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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099901
(43)【公開日】2023-07-14
(54)【発明の名称】圧力センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/00 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
G01L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000096
(22)【出願日】2022-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】津嶋 鮎美
(72)【発明者】
【氏名】中園 茉友子
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB05
2F055CC60
2F055DD20
2F055EE40
2F055FF43
2F055GG01
2F055HH08
(57)【要約】
【課題】圧力測定装置に接続されるワッシャに圧力導入用の導圧管がシール性よく溶接されるとともに、この導圧管がセラミックス製のセンサケースに半田付けされる圧力センサの製造方法を提供する。
【解決手段】圧力測定装置の第1、第2の導圧路から圧力センサチップ16に被測定圧を伝達する第1、第2の導圧管6,7の一端部に、これらの導圧路に接続される第1、第2のワッシャ31,32を溶接する第1のステップと、第1、第2の導圧管6,7に半田付け用のめっきを施す第2のステップとを有する。圧力センサチップ16を収容するセラミックス材料からなるケース本体11の第1、第2の貫通孔14,15に第1、第2の導圧管6,7の他端部を通し、第1、第2の導圧管6,7をケース本体11に半田付けして第1、第2の貫通孔14,15を密閉する第3のステップを有する。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力測定装置の導圧路から圧力センサチップに被測定圧を伝達する導圧管の一端部に、前記導圧路に接続されるワッシャを溶接する第1のステップと、
前記導圧管に半田付け用のめっきを施す第2のステップと、
前記圧力センサチップを収容するセラミックス材料からなるセンサケースの貫通孔に前記導圧管の他端部を通し、前記導圧管を前記センサケースに半田付けして前記貫通孔を密閉する第3のステップとを有することを特徴とする圧力センサの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の圧力センサの製造方法において、
前記第1のステップは、
前記ワッシャの貫通孔に前記導圧管を挿入して前記ワッシャの一端と前記導圧管の先端とを溶接することにより実施し、
前記ワッシャの前記貫通孔は、前記ワッシャの一端に開口する小径部と、前記小径部より孔径が大きく形成されて前記導圧管と孔内面との間に洗浄用の空間が形成される大径部とを有し、
前記第2のステップは、前記導圧管に半田付け用のめっきが施された後に前記ワッシャの前記貫通孔の前記大径部を洗浄するステップを有していることを特徴とする圧力センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付けと溶接とが行われる導圧管を用いる圧力センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力センサとしては、例えば特許文献1に記載されているように、被測定圧力を導入するために導圧管を使用するものがある。特許文献1に開示された導圧管は、圧力測定装置ボディの導圧路と圧力センサとを接続している。導圧管と圧力センサとの接続は、例えば接着剤を使用して行うことができる。接着剤としてエポキシ系の接着剤を使用する場合は、この接着剤が吸湿して劣化することを防ぐために、接着部をセンサケースで覆うことが望ましい。
【0003】
すなわち、圧力検出部を有する圧力センサチップに接着剤によって導圧管を接着し、接着部を含めて圧力センサチップをセンサケースの中に封入する。この場合、センサケースは、信号取出し構造を容易に形成できるように、セラミックスによって形成することが好ましい。
導圧管と圧力測定装置ボディとの接合は、例えば特許文献2に記載されているように、導圧管が貫通する金属製のワッシャを介して行うことができる。導圧管は、ワッシャの貫通孔に挿入された状態でワッシャに溶接される。ワッシャは、ボディに抵抗溶接によって溶接される。
【0004】
ところで、近年の圧力測定装置は、センサチップに過大圧保護機構を搭載することがある。過大圧保護機構をセンサチップに搭載した圧力測定装置においては、受圧部(バリアダイアフラム)から感圧部(センサチップ)までの圧力伝達経路においても高耐圧であることが求められる。そのため、圧力伝達経路の構成部品(ボディ、ワッシャ、導圧管)は、強度維持を目的としてステンレス鋼等の高強度金属によって形成する必要がある。
【0005】
圧力センサチップを覆うセラミックス製のセンサケースを備えている場合、センサケースを導圧管が貫通する部分の隙間は、半田付けにより封止する。半田付けを行うために、センサケースには、導圧管を通す開口部の周囲に導体を形成し、Niを下地としてAuをメタライズする。同様に導圧管も半田付けを行うためにメタライズを行う。一般的に、ステンレス鋼は半田付けしづらい金属であり、ステンレス鋼に半田付けを行うためには、表面の酸化膜を除去する必要がある。酸化膜を除去するためには、やに入り半田やフラックスを使用する必要があるが、半田付け後にフラックス(腐食成分)の除去のため洗浄が必要となる。洗浄の際には、導圧路内への異物混入やセンサチップへの異物付着による特性劣化などの不具合が生じるおそれがある。このため、このような不具合の発生を避けるため、やに入り半田やフラックスを使用することなく、ステンレス鋼製の導圧管にNiを下地としてAuめっきを行い、このAu層をセンサケースのメタライズ部に半田付けして導圧管貫通部を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5089018号公報
【特許文献2】特許第6559584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、半田付けできるようにNiを下地としてAuめっきが施された導圧管は、ワッシャとの溶接部においてシール性が低くなるおそれがあった。この理由は、下地のNiめっき成分に含まれるP(りん)やS(硫黄)などにより、溶接割れが発生するからである。この溶接割れは、図16に示すように発生する。図16には、導圧管Aの先端をワッシャBの貫通孔の開口縁に溶接した溶接部が示されている。この溶接部には、図16中に四角形の枠で囲って示すように、溶接割れにより生じるクラックが形成されている。クラックは、導圧管AとワッシャBとの境界に沿うように延びている。
【0008】
本発明の目的は、圧力測定装置に接続されるワッシャに圧力導入用の導圧管がシール性よく溶接されるとともに、この導圧管がセラミックス製のセンサケースに半田付けされる圧力センサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明に係る圧力センサの製造方法は、圧力測定装置の導圧路から圧力センサチップに被測定圧を伝達する導圧管の一端部に、前記導圧路に接続されるワッシャを溶接する第1のステップと、前記導圧管に半田付け用のめっきを施す第2のステップと、前記圧力センサチップを収容するセラミックス材料からなるセンサケースの貫通孔に前記導圧管の他端部を通し、前記導圧管を前記センサケースに半田付けして前記貫通孔を密閉する第3のステップとを有する方法である。
【0010】
本発明は、前記圧力センサの製造方法において、前記第1のステップは、前記ワッシャの貫通孔に前記導圧管を挿入して前記ワッシャの一端と前記導圧管の先端とを溶接することにより実施し、前記ワッシャの前記貫通孔は、前記ワッシャの一端に開口する小径部と、前記小径部より孔径が大きく形成されて前記導圧管と孔内面との間に洗浄用の空間が形成される大径部とを有し、前記第2のステップは、前記導圧管に半田付け用のめっきが施された後に前記ワッシャの前記貫通孔の前記大径部を洗浄するステップを有していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、導圧管に半田付け用のめっきを施す以前に導圧管にワッシャを溶接するから、この導圧管とワッシャとの溶接部に溶接割れが生じることはない。また、導圧管のセンサケースを貫通する部分には半田付け用のめっきが施されているから、センサケースの導圧管が貫通する貫通部が半田付けにより封止される。したがって、圧力測定装置に接続されるワッシャに圧力導入用の導圧管がシール性よく溶接されるとともに、この導圧管がセラミックス製のセンサケースに半田付けされる圧力センサの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、圧力センサの斜視図である。
図2図2は、圧力センサを破断して示す斜視断面図である。
図3図3は、圧力センサの要部を拡大して示す断面図である。
図4図4は、ワッシャと導圧管との接合部を拡大して示す断面図である。
図5図5は、圧力測定装置の斜視断面図である。
図6図6は、圧力測定装置の一部を破断して示す分解斜視図である。
図7図7は、圧力測定装置の受圧部を破断して示す断面図である。
図8図8は、本発明に係る圧力センサの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、第1のステップと第2のステップとを説明するための図である。
図10図10は、第3のステップを説明するための断面図である。
図11図11は、半田付け用治具の斜視図である。
図12図12は、ワイヤボンディングが実施された状態の圧力センサの断面図である。
図13図13は、蓋体が接合された状態の圧力センサの断面図である。
図14図14は、ワッシャの変形例を示す断面図である。
図15図15は、ワッシャをかしめるステップを説明するための断面図である。
図16図16は、ワッシャと導圧管との溶接部を拡大して示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る圧力センサの製造方法の一実施の形態を図1図13を参照して詳細に説明する。
図1に示す圧力センサ1は、図5に示す圧力測定装置2に使用されるもので、圧力測定装置2の基板3に実装されるセンサケース4と、圧力測定装置2のボディ5に溶接される第1および第2の導圧管6,7とを備えている。
【0014】
センサケース4は、図2に示すように、有底角筒状に形成されたケース本体11と、このケース本体11の開口部を閉塞する蓋体12とによって構成されている。ケース本体11はセラミックス材料によって形成され、蓋体12はセラミックス材料または金属材料によって形成されている。ケース本体11の底壁13には第1の貫通孔14と第2の貫通孔15が形成されている。これらの第1および第2の貫通孔14,15には、第1の導圧管6と第2の導圧管7とが挿通されている。これらの第1および第2の導圧管6,7は、センサケース4の中に収容された圧力センサチップ16に接続されている。
【0015】
圧力センサチップ16は、複数のシリコン製の板状部材を厚み方向に重ねて立方体状に形成されている。圧力センサチップ16には、第1の導圧管6が挿入される第1の孔17と、第2の導圧管7が挿入される第2の孔18とが形成されている。第1の孔17の内部は、圧力センサチップ16の第1の圧力室16aに連通され、第2の孔18の内部は、圧力センサチップ16の第2の圧力室16bに連通されている。この実施の形態による圧力センサチップ16は、第1の孔17から第1の圧力室16aに伝達された圧力と、第2の孔18から第2の圧力室16bに伝達された圧力との差圧を検出するように構成されている。
【0016】
第1および第2の導圧管6,7は、それぞれステンレス鋼によって形成され、所定の形状に曲げられている。また、これらの第1および第2の導圧管6,7は、図3に示すように、圧力センサチップ16に接着剤19によって接着されている。この接着剤19としては、エポキシ系の接着剤を用いることができる。センサケース4の内部は、エポキシ系の接着剤19が吸湿することがない状態になっている。この状態は、真空状態あるいはN2ガスなどの不活性ガスで満たされた状態である。センサケース4内をこのような不活性な状態に保つために、蓋体12がセンサケース4に溶接あるいはろう付けされるとともに、第1および第2の導圧管6,7におけるセンサケース4の第1および第2の貫通孔14,15を貫通する部分が半田付けによって封止されている。導圧管貫通部の半田付けは、半田20が第1および第2の貫通孔14,15の周囲の全域にわたって濡れ拡がるように行われている。
【0017】
ケース本体11の第1および第2の貫通孔14,15およびこれらの第1および第2の貫通孔14,15の開口部の周辺は、半田付けを行うことができるように、メタライズ処理が施されている。また、第1および第2の導圧管6,7における第1および第2の貫通孔14,15に挿通される部分には、半田付け用のめっきが施されている。この半田付け用のめっきは、Niを下地とするAuめっきである。
【0018】
センサケース4の内側部には、ボンディングパッド21が設けられている。このボンディングパッド21は、圧力センサチップ16のボンディングパッド22にボンディングワイヤ23を介して電気的に接続されている。また、センサケース4のボンディングパッド21は、図示してはいないが、センサケース4の外側底面に設けられた電極にセンサケース4内の導体を介して電気的に接続されている。センサケース4の電極は、基板3(図6参照)の半田付け用ランド24に半田付けされる。基板3は、圧力測定装置2のボディ5に樹脂ケース25を介して支持されている。
【0019】
圧力センサ1の第1および第2の導圧管6,7は、圧力センサチップ16とは反対側の端部に第1および第2のワッシャ31,32が溶接され、これらの第1および第2のワッシャ31,32を介して圧力測定装置2のボディ5に接続されている。第1および第2のワッシャ31,32は、それぞれステンレス鋼によって円板状に形成され、ボディ5に溶接されている。
第1および第2のワッシャ31,32の中心部には、図4に示すように、円筒状の凸部31a,32aが設けられているとともに、貫通孔33,34が形成されている。
【0020】
第1のワッシャ31の貫通孔33には、第1の導圧管6が挿入されて接合されている。第2のワッシャ32の貫通孔34には、第2の導圧管7が挿入されて接合されている。第1および第2のワッシャ31,32と第1および第2の導圧管6,7との接合は、凸部31a,32aに開口する貫通孔33,34の開口縁に第1および第2の導圧管6,7の先端外周部を溶接することによって行われている。この溶接は、図4に示すように、溶接部35によって第1および第2のワッシャ31,32と第1および第2の導圧管6,7との間が液密にシールされるように行っている。
【0021】
第1および第2のワッシャ31,32が溶接されるボディ5は、ステンレス鋼によって形成されており、図5に示すように、第1および第2のワッシャ31,32が溶接された有底円筒状の検出部36と、板状に形成された受圧部37とを有している。検出部36には樹脂ケース25が組付けられている。
【0022】
受圧部37は、図7に示すように、厚み方向(図7においては左右方向)の一方の端部に第1の配管38が接続されるとともに、厚み方向の他方の端部に第2の配管39が接続される。第1の配管38の内部は、測定対象である第1のプロセス流体40で満たされている。第2の配管39の内部は、測定対象である第2のプロセス流体41で満たされている。
受圧部37における第1の配管38と接続される一端部には、第1のプロセス流体40の圧力を受圧する第1の受圧ダイアフラム42が設けられているとともに、この第1の受圧ダイアフラム42が壁の一部となる第1の圧力伝達室43が形成されている。
受圧部37における第2の配管39と接続される他端部には、第2のプロセス流体41の圧力を受圧する第2の受圧ダイアフラム44が設けられているとともに、この第2の受圧ダイアフラム44が壁の一部となる第2の圧力伝達室45が形成されている。
【0023】
第1の圧力伝達室43と第2の圧力伝達室45は、ボディ5内に形成された被測定圧伝達用の第1の導圧路46および第2の導圧路47と、第1の導圧路46および第2の導圧路47の開口部分に溶接された第1および第2のワッシャ31,32と、第1および第2の導圧管6,7とを介して圧力センサチップ16の第1および第2の圧力室16a,16bに接続されている。第1および第2の導圧路46,47は、図6に示すように、ボディ5の検出部36に開口している。この第1および第2の導圧路46,47の開口部は、ワッシャ31,32の凸部31a,32aを挿入できるように形成されている。
第1および第2の圧力伝達室43,45から圧力センサチップ16の第1、第2の圧力室16a,16bに至る圧力伝達系は、圧力伝達媒体48(図3参照)で満たされている。
【0024】
ボディ5の検出部36は、円筒状に形成され、受圧部37とは反対の方向に向けて開口している。検出部36の開口部分は、図示していないカバーによって閉塞される。
検出部36の内側底部には、第1および第2の導圧路45,46がそれぞれ開口している。第1の導圧路46の開口端には、第1のワッシャ31が溶接され、第2の導圧路47の開口端には第2のワッシャ32が溶接されている。第1のワッシャ31と第2のワッシャ32は、樹脂ケース25に形成された貫通穴49に通されている。
【0025】
次に、圧力センサ1の製造方法を図8に示すフローチャートと図9図13とを参照して説明する。
圧力センサ1は、図8のフローチャートの第1のステップS1~第5のステップS5を実施することにより製造される。第1のステップS1においては、先ず、図9(A)に示すように、第1および第2の導圧管6,7に第1および第2のワッシャ31,32を溶接する。第1および第2の導圧管6,7は、半田付け用のめっきが施されていないものを使用する。第1および第2の導圧管6,7に第1および第2のワッシャ31,32を溶接した後、第2のステップS2を実施する。
【0026】
第2のステップS2においては、先ず、第1の導圧管6と第1のワッシャ31とからなる組立体と、第2の導圧管7と第2のワッシャ32とからなる組立体を図9(B)に示すようにめっき槽51内に挿入し、めっき槽51内のめっき液52に浸漬させる。めっき液52は、半田付け用のめっきを施すものである。そして、電気めっき法または無電解めっき法によって第1および第2の導圧管6,7に半田付け用のめっきを施す(ステップS2A)。このとき、第1および第2のワッシャ31,32にも半田付け用のめっきが施される。
【0027】
その後、図9(C)に示すように、第1の導圧管6と第1のワッシャ31とからなる組立体と、第2の導圧管7と第2のワッシャ32とからなる組立体を例えば洗浄液53で洗浄する(ステップS2B)。この洗浄は、第1および第2の導圧管6,7の管内を含めて行う。このようにめっき後の洗浄を行った後、第3のステップS3に進む。
【0028】
第3のステップS3においては、先ず、図9(D)に示すように、第1および第2の導圧管6,7をケース本体11の第1および第2の貫通孔14,15に通し、圧力センサチップ16の第1の孔17と第2の孔18とに挿入する。そして、第1および第2の導圧管6,7を圧力センサチップ16に接着剤19によって接着し(ステップS3A)、図9(E)に示すように圧力センサチップ16をケース本体11の中に挿入する。
【0029】
次に、図10(A)に示すように、ケース本体11と圧力センサチップ16を第1および第2の導圧管6,7が上に位置する姿勢として半田付け用治具54に載せる。半田付け用治具54は、図11に示すように、ケース本体11の一側部と他側部とが嵌合する一対の第1の溝55と、圧力センサチップ16が嵌合する第2の溝56とが形成されている。第1の溝55にケース本体11が嵌合するとともに第2の溝56に圧力センサチップ16が嵌合することにより、ケース本体11に対して圧力センサチップ16が位置決めされる(ステップS3B)。このように半田付け用治具54にケース本体11と圧力センサチップ16とを嵌合させた後、図10(B)に示すように、第1および第2の導圧管6,7をケース本体11に半田付けする(ステップS3C)。このように第1および第2の導圧管6,7がケース本体11に半田付けされることにより、第1および第2の貫通孔14,15が半田20によって密閉される。
【0030】
そして、図12に示すように、ケース本体11のボンディングパッド21と圧力センサチップ16のボンディングパッド22とをボンディングワイヤ23によって接続する(第4のステップS4)。次いで、図13に示すように、ケース本体11の開口部に蓋体12をシーム溶接またはろう付けによって接合し(第5のステップS5)、ケース本体11を封止する。蓋体12をケース本体11に接合するにあたっては、ケース本体11と蓋体12とを図示していないチャンバーの中に装填し、チャンバー内を不活性ガスの雰囲気とするか、真空状態として行う。蓋体12がケース本体11に接合されることにより、圧力センサ1が完成する。
【0031】
このように形成された圧力センサ1を圧力測定装置2のボディ5に組み付けるためには、先ず、センサケース4を基板3に実装する。このとき、第1および第2のワッシャ31,32を基板3の二つの貫通穴3a,3a(図6参照)に通し、第1および第2の導圧管6,7を基板3のスリット3bに通す。そして、第1および第2のワッシャ31,32を樹脂ケース25の貫通穴49に通し、基板3を樹脂ケース25に載せる。このとき、第1および第2のワッシャ31,32は、第1および第2の導圧路46,47の開口部分に接続する。そして、図示していない抵抗溶接用の棒状電極を樹脂ケース25の貫通穴49に挿入して第1および第2のワッシャ31,32に重ね、棒状電極とボディ5との間に第1および第2のワッシャ31,32を挟んで抵抗溶接によって第1および第2のワッシャ31,32をボディ5に溶接する。
【0032】
第1および第2のワッシャ31,32がボディ5に溶接された後、第1および第2の圧力伝達室43,45から圧力センサチップ16内に至る圧力伝達経路に圧力伝達媒体48を充填する。この充填は、第1および第2の圧力伝達室43,45からボディ5の外に延びる充填孔(図示せず)を用いて行う。
その後、ボディ5の検出部36にカバーを組み付けることにより圧力測定装置2が完成する。
【0033】
この実施の形態による圧力センサ1の製造方法は、圧力測定装置2の第1および第2の導圧路46,47から圧力センサチップ16に被測定圧を伝達する第1および第2の導圧管6,7の一端部に第1および第2のワッシャ31,32を溶接する第1のステップS1と、第1および第2の導圧管6,7に半田付け用のめっきを施す第2のステップS2と、圧力センサチップ16を収容するセンサケース4の第1および第2の貫通孔14,15に第1および第2の導圧管6,7の他端部を通し、第1および第2の導圧管6,7をセンサケース4に半田付けして第1および第2の貫通孔14,15を密閉する第3のステップS3とを有する方法である。
【0034】
このため、この製造方法においては、第1および第2の導圧管6,7に半田付け用のめっきを施す以前に第1および第2の導圧管6,7に第1および第2のワッシャ31,32を溶接するから、第1および第2の導圧管6,7と第1および第2のワッシャ31,32との溶接部に溶接割れが生じることはない。また、第1および第2の導圧管6,7のセンサケース4を貫通する部分には半田付け用のめっきが施されているから、センサケース4の第1および第2の導圧管6,7が貫通する貫通部が半田付けにより封止される。
したがって、この実施の形態によれば、圧力測定装置に接続されるワッシャに圧力導入用の導圧管がシール性よく溶接されるとともに、この導圧管がセラミックス製のセンサケースに半田付けされる圧力センサの製造方法を提供することができる。
特に、この製造方法によれば、第1および第2の導圧管6,7に溶接部分を覆い隠すマスクを設けてから半田付け用のめっきを施し、その後、第1および第2のワッシャ31,32を溶接する方法を採る場合と較べると、マスクを付ける工程を省くことができるから、製造コストを低く抑えることができる。
【0035】
(第1および第2のワッシャの変形例)
本発明の第1のステップは、図14に示すように形成されたワッシャを用いて実施することができる。図14において、図1図13によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図14に示すワッシャ61は、第1の導圧管6または第2の導圧管7が挿入される貫通孔62を有している。
【0036】
貫通孔62は、ワッシャ61の円筒状の凸部61aを有する一端61bに開口する小径部62aと、ワッシャ61の他端61cに開口する大径部62bとによって形成されている。凸部61aは、上述した第1および第2のワッシャ31,32の凸部31a,32aと同様に、圧力測定装置2の第1および第2の導圧路46,47に挿入可能に形成されている。
小径部62aは、第1および第2の導圧管6,7が所定のクリアランスをおいて嵌合する形状に形成されている。大径部62bは、小径部62aより孔径が大きくなるように形成されている。大径部62bの孔内面と第1および第2の導圧管6,7のとの間には、洗浄液53が容易に流入する広さを有する洗浄用の空間Sが形成されている。
【0037】
小径部62aと大径部62bとからなる貫通孔62を有するワッシャ61を製造するにあたっては、図示していないドリル等の回転する工具で小径部62aと大径部62bとを形成する方法と、図15(A),(B)に示すように加圧成形によって行う方法とがある。
加圧成形によって小径部62aと大径部62bとを有する貫通孔62を形成する場合は、図15(A)に示すように、段差のない貫通孔62が形成されたワッシャ61を使用する。貫通孔62は、大径部62bのみとなる形状に形成されている。
【0038】
このワッシャ61は、貫通孔62に第1または第2の導圧管6,7を挿入した状態で複数の押圧子63を有するかしめ装置64に装填される。複数の押圧子63は、凸部61aの周方向に並ぶように配置され、かしめ装置64によって駆動されて凸部61aを径方向の中心に向けて押圧する。凸部61aは、複数の押圧子63によって押されることにより、図15(B)に示すように、外径が小さくなるように塑性変形し、第1または第2の導圧管6,7にかしめられるようになる。このように凸部61aがかしめられることにより、凸部61a内に小径部62aが形成される。この場合、小径部62aの孔内面は第1または第2の導圧管6,7に密着するようになり、貫通孔62の加圧成形されていない部分が実質的に大径部62bになる。
【0039】
このように凸部61aが第1または第2の導圧管6,7にかしめられた後、ワッシャ61に第1または第2の導圧管6,7を溶接し(第1のステップS1)、ワッシャ61と第1または第2の導圧管6,7とからなる組立体に半田付け用のめっきを施す(第2のステップS2のめっきステップS2A)。そして、めっき後の洗浄ステップS2Bにおいて、洗浄液53がワッシャ61の貫通孔62(大径部62b)の中に浸入し、貫通孔62内に残存しているめっき液52の残渣が洗い流される。このため、この実施の形態を採ることにより、めっき後の残留物質が原因で第1および第2の導圧管6,7やワッシャ61が腐食することを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0040】
1…圧力センサ、2…圧力測定装置、4…センサケース、6…第1の導圧管、7…第2の導圧管、14…第1の貫通孔、15…第2の貫通孔、16…圧力センサチップ、20…半田、31…第1のワッシャ、32…第2のワッシャ、51…めっき槽、
61…ワッシャ、62…貫通孔、62a…小径部、62b…大径部、46…第1の導圧路、47…第2の導圧路、S1…第1のステップ、S2…第2のステップ、S2B…めっきステップ、S2B…洗浄ステップ、S3…第3のステップ、S…空間。
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