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特開2023-9968バッター液及び油ちょう食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009968
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】バッター液及び油ちょう食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20230113BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20230113BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20230113BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113676
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】六本木 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】村井 卓也
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B036
【Fターム(参考)】
4B025LB04
4B025LG04
4B025LG24
4B035LC03
4B035LE17
4B035LG09
4B035LG35
4B035LP07
4B036LF13
4B036LH08
4B036LH22
4B036LP03
(57)【要約】
【課題】
衣のサクサク感や歯切れを向上させることができるバッター液、及び優れたサクサク感と歯切れの良さを有する油ちょう食品を提供すること。
【解決手段】
構成脂肪酸が炭素数8~24の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステル、水、小麦粉を含有するバッター液を用いることで上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉、水、及びポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するバッター液であって、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、炭素数8~24の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするバッター液。
【請求項2】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、炭素数8~14の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のバッター液。
【請求項3】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、炭素数16~24の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のバッター液。
【請求項4】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが5~15であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のバッター液。
【請求項5】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを水性成分に添加して混合し、その後小麦粉を添加して混合する工程を有する請求項1~4のいずれかに記載のバッター液の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のバッター液を具材に付着させ、加熱調理する工程を有する油ちょう食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッター液及び油ちょう食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷら、フライ、フリッターなどの油ちょう食品は、肉や魚、野菜などに小麦粉と水を主成分とするバッター液を付着させ油ちょうすることで製造され、サクサクとした歯切れの良い食感のものが求められている。近年、こういった油ちょう食品をスーパーやコンビニで買って自宅で食べる機会が増えており、油ちょう食品の需要はますます高まっている。しかしながら、スーパーやコンビニなど調理をしてから喫食までに時間が経過する場合、保存期間中に具材の水分等が衣に移行することでサクサクとした食感が損なわれることが課題となっている。
【0003】
この課題を解決するために、小麦粉、ハイアミロース澱粉、親水性乳化剤を含有する衣材又はバッター液が提案されている(特許文献1)。さらに、セルロース及び乳化剤とからなる揚げ物用衣改良剤も提案されている(特許文献2)。これらのバッター液は、食感改良にある程度効果があるものの、未だ充分ではなく、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-309758号公報
【特許文献2】特開2005-287450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、衣のサクサク感や歯切れを向上させることができるバッター液、及び優れたサクサク感と歯切れの良さを有する油ちょう食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
構成脂肪酸が炭素数8~24の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステル、水、小麦粉を含有するバッター液を用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を解決するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明のバッター液を使用することで、衣のサクサク感や歯切れが向上し、保存時にもサクサク感の減少が抑制できる油ちょう食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を実施するための形態をより詳細に説明するが、本発明の範囲は、この実施形態に限定するものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で変更等が加えられた形態も本発明に属する。なお、範囲を表す表記の「~」は、上限と下限を含むものである。
【0009】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン同士を脱水縮合したポリグリセリンと脂肪酸のエステル化反応によって得られ、ポリグリセリンの種類(重合度)、脂肪酸の種類(炭素数、二重結合の数)、エステル組成等により、多種類存在する。そして、その種類毎に異なる性質を示すことが知られている。
【0010】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は、水性成分への溶解性が優れることから、2~20であることが好ましい。
【0011】
平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、下記式(1)及び下記式(2)から算出される。
分子量=74n+18 ・・・(1)
水酸基価=56110(n+2)/分子量・・・(2)
【0012】
上記式(2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2003年度版」に準じて算出される。
【0013】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、炭素数8~24の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする。なお、構成脂肪酸中の80%以上が炭素数8~24の飽和脂肪酸であれば、不飽和脂肪酸等を含んでも良い。炭素数8~22の飽和脂肪酸は、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸が挙げられる。中でもサクミの向上効果と歯切れの良さを付与できる点からカプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸が好ましい。
【0014】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は5~50%であることが好ましい。エステル化率が5~50%の範囲にあるポリグリセリン脂肪酸エステルを添加したバッター液を用いることで、サクミが極めて優れる油ちょう食品を得ることができる。ここで、エステル化率とは、水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加する脂肪酸のモル数(M)としたとき、下記式(4)で算出される値である。水酸基価とは、上記式(2)により算出される値である。
【0015】
エステル化率(%)=(M/(n+2))×100・・・(4)
【0016】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、従来公知のエステル化反応により製造することができる。例えば、脂肪酸とポリグリセリンとを水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒の存在下でエステル化反応させることにより製造することができる。エステル化は、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が所望の値になるまで行われる。
【0017】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、5~15が好ましい。HLBが5~15の範囲にあるポリグリセリン脂肪酸エステルを添加したバッター液を用いることで、サクミが極めて優れる油ちょう食品を得ることができる。なお、HLBはアトラス法を用い、エステルのけん化価および脂肪酸の中和価から算出したものであり、以下の式(5)により算出する。また、式(5)中のけん化価および中和価は社団法人日本油化学会編纂「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2003年度版」に準じて測定する。
HLB=20×(1-けん化価/中和価)・・・(5)
【0018】
本発明のバッター液は、水、小麦粉、ポリグリセリン脂肪酸エステル、および必要に応じてその他の成分を混合することにより製造される。ポリグリセリン脂肪酸エステルをバッター液に均一に分散させる点から、50℃以上の水とポリグリセリン脂肪酸エステルを先に混合して冷却した後に、小麦粉を混合する手順が好ましい。
【0019】
バッター液中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、特に制限はないが、油ちょう食品のサクミ向上およびポリグリセリン脂肪酸エステルの分散性の点から0.1~5重量%であることが好ましい。
【0020】
本発明のバッター液に用いる小麦粉としては、薄力粉、中力粉、強力粉のいずれであっても良いが、薄力粉を含んでいる方が好ましい。小麦粉の配合量は、バッター液全量に対して、10~60%であることが好ましい。
【0021】
本発明のバッター液に用いる水は通常の水であれば良く、その配合割合はバッター液全量に対して40%~90%であることが好ましい。
【0022】
本発明のバッター液には、更に所望の効果を向上させるために、食用油脂/または粉末油脂を配合することもできる。使用する油脂はいずれの食用油脂並びにその粉末化したものであっても構わないが、融点60℃以下の食用油脂並びにその粉末化したものが好ましい。具体的に例えば菜種油、綿実油、大豆油、ピーナッツ油、コーン油、サフラワー油、パーム油、オリーブ油、カカオ脂等の植物油脂、ラード、牛脂、魚油等の動物油脂、これらの動植物油脂の水素添加された硬化油、分別油、分別硬化油またはこれらの混合油脂等とその粉末化したものを挙げることができる。食用油脂または粉末油脂のバッター液中の含有割合はバッター液全体に対して、0~30%が好ましい。
【0023】
本発明のバッター液には、食用油脂/または粉末油脂の分散効果を向上させるために、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等のその他の食品用乳化剤や本発明以外のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用しても良い。
【0024】
本発明のバッター液には、その他の成分としてベーキングパウダー、澱粉類、糖類、糖アルコール類、増粘多糖類、卵白、卵黄、全卵、食塩等の調味料、香料、香辛料、炭酸水、酢などを含んでも良い。澱粉類としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉が挙げられる。これらの澱粉は未加工澱粉であっても加工澱粉であってもよい。加工澱粉としては、α化、エーテル化、エステル化、架橋、酸化等の処理を施したものが挙げられる。エステル化澱粉にはリン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等が含まれる。
【0025】
本発明のバッター液には、必要に応じて前記成分の他に、調味料、起泡剤、着色料、香料、卵黄、卵白、食物繊維などを含有させることができる。
【0026】
本発明の油ちょう食品の製造方法としては、具材にバッター液を付着させ、油ちょう調理することによって、本発明の油ちょう食品を製造することができる。また、必要に応じてバッター液を付着させた後にパン粉などを付着させて油ちょう調理を行った食品も本発明に含まれる。
【0027】
バッター液を具材に付着させる方法としては、特に限定されないが、例えばバッター液の中に具材を浸漬させる方法、バッター液と具材を混合する方法、バッター液を具材に塗布する方法等が挙げられる。そして油ちょう調理は、通常140℃~200℃程度の油温で60~600秒間油ちょう処理することにより行われる。
【0028】
油ちょう食品の具材については、特に制限はなく、例えば、肉類、魚介類、野菜類、乳製品又はこれらに下味を付けたものや加工品等が挙げられる。
【0029】
本発明に係る油ちょう食品は、油ちょう調理後、ただちに食卓に供されても良いし、常温で保存された後に食卓に供されても良い。また、油ちょう調理後すぐに冷凍又は冷蔵され、保存することもできる。冷凍保存される場合は、フリーザー等の適宜の凍結方法を用いて油ちょう食品を凍結した後、-18℃以下で保存することができる。このような冷凍又は冷蔵品を公知の電子レンジなどのマイクロ波調理器等で加熱し喫食することもできる。また、油ちょう調理を行う前に、冷凍又は冷蔵して保存することもできる。このような冷凍又は冷蔵品は、喫食前に、油ちょう調理を行って食することができる。
【実施例0030】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0031】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル1の合成>
窒素管、留出管、温度計、加熱ジャケット、撹拌機を備えた反応器にポリグリセリン(平均重合度2、水酸基価1352)348.3gと、カプリル酸401.9gを仕込んで撹拌、混合した。窒素雰囲気下、反応器の内温を180℃に昇温して2時間反応した後、さらに220℃に昇温した。この温度で酸価が0.5以下となるまで反応した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価は0.2であった。酸価は基準油脂分析試験法に準じて測定した。
【0032】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル2の合成>
窒素管、留出管、温度計、加熱ジャケット、撹拌機を備えた反応器にポリグリセリン(平均重合度10、水酸基価890)565.5gと、カプリル酸153.7gと水酸化ナトリウム0.80gを仕込んで撹拌、混合した。窒素雰囲気下、反応器の内温を180℃に昇温して2時間反応した後、さらに220℃に昇温した。この温度で酸価が0.5以下となるまで反応した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価は0.1であった。
【0033】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル3の合成>
窒素管、留出管、温度計、加熱ジャケット、撹拌機を備えた反応器にポリグリセリン(平均重合度4、水酸基価1070)389.3gと、ラウリン酸341.5gと水酸化ナトリウム0.72gを仕込んで撹拌、混合した。窒素雰囲気下、反応器の内温を225℃に昇温した。この温度で酸価が0.5以下となるまで反応した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価は0.2であった。
【0034】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル4の合成>
窒素管、留出管、温度計、加熱ジャケット、撹拌機を備えた反応器にポリグリセリン(平均重合度6、水酸基価970)481.1gと、ラウリン酸240.5gと水酸化ナトリウム1.00gを仕込んで撹拌、混合した。窒素雰囲気下、反応器の内温を225℃に昇温した。この温度で酸価が0.5以下となるまで反応した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価は0.1であった。
【0035】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル5の合成>
窒素管、留出管、温度計、加熱ジャケット、撹拌機を備えた反応器にポリグリセリン(平均重合度10、水酸基価890)532.5gと、ラウリン酸184.1gと水酸化ナトリウム1.00gを仕込んで撹拌、混合した。窒素雰囲気下、反応器の内温を225℃に昇温した。この温度で酸価が0.5以下となるまで反応した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価は0.1であった。
【0036】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル6の合成>
窒素管、留出管、温度計、加熱ジャケット、撹拌機を備えた反応器にポリグリセリン(平均重合度10、水酸基価890)557.9gと、ミリスチン酸154.3gと水酸化ナトリウム0.008gを仕込んで撹拌、混合した。窒素雰囲気下、反応器の内温を245℃に昇温した。この温度で酸価が0.5以下となるまで反応した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価は0.1であった。
【0037】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル7の合成>
窒素管、留出管、温度計、加熱ジャケット、撹拌機を備えた反応器にポリグリセリン(平均重合度10、水酸基価890)174.8gと、ベヘン酸554.6gと水酸化ナトリウム4.21gを仕込んで撹拌、混合した。窒素雰囲気下、反応器の内温を250℃に昇温した。この温度で酸価が0.5以下となるまで反応した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価は0.2であった。
【0038】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル8の合成>
窒素管、留出管、温度計、加熱ジャケット、撹拌機を備えた反応器にポリグリセリン(平均重合度10、水酸基価890)360.1gと、ベヘン酸358.9gと水酸化ナトリウム4.21gを仕込んで撹拌、混合した。窒素雰囲気下、反応器の内温を250℃に昇温した。この温度で酸価が0.5以下となるまで反応した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価は0.2であった。
【0039】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル9の合成>
窒素管、留出管、温度計、加熱ジャケット、撹拌機を備えた反応器にポリグリセリン(平均重合度10、水酸基価890)377.0gと、ステアリン酸346.0gと水酸化ナトリウム1.01gを仕込んで撹拌、混合した。窒素雰囲気下、反応器の内温を245℃に昇温した。この温度で酸価が0.5以下となるまで反応した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価は0.2であった。
【0040】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル10の合成>
窒素管、留出管、温度計、加熱ジャケット、撹拌機を備えた反応器にポリグリセリン(平均重合度10、水酸基価890)464.7gと、オレイン酸251.4gと水酸化ナトリウム2.86gを仕込んで撹拌、混合した。窒素雰囲気下、反応器の内温を245℃に昇温した。この温度で酸価が0.5以下となるまで反応した。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルの酸価は0.1であった。
【0041】
<中種(コロッケ)の調製>
ポテトフレーク100gに80℃のお湯を260g加えながらビーターを取り付けた縦型ミキサーで1分攪拌しました。ステンレスバットに移し、室温で30分放熱した後、5℃のインキュベーターで2時間以上冷やし、40×40×12mmの大きさにカットし、中種とした。
【0042】
<実施例1>
ジグリセリンカプリル酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル1)を5g、80℃の水1kgを混合して冷却することで0.5%ポリグリセリンエステル水溶液を調製した。薄力粉500gに対して5℃に冷却したポリグリセリンエステル水溶液700gを加えて攪拌し、バッター液を調製した。上記で調製した中種をバッター液に浸漬して180℃に加熱したキャノーラ油の中で3分間油ちょうしてコロッケを得た。
【0043】
<実施例2~9>
実施例1のポリグリセリン脂肪酸エステル1を、それぞれ表1に記載のポリグリセリン脂肪酸エステル2~9に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2~9のコロッケを作成した。
【0044】
<比較例1>
実施例1のポリグリセリン脂肪酸エステル1を、表1に記載のポリグリセリン脂肪酸エステル10に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例1のコロッケを作成した。
【0045】
<比較例2>
薄力粉500gに対して5℃に冷却した水700gを加えて攪拌し、バッター液を調製した。上記で調製した中種をバッター液に浸漬して180℃に加熱したキャノーラ油の中で3分間油ちょうしてコロッケを得た。
【0046】
<コロッケの評価>
実施例1~9、比較例1、2で作成したコロッケを15分室温で放冷した後、500Wの電子レンジで90秒加熱して評価に使用した。評価はレオメーターに歯形のアダプタを取り付け、テーブルスピードを6cm/minとした際の荷重を測定した。
【0047】
<評価の指標>
最大荷重:破断時の極大値を最大荷重とした。最大荷重が高いほど歯応えが良好なものであると判断した。
荷重勾配:最大荷重と荷重極小値との差とその間の移動距離で除した傾きの絶対値を荷重勾配とした。荷重勾配が大きいほど、サクサクとした食感のものである。
官能評価:7人のパネラーで評価用コロッケを喫食し、食感(サクサク感)を0~5点で評価した。点数が高いほどサクサク感が強いものであった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表2の結果から、本発明のバッター液を用いた実施例1~9は、ポリグリセリン脂肪酸エステル無添加の比較例2に比べて最大荷重は同等以上、荷重勾配は大きくなった。また、構成脂肪酸がオレイン酸であるエステルを用いた比較例1に比べて最大荷重が向上した。中でもHLBが5~15の範囲であり、構成脂肪酸がカプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた実施例1、3~6、8のコロッケは荷重勾配も50gf/mm以上となり、食感の官能評価でも良好な結果であった。
【0051】
<実施例10>
実施例1と同様にしてコロッケを作り、室温にて15分間放冷した後に-18℃に調温したフリーザー内で2週間冷凍保存を行った。2週間後にフリーザーからコロッケを取り出し、電子レンジで500W、90秒加熱して冷凍解凍後のコロッケを得た。
【0052】
<実施例11>
実施例10で使用したポリグリセリン脂肪酸エステル1をポリグリセリン脂肪酸エステル2に変更したこと以外は実施例10と同様にして冷凍解凍後のコロッケを得た。
【0053】
<実施例12>
実施例10で使用したポリグリセリン脂肪酸エステル1をポリグリセリン脂肪酸エステル3に変更したこと以外は実施例10と同様にして冷凍解凍後のコロッケを得た。
【0054】
<実施例13>
実施例10で使用したポリグリセリン脂肪酸エステル1をポリグリセリン脂肪酸エステル4に変更したこと以外は実施例10と同様にして冷凍解凍後のコロッケを得た。
【0055】
<実施例14>
実施例10で使用したポリグリセリン脂肪酸エステル1をポリグリセリン脂肪酸エステル5に変更したこと以外は実施例10と同様にして冷凍解凍後のコロッケを得た。
【0056】
<実施例15>
実施例10で使用したポリグリセリン脂肪酸エステル1をポリグリセリン脂肪酸エステル8に変更したこと以外は実施例10と同様にして冷凍解凍後のコロッケを得た。
【0057】
<比較例3>
薄力粉500gに対して5℃に冷却した水700gを加えて攪拌し、バッター液を調製した。上記で調製した中種をバッター液に浸漬して180℃に加熱したキャノーラ油の中で3分間油ちょうしてコロッケを得た。このコロッケを室温にて15分間放冷した後に-18℃に調温したフリーザー内で2週間冷凍保存を行った。2週間後にフリーザーからコロッケを取り出し、電子レンジで500W、90秒加熱して冷凍解凍後のコロッケを得た。
【0058】
<コロッケの評価>
レオメーターに歯形のアダプタを取り付け、テーブルスピードを6cm/minとし、実施例10~15、比較例3のコロッケの荷重を測定した。
【0059】
<評価の指標>
最大荷重:破断時の極大値を最大荷重とした。最大荷重が高いほど歯応えが良好なものであると判断した。
荷重勾配:最大荷重と荷重極小値との差とその間の移動距離で除した傾きの絶対値を荷重勾配とした。荷重勾配が大きいほど、サクサクとした食感のものである。
【0060】
【表3】
【0061】
表3の結果から、本発明のバッター液を用いた実施例10~15は、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステル無添加の比較例3に比べて最大荷重および荷重勾配が大きく、冷凍解凍工程を経た後も無添加に比べて歯ごたえが良好であり、サクサク感が強いものであることが明らかとなった。