(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009980
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】工具摩耗モニタリング装置、工具摩耗モニタリングシステム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20230113BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20230113BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B23Q17/09 C
B23Q17/09 D
B23Q17/00 D
B23Q17/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113704
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西川 顕二
(72)【発明者】
【氏名】佐野 靖
(72)【発明者】
【氏名】河野 一平
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029CC07
3C029CC10
3C029DD08
3C029DD11
3C029DD20
3C029FF05
(57)【要約】
【課題】
切削加工後の工具の刃先状態を角度を変えて撮影し、取得画像データを画像処理で分析することで、工具の側面などの摩耗を適切に測定する。
【解決手段】
顕微鏡カメラ8で角度を変えて撮影された複数の画像データを入力し、切削工具3の摩耗をモニタリングする工具摩耗モニタリング装置2であって、画像データを解析するデータ解析部12を備え、前記データ解析部12は、角度を変えて撮影された前記複数の画像データを二値化し、その中から摩耗領域が最大面積のデータを抽出し、抽出した最大面積のデータから摩耗量を解析することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡カメラで角度を変えて撮影された複数の画像データを入力し、切削工具の摩耗をモニタリングする工具摩耗モニタリング装置であって、
画像データを解析するデータ解析部を備え、
前記データ解析部は、
角度を変えて撮影された前記複数の画像データを二値化し、
その中から摩耗領域が最大面積のデータを抽出し、
抽出した最大面積のデータから摩耗量を解析する
ことを特徴とする工具摩耗モニタリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工具摩耗モニタリング装置において、更に、
顕微鏡カメラと電流・電圧センサからの測定データを受信する受信部と、
受信したデータを収録するデータ収録部と、
データを信号処理する信号処理部と、
前記データ解析部による解析結果をネットワークに送信するための送信部と、
を備える工具摩耗工具モニタリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の工具摩耗モニタリング装置において、
前記データ解析部は、更に、
電流・電圧センサからの測定データに基づく電流、電圧、または電力の変化から加工中の負荷を推定し、
分析結果を出力する
ことを特徴とする工具摩耗モニタリング装置。
【請求項4】
請求項1に記載の工具摩耗モニタリング装置において、更に、
モニタリングの状況を表示する表示器を備え、
前記表示器は、表示される工具番号と、閾値と、加工個数と摩耗量の関係を示す工具摩耗曲線を表示することを特徴とする工具摩耗モニタリング装置。
【請求項5】
切削工具の摩耗をモニタリングする工具摩耗モニタリングシステムであって、
角度を変えて工具刃先の複数の画像を撮影する顕微鏡カメラと、
測定データを解析する工具摩耗モニタリング装置と、
工具摩耗モニタリング装置の出力を蓄積するネットワークとを有し、
前記工具摩耗モニタリング装置のデータ解析部は、
角度を変えて撮影された複数の画像データを二値化し、
その中から摩耗領域が最大面積のデータを抽出し、
抽出した最大面積のデータから摩耗量を解析する
ことを特徴とする工具摩耗モニタリングシステム。
【請求項6】
請求項5に記載の工具摩耗モニタリングシステムにおいて、
工作機械のモータの電流・電圧を測定するセンサを備え、
前記工具摩耗モニタリング装置のデータ解析部は、更に、
電流・電圧センサからの測定データに基づく電流、電圧、または電力の変化から加工中の負荷を推定し、
分析結果を出力する
ことを特徴とする工具摩耗モニタリングシステム。
【請求項7】
請求項5に記載の工具摩耗モニタリングシステムにおいて、
前記顕微鏡カメラは固定されており、前記切削工具が回転することにより、角度を変えて工具刃先の複数の画像を撮影することを特徴とする工具摩耗モニタリングシステム。
【請求項8】
請求項5に記載の工具摩耗モニタリングシステムにおいて、
前記切削工具は固定されており、前記切削工具の周りに配置した複数の前記顕微鏡カメラにより、角度を変えて工具刃先の複数の画像を撮影する
ことを特徴とする工具摩耗モニタリングシステム。
【請求項9】
請求項5に記載の工具摩耗モニタリングシステムにおいて、
前記工具摩耗モニタリング装置は、
顕微鏡カメラと電流・電圧センサからの測定データを受信する受信部と、
受信したデータを収録するデータ収録部と、
データを信号処理する信号処理部と、
信号処理したデータを解析する前記データ解析部と、
解析結果をネットワークに送信するための送信部と
を含む工具摩耗モニタリングシステム。
【請求項10】
請求項5に記載の工具摩耗モニタリングシステムにおいて、
モニタリングの状況を表示する表示器を備え、
前記表示器は、表示される工具番号と、閾値と、加工個数と摩耗量の関係を示す工具摩耗曲線を表示することを特徴とする工具摩耗モニタリングシステム。
【請求項11】
請求項5に記載の工具摩耗モニタリングシステムにおいて、
前記ネットワークは、摩耗量データと、寸法精度データと、プロセスデータと、電力データと、組立精度データとの少なくとの1つを有することを特徴とする工具摩耗モニタリングシステム。
【請求項12】
コンピュータを、顕微鏡カメラで角度を変えて撮影された複数の画像データを入力し、切削工具の摩耗をモニタリングする工具摩耗モニタリング装置として機能させるプログラムであって、
角度を変えて撮影された前記複数の画像データを二値化し、その中から摩耗領域が最大面積のデータを抽出し、抽出した最大面積のデータから摩耗量を解析する、画像データを解析するデータ解析部、として機能させるプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムにおいて、更に、
顕微鏡カメラと電流・電圧センサからの測定データを受信する受信部と、
受信したデータを収録するデータ収録部と、
データを信号処理する信号処理部と、
前記データ解析部による解析結果をネットワークに送信するための送信部と、
して機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
請求項12に記載のプログラムにおいて、
前記データ解析部を、更に、
電流・電圧センサからの測定データに基づく電流、電圧、または電力の変化から加工中の負荷を推定し、分析結果を出力するように機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具の摩耗をモニタリングするモニタリング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具をカメラを使ってモニタリングする装置が、特開平9-57583号公報(特許文献1)に記載されている。この公報には、「切削加工後の工具の全体あるいはほぼ全体を赤外線カメラにより撮像し、赤外線カメラによる撮像データから識別できる工具表面の温度分布より工具の刃先位置を認識し、この刃先位置の情報に基づいて高撮像倍率のテレビカメラを工具刃先に正対する位置に移動させ、テレビカメラにより工具刃先を撮像し、テレビカメラによる工具刃先の撮像データから工具の摩耗量を計測する。」(要約参照)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械を操作するオペレータにとって重要な作業は、加工の異常の発見および切削工具の交換である。加工の異常は基本的に加工中の振動音やモータの制御電流レベルであるロードメータ値から判断する。また、異常が発生すると工具へのダメージが増加し、工具刃先の摩耗や折損につながる。摩耗や折損した工具は新しいものに交換が必要となる。折損の場合は目視で明確に確認し、容易に気付くことができる。一方、摩耗は目視での判断が難しいケースがあり、基本的には顕微鏡で観察し、一定の摩耗幅を超えると交換となる。工具の摩耗が進展すると、切れ味が低下し、加工中の負荷が増加し、加工面の悪化、加工対象の寸法精度の低下、工具のチッピングや折損につながる。特に高価で失敗が許されない大物の部品加工の場合は、加工中に工具が折損し、部品にリカバーができないレベルの傷等をつけることも想定される。このため、摩耗の変化をきちんと整理し、摩耗状態をモニタリングする必要がある。
【0005】
特許文献1には、赤外線カメラにより切削加工後の工具の全体を撮像し、工具表面の温度分布より工具の刃先位置を認識し、この認識した刃先位置の情報に基づいて高撮像倍率のテレビカメラを工具刃先に正対する位置に移動させ、テレビカメラにより工具刃先を撮像し、テレビカメラによる工具刃先の撮像データから工具の摩耗量を計測する工具摩耗量自動計測装置、が開示されている。しかし、この特許文献1記載の装置は、工具刃先に正対する位置から工具の摩耗量を計測するものであり、工具の側面部の摩耗を適切に測定することは考慮されていない。
【0006】
そこで本発明は、切削加工後の工具の刃先状態を角度を変えて撮影し、取得画像データを画像処理で分析することで、工具の側面などの摩耗を適切に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、顕微鏡カメラで角度を変えて撮影された複数の画像データを入力し、切削工具の摩耗をモニタリングする工具摩耗モニタリング装置であって、画像データを解析するデータ解析部を備え、前記データ解析部は、角度を変えて撮影された前記複数の画像データを二値化し、その中から摩耗領域が最大面積のデータを抽出し、抽出した最大面積のデータから摩耗量を解析することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、切削加工後の工具の刃先状態を角度を変えて撮影し、取得画像データを画像処理で分析することで、工具の側面などの摩耗を適切に測定することができる。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明より明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の工具摩耗モニタリングシステムの構成例を示す図である。
【
図2】工具摩耗モニタリング装置を実現するコンピュータの構成例を示す図である。
【
図5】実施例1の工具摩耗モニタリング装置のデータ解析部および関係する部分の一例を示す図である。
【
図6】工具摩耗モニタリングシステムの動作フローを示す図である。
【
図7】顕微鏡カメラで画像撮影する際の構成を示す図である。
【
図9】取得した画像データの画像処理を示す図である。
【
図10】実施例1の画像撮影から摩耗量を出力するフローを示す図である。
【
図11】実施例2の複数の顕微鏡カメラを使った工具摩耗モニタリングシステムの構成例を示す図である。
【
図12】実施例3の工具摩耗モニタリングシステムのGUIの一例を示す図である。
【
図13】実施例4の工具摩耗モニタリングシステムのネットワークの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし主旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
また、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
【実施例0013】
本実施例では、工具摩耗モニタリングシステムの実施例を説明する。
【0014】
図1は、工具摩耗モニタリングシステムの構成図の例を説明する図である。工具摩耗モニタリングシステム100は、工作機械1と工具摩耗モニタリング装置2から構成されている。工具摩耗モニタリングシステム100は切削加工プロセスで使用される。切削加工は、エンドミル等の切削工具3が固定されている主軸4が高速回転することで、ワークを所望の形状に成型する。工作機械1は、この切削工具3と主軸4、および主軸4を回転させるための主軸モータ5、主軸モータ5を駆動する制御電流・電圧を入力するサーボアンプ6、指令値通り動かすための数値制御装置(NC装置)7などから構成される。
【0015】
本発明の工具摩耗モニタリングシステムは、工作機械内に顕微鏡カメラ8が設置されている。この顕微鏡カメラ8は、ワークが固定されている場所と同じ機内でも良いし、または未使用の工具を待機しておくツールマガジンに設置しても良い。また、有線で接続しても良いし、WiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)のような無線を使って接続しても良い。また、主軸モータ5の電流値・電圧値を測定する電流・電圧センサ18も設置されている。
【0016】
カメラ8の画像データおよび電流・電圧センサ18の電流・電圧値はモニタリング装置2の受信部9に入力される。受信部9でデータを受け取ったら、データ収録部10を通して信号処理部11に入力される。収録したデータが生データの状態だと、ノイズを多く含んでいる場合がある。例えば、電流・電圧センサ18において、場内の状態や加工機の制御盤内の状態によって、電気ノイズが入る場合がある。また、天気による室内の明るさなどで、画像のデータにおいて、コントラストがばらつく場合もある。このため、信号処理によってノイズを除去し、加工に使われた電流・電圧値のみを抽出することが重要であり、また高精度なモニタリングには必要な要素である。なお、プロセスによって必要な信号処理があるため、信号処理に関連付けるためのプロセスデータ14がここで入力される。
【0017】
ノイズが除去されたデータは、データ解析部12に入力される。ここでは、画像データは画像処理によって摩耗量が解析される。また、電流・電圧信号は、そのままで使うかもしくは電力に換算され、加工中の負荷相当のパラメータに変換される。学習データ15にはこれまでの過去に蓄積されたデータが保存されている。学習データ15は、データ解析部12の解析に教師データとして活用されても良い。データ解析部12の解析結果は送信部13に入力される。ここからネットワーク16に送られる。
【0018】
ネットワーク16は、複数の関係者で共有するためのもので、クラウドでも良いし、社内のサーバーでも良い。例えば、ネットワーク16で画像処理結果が入力され、加工停止の判断が成されたら、その結果を変換部17に送信し、NC装置を制御する信号に変換して、工作機械1にフィードバックされる。このとき、NC装置7を介して制御しても良いし、直接サーボアンプ6に信号が与えられても良い。また、工具摩耗モニタリング装置2は、解析結果などを表示したり、指令を入力するGUI(Graphical User Interface)19を備えている。
【0019】
図2は、工具摩耗モニタリング装置2を実現するコンピュータの構成例を示す図である。工具摩耗モニタリング装置2は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ51、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリ52、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等のストレージ57、キーボード,マウス,タッチパネル等の入力デバイス55、ディスプレイ等の出力デバイス56、NIC(Network Interface Card)等の通信モジュール54、およびこれらを接続するインターフェイス53を備えるパーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータ50から成る。コンピュータは、クラウド上に構成してもよい。
【0020】
図3に、エンドミルの一例を示す。エンドミルである切削工具3で加工すると、刃先部分である刃先20において摩耗が進展する。この時の拡大図を、
図4に示す。刃先20において、例えば逃げ面に摩耗21が観測される。このとき、目視では正確な量を推測することは難しく、一般的には顕微鏡を使って正確な摩耗量を測定する。
【0021】
図5に、工具摩耗モニタリング装置2のデータ解析部および関係する部分の一例を示す。信号処理部11では、例えばプロセスデータ14から工具データ39と工程データ40を受け取る。工具および工程によって、適切な信号処理が異なるためである。例えば、びびり振動のような特定の周波数帯が問題となるような工程の場合は、信号処理部11でその工程に紐づけされた信号処理、例えばFFT処理が効果的となる。また、負荷が小さく変化もそれに対応して小さい工具や工程の場合は、外れ値の影響や高周波の影響が大きくなるため、外れ値を助教するフィルタや、高周波を消すローパスフィルターなどの信号処理が重要となる。
【0022】
信号処理によって判定に必要な部分のみを抽出されたデータは、データ解析部12に入力される。データ解析部12において、例えば電流・電圧値は、電力計算30において電力値に変換される。そして分析31において電力の変化から加工中の負荷の変化を読み取る。次に電力判定結果32にて分析結果を出力する。電力の変化は負荷の変化とほぼ相関関係にあるため、例えば電力が急激に増加し、直後に低下したら工具が折損したことが推測される。この判定結果は送信部13を通して、工具折損による工具交換をフィードバックしたり、加工機に加工停止信号を送ったり、プロセス設計者には加工条件の見直しを通達したり、製品設計者にはこの部分の公差条件の見直しを提案したりすることにつながる。なお、加工中の負荷の変化は、電流や電圧の変化から推定してもよい。
【0023】
顕微鏡カメラ8で撮影した画像の場合、画像処理33と摩耗領域計算34で工具摩耗量を解析する。解析結果は摩耗判定結果35で判定される。これも同じように、工具摩耗が閾値を超えた場合、加工条件の修正をプロセス設計者に求めたり、表面粗さ増加による仕上げ面精度低下の情報を組立担当に送って、組立作業者にアドバイスを送ったりする活用方法がある。さらに頻繁に閾値を超える場合は、製品設計者に公差設定の見直しを通達する活用方法もある。これらを実行するためには、学習データ15が必要で、これまで蓄積した電流・電力データ36、画像データ37、その際の判定結果を示す判定結果データ38が例として挙げられる。
【0024】
図6に、工具摩耗モニタリングシステムの動作フローの例を説明する。初めに、モニタリング開始S100にて、スタートする。次に、部品数判別S101にて、部品数が何個目かを判定する。その際、個数(例えばN個目)が閾値以上の場合は、モニタリング終了S108となる。閾値以下の個数の場合は、部品N個目工具判別S102にて、工程を判別するため、どの工具を使う番かを判定する。次に、その選択された工具が加工する対象の工程を、対象工程加工開始S103にて加工開始する。次に、対象工程加工終了S104にてその工具での加工が終了する。使用終了となった工具は工具マガジン退避S105にて、ATC(Automatic Tool Changer)にて工具交換され、工具マガジンに退避する。工具マガジン内に退避した工具は、退避工具摩耗測定S109にて工具摩耗が測定される。測定されたデータは、測定データ送信S110にて受信部9に送信される。なお、工具マガジン退避S105で初めの工具が機内から退避したら、続けて次の工具が入ってくる。次工具判別S106で工具と工程を把握する。また、部品N個目工具判別S102を通って、加工が開始する。全ての工具が終了すると、このループを抜け、次部品判定S107に進む。次の部品がある場合は、部品数判別S101に戻り、加工が再開する。次の部品が無く、終了する場合は、モニタリング終了S108に進み、システムが終了する。
【0025】
図7に、顕微鏡カメラで画像撮影する際の構成図の例を説明する。この例は切削工具3がツールマガジンではなく、機内で主軸に固定されている状態の例である。対象の切削工具による加工が終了すると、切削工具3は顕微鏡カメラ8が固定されている場所に移動する。顕微鏡カメラ8は、治具61で動かないように固定されている。工具刃先が顕微鏡カメラ8に近づき、停止したら、その場で1回転する。その一回転の間に、複数枚撮像する。なお、切削工具3を固定し、顕微鏡カメラ8を切削工具3の周りを周回させて、複数枚撮像してもよい。
【0026】
撮影の方法を
図8に示す。ローテーションの角度によって刃先の見え方が異なり、それに伴い工具摩耗の見え方も変化する。このため、例えば回転中の工具に対して複数枚撮像すると、刃先が少しずつずれた画像が取得できる。これを1回転分実施すると、全ての刃において撮影枚数分の摩耗画像62、63、および64が取得できる。この撮影した全ての画像の摩耗領域を計算し、1つの刃において最大の摩耗面積となる画像を選択する。4刃の工具の場合は、各刃の最大面積となる画像を4枚取得する。
【0027】
図8の未処理の画像データだと、背景や摩耗部分以外が入り込んでおり、摩耗部分のみを判定することは難しい。
図9に、画像処理の例について説明する。摩耗部分は、その部分の工具のコーティングがはがれ、内部の金属がむき出しとなり、白く光ることが多い。このため、二値化処理等で、白い部分とそれ以外のように処理すると、摩耗部分のみを選択することが可能となる。処理後摩耗抽出部70、71、72に示すように、各回転角度における摩耗面積のみ抽出することができる。これにより、摩耗面積が最大となる画像を選択することができる。
【0028】
図10に、切削工具の刃先20の画像撮影から摩耗量を出力する一連のフローについて説明する。はじめに、画像撮影開始S200にてフローが開始する。次に、撮影枚数N設定S201にて、必要な枚数を設定する。
図7の場合は、工具1回転するあいだに複数枚刃先の写真を撮影するが、例えば1度ずつ主軸を回転させて撮影する場合は、N=360と入力する。実施例2で後述する
図11の場合は、例えば4台カメラを設置すると、4回撮影するため、N=4を入力する。次に、i枚目撮影S202にて、カメラにて撮影する。次のステップのN=i?S203にて、現在の撮影枚数を確認する。N枚目に達していれば、撮影データN個の二値化S204にて、例えば撮影した全画像ファイルの二値化処理を実施する。まだN枚目に達していない場合は、i=i+1のステップS205に進む。ここでは、
図7の場合は、指定角度分、工具が回転する。
図11の場合は、隣接するカメラでの撮影準備に進む。ステップS202に進み、次の撮影が進む。全画像ファイルの二値化処理が完了したら、ステップS206で、その中から最大面積のデータファイルを抽出する。その後、抽出ファイルから摩耗量解析をステップS207で実施し、最後に摩耗量出力S208にて摩耗量データが出力される。
【0029】
本実施例によれば、顕微鏡カメラにより、角度を変えて切削工具の刃先の複数の画像を撮影し、撮影した画像を二値化処理し、その中から最大面積のデータファイルを抽出し、摩耗量を解析することにより、切削工具の側面などの摩耗量を適切に求めることができる。また、電流・電圧センサで主軸モータの電流値・電圧値を測定し、電力を計算し、電流、電圧、または電力の変化から加工中の負荷を推定することにより、切削工具の折損などを検出することができる。
ツールマガジン内での工具は、自身が回転することができない。このため、例えば複数の顕微鏡カメラ8、73、74、75のように切削工具3の周りに周状に設置すれば、適正な角度から測定した工具摩耗を示す画像を取得することができる。ツールマガジン77は空間的に制限があるため、なるべく小型の顕微鏡カメラを可能な限り多く使用すると、それに伴い測定精度も向上すると考えられる。