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特開2023-99753治療用分子のT細胞送達のための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099753
(43)【公開日】2023-07-13
(54)【発明の名称】治療用分子のT細胞送達のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230706BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230706BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230706BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230706BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230706BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 5/38 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 15/12 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230706BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230706BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230706BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230706BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20230706BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20230706BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230706BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C07K16/46
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/18
A61P17/14
A61P25/00
A61P37/06
A61P7/06
A61P1/16
A61P27/16
A61P7/04
A61P9/00
A61P17/00
A61P37/02
A61P1/04
A61P7/00
A61P5/14
A61P11/00
A61P13/12
A61P3/10
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P21/04
A61P29/00
A61P17/06
A61P27/02
A61P5/38
A61P3/00
A61P15/12
A61P19/08
A61P25/02
C12N15/13
C12N15/12
C07K16/28
C07K16/30
C07K14/705
C12N5/0783
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085868
(22)【出願日】2023-05-25
(62)【分割の表示】P 2021011588の分割
【原出願日】2015-10-30
(31)【優先権主張番号】62/110,489
(32)【優先日】2015-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ヤンビン
(72)【発明者】
【氏名】ジューン カール エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】リュー シャオジュン
(57)【要約】
【課題】膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸を用いてT細胞を改変するための組成物、および方法を提供する。
【解決手段】スイッチ分子をコードする核酸、ならびに、可溶性融合タンパク質をコードする核酸および/または二重特異性抗体をコードする核酸を、T細胞を含む細胞の集団中に導入する段階であって、該T細胞が、該スイッチ分子および可溶性融合タンパク質または二重特異性抗体を一過性に発現する前記段階を含む。他の局面において、T細胞の組成物、および、がんまたは自己免疫疾患などの疾患または状態を処置する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ分子をコードする核酸を含む改変T細胞であって、
該スイッチ分子が、
サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン、または、シグナル伝達受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメイン
を含み、
該T細胞が、該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、前記改変T細胞。
【請求項2】
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインが、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の改変T細胞。
【請求項3】
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインが、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、CD27、ICOS、OX40、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の改変T細胞。
【請求項4】
活性化因子が、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである、請求項1記載の改変T細胞。
【請求項5】
前記核酸が、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む、請求項1記載の改変T細胞。
【請求項6】
標的部位が、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される腫瘍である、請求項1記載の改変T細胞。
【請求項7】
固形腫瘍部位へ向かう、請求項1記載の改変T細胞。
【請求項8】
腫瘍抗原へ向かう、請求項1記載の改変T細胞。
【請求項9】
腫瘍抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、抗体により認識される抗原、およびそれらの任意の断片、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項8記載の改変T細胞。
【請求項10】
腫瘍抗原が、p53、Ras、β-カテニン、CDK4、α-アクチニン-4、チロシナーゼ、TRP1/gp75、TRP2、gp100、メラン-A/MART1、ガングリオシド、PSMA、HER2、WT1、EphA3、EGFR、CD20、MAGE、BAGE、GAGE、NY-ESO-1、テロメラーゼ、サバイビン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項8記載の改変T細胞。
【請求項11】
活性化される、請求項1記載の改変T細胞。
【請求項12】
可溶性融合タンパク質をコードする核酸を含む改変T細胞であって、該可溶性融合タンパク質が、抗CD28 scFvを含む第1の結合ドメインと、抗PD-L1 scFvまたは抗TGFbRII scFvを含む第2の結合ドメインとを含む、前記改変T細胞。
【請求項13】
可溶性融合タンパク質が、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとの間にスペーサードメインをさらに含む、請求項12記載の改変T細胞。
【請求項14】
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸;ならびに
標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸
を含む改変T細胞であって、
該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、かつ該二重特異性抗体を分泌する、前記改変T細胞。
【請求項15】
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインが、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される、請求項14記載の改変T細胞。
【請求項16】
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインが、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項15記載の改変T細胞。
【請求項17】
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインが、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項14記載の改変T細胞。
【請求項18】
標的細胞抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、およびそれらの任意の断片からなる群より選択される、請求項14記載の改変T細胞。
【請求項19】
標的細胞抗原が、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)からなる群より選択される、請求項14記載の改変T細胞。
【請求項20】
活性化T細胞抗原が、CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、およびそれらの任意の断片からなる群より選択される、請求項14記載の改変T細胞。
【請求項21】
前記T細胞が、リガンドに対するスイッチ分子の結合によって活性化され、活性化が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、請求項14記載の改変T細胞。
【請求項22】
前記T細胞が、二重特異性抗体に対する結合によって活性化され、活性化が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、請求項14記載の改変T細胞。
【請求項23】
活性化因子が、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである、請求項20または21のいずれか一項記載の改変T細胞。
【請求項24】
標的部位が、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される腫瘍である、請求項20または21のいずれか一項記載の改変T細胞。
【請求項25】
固形腫瘍部位へ向かう、請求項14記載の改変T細胞。
【請求項26】
腫瘍抗原へ向かう、請求項14記載の改変T細胞。
【請求項27】
腫瘍抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、抗体により認識される抗原、およびそれらの任意の断片、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項26記載の改変T細胞。
【請求項28】
腫瘍抗原が、p53、Ras、β-カテニン、CDK4、α-アクチニン-4、チロシナーゼ、TRP1/gp75、TRP2、gp100、メラン-A/MART1、ガングリオシド、PSMA、HER2、WT1、EphA3、EGFR、CD20、MAGE、BAGE、GAGE、NY-ESO-1、テロメラーゼ、サバイビン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項26記載の改変T細胞。
【請求項29】
前記核酸のいずれか1つが、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む、請求項13記載の改変T細胞。
【請求項30】
スイッチ分子をコードする核酸、ならびに、
可溶性融合タンパク質をコードする核酸および二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つ
を含む改変T細胞であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、かつ該可溶性融合タンパク質および/または二重特異性抗体を分泌する、前記改変T細胞。
【請求項31】
スイッチ分子をコードする核酸を、改変T細胞を含む細胞の集団中に導入する段階であって、該スイッチ分子が、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含む、前記段階;ならびに
該細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、前記段階
を含む、因子を標的部位に送達するための方法。
【請求項32】
核酸を導入する段階が、核酸のエレクトロポレーションを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記細胞の集団が、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、精製されたT細胞集団、およびT細胞株からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記細胞の集団が末梢血単核細胞を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記細胞の集団が精製されたT細胞を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記核酸を導入する段階の前に、T細胞を活性化および増大させる段階をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項37】
T細胞が、抗CD3抗体および抗CD28抗体で活性化される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインが、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項39】
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインが、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、CD27、ICOS、OX40、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項40】
前記核酸が、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む、請求項31記載の方法。
【請求項41】
活性化因子が、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである、請求項31記載の方法。
【請求項42】
T細胞が腫瘍抗原に結合する、請求項31記載の方法。
【請求項43】
腫瘍抗原が、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるがんと関連する抗原である、請求項31記載の方法。
【請求項44】
細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階であって、T細胞がスイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子が、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)またはその断片を含む細胞外ドメインと、IL-12Rまたはその断片を含む細胞内ドメインとを含む、前記段階
を含む方法であって、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、
因子を標的部位に送達するための方法。
【請求項45】
T細胞を含む細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階であって、該T細胞が標的部位へ向かい、かつ、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子、および、標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体を一過性に発現する、前記段階;ならびに
該T細胞を標的部位で活性化する段階であって、該T細胞が活性化因子を分泌するように誘導される、前記段階
を含む、因子を標的部位に送達するための方法。
【請求項46】
T細胞を活性化する段階が、スイッチ分子の細胞外ドメインへのリガンドの結合を含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
T細胞を活性化する段階が、T細胞上の活性化T細胞抗原への二重特異性抗体の結合を含む、請求項45記載の方法。
【請求項48】
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインが、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項44または請求項45記載の方法。
【請求項49】
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインが、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項44または請求項45記載の方法。
【請求項50】
標的細胞抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、およびそれらの任意の断片からなる群より選択される、請求項45記載の方法。
【請求項51】
標的細胞抗原が、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)からなる群より選択される、請求項45記載の方法。
【請求項52】
活性化T細胞抗原が、CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、およびそれらの任意の断片からなる群より選択される、請求項45記載の方法。
【請求項53】
活性化因子が、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである、請求項44または請求項45記載の方法。
【請求項54】
対象に、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含むスイッチ分子をコードする核酸を含む改変T細胞の集団を投与する段階であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それにより疾患または状態を処置する、前記段階
を含む、疾患または状態を処置する方法。
【請求項55】
対象に、
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸、ならびに、
可溶性融合タンパク質をコードする核酸、および標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つ
を含む改変T細胞の集団を投与する段階であって、該T細胞が、該スイッチ分子ならびに可溶性融合タンパク質および/または二重特異性抗体を一過性に発現し、該T細胞の活性化が、標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それにより疾患または状態を処置する、前記段階
を含む、疾患または状態を処置する方法。
【請求項56】
疾患または状態が、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるがんである、請求項54または請求項55記載の方法。
【請求項57】
疾患または状態が、後天性免疫不全症候群(AIDS)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫病(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアック病-疱疹状皮膚炎(celiac sprue-dermatitis hepetiformis);慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性慢性関節炎(スティル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、これは全身性硬化症(SS)としても知られる)、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、ヴェーゲナー肉芽腫症、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される自己免疫疾患である、請求項54または請求項55記載の方法。
【請求項58】
T細胞を投与する段階が、標的の細胞または組織の溶解の誘導を含む、請求項54または請求項55記載の方法。
【請求項59】
その必要のある対象における疾患または状態の処置のための医薬の製造における、請求項1、12、または14のいずれか一項記載の改変T細胞の使用。
【請求項60】
スイッチ分子をコードする核酸をT細胞の集団中に導入する段階であって、
該スイッチ分子が、
サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン、または、シグナル伝達受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメイン
を含み、
該T細胞が、該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それにより該T細胞を作製する、前記段階
を含む、スイッチ分子を一過性に発現するT細胞を作製するための方法。
【請求項61】
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸、ならびに、
可溶性融合タンパク質をコードする核酸、および標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つ
を導入する段階であって、該T細胞が、該スイッチ分子ならびに可溶性融合タンパク質および/または二重特異性抗体を一過性に発現し、該T細胞の活性化が標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、前記段階
を含む、スイッチ分子および二重特異性抗体を一過性に発現するT細胞を作製するための方法。
【請求項62】
標的部位へ向かうようにT細胞を活性化する段階であって、該T細胞が該標的部位で活性化因子を分泌する、前記段階
をさらに含む、請求項60または請求項61記載の方法。
【請求項63】
T細胞の集団が、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、精製されたT細胞集団、およびT細胞株からなる群より選択される細胞内に含まれる、請求項60または請求項61記載の方法。
【請求項64】
末梢血単核細胞がT細胞の集団を含む、請求項63記載の方法。
【請求項65】
精製されたT細胞がT細胞の集団を含む、請求項63記載の方法。
【請求項66】
T細胞の集団が凍結保存されている、請求項60または請求項61記載の方法。
【請求項67】
凍結保存されたT細胞を融解する段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項68】
核酸がインビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む、請求項60または請求項61記載の方法。
【請求項69】
請求項60または請求項61に従って作製された改変T細胞を含む、組成物。
【請求項70】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項69記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願には、米国特許法第119(e)条(35 U.S.C. § 119(e))の下で、2015年1月31日に提出された米国仮特許出願第62/110,489号への優先権が与えられており、その出願はこれにより、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府の資金援助を受けて行われた研究または開発に関する陳述
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institute of Health)によって授与されたCA120409号の下に、政府の援助を受けて行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
遺伝子操作されたT細胞が、がんを処置するため、および免疫応答を誘導するために使用されている。しかし、CARで改変されたT細胞のみでは、がん、特に固形がんを効率的に処置するには十分でない場合がある。有効な腫瘍免疫療法は、免疫学的障害、例えば、有効な免疫応答を相殺するように協力して作用しうる、抵抗性を有する微小環境を育成する腫瘍の能力、および多量の免疫抑制機構の活性化によって妨害される。明らかな臨床戦略は、抗腫瘍機構を支援することであるが、臨床的成功の達成は限定されている。これらの臨床的失敗の基となる可能性がある機構には、免疫抑制活性、例えば、CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)またはナチュラルキラー(NK)細胞による悪性細胞殺傷の鈍化、同時に、悪性細胞の生存、浸潤、および伝播を促進する腫瘍誘発性(protumor)活性の両方を有しうる、いくつかの免疫細胞タイプの正当に評価されない特性が含まれる。
【0004】
固形腫瘍発生を育成する多様な細胞機構についての認識の拡大にもかかわらず、抗がん療法は、腫瘍内の急速に増殖する(新生物性)細胞を殺傷する、化学療法(CTX)および放射線療法(RT)を含む細胞傷害性様相に大幅に依存したままである。そのため、当技術分野には、T細胞ベースの養子免疫療法として、インビボでがんを処置し、免疫応答を誘導することができるT細胞を作製するための改良された方法に対する需要が存在する。
【発明の概要】
【0005】
1つの局面において、本発明は、スイッチ分子をコードする核酸を含む改変T細胞であって、該スイッチ分子が、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメイン、または、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞外ドメインを含み、該T細胞が、該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、前記改変T細胞を含む。
【0006】
1つの局面において、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインは、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。もう1つの局面において、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインは、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、CD27、ICOS、OX40、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。さらなる局面において、活性化因子は、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである。さらにもう1つの局面において、核酸は、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む。他の局面において、標的部位は、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される腫瘍である。またさらなる局面において、T細胞は、固形腫瘍部位または腫瘍抗原へ向かう。もう1つの局面において、腫瘍抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、抗体により認識される抗原、およびそれらの任意の断片、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。さらなる態様において、腫瘍抗原は、p53、Ras、β-カテニン、CDK4、α-アクチニン-4、チロシナーゼ、TRP1/gp75、TRP2、gp100、メラン-A/MART1、ガングリオシド、PSMA、HER2、WT1、EphA3、EGFR、CD20、MAGE、BAGE、GAGE、NY-ESO-1、テロメラーゼ、サバイビン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。さらにもう1つの局面において、T細胞は活性化される。
【0007】
本発明はまた、スイッチ分子をコードする核酸を含む改変T細胞であって、該スイッチ分子が、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)またはその断片を含む細胞外ドメインと、IL-12Rまたはその断片を含む細胞内ドメインとを含む、前記改変T細胞を特徴とする。
【0008】
さらに、スイッチ分子をコードする核酸を含む改変T細胞の集団であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子のそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する前記改変T細胞の集団が含まれる。
【0009】
本発明はまた、可溶性融合タンパク質をコードする核酸を含む改変T細胞であって、該可溶性融合タンパク質が、抗CD28 scFvを含む第1の結合ドメインと、抗PD-L1 scFvまたは抗TGFbRII scFvを含む第2の結合ドメインとを含む、前記改変T細胞も含む。1つの態様において、可溶性融合タンパク質は、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとの間にスペーサードメインをさらに含む。
【0010】
追加的に、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸;および、標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸を含む改変T細胞であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、かつ該二重特異性抗体を分泌する、前記改変T細胞が含まれる。
【0011】
1つの局面において、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインは、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される。もう1つの局面において、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインは、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。さらにもう1つの局面において、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインは、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。1つの態様において、標的細胞抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、およびそれらの任意の断片からなる群より選択される。他の態様において、標的細胞抗原は、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)からなる群より選択される。さらなる態様において、活性化T細胞抗原は、CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、およびそれらの任意の断片からなる群より選択される。さらに追加的な態様において、T細胞は、リガンドに対するスイッチ分子の結合によって活性化され、活性化は、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。追加的に、T細胞は、二重特異性抗体に対する結合によって活性化され、活性化は、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。追加的な態様において、活性化因子は、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである。さらなる態様において、標的部位は、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される腫瘍である。追加的に、他の態様において、T細胞は、固形腫瘍部位または腫瘍抗原へ向かう。腫瘍抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、抗体により認識される抗原、およびそれらの任意の断片、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるか、または、腫瘍抗原は、p53、Ras、β-カテニン、CDK4、α-アクチニン-4、チロシナーゼ、TRP1/gp75、TRP2、gp100、メラン-A/MART1、ガングリオシド、PSMA、HER2、WT1、EphA3、EGFR、CD20、MAGE、BAGE、GAGE、NY-ESO-1、テロメラーゼ、サバイビン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。これらの態様および他の態様において、前記核酸のいずれか1つは、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含みうる。
【0012】
本発明は、追加的に、スイッチ分子をコードする核酸、ならびに、可溶性融合タンパク質をコードする核酸および二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つを含む改変T細胞の集団であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、かつ該可溶性融合タンパク質および/または二重特異性抗体を分泌する、前記改変T細胞の集団を含む。
【0013】
本発明は、さらに、因子を標的部位に送達するための方法を含む。方法は、スイッチ分子をコードする核酸を、改変T細胞を含む細胞の集団中に導入する段階を含む。スイッチ分子は、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含む。細胞の集団が、その必要のある対象に投与され、ここで、T細胞はスイッチ分子を一過性に発現し、スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用は、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。1つの態様において、核酸を導入する段階は、核酸のエレクトロポレーションを含む。1つの局面において、細胞の集団は、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、精製されたT細胞集団、およびT細胞株からなる群より選択される。もう1つの局面において、細胞の集団は、末梢血単核細胞を含む。もう1つの局面において、細胞の集団は、精製されたT細胞を含む。他の局面において、方法は、核酸を導入する段階の前に、T細胞を活性化および増大させる段階をさらに含む。1つの態様において、T細胞は、抗CD3抗体および抗CD28抗体で活性化される。さらなる局面において、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインは、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。追加的な態様において、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインは、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、CD27、ICOS、OX40、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。他の態様において、核酸は、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む。他の態様において、活性化因子は、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである。さらなる態様において、T細胞は腫瘍抗原に結合する。追加的な態様において、腫瘍抗原は、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるがんと関連する抗原である。
【0014】
また、因子を標的部位に送達するための方法も、本発明に含まれる。方法は、細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階であって、T細胞がスイッチ分子を一過性に発現する前記段階を含む。スイッチ分子は、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)またはその断片を含む細胞外ドメインと、IL-12Rまたはその断片を含む細胞内ドメインとを含む。スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用は、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。
【0015】
本発明は、追加的に、因子を標的部位に送達するための方法を含む。方法は、T細胞を含む細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階であって、該T細胞が標的部位へ向かい、かつスイッチ分子を一過性に発現する前記段階を含む。スイッチ分子は、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメイン、および、標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体を含み、T細胞は、標的部位で活性化され、活性化因子を分泌するように誘導される。1つの態様において、T細胞を活性化する段階は、スイッチ分子の細胞外ドメインへのリガンドの結合を含む。もう1つの態様において、T細胞を活性化する段階は、T細胞上の活性化T細胞抗原への二重特異性抗体の結合を含む。
【0016】
また、疾患または状態を処置する方法も、本発明に含まれる。方法は、改変T細胞の集団を対象に投与する段階であって、該T細胞が、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含むスイッチ分子をコードする核酸を含む前記段階を含む。T細胞はスイッチ分子を一過性に発現し、スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用は、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それにより疾患または状態を処置する。
【0017】
また、対象において疾患または状態を処置する方法も、本発明に含まれる。方法は、対象に、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸、ならびに、可溶性融合タンパク質をコードする核酸、および標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つを含む改変T細胞の集団を投与する段階を含む。T細胞は、スイッチ分子ならびに可溶性融合タンパク質および/または二重特異性抗体を一過性に発現し、T細胞の活性化が標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それにより疾患または状態を処置する。ある態様において、疾患または状態は、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるがんである。他の態様において、疾患または状態は、後天性免疫不全症候群(AIDS)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫病(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアック病-疱疹状皮膚炎(celiac sprue-dermatitis hepetiformis);慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性慢性関節炎(スティル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、これは全身性硬化症(SS)としても知られる)、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、ヴェーゲナー肉芽腫症、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される自己免疫疾患である。ある特定の態様において、T細胞の投与は標的の細胞または組織の溶解の誘導を含む。
【0018】
さらに、スイッチ分子を一過性に発現するT細胞を作製するための方法が、本発明に含まれる。方法は、スイッチ分子をコードする核酸をT細胞の集団中に導入する段階であって、該スイッチ分子が、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含む前記段階を含む。T細胞はスイッチ分子を一過性に発現し、スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それによりT細胞を作製する。
【0019】
加えて、スイッチ分子および二重特異性抗体を一過性に発現するT細胞を作製するための方法が含まれる。方法は、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン、または、シグナル伝達受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸、ならびに、可溶性融合タンパク質をコードする核酸、および標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つを導入する段階を含む。T細胞は、スイッチ分子ならびに可溶性融合タンパク質および/または二重特異性抗体を一過性に発現し、T細胞の活性化が、標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。ある態様において、T細胞は標的部位へ向かい、該T細胞は、標的部位で活性化因子を分泌する。他の態様において、T細胞の集団は、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、精製されたT細胞集団、およびT細胞株からなる群より選択される細胞内に含まれる。他の態様において、末梢血単核細胞は、T細胞の集団を含む。さらなる態様において、精製されたT細胞は、T細胞の集団を含む。他の態様において、T細胞の集団は凍結保存され、本明細書に開示されるある方法において、凍結保存されたT細胞が融解される。
[本発明1001]
スイッチ分子をコードする核酸を含む改変T細胞であって、
該スイッチ分子が、
サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン、または、シグナル伝達受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメイン
を含み、
該T細胞が、該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、前記改変T細胞。
[本発明1002]
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインが、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1001の改変T細胞。
[本発明1003]
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインが、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、CD27、ICOS、OX40、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1001の改変T細胞。
[本発明1004]
活性化因子が、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである、本発明1001の改変T細胞。
[本発明1005]
前記核酸が、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む、本発明1001の改変T細胞。
[本発明1006]
標的部位が、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される腫瘍である、本発明1001の改変T細胞。
[本発明1007]
固形腫瘍部位へ向かう、本発明1001の改変T細胞。
[本発明1008]
腫瘍抗原へ向かう、本発明1001の改変T細胞。
[本発明1009]
腫瘍抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、抗体により認識される抗原、およびそれらの任意の断片、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1008の改変T細胞。
[本発明1010]
腫瘍抗原が、p53、Ras、β-カテニン、CDK4、α-アクチニン-4、チロシナーゼ、TRP1/gp75、TRP2、gp100、メラン-A/MART1、ガングリオシド、PSMA、HER2、WT1、EphA3、EGFR、CD20、MAGE、BAGE、GAGE、NY-ESO-1、テロメラーゼ、サバイビン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1008の改変T細胞。
[本発明1011]
活性化される、本発明1001の改変T細胞。
[本発明1012]
可溶性融合タンパク質をコードする核酸を含む改変T細胞であって、該可溶性融合タンパク質が、抗CD28 scFvを含む第1の結合ドメインと、抗PD-L1 scFvまたは抗TGFbRII scFvを含む第2の結合ドメインとを含む、前記改変T細胞。
[本発明1013]
可溶性融合タンパク質が、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとの間にスペーサードメインをさらに含む、本発明1012の改変T細胞。
[本発明1014]
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸;ならびに
標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸
を含む改変T細胞であって、
該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、かつ該二重特異性抗体を分泌する、前記改変T細胞。
[本発明1015]
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインが、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される、本発明1014の改変T細胞。
[本発明1016]
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインが、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1015の改変T細胞。
[本発明1017]
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインが、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1014の改変T細胞。
[本発明1018]
標的細胞抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、およびそれらの任意の断片からなる群より選択される、本発明1014の改変T細胞。
[本発明1019]
標的細胞抗原が、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)からなる群より選択される、本発明1014の改変T細胞。
[本発明1020]
活性化T細胞抗原が、CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、およびそれらの任意の断片からなる群より選択される、本発明1014の改変T細胞。
[本発明1021]
前記T細胞が、リガンドに対するスイッチ分子の結合によって活性化され、活性化が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、本発明1014の改変T細胞。
[本発明1022]
前記T細胞が、二重特異性抗体に対する結合によって活性化され、活性化が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、本発明1014の改変T細胞。
[本発明1023]
活性化因子が、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである、本発明1020または1021のいずれかの改変T細胞。
[本発明1024]
標的部位が、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される腫瘍である、本発明1020または1021のいずれかの改変T細胞。
[本発明1025]
固形腫瘍部位へ向かう、本発明1014の改変T細胞。
[本発明1026]
腫瘍抗原へ向かう、本発明1014の改変T細胞。
[本発明1027]
腫瘍抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、抗体により認識される抗原、およびそれらの任意の断片、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1026の改変T細胞。
[本発明1028]
腫瘍抗原が、p53、Ras、β-カテニン、CDK4、α-アクチニン-4、チロシナーゼ、TRP1/gp75、TRP2、gp100、メラン-A/MART1、ガングリオシド、PSMA、HER2、WT1、EphA3、EGFR、CD20、MAGE、BAGE、GAGE、NY-ESO-1、テロメラーゼ、サバイビン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1026の改変T細胞。
[本発明1029]
前記核酸のいずれか1つが、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む、本発明1013の改変T細胞。
[本発明1030]
スイッチ分子をコードする核酸、ならびに、
可溶性融合タンパク質をコードする核酸および二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つ
を含む改変T細胞であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、かつ該可溶性融合タンパク質および/または二重特異性抗体を分泌する、前記改変T細胞。
[本発明1031]
スイッチ分子をコードする核酸を、改変T細胞を含む細胞の集団中に導入する段階であって、該スイッチ分子が、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含む、前記段階;ならびに
該細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、前記段階
を含む、因子を標的部位に送達するための方法。
[本発明1032]
核酸を導入する段階が、核酸のエレクトロポレーションを含む、本発明1031の方法。
[本発明1033]
前記細胞の集団が、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、精製されたT細胞集団、およびT細胞株からなる群より選択される、本発明1031の方法。
[本発明1034]
前記細胞の集団が末梢血単核細胞を含む、本発明1033の方法。
[本発明1035]
前記細胞の集団が精製されたT細胞を含む、本発明1034の方法。
[本発明1036]
前記核酸を導入する段階の前に、T細胞を活性化および増大させる段階をさらに含む、本発明1031の方法。
[本発明1037]
T細胞が、抗CD3抗体および抗CD28抗体で活性化される、本発明1036の方法。
[本発明1038]
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインが、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1031の方法。
[本発明1039]
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインが、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、CD27、ICOS、OX40、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1031の方法。
[本発明1040]
前記核酸が、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む、本発明1031の方法。
[本発明1041]
活性化因子が、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである、本発明1031の方法。
[本発明1042]
T細胞が腫瘍抗原に結合する、本発明1031の方法。
[本発明1043]
腫瘍抗原が、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるがんと関連する抗原である、本発明1031の方法。
[本発明1044]
細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階であって、T細胞がスイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子が、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)またはその断片を含む細胞外ドメインと、IL-12Rまたはその断片を含む細胞内ドメインとを含む、前記段階
を含む方法であって、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、
因子を標的部位に送達するための方法。
[本発明1045]
T細胞を含む細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階であって、該T細胞が標的部位へ向かい、かつ、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子、および、標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体を一過性に発現する、前記段階;ならびに
該T細胞を標的部位で活性化する段階であって、該T細胞が活性化因子を分泌するように誘導される、前記段階
を含む、因子を標的部位に送達するための方法。
[本発明1046]
T細胞を活性化する段階が、スイッチ分子の細胞外ドメインへのリガンドの結合を含む、本発明1045の方法。
[本発明1047]
T細胞を活性化する段階が、T細胞上の活性化T細胞抗原への二重特異性抗体の結合を含む、本発明1045の方法。
[本発明1048]
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインが、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1044または本発明1045の方法。
[本発明1049]
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインが、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1044または本発明1045の方法。
[本発明1050]
標的細胞抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、およびそれらの任意の断片からなる群より選択される、本発明1045の方法。
[本発明1051]
標的細胞抗原が、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)からなる群より選択される、本発明1045の方法。
[本発明1052]
活性化T細胞抗原が、CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、およびそれらの任意の断片からなる群より選択される、本発明1045の方法。
[本発明1053]
活性化因子が、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである、本発明1044または本発明1045の方法。
[本発明1054]
対象に、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含むスイッチ分子をコードする核酸を含む改変T細胞の集団を投与する段階であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それにより疾患または状態を処置する、前記段階
を含む、疾患または状態を処置する方法。
[本発明1055]
対象に、
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸、ならびに、
可溶性融合タンパク質をコードする核酸、および標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つ
を含む改変T細胞の集団を投与する段階であって、該T細胞が、該スイッチ分子ならびに可溶性融合タンパク質および/または二重特異性抗体を一過性に発現し、該T細胞の活性化が、標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それにより疾患または状態を処置する、前記段階
を含む、疾患または状態を処置する方法。
[本発明1056]
疾患または状態が、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるがんである、本発明1054または本発明1055の方法。
[本発明1057]
疾患または状態が、後天性免疫不全症候群(AIDS)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫病(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアック病-疱疹状皮膚炎(celiac sprue-dermatitis hepetiformis);慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性慢性関節炎(スティル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、これは全身性硬化症(SS)としても知られる)、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、ヴェーゲナー肉芽腫症、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される自己免疫疾患である、本発明1054または本発明1055の方法。
[本発明1058]
T細胞を投与する段階が、標的の細胞または組織の溶解の誘導を含む、本発明1054または本発明1055の方法。
[本発明1059]
その必要のある対象における疾患または状態の処置のための医薬の製造における、本発明1001、1012、または1014のいずれかの改変T細胞の使用。
[本発明1060]
スイッチ分子をコードする核酸をT細胞の集団中に導入する段階であって、
該スイッチ分子が、
サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン、または、シグナル伝達受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、
シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメイン
を含み、
該T細胞が、該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それにより該T細胞を作製する、前記段階
を含む、スイッチ分子を一過性に発現するT細胞を作製するための方法。
[本発明1061]
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸、ならびに、
可溶性融合タンパク質をコードする核酸、および標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つ
を導入する段階であって、該T細胞が、該スイッチ分子ならびに可溶性融合タンパク質および/または二重特異性抗体を一過性に発現し、該T細胞の活性化が標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、前記段階
を含む、スイッチ分子および二重特異性抗体を一過性に発現するT細胞を作製するための方法。
[本発明1062]
標的部位へ向かうようにT細胞を活性化する段階であって、該T細胞が該標的部位で活性化因子を分泌する、前記段階
をさらに含む、本発明1060または本発明1061の方法。
[本発明1063]
T細胞の集団が、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、精製されたT細胞集団、およびT細胞株からなる群より選択される細胞内に含まれる、本発明1060または本発明1061の方法。
[本発明1064]
末梢血単核細胞がT細胞の集団を含む、本発明1063の方法。
[本発明1065]
精製されたT細胞がT細胞の集団を含む、本発明1063の方法。
[本発明1066]
T細胞の集団が凍結保存されている、本発明1060または本発明1061の方法。
[本発明1067]
凍結保存されたT細胞を融解する段階をさらに含む、本発明1066の方法。
[本発明1068]
核酸がインビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む、本発明1060または本発明1061の方法。
[本発明1069]
本発明1060または本発明1061に従って作製された改変T細胞を含む、組成物。
[本発明1070]
薬学的に許容される担体をさらに含む、本発明1069の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の好ましい態様の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことにより、さらに良く理解されるであろう。本発明を実例で説明するために、現時点で好ましい態様を図面において示している。しかし、本発明は、図面中に示されている態様の厳密な配置および手段には限定されないことが理解されるべきである。
【0021】
図1】TGF-β受容体からIL-12受容体へスイッチングする、スイッチ分子の構築を示す説明図である。
図2】T細胞中にエレクトロポレーションされた、PD1から4-1BBへのスイッチ分子RNA構築物の説明図を示す。
図3】PD1-4-1BBスイッチ分子およびCD19 CAR RNAのT細胞中へのコエレクトロポレーション後の、T細胞におけるPD1スイッチ分子の発現およびCAR発現を示すフローグラフのパネルである。
図4】OKT3刺激された、TGF-bR-IL-12Rスイッチ分子RNAのエレクトロポレーションを受けたT細胞のIFN-γ分泌を示すグラフである。IL-12シグナル伝達が、TGFbR-IL-12Rスイッチ分子RNAのT細胞中へのエレクトロポレーションによって誘導された。
図5】K562によって刺激されたNK細胞のIFN-γ分泌を示す。IL-12シグナル伝達が、TGFbR-IL12Rスイッチ分子RNAのNK細胞中へのエレクトロポレーションによって誘導された。
図6】TGFβの存在下での、TGFbR-IL-12Rスイッチ分子を含有するRNA構築物をT細胞にエレクトロポレーションした後の、pStat4の上方制御によるTGFbからIL-12へのシグナル活性化のスイッチを示すグラフである。
図7】スイッチ分子RNA構築物をT細胞にエレクトロポレーションした後の、TGFbで刺激されたT細胞のpSmadの下方制御による、TGFbからCD28への(aTGFbII-1412)シグナル、およびTGFbからIL-12への(TGFbR-IL-12R)シグナルのスイッチを示すグラフである。ドミナントネガティブTGF-β受容体(DNTGFb)のRNAを、対照として使用した。
図8】TGFbR-IL-12Rが、ドミナントTGFbRII(DNTGFbR)のように効率的に、TGF-βシグナル伝達を遮断したことを示すグラフのパネルである。
図9】二重特異性scFv TGFbR-CD28(aTGFbRII-1-1412)が、ドミナントTGFbRII(DNTGFbR)のように効率的に、TGF-βシグナル伝達を遮断したことを示すグラフのパネルである。
図10】TGFbR-CD28スイッチ分子(aTGFbR-1-1412)を発現するT細胞の、Treg抑制に対する抵抗性の増加を示すグラフのパネルである。
図11】誘導されたTreg(iTreg)におけるFoxp3発現を示すグラフのパネルである。
図12】iTreg(PMA刺激)のサイトカイン産生の減少を示すグラフのパネルである。
図13】iTregによるエフェクターT細胞(Teff)の増殖の抑制を示すグラフのパネルである。
図14】Foxp3発現の減少によって証明された、aTGFbR-3-1412またはTGFbR-IL-12Rのいずれかを発現するT細胞のTreg誘導の低減を示すグラフのパネルである。
図15】Foxp3発現の減少によって証明された、aTGFbR-3-1412またはTGFbR-IL-12Rのいずれかを発現するT細胞から誘導されたTregの抑制性機能の低減を示すグラフのパネルである。
図16A】Bis-RNAのエレクトロポレーションを受けたT細胞の、T細胞活性化および腫瘍殺傷能力の増加を示すフローグラフのパネルである。T細胞に、指定通りのさまざまな量(μg RNA/0.1 ml T細胞)のブリナツモマブBis-RNA(Bis-RNA)またはCD19 CAR RNA(CAR RNA)のいずれかをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの18時間後に、Bis-RNAまたはCAR RNAのいずれかを有するT細胞を、同等数のGFP RNAのエレクトロポレーションを受けたT細胞(GFP-T)の添加を伴うかまたは伴わずに、CD19陽性細胞株で刺激し、CD107a発現について評価した。
図16B】Bis-RNAエレクトロポレーション後の、IFN-γおよびグランザイムBの発現を示すグラフのパネルである。上記のT細胞のエレクトロポレーションの18時間後に、エレクトロポレーションを受けたT細胞を、IFN-γおよびグランザイムBの細胞内染色に供した(図2B)。
図16C】IFN-γのELISA検出を示すグラフである。IFN-γについてのELISAを、CD19陽性細胞(Nalm6、K562-CD19、およびRaji)またはCD19陰性(K562)細胞株でのT細胞の一晩刺激後に行った。
図16D】Bis-RNAのエレクトロポレーションおよび発現後の、T細胞の特異性を示すグラフである。T細胞に、ブリナツモマブBis-RNA(Bis-RNA)またはCD19bbz CAR RNA(CAR RNA)のいずれかを、1、5、もしくは10μg/0.1 mlのT細胞のRNA用量でエレクトロポレーションするか、または、5μgの各Bis-RNAおよびCAR RNA(Bis-RNA+CAR RNA)をコエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの18時間後に、溶解活性を、指定されたエフェクター:標的比で、4時間のフローベース細胞傷害性Tリンパ球アッセイで評価した。
図17】T細胞中にエレクトロポレーションした可溶性融合タンパク質RNAを列挙する表である。
図18】抗PD-L1 scFvおよび抗CD28 scFvを用いた二重特異性抗体の構築を示す説明図である。
図19A図3および図5に示されたさまざまなRNAのエレクトロポレーションを受け、腫瘍細胞とのインキューションによって活性化されたT細胞による、IL-2産生を示すグラフである。
図19B図3および図5に示されたさまざまなRNAのエレクトロポレーションを受け、腫瘍細胞とのインキューションによって活性化されたT細胞による、IFN-γ産生を示すグラフである。
図20】抗TGFb受容体II scFvおよび抗CD28 scFvを用いた二重特異性抗体の構築を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
定義
別に定める場合を除き、本明細書で用いる技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されたものと同様または同等な任意の方法および材料を本発明の試験のために実地に用いることができるが、本明細書では好ましい材料および方法について説明する。本発明の説明および特許請求を行う上では、以下の専門用語を用いる。
【0023】
また、本明細書中で用いる専門用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、限定的であることは意図しないことも理解される必要がある。
【0024】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、本明細書において、その冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指して用いられる。一例として、「1つの要素」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0025】
量、時間的長さなどの測定可能な値に言及する場合に本明細書で用いる「約」は、特定された値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、なおより好ましくは±0.1%のばらつきを範囲に含むものとするが、これはそのようなばらつきが、開示された方法を実施する上で妥当なためである。
【0026】
「活性化因子」という用語は、免疫モジュレート分子のことを指す。活性化因子は、T細胞または他の免疫細胞を結合、活性化、または刺激して、それらの活性をモジュレートしうる。活性化因子は、さらに、膜貫通領域を欠如するなど、細胞からの分泌が可能な形態である。いくつかの態様において、活性化因子は、抗体、可溶性サイトカイン、可溶性ケモカイン、成長因子、またはそれらの機能的断片もしくはバリアントから選択される。
【0027】
「抗体」という用語は、本明細書で用いる場合、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子のことを指す。抗体は、天然供給源または組換え供給源に由来するインタクトな免疫グロブリンであってもよく、インタクトな免疫グロブリンの免疫応答部分であってもよい。抗体は典型的には、免疫グロブリン分子のテトラマーである。テトラマーは天然に存在してもよく、または一本鎖抗体もしくは抗体断片から再構築されてもよい。抗体にはダイマーも含まれ、それらは天然に存在してもよく、または一本鎖抗体もしくは抗体断片から構築されてもよい。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab')2、さらには一本鎖抗体(scFv)、ヒト化抗体およびヒト抗体を含む、種々の形態で存在しうる(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York;Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0028】
「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体のある領域のことを指し、インタクトな抗体の抗原決定可変領域のことも指す。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片、直鎖状抗体、scFv抗体、標的に対する十分な親和性を示すVLドメインまたはVHドメインのいずれかで構成される単一ドメイン抗体、例えばラクダ科動物(camelid)抗体(Riechmann, 1999, Journal of Immunological Methods 231:25-38)など、および抗体断片から形成される多重特異性抗体が非限定的に含まれる。抗体断片はまた、ヒト抗体もしくはヒト化抗体、またはそのヒト抗体もしくはヒト化抗体の断片も含む。
【0029】
「抗体重鎖」とは、本明細書で用いる場合、その天然型高次構造にあるすべての抗体分子に存在する2種類のポリペプチドのうち、長い方のことを指す。
【0030】
「抗体軽鎖」とは、本明書で用いる場合、その天然型高次構造にあるすべての抗体分子に存在する2種類のポリペプチドのうち、短い方のことを指す。α軽鎖およびβ軽鎖とは、2種の主要な抗体軽鎖アイソタイプのことを指す。
【0031】
「合成抗体」とは、本明細書で用いる場合、組換えDNA技術を用いて作製される抗体、例えば、本明細書に記載されたようなバクテリオファージによって発現される抗体などを意味する。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって作製される抗体であって、そのDNA分子が抗体タンパク質またはその抗体を指定するアミノ酸配列を発現し、そのDNA配列またはアミノ酸配列が、利用可能であって当技術分野において周知であるDNA配列またはアミノ酸配列の合成技術を用いて得られるような抗体も意味するとみなされるべきである。
【0032】
「抗原」または「Ag」という用語は、本明細書で用いる場合、免疫応答を誘発する分子と定義される。この免疫応答には、抗体産生、または特異的免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両方が含まれうる。当業者は、事実上すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原としての役を果たしうることを理解するであろう。その上、抗原が組換えDNAまたはゲノムDNAに由来してもよい。当業者は、免疫応答を惹起するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、それ故に、本明細書中でその用語が用いられる通りの「抗原」をコードすることを理解するであろう。その上、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことも理解するであろう。本発明が複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を非限定的に含むこと、およびこれらのヌクレオチド配列が所望の免疫応答を惹起するさまざまな組み合わせで並べられていることは直ちに明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要が全くないことも理解するであろう。抗原を合成して作製することもでき、または生物試料から得ることもできることは直ちに明らかである。そのような生物試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞または生体液が非限定的に含まれうる。
【0033】
本明細書で用いる場合、「自己」という用語は、後にその個体に再び導入される、同じ個体に由来する任意の材料を指すものとする。
【0034】
「同種」とは、同じ種の異なる動物に由来する移植片のことを指す。
【0035】
「異種」とは、異なる種の動物に由来する移植片のことを指す。
【0036】
「二重特異性抗体」とは、本明細書で用いる場合、少なくとも2種の異なる抗原エピトープに対して結合特異性を有する抗体のことを指す。1つの態様において、エピトープは、同じ抗原由来である。もう1つの態様において、エピトープは、2種の異なる抗原由来である。二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、二重特異性抗体は、2種の免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアの共発現を用いて組み換え生産することができる。例えば、Milstein et al. (1983) Nature 305: 537-39を参照されたい。あるいは、二重特異性抗体は、化学的連結を用いて調製することができる。例えば、Brennan et al. (1985) Science 229:81を参照されたい。二重特異性抗体は、二重特異性抗体断片を含む。例えば、Holliger et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6444-48、Gruber et al. (1994) J. Immunol. 152:5368を参照されたい。
【0037】
「二重特異性」とは、本明細書で用いる場合、少なくとも2種の異なる結合エピトープに対して結合特異性を有する分子のことを指す。1つの態様において、エピトープは、同じ結合パートナー由来である。もう1つの態様において、エピトープは、2種の異なる結合パートナー由来である。異なるエピトープに対して二重特異性を有する分子は、二重特異性抗体を含みうる。
【0038】
「がん」という用語は、本明細書で用いる場合、異常細胞の急速かつ制御不能な増殖を特徴とする疾患と定義される。がん細胞は局所的に広がることもあれば、または血流およびリンパ系を通じて身体の他の部分に広がることもある。さまざまながんの例には、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膵臓がん、大腸がん、腎臓がん、肝臓がん、脳がん、リンパ腫、白血病、肺がん、甲状腺がんなどが非限定的に含まれる。
【0039】
本明細書で用いる場合、「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意に影響することもそれを有意に変化させることもないアミノ酸改変を指すことを意図している。そのような保存的改変には、アミノ酸の置換、付加および欠失が含まれる。改変は、当技術分野において公知の標準的な手法、例えば部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性突然変異誘発などによって、本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基によって置き換えられるもののことである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において明確に定められている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。このため、本発明の抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基によって置き換えることができ、改変された抗体を、本明細書に記載の機能アッセイを用いて、抗原と結合する能力に関して試験することができる。
【0040】
「共刺激リガンド」とは、この用語が本明細書で用いられる場合、T細胞上のコグネイト共刺激分子と特異的に結合し、それにより、例えば、ペプチドが負荷されたMHC分子のTCR/CD3複合体への結合によって与えられる一次シグナルに加えて、増殖、活性化、分化などを非限定的に含むT細胞応答を媒介するシグナルも与えることのできる、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上の分子が含まれる。共刺激リガンドには、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞内接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、およびB7-H3と特異的に結合するリガンドが非限定的に含まれる。共刺激リガンドはまた、とりわけ、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3などの、ただしこれらに限定されない、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体、およびCD83と特異的に結合するリガンドも範囲に含む。
【0041】
「共刺激分子」とは、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、増殖などの、ただしこれに限定されない、T細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上のコグネイト結合パートナーのことを指す。共刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が非限定的に含まれる。
【0042】
「~に由来する」という用語は、由来する物質が供給源と関連付けられるように、特定の供給源から生成される、合成される、または生じることを指す。由来する物質はその特定の供給源と同一である必要はない。1つの態様において、ある抗原はあるタンパク質に由来する。もう1つの態様において、ある一本鎖可変断片はあるモノクローナル抗体に由来する。
【0043】
「エレクトロポレーションを行う」、「エレクトロポレーション」、「エレクトロポレーションを受けた」という用語は、細胞原形質膜に対してその透過性を高めるために電場が印加される過程のことを指す。特定の持続時間および形状のパルスが細胞の細胞膜に印加されて、核酸が細胞に導入される。
【0044】
「有効量」または「治療的有効量」は、本明細書において互換的に用いられ、特定の生物学的結果を達成するために有効な、本明細書に記載するような化合物、製剤、材料または組成物の量のことを指す。そのような結果には、当技術分野における好適な任意の手段によって判定される、ウイルス感染の阻害が非限定的に含まれうる。
【0045】
「コードする」とは、所定のヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または所定のアミノ酸配列のいずれか、およびそれに起因する生物学的特性を有する、生物過程において他のポリマーおよび高分子の合成のためのテンプレートとして働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列の固有の特性のことを指す。すなわち、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって細胞または他の生体系においてタンパク質が産生される場合、そのタンパク質をコードする。mRNA配列と同一であって通常は配列表として提示されるヌクレオチド配列を有するコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のためのテンプレートとして用いられる非コード鎖の両方を、タンパク質、またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードすると称することができる。
【0046】
本明細書で用いる場合、「内因性」とは、生物体、細胞、組織もしくは系の内部に由来するか、またはそれらの内部で産生される、任意の材料のことを指す。
【0047】
本明細書で用いる場合、「外因性」という用語は、生物体、細胞、組織もしくは系の外部から導入されるか、またはそれらの外部で産生される、任意の材料のことを指す。
【0048】
「膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン」という語句は、細胞の外側の膜受容体の断片または一部分のことを指す。膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインは、リガンド結合ドメインまたはリガンド認識ドメインを含む。細胞外ドメインは、膜受容体の膜貫通ドメインを含んでもよいし、または含まなくてもよい。
【0049】
本明細書で用いる場合、「増大させる」および「増大」という用語は、T細胞などの細胞の増殖または増加のことを指す。
【0050】
「発現」という用語は、本明細書で用いる場合、そのプロモーターによって作動する特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0051】
「発現ベクター」とは、発現させようとするヌクレオチド配列と機能的に連結した発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターのことを指す。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用エレメントを含む;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給されうる。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み入れたコスミド、プラスミド(例えば、裸のもの、またはリポソーム中に含まれるもの)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)といった、当技術分野において公知であるすべてのものが含まれる。
【0052】
「相同な」とは、本明細書で用いる場合、2つのポリマー分子の間、例えば、2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子などの2つの核酸分子の間、または2つのポリペプチド分子の間のサブユニット配列同一性のことを指す。2つの分子の両方においてあるサブユニット位置が同じ単量体サブユニットで占められているならば;例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおいてある位置がアデニンによって占められているならば、それらはその位置で相同である。2つの配列間の相同性は、一致するかまたは相同な位置の数の直接的な関数である;例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、長さが10サブユニットであるポリマーにおける5つの位置)が相同であるならば、2つの配列は50%相同である;位置の90%(例えば、10のうち9)が一致するかまたは相同であるならば、2つの配列は90%相同である。
【0053】
「同一性」とは、本明細書で用いる場合、2つのポリマー分子の間、特に、2つのポリペプチド分子の間などの2つのアミノ酸分子の間の、サブユニット配列同一性のことを指す。2つのアミノ酸配列が、同じ位置に同じ残基を有する場合;例えば、2つのポリペプチド分子のそれぞれにおいてある位置がアルギニンによって占められているならば、それらはその位置で同一である。2つのアミノ酸配列がアラインメントにおいて同じ位置で同じ残基を有する同一性または程度は、しばしばパーセンテージとして表現される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致するかまたは同一の位置の数の直接的な関数である;例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、長さが10アミノ酸であるポリマーにおける5つの位置)が同一であるならば、2つの配列は50%同一である;位置の90%(例えば、10のうち9)が一致するかまたは同一であるならば、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0054】
「免疫学的有効量」、「抗免疫応答有効量」、「免疫応答阻害有効量」または「治療量」という語句は、対象に投与されることになる本発明の組成物の量のことを指し、この量は、対象(患者)の年齢、体重、免疫応答、疾患/状態の種類、および健康状態の個々の違いを考慮して、その対象において所望の結果が得られるように、任意で科学者と相談した上で、医師によって決定される。
【0055】
「シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメイン」という語句は、少なくとも1つのエフェクター機能の活性化の原因である、細胞の内側の活性化受容体の断片または一部分のことを指す。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特化した機能のことを指す。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性、またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であろう。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達して、細胞が特化した機能を遂行するように導く、タンパク質の一部分のことを指す。シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインは、シグナル伝達ドメイン、タンパク質相互作用ドメイン、酵素ドメイン、またはそれらの組み合わせを含みうる。通常は細胞内シグナル伝達ドメインの全体が使用されうるが、多くの場合には、その鎖全体を用いることは必要でない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮部分が用いられる範囲内において、そのような短縮部分は、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、無傷の鎖の代わりに用いることができる。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、それ故に、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な、細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短縮部分を含むものとする。細胞内ドメインは、活性化受容体の膜貫通ドメインを含んでもよいし、または含まなくてもよい。
【0056】
本明細書で用いる場合、「説明材料(instructional material)」には、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために用いうる、刊行物、記録、略図または他の任意の表現媒体が含まれる。本発明のキットの説明材料は、例えば、本発明の核酸、ペプチドおよび/もしくは組成物を含む容器に添付してもよく、または核酸、ペプチドおよび/もしくは組成物を含む容器と一緒に出荷してもよい。または、説明材料および化合物がレシピエントによって一体として用いられることを意図して、説明材料を容器と別に出荷してもよい。
【0057】
「単離された」とは、天然の状態から変更されるかまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きた動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然の状態で共存する物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは、「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することもでき、または例えば宿主細胞などの非ネイティブ性環境で存在することもできる。
【0058】
「膜受容体」という語句は、T細胞またはNK細胞の表面上に見出される任意の受容体のことを指す。膜受容体には、ホルモン、サイトカイン、成長因子、細胞認識分子に対する受容体、または他のシグナル伝達受容体が含まれうる。膜受容体の例示的な例には、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD4、CD8、CD28、およびCD137が非限定的に含まれる。
【0059】
「改変された」という用語は、本明細書で用いる場合、本発明の分子または細胞の状態または構造が変化していることを意味する。分子は、化学的、構造的および機能的を含む、多くの方法で改変することができる。細胞は核酸の導入によって改変することができる。
【0060】
「モジュレートすること」という用語は、本明細書で用いる場合、処置もしくは化合物の非存在下でのその対象における反応のレベルと比較して、および/または他の点では同一であるが処置を受けていない対象における反応のレベルと比較して、対象における反応のレベルの検出可能な増加または減少を媒介することを意味する。この用語は、対象、好ましくはヒトにおいて、ネイティブ性のシグナルまたは反応を擾乱させるか、および/またはそれに影響を及ぼして、それにより、有益な治療反応を媒介することを範囲に含む。
【0061】
本発明に関連して、一般的に存在する核酸塩基に関しては以下の略号を用いる。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0062】
別に指定する場合を除き、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互に縮重型であって、同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチドが含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句には、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が一部の型においてイントロンを含みうる限り、イントロンも含まれうる。
【0063】
「機能的に連結した」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の、後者の発現を結果的にもたらす機能的連結のことを指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列との機能的関係の下で配置されている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と機能的に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼすならば、プロモーターはコード配列と機能的に連結している。一般に、機能的に連結したDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結することが必要な場合には、同一のリーディングフレーム内にある。
【0064】
免疫原性組成物の「非経口的」投与には、例えば、例えば、皮下(s.c)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)または胸骨内の注射法または注入法が含まれる。
【0065】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で用いる場合、ヌクレオチドの連鎖と定義される。その上、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で用いる核酸およびポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、それらはモノマー性「ヌクレオチド」に加水分解されうるという一般知識を有する。モノマー性ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解されうる。本明細書で用いるポリヌクレオチドには、組換え手段、すなわち通常のクローニング技術およびPCR(商標)などを用いて組換えライブラリーまたは細胞ゲノムから核酸配列をクローニングすること、および合成手段を非限定的に含む、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られる、すべての核酸配列が非限定的に含まれる。
【0066】
本明細書で用いる場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互換的に用いられ、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基で構成される化合物のことを指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成しうるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって相互に結合した2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書で用いる場合、この用語は、例えば、当技術分野において一般的にはペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも称される短鎖、ならびに当技術分野において一般にタンパク質と称される長鎖の両方のことを指し、それらには多くの種類がある。「ポリペプチド」には、いくつか例を挙げると、例えば、生物学的活性断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0067】
「プロモーター」という用語は、本明細書で用いる場合、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始させるために必要な、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列と定義される。
【0068】
本明細書で用いる場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列と機能的に連結した遺伝子産物の発現のために必要とされる核酸配列を意味する。ある場合には、この配列はコアプロモーター配列であってよく、また別の場合には、この配列が、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列および他の制御エレメントをも含んでもよい。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的な様式で遺伝子産物を発現させるものであってもよい。
【0069】
「構成性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、細胞のほとんどまたはすべての生理学的条件下で、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0070】
「誘導性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、実質的にはそのプロモーターに対応する誘導物質が細胞内に存在する場合にのみ、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0071】
「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、実質的には細胞がそのプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0072】
「シグナル伝達経路」とは、細胞の1つの部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達に役割を果たす種々のシグナル伝達分子間の生化学的関係のことを指す。「細胞表面受容体」という語句は、シグナルを受け取って、細胞の原形質膜をまたいでシグナルを伝達することができる分子および分子の複合体のことを指す。「細胞表面受容体」の一例はヒトCD3またはCD28である。
【0073】
「シグナル伝達受容体」という用語は、本明細書で用いる場合、リガンドと相互作用して、シグナル伝達、タンパク質相互作用、酵素活性、またはそれらの組み合わせなどの応答を創出する、細胞内部のイベントの生化学的連鎖を引き起こす、膜受容体のことを指す。シグナル伝達受容体の例示的な例には、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、およびCD137が非限定的に含まれる。
【0074】
「可溶性融合タンパク質」という用語は、本明細書で用いる場合、異なる結合特異性を有する2種の異なる結合ドメインをもつ融合物のことを指す。可溶性融合タンパク質は、2種の異なるリガンド、受容体、抗原、または分子に結合することができる。例示的な態様において、可溶性融合タンパク質は、活性化T細胞上の少なくとも1つの分子に結合する特異性を有する1つの結合ドメイン、および標的細胞上の少なくとも1つの分子に結合する特異性を有する第2の結合ドメインを含む。
【0075】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書で用いる場合、試料中に存在するコグネイト結合パートナー(例えば、T細胞上に存在する刺激分子および/または共刺激分子)タンパク質を認識してそれと結合する抗体またはリガンドが、試料中の他の分子を実質的に認識せず、それと結合することもないことを意味する。
【0076】
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がそのコグネイトリガンドと結合して、それにより、TCR/CD3複合体を介するシグナル伝達などの、ただしこれには限定されないシグナル伝達イベントを媒介することによって誘導される、一次応答のことを意味する。刺激は、TGF-βの下方制御、および/または細胞骨格構造の再構築などのような、ある種の分子の発現の改変を媒介することができる。
【0077】
「刺激分子」とは、この用語が本明細書で用いられる場合、抗原提示細胞上および/または腫瘍細胞上に存在するコグネイト刺激リガンドに特異的に結合する、T細胞上の分子のことを意味する。
【0078】
「刺激リガンド」は、本明細書で用いる場合、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上または腫瘍細胞上に存在する場合に、T細胞上のコグネイト結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と称する)と特異的に結合して、それにより、活性化、免疫応答の開始、増殖などを非限定的に含む、T細胞による一次応答を媒介することができるリガンドのことを意味する。刺激リガンドは当技術分野において周知であり、とりわけ、ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を範囲に含む。
【0079】
「対象」という用語は、免疫応答を惹起させることができる、生きている生物(例えば、哺乳動物)を含むことを意図している。「対象」または「患者」は、その中で用いる場合、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であってよい。非ヒト哺乳動物には、例えば、家畜および愛玩動物、例えばヒツジ、ウシ科動物、ブタ、イヌ科動物、ネコ科動物およびネズミ科の哺乳動物などが含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
【0080】
本明細書で用いる場合、「実質的に精製された」細胞とは、他の細胞型を本質的に含まない細胞のことである。また、実質的に精製された細胞は、その天然の状態に本来付随する他の細胞型から分離された細胞のことも指す。場合によっては、実質的に精製された細胞の集団とは、均一な細胞集団のことを指す。また別の場合には、この用語は、単に、天然の状態において本来付随する細胞から分離された細胞のことを指す。いくつかの態様において、細胞はインビトロで培養される。他の態様において、細胞はインビトロでは培養されない。
【0081】
「スイッチ分子」という用語は、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含む、操作された受容体のことを指す。スイッチ分子を、T細胞またはNK細胞などの細胞において発現させると、スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを活性化する。細胞内ドメインは、シグナル伝達受容体シグナルの伝達、エフェクター分子の活性化、活性化因子の分泌、またはそれらの任意の組み合わせなど、シグナル伝達受容体に特異的である細胞内のシグナルを伝える。
【0082】
「標的部位」または「標的配列」とは、結合が起こるのに十分な条件下で結合分子が特異的に結合しうる核酸の領域を明確に定めるゲノム核酸配列のことを指す。
【0083】
本明細書で用いる場合、「T細胞受容体」または「TCR」という用語は、抗原の提示に応答したT細胞の活性化に関与する膜タンパク質の複合体のことを指す。TCRは主要組織適合複合体分子と結合した抗原を認識する原因となる。TCRは、アルファ(α)およびベータ(β)鎖のヘテロダイマーで構成されるが、一部の細胞では、TCRはガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。TCRはα/β形態およびγ/δ形態で存在することもあり、これらは構造的に類似しているが、解剖学的な部位および機能は異なる。各鎖は2つの細胞外ドメイン、1つの可変ドメインおよび1つの定常ドメインからなる。いくつかの態様において、TCRは、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、およびγδT細胞を含む、TCRを含む任意の細胞上で改変することができる。
【0084】
「治療的」という用語は、本明細書で用いる場合、処置および/または予防を意味する。治療効果は、疾病状態の抑制、寛解または根絶によって得られる。
【0085】
「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、本明細書で用いる場合、外因性核酸が宿主細胞内に移入または導入される過程のことを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞とは、外因性核酸によってトランスフェクトされた、形質転換された、または形質導入されたもののことである。この細胞には初代対象細胞およびその子孫が含まれる。
【0086】
「腫瘍抗原」という用語は、本明細書で用いる場合、腫瘍、または特定の過剰増殖障害に共通する抗原のことを指す。いくつかの局面において、本発明の腫瘍抗原は、原発性または転移性メラノーマ、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺がん、肝臓がん、非ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、子宮がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、および、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がんなどのような腺癌を非限定的に含むがんに由来してもよい。
【0087】
「転写制御下」または「機能的に連結した」という語句は、本明細書で用いる場合、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するために正しい位置および向きにあることを意味する。
【0088】
「ベクター」とは、単離された核酸を含み、かつその単離された核酸を細胞の内部に送達するために用いうる組成物のことである。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを非限定的に含む数多くのベクターが、当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語は、自律複製性プラスミドまたはウイルスを含む。この用語は、例えばポリリジン化合物、リポソームなどのような、細胞内への核酸の移入を容易にする非プラスミド性および非ウイルス性の化合物も含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが非限定的に含まれる。
【0089】
範囲:本開示の全体を通じて、本発明のさまざまな局面を、範囲形式で提示することができる。範囲形式による記載は、単に便宜上かつ簡潔さのためであって、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定とみなされるべきではないことが理解される必要がある。したがって、ある範囲の記載は、その範囲内におけるすべての可能な部分的範囲とともに、個々の数値も具体的に開示されていると考慮されるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分的範囲とともに、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6も、具体的に開示されていると考慮されるべきである。これは範囲の幅広さとは関係なく適用される。
【0090】
説明
T細胞は、新規のT細胞RNAエレクトロポレーション技術を用いた際に、理想的な送達媒体であることができる。外因的に投与される薬物の標的化送達は、現在の治療法の限界である。本明細書に記載のRNAエレクトロポレーションを受けたT細胞は、外因的に投与される薬物を用いるこの限界を潜在的に克服して、腫瘍微小環境において抗腫瘍活性を調整する分子を送達することができる。
【0091】
T細胞のウイルス形質導入を用いる限界もまた、T細胞のRNAエレクトロポレーションを用いて克服することができる。RNAエレクトロポレーションは、T細胞のウイルス形質導入とは異なり、T細胞に対する一過性の、ベクターを伴わない改変である。さらに、RNAの宿主細胞ゲノム中への組み込みは可能性が低い。T細胞は、PD1またはTGF-βのようなT細胞の負のシグナルを、CD28のような正のシグナルに変換するスイッチ分子などの、標的腫瘍細胞のT細胞特異的殺傷を開始し、T細胞の抗腫瘍活性を増強する分子をコードするRNAのエレクトロポレーションを受けることができる。
【0092】
本発明は、一過性に発現して、因子を標的部位に分泌するための送達媒体として作用するように、T細胞を改変することを含む。1つの態様において、因子を送達部位に送達するための方法は、T細胞を含む細胞の集団に、スイッチ分子をコードするmRNAをエレクトロポレーションする段階であって、該T細胞が、該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する前記段階を含む。
【0093】
記載の発明に従ってT細胞のエレクトロポレーションを行い、投与することによって、T細胞は標的部位へ向かうことができる。T細胞は、スイッチ分子を一過性に発現し、標的部位で活性化因子を分泌する。したがって、本発明は、スイッチ分子の発現、および活性化因子の標的部位への送達を容易にして、免疫活性をモジュレートする。
【0094】
スイッチ分子
本発明は、エレクトロポレーションされたスイッチ分子をコードする核酸を含む、改変T細胞を含む。1つの局面において、本発明は、スイッチ分子を一過性に発現するT細胞を作製するための方法を含む。スイッチ分子は、一般に、膜受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン、または、シグナル伝達受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインから構成される。
【0095】
スイッチ分子をコードする核酸を、T細胞またはNK細胞などの細胞において発現させると、スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、スイッチ分子またはその断片を含む細胞内ドメインを活性化する。細胞内ドメインは、シグナル伝達受容体シグナルの伝達、エフェクター分子の活性化、活性化因子の分泌、またはそれらの任意の組み合わせなど、細胞内ドメインに特異的である細胞内のシグナルを伝える。
【0096】
1つの局面において、本発明は、エレクトロポレーションされたスイッチ分子をコードする核酸を含む、改変T細胞を含む。スイッチ分子は、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン、または、シグナル伝達受容体もしくはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含む。T細胞はスイッチ分子を一過性に発現し、スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用は、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。
【0097】
細胞外ドメイン
膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインは、リガンド結合ドメインまたはリガンド認識ドメインを含みうる。1つの態様において、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインは、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、プログラム細胞死リガンド1(PDL1)、インターフェロン-γ受容体(IFN-γ)、またはそれらの任意の組み合わせの断片またはドメインである。
【0098】
1つの局面において、スイッチ分子は、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)またはその断片を含む細胞外ドメインを含む。
【0099】
細胞内ドメイン
細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達領域を含む。共刺激シグナル伝達領域とは、シグナル伝達受容体の細胞内ドメインまたはその断片のことを指す。シグナル伝達受容体は、リンパ球の効率的な活性化のために必要とされる共刺激分子または細胞表面分子を非限定的に含む。もう1つの態様において、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインは、活性化受容体の断片またはドメインを含む。シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインは、シグナル伝達ドメイン、タンパク質相互作用ドメイン、酵素ドメイン、またはそれらの任意の組み合わせを含みうる。さらにもう1つの態様において、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインは、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、CD27、ICOS、OX40、T細胞受容体(TCR)、共刺激分子、これらの配列の任意の誘導体またはバリアント、同じ機能的能力を有する任意の合成配列、およびそれらの任意の組み合わせ由来の、細胞内ドメインの任意の断片またはドメインを含む。
【0100】
1つの局面において、スイッチ分子は、IL-12Rまたはその断片を含む細胞内ドメインを含む。
【0101】
他のドメイン
いくつかの態様において、スイッチ分子は、膜貫通ドメインをさらに含む。いくつかの態様において、スイッチ分子は、ヒンジドメインをさらに含む。1つの態様において、スイッチ分子をコードする核酸は、CD28膜貫通ドメインをコードする核酸およびCD8-αヒンジドメインをコードする核酸などの、膜貫通ドメインをコードする核酸およびヒンジドメインをコードする核酸をさらに含む。細胞外ドメインおよび/または細胞内ドメインはまた、細胞外ドメインまたは細胞内ドメインのいずれかの同じ受容体分子由来の膜貫通ドメインも含みうる。
【0102】
スイッチ分子の細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間、またはスイッチ分子の細胞内ドメインと膜貫通ドメインとの間には、スペーサードメインがあってもよい。本明細書で用いる場合、「スペーサードメイン」という用語は、一般に、ポリペプチド鎖において膜貫通ドメインを細胞外ドメインまたは細胞内ドメインのいずれかに連結するように機能する、任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドのことを意味する。スペーサードメインは、最大で300アミノ酸、好ましくは10~100アミノ酸、最も好ましくは25~50アミノ酸を含みうる。
【0103】
二重特異性抗体
本発明はまた、二重特異性抗体も含む。二重特異性抗体は、2種の異なる結合特異性を含み、したがって2種の異なる抗原に結合する。1つの態様において、二重特異性抗体は、第1の抗原に結合する第1の抗原結合ドメイン、および第2の抗原に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。もう1つの態様において、二重特異性抗体は、第1および第2の一本鎖可変断片(scFv)分子を含む抗原結合ドメインを含む。1つの態様において、第1および第2の抗原結合ドメインは、標的細胞上の抗原および活性化T細胞上の抗原に結合する。
【0104】
1つの態様において、二重特異性抗体は、活性化T細胞上の少なくとも1つの抗原に対する特異性を含む。活性化T細胞抗原は、別の細胞を活性化することができる、T細胞の表面上に見出される抗原を含む。活性化T細胞抗原は、共刺激分子に結合しうる。共刺激分子とは、抗原に対するリンパ球の効率的な応答のために必要とされる、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子のことである。活性化T細胞抗原の例には、CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、またはそれらの任意の断片が非限定的に含まれうる。他の共刺激エレメントもまた、本発明の範囲内である。これらの例において、二重特異性抗体は、T細胞抗原を認識し、Bispecific T Cell Engager(BiTE)と呼ばれる。しかし、本発明は、いずれかの特定の二重特異性抗体の使用によっては限定されない。むしろ、任意の二重特異性抗体またはBiTEを使用することができる。二重特異性抗体またはBiTE分子はまた、少なくとも1つの標的細胞関連抗原に対する特異性を有する可溶性タンパク質として発現させてもよい。
【0105】
1つの態様において、二重特異性抗体は、1つより多い抗原結合ドメインを含む。この態様において、少なくとも1つの抗原結合ドメインは、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖可変断片、単一ドメイン抗体、それらの抗原結合性断片、およびそれらの任意の組み合わせを含む。ヒト抗体およびヒト化抗体を作製するための手法は、本明細書の他所に記載している。
【0106】
もう1つの態様において、標的細胞抗原は、T細胞受容体が結合するのと同じ抗原であってもよいし、または異なる抗原であってもよい。標的細胞抗原は、任意の腫瘍関連抗原(TAA)、またはウイルス抗原、細菌抗原、および寄生虫抗原、またはそれらの任意の断片を含む。標的細胞抗原は、標的細胞を規定する任意のタイプのリガンドを含みうる。例えば、標的細胞抗原は、特定の疾患状態と関連する標的細胞上の細胞マーカーとして作用するリガンドを認識するように、選択されてもよい。このように、細胞マーカーは、ウイルス、細菌、および寄生虫の感染症、自己免疫疾患、ならびにがん細胞と関連するものを含む、二重特異性抗体中の抗原結合ドメインに対するリガンドとして作用しうる。
【0107】
もう1つの態様において、標的細胞抗原は、CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、およびそれらの断片を非限定的に含む、活性化T細胞抗原と同じ抗原である。1つの局面において、本発明は、標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸を含み、ここで、該T細胞は二重特異性抗体を一過性に分泌する。二重特異性抗体を操作および発現するための手法は、異なる特異性を有する2種の免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組み換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、第WO 93/08829号、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照されたい)、ならびに「knob-in-hole」工学(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)を非限定的に含む。多重特異性抗体もまた、抗体Fc-ヘテロダイマー分子を作製するための静電的ステアリング効果の操作(第WO 2009/089004A1号);2種以上の抗体または断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号、およびBrennan et al., Science 229:81 (1985)を参照されたい);二重特異性抗体を産生するためのロイシンジッパーの使用(例えば、Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)を参照されたい);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照されたい);および一本鎖Fv(scFv)ダイマーの使用(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい);ならびに、例えばTutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されている三重特異性抗体の調製によっても作製されうる。「Octopus抗体」を含む、3種以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576A1号を参照されたい)。二重特異性抗体は、2種の異なる抗体またはその一部分を連結することによって構築することができる。例えば、二重特異性抗体は、2種の異なる抗体由来のFab、F(ab')2、Fab'、scFv、およびsdAbを含むことができる。
【0108】
可溶性融合タンパク質
本発明はまた、スイッチ分子を伴うかまたは伴わずに、可溶性融合タンパク質を発現するように改変されたT細胞も含む。可溶性融合タンパク質は、2種の異なる結合特異性を含み、したがって、2種の異なるリガンドまたは受容体または抗原または分子に結合する。1つの態様において、可溶性融合タンパク質は、第1のリガンド、受容体、抗原、またはそれらの断片に結合する第1の結合ドメインと、第2のリガンド、受容体、抗原、またはそれらの断片に結合する第2の結合ドメインとを含む。もう1つの態様において、可溶性融合タンパク質は、第1の一本鎖可変断片(scFv)分子を含む第1の結合ドメインと、第2の一本鎖可変断片(scFv)分子を含む第2の結合ドメインとを含む。1つの態様において、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインは、それぞれ、標的細胞上の受容体および活性化T細胞上の受容体に結合する。
【0109】
1つの態様において、可溶性融合タンパク質は、活性化T細胞上の少なくとも1つの分子に結合する特異性を有する、少なくとも1つの結合ドメインを含む。活性化T細胞分子は、T細胞上に見出される任意の表面分子を含む。活性化T細胞分子は、共刺激分子に結合しうる。共刺激分子とは、抗原に対するリンパ球の効率的な応答のために必要とされる細胞表面分子のことである。活性化T細胞分子の例には、CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、またはそれらの任意の断片が非限定期に含まれうる。他の共刺激エレメントもまた、本発明の範囲内である。しかし、本発明は、抗体の使用によっては限定されない。むしろ、任意のリガンド、受容体、抗原、またはそれらの断片を、可溶性融合タンパク質の一部として使用することができる。1つの態様において、可溶性融合タンパク質は、リガンド、抗体、またはそれらの任意の断片などの、ただしこれらに限定されない、CD28に結合する特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインを含む。特定の態様において、可溶性融合タンパク質は、抗CD28 scFvを含む結合ドメインを含む。
【0110】
1つの態様において、可溶性融合タンパク質は、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖可変断片、単一ドメイン抗体、それらの抗原結合性断片、およびそれらの任意の組み合わせを含む、少なくとも1つの結合ドメインを含む。ヒト抗体およびヒト化抗体を作製するための手法は、本明細書の他所に記載している。
【0111】
もう1つの態様において、可溶性融合タンパク質は、任意の腫瘍関連抗原(TAA)、またはウイルス抗原、細菌抗原、および寄生虫抗原、またはそれらの任意の断片に結合する特異性を有する、少なくとも1つの結合ドメインを含む。結合ドメインは、標的細胞を規定する任意のタイプのリガンドに結合する特異性を有する。例えば、結合ドメインは、特定の疾患状態と関連するような標的細胞を認識するために、選択された標的細胞上の分子に特異的に結合してもよい。1つの態様において、可溶性融合タンパク質は、リガンド、抗体、またはそれらの任意の断片などの、ただしそれらに限定されない、TGFbRIIに結合する特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインを含む。特定の態様において、可溶性融合タンパク質は、抗TGFbRII scFvを含む第2の結合ドメインを含む。もう1つの態様において、可溶性融合タンパク質は、リガンド、抗体、またはそれらの任意の断片などの、ただしそれらに限定されない、PD-L1に結合する特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインを含む。特定の態様において、可溶性融合タンパク質は、抗PD-L1 scFvを含む結合ドメインを含む。
【0112】
もう1つの態様において、可溶性融合タンパク質は、標的細胞抗原上の少なくとも1つの分子に結合する特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインを含む。結合ドメインは、CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、およびそれらの断片を非限定的に含む、活性化T細胞上の同じ分子に結合してもよい。
【0113】
可溶性融合タンパク質は、結合ドメインの間にスペーサードメインをさらに含んでもよい。本明細書で用いる場合、「スペーサードメイン」という用語は、一般に、ポリペプチド鎖において第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとを連結するように機能する、任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドのことを意味する。スペーサードメインは、最大で100アミノ酸、好ましくは2~50アミノ酸、最も好ましくは5~10アミノ酸を含みうる。
【0114】
ヒト抗体
ヒトにおける抗体のインビボ使用のためには、ヒト抗体を用いることが好ましいと考えられる。ヒト対象の治療的処置のためには、完全ヒト抗体が特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ法を、これらの手法の改良法と併せて含む、当技術分野において公知の種々の方法によって作製することができる。また、米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;ならびにPCT公開第WO 98/46645号、第WO 98/50433号、第WO 98/24893号、第WO 98/16654号、第WO 96/34096号、第WO 96/33735号、および第WO 91/10741号も参照されたい;これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。ヒト抗体はまた、重鎖および軽鎖がヒトDNAの1つまたは複数の供給源に由来するヌクレオチド配列によってコードされている抗体であることもできる。
【0115】
ヒト抗体はまた、機能的内因性免疫グロブリンを発現する能力はないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて産生させることもできる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体を、無作為に、または相同組換えによって、マウス胚性幹細胞中に導入してもよい。あるいは、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域を、マウス胚性幹細胞中に導入してもよい。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と別々にまたは同時に、非機能性にされうる。例えば、キメラマウスおよび生殖系列突然変異型マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。改変された胚性幹細胞を増大させ、胚盤胞に微量注入してキメラマウスを生じさせる。続いて、キメラマウスを交配させて、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を生じさせる。トランスジェニックマウスに対して、通常の様式で、選択された抗原、例えば、本発明のポリペプチドの全体または一部分による免疫処置を行う。最適な標的に対する抗体を、従来のハイブリドーマ技術を用いて、免疫処置を行ったトランスジェニックマウスから入手することができる。トランスジェニックマウスによって保有されるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の際に再編成され、その後にクラススイッチおよび体細胞突然変異を起こす。したがって、そのような手法を用いて、IgG1(γ1)およびIgG3を非限定的に含む、治療的に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を産生させることが可能である。ヒト抗体を産生させるためのこの技術の概略については、Lonberg and Huszar(Int. Rev. Immunol., 13:65-93 (1995))を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を産生させるためのこの技術の詳細な考察、ならびにそのような抗体を産生させるためのプロトコールについては、例えば、PCT公開第WO 98/24893号、第WO 96/34096号、および第WO 96/33735号;ならびに米国特許第5,413,923号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,569,825号;第5,661,016号;第5,545,806号;第5,814,318号;および第5,939,598号を参照されたく、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。加えて、Abgenix, Inc.(Freemont, Calif.)およびGenpharm(San Jose, Calif.)などの会社と、上記のものに類似した技術を用いて、選択された抗原に対するヒト抗体を提供する契約を結ぶことができる。抗原負荷刺激時にヒト抗体の産生をもたらすことになる、生殖系列突然変異型マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入に関する具体的な考察については、例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993);Bruggermann et al., Year in Immunol., 7:33 (1993);およびDuchosal et al., Nature, 355:258 (1992)を参照されたい。
【0116】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーから導き出すこともできる(Hoogenboom et al., J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Vaughan et al., Nature Biotech., 14:309 (1996))。ファージディスプレイ技術(McCafferty et al., Nature, 348:552-553 (1990))は、免疫処置を受けていないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体および抗体断片を産生させるために用いることができる。この手法によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、M13またはfdなどの糸状バクテリオファージの主要コートタンパク質遺伝子またはマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかの中にインフレームでクローニングして、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として提示させる。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能特性に基づく選択により、それらの特性を呈する抗体をコードする遺伝子の選択ももたらされる。このため、ファージは、B細胞の特性のうちのいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、種々のフォーマットで行うことができる;それらの概説については、例えば、Johnson, Kevin S, and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571 (1993)を参照されたい。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源を、ファージディスプレイに用いることができる。Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)は、免疫処置を受けていないマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小規模なランダムコンビナトリアルライブラリーから、抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。免疫処置を受けていないヒトドナーからV遺伝子のレパートリーを構築することができ、抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体を、本質的にはMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)、またはGriffith et al., EMBO J., 12:725-734 (1993)に記載されている手法に従って単離することができる。米国特許第5,565,332号および第5,573,905号も参照されたく、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0117】
ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞によって作製されてもよい(米国特許第5,567,610号および第5,229,275号を参照されたく、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。ヒト抗体はまた、Roder et al.(Methods Enzymol., 121:140-167 (1986))によって記載されているものなどの、ただしこれに限定されない、ハイブリドーマ手法を用いてインビトロで作製されてもよい。
【0118】
ヒト化抗体
あるいは、いくつかの態様において、非ヒト抗体をヒト化し、この場合には、抗体の特定の配列または領域を、ヒトにおいて天然に産生される抗体との類似性を高めるように改変する。1つの態様において、抗原結合ドメインをヒト化する。
【0119】
「ヒト化」抗体は、元の抗体と類似の抗原特異性を保っている。しかし、あるヒト化方法を用いると、ヒト抗原に対する抗体の結合の親和性および/または特異性が、その内容の全体が参照により本明細書に組み入れられる、Wu et al., J. Mol. Biol., 294:151 (1999)により記載されているような「定方向進化」の方法を用いて高められうる。
【0120】
ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からその中に導入された、1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と称され、典型的には「インポート」可変ドメインから採られる。したがって、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリン分子由来の1つまたは複数のCDR、およびヒト由来のフレームワーク領域を含む。抗体のヒト化は、当技術分野において周知であり、本質的にはWinterらの方法(Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988))に従って、ヒト抗体の対応する配列を齧歯動物のCDRまたはCDR配列へと置換すること、すなわち、CDRグラフティング(EP 239,400号;PCT公開公報第WO 91/09967号;および米国特許第4,816,567号;第6,331,415号;第5,225,539号;第5,530,101号;第5,585,089号;第6,548,640号、これらの内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によって行うことができる。そのようなヒト化キメラ抗体では、実質的にインタクトではないヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際上、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基およびおそらくはいくつかのFR残基が、齧歯動物抗体における類似部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。抗体のヒト化はまた、ベニヤリングもしくはリサーフェイシング(EP 592,106号;EP 519,596号;Padlan, 1991, Molecular Immunology, 28(4/5):489-498;Studnicka et al., Protein Engineering, 7(6):805-814 (1994);およびRoguska et al., PNAS, 91:969-973 (1994))またはチェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号)によって達成することもでき、これらの内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0121】
ヒト化抗体を作製する上で用いられる、軽鎖および重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減させることを目的とする。いわゆる「ベストフィット」法に従って、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。続いて、齧歯動物のものに最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として受け入れる(Sims et al., J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia et al., J. Mol. Biol., 196:901 (1987)、これらの内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。もう1つの方法では、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを用いる。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体に用いることができる(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta et al., J. Immunol., 151:2623 (1993)、これらの内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0122】
抗体は、標的抗原に対する高い親和性および他の有利な生物学的特性を保ったままでヒト化することができる。本発明の1つの局面によれば、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いた、親配列およびさまざまな概念上のヒト化産物の分析の過程によって調製される。免疫グロブリンの三次元モデルは、一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列に関して可能性のある三次元立体構造を図示および表示するコンピュータプログラムが、利用可能である。これらの表示の検討により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の考えられる役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンが標的抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増加などの所望の抗体特性が達成されるように、FR残基を、レシピエント配列およびインポート配列から選択して、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接かつ最も実質的に関与している。
【0123】
共刺激分子
1つの態様において、本発明の改変T細胞または細胞は、改変T細胞または細胞中にエレクトロポレーションされる、共刺激分子をコードする核酸などの、共刺激分子をコードする核酸を導入する段階をさらに含む。核酸は、形質導入、トランスフェクション、またはエレクトロポレーションによってT細胞または細胞中に導入されうる。もう1つの態様において、共刺激ドメインは、CD3、CD27、CD28、CD83、CD86、CD127、4-1BB、4-1BBL、PD1、およびPD1Lから選択される。さらにもう1つの態様において、CD3は、CD3ζ鎖およびCD3ε鎖などの、少なくとも2つの異なるCD3鎖を含む。例示的な態様において、CD3などの共刺激分子をコードするRNAを、T細胞または細胞中にエレクトロポレーションする。もう1つの態様において、CD3 RNAなどの共刺激分子をコードする核酸を、スイッチ分子をコードする核酸またはRNAなどの、別の核酸とコエレクトロポレーションする。
【0124】
活性化因子
本発明は、免疫モジュレート分子などの活性化因子を含む。1つの局面において、スイッチ分子のそれぞれのリガンドとの相互作用は、T細胞が活性化因子を分泌するように誘導する。活性化因子は、T細胞または他の免疫細胞を結合、活性化、または刺激して、それらの活性をモジュレートしうる。活性化因子はまた、T細胞からの分泌が可能な形態でもあり、そのような活性化因子は膜貫通領域を欠如している。いくつかの態様において、活性化因子は、抗体、可溶性サイトカイン、可溶性ケモカイン、成長因子、またはそれらの機能的断片もしくはバリアントから選択される。活性化因子が可溶性サイトカインである態様において、可溶性サイトカインは、非限定的に、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントでありうる。活性化因子が抗体またはその機能的断片もしくはバリアントである場合、抗体またはその機能的断片もしくはバリアントは、別のT細胞または標的細胞上の受容体に、アゴニスティックまたはアンタゴニスティックに結合しうる。
【0125】
標的部位での活性化因子の分泌は、標的部位における他の免疫細胞の活性化を促進しうる。例えば、スイッチ分子を発現するT細胞によるインターフェロン-γの分泌は、重要な免疫刺激効果および免疫モジュレート効果をT細胞に提供しながら、マクロファージおよびNK細胞を活性化する。
【0126】
T細胞およびその組成物
本発明の1つの局面は、エレクトロポレーションされたスイッチ分子をコードするmRNAを含むT細胞であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現して、該スイッチ分子とそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する、前記T細胞を含む。
【0127】
本発明はまた、スイッチ分子、可溶性融合タンパク質、および二重特異性抗体を有する改変T細胞も含む。1つの局面において、本発明は、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸;ならびに、可溶性融合タンパク質をコードする核酸、および標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つを含む改変T細胞であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、かつ該可溶性融合タンパク質または二重特異性抗体を分泌する、前記改変T細胞を含む。
【0128】
もう1つの局面において、本発明は、スイッチ分子をコードする核酸、ならびに、可溶性融合タンパク質をコードする核酸、および二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つを含む改変T細胞の集団であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、かつ該可溶性融合タンパク質または二重特異性抗体を分泌する、改変T細胞の集団を含む。
【0129】
1つの態様において、改変T細胞は、リガンドに対するスイッチ分子の結合によって活性化され、活性化は、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。もう1つの態様において、改変T細胞は、二重特異性抗体に対する結合によって活性化され、活性化は、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。
【0130】
標的部位は、固形腫瘍などの腫瘍を含みうる。1つの態様において、T細胞は、固形腫瘍へ向かう。腫瘍の例には、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、甲状腺がん、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0131】
T細胞は、特異的な抗原へ向かいうる。例えば、T細胞は、腫瘍抗原へ向かいうる。1つの態様において、T細胞は、腫瘍抗原に結合しうる。腫瘍抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)、ウイルス抗原、抗体により認識される抗原、それらの任意の断片、またはそれらの任意の組み合わせでありうる。もう1つの態様において、腫瘍抗原は、p53、Ras、β-カテニン、CDK4、α-アクチニン-4、チロシナーゼ、TRP1/gp75、TRP2、gp100、メラン-A/MART1、ガングリオシド、PSMA、HER2、WT1、EphA3、EGFR、CD20、MAGE、BAGE、GAGE、NY-ESO-1、テロメラーゼ、サバイビン、またはそれらの任意の組み合わせでありうる。
【0132】
もう1つの局面において、本発明は、エレクトロポレーションされたスイッチ分子をコードする核酸を含む改変T細胞の集団であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子とそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する前記改変T細胞の集団を含む。本発明のもう1つの局面は、スイッチ分子を一過性に発現するT細胞を作製するための方法を含む。方法は、スイッチ分子をコードする核酸をT細胞の集団中に導入する段階であって、該スイッチ分子が、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含み、該T細胞が、該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それにより該T細胞を作製する、前記段階を含む。1つの態様において、方法は、標的部位へ向かうようにT細胞を活性化する段階であって、該T細胞が該標的部位で活性化因子を分泌する前記段階をさらに含む。
【0133】
さらにもう1つの局面において、本発明は、スイッチ分子、および可溶性融合タンパク質または二重特異性抗体を一過性に発現するT細胞を作製するための方法を含む。方法は、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸、ならびに、可溶性融合タンパク質をコードする核酸、および標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸のうちの少なくとも1つを導入する段階を含む。1つの局面において、T細胞は、スイッチ分子、および可溶性融合タンパク質または二重特異性抗体を一過性に発現することができ、T細胞の活性化は、標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。
【0134】
T細胞の供給源
スイッチ分子をコードする核酸の導入前に、T細胞の供給源を対象から入手する。対象の非限定的な例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。好ましくは、対象はヒトである。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、臍帯血、および腫瘍を含む、数多くの供給源から入手することができる。1つの態様において、T細胞の供給源は、末梢血単核細胞である。もう1つの態様において、細胞の集団は、精製されたT細胞を含む。
【0135】
ある態様において、T細胞は、フィコール分離などの、当業者に公知である多数の手法を用いて、対象から収集された血液ユニットから入手することができる。1つの態様において、個体の循環血由来の細胞は、アフェレーシスまたは白血球搬出法によって入手される。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含有する。アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、細胞を適切な緩衝液または培地中に置くことができ、その後の処理段階のために、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)または洗浄溶液は、カルシウムを欠如し、かつマグネシウムを欠如することができるか、またはすべてではないものの多くの二価カチオンを欠如することができる。洗浄後に、細胞を、例えば、Ca非含有、Mg非含有PBSなどの、種々の生体適合性緩衝液中に再懸濁させることができる。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去して、細胞を培養培地中に直接再懸濁させることができる。
【0136】
もう1つの態様において、赤血球を溶解させ、例えば、PERCOLL(商標)勾配での遠心分離により単球を枯渇化することによって、T細胞を末梢血から単離する。あるいは、T細胞を、臍帯血から単離することができる。いずれの場合にも、T細胞の特定の部分集団を、ポジティブ選択またはネガティブ選択の手法によって、さらに単離することができる。
【0137】
臍帯血単核細胞、またはT細胞を含む細胞の他の供給源のいずれかから、CD34、CD8、CD14、CD19、およびCD56を非限定的に含む、ある特定の抗原を発現する非T細胞を枯渇化することができる。これらの細胞の枯渇化は、単離された抗体、腹水などの、抗体を含む生体試料、物理的支持体に結合した抗体、および細胞に結合した抗体を用いて実現することができる。
【0138】
ネガティブ選択によるT細胞集団の濃縮は、ネガティブ選択される細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせを用いて実現することができる。好ましい方法は、ネガティブ選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを用いる、ネガティブ磁気免疫接着またはフローサイトメトリーによる細胞ソーティングおよび/または選択である。例えば、ネガティブ選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。
【0139】
ポジティブ選択またはネガティブ選択による所望の細胞集団の単離のために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。ある態様において、細胞とビーズの最大接触を確実にするために、ビーズおよび細胞が一緒に混合される容積を有意に減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、1つの態様において、1 ml当たり細胞20億個の濃度を用いる。1つの態様において、1 ml当たり細胞10億個の濃度を用いる。さらなる態様において、1 ml当たり細胞1億個よりも多くを用いる。さらなる態様において、1 ml当たり細胞1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個、または5000万個の細胞濃度を用いる。さらにもう1つの態様において、1 ml当たり細胞7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個、または1億個からの細胞濃度を用いる。さらなる態様において、1 ml当たり細胞1億2500万個または1億5000万個の濃度を用いることができる。高濃度を用いることにより、増加した細胞収量、細胞活性化、および細胞増大を生じることができる。
【0140】
T細胞はまた、洗浄段階後に凍結することもでき、これは、単球除去段階を必要としない。理論に拘束されることは望まないが、凍結およびそれに続く融解の段階は、細胞集団における顆粒球およびある程度の単球を除去することによって、より均一な産物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄段階後に、細胞を、凍結液中に懸濁させてもよい。多くの凍結液およびパラメーターが当技術分野において公知であり、かつこの状況において有用であるが、非限定的な例において、1つの方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または他の適した細胞凍結培地の使用を伴う。続いて、細胞を、1分間に1℃の速度で-80℃に凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相中に貯蔵する。他の制御された凍結法、および、-20℃でまたは液体窒素中で即時の制御されない凍結を用いてもよい。
【0141】
1つの態様において、細胞の集団は、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、精製されたT細胞集団、およびT細胞株を含みうる。もう1つの態様において、細胞の集団は、末梢血単核細胞を含む。さらにもう1つの態様において、細胞の集団は、精製されたT細胞を含む。
【0142】
核酸の導入
核酸を細胞に導入する方法には、物理的、生物学的および化学的方法が含まれる。宿主細胞にRNAなどのポリヌクレオチドを導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション、微粒子銃法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが含まれる。RNAは、エレクトロポレーション(Amaxa Nucleofector-II(Amaxa Biosystems, Cologne, Germany))、(ECM 830(BTX)(Harvard Instruments, Boston, Mass.)またはGene Pulser II(BioRad, Denver, Colo.)、Multiporator(Eppendort, Hamburg Germany)を含む、市販の方法を用いて、標的細胞に導入することができる。また、RNAを、リポフェクションを用いるカチオン性リポソーム媒介性トランスフェクションを用いて、ポリマーカプセル封入を用いて、ペプチド媒介性トランスフェクションを用いて、または「遺伝子銃」などのバイオリスティック(biolistic)粒子送達システムを非限定的に含む市販の方法(例えば、Nishikawa, et al. Hum Gene Ther., 12(8):861-70 (2001)を参照)を用いて、細胞に導入することもできる。
【0143】
関心対象のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法には、DNAベクターおよびRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどに由来しうる。例えば、米国特許第5,350,674号および第5,585,362号を参照されたい。
【0144】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段には、コロイド分散系、例えば高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズなど、ならびに、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。インビトロおよびインビボで送達媒体として用いるための例示的なコロイド系の1つは、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0145】
使用に適した脂質は、販売元から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)はSigma, St. Louis, MOから入手することができ;ジアセチルホスファート(「DCP」)はK & K Laboratories(Plainview, NY)から入手することができ;コレステロール(「Chol」)はCalbiochem-Behringから入手することができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL)から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中にある脂質の貯蔵溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムはメタノールよりも容易に蒸発するので、それを唯一の溶媒として用いることが好ましい。「リポソーム」とは、閉じた脂質二重層または凝集物の生成によって形成される、種々の単層および多重層の脂質媒体を包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜による小胞構造および内部の水性媒質を有するものとして特徴づけることができる。多重層リポソームは、水性媒質によって隔てられた複数の脂質層を有する。それらはリン脂質を過剰量の水性溶液中に懸濁させると自発的に形成される。脂質成分は自己再配列を起こし、その後に閉鎖構造の形成が起こり、水および溶解溶質を脂質二重層の間に封じ込める(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5:505-10)。しかし、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も想定している。例えば、脂質がミセル構造をとってもよく、または単に脂質分子の不均一な凝集物として存在してもよい。また、リポフェクタミン-核酸複合体も想定している。
【0146】
宿主細胞における核酸の存在を確かめる目的で、宿主細胞に外因性核酸を導入するため、または他の様式で細胞を本発明の阻害因子に曝露させるために用いられる方法にかかわらず、種々のアッセイを用いることができる。そのようなアッセイには、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンブロット法およびノーザンブロット法、RT-PCRおよびPCRなど;「生化学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)または本発明の範囲内にある作用物質を同定するための本明細書に記載のアッセイによって、特定のペプチドの有無を検出すること、などが含まれる。
【0147】
RNA
1つの態様においては、RNAがT細胞に導入される。もう1つの態様において、核酸は、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAなどのmRNAである。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により生成されるテンプレートを用いるインビトロ転写によって生成される。任意の供給源からの関心対象のDNAを、PCRによって、適切なプライマーおよびRNAポリメラーゼを用いるインビトロmRNA合成のためのテンプレートに直接変換することができる。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列、またはDNAの他の任意の適切な供給源でありうる。インビトロ転写のための望ましいテンプレートは、分泌可能な因子である。一例を挙げると、テンプレートは、抗体、可溶性サイトカイン、可溶性ケモカイン、成長因子、またはそれらの機能的断片もしくはバリアントをコードする。
【0148】
PCRは、トランスフェクションに用いられるmRNAのインビトロ転写のためのテンプレートを作製するために用いられる。PCRを行うための方法は、当技術分野において周知である。PCRに用いるためのプライマーは、PCRのためのテンプレートとして用いようとするDNAの領域に対して実質的に相補的な領域を有するように設計される。「実質的に相補的な」とは、本明細書で用いる場合、プライマー配列中の塩基の大半もしくはすべてが相補的であるか、または1つもしくは複数の塩基が非相補的もしくはミスマッチ性である、ヌクレオチドの配列のことを指す。実質的に相補的な配列は、PCRのために用いられるアニーリング条件下で、意図したDNA標的とアニールまたはハイブリダイズすることができる。プライマーは、DNAテンプレートの任意の部分に対して実質的に相補的であるように設計することができる。例えば、プライマーを、5'および3' UTRを含めて、細胞において通常転写される遺伝子の部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計することができる。また、プライマーを、関心対象の特定のドメインをコードする遺伝子の一部分を増幅するように設計することもできる。1つの態様において、プライマーは、5'および3'UTRの全体または部分を含めて、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRのために有用なプライマーは、当技術分野において周知である合成法によって作製される。「順方向プライマー」とは、増幅させようとするDNA配列の上流にある、DNAテンプレート上のヌクレオチドに対して実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含むプライマーのことである。「上流」とは、本明細書において、コード鎖を基準として、増幅させようとするDNA配列の5'側にある場所(location 5)を指して用いられる。「逆方向プライマー」とは、増幅させようとするDNA配列の下流にある、二本鎖DNAテンプレートに対して実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含むプライマーのことである。「下流」とは、本明細書において、コード鎖を基準として、増幅させようとするDNA配列の3'側にある場所のことを指す。
【0149】
RNAの安定性および/または翻訳効率を高める能力を有する化学構造を用いることもできる。RNAは5'および3' UTRを有することが好ましい。1つの態様において、5' UTRは長さが0~3000ヌクレオチドである。コード領域に付加される5'および3' UTR配列の長さは、UTRの異なる領域とアニールするPCR用のプライマーを設計することを非限定的に含む、異なる方法によって変化させることができる。このアプローチを用いて、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後に最適な翻訳効率を達成するために必要な5'および3' UTRの長さを改変することができる。
【0150】
5'および3' UTRは、関心対象の遺伝子の天然の内因性5'および3' UTRであってよい。または、UTR配列を順方向および逆方向プライマーに組み入れることによって、またはテンプレートの他の任意の改変によって、関心対象の遺伝子にとって内因性でないUTR配列を付加することもできる。関心対象の遺伝子にとって内因性でないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率を改変するために有用な可能性がある。例えば、3' UTR配列中のAUリッチエレメントはmRNAの安定性を低下させうることが知られている。このため、当技術分野において周知であるUTRの特性に基づき、転写されたRNAの安定性が高まるように3' UTRを選択または設計することができる。
【0151】
1つの態様において、5' UTRは内因性遺伝子のKozak配列を含みうる。または、関心対象の遺伝子にとって内因性でない5' UTRを上記のようにPCRによって付加する場合には、5' UTR配列を付加することによってコンセンサスKozak配列を設計し直すこともできる。Kozak配列はある種のRNA転写物の翻訳の効率を高めることができるが、すべてのRNAで効率的な翻訳が可能になるのに必要なわけではないように思われる。多くのmRNAに対するKozak配列の必要性は、当技術分野において公知である。他の態様においては、5' UTRを、そのRNAゲノムが細胞内で安定しているRNAウイルスから導き出すことができる。他の態様においては、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨げるために、さまざまなヌクレオチド類似体を3'または5' UTRに用いることができる。
【0152】
遺伝子クローニングと必要とせずにDNAテンプレートからのRNAの合成を可能にするためには、転写のプロモーターが、転写させようとする配列の上流でDNAテンプレートと結びつく必要がある。RNAポリメラーゼに対するプロモーターとして機能する配列を順方向プライマーの5'末端に付加すると、RNAポリメラーゼプロモーターが、転写させようとするオープンリーディングフレームの上流でPCR産物に組み入れられるようになる。1つの好ましい態様において、本明細書の他所に記載したように、プロモーターはT7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターには、T3およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターが非限定的に含まれる。T7、T3およびSP6プロモーターのコンセンサスヌクレオチド配列は当技術分野において公知である。
【0153】
1つの態様において、mRNAは5'末端のキャップおよび3'ポリ(A)尾部の両方を有し、それらがリボソーム結合、翻訳の開始および細胞におけるmRNA安定性を決定づける。環状DNAテンプレート、例えばプラスミドDNA上では、RNAポリメラーゼは真核細胞における発現には適さない長いコンカテマー産物を生成させる。3' UTRの末端で線状化されたプラスミドDNAの転写では、転写後にポリアデニル化されたとしても真核生物トランスフェクションには有効でない、正常サイズのmRNAがもたらされる。
【0154】
線状DNAテンプレート上で、ファージT7 RNAポリメラーゼは、転写物の3'末端をテンプレートの最終塩基を越えて伸長させることができる(Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985);Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003)。
【0155】
DNAテンプレートへのポリA/T連鎖の従来の組み込み方法は分子クローニングである。しかし、プラスミドDNAに組み込まれたポリA/T配列はプラスミド不安定性を引き起こす恐れがあり、このことが、細菌細胞から得られたプラスミドDNAテンプレートに欠失および他の異常がしばしば高度に混入する理由となっている。このためにクローニング手順は面倒で時間がかかるだけでなく、往々にして信頼性も損なわれる。これがクローニングを伴わずにポリA/T 3'連鎖を有するDNAテンプレートの構築を可能にする方法が非常に望まれる理由である。
【0156】
転写DNAテンプレートのポリA/Tセグメントは、ポリT尾部、例えば100T尾部など(サイズは50~5000 Tでありうる)を含む逆方向プライマーを用いることによってPCR中に、またはDNA連結もしくはインビトロ組換えを非限定的に含む他の任意の方法によってPCRの後に生成させることができる。ポリ(A)尾部はまた、RNAに安定性を与え、それらの分解も低下させる。一般に、ポリ(A)尾部の長さは、転写されたRNAの安定性と正の相関関係にある。1つの態様において、ポリ(A)尾部は100~5000個のアデノシンである。
【0157】
RNAのポリ(A)尾部は、インビトロ転写後に、ポリ(A)ポリメラーゼ、例えば大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)などを用いることによって、さらに伸長させることができる。1つの態様においては、ポリ(A)尾部の長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドに増やすことにより、RNAの翻訳効率が約2倍に高くなる。さらに、異なる化学基を3'末端に結びつけることもmRNA安定性を高める可能性がある。そのような付属物(attachment)は、改変/人工ヌクレオチド、アプタマーおよび他の化合物を含みうる。例えば、ポリ(A)ポリメラーゼを用いて、ATP類似体をポリ(A)尾部に組み入れることができる。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに高めることができる。
【0158】
5'キャップもまた、RNA分子に安定性を与える。1つの好ましい態様において、本明細書に開示された方法によって生成されたRNAは5'キャップを含む。5'キャップは、当技術分野において公知であって本明細書に記載された手法を用いて付与される(Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001);Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001); Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005))。
【0159】
本明細書で開示された方法によって生成されたRNAはまた、配列内リボソーム進入部位(IRES)配列も含みうる。IRES配列は、mRNAに対するキャップ非依存的なリボソーム結合を開始させて翻訳開始を助長する、任意のウイルス配列、染色体配列または人工的に設計された配列であってよい。細胞の透過性および生存能力を高める因子、例えば糖、ペプチド、脂質、タンパク質、抗酸化物質および界面活性剤などを含みうる、細胞エレクトロポレーションのために適した任意の溶質を含めることができる。
【0160】
いくつかの態様においては、スイッチ分子をコードする核酸は、mRNAである。1つの態様において、スイッチ分子をコードする核酸は、インビトロ転写されたmRNAである。別の態様において、該核酸は細胞中にエレクトロポレーションされる。さらに別の態様において、該mRNAは細胞中にエレクトロポレーションされる。
【0161】
開示される方法は、遺伝的に改変されたT細胞が標的がん細胞を死滅させる能力の評価を含め、基礎研究および治療法において、がん、幹細胞、急性および慢性感染症、ならびに自己免疫疾患の分野で、T細胞活性のモジュレーションのために適用することができる。
【0162】
本方法はまた、例えばプロモーターまたは投入RNAの量を変化させることによって、発現のレベルを広範囲にわたって制御する能力も提供し、そのため発現レベルを個別に調節することが可能になる。その上、PCRに基づくmRNA生成の手法は、種々の構造およびそれらのドメインの組み合わせを有するスイッチ分子mRNAの設計を非常に容易にする。例えば、同じ細胞において複数のスイッチ分子を誘導することにより、病変細胞に対してT細胞を活性化するか、T細胞機能を増強するか、または他の標的細胞の免疫応答をモジュレートし得る複数の活性化因子の分泌が可能になる。
【0163】
本発明のRNAトランスフェクション法の1つの利点は、RNAトランスフェクションが本質的に一過性であり、かつベクターを用いないことである。RNA導入遺伝子をリンパ球に送達し、短時間のインビトロ細胞活性化の後に、その中で、いかなる別のウイルス配列も必要としない最小発現カセットとして発現させることができる。これらの条件下では、宿主細胞ゲノム中への導入遺伝子の組み込みが起こる可能性は低い。RNAのトランスフェクションの効率の高さ、およびそれがリンパ球集団全体を均質に改変させる能力があることから、細胞のクローニングは必要でない。
【0164】
インビトロで転写されたRNA(IVT-RNA)を用いるT細胞の遺伝的改変では、両者ともにさまざまな動物モデルで継続的に検討されてきた2種類の戦略を利用する。これらは細胞に対して、インビトロで転写されたRNAを、リポフェクションまたはエレクトロポレーションによってトランスフェクトさせる。好ましくは、移入されたIVT-RNAの長期間にわたる発現を達成するために、さまざまな改変を用いてIVT-RNAを安定化することが望ましい。
【0165】
インビトロ転写のためのテンプレートとして標準化された様式で利用され、安定化されたRNA転写物が産生されるように遺伝的に改変されている、いくつかのIVTベクターが文献で公知である。現在、当技術分野で用いられるプロトコールは、以下の構造を有するプラスミドベクターに基づく:RNA転写を可能にする5' RNAポリメラーゼプロモーターと、それに続いて、3'および/または5'側に非翻訳領域(UTR)が隣接している関心対象の遺伝子、ならびに50~70ヌクレオチドを含む3'ポリアデニルカセット。インビトロ転写の前に、環状プラスミドはII型制限酵素(認識配列は切断部位に対応する)によってポリアデニルカセットの下流で線状化される。したがって、ポリアデニルカセットは転写物における後のポリ(A)配列に対応する。この手順の結果として、いくつかのヌクレオチドは、線状化の後に酵素切断部位の一部として残存し、伸長するか、または3'末端でポリ(A)配列を覆い隠す。この非生理的な突出部が、そのような構築物から細胞内で産生されるタンパク質の量に影響を及ぼすか否かは不明である。
【0166】
RNAには、より従来的なプラスミドまたはウイルスによるアプローチを上回るいくつかの利点がある。RNA供給源からの遺伝子発現は転写を必要とせず、トランスフェクション後にタンパク質産物が迅速に産生される。さらに、RNAは核ではなく細胞質に到達しさえすればよく、そのため、典型的なトランスフェクション法によって、極めて高率でのトランスフェクションがもたらされる。加えて、プラスミドに基づくアプローチは、関心対象の遺伝子の発現を作動させるプロモーターが、試験中の細胞において活性があることを必要とする。
【0167】
もう1つの局面において、RNA構築物はエレクトロポレーションによって細胞内に送達することができる。例えば、US 2004/0014645号、US 2005/0052630A1号、US 2005/0070841A1号、US 2004/0059285A1号、US 2004/0092907A1号に教示されているような、哺乳動物細胞への核酸構築物のエレクトロポレーションの処方物および方法を参照されたい。任意の既知の細胞型のエレクトロポレーションのために必要な電場強度を含むさまざまなパラメーターは、関連研究文献ならびに当技術分野における数多くの特許および出願において一般に公知である。例えば、米国特許第6,678,556号、米国特許第7,171,264号および米国特許第7,173,116号を参照されたい。エレクトロポレーションの治療的適用のための装置は市販されており、これには例えば、MedPulser(商標)DNA Electroporation Therapy System(Inovio/Genetronics, San Diego, Calif)があり、米国特許第6,567,694号;米国特許第6,516,223号、米国特許第5,993,434号、米国特許第6,181,964号、米国特許第6,241,701号および米国特許第6,233,482号などの特許に記載されている;また、エレクトロポレーションを、例えばUS20070128708A1号に記載されたように、インビトロでの細胞のトランスフェクションのために用いることもできる。また、エレクトロポレーションを、インビトロで細胞に核酸を送達するために利用することもできる。このように、当業者に公知の多くの利用可能なデバイスおよびエレクトロポレーションシステムのいずれかを利用した、発現構築物を含む核酸の細胞へのエレクトロポレーション媒介性投与は、関心対象のRNAを標的細胞に送達するための素晴らしい新たな手段となる。
【0168】
T細胞の活性化および増大
T細胞が核酸の導入の前に活性化される際には、T細胞上の共刺激分子が活性化されうる。T細胞の活性化の例には、例えばCD3および/またはCD28に対する抗体による、CD3および/またはCD28の刺激が含まれうる。T細胞を培養するために使用される培地は、T細胞を活性化することができる作用物質を含みうる。例えば、CD3を刺激することができる作用物質は、CD3に対する抗体であり、CD28を刺激することができる作用物質は、CD28に対する抗体である。
【0169】
もう1つの態様において、T細胞は、核酸の導入の前に活性化および/または増大されうる。一般に、T細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質、およびT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドをそれに付着している表面との接触によって増大されうる。あるいは、T細胞は、T細胞が集団内に含有されるように、培養または他の方法によって増大されうる。
【0170】
1つの局面において、T細胞を作製する方法は、T細胞を単離して、引き続いてエレクトロポレーションを行い、その後に培養を行う段階をさらに含むことができる。単離後に、T細胞を、培養装置において細胞培地中で、ある期間にわたって、または細胞が、別の培養装置への継代を行う前に最適な継代のためにコンフルエントもしくは高い細胞密度に達するまで、インキュベートすることができる。培養装置は、インビトロで細胞を培養するために一般的に用いられる任意の培養装置であることができる。期間は、インビトロでの細胞の培養に適する任意の時間であることができる。T細胞培地は、T細胞の培養中に、任意の時間に交換してもよい。好ましくは、T細胞培地を約2~3日毎に交換する。続いて、T細胞を培養装置から採取し、その上でT細胞を核酸導入のために直ちに用いるか、または凍結保存して後の使用のために貯蔵することができる。1つの態様において、方法は、核酸の導入の前にT細胞を凍結保存する段階をさらに含む。もう1つの態様において、方法は、T細胞を凍結保存する段階をさらに含む。さらにもう1つの態様において、凍結保存されたT細胞を、スイッチ分子核酸の導入、スイッチ分子を一過性に発現し、活性化因子を分泌するための組成物への製剤化、または対象への投与の前に、融解する。
【0171】
細胞は、米国特許第5,199,942号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている方法を用いて、エクスビボで増大させることができる。米国特許第5,199,942号に記載されているような増大は、本明細書に記載の他の増大方法の代替であることができ、またはそれに加えることができる。簡潔に言うと、T細胞のエクスビボ培養および増大は、米国特許第5,199,942号に記載されているものなどの細胞成長因子、または、例えば、Rapid Expansion Protocol(REP)に関してDudley et al., J. Immunol., 26(4):332-342, 2003に記載されているもののような、flt3-L、IL-1、IL-2、IL-3、およびc-kitリガンドなどの他の因子への添加を含む。1つの態様において、T細胞を増大させる段階は、flt3-L、IL-1、IL-3、およびc-kitリガンドからなる群より選択される因子とのT細胞の培養を含む。
【0172】
本明細書において記載されるような培養段階(本明細書において記載されるような作用物質との接触)は、極めて短くてもよく、例えば、24時間未満、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23時間未満などであってよい。本明細書において記載されるような培養段階(本明細書において記載されるような作用物質との接触)は、より長くてもよく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日、またはそれを上回る日数であってもよい。
【0173】
培養下にある細胞を記述するために、さまざまな用語を用いる。細胞培養物とは、一般に、生体から採取して、制御された条件下で増殖させた細胞のことを指す。初代細胞培養物とは、生物体から直接採取した、初回継代培養の前の細胞、組織または器官の培養物のことである。細胞は、それらが細胞の増殖および/または分裂を助長する条件下で増殖培地中に置かれた場合に、培養下で増大して、その結果、より大きな細胞集団となる。細胞が培養下で増大する場合、細胞増殖の速度は典型的には、細胞の数が2倍になるのに要する時間、別名では倍加時間としても知られる時間によって測定される。
【0174】
継代培養の各回は継代と称される。細胞を継代培養する場合、それらは継代されたと称される。細胞または細胞株の特定の集団は、時に、それが継代された回数によって称されるか、または特徴付けられることがある。例えば、10回継代された培養細胞集団はP10培養物と称することができる。初代培養物、すなわち、組織からの細胞の単離後の最初の培養物はP0と名付けられる。初回の継代培養後に、細胞は二次培養物(P1または継代1)と記載される。2回目の継代培養後、細胞は三次培養物(P2または継代2)となり、以後も同様である。継代の期間中には集団の倍加が数多く起こりうることが当業者には理解されよう。したがって、培養物の集団の倍加回数は継代数よりも大きい。継代間の期間中の細胞の増大(すなわち、集団倍加の回数)は多くの要因に依存し、これには播種密度、基質、培地、および継代間の時間が非限定的に含まれる。
【0175】
1つの態様においては、細胞を数時間(約3時間)~約14日間、またはその間の任意の整数値単位の時間にわたって培養することができる。T細胞の培養に適する条件には、血清(例えば、ウシ胎仔血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβおよびTNF-α、または当業者に公知である細胞増殖のための他の添加物を含む、増殖および生存のために必要な因子を含みうる適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640または、X-vivo 15(Lonza))が含まれる。細胞の増殖のための他の添加物には、界面活性剤、プラスマネート、および還元剤、例えばN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどが非限定的に含まれる。培地には、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミンが添加された、血清非含有であるか、またはT細胞の増殖および増大のために十分な、適量の血清(または血漿)もしくは規定されたホルモンのセットおよび/もしくは一定量のサイトカインが加えられた、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20、Optimizerが含まれうる。ペニシリンおよびストレプトマイシンなどの抗生物質は実験培養物のみに含められ、対象に注入しようとする細胞の培養物には含められない。標的細胞は、増殖を支えるために必要な条件下、例えば適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5% CO2)の下で維持される。
【0176】
T細胞を培養するために用いられる培地は、T細胞を共刺激しうる作用物質を含んでもよい。例えば、CD3を刺激しうる作用物質はCD3に対する抗体であり、CD28を刺激しうる作用物質はCD28に対する抗体である。これこそが、本明細書において開示されるデータによって実証されているように、本明細書において開示される方法によって単離された細胞が、およそ10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍、またはそれを上回って増大することができる理由である。1つの態様において、T細胞は、エレクトロポレーションを受けた集団を培養することによって、約20倍~約50倍の範囲で、またはそれを上回って増大する。
【0177】
もう1つの態様において、T細胞を作製する方法は、さらなる適用のためにエレクトロポレーションを受けたT細胞を単離する段階をさらに含むことができる。さらにもう1つの態様において、T細胞を作製する方法は、エレクトロポレーションを受けたT細胞に引き続いてエレクトロポレーションを行い、その後に培養する段階をさらに含むことができる。この引き続いてのエレクトロポレーションは、追加のスイッチ分子、またはT細胞を刺激する作用物質をコードするmRNAをエレクトロポレーションする段階を含んでもよい。作用物質は、さらなる増大、エフェクター機能、または別のT細胞機能を刺激することなどによって、T細胞を刺激しうる。1つの態様において、作用物質mRNAを、スイッチ分子mRNAとコエレクトロポレーションする。もう1つの態様において、T細胞は、スイッチ分子のmRNA、続いて作用物質のmRNAで、連続的にエレクトロポレーションを受ける。さらにもう1つの態様において、T細胞を、エレクトロポレーション段階の間に培養するか、または回復時間を与える。
【0178】
もう1つの態様において、方法は、CD3、CD27、CD28、CD83、CD86、CD127、4-1BBL、およびPD1からなる群より選択される少なくとも1種の共刺激分子で、エレクトロポレーションを受けたT細胞を刺激する段階をさらに含む。
【0179】
治療法
本明細書に記載のT細胞は、治療法のための組成物中に含まれてもよい。組成物は、薬学的組成物を含んでもよく、かつ、薬学的に許容される担体をさらに含む。T細胞を含む治療的有効量の薬学的組成物が、投与されうる。
【0180】
1つの局面において、本発明は、因子を標的部位に送達するための方法を含み、該方法は、スイッチ分子をコードする核酸を、改変T細胞を含む細胞の集団中に導入する段階であって、該スイッチ分子が、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含む前記段階:ならびに、該細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階であって、該T細胞が該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する前記段階を含む。
【0181】
そのような局面において、細胞の集団は、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、精製されたT細胞集団、およびT細胞株のいずれかを含みうる。集団中のT細胞はまた、本明細書に記載されたように活性化および増大されてもよい。
【0182】
もう1つの局面において、本発明は、細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階であって、T細胞がスイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子が、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)またはその断片を含む細胞外ドメインと、IL-12Rまたはその断片を含む細胞内ドメインとを含む前記段階を含む、因子を標的部位に送達するための方法を含み、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用は、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。
【0183】
さらにもう1つの局面において、本発明は、因子を標的部位に送達するための方法を含み、該方法は、細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階を含む。方法のT細胞は、スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子は、トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)またはその断片を含む細胞外ドメインと、IL-12Rまたはその断片を含む細胞内ドメインとを含む。スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用は、T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。さらにもう1つの局面において、本発明は、因子を標的部位に送達するための方法を含む。方法は、T細胞を含む細胞の集団を、その必要のある対象に投与する段階を含む。T細胞は、標的部位へ向かい、かつ、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子、および、標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体を一過性に発現する。方法は、T細胞を標的部位で活性化する段階であって、該T細胞が活性化因子を分泌するように誘導される前記段階をさらに含む。1つの態様において、T細胞を活性化する段階は、スイッチ分子の細胞外ドメインへのリガンドの結合を含む。もう1つの態様において、T細胞を活性化する段階は、T細胞上の活性化T細胞抗原への二重特異性抗体の結合を含む。
【0184】
もう1つの局面において、本発明は、スイッチ分子をコードする核酸を含む改変T細胞の集団を投与する段階を含む、疾患または状態を処置する方法を含む。例示的な態様において、T細胞は、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および他のシグナル伝達受容体からなる群より選択される膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメイン;ならびに、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインを含むスイッチ分子をコードする核酸を含み、該T細胞は該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用は、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する。T細胞は、標的の細胞または組織の溶解を誘導するために投与されうる。
【0185】
さらにもう1つの局面において、本発明は、疾患または状態を処置する方法を含む。方法は、膜受容体またはその断片を含む細胞外ドメインと、シグナル伝達受容体またはその断片を含む細胞内ドメインとを含むスイッチ分子をコードする核酸、および、標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸を含む改変T細胞の集団を投与する段階を含む。そのような局面において、T細胞は、スイッチ分子および二重特異性抗体を一過性に発現し、T細胞の活性化は、標的部位での活性化因子の分泌を誘導して、それにより疾患または状態を処置する。
【0186】
本明細書において記載されたように作製されたT細胞は概して均一であり、かつT細胞機能を保有する。さらに、該T細胞を、哺乳動物、好ましくはヒトに対して、糖尿病、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、GVHDなどの自己免疫疾患、同種免疫寛容誘導強化、移植拒絶反応などに共通するものなどの免疫反応を抑制するために投与することができる。加えて、本発明の細胞を、免疫応答、特に細胞媒介性免疫応答の減弱化または他の様式での阻害が、疾患を治療または軽減するために望まれる、任意の状態の治療のために用いることもできる。
【0187】
また、本明細書において記載されたように作製された改変T細胞を、自己免疫疾患である疾患または状態を治療するために用いることもできる。自己免疫疾患の例には、後天性免疫不全症候群(AIDS、これは自己免疫性要素を伴うウイルス性疾患である)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫病(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアック病-疱疹状皮膚炎;慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性慢性関節炎(スティル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、これは全身性硬化症(SS)としても知られる)、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、ならびにヴェーゲナー肉芽腫症が非限定的に含まれる。
【0188】
また、本明細書において記載されたように作製された改変T細胞を、炎症性障害である疾患または状態を治療するために用いることもできる。炎症性障害の例には、慢性および急性の炎症性障害が非限定的に含まれる。炎症性障害の例には、アルツハイマー病、喘息、アトピー性アレルギー、アレルギー、アテローム性動脈硬化、気管支喘息、湿疹、糸球体腎炎、移植片対宿主病、溶血性貧血、骨関節炎、敗血症、脳卒中、組織および臓器の移植、血管炎、糖尿病性網膜症および人工呼吸器誘発肺損傷が非限定的に含まれる。
【0189】
本明細書に記載されたように作製された、エレクトロポレーションを受けたT細胞はまた、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん、およびそれらの組み合わせなどの、がんである疾患または状態を処置するために用いることもできる。
【0190】
もう1つの態様において、本明細書に記載のT細胞を、その必要のある対象における疾患または状態の治療のための医薬の製造のために用いることもできる。
【0191】
本発明の細胞は、適切な前臨床的および臨床的な実験および治験で決定される投与量および経路ならびに回数で投与することができる。細胞組成物は、これらの範囲内にある投与量で複数回投与することができる。本発明の細胞の投与を、当業者による判断で、所望の疾患または状態を治療するために有用な他の方法と組み合わせてもよい。
【0192】
投与される本発明の細胞は、治療法を受ける対象にとって、自己性、同種性または異種性であってよい。
【0193】
本発明の細胞の投与は、当業者に公知である任意の好都合な様式で実施することができる。本発明の細胞は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸注、植え込みまたは移植によって対象に投与することができる。本明細書に記載の組成物は、患者に対して、経動脈的に、皮下に、皮内に、腫瘍内に、結節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射または腹腔内に投与することができる。また別の場合には、本発明の細胞は、対象における炎症の部位、対象における局所的疾患部位、リンパ節、臓器、腫瘍などに直接的に注射される。
【0194】
また、本明細書に記載の細胞を、いくつかのマトリックスを用いて投与することもできる。本発明では、そのようなマトリックスを、典型的にはT細胞のモジュレーションを通じて免疫系を支援し、維持し、またはモジュレートするための人工リンパ系器官として作用させる新しい状況で利用する。したがって、本発明は、組織工学において有用性が実証されているそのようなマトリックス組成物および製剤を利用することができる。したがって、本発明の組成物、装置、および方法に用いうるマトリックスの種類は事実上制限がなく、生体マトリックスおよび合成マトリックスの両方が含まれてよい。1つの具体例では、米国特許第5,980,889号;第5,913,998号;第5,902,745号;第5,843,069号;第5,787,900号;または第5,626,561号によって記載された組成物および装置が利用され、そのためこれらの特許はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。マトリックスは、哺乳動物宿主に投与した場合に生体適合性であることに一般的に関連する特徴を含む。マトリックスは、天然材料および/または合成材料で形成してよい。マトリックスは、インプラントのように永続的構造または除去可能な構造を動物の体内に残すことが望ましい場合には非生分解性であってもよく;または生分解性であってもよい。マトリックスは、スポンジ、インプラント、管、テルファパッド(telfa pad)、繊維、中空糸、凍結乾燥成分、ゲル、粉末、多孔性組成物、またはナノ粒子の形態をとりうる。加えて、マトリックスを、播種された細胞または産生されたサイトカインもしくは他の活性物質の持続放出が可能になるように設計することもできる。ある態様において、本発明のマトリックスは可撓性および伸縮性であり、無機塩、水性液、および酸素を含む溶存気体状物質などの物質を透過させる半固体スカフォールドとして記載することもできる。
【0195】
マトリックスは、本明細書において生体適合性物質の一例として用いられる。しかし、本発明はマトリックスには限定されないため、マトリックスという用語が出てきた場合、これらの用語はいずれも、細胞の保持または細胞の移動を可能にし、生体適合性であり、かつその物質自体が半透過性膜であるようにその物質中を直接高分子が移動するかまたは特定の半透過性物質とともに用いて高分子が移動することを可能にする、装置または他の物質を含むと解釈されるべきである。
【0196】
薬学的組成物
本発明の薬学的組成物は、本明細書に記載されたような改変T細胞または改変T細胞の集団を、1つまたは複数の薬学的または生理的に許容される担体、希釈剤または添加剤と組み合わせて含みうる。そのような組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝液;ブドウ糖、マンノース、ショ糖またはデキストラン、マンニトールなどの糖質;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸;酸化防止剤;EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);ならびに保存剤を含有してもよい。本発明の組成物は、静脈内投与用に製剤されることが好ましい。
【0197】
本発明の薬学的組成物は、治療(または予防)される疾患に適した方法で投与することができる。投与量および投与回数は、患者の状態、並びに患者の疾患の種類および重症度などの因子により決定されるが、適量は臨床試験により決定され得る。
【0198】
一般に、本明細書に記載のT細胞を含む薬学的組成物は、細胞104~109個/kg体重、好ましくは細胞105~106個/kg体重であって、これらの範囲内のすべての整数値を含む投与量で投与することができると言うことができる。また、T細胞組成物をこれらの用量で複数回投与することもできる。細胞は、免疫療法において一般的に公知である輸注手法を用いることによって投与することができる(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988を参照されたい)。個々の患者に関する最適な投与量および治療レジメンは、疾患の徴候に関して患者をモニタリングして、それに応じて治療を調節することによって、医療の当業者によって容易に決定されうる。
【0199】
ある態様においては、改変T細胞を対象に投与し、続いてその後に血液を再び採取して(またはアフェレーシスを行って)、それ由来のT細胞を本発明に従って活性化した上で、これらの改変および活性化されたT細胞を患者に再び輸注することが望ましいと考えられる。この過程を数週間毎に複数回行うことができる。ある態様において、T細胞は10ml~400mlの採取血から活性化させることができる。ある態様において、T細胞は20ml、30ml、40ml、50ml、60ml、70ml、80ml、90mlまたは100mlの採取血から再活性化される。理論に拘束されるわけではないが、この複数回の採血/複数回の再輸注プロトコールを用いることは、T細胞のある特定の集団を選別するために役立つ可能性がある。
【0200】
本発明のある態様において、本明細書に記載の方法、またはT細胞が治療レベルまで増大される当技術分野において公知の他の方法を用いて改変および活性化された細胞は、MS患者に対する抗ウイルス療法、シドホビルおよびインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとしても知られる)もしくはナタリズマブ治療、乾癬患者に対するエファリズマブ治療、またはPML患者に対する他の治療などの薬剤による治療を非限定的に含む、任意のさまざまな妥当な治療様式とともに(例えば、その前、それと同時、またはその後に)患者に投与される。さらなる態様において、本発明のT細胞は、化学療法、放射線照射、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレートおよびFK506など、抗体、またはCAMPATHなどの他の免疫除去薬、抗CD3抗体または他の抗体療法、サイトキシン、フルダリビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および照射と組み合わせて用いてもよい。これらの薬物は、カルシウム依存型ホスファターゼのカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または成長因子が誘導したシグナル伝達に重要であるp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)かのいずれかである(Liu et al., Cell 66:807-815, 1991;Henderson et al., Immun. 73:316-321, 1991;Bierer et al., Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993)。1つのさらなる態様において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法薬、外部ビーム照射(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体のいずれかを用いるT細胞除去療法と組み合わせて(例えば、その前、それと同時、またはその後に)、患者に投与される。もう1つの態様において、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えばリツキサンなどによるB細胞除去療法の後に投与される。例えば、1つの態様において、対象は、高用量の化学療法薬に続いて末梢血幹細胞移植を行う標準治療を受けることができる。ある態様においては、移植後に、対象は本発明の免疫細胞の輸注を受ける。1つの追加的な態様において、T細胞は、手術の前または後に投与される。
【0201】
患者に投与される上記の治療の投与量は、治療される状態および治療のレシピエントの厳密な性質と応じて異なると考えられる。ヒトへの投与に関する投与量の増減は、当技術分野において許容される実践に従って行うことができる。例えば、CAMPATHの用量は、一般に成人患者について1~約100mgの範囲であり、通常は1~30日の期間にわたって毎日投与される。好ましい一日量は1~10mg/日であるが、場合によっては、最大40mg/日までのより多くの用量を用いることもできる(米国特許第6,120,766号に記載)。
【0202】
本発明において有用であると考えられる方法および組成物は、実施例に示された特定の製剤に限定されないことが理解される必要がある。以下の実施例は、当業者に対して、本発明の細胞、増大および培養の方法、ならびに治療法の作製および使用の行い方の徹底した開示および説明を行う目的で述べられ、本発明者らが自分たちの発明とみなしていることの範囲を限定することを意図するものではない。
【0203】
本発明の実施には、別段の表示がある場合を除き、当技術分野の技能の範囲内にある分子生物学(組換え手法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の手法が用いられる。そのような手法は、"Molecular Cloning: A Laboratory Manual", fourth edition (Sambrook, 2012);"Oligonucleotide Synthesis" (Gait, 1984);"Culture of Animal Cells" (Freshney, 2010);"Methods in Enzymology" "Handbook of Experimental Immunology" (Weir, 1997);"Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells" (Miller and Calos, 1987);"Short Protocols in Molecular Biology" (Ausubel, 2002);"Polymerase Chain Reaction: Principles, Applications and Troubleshooting", (Babar, 2011);"Current Protocols in Immunology" (Coligan, 2002)などの文献中に十分に説明されている。これらの手法は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの作製に適用可能であり、そのため、本発明の策定および実施において考慮されている。特定の態様のために特に有用な手法について、以下の項において考察する。
【実施例0204】
実験的実施例
本発明を、以下の実験的実施例を参照することによってさらに詳細に説明する。これらの実施例は例示のみを目的として提供されるものであり、別に指定のある場合を除き、限定的であることは意図していない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されるとは全くみなされるべきではなく、そうではなくて、本明細書において提供される教示の結果として明らかになる任意かつすべての変更も範囲に含むとみなされるべきである。
【0205】
それ以上の説明がなくても、当業者は、前記の説明および以下の例示的な実施例を用いて、本発明の化合物を作製して利用し、請求される方法を実施することができると考えられる。以下の実施例は、このため、本発明の好ましい態様を具体的に指摘したものであり、本開示のそれ以外の部分を限定するものとは全くみなされるべきでない。
【0206】
本明細書において開示される実験の実施に用いられる材料および方法について以下に説明する。
【0207】
インビトロ転写(IVT)mRNAベクターの構築
PD1-CD28、PD1-41BB、およびTGFbR-IL12Rのスイッチ分子、ならびにBis-RNAはすべて、関連する公開特許から提供される配列情報に基づいて、合成するか、および/またはPCRによって増幅して組み立てた。PCR産物を、pGEM-GFP.64AのGFPを置き換えることによってpGEM.64Aベースのベクター中にサブクローニングして、pGEM.64Aベースのベクターを作製した。
【0208】
RNAのインビトロ転写(IVT)
mMESSAGE mMACHINE(登録商標)T7 Ultra(Ambion, Inc)を用いて、Anti-Reverse Cap Analog(ARCA、7-メチル(3'-O-メチル)GpppG)m7G(5')ppp(5')G)を有するIVT RNAを作製した。IVT RNA産物を、RNeasy Mini Kit(Qiagen, Inc., Valencia, CA)を用いて精製し、精製されたRNAを、RNase非含有水中に1~2mg/mlで溶出させた。
【0209】
T細胞のRNAエレクトロポレーション
精製された静止T細胞またはCD3/CD28ビーズで刺激されたT細胞に、BTX EM830(Harvard Apparatus BTX, Holliston, MA, USA)を用いてエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーションに供したT細胞を、OPTI-MEM(Invitrogen)で3回洗浄し、OPTI-MEM中に最終濃度1~3×108個/mlで再懸濁させた。その後に、0.1mlの細胞を、10μgのIVT RNA(または指定通り)と混合して、2-mmキュベットにおいてエレクトロポレーションを行った。
【0210】
エレクトロポレーションを受けたT細胞上のCAR検出
細胞を洗浄して、FACs緩衝液(PBS+0.1%アジ化ナトリウムおよび0.4% BSA)中に懸濁させた。ビオチン標識ポリクローナルヤギ抗マウスF(ab)2抗体(マウスscFvに対して)または抗ヒト抗F(ab)2(ヒトscFvに対して)(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)をチューブに添加し、細胞を4℃で25分間インキュベートして、2回洗浄した。続いて、細胞を、フィコエリトリン標識ストレプトアビジン(BD Pharmingen, San Diego, CA)で染色した。
【0211】
ELISA
標的細胞を洗浄して、R10中に106細胞/mLで懸濁させた。10万個の各標的細胞タイプを、96ウェル丸底プレート(Corning)の2つのウェルのそれぞれに添加した。エフェクターT細胞培養物を洗浄して、R10中に106細胞/mLで懸濁させた。10万個のエフェクターT細胞を、96ウェルプレートの指定されたウェルにおいて標的細胞と合わせた。加えて、T細胞のみを含有するウェルを用意した。プレートを、37℃で18~20時間インキュベートした。インキュベーション後に、上清を採取して、標準的な方法を用いるELISAアッセイ(Pierce, Rockford, IL)に供した。
【0212】
CD107a染色
細胞を、96ウェルプレートにおいて160μlの完全RPMI培地中に、1:1のE:T(エフェクター105個:標的105個)でプレーティングした。20μlのフィコエリトリン標識抗CD107a Ab(BD Pharmingen, San Diego, CA)を添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートして、その後にGolgi Stopを添加し、さらに2.5時間インキュベートした。2.5時間後に、10μlのFITC-抗CD8およびAPC-抗CD3を添加して、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、試料をFACS緩衝液で1回洗浄した。フローサイトメトリー取得をBD FacsCalibur(BD Biosciences)で行い、FlowJo(Treestar Inc, Ashland, OR)で分析を行った。
【0213】
CFSEベースのT細胞増殖アッセイ
PBS中10×106個/mLの濃度のT細胞を、3μMのCFSEで3分30秒間、室温で標識した。標識を、5%FBS(PBS中)で停止させ、R10で2回洗浄して、10IU/ml IL2を含むR10中で培養した。一晩培養後に、CFSE標識されたT細胞にエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーションの2~4時間後に、T細胞を、放射線照射された腫瘍またはK562細胞株で、1:1のT:刺激物質で刺激した。CFSE希釈をフローサイトメトリーによって検討し、指定通りの時間に細胞数を計数した。
【0214】
本明細書に開示された実験の結果を、以下に説明する。
【0215】
TGFβ受容体IおよびTGFβ受容体IIの細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを、それぞれ、IL-12受容体b1およびb2の細胞内ドメインと融合させて、TGFbR-IL-12R1 TGFbR-IL-12R2を作製した。これらの構築物を、pGEM.64AベースのRNAインビトロ転写ベクター中にクローニングした。図1を参照されたい。
【0216】
図2に列挙されたような複数のPD1および4-1BBのスイッチ分子を、4-1BB細胞外ドメインの構造に基づいて構築した。PD1-41BBスイッチ分子およびCAR分子が、PD1-41BBおよびCD19Z RNAをコエレクトロポレーションしたT細胞において検出された。図2に列挙されたようなPD1スイッチ分子構築物を、スイッチ分子RNAをCD19Z RNAとコエレクトロポレーションして、それらの発現について試験した。図3を参照されたい。
【0217】
TGFβシグナル伝達を、T細胞およびNK細胞の両方においてIL-12シグナル伝達にスイッチさせた。T細胞に、指定通りの5μg RNAをエレクトロポレーションして、10ng/mlのTGF-β1の添加を伴うかまたは伴わずに、さまざまな量のOKT3抗体で刺激した。IFN-γ分泌を、一晩刺激後にELISAによってアッセイした。IFNgR-IL-12Rスイッチ分子を、陽性対照として使用した(図4)。正常PBMCドナーから単離されたCD56+ NK細胞に、指定通りのRNAをエレクトロポレーションして、10ng/mlのTGF-β1の添加を伴うかまたは伴わずに、K562で刺激した。IFN-γ分泌を、4時間刺激後にELISAによってアッセイした。IFNgR-IL12Rスイッチ分子を、陽性対照として使用した(図4)。
【0218】
さまざまなTGFbスイッチ分子をエレクトロポレーションし、さまざまな濃度のOKT3抗体で刺激し、可溶性TGFβの存在下で培養したT細胞におけるIFN-γ産生。図4は、TGFbR-IL-12Rを有するT細胞におけるTGFbの存在下(TGFbR-IL-12および可溶性TGFb)でのIFN-γ産生の増加を示し、TGFbシグナルがIL-12シグナルにスイッチされ、IFN-γ産生の増加をもたらしたことを示す。これは、さらに、TGFbR-IL12Rスイッチ分子をエレクトロポレーションした、TGFbの存在下でのNK細胞からのIFN-γ分泌の増加によって確認された(図5)。
【0219】
Stat4は、IL-12シグナル伝達にとって決定的な転写因子である。TGFbR-IL12Rのエレクトロポレーションを受けた、TGF-βの存在下のT細胞のみが、検出可能なリン酸化Stat4(pStat4)を示したことが見出された(図6)。T細胞に、指定通りの5μg RNAをエレクトロポレーションした。4時間後に、10ng/mL TGFb1を添加して、30分後、pStat4(IL-12シグナル)を、pStat4の細胞内染色によって検討した。
【0220】
TGFbR-IL-12RおよびaTGFbII-1412の両方が、ドミナントネガティブTGFβ(DNTGFb)としてT細胞におけるTGFβシグナルに負の影響を及ぼすかどうかを試験するために、T細胞に、図7における指定通りのRNAをエレクトロポレーションして、5ng/ml TGFbで30分間刺激した。リン酸化Smad(pSmad)を、フローサイトメトリーによって測定した。対照RNA(IFNgR-IL-12R)およびエレクトロポレーションなし(EPなし)と比較して、TGFbR-IL12RまたはTGFbII-3-1412をエレクトロポレーションしたT細胞、およびドミナントネガティブTGFb(DNTGFb)を有するT細胞について、pSmadが抑制されたことが見出された。TGFbR-IL-12RまたはaTGFbII-3-1412のいずれかを有するT細胞は、pSmadの有意な減少を示し、これらのスイッチ分子の両方が、TGFbシグナルをIL-12またはCD28にスイッチングしただけではなく、TGFbに対するドミナントネガティブ分子として働く能力も有していたことを示唆した。
【0221】
図8および図9は、TGFbR-IL-12RのRNA 5ugまたはTGFbR-1412のRNA 5ugをエレクトロポレーションしたT細胞が、ドミナントTGFbRII(DNTGFbR)のように効率的にTGF-βシグナル伝達を遮断したことを示す。4時間後に、10ng/mL TGFb1を添加して、30分後、pSmad(TGF-βシグナル)を、pStat4の細胞内染色によって検討した。IFNgR-IL12Rを対照として使用し、pSmadの上方制御が示された。
【0222】
制御性T細胞(Treg)は、腫瘍免疫に負の影響を及ぼす非常に重要な役割を果たす。RNAエレクトロポレーションを受けたT細胞による抗Treg活性を有する送達分子は、Treg誘導に抵抗することによって、養子移入されたT細胞の抗腫瘍活性を潜在的に改善することができる。T細胞を、CFSEで標識して、Her2 CAR(4D5-BBZ)および指定通りのスイッチ分子をコエレクトロポレーションした。4時間後に、エレクトロポレーションを受けたT細胞を、放射線照射されたHer2/neu発現K562で、Teff:Treg=8:1の新しく単離された天然Tregの存在下で刺激した。CFSE希釈を、刺激後6日目および8日目に、フローサイトメトリーを用いて追跡した。有意なT細胞増殖が、スイッチ分子であるaTGFbII-3-1412およびTGFbR-IL12Rのエレクトロポレーションによって誘導された。T細胞は、aTGFbR-CD28スイッチ分子(aTGFbR-1412)を発現するT細胞の、Treg抑制に対する抵抗性の増加を示した(図10)。
【0223】
制御性T細胞(Treg)を、ソーティングされたナイーブT細胞から誘導した。3種の異なる方法を用いた:1.)Ab:10%FBSを含むX-Vivo-15中、ビーズ、65U/mL IL-2、32 U/mL TGF-b1、4500 U/mL IL-15、10ug/mL 抗IL-12、20ug/mL 抗IFN-g。2.)20*ビーズ:AIM-V中、ビーズ(20ビーズ:1細胞)、20U/mL IL-2、2ng/mL TGF-b1。3.)1/10ビーズ:10mM Hepes緩衝液およびストレプトマイシンを含むAIM-V中、ビーズ(1ビーズ:10細胞)、100U/mL IL-2、5ng/mL TGF-b1+100nM atRA。
【0224】
図11は、誘導されたTreg(iTreg)におけるFoxp3発現を示し、図12は、iTreg(PMA刺激)におけるiTregのサイトカイン産生の減少を示すが、エフェクター細胞における減少は示さない。エフェクターT細胞(Teff)の増殖もまた、iTregによって抑制された(図13)。
【0225】
Foxp3発現が減少し(図14)、これは、CFSE希釈アッセイにおけるT細胞増殖を抑制する能力の低減をもたらした(図15)。ソーティングされたナイーブCD4 T細胞に、指定通りのRNAをエレクトロポレーションして、指定通りの3種の異なるTreg誘導系に添加した。5日後に、Foxp3発現を、フローサイトメトリーによって検討した。T細胞を、CFSEで標識して、her2 CAR(4eD5-BBZ)および指定通りのスイッチ分子をコエレクトロポレーションした。4時間後に、エレクトロポレーションを受けたT細胞を、放射線照射されたHer2/neu発現K562で、Teff:Treg=8:1の、指定通りのRNAを移入されたナイーブCD4 T細胞から誘導された5日目のTregの存在下で刺激した。CFSE希釈を、刺激後4日目に、フローサイトメトリーを用いて追跡した。
【0226】
腫瘍認識についてのBis-RNA T細胞の感受性を試験するために、T細胞に、さまざまな用量のBis-RNAをエレクトロポレーションして、CD19 CAR RNAと比較した。類似した結果が、CD107aの上方制御から得られた(図16A)。
【0227】
IFN-γ/グランザイムB細胞内染色(図16B)およびELISAによってアッセイされたIFN-γ産生(図16C)の実験において、有意なT細胞活性化が、0.5μg Bis-RNAのような少量が用いられた際に観察された。さらに、1~2μgのBis-RNAは、5~10μg CD19 CAR RNAに匹敵したままであった。Bis-RNAが0.5μgの低用量であるにもかかわらず、Bis-RNA T細胞およびコインキュベートされたGFP-RNA T細胞は、依然として効率的な抗腫瘍活性を示した。
【0228】
4時間の細胞傷害性Tリンパ球アッセイにおいて、ブリナツモマブBis-RNAまたはCD19BBZ CAR RNAのいずれかの1、5、および10μgの用量の、異なる量のRNAを有するT細胞の溶解能力を比較した。図16Dに示されるように、T細胞の殺傷能力は、Bis-RNAおよびCAR RNAの両方について、RNA用量との相関を示した。
【0229】
ブリナツモマブRNAをエレクトロポレーションしたT細胞の機能的継続を試験するために、CD19 CAR RNAとの比較において、増加する用量のRNAをT細胞中にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後のさまざまな時間にT細胞をCD19+腫瘍株で刺激することによる抗原特異的なT細胞再活性化を、CD107aの上方制御レベルを見ることによって追跡した。エレクトロポレーションの1日後について、図16Aに既に示されるように、RNA用量が1μgより上である限り、Bis-RNA T細胞を、5~10μg CD19-CAR-T細胞のように効率的に活性化することができた。
【0230】
PD-L1を遮断することができるscFv(特許第AU2006265108A1号)および抗CD28 scFv(1412、米国特許第7,585,960 B2号)を用いた4種の二重特異性抗体を設計し、PCRによって遺伝子を合成した(図17)。シークエンシングにより、DNAがpGEM.64AベースのRNAインビトロ転写ベクター中に正確にクローニングされて、pGEM.10A5-1-1412、pGEM.13G4-1412、pGEM.1b12-1412、およびpGEM.12A4-1412を作製したことを検証した。図18を参照されたい。
【0231】
ELIAにより検出されたサイトカインIL2(図19A)およびIFN-γ(図19B)の産生により、PD1-CD28スイッチ分子である10A5-1412(aPDL1-aCD28 bi-RNA)および13G4-1412(aPDL1-aCD28 bi-RNA)は、IL-2およびIFN-γの両方の分泌を増加させることによってT細胞機能を有意に改善できたことが示された。この機能のスイッチは、PD1の負のシグナルがCD28の正のシグナルにスイッチされたことを示唆した。Bis-RNAスイッチ10A5-1412(aPDL1-aCD28 bi-RNA)および13G4-1412(aPDL1-aCD28 bi-RNA)を有するT細胞は、サイトカイン産生の増加を示し、これらの操作されたT細胞が、T細胞機能を正に改善するであろう活性化分子を送達できたことを示唆した。
【0232】
aTGFbRII-1およびaTGFbRII-3(米国特許第8,147,834,B2号由来)ならびに抗CD28 scFv(1412、米国特許第7,585,960 B2号)を設計し、PCRによって遺伝子を合成した。シークエンシングにより、DNAがpGEM.64AベースのRNAインビトロ転写ベクター中に正確にクローニングされて、pGEM.aTGFbR-1-1412およびpGEM.aTGFbR-3-1412を作製したことを検証した。図20を参照されたい。
【0233】
本明細書に引用された特許、特許出願および刊行物のそれぞれおよびすべての開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。具体的な態様を参照しながら本発明を開示してきたが、本発明の真の趣旨および範囲を逸脱することなく、本発明の他の態様および変形物も当業者によって考案されうることは明らかである。添付された特許請求の範囲は、そのようなすべての態様および等価な変形物を含むことを意図している。
【0234】
配列表
【0235】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> The Trustees of the University of Pennsylvania
<120> COMPOSITIONS AND METHODS FOR T CELL DELIVERY OF THERAPEUTIC
MOLECULES
<150> US 62/110,489
<151> 2015-01-31
<160> 17
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 717
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 1
atggaggcgg cggtcgctgc tccgcgtccc cggctgctcc tcctcgtgct ggcggcggcg 60
gcggcggcgg cggcggcgct gctcccgggg gcgacggcgt tacagtgttt ctgccacctc 120
tgtacaaaag acaattttac ttgtgtgaca gatgggctct gctttgtctc tgtcacagag 180
accacagaca aagttataca caacagcatg tgtatagctg aaattgactt aattcctcga 240
gataggccgt ttgtatgtgc accctcttca aaaactgggt ctgtgactac aacatattgc 300
tgcaatcagg accattgcaa taaaatagaa cttccaacta ctgtaaagtc atcacctggc 360
cttggtcctg tggaactggc agctgtcatt gctggaccag tgtgcttcgt ctgcatctca 420
ctcatgttga tggtctatat cagggccgca cggcacctgt gcccgccgct gcccacaccc 480
tgtgccagct ccgccattga gttccctgga gggaaggaga cttggcagtg gatcaaccca 540
gtggacttcc aggaagaggc atccctgcag gaggccctgg tggtagagat gtcctgggac 600
aaaggcgaga ggactgagcc tctcgagaag acagagctac ctgagggtgc ccctgagctg 660
gccctggata cagagttgtc cttggaggat ggagacaggt gcaaggccaa gatgtga 717

<210> 2
<211> 1212
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 2
atgggtcggg ggctgctcag gggcctgtgg ccgctgcaca tcgtcctgtg gacgcgtatc 60
gccagcacga tcccaccgca cgttcagaag tcggttaata acgacatgat agtcactgac 120
aacaacggtg cagtcaagtt tccacaactg tgtaaatttt gtgatgtgag attttccacc 180
tgtgacaacc agaaatcctg catgagcaac tgcagcatca cctccatctg tgagaagcca 240
caggaagtct gtgtggctgt atggagaaag aatgacgaga acataacact agagacagtt 300
tgccatgacc ccaagctccc ctaccatgac tttattctgg aagatgctgc ttctccaaag 360
tgcattatga aggaaaaaaa aaagcctggt gagactttct tcatgtgttc ctgtagctct 420
gatgagtgca atgacaacat catcttctca gaagaatata acaccagcaa tcctgacttg 480
ttgctagtca tatttcaagt gacaggcatc agcctcctgc caccactggg agttgccata 540
tctgtcatca tcatcttcta ccagcaaaag gtgtttgttc tcctagcagc cctcagacct 600
cagtggtgta gcagagaaat tccagatcca gcaaatagca cttgcgctaa gaaatatccc 660
attgcagagg agaagacaca gctgcccttg gacaggctcc tgatagactg gcccacgcct 720
gaagatcctg aaccgctggt catcagtgaa gtccttcatc aagtgacccc agttttcaga 780
catcccccct gctccaactg gccacaaagg gaaaaaggaa tccaaggtca tcaggcctct 840
gagaaagaca tgatgcacag tgcctcaagc ccaccacctc caagagctct ccaagctgag 900
agcagacaac tggtggatct gtacaaggtg ctggagagca ggggctccga cccaaagcca 960
gaaaacccag cctgtccctg gacggtgctc ccagcaggtg accttcccac ccatgatggc 1020
tacttaccct ccaacataga tgacctcccc tcacatgagg cacctctcgc tgactctctg 1080
gaagaactgg agcctcagca catctccctt tctgttttcc cctcaagttc tcttcaccca 1140
ctcaccttct cctgtggtga taagctgact ctggatcagt taaagatgag gtgtgactcc 1200
ctcatgctct ga 1212

<210> 3
<211> 1515
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 3
atgggttggt cctgcatcat cctgtttctc gtggccaccg ccaccggcgt gcactccgaa 60
attgtgttga cacagtctcc agccaccctg tctttgtctc caggggaaag agccaccctc 120
tcctgcaggg ccagtcagag tgttcgcagc tacttagcct ggtaccaaca gaaacctggc 180
caggctccca ggctcctcat ctatgatgca tccaacaggg ccactggcat cccagccagg 240
ttcagtggca gtgggtctgg gacagacttc actctcacca tcagcagcct agagcctgaa 300
gattttgcag tttattactg tcagcagcgt agcaactggc ctccgacgtt cggccaaggg 360
accaaggtgg aaatcaaaag tggagggggc ggttcacagc tgcaggtgca ggagtcgggc 420
ccaggactgg tgaagccttc ggagaccctg tccctcacct gcactgtctc tggtggctcc 480
atcagcaaca gttatttctc ctggggctgg atccgccagc ccccagggaa gggactggag 540
tggattggga gtttctatta tggtgaaaaa acctactaca acccgtccct caagagccga 600
gccaccatat ccattgacac gtccaagagc cagttctccc tgaagctgag ctctgtgacc 660
gccgcagaca cggctgtgta ttactgtccg agagggccta ctatgattcg gggagttata 720
gactcctggg gccagggaac cctggtgacg gtgtcgtcgg ggggcggggg gagtcaggtg 780
cagctggtgc agtccggagc cgaggtaaag aagccaggcg cttccgtcaa ggtgtcatgc 840
aaggcctcag gctacacctt cacaagctat tacatccact gggtgcgcca agctcccggt 900
cagggcttgg agtggatcgg gtgcatttac ccagggaacg tcaacacaaa ctacaacgag 960
aagttcaagg atcgggcaac cctgaccgtg gacacatcca tctctaccgc ctacatggag 1020
ctgtcacgcc tgcgctctga tgacaccgca gtgtacttct gtaccaggag tcactacggc 1080
ctggactgga actttgatgt ctggggccag ggaaccaccg tgacggtgtc cagtgtggag 1140
ggcggtagtg gcggctctgg tgggtccgga ggctcaggcg gcgtgatgga tgacattcag 1200
atgacccaga gtccctcctc cctctccgct tccgtcggag accgcgtgac catcacttgt 1260
cacgcctcac agaatatcta cgtgtggctg aactggtacc aacagaagcc cggcaaggcc 1320
cccaagctgc ttatctataa agcgtccaac ctccacacgg gagtcccttc ccgcttctcc 1380
ggatccggca gtgggacgga cttcacactc acaatctcgt cgctgcagcc agaggacttt 1440
gcgacgtact actgccagca gggccagacc tacccatata ctttcggcgg cgggaccaag 1500
gtggagatta agtaa 1515

<210> 4
<211> 1515
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 4
atgggttggt cctgcatcat cctgtttctc gtggccaccg ccaccggcgt gcactccgaa 60
attgtgttga cacagtctcc agccaccctg tctttgtctc caggggaaag agccaccctc 120
tcctgcaggg ccagtcagag tgttagaagt ttcttagcct ggtaccaaca gaaacctggc 180
caggctccca ggctcctcat ctatgatgca tccaacaggg ccactggcat cccagccagg 240
ttcagtggca gtggggtctg ggacagactt cactctcacc atcagcagcc tagagcctga 300
agattttgca gtttattact gtcagcagcg tagcaactgg cctccgacgt tcggccaagg 360
gaccaaggtg gaaatcaaaa gtggaggggg cggttcacag ctacagctgc aggagtcggg 420
cccaggactg gtgaagcctt cggagaccct atccctcacc tgcactgtct ctggtggctc 480
catcagcagt agtagttact cctggggctg gatccgccag cccccaggga agggcctgga 540
gtggattgga gtttctatta cagtgggatc acctactaca gcccgtccct caagagtcga 600
attatcatat ccgaagacac gtccaagaac cagttctccc tgaagctgag ttctgtgacc 660
gccgcagaca cggctgtgta ttactgtgcg agcgggttta ctatgattcg gggagccctt 720
gactactggg gccagggaac cctggtgacg gtgtcgtcgg ggggcggggg gagtcaggtg 780
cagctggtgc agtccggagc cgaggtaaag aagccaggcg cttccgtcaa ggtgtcatgc 840
aaggcctcag gctacacctt cacaagctat tacatccact gggtgcgcca agctcccggt 900
cagggcttgg agtggatcgg gtgcatttac ccagggaacg tcaacacaaa ctacaacgag 960
aagttcaagg atcgggcaac cctgaccgtg gacacatcca tctctaccgc ctacatggag 1020
ctgtcacgcc tgcgctctga tgacaccgca gtgtacttct gtaccaggag tcactacggc 1080
ctggactgga actttgatgt ctggggccag ggaaccaccg tgacggtgtc cagtgtggag 1140
ggcggtagtg gcggctctgg tgggtccgga ggctcaggcg gcgtgatgga tgacattcag 1200
atgacccaga gtccctcctc cctctccgct tccgtcggag accgcgtgac catcacttgt 1260
cacgcctcac agaatatcta cgtgtggctg aactggtacc aacagaagcc cggcaaggcc 1320
cccaagctgc ttatctataa agcgtccaac ctccacacgg gagtcccttc ccgcttctcc 1380
ggatccggca gtgggacgga cttcacactc acaatctcgt cgctgcagcc agaggacttt 1440
gcgacgtact actgccagca gggccagacc tacccatata ctttcggcgg cgggaccaag 1500
gtggagatta agtaa 1515

<210> 5
<211> 1449
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 5
atggatcccc agtgcactat gggactgagt aacattctct ttgtgatggc cttcctgctc 60
tctggtgctg ctcctctgaa gattcaagct tatttcaatg agactgcaga cctgccatgc 120
caatttgcaa actctcaaaa ccaaagcctg agtgagctag tagtattttg gcaggaccag 180
gaaaacttgg ttctgaatga ggtatactta ggcaaagaga aatttgacag tgttcattcc 240
aagtatatgg gccgcacaag ttttgattcg gacagttgga ccctgagact tcacaatctt 300
cagatcaagg acaagggctt gtatcaatgt atcatccatc acaaaaagcc cacaggaatg 360
attcgcatcc accagatgaa ttctgaactg tcagtgcttg ctaacttcag tcaacctgaa 420
atagtaccaa tttctaatat aacagaaaat gtgtacataa atttgacctg ctcatctata 480
cacggttacc cagaacctaa gaagatgagt gttttgctaa gaaccaagaa ttcaactatc 540
gagtatgatg gtattatgca gaaatctcaa gataatgtca cagaactgta cgacgtttcc 600
atcagcttgt ctgtttcatt ccctgatgtt acgagcaata tgaccatctt ctgtattctg 660
gaaactgaca agacgcggct tttatcttca cctttctcta tagagcttga ggaccctcag 720
cctcccccag accacattcc tggcggaggg ggaagtggcg ggggtgggtc cggcggcggc 780
ggctcgttta ctgtcacggt tcccaaggac ctatatgtgg tagagtatgg tagcaatatg 840
acaattgaat gcaaattccc agtagaaaaa caattagacc tggctgcact aattgtctat 900
tgggaaatgg aggataagaa cattattcaa tttgtgcatg gagaggaaga cctgaaggtt 960
cagcatagta gctacagaca gagggcccgg ctgttgaagg accagctctc cctgggaaat 1020
gctgcacttc agatcacaga tgtgaaattg caggatgcag gggtgtaccg ctgcatgatc 1080
agctatggtg gtgccgacta caagcgaatt actgtgaaag tcaatgcccc atacaacaaa 1140
atcaaccaaa gaattttggt tgtggatcca gtcacctctg aacatgaact gacatgtcag 1200
gctgagggct accccaaggc cgaagtcatc tggacaagca gtgaccatca agtcctgagt 1260
ggtaagacca ccaccaccaa ttccaagaga gaggagaagc ttttcaatgt gaccagcaca 1320
ctgagaatca acacaacaac taatgagatt ttctactgca cttttaggag attagatcct 1380
gaggaaaacc atacagctga attggtcatc ccagaactac ctctggcaca tcctccaaat 1440
gaaaggtaa 1449

<210> 6
<211> 1392
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 6
atggatcccc agtgcactat gggactgagt aacattctct ttgtgatggc cttcctgctc 60
tctggtgctg ctcctctgaa gattcaagct tatttcaatg agactgcaga cctgccatgc 120
caatttgcaa actctcaaaa ccaaagcctg agtgagctag tagtattttg gcaggaccag 180
gaaaacttgg ttctgaatga ggtatactta ggcaaagaga aatttgacag tgttcattcc 240
aagtatatgg gccgcacaag ttttgattcg gacagttgga ccctgagact tcacaatctt 300
cagatcaagg acaagggctt gtatcaatgt atcatccatc acaaaaagcc cacaggaatg 360
attcgcatcc accagatgaa ttctgaactg tcagtgcttg ctaacttcag tcaacctgaa 420
atagtaccaa tttctaatat aacagaaaat gtgtacataa atttgacctg ctcatctata 480
cacggttacc cagaacctaa gaagatgagt gttttgctaa gaaccaagaa ttcaactatc 540
gagtatgatg gtattatgca gaaatctcaa gataatgtca cagaactgta cgacgtttcc 600
atcagcttgt ctgtttcatt ccctgatgtt acgagcaata tgaccatctt ctgtattctg 660
gaaactgaca agacgcggct tttatcttca cctttctcta tagagcttga ggaccctcag 720
cctcccccag accacattcc tggcggaggg ggaagtggcg ggggtgggtc cggcggcggc 780
ggctcgttat tcacagtgac agtccctaag gaactgtaca taatagagca tggcagcaat 840
gtgaccctgg aatgcaactt tgacactgga agtcatgtga accttggagc aataacagcc 900
agtttgcaaa aggtggaaaa tgatacatcc ccacaccgtg aaagagccac tttgctggag 960
gagcagctgc ccctagggaa ggcctcgttc cacatacctc aagtccaagt gagggacgaa 1020
ggacagtacc aatgcataat catctatggg gtcgcctggg actacaagta cctgactctg 1080
aaagtcaaag cttcctacag gaaaataaac actcacatcc taaaggttcc agaaacagat 1140
gaggtagagc tcacctgcca ggctacaggt tatcctctgg cagaagtatc ctggccaaac 1200
gtcagcgttc ctgccaacac cagccactcc aggacccctg aaggcctcta ccaggtcacc 1260
agtgttctgc gcctaaagcc accccctggc agaaacttca gctgtgtgtt ctggaatact 1320
cacgtgaggg aacttacttt ggccagcatt gaccttcaaa gtcagatgga acccaggacc 1380
catccaactt aa 1392

<210> 7
<211> 1434
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 7
atgggccaca cacggaggca gggaacatca ccatccaagt gtccatacct caatttcttt 60
cagctcttgg tgctggctgg tctttctcac ttctgttcag gtgttatcca cgtgaccaag 120
gaagtgaaag aagtggcaac gctgtcctgt ggtcacaatg tttctgttga agagctggca 180
caaactcgca tctactggca aaaggagaag aaaatggtgc tgactatgat gtctggggac 240
atgaatatat ggcccgagta caagaaccgg accatctttg atatcactaa taacctctcc 300
attgtgatcc tggctctgcg cccatctgac gagggcacat acgagtgtgt tgttctgaag 360
tatgaaaaag acgctttcaa gcgggaacac ctggctgaag tgacgttatc agtcaaagct 420
gacttcccta cacctagtat atctgacttt gaaattccaa cttctaatat tagaaggata 480
atttgctcaa cctctggagg ttttccagag cctcacctct cctggttgga aaatggagaa 540
gaattaaatg ccatcaacac aacagtttcc caagatcctg aaactgagct ctatgctgtt 600
agcagcaaac tggatttcaa tatgacaacc aaccacagct tcatgtgtct catcaagtat 660
ggacatttaa gagtgaatca gaccttcaac tggaatacaa ccaagcaaga gcattttcct 720
gataacggcg gagggggaag tggcgggggt gggtccggcg gcggcggctc gtttactgtc 780
acggttccca aggacctata tgtggtagag tatggtagca atatgacaat tgaatgcaaa 840
ttcccagtag aaaaacaatt agacctggct gcactaattg tctattggga aatggaggat 900
aagaacatta ttcaatttgt gcatggagag gaagacctga aggttcagca tagtagctac 960
agacagaggg cccggctgtt gaaggaccag ctctccctgg gaaatgctgc acttcagatc 1020
acagatgtga aattgcagga tgcaggggtg taccgctgca tgatcagcta tggtggtgcc 1080
gactacaagc gaattactgt gaaagtcaat gccccataca acaaaatcaa ccaaagaatt 1140
ttggttgtgg atccagtcac ctctgaacat gaactgacat gtcaggctga gggctacccc 1200
aaggccgaag tcatctggac aagcagtgac catcaagtcc tgagtggtaa gaccaccacc 1260
accaattcca agagagagga gaagcttttc aatgtgacca gcacactgag aatcaacaca 1320
acaactaatg agattttcta ctgcactttt aggagattag atcctgagga aaaccataca 1380
gctgaattgg tcatcccaga actacctctg gcacatcctc caaatgaaag gtaa 1434

<210> 8
<211> 1377
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 8
atgggccaca cacggaggca gggaacatca ccatccaagt gtccatacct caatttcttt 60
cagctcttgg tgctggctgg tctttctcac ttctgttcag gtgttatcca cgtgaccaag 120
gaagtgaaag aagtggcaac gctgtcctgt ggtcacaatg tttctgttga agagctggca 180
caaactcgca tctactggca aaaggagaag aaaatggtgc tgactatgat gtctggggac 240
atgaatatat ggcccgagta caagaaccgg accatctttg atatcactaa taacctctcc 300
attgtgatcc tggctctgcg cccatctgac gagggcacat acgagtgtgt tgttctgaag 360
tatgaaaaag acgctttcaa gcgggaacac ctggctgaag tgacgttatc agtcaaagct 420
gacttcccta cacctagtat atctgacttt gaaattccaa cttctaatat tagaaggata 480
atttgctcaa cctctggagg ttttccagag cctcacctct cctggttgga aaatggagaa 540
gaattaaatg ccatcaacac aacagtttcc caagatcctg aaactgagct ctatgctgtt 600
agcagcaaac tggatttcaa tatgacaacc aaccacagct tcatgtgtct catcaagtat 660
ggacatttaa gagtgaatca gaccttcaac tggaatacaa ccaagcaaga gcattttcct 720
gataacggcg gagggggaag tggcgggggt gggtccggcg gcggcggctc gttattcaca 780
gtgacagtcc ctaaggaact gtacataata gagcatggca gcaatgtgac cctggaatgc 840
aactttgaca ctggaagtca tgtgaacctt ggagcaataa cagccagttt gcaaaaggtg 900
gaaaatgata catccccaca ccgtgaaaga gccactttgc tggaggagca gctgccccta 960
gggaaggcct cgttccacat acctcaagtc caagtgaggg acgaaggaca gtaccaatgc 1020
ataatcatct atggggtcgc ctgggactac aagtacctga ctctgaaagt caaagcttcc 1080
tacaggaaaa taaacactca catcctaaag gttccagaaa cagatgaggt agagctcacc 1140
tgccaggcta caggttatcc tctggcagaa gtatcctggc caaacgtcag cgttcctgcc 1200
aacaccagcc actccaggac ccctgaaggc ctctaccagg tcaccagtgt tctgcgccta 1260
aagccacccc ctggcagaaa cttcagctgt gtgttctgga atactcacgt gagggaactt 1320
actttggcca gcattgacct tcaaagtcag atggaaccca ggacccatcc aacttaa 1377

<210> 9
<211> 1440
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 9
atgaggatat ttgctgtctt tatattcatg acctactggc atttgctgaa cgcatttact 60
gtcacggttc ccaaggacct atatgtggta gagtatggta gcaatatgac aattgaatgc 120
aaattcccag tagaaaaaca attagacctg gctgcactaa ttgtctattg ggaaatggag 180
gataagaaca ttattcaatt tgtgcatgga gaggaagacc tgaaggttca gcatagtagc 240
tacagacaga gggcccggct gttgaaggac cagctctccc tgggaaatgc tgcacttcag 300
atcacagatg tgaaattgca ggatgcaggg gtgtaccgct gcatgatcag ctatggtggt 360
gccgactaca agcgaattac tgtgaaagtc aatgccccat acaacaaaat caaccaaaga 420
attttggttg tggatccagt cacctctgaa catgaactga catgtcaggc tgagggctac 480
cccaaggccg aagtcatctg gacaagcagt gaccatcaag tcctgagtgg taagaccacc 540
accaccaatt ccaagagaga ggagaagctt ttcaatgtga ccagcacact gagaatcaac 600
acaacaacta atgagatttt ctactgcact tttaggagat tagatcctga ggaaaaccat 660
acagctgaat tggtcatccc agaactacct ctggcacatc ctccaaatga aaggggcgga 720
gggggaagtg gcgggggtgg gtccggcggc ggcggctcgg gtgctgctcc tctgaagatt 780
caagcttatt tcaatgagac tgcagacctg ccatgccaat ttgcaaactc tcaaaaccaa 840
agcctgagtg agctagtagt attttggcag gaccaggaaa acttggttct gaatgaggta 900
tacttaggca aagagaaatt tgacagtgtt cattccaagt atatgggccg cacaagtttt 960
gattcggaca gttggaccct gagacttcac aatcttcaga tcaaggacaa gggcttgtat 1020
caatgtatca tccatcacaa aaagcccaca ggaatgattc gcatccacca gatgaattct 1080
gaactgtcag tgcttgctaa cttcagtcaa cctgaaatag taccaatttc taatataaca 1140
gaaaatgtgt acataaattt gacctgctca tctatacacg gttacccaga acctaagaag 1200
atgagtgttt tgctaagaac caagaattca actatcgagt atgatggtat tatgcagaaa 1260
tctcaagata atgtcacaga actgtacgac gtttccatca gcttgtctgt ttcattccct 1320
gatgttacga gcaatatgac catcttctgt attctggaaa ctgacaagac gcggctttta 1380
tcttcacctt tctctataga gcttgaggac cctcagcctc ccccagacca cattccttaa 1440

<210> 10
<211> 1408
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 10
atgaggatat ttgctgtctt tatattcatg acctactggc atttgctgaa cgcatttact 60
gtcacggttc ccaaggacct atatgtggta gagtatggta gcaatatgac aattgaatgc 120
aaattcccag tagaaaaaca attagacctg gctgcactaa ttgtctattg ggaaatggag 180
gataagaaca ttattcaatt tgtgcatgga gaggaagacc tgaaggttca gcatagtagc 240
tacagacaga gggcccggct gttgaaggac cagctctccc tgggaaatgc tgcacttcag 300
atcacagatg tgaaattgca ggatgcaggg gtgtaccgct gcatgatcag ctatggtggt 360
gccgactaca agcgaattac tgtgaaagtc aatgccccat acaacaaaat caaccaaaga 420
attttggttg tggatccagt cacctctgaa catgaactga catgtcaggc tgagggctac 480
cccaaggccg aagtcatctg gacaagcagt gaccatcaag tcctgagtgg taagaccacc 540
accaccaatt ccaagagaga ggagaagctt ttcaatgtga ccagcacact gagaatcaac 600
acaacaacta atgagatttt ctactgcact tttaggagat tagatcctga ggaaaaccat 660
acagctgaat tggtcatccc agaactacct ctggcacatc ctccaaatga aaggggcgga 720
gggggaagtg gcgggggtgg gtccggcggc ggcggctcgt ctttctcact tctgttcagg 780
tgttatccac gtgaccaagg aagtgaaaga agtggcaacg ctgtcctgtg gtcacaatgt 840
ttctgttgaa gagctggcac aaactcgcat ctactggcaa aaggagaaga aaatggtgct 900
gactatgatg tctggggaca tgaatatatg gcccgagtac aagaaccgga ccatctttga 960
tatcactaat aacctctcca ttgtgatcct ggctctgcgc ccatctgacg agggcacata 1020
cgagtgtgtt gttctgaagt atgaaaaaga cgctttcaag cgggaacacc tggctgaagt 1080
gacgttatca gtcaaagctg acttccctac acctagtata tctgactttg aaattccaac 1140
ttctaatatt agaaggataa tttgctcaac ctctggaggt tttccagagc ctcacctctc 1200
ctggttggaa aatggagaag aattaaatgc catcaacaca acagtttccc aagatcctga 1260
aactgagctc tatgctgtta gcagcaaact ggatttcaat atgacaacca accacagctt 1320
catgtgtctc atcaagtatg gacatttaag agtgaatcag accttcaact ggaatacaac 1380
caagcaagag cattttcctg ataactaa 1408

<210> 11
<211> 1383
<212> DNA
<213> Homo Sapiens
<400> 11
atgatcttcc tcctgctaat gttgagcctg gaattgcagc ttcaccagat agcagcttta 60
ttcacagtga cagtccctaa ggaactgtac ataatagagc atggcagcaa tgtgaccctg 120
gaatgcaact ttgacactgg aagtcatgtg aaccttggag caataacagc cagtttgcaa 180
aaggtggaaa atgatacatc cccacaccgt gaaagagcca ctttgctgga ggagcagctg 240
cccctaggga aggcctcgtt ccacatacct caagtccaag tgagggacga aggacagtac 300
caatgcataa tcatctatgg ggtcgcctgg gactacaagt acctgactct gaaagtcaaa 360
gcttcctaca ggaaaataaa cactcacatc ctaaaggttc cagaaacaga tgaggtagag 420
ctcacctgcc aggctacagg ttatcctctg gcagaagtat cctggccaaa cgtcagcgtt 480
cctgccaaca ccagccactc caggacccct gaaggcctct accaggtcac cagtgttctg 540
cgcctaaagc caccccctgg cagaaacttc agctgtgtgt tctggaatac tcacgtgagg 600
gaacttactt tggccagcat tgaccttcaa agtcagatgg aacccaggac ccatccaact 660
ggcggagggg gaagtggcgg gggtgggtcc ggcggcggcg gctcgggtgc tgctcctctg 720
aagattcaag cttatttcaa tgagactgca gacctgccat gccaatttgc aaactctcaa 780
aaccaaagcc tgagtgagct agtagtattt tggcaggacc aggaaaactt ggttctgaat 840
gaggtatact taggcaaaga gaaatttgac agtgttcatt ccaagtatat gggccgcaca 900
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ttgtatcaat gtatcatcca tcacaaaaag cccacaggaa tgattcgcat ccaccagatg 1020
aattctgaac tgtcagtgct tgctaacttc agtcaacctg aaatagtacc aatttctaat 1080
ataacagaaa atgtgtacat aaatttgacc tgctcatcta tacacggtta cccagaacct 1140
aagaagatga gtgttttgct aagaaccaag aattcaacta tcgagtatga tggtattatg 1200
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ttccctgatg ttacgagcaa tatgaccatc ttctgtattc tggaaactga caagacgcgg 1320
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cct 1383

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<213> Artificial Sequence
<220>
<223> vector
<400> 12
Met Gly Trp Ser Cys Ile Ile Leu Phe Leu Val Ala Thr Ala Thr Gly
1 5 10 15
Val His Ser Glu Ile Val Leu Thr Gln Ser Pro Ala Thr Leu Ser Leu
20 25 30
Ser Pro Gly Glu Arg Ala Thr Leu Ser Cys Arg Ala Ser Gln Ser Val
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Ser Ser Tyr Leu Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Gln Ala Pro Arg
50 55 60
Leu Leu Ile Tyr Asp Ala Ser Asn Arg Ala Thr Gly Ile Pro Ala Arg
65 70 75 80
Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser
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Leu Glu Pro Glu Asp Phe Ala Val Tyr Tyr Cys Gln Gln Arg Ser Asn
100 105 110
Trp Pro Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys Ser Gly Gly
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Gly Gly Ser Gln Val Gln Leu Val Gln Ser Gly Ala Glu Val Lys Lys
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Pro Gly Ser Ser Val Lys Val Ser Cys Lys Thr Ser Gly Asp Thr Phe
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Ser Thr Tyr Ala Ile Ser Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Gln Gly Leu
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Glu Trp Met Gly Gly Ile Ile Pro Ile Phe Gly Lys Ala His Tyr Ala
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Gln Lys Phe Gln Gly Arg Val Thr Ile Thr Ala Asp Glu Ser Thr Ser
195 200 205
Thr Ala Tyr Met Glu Leu Ser Ser Leu Arg Ser Glu Asp Thr Ala Val
210 215 220
Tyr Phe Cys Ala Arg Lys Phe His Phe Val Ser Gly Ser Pro Phe Gly
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Met Asp Val Trp Gly Gln Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ser
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<213> Artificial Sequence
<220>
<223> vector
<400> 13
Met Gly Trp Ser Cys Ile Ile Leu Phe Leu Val Ala Thr Ala Thr Gly
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Val His Ser Ala Ile Gln Leu Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala
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Ser Val Gly Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Ala Ser Gln Gly Ile
35 40 45
Ser Ser Ala Leu Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys
50 55 60
Leu Leu Ile Tyr Asp Ala Ser Ser Leu Glu Ser Gly Val Pro Ser Arg
65 70 75 80
Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser
85 90 95
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Tyr Pro Phe Thr Phe Gly Pro Gly Thr Lys Val Asp Ile Lys Ser Gly
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Gly Gly Gly Ser Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val
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Gln Pro Gly Arg Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Ile Thr
145 150 155 160
Phe Asp Asp Tyr Gly Met His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly
165 170 175
Leu Glu Trp Val Ser Gly Ile Ser Trp Asn Arg Gly Arg Ile Glu Tyr
180 185 190
Ala Asp Ser Val Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Ala Lys
195 200 205
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210 215 220
Leu Tyr Tyr Cys Ala Lys Gly Arg Phe Arg Tyr Phe Asp Trp Phe Leu
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Asp Tyr Trp Gly Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
245 250

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<213> Artificial Sequence
<220>
<223> vector
<400> 14
Met Gly Trp Ser Cys Ile Ile Leu Phe Leu Val Ala Thr Ala Thr Gly
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Val His Ser Glu Ile Val Leu Thr Gln Ser Pro Ala Thr Leu Ser Leu
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Ser Pro Gly Glu Arg Ala Thr Leu Ser Cys Arg Ala Ser Gln Ser Val
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Ser Ser Tyr Leu Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Gln Ala Pro Arg
50 55 60
Leu Leu Ile Tyr Asp Ala Ser Asn Arg Ala Thr Gly Ile Pro Ala Arg
65 70 75 80
Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser
85 90 95
Leu Glu Pro Glu Asp Phe Ala Val Tyr Tyr Cys Gln Gln Arg Ser Asn
100 105 110
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Pro Gly Ser Ser Val Lys Val Ser Cys Lys Thr Ser Gly Asp Thr Phe
145 150 155 160
Ser Ser Tyr Ala Ile Ser Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Gln Gly Leu
165 170 175
Glu Trp Met Gly Gly Ile Ile Pro Ile Phe Gly Arg Ala His Tyr Ala
180 185 190
Gln Lys Phe Gln Gly Arg Val Thr Ile Thr Ala Asp Glu Ser Thr Ser
195 200 205
Thr Ala Tyr Met Glu Leu Ser Ser Leu Arg Ser Glu Asp Thr Ala Val
210 215 220
Tyr Phe Cys Ala Arg Lys Phe His Phe Val Ser Gly Ser Pro Phe Gly
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Met Asp Val Trp Gly Gln Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ser
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<213> Artificial Sequence
<220>
<223> vector
<400> 15
Met Gly Trp Ser Cys Ile Ile Leu Phe Leu Val Ala Thr Ala Thr Gly
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Val His Ser Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala
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Ser Val Gly Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Ala Ser Gln Gly Ile
35 40 45
Ser Ser Trp Leu Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Glu Lys Ala Pro Lys
50 55 60
Ser Leu Ile Tyr Ala Ala Ser Ser Leu Gln Ser Gly Val Pro Ser Arg
65 70 75 80
Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser
85 90 95
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100 105 110
Tyr Pro Tyr Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Leu Glu Ile Lys Ser Gly
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Gly Gly Gly Ser Gln Val Gln Leu Val Gln Ser Gly Ala Glu Val Lys
130 135 140
Lys Pro Gly Ala Ser Val Lys Val Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr
145 150 155 160
Phe Thr Ser Tyr Asp Val His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Gln Arg
165 170 175
Leu Glu Trp Met Gly Trp Leu His Ala Asp Thr Gly Ile Thr Lys Phe
180 185 190
Ser Gln Lys Phe Gln Gly Arg Val Thr Ile Thr Arg Asp Thr Ser Ala
195 200 205
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210 215 220
Val Tyr Tyr Cys Ala Arg Glu Arg Ile Gln Leu Trp Phe Asp Tyr Trp
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Gly Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
245 250

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<213> Artificial Sequence
<220>
<223> vector
<400> 16
Met Gly Trp Ser Cys Ile Ile Leu Phe Leu Val Ala Thr Ala Thr Gly
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Val His Ser Glu Ile Val Leu Thr Gln Ser Pro Ala Thr Leu Ser Leu
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Ser Pro Gly Glu Arg Ala Thr Leu Ser Cys Arg Ala Ser Gln Ser Val
35 40 45
Ser Ser Tyr Leu Val Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Gln Ala Pro Arg
50 55 60
Leu Leu Ile Tyr Asp Ala Ser Asn Arg Ala Thr Gly Ile Pro Ala Arg
65 70 75 80
Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser
85 90 95
Leu Glu Pro Glu Asp Phe Ala Val Tyr Tyr Cys Gln Gln Arg Ser Asn
100 105 110
Trp Pro Arg Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys Ser Gly
115 120 125
Gly Gly Gly Ser Gln Val Gln Leu Val Gln Ser Gly Ala Glu Val Lys
130 135 140
Lys Pro Gly Ala Ser Val Lys Val Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr
145 150 155 160
Phe Thr Asp Tyr Gly Phe Ser Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Gln Gly
165 170 175
Leu Glu Trp Met Gly Trp Ile Thr Ala Tyr Asn Gly Asn Thr Asn Tyr
180 185 190
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195 200 205
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Val Tyr Tyr Cys Ala Arg Asp Tyr Phe Tyr Gly Met Asp Val Trp Gly
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245

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<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> vector
<400> 17
Gly Gly Gly Gly Ser Gln Val Gln Leu Val Gln Ser Gly Ala Glu Val
1 5 10 15
Lys Lys Pro Gly Ala Ser Val Lys Val Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr
20 25 30
Thr Phe Thr Ser Tyr Tyr Ile His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Gln
35 40 45
Gly Leu Glu Trp Ile Gly Cys Ile Tyr Pro Gly Asn Val Asn Thr Asn
50 55 60
Tyr Asn Glu Lys Phe Lys Asp Arg Ala Thr Leu Thr Val Asp Thr Ser
65 70 75 80
Ile Ser Thr Ala Tyr Met Glu Leu Ser Arg Leu Arg Ser Asp Asp Thr
85 90 95
Ala Val Tyr Phe Cys Thr Arg Ser His Tyr Gly Leu Asp Trp Asn Phe
100 105 110
Asp Val Trp Gly Gln Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ser Val Glu Gly
115 120 125
Gly Ser Gly Gly Ser Gly Gly Ser Gly Gly Ser Gly Gly Val Asp Asp
130 135 140
Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly Asp
145 150 155 160
Arg Val Thr Ile Thr Cys His Ala Ser Gln Asn Ile Tyr Val Trp Leu
165 170 175
Asn Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile Tyr
180 185 190
Lys Ala Ser Asn Leu His Thr Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly Ser
195 200 205
Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro Glu
210 215 220
Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Gly Gln Thr Tyr Pro Tyr Thr
225 230 235 240
Phe Gly Gly Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys
245 250
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17
図18
図19A
図19B
図20
【配列表】
2023099753000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ分子をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子であって、
該スイッチ分子が、
(a)トランスフォーミング成長因子-β受容体(TGF-β-R)、プログラム細胞死1(PD1)、およびインターフェロン-γ受容体(IFN-γ)からなる群より選択される膜受容体細胞外ドメインならびに
(b)インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、CD3、CD28、CD137、CD27、ICOS、OX40、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるシグナル伝達受容体細胞内ドメイン
を含む、前記単離された核酸分子
【請求項2】
スイッチ分子が、
(a)TGF-β-Rの細胞外ドメイン;
(b)IL-2R、IL-12R、もしくはCD28の細胞内ドメイン;
(c)IL-12Rの細胞内ドメイン;または
(d)TGF-β-Rの細胞外ドメインおよびIL-12Rの細胞内ドメイン
を含む、請求項1記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
ンビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含む、請求項1または2記載の単離された核酸分子
【請求項4】
配列番号1、2、3、または4の核酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
スイッチ分子を一過性に発現するT細胞を作製するための方法であって、
(a)請求項1~4のいずれか一項記載の単離された核酸分子を、T細胞を含む免疫細胞の集団中に導入する段階
(b)該免疫細胞の集団を、約24時間未満、または約1日から約10日間、培養および/または増大させる段階;ならびに
(c)貯蔵または即時使用のために、該免疫細胞の集団を採取する段階
を含み、
該免疫細胞の集団が該スイッチ分子を一過性に発現し、該スイッチ分子の細胞外ドメインとそのそれぞれのリガンドとの相互作用が、該T細胞による標的部位での活性化因子の分泌を誘導する
前記方法。
【請求項6】
(a)免疫細胞の集団が、
(i)約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22もしくは約23時間培養される;または
(ii)約3時間培養される;または
(iii)約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14日間、もしくはそれらを上回る日数にわたって培養される;および/あるいは
(b)免疫細胞の集団中のT細胞が、少なくとも
(i)約10倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、もしくは約200倍に増大する;または
(ii)約20倍から約50倍に増大する、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
核酸分子を導入する段階が、核酸を免疫細胞の集団にエレクトロポレーションすることを含む、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
免疫細胞の集団が、
(a)末梢血単核細胞、臍帯血細胞、精製されたT細胞集団、およびT細胞株からなる群より選択される
(b)末梢血単核細胞を含む;または、
(c)精製されたT細胞を含む、
請求項5~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
(a)標的細胞上の抗原と活性化T細胞上の抗原とに対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸、ならびに
(b)可溶性融合タンパク質をコードする核酸;および/または
(c)キメラ抗原受容体をコードする核酸
を免疫細胞の集団中に導入する段階をさらに含む、請求項5~8のいずれか一項記載の方法であって、
T細胞が、前記スイッチ分子、該可溶性融合タンパク質、および/または該二重特異性抗体を一過性に発現し、かつ該二重特異性抗体を分泌する、
前記方法。
【請求項10】
可溶性融合タンパク質が、
(a)CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、またはそれらの任意の断片に特異性を有する少なくとも1つの結合ドメイン;
(b)任意の腫瘍関連抗原(TAA)、もしくは、ウイルス、細菌、および寄生虫抗原、またはそれらの任意の断片と結合するための特異性を有する少なくとも1つの結合ドメイン;あるいは
(c)合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖可変断片、単一ドメイン抗体、それらの抗原結合断片、およびそれらの任意の組み合わせを含む、少なくとも1つの結合ドメイン
を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
(a)核酸分子を導入する段階の前に、免疫細胞を活性化および増大させる段階;ならびに/または
(b)核酸分子を導入する段階の前に、T細胞を精製および凍結保存する段階
をさらに含む、請求項5~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
T細胞が、抗CD3抗体および抗CD28抗体で活性化される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
スイッチ分子を一過性に発現する、請求項5~12のいずれか一項記載の方法によって作製された改変T細胞。
【請求項14】
可溶性融合タンパク質をコードする核酸を含む改変T細胞であって、該可溶性融合タンパク質が、
(a)抗CD28 scFvを含む第1の結合ドメインと、
(b)抗PD-L1 scFvまたは抗TGFbRII scFvを含む第2の結合ドメインと
を含み、
任意で、該可溶性融合タンパク質が、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとの間にスペーサードメインをさらに含む、
前記改変T細胞。
【請求項15】
請求項13または14に記載の改変T細胞を含む、標的腫瘍に活性化因子を送達するための薬学的組成物であって、
(a)該改変T細胞が腫瘍抗原に結合し、標的部位で活性化因子を分泌するために活性化される;ならびに
(b)該改変T細胞の活性化が、スイッチ分子の細胞外ドメインとそのリガンドとの相互作用を含む;および/または
(c)該改変T細胞の活性化が、二重特異性抗体と該改変T細胞との相互作用を含む、
前記薬学的組成物。
【請求項16】
活性化因子が、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNF、TGF、IFN、ならびにそれらの機能的断片およびバリアントからなる群より選択される可溶性サイトカインである、請求項15記載の薬学的組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023099753000001.xml