(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099737
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】潤滑組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20230706BHJP
C10M 137/04 20060101ALN20230706BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20230706BHJP
C10M 101/02 20060101ALN20230706BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20230706BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20230706BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20230706BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20230706BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230706BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20230706BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M137/04
C10M137/10 Z
C10M101/02
C10N40:08
C10N40:12
C10N40:00 A
C10N30:08
C10N30:00 B
C10N30:06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023085602
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2019570486の分割
【原出願日】2018-06-07
(31)【優先権主張番号】62/522,126
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シュブハミタ バス
(57)【要約】
【課題】 潤滑油組成物を提供すること
【解決手段】 潤滑油組成物に良好な熱安定性および良好な抗乳化性を提供するために、3つのリン系耐摩耗成分の相乗的混合物を含有する油圧潤滑油組成物が提供される。本発明は、油圧システム、タービンシステム、または循環油システムで使用するための潤滑組成物を提供する。油圧システムは、一般に、システムの様々な部分にエネルギーを伝達するために、圧力が流体、通常は油性の流体に加えられるデバイスまたは装置である。タービン潤滑油は、通常、蒸気タービンまたはガスタービンなどのタービン(またはタービンシステム)のギアまたは他の可動部品を潤滑するために使用される。循環油は、通常、それが循環するデバイスもしくは装置に、またはそれらを介して熱を分配するために使用される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑組成物に高い熱安定性ならびに良好な抗乳化性および耐摩耗性能を提供する3つのリン化合物の相乗的組み合わせを含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境への懸念と潜在的な毒性の問題により、無灰添加剤を含有する潤滑組成物への関心が高まっている。用途によっては、ZDDPなどの耐摩耗添加剤の使用が削減され、他の無灰添加剤が好まれている。結果として、金属含有添加剤と少なくとも同等またはそれ以上の耐摩耗性能を提供すると同時に、無灰添加剤を含有する潤滑組成物を提供する必要がある。
【0003】
さらに、油圧機器の場合、圧力の上昇は、潤滑油の温度の上昇を伴うため、油圧機器に使用される潤滑油組成物の熱安定性は、非常に重要である。しかしながら、多くの無灰油圧潤滑油組成物は、熱安定性試験において許容できる性能を示さない。したがって、良好な熱安定性を有する無灰または金属低含有潤滑油組成物が必要である。
【0004】
水の汚染と乱流の影響を受ける油の場合、水と油が分離する能力が重要である。油圧潤滑組成物が抗乳化性試験において良好に機能することも望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、油圧システム、タービンシステム、または循環油システムで使用するための潤滑組成物を提供する。油圧システムは、一般に、システムの様々な部分にエネルギーを伝達するために、圧力が流体、通常は油性の流体に加えられるデバイスまたは装置である。タービン潤滑油は、通常、蒸気タービンまたはガスタービンなどのタービン(またはタービンシステム)のギアまたは他の可動部品を潤滑するために使用される。循環油は、通常、それが循環するデバイスもしくは装置に、またはそれらを介して熱を分配するために使用される。
有用な油圧潤滑油は、潤滑粘度の油と、3つのリン系耐摩耗剤の相乗的混合物を含む添加剤パッケージを含む。例えば、本発明は、(A)潤滑粘度の油と、(B)以下の式
【化1】
(式中、Rは、水素または炭素原子数3~9、例えば3、4、5、6、7、8、9のアルキル基、またはそれらの混合物であり、Xは、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせであってもよい)で表される第1の添加剤(1)と、(C)以下の式
【化2】
(式中、R
1は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、R
2およびR
3は、それぞれ、炭素原子数3~20の炭化水素基を表し、X
2およびX
3は、それぞれ独立して、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせである)で表される第2の添加剤(2)と、(D)以下の式
【化3】
(式中、R
4、R
5、およびR
7は、それぞれ独立して、炭素原子数1~18の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和環状脂肪族炭化水素基、または炭素原子数5~18の分岐鎖もしくは非分岐鎖の飽和もしくは不飽和環状炭化水素基であり、R
6は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、X
4およびX
5は、それぞれ独立して、酸素原子もしくは硫黄原子またはそれらの組み合わせである)で表される第3の添加剤(3)とを含む。一実施形態では、添加剤(1)、添加剤(2)、および添加剤(3)は、潤滑組成物に少なくとも約200ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在する。
【0006】
一実施形態では、潤滑組成物は、無灰であってもよい。別の実施形態では、潤滑組成物は、遷移金属を不含してもよい。別の実施形態では、潤滑組成物は、組成物中の唯一の金属としてカルシウムを含んでもよい。
【0007】
潤滑組成物はまた、本明細書でさらに説明されるように、追加の添加剤を含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
潤滑粘度の油
開示された技術の1つの成分(a)は、潤滑粘度の油であり、基油とも称される。基油は、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability GuidelinesのグループI~Vの基油のいずれかから選択されてもよく、すなわち、以下の通りである。
基油カテゴリー 硫黄(%) 飽和物(%) 粘度指数
グループI >0.03 および/または <90 80~120
グループII ≦0.03 および ≧90 80~120
グループIII ≦0.03 および ≧90 >120
グループIV すべてのポリアルファオレフィン(PAO)
グループV グループI、II、III、またはIVに含まれないその他のすべて
グループI、II、およびIIIは、鉱油ベースストックである。潤滑粘度の油には、天然または合成油およびそれらの混合物が含まれ得る。鉱油と合成油、例えばポリアルファ
オレフィン油および/またはポリエステル油の混合物が使用されてもよい。
【0009】
天然油には、動物油および植物油(例えば、野菜酸エステル)、ならびに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、およびパラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン-ナフテン型の溶剤処理または酸処理された鉱物潤滑油が含まれる。水素化処理または水素化分解油もまた有用な潤滑粘度の油である。石炭または頁岩に由来する潤滑粘度の油もまた有用である。
【0010】
合成油には、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば、重合および共重合オレフィン、ならびにそれらの混合物、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、およびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似体、および同族体が含まれる。アルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマー、ならびにそれらの誘導体、ならびに末端ヒドロキシル基が、例えばエステル化またはエーテル化により修飾されているものは、他のクラスの合成潤滑油である。他の適切な合成潤滑油は、ジカルボン酸のエステル、ならびにC5~C12モノカルボン酸およびポリオールまたはポリオールエーテルから作製されたものを含む。他の合成潤滑油には、リン含有酸の液体エステル、高分子テトラヒドロフラン、シリコン系油、例えば、ポリアルキル油、ポリアリール油、ポリアルコキシ油、またはポリアリールオキシシロキサン油、およびシリケート油が含まれる。
【0011】
他の合成油には、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成されるもの、典型的には水素化異性化されたフィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスが含まれる。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュのガスから液体への合成手順、および他のガスから液体への油によって調製されてもよい。
【0012】
上記で開示された種類の天然または合成の未精製、精製、および再精製油(およびそれらの混合物)が使用され得る。未精製油は、さらに精製処理することなく、天然または合成の原料から直接得られる。精製油は、1つまたはそれより多くの特性を改善するために1つまたはそれより多くの精製ステップでさらに処理されていることを除いて、未精製油と同様である。再精製油は、すでに使用されている精製油に適用される精製油を得るために使用されるプロセスと同様のプロセスによって得られる。再精製された油は、多くの場合、使用済み添加物および油分解生成物を除去するために追加処理される。
【0013】
いくつかの実施形態では、工業用潤滑組成物は、少量の1つまたはそれより多くの非合成基油を含んでもよい。これらの非合成基油の例には、APIグループI、グループII、またはグループIII基油を含む、本明細書に記載されているもののいずれかが含まれる。
【0014】
存在する潤滑粘度の油の量は、通常は、本発明の化合物および他の性能添加剤の量の合計を100重量%から差し引いた後に残る残余である。潤滑粘度の油は、潤滑組成物の場合は、大量に、濃縮および/または添加剤組成物の場合は、濃縮物形成量で存在し得る。本発明の工業用潤滑組成物は、潤滑組成物または濃縮および/もしくは添加剤組成物のいずれかであり得る。
【0015】
本発明による完全に配合された潤滑油組成物において、潤滑粘度の油は、一般に、大量(すなわち、50重量パーセントを超える量)に存在する。通常、潤滑粘度の油は、組成物全体の75~98重量パーセント、しばしば80重量パーセントを超える量で存在する。
【0016】
記載されている様々な潤滑粘度の油は、単独でまたは組み合わせて使用されてもよい。
潤滑粘度の油(存在するすべての油を考慮する)は、約40もしくは50重量パーセント~約99重量パーセントの範囲、または最低49.8、70、85、93、93.5、さらには97~最大99.8、99、98.5、98、さらには97重量パーセントの範囲で、記載の工業用潤滑組成物に使用されてもよい。
【0017】
さらに他の実施形態では、潤滑粘度の油は、60~97、または80~97、さらには85~97重量パーセントで使用されてもよい。別の言い方をすれば、本明細書に記載の組成物は、少なくとも60、80、さらには85重量パーセントの潤滑粘度の油を含有してもよい。
【0018】
濃縮組成物では、通常、添加剤および他の成分の量は同じままであるが、組成物をより濃縮にし、貯蔵および/または輸送するのにより効率的にするために、潤滑粘度の油の量を減少させる。当業者は、濃縮および/または添加剤組成物を提供するために、存在する潤滑粘度の油の量を容易に調整することができるであろう。
【0019】
リン添加剤
本発明の第1の添加剤(1)として使用可能なリン化合物は、以下の式(1)で表されるリン酸トリアリールまたはチオリン酸トリアリールを含むリン化合物である。
【化4】
【0020】
式(1)において、Rは、水素原子または炭素原子数3~9のアルキル基、例えば、3、4、5、6、7、8、9、またはそれらの炭素原子数の組み合わせであり、Xは、酸素原子または硫黄原子である。式(1)において、3つのR基は、互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数4以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、第三級ブチル基が挙げられる。
【0021】
式(1)で表されるリン化合物としては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、チオリン酸トリフェニル、チオリン酸トリクレシル、ホスホロチオン酸ブチル化トリフェニルが挙げられる。
【0022】
本発明の一実施形態では、上記リン化合物の1つが第1の添加剤(1)として単独で使用されてもよく、またはそれらの2つもしくはそれより多くの組み合わせが使用されてもよい。
【0023】
本組成物において第2の添加剤(2)として使用されるリン化合物は、以下の式(2)で表される化合物を含むリン化合物である。
【化5】
【0024】
式(2)において、R1は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を表し、R2およびR3は、それぞれ、炭素原子数3~20の炭化水素基を表し、X2およびX3は、それぞれ単独して、酸素原子または硫黄原子を表す。
【0025】
一実施形態では、R1は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2~4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、さらに好ましくは分岐鎖のアルキレン基であってもよい。具体的には、R1は、好ましくは、例えば、-CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2CH(CH2CH3)-、または-CH2CH(CH2CH2CH3)-、より好ましくは-CH2CH(CH3)-、または-CH2CH(CH3)CH2-である。
【0026】
一実施形態では、R2~R3は、それぞれ、好ましくは炭素原子数3~8の直鎖または分岐鎖アルキル基、より好ましくは炭素原子数4~6の直鎖または分岐鎖アルキル基を表す。具体的には、R2~R3は、それぞれ好ましくは、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、2-エチルブチル、1-メチルペンチル、1,3-ジメチルブチル、および2-エチルヘキシル基からなる群から選択される。
【0027】
一実施形態では、X2およびX3の両方が酸素原子を表す。別の実施形態では、X2およびX3の両方が硫黄原子を表す。別の実施形態では、X2が酸素であり、X3が硫黄であり、別の実施形態では、X2が硫黄であり、X3が酸素である。
【0028】
本組成物においては、上記ジチオリン酸化合物の1つが第2の添加剤(2)として単独で使用されてもよく、またはそれらの2つもしくはそれより多くの組み合わせが使用されてもよい。
【0029】
本組成物において第3の添加剤(3)として使用される化合物は、下記式(3)で表されるチオリン酸塩化合物を含む。
【化6】
【0030】
式(3)において、R4、R5、およびR7は、それぞれ独立して、炭素原子数1~18の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、または炭素原子数5~18の分岐鎖または非分岐鎖の飽和または不飽和環状炭化水素基である。R6は、炭素原
子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、X4およびX5は、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子である。式(3)の一実施形態では、少なくとも1つの硫黄原子が存在する。
【0031】
一実施形態では、X4およびX5の両方が酸素原子を表す。別の実施形態では、X4およびX5の両方が硫黄原子を表す。別の実施形態では、X4が酸素であり、X5が硫黄であり、別の実施形態では、X4が硫黄であり、X5が酸素である。
【0032】
本発明の潤滑組成物は、添加剤(1)、(2)、および(3)のすべてを含有する。一実施形態では、添加剤(1)、(2)、および(3)は、0.32~1.5部の添加剤(1)対0.5~2.5部の添加剤(2)対1部の添加剤(3)の比率で存在する。別の実施形態では、添加剤(1)、(2)、および(3)は、2.5部の添加剤(1)対1.5部の添加剤(2)対1部の添加剤(3)の比率で存在する。別の有用な実施形態において、添加剤(1)、(2)、および(3)は、潤滑油組成物に少なくとも200ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在する。この量のリンは、特定の用途に十分な耐摩耗保護を提供するために必要である。
【0033】
その他の添加物
潤滑組成物は、濃縮物および/または完全に配合された潤滑剤の形態であってもよい。本発明の潤滑組成物(本明細書に開示される添加剤を含む)が濃縮物の形態である場合(追加の油と組み合わせて、全体的または部分的に完成潤滑剤を形成できる)、これらの添加剤の潤滑粘度の油および/または希釈油に対する比率は、重量で1:99~99:1、または重量で80:20~10:90の範囲を含む。
【0034】
上記の3つの添加剤に加えて、潤滑組成物はまた、1つまたはそれより多くの追加の他の添加剤を含有してもよい。いくつかの実施形態では、追加の添加剤には、酸化防止剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、発泡防止剤、分散剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、清浄剤、乳化剤、極圧剤、流動点降下剤、粘度調整剤、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0035】
したがって、潤滑剤は、酸化防止剤、またはその混合物を含んでもよい。酸化防止剤は、潤滑剤の0重量%~4.0重量%、または0.02重量%~3.0重量%、または0.03重量%~1.5重量%で存在してもよい。
【0036】
酸化防止剤には、ジアリールアミン、アルキル化ジアリールアミン、ヒンダードフェノール、モリブデン化合物(モリブデンジチオカルバメートなど)、ヒドロキシルチオエーテル、トリメチルポリキノリン(例えば、1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン)、またはそれらの混合物が含まれる。
【0037】
ジアリールアミンまたはアルキル化ジアリールアミンは、フェニル-α-ナフチルアミン(PANA)、アルキル化ジフェニルアミン、もしくはアルキル化フェニルナフチルアミン、またはそれらの混合物であってもよい。アルキル化ジフェニルアミンには、ジノニル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン、ジデシル化ジフェニルアミン、デシルジフェニルアミン、ベンジルジフェニルアミン、およびそれらの混合物が含まれてもよい。一実施形態では、ジフェニルアミンには、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、またはそれらの混合物が含まれてもよい。一実施形態では、アルキル化ジフェニルアミンには、ノニルジフェニルアミンまたはジノニルジフェニルアミンが含まれてもよい。アルキル化ジアリールアミンには、オクチル、ジオクチル、ノニル、ジノニル、デシル、またはジデシルフェニルナフチルアミンが含まれ
てもよい。一実施形態では、ジフェニルアミンは、ベンゼンおよびt-ブチル置換基でアルキル化されている。
【0038】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、しばしば、立体障害基として第二級ブチルおよび/または第三級ブチル基を含有する。フェノール基は、ヒドロカルビル基(通常、直鎖または分岐鎖のアルキル)および/または第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されていてもよい。適切なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、例えば、BASF社からのIrganox(商標)L-135を含んでもよい。適切なエステル含有ヒンダードフェノール酸化防止剤化学のより詳細な説明は、米国特許第6,559,105号に見られる。
【0039】
抗酸化剤は、以下の式
【化7】
(式中、R
6は、炭素原子数8~20の飽和または不飽和の分岐鎖または直鎖アルキル基であってもよく、R
7、R
8、R
9、およびR
10は、独立して水素または炭素原子数1~3を含有するアルキルである)で表される置換ヒドロカルビルモノスルフィドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、置換ヒドロカルビルモノスルフィドは、n-ドデシル-2-ヒドロキシエチルスルフィド、1-(tert-ドデシルチオ)-2-プロパノール、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、置換ヒドロカルビルモノスルフィドは、1-(tert-ドデシルチオ)-2-プロパノールである。
【0040】
潤滑組成物はまた、分散剤またはその混合物を含んでもよい。適切な分散剤には、(i)ポリエーテルアミン、(ii)ボレート化スクシンイミド分散剤、(iii)非ホウ化スクシンイミド分散剤、(iv)ジアルキルアミン、アルデヒド、およびヒドロカルビル置換フェノールのマンニッヒ反応生成物、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、分散剤は、組成物全体の0重量%または0.01重量%~2.0重量%、0.05重量%~1.5重量%、または0.005重量%~1重量%、または0.05重量%~0.5重量%で存在してもよい。
【0041】
組成物中に含まれてもよい分散剤としては、油溶性ポリマー炭化水素主鎖を有するもの、および分散される粒子と関連可能な官能基を有するものが挙げられる。高分子炭化水素骨格は、750~1500ダルトンの範囲の重量平均分子量を有してもよい。例示的な官能基には、アミン、アルコール、アミド、およびしばしば架橋基を介してポリマー骨格に付着しているエステル極性部分が含まれる。分散剤の例としては、米国特許第3,697,574号および同第3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤、米国特許第4,234,435号および同第4,636,322号に記載の無灰スクシンイミド分散剤、米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号、および同第5,633,326号に記載のアミン分散剤、米国特許第5,936,041号、同第5,643,859、および同第5,627,259号に記載のコッホ分散剤、ならびに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号、および同第5,792,729号に記載
のポリアルキレンコハク酸イミド分散剤が挙げられる。
【0042】
発泡防止剤としても知られる消泡剤は、当技術分野で知られており、有機シリコーンおよび非シリコン発泡防止剤を含む。有機シリコーンの例としては、ジメチルシリコーンおよびポリシロキサンが挙げられる。非シリコン発泡防止剤の例としては、アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルとのコポリマー、アクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシルと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリエーテル、ポリアクリレート、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、消泡剤は、ポリアクリレートである。消泡剤は、組成物中に0.001重量%~0.012重量%、または0.004重量%、さらには0.001重量%~0.003重量%で存在してもよい。
【0043】
抗乳化剤は、当技術分野で知られており、エチレンオキシドもしくは置換エチレンオキシドと順次反応したプロピレンオキシド、エチレンオキシド、ポリオキシアルキレンアルコール、アルキルアミン、アミノアルコール、ジアミン、もしくはポリアミンの誘導体、またはそれらの混合物を含む。解乳化剤の例としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、解乳化剤は、ポリエーテルである。一実施形態では、解乳化剤は、オキシアルキル化フェノール樹脂ブレンドであってもよい。そのようなブレンドは、4-ノニルフェノール、エチレンオキシド、およびプロピレンオキシドを有するホルムアルデヒドポリマー、ならびに4-ノニルフェノールエチレンオキシドを有するホルムアルデヒドポリマーを含み得る。解乳化剤は、組成物中に0.002重量%~0.012重量%で存在してもよい。
【0044】
流動点降下剤は、当技術分野で知られており、無水マレイン酸-スチレンコポリマーのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、カルボン酸ビニルポリマー、およびジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテル、およびそれらの混合物を含む。
【0045】
潤滑組成物はまた、防錆剤を含んでもよい。適切な防錆剤には、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ヒドロカルビルアリールスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩、脂肪カルボン酸もしくはそのエステル、窒素含有カルボン酸のエステル、スルホン酸アンモニウム、イミダゾリン、アルコールもしくはエーテル、またはそれらの任意の組み合わせと反応したアルキル化コハク酸誘導体、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
アルキルリン酸の適切なヒドロカルビルアミン塩は、以下の式
【化8】
(式中、R
26およびR
27は、独立して水素、アルキル鎖、またはヒドロカルビルであり、通常はR
26およびR
27の少なくとも1つがヒドロカルビルであり、R
26およびR
27は、炭素原子数4~30、または8~25、または10~20、または13~19を含有し、R
28、R
29、およびR
30は、独立して、水素、炭素原子数1~30、または4~24、または6~20、または10~16のアルキル分岐鎖または直鎖アルキル鎖であり、R
28、R
29、およびR
30は、独立して、水素、アルキル分岐鎖もしくは
直鎖アルキル鎖であるか、またはR
28、R
29、およびR
30の少なくとも1つもしくは2つが水素である)で表されてもよい。
【0047】
R28、R29、およびR30に適切なアルキル基の例としては、ブチル、secブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、secヘキシル、n-オクチル、2-エチル、ヘキシル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル、エイコシル、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
一実施形態では、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、C14~C11第三級アルキル第一級アミンの混合物であるPrimene(登録商標)81R(Rohm&Haas社によって製造され、販売されている)とのC14~C18アルキル化リン酸の反応生成物である。
【0049】
ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩などの防錆剤を含んでもよい。これらは、エチレンジアミン、モルホリン、もしくはPrimene(登録商標)81R、またはそれらの混合物とのヘプチルまたはオクチルまたはノニルジチオリン酸の反応生成物であってもよい。
【0050】
ヒドロカルビルアリールスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩には、ジノニルナフタレンスルホン酸のエチレンジアミン塩が含まれてもよい。
【0051】
適切な脂肪カルボン酸またはそのエステルの例としては、グリセロールモノオレエートおよびオレイン酸が挙げられる。
【0052】
防錆剤は、潤滑油組成物の0、または0.02重量%~0.2重量%、0.03重量%~0.15重量%、0.04重量%~0.12重量%、もしくは0.05重量%~0.1重量%の範囲で存在してもよい。防錆剤は、単独でまたはそれらの混合物中で使用されてもよい。
【0053】
潤滑剤は、金属不活性化剤、またはそれらの混合物を含有してもよい。金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾチアゾール、またはジメルカプトチアジアゾールの誘導体から選択されてもよい。そのような誘導体の例としては、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、またはそのオリゴマー、ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、ヒドロカルビルチオ置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、またはそのオリゴマーが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのオリゴマーは、通常、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール単位の間に硫黄-硫黄結合を形成して、該チアジアゾール単位の2つもしくはそれより多くのオリゴマーを形成することによって形成する。適切なチアジアゾール化合物の例には、ジメルカプトチアジアゾール、2,5-ジメルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール、3,5-ジメルカプト-[1,2,4]-チアジアゾール、3,4-ジメルカプト-[1,2,5]-チアジアゾール、または4-5-ジメルカプト-[1,2,3]-チアジアゾールのうちの少なくとも1つが含まれる。通常は、容易に入手可能な材料、例えば、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールまたはヒドロカルビルチオ置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールが一般的に利用されている。異なる実施形態では、ヒドロカルビル置換基上の炭素原子数は、1~30、2~25、4~20、6~16、または8~10を含む。2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールは、2,5-ジオクチルジチオ-
1,3,4-チアジアゾール、または2,5-ジノニルジチオ-1,3,4-チアジアゾールであってもよい。金属不活性化剤は、腐食防止剤とも称されてよい。
【0054】
金属不活性化剤は、潤滑油組成物の0または0.001重量%~0.1重量%、0.01重量%~0.04重量%、または0.015重量%~0.03重量%の範囲で存在してもよい。金属不活性化剤はまた、組成物中に0.002重量%または0.004重量%~0.02重量%で存在してもよい。金属不活性化剤は、単独でまたはそれらの混合物で使用されてもよい。
【0055】
一実施形態では、本発明は、金属含有清浄剤をさらに含む潤滑組成物を提供する。いくつかの実施形態では、金属含有清浄剤は、カルシウムまたはマグネシウム清浄剤であってもよい。一実施形態では、金属含有清浄剤はまた、総塩基価が30~500mgKOH/g当量の範囲である過塩基性清浄剤であってもよい。別の実施形態では、金属含有清浄剤は、総塩基価が0~30、または0~10、さらには30以下、さらには10以下のmgKOH/g当量の中性清浄剤であってもよい。
【0056】
金属含有清浄剤は、硫黄不含フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート、およびそれらの混合物、またはそれらのホウ酸塩等価物から選択されてもよい。清浄剤は、ホウ酸などのホウ酸塩剤でホウ酸化されてもよく、例えば、ホウ酸塩過塩基性カルシウムまたはマグネシウムスルホン酸塩清浄剤、またはそれらの混合物である。清浄剤は、油圧組成物の0重量%~5重量%、または0.001重量%~1.5重量%、または0.005重量%~1重量%、または0.01重量%~0.5重量%で存在してもよい。
【0057】
一実施形態では、本明細書に開示される潤滑剤は、少なくとも1つの摩擦調整剤を含有してもよい。摩擦調整剤は、潤滑組成物の0重量%~3重量%、または0.02重量%~2重量%、または0.05重量%~1重量%で存在してもよい。
【0058】
本明細書で使用される場合、摩擦調整剤に関する用語「脂肪アルキル」または「脂肪」は、炭素原子数8~22の炭素鎖、典型的には直鎖の炭素鎖を意味する。あるいは、脂肪アルキルは、典型的にはβ位で分岐鎖しているモノ分岐鎖アルキル基であってもよい。モノ分岐鎖アルキル基の例には、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、または2-オクチルドデシルが含まれる。
【0059】
適切な摩擦調整剤の例としては、アミン、脂肪エステル、もしくは脂肪エポキシドの長鎖脂肪酸誘導体、カルボン酸とポリアルキレン-ポリアミンとの縮合生成物などの脂肪イミダゾリン、アルキルリン酸のアミン塩、脂肪ホスホン酸塩、脂肪亜リン酸塩、ホウ酸化リン脂質、ホウ酸化脂肪エポキシド、グリセロールエステル、ホウ酸グリセロールエステル、脂肪族アミン、アルコキシル化脂肪族アミン、ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン、ヒドロキシルおよびポリヒドロキシ脂肪アミン、ヒドロキシアルキルアミド、脂肪酸の金属塩、サリチル酸アルキルの金属塩、脂肪族オキサゾリン、脂肪エトキシル化アルコール、カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物、または脂肪族カルボン酸とグアニジン、アミノグアニジン、尿素、もしくはチオ尿素およびそれらの塩との反応生成物が挙げられる。
【0060】
潤滑組成物はまた、1つまたはそれより多くの粘度調整剤を含んでもよい。任意の既知の粘度調整剤が使用されてもよい。一実施形態では、本発明の潤滑組成物は、粘度調整剤としてポリ(メタ)アクリレートを実質的に含まないか、または完全に含まない。本発明における使用に適切な粘度調整剤(しばしば、粘度指数向上剤とも称される)には、スチレン-ブタジエンゴム、オレフィンコポリマー、水素化スチレン-イソプレンポリマー、
水素化ラジカルイソプレンポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、無水マレイン酸スチレンコポリマーのエステル、またはそれらの混合物を含むポリマー材料が含まれる。いくつかの実施形態では、粘度調整剤は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、オレフィンコポリマー、またはそれらの混合物である。粘度調整剤は、潤滑剤の0重量%~10重量%、0.5重量%~8重量%、1重量%~6重量%で存在してもよい。
【0061】
一実施形態では、潤滑組成物に使用される添加剤はすべて、無灰であってもよい。別の実施形態では、潤滑組成物は、遷移金属を含有する添加剤を不含してもよい。さらに別の実施形態では、潤滑組成物は、カルシウムが唯一の金属である添加剤を含んでもよい。
【0062】
一実施形態では、本発明は、(A)潤滑粘度の油と、(B)以下の式
【化9】
(式中、Rは、水素または炭素原子数3~9のアルキル基であり、Xは、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせである)で表される第1の添加剤(1)と、(C)以下の式
【化10】
(式中、R
1は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、R
2およびR
3は、それぞれ、炭素原子数3~20の炭化水素基を表し、X
2およびX
3は、それぞれ独立して、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせである)で表される第2の添加剤(2)と、(D)以下の式
【化11】
(式中、R
4、R
5、およびR
7は、それぞれ独立して、炭素原子数1~18の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、または炭素原子数5~18の分岐鎖もしくは非分岐鎖の飽和もしくは不飽和環状炭化水素基であり、R
6は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、X
4およびX
5は、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子である)で表される第3の添加剤(3)とを含む潤滑組成物を提供する。一実施形態では、少なくとも1つの硫黄原子が添加剤(3)に存在する。
【0063】
一実施形態では、添加剤(1)、添加剤(2)、および添加剤(3)は、潤滑組成物に少なくとも約200ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在してもよい。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、(A)潤滑粘度の油と、(B)耐摩耗添加剤パッケージとを含む潤滑組成物を提供し、耐摩耗添加剤パッケージが、以下の式
【化12】
(式中、Rは、水素または炭素原子数4個以下のアルキル基であり、Xは、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせである)で表される第1の添加剤(1)、以下の式
【化13】
(式中、R
1は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、R
2およびR
3は、それぞれ、炭素原子数3~20の炭化水素基を表し、X
2およびX
3は、それぞれ独立して、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせである)で表される第2の添加剤(2)、ならびに(D)以下の式
【化14】
(式中、R
4、R
5、およびR
7は、それぞれ独立して、炭素原子数1~18の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、または炭素原子数5~18の分岐鎖もしくは非分岐鎖の飽和もしくは不飽和環状炭化水素基であり、R
6は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、X
4およびX
5は、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子である)で表される第3の添加剤(3)からなる。
【0065】
一実施形態では、添加剤(1)、添加剤(2)、および添加剤(3)は、潤滑組成物に少なくとも約200ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在する。
【0066】
本発明はまた、油圧システム、タービンシステム、または循環油システムを潤滑する方法を提供し、方法は、油圧システム、タービンシステム、または循環油システムに潤滑組成物を供給することを含み、潤滑組成物が、(A)潤滑粘度の油と、
(B)耐摩耗添加剤パッケージとを含み、耐摩耗添加剤パッケージが、以下の式
【化15】
(式中、Rは、水素または炭素原子数3~9のアルキル基であり、Xは、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせである)で表される0.32~1.5部の第1の耐摩耗添加剤(1)と、以下の式
【化16】
(式中、R
1は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、R
2およびR
3は、それぞれ、炭素原子数3~20の炭化水素基を表し、X
2およびX
3は、それぞれ独立して、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせである)で表される0.5~2.5部の第2の耐摩耗添加剤(2)と、以下の式
【化17】
(式中、R
4、R
5、およびR
7は、それぞれ独立して、炭素原子数1~18の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、または炭素原子数5~18の分岐鎖もしくは非分岐鎖の飽和もしくは不飽和環状炭化水素基であり、R
6は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、X
4およびX
5は、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子である)で表される1部の第3の耐摩耗添加剤(3)からなる。
【0067】
一実施形態では、少なくとも1つの硫黄原子が、添加剤(3)に存在する。一実施形態では、添加剤パッケージは、組成物に少なくとも200ppmのリン含有量を提供するのに十分な量で存在する。
【0068】
一実施形態では、本発明の潤滑組成物は、油圧システム、タービンシステム、または循環油システムで使用するためのものである。油圧システムは、一般に、システムの様々な部分にエネルギーを伝達するために、圧力が流体、通常は油性の流体に加えられるデバイスまたは装置である。タービン潤滑油は、通常、蒸気タービンまたはガスタービンなどのタービン(またはタービンシステム)のギアまたは他の可動部品を潤滑するために使用される。循環油は、通常、それが循環するデバイスまたは装置に、またはそれらを介して熱を分配するために使用される。
【0069】
本発明の潤滑組成物は、好ましくは良好な抗乳化性、良好な加水分解安定性、および良
好な熱安定性を示す。本発明の3つの耐摩耗添加剤の組み合わせは、以下の特性の組み合わせを相乗的に提供する潤滑組成物を提供する:ASTM D1401で測定された3ml以下、さらには2ml以下、さらには1ml以下の油水エマルジョン;ASTM D2619の加水分解安定性試験における結果で、水の酸性度が4mg以下、さらには3mg以下、さらには3mg以下、さらには1mg以下のKOHであり、D130によって決定される銅定格が2Bまたはより良い;D2070によって測定された熱安定性で、銅棒定格が5以下、または5未満、さらには4以下、さらには4未満、鋼棒定格が1、総スラッジ含有量が25mg/100ml以下、さらには20mg/100ml以下、さらには15mg/100ml以下、さらには12mg/100ml以下である。
【実施例0070】
一連の油圧潤滑組成物を表1に要約されるように調製した。
【表1】
【0071】
そのように調製された潤滑組成物を試験して、ASTM D1401による抗乳化性、D2619による加水分解安定性(水酸性度)、ASTM D130による銅ストリップ定格、およびASTM D2070による熱安定性を評価した。結果を表2に要約する。
【表2】
【0072】
上記の材料のいくつかは、最終配合物中で相互作用する可能性があり、その結果、最終配合物の成分は、最初に添加されるものと異なる場合があることが知られている。意図された使用における本発明の潤滑組成物を使用する際に形成される生成物を含む、本明細書により形成される生成物は、簡単に説明できない場合がある。それにもかかわらず、その
ような修正および反応生成物はすべて、本発明の範囲内に含まれ、本発明は、上記の成分を混合することにより調製される潤滑組成物を包含する。
【0073】
上記で参照された文書のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。実施例において、または他に明示的に示されている場合を除き、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定するこの説明におけるすべての数値は、「約」という単語によって修飾されると理解されるべきである。特に明記しない限り、本明細書で言及される各化学物質または組成物は、異性体、副産物、誘導体、および商業グレードに存在すると通常理解される他のそのような材料を含有し得る商業グレードの材料であると解釈されるべきである。しかしながら、別段の指示がない限り、各化学成分の量は、市販の材料に慣例的に存在し得る任意の溶剤および希釈剤を除いて提示される。本明細書に記載の量、範囲、および比率の上限および下限は、独立して組み合わされてもよいことを理解されたい。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量とともに使用されてもよい。
【0074】
本発明がその好ましい実施形態に関連して説明されたが、本明細書を読めば、その様々な修正が当業者に明らかになることを理解されたい。したがって、本明細書で開示される本発明は、添付の特許請求の範囲内に収まるようにそのような修正を包含することを意図していることを理解されたい。
【0075】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
潤滑組成物であって、前記潤滑組成物は、
(A)潤滑粘度の油と、
(B)以下の式
【化18】
(式中、Rは、水素または炭素原子数3~9のアルキル基であり、Xは、酸素原子または硫黄原子である)で表される第1の添加剤(1)と、
(C)以下の式
【化19】
(式中、R
1
は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、R
2
およびR
3
は、それぞれ、炭素原子数3~20の炭化水素基を表し、X
2
およびX
3
は、それぞれ独立して、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせである)で表される第2の添加剤(2)と、
(D)以下の式
【化20】
(式中、R
4
、R
5
、およびR
7
は、それぞれ独立して、炭素原子数1~18の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、または炭素原子数5~18の分岐鎖もしくは非分岐鎖の飽和もしくは不飽和環状炭化水素基であり、R
6
は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、X
4
およびX
5
は、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子である)で表される第3の添加剤(3)とを含み、
添加剤(1)、添加剤(2)、および添加剤(3)が、前記潤滑組成物に少なくとも約200ppmのリンを提供するのに十分な量で前記潤滑組成物中に存在する、潤滑組成物。
(項2)
前記潤滑粘度の油がAPIグループI油を含む、上記項1に記載の潤滑組成物。
(項3)
前記潤滑粘度の油がAPIグループII油を含む、上記項1に記載の潤滑組成物。
(項4)
前記潤滑粘度の油がAPIグループIII油を含む、上記項1に記載の潤滑組成物。
(項5)
添加剤(1)において、Xが硫黄原子である、上記項1に記載の潤滑組成物。
(項6)
前記第1の添加剤、第2の添加剤、および第3の添加剤が、0.32~1.5部の前記第1の添加剤、0.5~2.5部の前記第2の添加剤、および1部の前記第3の添加剤の比率で存在する、上記項1に記載の潤滑組成物。
(項7)
酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、発泡防止剤、分散剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、清浄剤、乳化剤、流動点降下剤、粘度調整剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたはそれより多くの追加の添加剤をさらに含む、上記項1~6のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項8)
前記潤滑組成物が遷移金属を実質的に含まない、上記項1~7のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項9)
前記潤滑組成物がポリ(メタ)アクリレートを実質的に含まない、上記項1~8のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項10)
潤滑組成物であって、前記潤滑組成物は、
(A)潤滑粘度の油と、
(B)耐摩耗添加剤パッケージとを含み、前記耐摩耗添加剤パッケージが、以下の式
【化21】
(式中、Rは、水素または炭素原子数3~9のアルキル基であり、Xは、酸素原子または硫黄原子である)で表される0.32~1.5部の第1の耐摩耗添加剤(1)、以下の式
【化22】
(式中、R
1
は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、R
2
およびR
3
は、それぞれ、炭素原子数3~20の炭化水素基を表し、X
2
およびX
3
は、それぞれ独立して、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせである)で表される0.5~2.5部の第2の耐摩耗添加剤(2)、および以下の式
【化23】
(式中、R
4
、R
5
、およびR
7
は、それぞれ独立して、炭素原子数1~18の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、または炭素原子数5~18の分岐鎖もしくは非分岐鎖の飽和もしくは不飽和環状炭化水素基であり、R
6
は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、X
4
およびX
5
は、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子である)で表される1部の第3の耐摩耗添加剤(3)からなる、潤滑組成物。
(項11)
前記耐摩耗添加剤パッケージが、前記潤滑組成物に少なくとも約200ppmのリンを提供するのに十分な量で前記潤滑組成物中に存在する、上記項10に記載の潤滑組成物。
(項12)
前記潤滑組成物が、最大4重量%の酸化防止剤をさらに含む、上記項10または11に記載の潤滑組成物。
(項13)
最大2重量%の分散剤をさらに含む、上記項10~12のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項14)
最大5重量%の清浄剤をさらに含む、上記項10~13のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項15)
最大3重量%の摩擦調整剤をさらに含む、上記項10~14のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項16)
最大10重量%の粘度調整剤をさらに含む、上記項10~15のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項17)
最大0.1重量%の金属不活性化剤をさらに含む、上記項10~16のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項18)
最大3重量%の極圧剤をさらに含む、上記項10~17のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項19)
前記潤滑組成物が最大5重量%の前記耐摩耗添加剤パッケージを含む、上記項10~18のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項20)
X
2
およびX
3
の両方が酸素原子である、上記項10~18のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項21)
X
2
およびX
3
の両方が硫黄原子である、上記項10~18のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項22)
X
2
が酸素であり、X
3
が硫黄である、上記項10~18のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項23)
X
2
が硫黄であり、X
3
が酸素である、上記項10~18のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項24)
X
4
およびX
5
の両方が酸素原子である、上記項10~23のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項25)
X
4
およびX
5
の両方が硫黄原子である、上記項10~23のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項26)
X
4
が酸素であり、X
5
が硫黄である、上記項10~23のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項27)
X
4
が硫黄であり、X
5
が酸素である、上記項10~23のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項28)
油圧システム、タービンシステム、または循環油システムを潤滑する方法であって、前記方法は、前記油圧システム、タービンシステム、または循環油システムに潤滑組成物を供給することを含み、前記潤滑組成物が、
(A)潤滑粘度の油と、
(B)耐摩耗添加剤パッケージとを含み、前記耐摩耗添加剤パッケージが、以下の式
【化24】
(式中、Rは、水素または炭素原子数3~9のアルキル基であり、Xは、酸素原子または硫黄原子である)で表される0.32~1.5部の第1の耐摩耗添加剤(1)と、以下の式
【化25】
(式中、R
1
は、炭素原子数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、R
2
およびR
3
は、それぞれ、炭素原子数3~20の炭化水素基を表し、X
2
およびX
3
は、それぞれ独立して、酸素原子もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせである)で表される0.5~2.5部の第2の耐摩耗添加剤(2)と、以下の式
【化26】
(式中、R
6
、R
7
、およびR
9
は、それぞれ独立して、炭素原子数1~18の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和環状脂肪族炭化水素基、または炭素原子数5~18の分岐鎖もしくは非分岐鎖の飽和もしくは不飽和環状炭化水素基であり、R
8
は、炭素原子数1~8のアルキレン基であり、X
4
およびX
5
は、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子である)で表される1部の第3の耐摩耗添加剤(3)とからなる、方法。