1に規定される血清アルブミンを含む血清アルブミンコンジュゲートと比較してより長い血清半減期を有する、項目9に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[11] 前記血清アルブミンコンジュゲートが、配列番号1に規定される血清アルブミンを含む血清アルブミンコンジュゲートと比較して、FcRnに対する増強された結合親和性を有する、項目9または10に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[12] 前記化合物が、タンパク質、抗体可変領域を含むタンパク質、抗体模倣体、ドメイン抗体、毒素、放射性同位元素、検出可能な標識、ペプチド、ポリペプチド、コロイド、化学療法薬、核酸、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)、siRNA、干渉RNA(RNAi)、リボザイム、マイクロRNA、マイクロRNA適応shRNA(shRNAmir)、DNA酵素(DNAzyme)およびその混合物である、項目9~11のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[13] 前記化合物がFvを含むタンパク質である、項目12に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[14] 前記タンパク質が、以下の:
(i)一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(ii)二量体scFv(di‐scFv);または
(iii)ダイアボディ;
(iv)トリアボディ;
(v)テトラボディ;
(vi)Fab;
(vii)F(ab')2;
(viii)Fv;または
(ix)抗体の定常領域、Fcまたは重鎖定常ドメイン(C )2および/またはC 3に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、
から成る群から選択される、項目13に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[15] 前記タンパク質が治療用タンパク質である、項目12に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[16] 前記化合物が、フォンヴィレブランド因子またはその修飾形態である、項目9~15のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[17] 前記フォンヴィレブランド因子がD’D3ドメインを含む、項目16に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[18] 前記化合物が、補体阻害因子またはその修飾形態である、項目9~15のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[19] 前記化合物が、血液凝固因子であるかまたはそれに結合する、項目9~15のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[20] 前記血液凝固因子が、第I因子、第II因子(プロトロンビン)/トロンビン、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子および上記のいずれかの活性型から成る群から選択される、項目19に記載の血清アルブミンコンジュゲート。
[21] 項目9~20のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲート、ならびに医薬担体および/または賦形剤を含む組成物。
[22] 対象の疾患または病態を治療または予防における使用のための、項目1~8のいずれか一項に記載の血清アルブミン変異体またはその機能的断片、項目9~20のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲートまたは項目21に記載の組成物。
[23] 対象の疾患または病態を治療または予防する方法であって、その方法が、項目9~20のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲートまたは項目21に記載の組成物を投与することを含む方法。
[24] 対象の疾患または病態の治療または予防のための薬剤の製造における、項目9~20のいずれか一項に記載の血清アルブミンコンジュゲートまたは項目21に記載の組成物の使用。
[25] 前記疾患または病態が出血性障害である、項目22に記載の使用、項目23に記載の方法または項目24に記載の使用のための血清アルブミン変異体、コンジュゲートまたは組成物。
[26] 前記対象が、出血性障害またはその症状を発症するリスクがある、項目22または25に記載の使用、項目23または25に記載の方法、または項目24または25に記載の使用のための血清アルブミン変異体、コンジュゲートまたは組成物。
[27] 前記出血性障害が、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド病、第I因子欠乏症、第II因子欠乏症、第V因子欠乏症、複合型第V因子/第VIII因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XI因子欠乏症または第XIII因子欠乏症である、項目22、25または26のいずれか一項に記載の使用、項目23、25または26のいずれか一項に記載の方法または項目24~26のいずれか一項に記載の使用のための血清アルブミン変異体、コンジュゲートまたは組成物。
[28] 対象の出血性障害の治療または予防における使用のためのキットであって、そのキットが、以下の
(a)項目9~20のいずれか一項に記載の少なくとも1つの血清アルブミンコンジュゲートまたは項目21の組成物;
(b)対象における出血性障害の治療または予防においてそのキットを使用するための取扱説明書;および
(c)任意選択で、少なくとも1つの更なる治療的に活性な化合物または薬物、
を含むキット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(i)配列番号1の第522アミノ酸に対応する位置にてグルタミンを置換するグリシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびロイシンから成る群から選択されるアミノ酸;
(ii)配列番号1の第552アミノ酸に対応する位置にてアラニンを置換するバリン;
(iii)配列番号1の第572アミノ酸に対応する位置にてグリシンを置換するアラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、リジンおよびアルギニンから成る群から選択されるアミノ酸;および
(iv)その組み合わせ、
から成る群から選択される1もしくは複数のアミノ酸置換を含む血清アルブミン変異体またはその機能的断片。
【外国語明細書】