(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009987
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】混雑率予測装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 25/04 20060101AFI20230113BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230113BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20230113BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230113BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20230113BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20230113BHJP
【FI】
B61L25/04
G06Q10/04
G06Q50/30
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113717
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】504158881
【氏名又は名称】東京地下鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】是澤 正人
(72)【発明者】
【氏名】足立 茂章
(72)【発明者】
【氏名】吉野 秀行
(72)【発明者】
【氏名】上坂 直行
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC42
(57)【要約】
【課題】乗り物の混雑の状態を新規な方法で予測することができる混雑率予測装置及びプログラムを提供すること。
【解決手段】実施形態の混雑率予測装置は、処理部を備える。処理部は、1又は複数の区間により構成される第1の区間での乗り物の混雑の状態の統計データと、前記第1の区間での前記乗り物の混雑の状態の第1の計測値を用いて、前記第1の区間での予測対象の乗り物の混雑の状態を予測する。処理部は、前記統計データと前記第1の計測値の差分を用いて、前記第1の区間での前記特定の乗り物の混雑の状態の時間変化を予測する関数を求め、前記関数を用いて前記第1の区間での前記特定の乗り物の混雑の状態を予測しても良い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の区間により構成される第1の区間での乗り物の混雑の状態の統計データと、前記第1の区間での前記乗り物の混雑の状態の第1の計測値を用いて、前記第1の区間での予測対象の乗り物の混雑の状態を予測する、処理部を備える混雑率予測装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記統計データと前記第1の計測値の差分を用いて、前記第1の区間での前記予測対象の乗り物の混雑の状態の時間変化を予測する関数を求め、前記関数を用いて前記第1の区間での前記予測対象の乗り物の混雑の状態を予測する、請求項1に記載の混雑率予測装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記第1の区間とは異なる第2の区間での前記予測対象の乗り物の混雑の状態を、前記第1の区間と前記第2の区間の相関関係に基づき推定する、請求項1又は請求項2に記載の混雑率予測装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記第2の区間での前記予測対象の乗り物の混雑の状態を、前記予測対象の乗り物の前記第1の区間での混雑の状態を用い、前記相関関係として区間ごとの前記乗り物の混雑の状態の変化を示す変動情報を用いて予測する、請求項3に記載の混雑率予測装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記予測対象の乗り物の混雑の状態の第2の計測値を用いて、前記変動情報を補正し、補正した前記変動情報を用いて前記予測対象の乗り物の混雑の状態を予測する、請求項4に記載の混雑率予測装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記第1の計測値の計測時点の状況に応じて混雑の状態を予測する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の混雑率予測装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記乗り物を利用したユーザーがどこから前記乗り物に乗り、どこで前記乗り物から降りたかを示す乗降情報を用いて前記統計データを生成する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の混雑率予測装置。
【請求項8】
前記処理部は、乗り物の運行に異常が発生している場合、混雑率の予測方法を変更する、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の混雑率予測装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記第1の計測値の変化を用いて乗り物の運行に異常が発生していることを判定する、請求項8に記載の混雑率予測装置。
【請求項10】
前記処理部は、乗り物の運行に異常が発生している場合の前記予測方法で予測した混雑率から、乗り物の運行が正常になる時間を予測する、請求項8又は請求項9に記載の混雑率予測装置。
【請求項11】
混雑率予測装置が備えるプロセッサーを、
1又は複数の区間により構成される第1の区間での乗り物の混雑の状態の統計データと、前記第1の区間での前記乗り物の混雑の状態の第1の計測値を用いて、前記第1の区間での予測対象の乗り物の混雑の状態を予測する処理部として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混雑率予測装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道などの乗り物を運用する運用者などは、乗り物の快適さなどサービスレベルの維持及び向上のため、乗り物の混雑の状態を知ることで、輸送設備及び運用などの改善策に取り組んでいる。当該運用者は、乗り物の混雑の状態を知るために混雑率(乗車率)などの指標を用いている。また、当該運用者などは、乗り物の混雑の状態を、混雑率の計測及びその統計分析などにより混雑区間及び混雑時間帯などの大まかな傾向として求めている。計測技術の発展により一部の区間や一部の乗り物について混雑率をリアルタイムに計測することが可能となってきているが、大規模な路線全体の混雑率をリアルタイムに推定する技術及び列車の車両毎など詳細な混雑率を推定する技術のため、更には未来の時刻の混雑率の変化を効率よく逐次予測するためには従来とは異なる新規な手法を用いることが有用であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、乗り物の混雑の状態を新規な方法で予測することができる混雑率予測装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の混雑率予測装置は、処理部を備える。処理部は、1又は複数の区間により構成される第1の区間での乗り物の混雑の状態の統計データと、前記第1の区間での前記乗り物の混雑の状態の第1の計測値を用いて、前記第1の区間での予測対象の乗り物の混雑の状態を予測する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、乗り物の混雑の状態を新規な方法で予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る混雑予測システム及び当該混雑予測システムに含まれる構成要素の要部構成の一例を示すブロック図。
【
図2】
図1中の混雑予測サーバーのプロセッサーによる第1実施形態に係る処理の一例を示すフローチャート。
【
図3】
図1中の混雑予測サーバーのプロセッサーによる第1実施形態及び第2実施形態に係る処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】A駅からG駅までの各駅区間における複数の列車の混雑率を示した図。
【
図9】第2実施形態~第4実施形態に係る混雑予測システム及び当該混雑予測システムに含まれる構成要素の要部構成の一例を示すブロック図。
【
図10】
図1中の混雑予測サーバーのプロセッサーによる第2実施形態~第4実施形態に係る処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】
図1中の混雑予測サーバーのプロセッサーによる第3実施形態及び第4実施形態に係る処理の一例を示すフローチャート。
【
図12】
図1中の混雑予測サーバーのプロセッサーによる第4実施形態に係る処理の一例を示すフローチャート。
【
図14】差分混雑率の時間変化の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、いくつかの実施形態に係る混雑予測システムについて図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、各部の縮尺を適宜変更している場合がある。また、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、説明のため、構成を省略して示している場合がある。また、各図面及び本明細書中において、同一の符号は同様の要素を示す。
【0009】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る混雑予測システム1及び混雑予測システム1に含まれる構成要素の要部構成の一例を示すブロック図である。混雑予測システム1は、鉄道の各列車の混雑率を求めるシステムである。なお、混雑率は、例えば、列車又は車両の定員数に対する乗客数の割合である。ただし、混雑率は、他の定義であっても良い。混雑予測システム1は、一例として、混雑予測サーバー100、運行管理システム200、計測装置300及び混雑率管理システム400を含む。
【0010】
混雑予測サーバー100、運行管理システム200、計測装置300及び混雑率管理システム400は、ネットワークNWに接続する。ネットワークNWは、典型的にはインターネットを含む通信網である。ネットワークNWは、典型的にはWAN(wide area network)を含む通信網である。ネットワークNWは、イントラネットなどのプライベートネットワークを含む通信網であっても良い。ネットワークNWは、LAN(local area network)を含む通信網であっても良い。また、ネットワークNWは、無線回線でも良いし有線回線でも良く、無線回線と有線回線とが混在していても良い。また、ネットワークNWは、専用線又は公衆携帯電話網などを含む通信網であっても良い。
【0011】
混雑予測サーバー100は、鉄道の各列車の混雑率を求める装置である。混雑予測サーバー100は、1つの装置であっても良いし、複数の装置からなる装置であっても良い。混雑予測サーバー100は、一例として、プロセッサー110、ROM(read-only memory)120、RAM(random-access memory)130、補助記憶装置140及び通信I/F(interface)150を含む。そして、バス160などが、これら各部を接続する。なお、混雑予測サーバー100は、混雑率予測装置の一例である。
【0012】
プロセッサー110は、混雑予測サーバー100の動作に必要な演算及び制御などの処理を行うコンピューターの中枢部分であり、各種演算及び処理などを行う。プロセッサー110は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)などである。あるいは、プロセッサー110は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサー110は、これらにハードウェアアクセラレーターなどを組み合わせたものあっても良い。プロセッサー110は、ROM120又は補助記憶装置140などに記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどのプログラムに基づいて、混雑予測サーバー100の各種の機能を実現するべく各部を制御する。また、プロセッサー110は、当該プログラムに基づいて後述する処理を実行する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサー110の回路内に組み込まれていても良い。また、プロセッサー110は、処理部の一例である。
【0013】
ROM120及びRAM130は、プロセッサー110を中枢としたコンピューターの主記憶装置である。
ROM120は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM120は、上記のプログラムのうち、例えばファームウェアなどを記憶する。また、ROM120は、プロセッサー110が各種の処理を行う上で使用するデータなども記憶する。
RAM130は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM130は、プロセッサー110が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶するワークエリアなどとして利用される。RAM130は、典型的には揮発性メモリである。
【0014】
補助記憶装置140は、プロセッサー110を中枢としたコンピューターの補助記憶装置である。補助記憶装置140は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はフラッシュメモリなどである。補助記憶装置140は、上記のプログラムのうち、例えば、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどを記憶する。また、補助記憶装置140は、プロセッサー110が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサー110での処理によって生成されたデータ及び各種の設定値などを記憶する。
【0015】
また、補助記憶装置140は、混雑データベース141も記憶する。混雑データベース141は、後述の分析処理によって求められた混雑率などのデータを管理及び記憶するデータベースである。混雑予測サーバー100は、混雑率の予測を行う際に混雑データベース141を参照する。
【0016】
通信I/F150は、混雑予測サーバー100がネットワークNWなどを介して通信するためのインターフェースである。
【0017】
バス160は、コントロールバス、アドレスバス及びデータバスなどを含み、混雑予測サーバー100の各部で授受される信号を伝送する。
【0018】
運行管理システム200は、鉄道の運行管理などを行うシステムである。また、運行管理システム200は、鉄道の運行に関する各種情報を記憶する。運行管理システム200は、例えば、サーバーなどを含む。
【0019】
計測装置300は、鉄道列車の各車両の混雑率を、センサーなどを用いて計測する装置である。当該センサーは、例えば、応荷重装置又はカメラなどである。応荷重装置は、例えば各車両に搭載される。応荷重装置は、車両の搭載荷重を計測するセンサーである。計測装置300は、当該搭載荷重から、所定の計算式などを用いて混雑率を求める。また、カメラは、例えば、軌条の外側に設置され、車両を側面外側などから撮影する。あるいは、カメラは、車両の内部などに設置され、車両の内部を撮影する。計測装置300は、カメラによって撮影された画像から乗客がどの程度乗っているかを画像認識することで、混雑率を計測する。計測装置300によって計測される混雑率は、例えば、リアルタイムの計測値である。計測装置300は、計測した混雑率を混雑率管理システム400などに送信する。混雑率管理システム400は、受信した混雑率を列車別、車両別、駅区間別に記憶する。また、混雑率管理システム400は、混雑率の計測時点の駅又は駅区間の状況を示す状況データも関連付けて記憶する。当該状況は、例えば、日時、曜日、天気、天気予報、ダイヤ乱れなどの運行情報並びに近隣でのイベントの開催有無及び当該イベントの規模などである。また、混雑率管理システム400は、混雑率の対象の列車の始発駅及び行き先、普通又は急行などの種別、車両の種別及び編成数、並びにその他の列車情報も関連付けて記憶する。なお、混雑率管理システム400は、運行情報及び列車情報を例えば運行管理システム200から取得する。
【0020】
なお、混雑率は人によって目視で計測されたものなどであっても良い。この場合、担当者などが、人によって計測された混雑率を混雑率管理システム400に入力する。混雑率管理システム400は、当該混雑率を記憶する。
【0021】
混雑率管理システム400は、前述のように計測装置300などによって計測された混雑率の計測値を記憶及び管理する。混雑率管理システム400は、例えば、サーバーなどを含む。
【0022】
以下、第1実施形態に係る混雑予測システム1の動作を
図2及び
図3などに基づいて説明する。なお、動作説明における処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
図2及び
図3は、混雑予測サーバー100のプロセッサー110による処理の一例を示すフローチャートである。プロセッサー110は、例えば、ROM120又は補助記憶装置140などに記憶されたプログラムに基づいて
図2及び
図3の処理を実行する。
プロセッサー110は、例えば、
図2及び
図3の処理を、混雑予測サーバー100の起動又は混雑予測用のアプリケーションの起動などに基づいて開始する。
【0023】
図2に示す処理は、混雑率の予測に用いるための各種データを混雑率などの過去の混雑率データを用いて求める処理(以下「分析処理」という。)を含む処理である。
図2のステップST11において混雑予測サーバー100のプロセッサー110は、分析処理を開始するか否かを判定する。なお、分析処理は、ステップST12~ステップST17の処理を示す。プロセッサー110は、例えば、所定の条件を満たした場合に分析処理を行うと判定する。所定の条件は、前回分析処理を行ってから所定の期間経過したこと、及び混雑率の予測値と混雑率の計測値との差が大きい状態が高い頻度で起きることなどである。混雑率の予測値と混雑率の計測値との差が大きい状態が高い頻度で起きている状態とは、例えば、当該差の二乗若しくは絶対値の平均値が所定より大きい状態、当該差の二乗若しくは絶対値が所定より大きい頻度が所定以上である状態、又はこれらと同値の状態などである。所定の条件は、例えば、分析処理を行うように指示する入力があったことである。当該入力は、例えば、混雑予測サーバー100のコンソールなどを用いた操作入力に基づく。あるいは、当該入力は、他の装置などから送信されて通信I/F150へ入力されるコマンドなどに基づく。当該コマンドは、分析処理を行うように指示することを示す。
【0024】
ステップST12においてプロセッサー110は、分析処理に用いるデータ(以下「分析用データ」という。)を運行管理システム200及び混雑率管理システム400などから取得する。分析用データは、例えば、路線データ、時刻表、各列車及び各車両の各駅における混雑率の過去の所定の日時から現在までのデータなどを含む。プロセッサー110は、例えば、路線データ及び時刻表などのデータを運行管理システム200から取得し、混雑率のデータを混雑率管理システム400から取得する。
プロセッサー110は、分析用データを送信するように指示する要求を運行管理システム200及び混雑率管理システム400に送信するように通信I/F150に対して指示する。この送信の指示を受けて通信I/F150は、当該要求を運行管理システム200及び混雑率管理システム400に送信する。送信された当該要求は、運行管理システム200及び混雑率管理システム400によって受信される。そして、運行管理システム200及び混雑率管理システム400は、当該要求を受信したことに応じて分析用データを混雑予測サーバー100に送信する。当該データは、混雑予測サーバー100の通信I/F150によって受信される。
【0025】
ステップST13においてプロセッサー110は、分析用データを用いて、各駅区間の列車平均混雑率を求める(算出する)。なお、駅区間の列車平均混雑率とは、駅を発車してから次の駅に着くまでの列車の混雑率の平均である。例えば、A駅-B駅区間の列車平均混雑率は、A駅を発車してからB駅に着くまでの列車の混雑率の平均である。A駅-B駅区間の混雑率は、例えば、列車がA駅を発車又は通過する時点の混雑率でも良いしB駅に到着又は通過する時点での混雑率でも良いしA駅とB駅の間の位置に到着又は通過する時点での混雑率でも良い。なお、B駅は、A駅の次の駅であるとする。また、列車平均混雑率は、所定の期間における列車の混雑率の平均である。したがって、複数車両からなる列車の列車平均混雑率は、当該列車の各車両の混雑率を平均した値と同じである。プロセッサー110は、列車平均混雑率を、例えば、出発時刻ごとに求める。出発時刻は、ダイヤ上の時刻であっても良いし、実際に計測した時刻であっても良い。一例として、プロセッサー110は、8時10分発の列車の列車平均混雑率と、8時14分発の列車の列車平均混雑率を別々に求める。あるいは、プロセッサー110は、出発時刻の時間帯ごとに列車平均混雑率を求めても良い。一例として、プロセッサー110は、8時00分から8時15分までの時間帯に発車する列車の列車平均混雑率と、8時15分から8時30分までの時間帯に発車する列車の列車平均混雑率を求める。また、プロセッサー110は、出発時刻以外にも様々な条件ごとに列車平均混雑率を求める。なお、列車平均混雑率などの条件分けに用いる条件を以下「混雑条件」という。プロセッサー110は、混雑条件として以下に挙げた条件の一部又は全部を用いても良く、また、以下に挙げていない条件を用いても良い。当該条件は、例えば以下のようなものを挙げることができる。なお、プロセッサー110は、混雑条件による条件分けをせずに列車平均混雑率を求めても良い。
・曜日
・平日、土曜日及び日祝のいずれであるかなど。
・列車情報
・運行情報
・天気
・天気予報
・連休であるか否か。
・季節又は時期
・月日などの暦
・駅の近隣でイベントが開催されているか否か。またそのイベントの規模。
【0026】
一例として、プロセッサー110は、平日の8時14分発の列車の列車平均混雑率と、日曜日の8時14分発の列車の列車平均混雑率を別々に求める。別の一例として、プロセッサー110は、晴れの日の春の平日の8時14分発の列車の列車平均混雑率と雨の日の春の平日の8時14分発の列車の列車平均混雑率と晴れの日の夏の平日の8時14分発の列車の列車平均混雑率とを別々に求める。
【0027】
また、プロセッサー110は、求めた列車平均混雑率を、当該列車平均混雑率の条件分けに用いた混雑条件を示す情報と関連付けて、混雑データベース141に記憶する。
【0028】
ステップST14においてプロセッサー110は、分析用データを用いて号車別混雑分布を求める。号車別混雑分布は、列車についての車両(号車)ごとの混雑率を示す。プロセッサー110は、ステップST13で求める列車平均混雑率と同様に、条件分けをして号車別混雑分布を求めても良いし、条件分けせずに号車別分布を求めても良い。また、プロセッサー110は、ステップST13とは異なる混雑条件で号車別分布を求めても良い。号車別混雑分布は、例えば、各車両について、車両の平均の混雑率が列車平均混雑率の何倍であるかを示す。したがって、号車別混雑分布の値が1である車両の混雑率は、混雑条件が同一である列車平均混雑率と同じ値となる。
【0029】
また、プロセッサー110は、求めた号車別混雑分布を、当該号車別混雑分布の条件分けに用いた混雑条件を示す情報と関連付けて、混雑データベース141に記憶する。
【0030】
なお、プロセッサー110は、列車平均混雑率又は号車別混雑分布のうち、いずれかについて、今回の処理では求めずに、前回求めたものを用いても良い。この場合、プロセッサー110は、前回求めた列車平均混雑率又は号車別混雑分布を混雑データベース141から取得する。
【0031】
ステップST15においてプロセッサー110は、号車別混雑率を求める。号車別混雑率は、各車両の混雑率である。プロセッサー110は、例えば、列車平均混雑率に各車両の号車別混雑分布をかける。これにより、プロセッサー110は、混雑条件ごとの各車両の混雑率を求めることができる。号車別混雑率は、列車平均混雑率に各車両の号車別混雑分布をかけたものであるので、列車平均混雑率と同様に条件分けされたものである。
【0032】
図4は、号車別混雑分布をグラフ化した図である。
図4は、特定の混雑条件の列車についての号車別混雑率の一例を示している。当該列車は、1号車から8号車までの8両の車両を含むものとする。
図4は、当該列車の1号車から8号車までのそれぞれの号車別混雑率を棒グラフで示している。また、折れ線Laは、当該棒グラフを折れ線グラフとして示したものである。
図4は、当該列車の列車平均混雑率を示す混雑率Caも示している。
図4に示す号車別混雑率では、1号車2号車、4号車及び5号車が列車平均混雑率よりも混雑率が低い。すなわち、これらの車両の号車別混雑分布の値は1未満である。そして、3号車、6号車、7号車及び8号車は、列車平均混雑率よりも混雑率が高い。すなわち、これらの車両の号車別混雑分布の値は1超である。
【0033】
ステップST16においてプロセッサー110は、変動表を作成する。変動表は、例えば、列車の各車両についての、駅区間ごとの号車別混雑率の変動を示す表である。プロセッサー110は、例えば、号車別混雑率を用いて変動表を作成する。変動表は、号車別混雑率と同様に条件分けされたものであっても条件分けされていないものでも良い。プロセッサー110は、ある条件の変動表を作成する場合、当該ある条件に該当する号車別混雑率を用いて変動表を作成する。プロセッサー110は、一例としてデータクラスタリングにより変動表を作成する。ある条件の変動表中の特定の駅区間の特定の号車の混雑率は、条件、駅区間及び号車が同じ号車別混雑率の平均である。例えば、条件が晴れの日である変動表の9時00分のB駅-C駅区間の3号車の混雑率は、晴れの日の9時00分のB駅-C駅区間の3号車の号車別混雑率の平均である。当該号車別混雑率は、晴れの日の9時00分であればよく、季節などの変動表の条件に含まれない条件は何でも良い。あるいは、プロセッサー110は、号車別混雑率に代えて、混雑率管理システム400に記憶された混雑率を用いても良い。変動表が条件分けされている場合、一例として、休日におけるA駅7時50分始発の列車の各駅区間の平均混雑率などが変動表から分かる。なお、変動表は、駅区間ごとの列車の混雑の状態の変化を示す変動情報の一例である。また、変動表は、第1の区間と第2の区間の相関関係を示すデータの一例である。
【0034】
図5は、変動表をグラフ化した図である。
図5は、特定の混雑条件の列車の特定の車両についての変動表の一例を示している。当該列車は、A駅、B駅、C駅、D駅、E駅、F駅、G駅の順に進んでいく列車であるとする。
図5は、当該特定の車両の各駅区間における号車別混雑率を棒グラフで示している。また、折れ線Lbは、当該棒グラフを折れ線グラフとして示したものである。
【0035】
ステップST17においてプロセッサー110は、各駅区間について混雑条件ごとに時系列モデルを作成する。時系列モデルは、例えば駅区間の列車の混雑率の時間変化を号車ごとに示す時間の関数である。プロセッサー110は、特定の混雑条件における特定の駅区間の時系列モデルを作成する場合、当該駅区間の当該混雑条件の号車別混雑率を用いる。プロセッサー110は、当該号車別混雑率から、最小二乗法、AR(autoregressive model)、ARMA(autoregressive moving average model)、ARIMA(autoregressive integrated moving average model)又は状態空間モデルなどを使用して時系列モデルを求める。あるいは、プロセッサー110は、各号車別混雑率を時系列順に直線で結んだものを時系列モデルとしても良い。なお、時系列モデルは、駅区間での列車の混雑の状態の統計データの一例である。
【0036】
ステップST18においてプロセッサー110は、分析処理で求めた号車別混雑率、変動表及び時系列モデルなどの各データを混雑データベース141などに記憶する。プロセッサー110は、ステップST18の処理の後、ステップST11へと戻る。
【0037】
図3に示す処理は、号車別混雑率及び変動表などを用いて混雑率を予測する処理を含む処理である。
図6を用いて
図3の処理について説明する。
図6は、A駅からG駅までの各駅区間における複数の列車の混雑率を示した図である。当該混雑率は、例えば、計測装置300によって計測される。混雑率A1~混雑率F6までの各点の高さが混雑率を示す。ただし、
図6に混雑率A1~混雑率F6の符号を全て図示すると図が見づらくなるため、一部の符号は省略して図示していない。なお、混雑率を示す各点の符号は、左側のアルファベットと右側の数字の2つの部分を含んで成り立っている。一例として「A1」であれば左側のアルファベットの「A」と、右側の数字の「1」の2つの部分を含む。左側のアルファベットは、駅区間のうち、列車が先に到着する側の駅を示す。例えば、AであればA駅-B駅区間、BであればB駅-C駅区間、CであればC駅-D駅区間である。また、右側の数字は、駅区間を通る列車の順番を示す。なお、駅区間を列車が通る時点は、例えば、当該駅区間内の特定の位置を列車が通る時点を示す。当該位置は、例えば、駅区間の端の駅であっても良いし間の位置であっても良い。一例として、列車がA駅-B駅区間を通る時点とは、列車がA駅を発車若しくは通過する時点、B駅に到着若しくは通過する時点、又はA駅とB駅の間の特定の位置に到着若しくは通過する時点である。なお、駅区間を列車が通る時点は、実際に計測された時刻に限らず、ダイヤ上の時刻であっても良い。例えば、混雑率A1は、A駅-B駅区間を通る1番目の列車の混雑率を示す。この場合、混雑率A2は、A駅-B駅区間を通る2番目の列車の混雑率を示す。すなわち、混雑率A1に対応する列車がA駅-B駅区間を通過した次にA駅-B駅区間を通る列車は混雑率A2に対応する列車である。また例えば、混雑率C3は、C駅-D駅区間を通る3番目の列車の混雑率を示す。なお、右側の数字が1である符号に対応する列車が特定の駅区間を通るより前に当該駅区間を通る列車があっても良い。また、右側の数字が同じ場合、同じ列車を示す。したがって、混雑率A1~混雑率F1は、全て同じ列車の混雑率を示す。ある特定の列車のA駅-B駅区間の混雑率が混雑率A1、当該特定の列車のB駅-C駅区間の混雑率が混雑率B1、当該特定の列車のC駅-D駅区間の混雑率が混雑率C1、…といった具合である。なお、
図6に示す混雑率は、特定の号車の混雑率を代表的に示している。特定の号車は、何号車であっても良いが、一例として混雑率A1が3号車の混雑率を示したものであれば、混雑率A1~混雑率F6は全て3号車の混雑率を示したものである。
【0038】
ここでは、混雑率C1~混雑率C4を用いて他の混雑率を予測する場合を例に
図3の処理を説明する。この場合、C駅-D駅区間は、第1の区間の一例である。なお、第1の区間は、1つの駅区間で構成されていても良いし、複数の駅区間によって構成されていても良い。また、1つの駅区間の駅と駅の間に別の駅があっても良い。また、駅区間は、駅と駅の間に限らない。例えば、駅に代えて操車場、信号場又は停車場などであっても良い。
【0039】
図3のステップST21においてプロセッサー110は、混雑率の予測を開始するか否かを判定する。例えば、プロセッサー110は、混雑率管理システム400が計測装置300から新たに列車の最新の混雑率を取得したことに応じて、当該列車の混雑率実測値を用いた混雑率の予測を開始すると判定する。プロセッサー110は、混雑率の予測を開始すると判定しないならば、ステップST21においてNoと判定してステップST21の処理を繰り返す。対して、プロセッサー110は、混雑率の予測を開始すると判定するならば、ステップST21においてYesと判定してステップST22へと進む。なお、混雑率管理システム400が新たに取得した最新の混雑率は、ここでは混雑率C4であるとする。
【0040】
ステップST22においてプロセッサー110は、混雑率の予測に使用する混雑率データを混雑率管理システム400などから取得する。プロセッサー110は、ここで、リアルタイムの混雑率などを取得することができる。一例として、プロセッサー110は、当該混雑率データとして、混雑率C1~混雑率C4を取得する。また、プロセッサー110は、各混雑率データに関連付けて記憶されている状況データも取得する。混雑率C1~混雑率C4などの、ステップST22において取得される同一駅区間の複数の混雑率データは、駅区間での列車の混雑の状態の第1の計測値の一例である。
【0041】
ステップST23においてプロセッサー110は、混雑率の予測に使用する時系列モデル及び変動表などを混雑データベース141から取得する。混雑率の予測に使用される時系列モデルは、ステップST22で取得された状況データが示す状況と一致する混雑条件の時系列モデルである。また、混雑率の予測に使用される時系列モデルは、ステップST22で取得された混雑率データの駅区間と同一の駅区間の時系列モデルである。そして、混雑率の予測に使用される変動表は、ステップST22で取得された状況データが示す状況と一致する混雑条件の変動表である。また、混雑率の予測に使用される変動表は、混雑率を予測する対象の列車についての変動表である。
【0042】
ステップST24においてプロセッサー110は、ステップST22で取得した混雑率データとステップST23で取得した時系列モデルの差分を求める。
図7を用いて、計測された混雑率データ、時系列モデル及び差分の関係を説明する。
図7は、混雑率の時間変化の一例を示すグラフである。
図7のグラフは、横軸が時間(時刻)、縦軸が混雑率である。
図7には、ステップST22で取得された混雑率データの一例として点Paをプロットしている。ただし、
図7に示す点Paは、混雑率C1~混雑率C4とは別の例である。曲線Lcは、ステップST23で取得される時系列モデルの一例を示す。また、差分Daは、点Paと曲線Lcとの混雑率の差を示す。なお、差分Daは、統計データと計測値の差分の一例を示す。
【0043】
ステップST25においてプロセッサー110は、ステップST24で求めた差分から、差分の予測値を求める。例えば、プロセッサー110は、最小二乗法、AR、ARMA、ARIMA又は状態空間モデルなどを使用して差分を時間の関数(以下「差分関数」という。)で示す。
図8を用いて差分と差分関数の関係を説明する。
図8は、差分の時間変化の一例を示すグラフである。
図8のグラフは、縦軸が混雑率の差分、横軸が時間である。点Pbは、差分Daをグラフにプロットしたものである。曲線Ldは、差分Daから求められた差分関数の一例を示す。差分関数を用いることで、最新の点Pbよりも先の時間の差分を予測することが可能である。
【0044】
ステップST26においてプロセッサー110は、差分関数を用いて、
図7の最新の点Paよりも先の時間の混雑率を予測する。曲線Leは、混雑率の時間変化の予測値を示す時間の関数(以下「時系列予測関数」という。)であり、時系列モデルと差分関数を足した関数である。例えば、時系列モデルを関数Fa(t)、差分関数を関数Fb(t)、時系列予測関数を関数Fc(t)とすると、Fc(t)=Fa(t)+Fb(t)である。プロセッサー110は、時系列予測関数を用いることで、任意の時間における混雑率Fc(t)を求めることができる。プロセッサー110は、例えば、駅区間を列車が通る時刻での混雑率を、時系列予測関数から求める。プロセッサー110は、一例として、時系列予測関数を用いて混雑率C5及び混雑率C6を求める。なお、プロセッサー110は、駅区間の混雑率を求める場合、当該駅区間のうち列車が先に到達する側の駅を当該列車が発車する時刻の混雑率を、時系列予測関数を用いて求める。一例として、プロセッサー110は、C駅-D駅区間の混雑率を求める場合、C駅を発車する時刻の混雑率を、時系列予測関数を用いて求める。あるいは、プロセッサー110は、駅区間の特定の位置を列車が通過又は到達する時刻の混雑率を、時系列予測関数を用いて求めても良い。なお、時系列予測関数は、駅区間での列車の混雑の状態の時間変化を予測する関数の一例である。
【0045】
ステップST27においてプロセッサー110は、対象混雑率とステップST23で取得した変動表を用いて、対象混雑率とは異なる駅区間の混雑率を推定する。対象混雑率は、ステップST27の混雑率の推定に用いる既知の混雑率である。対象混雑率は、例えば、ステップST22で取得された混雑率及びステップST26で求められた混雑率である。プロセッサー110は、1つの対象混雑率(以下「混雑率Xa」という。)と、混雑率Xaと列車及び号車が同じ変動表(以下「対象変動表」という。)を用いて、当該対象混雑率と同じ列車及び号車の、当該対象混雑率と異なる駅区間の混雑率を推定する。対象変動表のうち、混雑率Xaと同じ駅区間の混雑率を混雑率Yaとする。プロセッサー110は、混雑率Xaと混雑率Yaがどれだけ異なった値であるかを求める。一例として、プロセッサー110は、混雑率Xaと混雑率Yaがどれだけ異なった値であるかを示す値として、混雑率Xaと混雑率Yaの差αを求める。例えば、差αは、下式(1)で求めることができる。
α=Xa-Ya (1)
ここで、推定対象の混雑率を混雑率Xbとする。また、対象変動表のうち、混雑率Xbと同じ駅区間の混雑率を混雑率Ybとする。この場合、プロセッサー110は、例えば、下式(2)を用いて混雑率Xbを求める。
Xb=Yb+α (2)
また、プロセッサー110は、混雑率Xaと混雑率Yaがどれだけ異なった値であるかを示す値として、混雑率Xaと混雑率Yaの比βを求める。例えば、比βは、下式(3)で求めることができる。
β=Xa÷Ya (3)
この場合、プロセッサー110は、例えば、下式(4)を用いて混雑率Xbを求める。
Xb=Yb×β (4)
【0046】
一例として、プロセッサー110は、ステップST26で求めた混雑率C5と、混雑率C5と列車及び号車が同じ変動表とを用いて、混雑率A5、混雑率B5、混雑率D5~混雑率F6を求める。この場合、混雑率C5が混雑率Xaで、混雑率A5、混雑率B5、混雑率D5~混雑率F6が混雑率Xbである。また、この場合、C駅-D駅区間が第1の区間の一例であり、A駅-B駅区間、B駅-C駅区間、D駅-E駅区間、E駅-F駅区間及びF駅-G駅区間のそれぞれが第2の区間の一例である。
【0047】
ステップST28においてプロセッサー110は、ステップST27及びステップST28で予測した混雑率を混雑データベース141に記憶する。
【0048】
ステップST29においてプロセッサー110は、ステップST27及びステップST28で予測した混雑率を各種の装置に送信するように通信I/F150に対して指示する。当該各種の装置は、混雑率の推定値を用いて何らかの処理を行う装置である。当該各種の装置は、例えば、駅又は列車などに設置されたコンピューターなどである。当該コンピューターは、例えば、受信した混雑率を駅員又は列車の乗員などに報知する。当該コンピューターは、例えば、液晶ディスプレイなどのディスプレイに表示するなどして、混雑率を報知する。あるいは、当該各種の装置は、混雑率の推定値をユーザーに提供するサービスを提供するサーバーなどの装置である。当該サーバーは、ユーザーが使用するPC(personal computer)又はスマートホンなどの端末などに、受信した混雑率を送信する。
プロセッサー110は、ステップST29の処理の後、ステップST21へと戻る。
【0049】
第1実施形態の混雑予測システム1によれば、混雑予測サーバー100は、時系列モデル及び混雑率データを用いて混雑率を予測する。このように混雑予測サーバー100は、新規な方法で混雑率を予測することができる。また、このような方法を用いることで、混雑予測サーバー100は、従来よりも高精度に高速に混雑率の予測することができると考えられる。したがって、混雑予測サーバー100は、大規模な路線全体の混雑率をリアルタイムに推定することができる。また、混雑予測サーバー100は、列車の車両毎など詳細な混雑率を推定することができる。未来の時刻の混雑率の変化を効率よく逐次予測することができる。また、混雑予測サーバー100は、大規模な路線ネットワークにおけるリアルタイムな混雑予測を効率よく、列車の車両単位で求めることができる。
【0050】
また、第1実施形態の混雑予測システム1によれば、混雑予測サーバー100は、時系列予測関数を求め、時系列予測関数を用いて混雑率を予測する。このように混雑予測サーバー100は、新規な方法で混雑率を予測することができる。また、このような方法を用いることで混雑予測サーバー100は、従来よりも高精度に高速に混雑率の予測することができると考えられる。
【0051】
また、第1実施形態の混雑予測システム1によれば、混雑予測サーバー100は、変動表を用いて混雑率を予測する。このように混雑予測サーバー100は、新規な方法で混雑率を予測することができる。また、このような方法を用いることで、混雑予測サーバー100は、従来よりも高精度に高速に混雑率の予測することができると考えられる。
【0052】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の混雑予測システムは、旅客フローを推定して列車平均混雑率を求める。
図9は第2実施形態に係る混雑予測システム1b及び混雑予測システム1bに含まれる構成要素の要部構成の一例を示すブロック図である。
混雑予測システム1bは、第1実施形態の混雑予測システム1に加えて改札システム500を含む。改札システム500は、ネットワークNWに接続する。
【0053】
改札システム500は、自動改札機及びサーバーなどを含む。改札システム500は、旅客の改札内への入出場などの管理などを行うシステムである。改札システム500は、各旅客の入出場情報を記録し、混雑予測サーバー100に送信する。混雑予測サーバー100の通信I/F150は、当該入出場情報を受信する。プロセッサー110は、当該入出場情報を混雑データベース141に記憶する。なお、入出場情報は、旅客の入場駅、入場時間、出場駅及び出場時間などを示す情報含む。入出場情報は、経由駅を示す情報を含んでも良い。なお、入出場情報は、旅客がどこから前記乗り物に乗り、どこで前記乗り物から降りたかを示す乗降情報の一例である。また、旅客は、列車のユーザーの一例である。
【0054】
以下、第2実施形態に係る混雑予測システム1bの動作を
図10及び
図3などに基づいて説明する。
図10は、混雑予測サーバー100のプロセッサー110による処理の一例を示すフローチャートである。プロセッサー110は、例えば、ROM120又は補助記憶装置140などに記憶されたプログラムに基づいて
図10の処理を実行する。
プロセッサー110は、例えば、
図10の処理を、混雑予測サーバー100の起動又は混雑予測用のアプリケーションの起動などに基づいて開始する。
【0055】
プロセッサー110は、第1実施形態の
図2の処理に代えて
図10の処理を行う。また、プロセッサー110は、第1実施形態と同様に
図3の処理を行う。第2実施形態の混雑予測システム1bの動作については、第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0056】
プロセッサー110は、
図10のステップST12の処理の後、ステップST31へと進む。
ステップST31においてプロセッサー110は、混雑データベース141から所定の期間分の入出場情報を取得する。ここで、プロセッサー110は、所定の期間の入出場情報のうち、運行が平常でない分を除いた、運行が平常である分の入出場情報を取得することが好ましい。なお、プロセッサー110は、例えば、どの期間の運行が平常であり、どの期間の運行が平常でないかを示す情報を運行管理システム200から取得する。そして、プロセッサー110は、当該情報を用いることで、入出場情報から運行が平常で無い分を除く。
【0057】
ステップST32においてプロセッサー110は、ステップST31で取得した入出場情報を用いて、各駅区間を通る人数を時間帯別に推定する。当該入出場情報は、ステップST31で運行が平常でない分が除かれている場合には、運行が平常である分の入出場情報である。例えば、プロセッサー110は、ある駅STA1から入場して別のある駅STA2で出場した旅客がある駅区間SS1を通ったと推定できる。ただし、駅STA1から駅STA2までの経路が複数ある場合、駅STA1から入場して駅STA2で出場した旅客の全てが駅区間SS1を通ったわけではない場合がある。旅客がどの経路を通って駅STA1から駅STA2まで行くかは、予め割合が定められている。一例として、駅STA1から駅STA2までの経路が経路RO1~経路RO3の3種類ある場合、経路RO1を通る旅客が50%、経路RO2を通る旅客が30%、経路RO3を通る旅客が20%といったように割合が定められている。プロセッサー110は、この割合に従い、駅STA1から乗って駅STA2で降りた旅客のうち、何人が駅区間SS1を通ったか人数を推定する。一例として、経路RO1のみが駅区間SS1を含む場合、プロセッサー110は、駅STA1から入場して駅STA2で出場した旅客のうち、50%が駅区間SS1を通ったと推定する。また、プロセッサー110は、旅客が駅STA1に入場した時間から駅区間SS1を通った時間も推定する。一例として、プロセッサー110は、時刻t1から時刻t2までに入場した旅客は、時刻t3に駅区間SS1を通ると推定する。時刻t1及び時刻t2と時刻t3との関係は、例えば、時刻表などに基づき予め定められている。あるいは、プロセッサー110は、時刻表などから時刻t3を算出しても良い。プロセッサー110は、入場駅と出場駅との組み合わせそれぞれについて、同様に駅区間SS1を通る人数を推定する。そして、プロセッサー110は、当該組み合わせごとの駅区間SS1を通る人数を通る時間帯ごとに足し合わせることで、時間帯別の駅区間SS1を通る人数を推定する。また、プロセッサー110は、駅区間SS1以外の駅区間についても同様に時間帯別の通る人数を推定する。
【0058】
ステップST33においてプロセッサー110は、ステップST32で推定した時間帯別の通る人数を用いて、時間帯別の列車平均混雑率を求める。例えば、駅区間SS1のある時間帯の通る人数がNP1であるとする。また、駅区間SS1を当該時間帯に通る列車の定員を足し合わせた数をCA1とする。この場合、当該時間帯の列車平均混雑率は、例えば、下式(5)で求めることができる。
(列車平均混雑率)=NP1÷CA1 (5)
プロセッサー110は、各駅区間の各時間帯について同様に(5)式などを用いて列車平均混雑率を求める。プロセッサー110は、ステップST33の処理の後、ステップST14へと進む。なお、第2実施形態では、プロセッサー110は、第1実施形態のステップST13で求める列車平均混雑率に代えて、ステップST33で求める列車平均混雑率を用いて各処理を行う。
【0059】
第2実施形態の混雑予測システム1bは、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0060】
また、第2実施形態の混雑予測システム1bによれば、混雑予測サーバー100は、入出場情報を用いて混雑率を求める。これにより、混雑予測サーバー100は、混雑率をより精度良く求めることができる。
【0061】
〔第3実施形態〕
第3実施形態の混雑予測システムは、走行中の列車の混雑率を用いて変動表を補正する。
第3実施形態の混雑予測システム1bの構成は、第2実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、第3実施形態の混雑予測システムの構成は、第1実施形態と同様であっても良い。
【0062】
以下、第3実施形態に係る混雑予測システム1bの動作を
図10及び
図11などに基づいて説明する。
図11は、混雑予測サーバー100のプロセッサー110による処理の一例を示すフローチャートである。プロセッサー110は、例えば、ROM120又は補助記憶装置140などに記憶されたプログラムに基づいて
図11の処理を実行する。
プロセッサー110は、例えば、
図11の処理を、混雑予測サーバー100の起動又は混雑予測用のアプリケーションの起動などに基づいて開始する。
【0063】
プロセッサー110は、第2実施形態の
図3の処理に代えて
図11の処理を行う。また、第3実施形態のプロセッサー110は、第2実施形態と同様に
図10の処理を行う。第3実施形態の混雑予測システム1bの動作については、第2実施形態と異なる部分について説明する。
【0064】
プロセッサー110は、
図11のステップST26の処理の後、ステップST41へと進む。
ステップST41においてプロセッサー110は、混雑率の予測対象の列車について、始発駅から現在走行中の位置までのうち、計測装置300によって計測済みの混雑率を混雑率管理システム400などから取得する。一例として、混雑率D5を予測する場合には、混雑率D5に対応する列車が予測対象の列車である。なお、ステップST41で取得される混雑率を以下「実測混雑率」という。実測混雑率は、予測対象の乗り物の混雑の状態の第2の計測値の一例である。
【0065】
ステップST42においてプロセッサー110は、実測混雑率を用いて対象変動表を補正する。例えば、プロセッサー110は、対象変動表の各駅区間の混雑率について、実測混雑率との差又は比などを求める。そして、プロセッサー110は、当該差又は比を用いて最小二乗法、AR、ARMA、ARIMA又は状態空間モデルなどを使用して、予測対象の列車がまだ到達していない駅区間それぞれについての差又は比を予測する。そして、プロセッサー110は、予測した差又は比を用いて変動表を補正する。プロセッサー110は、ステップST42の処理の後、ステップST27へと進む。プロセッサー110は、補正済みの変動表を用いてステップST27の処理を行う。
【0066】
第3実施形態の混雑予測システム1bは、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
また、第3実施形態の混雑予測システム1bによれば、混雑予測サーバー100は、計測装置300によって計測された、混雑率の予測対象の列車の混雑率を用いて変動表を補正する。これにより、混雑予測サーバー100は、混雑率をより精度良く求めることができる。
【0068】
〔第4実施形態〕
第4実施形態の混雑予測システムは、鉄道の運行に異常が発生した場合に、平常時とは異なる方法で混雑率を推定する。また、第4実施形態の混雑予測システムは、異常時の混雑率から平常時の混雑率へ復旧する見込み時間を推定する。
異常が発生した路線は、輸送手段の運行が大きく制約される場合が多い。また、異常の原因及び障害対策方法が多様である。さらに、旅客への対応も情報提供の内容によって多様となる。このため、異常が発生した路線に対する混雑状態の予測は、他の路線の混雑状態の予測に比べて難しい。したがって、例えば、異常が発生した路線に対しては、運転再開見込みの情報提供を優先することが好ましい。そして、異常が発生した路線に繋がる路線又は近隣の路線などへの混雑の影響、混雑状態の異常の予測及び平常状態への復旧時間の予測を第4実施形態の混雑予測システムを使用して推測することが考えられる。ただし、異常が発生した路線に対して第4実施形態の混雑予測システムを用いることも可能である。
【0069】
第4実施形態の混雑予測システム1bの構成は、第3実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0070】
以下、第4実施形態に係る混雑予測システム1bの動作を
図10~
図12などに基づいて説明する。
図12は、混雑予測サーバー100のプロセッサー110による処理の一例を示すフローチャートである。プロセッサー110は、例えば、ROM120又は補助記憶装置140などに記憶されたプログラムに基づいて
図12の処理を実行する。
プロセッサー110は、例えば、
図12の処理を、混雑予測サーバー100の起動又は混雑予測用のアプリケーションの起動などに基づいて開始する。
【0071】
第4実施形態のプロセッサー110は、第3実施形態と同様に
図10及び
図11の処理を行う。また、プロセッサー110は、第3実施形態の
図10の処理に加えて
図12の処理を行う。また、第4実施形態の混雑予測システム1bの動作については、第3実施形態と異なる部分について説明する。
【0072】
ステップST51においてプロセッサー110は、予測対象の路線とは異なる路線又は予測対象の路線の運行に異常が発生したか否かを判定する。例えば、運行管理システム200は、各路線の運行に異常が発生した場合、運行に異常が発生したことを通知する情報を混雑予測サーバー100に送信する。当該情報は、混雑予測サーバー100の通信I/F150によって受信される。プロセッサー110は、当該情報が受信されたことに応じて路線の運行に異常が発生したと判定する。あるいは、プロセッサー110は、混雑率の計測値の変化から、異常が発生したことを判定しても良い。
【0073】
図13は、混雑率の時間変化の一例を示すグラフである。
図13のグラフは、縦軸が混雑率、横軸が時間である。
図13には、混雑率の計測値を点Pcとしてプロットしている。また、折れ線Lfは、点Pcを結んだ折れ線である。そして、曲線Lgは、正常時の混雑率の時間変化を示す。
【0074】
点Pcは、例えば、特定の駅区間の列車又は車両の混雑率である。この場合、折れ線Lfは、例えば、特定の駅区間における列車又は車両の混雑率の時間変化を示す。またこの場合、曲線Lgは、例えば時系列モデルである。
あるいは、点Pcは、特定の列車又は車両の時間ごとの混雑率である。この場合、折れ線Lfは、例えば、特定の列車又は車両の混雑率の時間変化を示す。またこの場合、曲線Lgは、例えば変動表をグラフ化したものである。
なお、曲線Lgは、通常時用の変動表を用いて予測された混雑率のグラフであっても良い。
【0075】
また、
図13には差分混雑率CDも示している。差分混雑率CDは、同じ時間の点Pcと曲線Lgとの差又は曲線Lfと曲線Lgとの差である。
図13では、代表的に、1つの点Pcについての差分混雑率CDを示している。
【0076】
図14は、差分混雑率CDの時間変化の一例を示すグラフである。点Pdは、点Pcと曲線Lgとの差である差分混雑率CDをプロットしたものである。また、線Lhは、点Pdを結んだ折れ線である。したがって、線Lhは、差分混雑率CDの時間変化を示す。また、
図14には、閾値CDaも示している。閾値CDaは、異常が発生しているか否かの境界を示す閾値である。
プロセッサー110は、例えば、最新の混雑率の計測値に基づく差分混雑率CDが閾値CDa以上であるならば、路線の運行に異常が発生したと判定する。
図13及び
図14には、差分混雑率CDが閾値CDa以上となった時刻として、時刻Taを示している。
【0077】
プロセッサー110は、路線の運行に異常が発生したと判定しないならば、ステップST51においてNoと判定してステップST51の処理を繰り返す。対して、プロセッサー110は、路線の運行に異常が発生したと判定するならば、ステップST51においてYesと判定してステップST52へと進む。
【0078】
ステップST52においてプロセッサー110は、
図11のステップST26における混雑率の予測方法を通常時用のものから異常時用のものに変更する。異常時用の混雑率の予測方法を用いる場合、プロセッサー110は、例えば、ステップST26の処理において求めた混雑率の予測値をn1倍する。あるいは、プロセッサー110は、ステップST26の処理において求めた混雑率にm1ポイント足す。なお、n1は、1以上の数である。m1は、0以上の数である。また、混雑率には上限があっても良い。混雑率に上限を設ける場合、プロセッサー110は、混雑率をn1倍にすることで混雑率が上限以上となる場合、又は混雑率にm1ポイント足すことで混雑率が上限以上となる場合、計算結果に拘らず混雑率を上限の値にする。混雑率の上限は、例えば、満員状態を示す。すなわち、混雑率が上限である列車及び車両は満員状態となることが予想される。なお、駅区間ごとにn1又はm1の値が異なっていても良い。また、異常が発生した路線及び駅区間によってn1又はm1の値が異なっていても良い。また、混雑率の予測対象の路線及び駅区間によってn1又はm1の値が異なっていても良い。また、プロセッサー110は、ステップST26の処理において求めた混雑率に基づく差分混雑率をn1倍するかm1足しても良い。そして、プロセッサー110は、当該差分混雑率から混雑率を求める。
図13に示す混雑率が平坦となっている部分は、混雑率が上限となっている部分である。混雑率が平坦となっている部分は、時刻Tcから時刻Tdの範囲である。
【0079】
図12のステップST53においてプロセッサー110は、混雑率が正常化し始めたか否かを判定する。運行の異常を原因として混雑率は平常時より増加するが、運行が正常化するにつれて混雑率の増加量は減少する。プロセッサー110は、例えば、計測装置300で計測された混雑率に基づき、混雑率の増加量が減少し始めたことを検知して、混雑率が正常化し始めたと判定する。あるいは、プロセッサー110は、運行管理システム200から混雑率が正常化し始めたことを示す情報を受信したことに応じて混雑率が正常化し始めたと判定する。混雑率が正常化し始めたことを示す情報は、一例として、列車の運転再開を示す情報である。
【0080】
図14には、閾値CDbを示している。閾値CDbは、混雑率が正常化し始めたか否かの境界を示す閾値である。プロセッサー110は、例えば、差分混雑率CDが閾値CDb以下となったならば混雑率が正常化し始めたと判定する。
【0081】
プロセッサー110は、混雑率が正常化し始めたと判定しないならば、ステップST53においてNoと判定してステップST53の処理を繰り返す。対して、プロセッサー110は、混雑率が正常化し始めたと判定するならば、ステップST53においてYesと判定してステップST54へと進む。
【0082】
ステップST54においてプロセッサー110は、
図11のステップST26における混雑率の予測方法を異常時用のものから正常化時用のものに変更する。正常化時用の予測方法は、例えば、異常時から正常時への過渡状態に用いるための方法である。正常化時用の混雑率の予測方法を用いる場合、プロセッサー110は、ステップST26の処理において求めた混雑率の予測値をn2倍する。あるいは、プロセッサー110は、ステップST26処理において求めた混雑率にm2ポイント足す。なお、n2は、1以上の数である。m2は、0以上の数である。n2及びm2は、正常化し始めてからの経過時間t11が長いほど減少する値である。t11が0である場合、例えば、n1=n2、m1=m2である。一例として、n2及びm2は、
n2=1+(n1-1)×e
(-t11/τ1) (6)
m2=m1×e
(-t11/τ2) (7)
である。ここで、eは、ネイピア数である。また、τ1及びτ2は、時定数である。なお、n2を示す関数は、(6)式に限らない。また、m2を示す関数は、(7)式に限らない。また、プロセッサー110は、ステップST26の処理において求めた混雑率に基づく差分混雑率をn2倍するかm2足しても良い。そして、プロセッサー110は、当該差分混雑率から混雑率を求める。なお、
図14の減衰曲線Liは、ステップST26の処理において求めた混雑率に基づく差分混雑率をn2倍するかm2足した差分混雑率の時間変化を示す。
また、
図14に示す曲線Liは、n2又はm2を用いて求めた混雑率に基づく差分混雑率CDの時間変化の一例を示す曲線である。
【0083】
あるいは、プロセッサー110は、i番目の点Pdからの経過時間をt12とし、n2に代えてn3を、m2に代えてm3を用いても良い。一例として、n3及びm3は、
n3=1+(n1-1)×e(-t12/τ3) (8)
m3=m1×e(-t12/τ4) (9)
である。
【0084】
プロセッサー110は、例えば
図14に示すような点Pdを2つ以上用いて時定数τを求める。例えば、混雑率が正常化し始めてから最初の点Pdの差分混雑率CDをR1、2番目の点Pdの差分混雑率CDをR2、3番目の点Pdの差分混雑率CDをR3、…とする。また、(i-1)番目の点Pdの差分混雑率CDをR(i-1)、i番目の点Pdの差分混雑率CDをRiとする。なお、iは、1以上N以下の任意の整数である。Nは、時定数τを求めるために用いることができる点Pdの個数である。また、i番目の点Pdの時刻と(i-1)番目の点Pdの時刻との差はΔTiである。なお、ΔTiを総称してΔTというものとする。ΔTiの値は、一定ではなくiごとに異なる。あるいは、プロセッサー110は、ΔTiがiにかかわらず一定となるように補正しても良い。時定数τは、例えば下式(10)で表すことができる。なお、時定数τ1~時定数τ4を総称して時定数τというものとする。また、εは、推定誤差である。
(R(i-1)/Ri) ∝ τ+ε (10)
プロセッサー110は、推定誤差εを、i=1~Nの範囲で平均値処理することで圧縮することにより求める。あるいは、プロセッサー110は、平均値処理をすることで、状態変化の追随を考慮して移動平均をとっても良い。
【0085】
Riは、例えば、下式(11)で表すことができる。
Ri=(R(i-1))×e
(-ΔTi/τ) (11)
したがって、プロセッサー110は、時定数τを例えば下式(12)で求める。なお、ここで求められるτは、例えば時定数τ3又は時定数τ4である。また、lnは、自然対数を示す。
τi=ΔTi×ln(Ri/(R(i-1))) (12)
なお、時定数τiは、Ri及びR(i-1)を用いて求めた時定数τを示す。ここで、i=1の場合について考える。i=1の場合、R(i-1)は、R0である。R0は、R1に対応する点Pdの1つ前の点Pdの差分混雑率CDを示す。なお、R0は、
図14には示していない。プロセッサー110は、R0に対応する点Pdに対応する点Pcの混雑率が上限である場合、誤差が大きくなるため、R2の値が分かるまで時定数τを求めなくても良い。そして、プロセッサー110は、R2の値を求めるなどしてR2の値が分かったならばi=2の場合の(12)式により時定数τを求める。なお、点Pdに対応する点Pcとは、曲線Lgの値を引いて差分混雑率CDを求める前の点Pcである。したがって、点Pdと点Pdに対応する点Pcとは時間は同じである。プロセッサー110は、時定数τを求めるまでは、混雑率の予測方法を異常時用のものから正常化時用のものに変更しなくても良い。
【0086】
混雑率の計測値を用いて求めた差分混雑率は、様々な誤差が含まれている。時定数τの推定値τeは、
τe=E[τi+εi]=E[τi]+E[εi] (13)
と表すことができる。ここで、E[x]はxの期待値を示す。なお、τiとεiは独立とする。また、εiは、時定数τiについての推定誤差である。また、εiは、各測定値などに含まれる誤差をまとめたものである。プロセッサー110は、次の式によりτeを求めても良い。
τe≒(1/N)・Σ(ΔTi・ln(Ri/R(i-1)))+(1/N)・Σ(εi) (14)
ここで、右辺の第2項(1/N)・Σ(εi)は、0に近いため無視しても良い。すなわち、当該第2項を無視する場合、プロセッサー110は、N個のτiの平均値をτeとする。プロセッサー110は、時定数の推定値τeを時定数τとして用いても良い。
【0087】
ステップST55においてプロセッサー110は、運行が正常になるまでの時間ΔTb及び運行が正常になる時刻Tbを推定する。時刻Tbは、例えば、ステップST54でn2をかけるかm2を足すことによって求めた混雑率に基づく差分混雑率が閾値CDa以下となる時刻である。運行が正常になるまでの時間ΔTbは、現在時刻から時刻Tbまでの時間である。
【0088】
あるいは、プロセッサー110は、Ri及びR(i-1)から時刻Tbを推定しても良い。例えば、プロセッサー110は、i番目の点Pdと(i-1)番目の点Pdを結んだ直線SLiの傾きmを求める。傾きmは、例えば、
m=((Ri-R(i-1))/ΔTi) (15)
で求めることができる。また、プロセッサー110は、i番目の点Pdの時刻Tiと点Qの時刻TQとの差の時間Txiを求める。なお、点Qは、直線SLiが閾値CDaを示す直線と交わる点である。換言すると、点Qは、直線SLi上の、差分混雑率CDがCDaである点である。時間Txiは、例えば、
Txi=ΔTi-Ri/m (16)
で求めることができる。プロセッサー110は、例えば、時刻Tiから時刻Tbまでの時間Tbiを求める。時間Tbiは、例えば
Tbi=Txi×γ1 (17)
で求めることができる。ここで、係数γ1は、予め定められた所定の係数である。また、プロセッサー110は、時刻Tbを推定する。時刻Tbは、例えば、
Tb=Ti+Tbi (18)
で求めることができる。
【0089】
あるいは、プロセッサー110は、時間Txiに代えて時間Tx(i-1)を、時間Tbiに代えて時間Tb(i-1)を求めても良い。時間Tx(i-1)は、(i-1)番目の点Pdの時刻Tiと点Qの時刻TQとの差である。時間Tb(i-1)は、(i-1)番目の点Pdの時刻T(i-1)から時刻Tbまでの時間である。時間Tx(i-1)は、
Tx(i-1)=ΔT(i-1)-(R(i-1))/m (19)
で求めることができる。また、時間Tb(i-1)は、例えば、
Tb(i-1)=Tx(i-1)×γ2 (20)
で求めることができる。ここで、係数γ2は、予め定められた所定の係数である。また、プロセッサー110は、時刻Tbを推定する。時刻Tbは、例えば、
Tb=T(i-1)+Tb(i-1) (21)
で求めることができる。
【0090】
また、時間ΔTbは、時刻Tbから現在時刻を引くことで求めることができる。
なお、時刻Tb及び時間ΔTbを求める各式は上に示したものに限定しない。
【0091】
また、プロセッサー110は、運行が正常になるまでの時間ΔTb及び時刻Tbを、例えば、ステップST29と同様に各種の装置に送信する。各種の装置は、例えば、ディスプレイに表示するなどして、運行が正常になるまでの時間ΔTb及び時刻Tbを報知する。各種の装置は、例えば、ユーザーが使用する端末などに運行が正常になるまでの時間ΔTb及び時刻Tbを送信する。なお、プロセッサー110は、ステップST51とステップST55において共通の閾値CDaを用いている。しかしながら、プロセッサー110は、ステップST51とステップST55で異なる閾値を用いても良い。
【0092】
ステップST56においてプロセッサー110は、運行が正常になったか否かを判定する。プロセッサー110は、例えば、混雑率が正常化し始めてから所定の時間経過したならば、運行が正常になったと判定する。あるいは、プロセッサー110は、運行管理システム200から運行が正常になったことを示す情報を受信したことに応じて運行が正常になったと判定する。あるいは、プロセッサー110は、計測装置300で計測された混雑率が所定の正常範囲内となって事に応じて運行が正常になったと判定する。プロセッサー110は、運行が正常になったと判定しないならば、ステップST56においてNoと判定してステップST57へと進む。対して、プロセッサー110は、運行が正常になったと判定するならば、ステップST56においてYesと判定してステップST57へと進む。
【0093】
ステップST57においてプロセッサー110は、時系列モデル及び変動表を正常化時用のものから通常時用のものに変更する。すなわち、プロセッサー110は、
図11のステップST26において求めた混雑率をそのまま用いる。プロセッサー110は、
図12のステップST57の処理の後、ステップST51へと戻る。
【0094】
第4実施形態の混雑予測システム1bは、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0095】
また、第4実施形態の混雑予測システム1bによれば、混雑予測サーバー100は、運行に異常が発生した場合、異常時用の混雑率の予測方法を用いて混雑率を予測する。これにより、混雑予測サーバー100は、運行に異常が発生している場合の混雑率をより精度良く求めることができる。また、混雑予測サーバー100は、ダイヤ乱れ等により混雑状態が過渡的に異常な状態になった場合に、異常な混雑状態から平常状態に収束する時間の予測ができる。
【0096】
上記の実施形態は、以下のような変形も可能である。
上記の実施形態では、プロセッサー110は、ステップST24~ステップST26において差分を用いて混雑率を予測した。しかしながら、プロセッサー110は、差分に代えて比を用いて混雑率を予測しても良い。
【0097】
上記の実施形態においては混雑率管理システム400が実行する処理の一部又は全部を混雑予測サーバー100又は運行管理システム200が実行しても良い。上記の実施形態において運行管理システム200が実行する処理の一部又は全部を混雑予測サーバー100又は混雑率管理システム400が実行しても良い。上記の実施形態において混雑予測サーバー100が実行する処理の一部又は全部を運行管理システム200又は混雑率管理システム400が実行しても良い。
【0098】
上記の実施形態において混雑率管理システム400が記憶する情報の一部又は全部を混雑予測サーバー100又は運行管理システム200が記憶しても良い。上記の実施形態において運行管理システム200が記憶する情報の一部又は全部を混雑予測サーバー100又は混雑率管理システム400が記憶しても良い。上記の実施形態において混雑予測サーバー100が記憶する情報の一部又は全部を運行管理システム200又は混雑率管理システム400が記憶しても良い。
【0099】
混雑予測システム1は、混雑率に代えて、混雑率以外の乗り物の混雑の状態を示す値を用いても良い。
【0100】
混雑予測システム1は、平均値に代えて中央値などを用いても良い。
【0101】
上記の実施形態の混雑予測システム1は、鉄道の混雑率を予測するシステムである。しかしながら、実施形態の混雑予測システムは、鉄道以外の乗り物の混雑率を予測するシステムであっても良い。例えば、実施形態の混雑予測システムは、路線バス、トロリーバス、ガイドウェイバス若しくはその他のバス、船舶、航空機、エレベーター又はその他の乗り物の混雑率を予測する。
【0102】
混雑予測サーバー100は、複数の装置に分かれていても良い。そして、当該複数の装置は、上記の実施形態における処理を分担して処理しても良い。
【0103】
プロセッサー110は、上記実施形態においてプログラムによって実現する処理の一部又は全部を、回路のハードウェア構成によって実現するものであっても良い。
【0104】
実施形態の処理を実現するプログラムは、例えば装置に記憶された状態で譲渡される。しかしながら、当該装置は、当該プログラムが記憶されない状態で譲渡されても良い。そして、当該プログラムが別途に譲渡され、当該装置へと書き込まれても良い。このときのプログラムの譲渡は、例えば、リムーバブルな記憶媒体に記録して、あるいはインターネット又はLANなどのネットワークを介したダウンロードによって実現できる。
【0105】
以上、本発明の実施形態を説明したが、例として示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0106】
1,1b 混雑予測システム
100 混雑予測サーバー
110 プロセッサー
120 ROM
130 RAM
140 補助記憶装置
141 混雑データベース
150 通信I/F
160 バス
200 運行管理システム
300 計測装置
400 混雑率管理システム
500 改札システム