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  • 特開-進行した転移性がんの治療 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099919
(43)【公開日】2023-07-14
(54)【発明の名称】進行した転移性がんの治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7076 20060101AFI20230707BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230707BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230707BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
A61K31/7076
A61P35/00
A61P35/04
A61K31/437
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022000144
(22)【出願日】2022-01-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年1月7日にhttps://doi.org/10.3390/cancers13020187にて本願発明に係る臨床試験の内容が公開された。令和3年12月20日に刊行物により本願発明に係る臨床試験の内容が公開された。
(71)【出願人】
【識別番号】521292962
【氏名又は名称】キャン-ファイト バイオファーマ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Can-Fite Biopharma Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】プニナ,フィッシュマン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、哺乳動物対象における進行した固形腫瘍、例えば肝細胞がん(HCC)の治療に使用するためのAアデノシン受容体(AAR)リガンドに関する。
【解決手段】AARリガンドが、AARアゴニスト又はAARアロステリックモジュレータである、医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ARリガンド、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、哺乳動物対象の進行した固形腫瘍を治療するためのものである、医薬組成物。
【請求項2】
前記進行した固形腫瘍が、進行した肝細胞がんである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
転移性肝細胞がんを治療するための、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記AARリガンドが、AARアゴニスト又はAARアロステリックモジュレータである、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記AARアゴニストは、N-2-(4-アミノフェニル)エチルアデノシン(APNEA)、N-(4-アミノ-3-ヨードベンジル)アデノシン-5’-(N-メチルウロナミド)(AB-MECA)、N-(3-ヨードベンジル)-アデノシン-5’-N-メチルウロナミド(IB-MECA)及び2-クロロ-N-(3-ヨードベンジル)-アデノシン-5’-N-メチルウロナミド(Cl-IB-MECA)からなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記AARアロステリックモジュレータは、
N-(3,4-ジクロロフェニル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;
N-(3,4-ジクロロフェニル)-2-シクロヘプチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;
N-(3,4-ジクロロフェニル)-2-シクロブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;及び
N-(3,4-ジクロロフェニル)-2-シクロヘキシル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミンからなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
追加の治療剤と組み合わせた、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記追加の治療剤が、抗がん薬、例えば、モノクローナル抗体及び/又はマルチキナーゼ阻害剤である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記対象が、Child-Pugh B(CPB)肝硬変スコア7(CPB7)、Child-Pugh B(CPB)肝硬変スコア8(CPB8)、又はChild-Pugh B(CPB)肝硬変スコア9(CPB9)の進行した肝細胞がんである、請求項2~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記AARリガンドが、1日1回、1日2回、又は1日3回投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記AARリガンドが、治療期間を通じて12時間ごとに投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記AARリガンドが連続的に投与される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記治療期間がサイクル(例えば、4週間サイクル)に分割されている、請求項11又は12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記哺乳動物対象がヒト対象である、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記A3ARリガンドが、50μg/kg~10mg/kg体重、好ましくは100μg/kg~5mg/Kg体重、又は200μg/kg~1mg/Kg体重の量で投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記AARリガンドがCl-IB-MECAであり、前記Cl-IB-MECAを1~50mg、好ましくは5~30mgの用量で1日2回経口投与する、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ARリガンド(例えば、Cl-IB-MECA)、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、進行したHCC及びCPB7スコアを有する対象の全生存期間を増加させるためのものである、医薬組成物。
【請求項18】
全生存期間の前記増加は、12ヶ月以上の治療期間の後に測定され、前記治療は、1~50mg、好ましくは5~30mgの用量の前記AARリガンド(例えば、Cl-IB-MECA)の1日2回の経口投与を含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記対象が、第二選択療法としてAARリガンドを受けた、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記投与が、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年又は少なくとも5年の治療期間である、請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
(a)請求項1~20のいずれか一項に記載のAARリガンドを含む医薬組成物;及び
(b)進行した固形腫瘍を有する対象の治療のための、医薬組成物の投与のための説明書
を含むキット。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A3ARリガンドを投与することを含む、進行した転移性がん、特に進行した肝細胞がんの治療に関する。
【背景技術】
【0002】
原発性肝がん、特に肝細胞がん(HCC)は、その発生率、関連する死亡率、及び特に中等度又は進行した肝機能障害のある患者にとって効果的な治療法がないことにより、主要な世界的な健康問題である。
【0003】
進行したHCC及びChild-Pugh B(CPB)肝硬変の患者は、肝機能が境界域にあるため、どのような治療を行っても、その効果は肝機能の低下により相殺される可能性がある。このような患者に対する唯一の治癒的な選択肢には、ダウンステージングの成功と肝移植が含まれる。しかし、このアプローチは、少数の患者にのみ適切であり、移植に利用できる肝臓の数が限られていることにより、さらに制限されている[Granito A.,and Bolondi L.Lancet Oncol.2017;18:e101-e112]。HCCとCPBに対する最も一般的な治療法は、マルチキナーゼ阻害剤であるソラフェニブであり、進行したHCCに対して肝機能に関わらず米国食品医薬品局(FDA)から承認されている。
【0004】
CPB患者は、予後が悪く、期待される奏効率が低いため、一般に臨床試験から除外されている[Llovet J.M.,et al.J.Natl.Cancer Inst.2008;100:698-711]。HCC及びCPB肝硬変に対する治療法が依然として必要とされていることは明らかである。
【0005】
Giタンパク質共役型A3アデノシン受容体(A3AR)は、メラノーマ、乳がん、結腸がん、前立腺がん、HCCなど様々な種類の固形がんでは過剰発現するが、隣接する正常組織での受容体発現は低いことが認められる[Bar-Yehuda S.,et al.Int.J.Oncol.2008;33:287-295]。
【0006】
一般的にCl‐IB‐MECAとして知られるナモデノソンは、同系同所性及び異種移植実験動物モデル[Cohen S.,et al.,J.Cell Physiol.2011;226:2438-2447]においてHCCに対するアポトーシス効果を誘導する高選択的経口生物学的利用可能A3ARアゴニストである。
【0007】
非盲検第I/II相試験では、進行性の切除不能な肝細胞がん(HCC)の患者を対象にナモデノソンの安全性と有効性が評価され、その67%が以前のソラフェニブ治療に失敗した。全生存期間(OS)の中央値は試験対象集団全体で7.8か月であり、CPB患者(28%)では8.1か月であった。ナモデノソンは安全で忍容性が高く、ベースラインでのA3AR発現レベルとナモデノソンに対する腫瘍反応との間に直接的な相関関係が見られた[Stemmer S.M.,et al.Oncologist.2013;18:25-26]。
【発明の概要】
【0008】
その第1の実施形態において、本発明は、AARリガンド、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、哺乳動物対象の進行した固形腫瘍を治療するためのものである。
【0009】
一実施形態において、前記進行した固形腫瘍は進行した肝細胞がんである。
【0010】
一実施形態において、前記進行した固形腫瘍は転移性肝細胞がんである。
【0011】
一実施形態において、前記対象は、Child-Pugh B(CPB)肝硬変スコア7(CPB7)、Child-Pugh B(CPB)肝硬変スコア8(CPB8)、又はChild-Pugh B(CPB)肝硬変スコア9(CPB9)の進行した肝細胞がんを有している。
【0012】
一実施形態において、前記AARリガンドは、AARアゴニスト又はAARアロステリックモジュレータである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記AARアゴニストは、N-2-(4-アミノフェニル)エチルアデノシン(APNEA)、N-(4-アミノ-3-ヨードベンジル)アデノシン-5’-(N-メチルウロナミド)(AB-MECA)、N-(3-ヨードベンジル)-アデノシン-5’-N-メチルウロナミド(IB-MECA)及び2-クロロ-N-(3-ヨードベンジル)-アデノシン-5’-N-メチルウロナミド(Cl-IB-MECA,ナモデノソン)からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記AARアロステリックモジュレータは、
N-(3,4-ジクロロフェニル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;
N-(3,4-ジクロロフェニル)-2-シクロヘプチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;
N-(3,4-ジクロロフェニル)-2-シクロブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;及び
N-(3,4-ジクロロフェニル)-2-シクロヘキシル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミンからなる群から選択される。
【0015】
一実施形態において、治療は、追加の治療剤の投与をさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記追加の治療剤は、抗がん薬、例えば、モノクローナル抗体及び/又はマルチキナーゼ阻害剤である。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記AARリガンドは、1日1回、1日2回、又は1日3回投与される。
【0018】
一実施形態において、前記AARリガンドは、治療期間中、12時間ごとに投与される。
【0019】
一実施形態において、前記AARリガンドは、連続的に投与される。
【0020】
一実施形態において、前記治療期間はサイクルに分割される(例えば、4週間のサイクル)。
【0021】
一実施形態において、前記哺乳動物対象はヒト対象である。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記AARリガンドは、50μg/kg~10mg/kg体重、好ましくは100μg/kg~5mg/kg体重、又は200μg/Kg~1mg/Kg体重の量で投与される。
【0023】
特定の実施形態において、前記AARリガンドは、Cl-IB-MECAであり、1~50mg、好ましくは5~30mgの用量で1日2回経口投与される。
【0024】
特定の実施形態において、前記対象は、第二選択治療としてAARリガンドを投与された。
【0025】
特定の実施形態において、前記投与は、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、又は少なくとも5年の治療期間である。
【0026】
別の態様において、本発明は、AARリガンド(例えば、Cl-IB-MECA)、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、進行したHCC及びCPB7スコアを有する対象の全生存期間を延長するためのものである。
【0027】
特定の実施形態において、前記全生存期間の延長は、9ヶ月、10ヶ月、12ヶ月以上の治療期間の後に測定され、前記治療は、1~50mg、好ましくは5~30mgの用量のAARリガンド(例えば、Cl-IB-MECA)を1日2回経口投与することを含む。
【0028】
別の態様において、本発明は、
(a)上記のようなAARリガンドを含む医薬組成物;及び
(b)進行した固形腫瘍を有する対象の治療のための、医薬組成物の投与のための説明書、を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明を理解し、それが実際にどのように実施され得るかを理解するために、次に、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ、好ましい実施形態を説明する。
【0030】
図1】Child-Pughスコアが7の患者における12ヶ月全生存率(OS)の比較グラフ(ナモデノソン25mgBIDとプラセボを比較)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、ナモデノソン(Cl-IB-MECA)で治療されたCPBを伴う進行したHCCを有するある患者が5年の治療後に前例のない結果及びがんの完全な寛解を示したという驚くべき発見に基づく。この患者は、進行したHCC CPB患者におけるナモデノソンとプラセボの有効性/安全性を評価する、無作為化プラセボ対照第II相試験に含まれていた。さらに、この第II相試験では、治療を受けた患者の12か月の全生存率の増加におけるナモデノソンの驚くべき有効性が示された。
【0032】
本発明は、それを必要とする対象へのA3ARリガンドの投与を含む進行した固形腫瘍、特にCPBを伴うHCCの治療のための治療方法に関して、以下の詳細な説明に記載されている。
【0033】
明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、「a」、「an」及び「the」の形式は、文脈が明確に別段の指示がない限り、単数形及び複数形を参照することを含む。例えば、「AARリガンド」という用語は、1つ又は複数のリガンドを包含する。
【0034】
さらに、本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、方法又は組成物が列挙された要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することを意図している。同様に、「本質的にからなる」は、列挙された要素を含むが、関節の炎症に対して本質的に重要な治療活性を有する可能性がある他の要素を除外する方法及び組成物を定義するために使用される。例えば、本質的にA3ARリガンドからなる組成物は、そのような活性を有する他の有効成分のわずかな量(関節の炎症にわずかな影響を与える量)のみを含まないか、又は含まないであろう。また、本明細書で定義されるようなA3ARリガンドから本質的になる組成物は、単離及び精製方法からの微量汚染物質、リン酸緩衝生理食塩水などの薬学的に許容される担体、賦形剤、防腐剤などを除外しない。「からなる」とは、他の元素の微量元素以上を除外することを意味するものとする。これらの各移行句によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0035】
さらに、すべての数値、例えば、濃度又は用量又はその範囲は、記載された値の最大20%、時には最大10%まで(+)又は(-)変化する近似値である。常に明示的に述べられていなくても、すべての数値指定の前に「約」という用語が付いていることを理解されたい。常に明示的に述べられているわけではないが、本明細書に記載の試薬は単なる例示であり、そのような均等物が当技術分野で公知であることも理解されるべきである。
【0036】
本発明により、進行した固形腫瘍を治療する方法が提供され、前記方法は、それを必要とする哺乳動物対象に、A3アデノシン受容体(AAR)リガンド又は前記A3ARリガンドを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0037】
特定の実施形態において、進行した固形腫瘍は、進行した肝細胞がん(HCC)である。
【0038】
本発明の文脈において、「治療」という用語は、所望の治療効果を達成するために治療有効量のA3ARリガンドを投与することによって、進行した固形腫瘍、例えば、進行したHCCを治療することを含む。前記所望の治療効果には、疾患症状の完全又は部分的な逆転、がん病変の除去、生存率の向上、腹水の消失の達成、正常な肝機能、及び腹膜がん腫症の消失が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される場合、「進行した固形腫瘍」という用語は、他の解剖学的部位に広範囲に広がっているか、又はもはや治療に反応しない悪性固形新生物を指す。悪性固形新生物の非限定的な例としては、がん腫(例えば、腺がん、乳がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、膀胱がん、前立腺がん、大腸がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、又は神経膠腫)及び肉腫(例えば、骨、腱、軟骨、筋肉、又は脂肪肉腫)が挙げられる。
【0040】
本明細書において、「進行した肝細胞がん」という用語は、リンパ節又は他の臓器のいずれかに広がった進行した(転移性)肝がんを指す。このような段階では、がんは広範囲に及んでおり、一般的に手術で取り除くことはできない。
【0041】
一実施形態において、本発明は、肝硬変を伴う肝細胞がんの患者に関する。肝臓の肝硬変状態は、肝硬変患者の死亡率を予測するために設計されたChild-Pughスコアリングシステム(Child-Pugh-Turcotteスコアとしても知られる)を用いて評価することができる。このスコアリングシステムは、患者を3つのカテゴリに分類する。A-良好な肝機能、B-中等度の肝機能障害、C-進行した肝機能障害。 スコアリングシステムは、患者を分類するために5つの臨床及び実験基準を使用する:血清ビリルビン、血清アルブミン、腹水、神経障害(脳症)、及びプロトロンビン時間。これらの基準のそれぞれは、肝硬変の重症度を一緒に定義する数値を使用して定義される。
・Child-Pugh A:5~6ポイント
・Child-Pugh B:7~9ポイント
・Child-Pugh C:10~15ポイント
【0042】
本発明に従い、対象は、Child-Pugh B肝硬変スコアが7~9点、すなわちChild-Pugh B(CPB)肝硬変スコア7(CPB7)、Child-Pugh B(CPB)肝硬変スコア8(CPB8)又はChild-Pugh B(CPB)肝硬変スコア9(CPB9)の進行した肝細胞がんであってよい。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、対象は、第二選択治療としてA3ARリガンドで治療され、すなわち、対象は、以前に別の抗がん薬で治療され、治療は失敗した。換言すると、いくつかの実施形態では、本発明による対象は、他の治療レジメンに失敗した、CPS7~CPS9スコアを有する進行したHCCを有する患者である。
【0044】
一実施形態において、本発明は、CPB7スコアを有する進行したHCC患者の全生存期間を延長する方法を提供する。
【0045】
特定の実施形態では、前記延長は、全生存期間の12ヶ月以上の延長である。
【0046】
本明細書において、「Aアデノシン受容体(AAR)リガンド」という用語は、AARアゴニスト並びにAARアロステリックモジュレータを包含する。
【0047】
ARアゴニストは、当該技術分野において公知であり、容易に入手可能である。一般に、AARアゴニストは、アデノシンA受容体(「AR」)に特異的に結合することができ、それによって前記受容体を完全に又は部分的に活性化し、治療効果(例えば、抗関節炎効果)をもたらす任意の化合物である。したがって、AARアゴニストは、AARの結合と活性化を介してその主要な効果を発揮する分子である。これは、投与されている用量では、本質的にARのみに結合しARのみを活性化することを意味する。
【0048】
ある実施形態において、AARアゴニストは、1000nM未満、望ましくは500nM未満、有利には200nM未満及び100nM未満、典型的には50nM未満、好ましくは20nM未満、より好ましくは10nM未満及び理想的には5nM未満のヒトAARに対する結合親和性(K)を有する。Kが低いほど、ARを活性化して治療効果を達成するのに有効なAARアゴニスト(使用され得る)の用量が低くなる。
【0049】
いくつかのA3ARアゴニストは、より低い親和性(すなわち高いKi)で他の受容体と相互作用し、活性化することもできることに留意すべきである。分子は、ARに対する親和性が、アデノシン受容体の他のいずれかに対する親和性の少なくとも3倍(すなわち、ARに対するKiが少なくとも3倍低い)、好ましくは10倍、望ましくは20倍、最も好ましくは少なくとも50倍大きい場合、本発明の文脈においてA3ARアゴニスト(すなわち、結合及び活性化A3Rを介してその主効果を発揮する分子)とみなされるであろう。
【0050】
ARアゴニストのヒトARに対する親和性、及び他のヒトアデノシン受容体に対する相対的親和性は、結合アッセイなどの様々なアッセイによって決定することができる。結合アッセイの例には、受容体を有する膜又は細胞を提供し、結合した放射性アゴニストを置換するAARアゴニストの能力を測定すること;それぞれのヒトアデノシン受容体を表示する細胞を利用し、機能アッセイにおいて、cAMPレベルの増加又は減少を通じて測定されるアデニル酸シクラーゼへの効果などの下流シグナル伝達事象を活性又は不活性化するAARアゴニストの能力;などを含む。明らかに、AARアゴニストの血中濃度が他のアデノシン受容体のKiに近いレベルに達するように投与量を増やすと、ARの活性化に加えて、これらの受容体の活性化がその投与後に起こる可能性がある。したがって、AARアゴニストは、好ましくは、到達する血中濃度が本質的にARの活性化のみを生じさせるような用量で投与される。
【0051】
いくつかのアデノシンAARアゴニストの特徴及びそれらの調製方法は、特に、米国特許第5,688,774号;米国特許第5,773,423号;米国特許第5,573,772号;米国特許第5,443,836号;米国特許第6,048,865号;国際公開第95/02604号;国際公開第99/20284号;国際公開第99/06053号;国際公開第97/27173号、及び国際公開第01/19360号において詳細に記載され、これらはすべて参照によりここに組み込まれるものとする。
【0052】
以下の実施例は、米国特許第5,688,774号の第4欄67行目~第6欄第16行目、第5欄第40~45行目、第6欄第21~第42行目、第7欄第1~第11行目、第7欄第34~第36行目、第7欄第60~第61行目に明記されている:
-(3-ヨードベンジル)-9-メチルアデニン;
-(3-ヨードベンジル)-9-ヒドロキシエチルアデニン;
R-N-(3-ヨードベンジル)-9-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アデニン;
S-N-(3-ヨードベンジル)-9-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アデニン;
-(3-ヨードベンジルアデニン-9-イル)酢酸;
-(3-ヨードベンジル)-9-(3-シアノプロピル)アデニン;
2-クロロ-N-(3-ヨードベンジル)-9-メチルアデニン;
2-アミノ-N-(3-ヨードベンジル)-9-メチルアデニン;
2-ヒドラジド-N-(3-ヨードベンジル)-9-メチルアデニン;
-(3-ヨードベンジル)-2-メチルアミノ-9-メチルアデニン;
2-ジメチルアミノ-N-(3-ヨードベンジル)-9-メチルアデニン;
-(3-ヨードベンジル)-9-メチル-2-プロピルアミノアデニン;
2-ヘキシルアミノ-N-(3-ヨードベンジル)-9-メチルアデニン;
-(3-ヨードベンジル)-2-メトキシ-9-メチルアデニン;
-(3-ヨードベンジル)-9-メチル-2-メチルチオアデニン;
-(3-ヨードベンジル)-9-メチル-2-(4-ピリジルチオ)アデニン;
(1S,2R,3S,4R)-4-(6-アミノ-2-フェニルエチルアミノ-9H-プリン-9-イル)シクロペンタン-1,2,3-トリオール;
(1S,2R,3S,4R)-4-(6-アミノ-2-クロロ-9H-プリン-9-イル)シクロペンタン-1,2,3-トリオール;
(±)-9-[2α,3α-ジヒドロキシ-4β-(N-メチルカルバモイル)シクロペンテン-1β-イル)]-N-(3-ヨードベンジル)-アデニン;
2-クロロ-9-(2’-アミノ-2’,3’-ジデオキシ-β-D-5’-メチル-アラビノ-フロナミド)-N-(3-ヨードベンジル)アデニン;
2-クロロ-9-(2’,3’-ジデオキシ-2’-フルオロ-β-D-5’-メチル-アラビノフロナミド)-N-(3-ヨードベンジル)アデニン;
9-(2-アセチル-3-デオキシ-β-D-5-メチル-リボフロナミド)-2-クロロ-N(3-ヨードベンジル)アデニン;
2-クロロ-9-(3-デオキシ-2-メタンスルホニル-β-D-5-メチル-リボフロナミド)-N-(3-ヨードベンジル)アデニン;
2-クロロ-9-(3-デオキシ-β-D-5-メチル-リボフロナミド)-N-(3-ヨードベンジル)アデニン;
2-クロロ-9-(3,5-1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキシル-β-D-5-リボフラノシル)-N-(3-ヨードベンジル)アデニン;
2-クロロ-9-(2’,3’-O-チオカルボニル-β-D-5-メチル-リボフロナミド)-N-(3-ヨードベンジル)アデニン;
9-(2-フェノキシチオカルボニル-3-デオキシ-β-D-5-メチル-リボフロナミド)-2-クロロ-N-(3-ヨードベンジル)アデニン;
1-(6-ベンジルアミノ-9H-プリン-9-イル)-1-デオキシ-N、4-ジメチル-β-D-リボフラノシデュロンアミド;
2-クロロ-9-(2,3-ジデオキシ-β-D-5-メチル-リボフロナミド)-Nベンジルアデニン;
2-クロロ-9-(2’-アジド-2’、3’-ジデオキシ-β-D-5’-メチル-アラビノ-フロナミド)-N-ベンジルアデニン;
2-クロロ-9-(β-D-エリスロフラノシド)-N-(3-ヨードベンジル)アデニン;
-(ベンゾジオキサンメチル)アデノシン;
1-(6-フルフリルアミノ-9H-プリン-9-イル)-1-デオキシ-N-メチル-β-D-リボフラノシデュロンアミド;
-[3-(L-プロリルアミノ)ベンジル]アデノシン-5’-N-メチルウロンアミド;
-[3-(β-アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン-5’-N-メチルウロンアミド;
-[3-(N-T-Boc-β-アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン-5’-N-メチルウロンアミド
6-(N’-フェニルヒドラジニル)プリン-9-β-リボフラノシド-5’-N-メチルウロンアミド;
6-(O-フェニルヒドロキシルアミノ)プリン-9-β-リボフラノシド-5’-N-メチルウロンアミド;
9-(β-D-2’,3’-ジデオキシエリスロフラノシル)-N-[(3-β-アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン;
9-(β-D-エリスロフラノシド)-2-メチルアミノ-N-(3-ヨードベンジル)アデニン;
2-クロロ-N-(3-ヨードベンジル)-9-(2-テトラヒドロフリル)-9H-プリン-6-アミン;
2-クロロ-(2’-デオキシ-6’-チオ-L-アラビノシル)アデニン;及び
2-クロロ-(6’-チオ-L-アラビノシル)アデニン。
【0053】
米国特許第5,773,423号の第6欄第39行~第7欄第14行において、具体的に開示されている化合物は、以下の式を含む化合物である。
【0054】
【0055】
ここで、
は、RNC(=O)であり、ここで、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、水素、C-C10アルキル、アミノ、C-C10ハロアルキル、C-C10アミノアルキル及びC-C10シクロアルキルからなる群から選択され;
は、水素、ハロ、C-C10アルキオキシ、アミノ、C-C10アルケニル、及びC-C10アルキニルからなる群から選択され;そして、
は、R-及びS-1-フェニルエチル、非置換ベンジル基、並びにC-C10アルキル、アミノ、ハロ、C-C10ハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、アセトアミド、C-C10アルコキシ、及びスルホからなる群から選択される置換基で1つ以上の位置で置換されたベンジル基からなる群から選択される。
【0056】
より具体的な化合物の例として、特にR2が水素又はハロ、特に水素である場合に、R及びRが同じ又は異なる可能性があり、水素及びC-C10アルキルからなる群から選択される上記式のものが含まれる。
【0057】
さらに具体的な化合物と例として、特にRが非置換ベンジルである場合に、Rが水素であり、Rが水素である化合物である。
【0058】
より具体的な化合物は、RbがC-C10アルキル又はC-C10シクロアルキル、特にC-C10アルキル、より具体的にはメチルであるような化合物である。
【0059】
特に具体的には、Rが水素であり、RがC-C10アルキル又はC-C10シクロアルキルであり、RがR-若しくはS-1-フェニルエチル又はハロ、アミノ、アセトアミド、C-C10ハロアルキル、及びスルホからなる群から選択される置換基で1つ以上の位置において置換されたベンジルであり、スルホ誘導体がトリエチルアンモニウム塩などの塩である化合物である。
【0060】
米国特許第5,773,423号明細書に開示されている特に好ましい化合物の例は、IB-MECAである。さらに、Rが式Rd-C=C-(式中、RはC-Cアルキルである)のC-C10アルケニレンである化合物は、特に当該明細書に記載されている。さらに具体的な化合物の例として、Rが水素以外の化合物、特にRがハロ、C-C10アルキルアミノ、又はC-C10アルキルチオであり、より好ましくは、さらにRaが水素である場合、RがC-C10アルキルであり、及び/又はRが置換ベンジルである化合物が挙げられる。
【0061】
このような具体的に開示された化合物の例として、2-クロロ-N-(3-ヨードベンジル)-9-[5-(メチルアミド)-β-D-リボフラノシル]-アデニン、N-(3-ヨードベンジル)-2-メチルアミノ-9-[5-(メチルアミド)-β-D-リボフラノシル]-アデニン、及びN-(3-ヨードベンジル)-2-メチルチオ-9-[5-(メチルアミド)-β-D-リボフラノシル]-アデニンが挙げられる。
【0062】
さらに、米国特許第5,773,423号明細書の第7欄第60行、第8欄第6行にて、AARアゴニストが、以下の式を有する改変されたキサンチン-7-リボシドとして開示されている。
【0063】
【0064】
ここで、
XはOであり;
は、RNC(=O)であり、ここで、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、水素、C-C10アルキル、アミノ、C-C10ハロアルキル、C-C10アミノアルキル、及びC-C10シクロアルキルからなる群から選択される;
及びRは同一であっても異なっていてもよく、C-C10アルキル、R-及びS-1-フェニルエチル、非置換ベンジル基、並びにC-C10アルキル、アミノ、ハロ、C-C10ハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、アセトアミド、C-C10アルコキシ、及びスルホからなる群から選択される置換基で1つ以上の位置において置換されたベンジル基からなる群から選択される;及び
は、ハロ、ベンジル、フェニル及びC-C10シクロアルキルからなる群から選択される。
【0065】
国際公開第99/06053は、実施例19~33において、以下から選択される化合物を開示している:
-(4-ビフェニル-カルボニルアミノ)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-(2,4-ジクロロベンジル-カルボニルアミノ)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-(4-メトキシフェニル-カルボニルアミノ)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-(4-クロロフェニル-カルボニルアミノ)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-(フェニル-カルボニルアミノ)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-(ベンジルカルバモイルアミノ)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-(4-スルホンアミド-フェニルカルバモイル)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-(4-アセチル-フェニルカルバモイル)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-((R)-α-フェニルエチルカルバモイル)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-((S)-α-フェニルエチルカルバモイル)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-(5-メチル-イソオキサゾール-3-イル-カルバモイル)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-(1,3,4-チアジアゾール-2-イル-カルバモイル)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-(4-n-プロポキシ-フェニルカルバモイル)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;
-ビス-(4-ニトロフェニルカルバモイル)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド;及び
-ビス-(5-クロロ-ピリジン-2-イル-カルバモイル)-アデノシン-5’-N-エチルウロンアミド。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、AARアゴニストは、アデノシンAARの結合及び活性化を通じてその主要な効果を発揮する化合物であり、一般式(I)の範囲内にあるプリン誘導体であり:
【0067】
【0068】
ここで、
-R11は、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、シアノアルキル、又は次の一般式(II)の基を表し:
【0069】
【0070】
ここで:
-Yは酸素、硫黄又はCHを表し:
-X11は、H、アルキル、RNC(=O)-又はHOR-を表し、ここで、
-R及びRは同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル、アミノ、ハロアルキル、アミノアルキル、BOC-アミノアルキル、及びシクロアルキルからなる群から選択されるか、又は一緒に結合して2~5個の炭素原子を含む複素環を形成し;
-Rgは、アルキル、アミノ、ハロアルキル、アミノアルキル、BOC-アミノアルキル、及びシクロアルキルからなる群から選択され;
-X12は、H、ヒドロキシル、アルキルアミノ、アルキルアミド、又はヒドロキシアルキルであり;
-X13とX14は独立して水素、ヒドロキシル、アミノ、アミド、アジド、ハロ、アルキル、アルコキシ、カルボキシ、ニトリル、ニトロ、トリフルオロ、アリール、アルカリル、チオ、チオエステル、チオエーテル、-OCOPh、-OC(=S)OPhを表すか、X13とX14の両方が>C=Sに接続されて5員環を形成する酸素であるか、X12とX13が式(III)の環を形成し:
【0071】
【0072】
ここで、R’及びR’’は独立してアルキル基を表し;
-R12は水素、ハロ、アルキルエーテル、アミノ、ヒドラジド、アルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ピリジルチオ、アルケニル;アルキニル、チオ、及びアルキルチオからなる群から選択され;
-R13は式-NR1516の基であり、ここで、
-R15は水素原子又はアルキル、置換アルキル若しくはアリール-NH-C(Z)-から選択される基であり、ZはO、S、又はNRであり、Rは上述の意味を有し、ここで、R15が水素の場合、
16は、R-及びS-1-フェニルエチル基、ベンジル基、フェニルエチル基若しくはアニリド基であって、1つ以上の位置においてアルキル、アミノ、ハロ、ハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシル、アセトアミド、アルコキシ、及びスルホン酸からなる群から選択される置換基又はその塩で置換されていないか又は置換されているもの;ベンゾジオキサンメチル、フルリル、L-プロピルアラニル-アミノベンジル、β-アラニルアミノ-ベンジル、T-BOC-β-アラニルアミノベンジル、フェニルアミノ、カルバモイル、フェノキシ又はシクロアルキルからなる群から選択され;又はR16は以下の式の基であり:
【0073】
【0074】
又はR15がアルキル又はアリール-NH-C(Z)-である場合、R16はヘテロアリール-NRa-C(Z)-、ヘテロアリール-C(Z)-、アルカリル-NRa-C(Z)-、アルカリル-C(Z)-、アリール-NR-C(Z)-及びアリール-C(Z)-からなる群から選択され;Zは酸素、硫黄又はアミンを表し;又は上記化合物の生理学的に許容される塩である。
【0075】
1つの好ましい実施形態によれば、AARアゴニストは、一般式(IV)のヌクレオシド誘導体であり:
【0076】
【0077】
、R'及びRは、上記で定義された通りであり、前記化合物の生理学的に許容される塩である。
【0078】
本発明の化合物の置換基の一部を形成する非環状炭水化物基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アラルキル、アルカリル、アルキルアミンなど)は、分岐又は非分岐のいずれかであり、好ましくは、1つ又は2つから12個の炭素原子を含む。
【0079】
ARアゴニストの特定のグループは、N-ベンジルアデノシン-5’-ウロナミド誘導体である。いくつかの好ましいN-ベンジルアデノシン-5’-ウロナミド誘導体は、N-2-(4-アミノフェニル)エチルアデノシン(APNEA)、N6-(4-アミノ-3-ヨードベンジル)アデノシン-5’-(N-メチルウロナミド)(AB-MECA)及び1-デオキシ-1-{6-[({3-ヨードフェニル}メチル)アミノ]-9H-プリン-9-イル}-N-メチル-β-D-リボフラヌロナミド(IB-MECA)及び2-クロロ-N6-(3-ヨードベンジル)アデノシン-5’-N-メチルウロナミド(Cl-IB-MECA)である。
【0080】
別の実施形態によれば、AARアゴニストは、N-ベンジルアデノシン-5’-N-アルキルウロンアミド-N1-オキシド又はN-ベンジルアデノシン-5’-N-ジアルキルウロンアミド-N1-オキシドなどのアデノシンのオキシド誘導体であってよく、ここで、2-プリン位置は、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル又はハロゲンで置換されてよい。
【0081】
「AARアロステリックモジュレータ」又は「AARM」に言及する場合、内因性リガンド又はアゴニストの結合部位とは異なる可能性のある受容体のアロステリック部位でのアロステリックモジュレータの結合による受容体活性の正の調節、活性化又は増加を指すものと理解される。
【0082】
一例では、「モジュレーション」は、受容体のアロステリック部位への化合物の結合によるAアデノシン受容体の効力の少なくとも15%の増加、及び/又はオルトステリック結合部位へのアデノシン若しくはAARアゴニストの解離速度の減少によって示される、受容体に対するAARリガンドの作用を示す。
【0083】
一例では、モジュレーションは、イミダゾキノリン誘導体であるAARアロステリックモジュレータ(AARAM)によるものである。
【0084】
一例では、AARAM、すなわちイミダゾキノリン誘導体は、以下の一般式(V)を有し:
【0085】
【0086】
ここで:
-Rは、芳香環においてC-C10アルキル、ハロ、C-C10アルカノール、ヒドロキシル、C-C10アシル、C-C10アルコキシル;C-C10-アルコキシカルボニル、C-C10アルコキシアルキル;C-C10チオアルコキシ;C-C10アルキルエーテル、アミノ、ヒドラジド、C-C10アルキルアミノ、ピリジルチオ、C-C10アルケニル;C-C10アルキニル、チオ、C-C10アルキルチオ、アセトアミド、スルホン酸からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよいアリール又はアルカリルを表し、又は、前記置換基は、前記アリールに縮合したシクロアルキル又はシクロアルケニルを共に形成することができ、シクロアルキル又はシクロアルケニルは、場合により1つ以上のヘテロ原子を含み;ただし、これは当該アリールが非置換フェニル基でない場合であり;
-Rは、水素又はC-C10アルキル、C-C10アルケニル;C-C10アルキニル、C-C10シクロアルキル、C-C10シクロアルケニル、5-7員複素環式芳香環、C-C15縮合シクロアルキル、二環式芳香環又は複素環;C-C10アルキルエーテル、アミノ、ヒドラジド、C-C10アルキルアミノ、C-C10アルコキシ、C-C10アルコキシカルボニル、C-C10アルカノール、C-C10アシル、C-C10チオアルコキシ、ピリジルチオ、チオ、及びC-C10アルキルチオ、アセトアミド及びスルホン酸からなる群から選択される置換基を表し;
そして、その薬学的に許容される塩である。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、AARAMにおけるR置換基は、以下の一般式(VI)を有する。
【0088】
【0089】
ここで、nは0又は1~5から選択される整数であり;好ましくは、nは0、1又は2である;及び
-同じであっても異なっていてもよいX及びXは、水素ハロゲン、アルキル、アルカノール又はアルコキシ、インダニル、ピロリンから選択され、ただし、前記nが0である場合、X及びXは水素ではない。
【0090】
さらにいくつかの例では、AARAMのRは、上記の式(VI)を有する置換基であり、ここで、X又はXは、同じであっても異なっていてもよく、水素、クロロ、メトキシ、メタノール、又は式(VIa)若しくは(VIb)を有する置換基から選択され:
【0091】
【0092】
ここで、Yは、N又はCHから選択される。
【0093】
いくつかのさらに別の例では、AARAM中のRは、H、C1-10アルキル、C4-10シクロアルキルから選択され、アルキル鎖は、直鎖若しくは分枝鎖であってもよく、又は4~7員環シクロアルキル環を形成してもよい。
【0094】
一例では、AARAMのRは、5~7員の複素環式芳香環から選択される。
【0095】
いくつかの例においては、AARAMのR置換基は、H、n-ペンチル、又は次の式(VII)を有する5員複素環式芳香環から選択され:
【0096】
【0097】
ここで、Zは、O、S又はNHから選択され、好ましくはOである。
【0098】
一例によれば、AARAMのRは、特に二環式置換基を形成するために、1つ又は複数の縮合環を含む。
【0099】
ARAMの文脈で置換基を形成するために使用できる二環式化合物の非限定的な例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボン酸、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボン酸、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-カルボン酸、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-カルボン酸、及びビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸が挙げられる。
【0100】
さらに他のいくつかの例によれば、AARAMのRは2つのシクロヘキセンと3-シクロヘキセンから選択される。
【0101】
ARのアロステリックモジュレータとして使用できる特定のイミダゾキノリン誘導体を以下に列挙する:
N-(4-メチル-フェニル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(4-メトキシ-フェニル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(3,4-ジクロロ-フェニル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(4-クロロ-フェニル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(3-メタノール-フェニル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-([3,4-c]インダン)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(1H-インダゾール-6-イル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(4-メトキシ-ベンジル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(1H-インドール-6-イル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(ベンジル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(フェニルエチル)-2-シクロペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(3,4-ジクロロ-フェニル)-2-シクロヘプチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(3,4-ジクロロ-フェニル)-2-フリル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(3,4-ジクロロ-フェニル)-2-シクロブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(3,4-ジクロロ-フェニル)-2-シクロヘキシル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(3,4-ジクロロ-フェニル)-2--1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
N-(3,4-ジクロロ-フェニル)-2-ペンチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン。
【0102】
上記イミダゾキノリン誘導体は、A及びA2A、A2Bアデノシン受容体のオルトステリック結合部位への親和性が、もしあれば低下し、A3アデノシン受容体のオルトステリック結合部位への親和性が低下し、他方、A3アデノシン受容体[参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願番号第WO07/089507号]のアロステリック部位への親和性が高いことが示されたことから、アロステリック調節因子と考えられる。
【0103】
本開示による特に好ましいイミダゾキノリン誘導体はN-(3,4-ジクロロ-フェニル)-2-シクロヘキシル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン(略語LUF6000又はCF602とも呼ばれる)であり、A3ARアロステリックモジュレータである。
【0104】
本明細書に開示された一般式の文脈において、様々な用語に対する以下の意味が考慮されるべきである。
【0105】
本明細書において、「アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を指すために用いられ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ヘプチル、オクチルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
同様に、用語「アルケニル」及び「アルキニル」は、それぞれ、2~10個、又は3~10個の炭素原子、より好ましくは2~6個又は3~6個の炭素原子を有する線形若しくは分岐炭化水素鎖を示し、アルケニル又はアルキニルは、少なくとも1つの不飽和結合を有する。
【0107】
アルキル、アルケニル又はアルキニル置換基はヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。したがって、明示的に記載されていないが、アルキルチオ、アルコキシ、アカノール、アルキルアミン等のような上記及び以下に定義されるアルキル修飾のいずれも、アケニルチオ、アケニルオキシ、アルケノール、アルケニルアミン、又はそれぞれ、アキニルチオ、アルキニルオキシ、アルキノール、アルキニルアミンのような対応するアルケニル又はアルキニル修飾も含むことを理解されたい。
【0108】
「アリール」という用語は、単一の環(例えば、フェニル)又は複数の縮合環(例えば、ナフチル若しくはアンスリル)を有する5から14個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環式基を意味する。好ましいアリールの例として、フェニル、インダニル、ベンズイミダゾールが挙げられる。
【0109】
「アルカリル」という用語は、好ましくは、アルキレン部分に1から10個の炭素原子を有し、アリール部分に6から14個の炭素原子を有する-アルキレン-アリール基を指す。このようなアルカリル基は、ベンジル、フェネチルなどによって例示される。
【0110】
「置換アリール」という用語は、上記で定義したように1~3個の置換基で置換された芳香族部分を意味する。当業者によって理解されるように、様々な置換基が可能である。それにもかかわらず、いくつかの好ましい置換基の例として、それに限定されないが、ハロゲン、(置換)アミノ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ又はアルカノール、スルホニル、スルフィニルが挙げられる。
【0111】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指し、好ましくはクロロである。
【0112】
「アシル」という用語は、基H-C(O)-並びにアルキル-C(O)-を指す。
【0113】
「アルカノール」という用語は、グループ-COH及びalk-OHを指し、「alk」は、アルキレン、アルケニレン、又はアルキニレン鎖を意味する。
【0114】
本明細書で用いられる用語「アルコキシ」は、-O-アルキルを意味し、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
本明細書で用いられる「アルキルチオ」という用語は、-S-アルキルを意味し、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
本明細書で用いられる用語「アルコキシアルキル」は、-アルキル-O-アルキルを意味し、メトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、n-ブトキシメチル、イソブトキシメチル、t-ブトキシメチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
本明細書で用いられる用語「シクロアルキル」は、環状炭化水素ラジカルを意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
本明細書で用いられる用語「アルコキシカルボニル」は、-C(O)O-アルキルを意味し、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
本明細書において、「縮合シクロアルキル」という用語は、単一の原子で(スピロ環状部分を形成するために)、2つの相互に結合した原子で、又は一連の原子(橋頭保)で接続されている少なくとも2つの脂肪族環を含む任意の化合物又は置換基を意味するために使用する。縮合環は、二環式、三環式及び多環式の部位を含むことができる。本開示のいくつかの実施形態に従うと、二環式置換基が好ましい。
【0120】
本開示はまた、上記の化合物などのAAR選択的リガンドの生理学的に許容される塩を利用する。「生理学的に許容される塩」とは、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウムアンモニウム塩及びプロタミン亜鉛塩を含む、製薬業界で一般的に使用される任意の非毒性のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウム塩を指し、これらは当該分野で公知の方法によって調製することができる。また、この用語には、一般にリガンドを適当な有機酸又は無機酸と反応させることによって調製される無毒の酸付加塩も含まれる。酸付加塩は、遊離塩基の生物学的有効性及び質的特性を保持し、毒性又はその他の望ましくないものではないものである。例として、特に、鉱酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタリン酸などに由来する酸が挙げられる。有機酸としては、特に、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、グリコール酸、グルコン酸、ピルビン酸、コハク酸サリチル酸及びアリールスルホン酸、例えば、p-トルエンスルホン酸が挙げられる。
【0121】
ARリガンドは、単回投与(1回投薬)でも、継続投与でもよい。一例では、AARリガンドは、長期的な治療に使用される。
【0122】
本開示の文脈において、長期治療は、例えば不耐症、同意の撤回、又は死亡による中止まで、少なくとも日、週、月、又は年の期間持続する治療期間を含むものと理解されるべきである。治療期間は連続しているが、データ記録のためにサイクル(例えば4週間サイクル)に分割してもよい。一実施形態において、AARリガンドは中止するまで12時間毎に投与される。
【0123】
さらに、本開示のいくつかの例の文脈において、長期的な治療は、慢性的な治療、例えば、治療の想定される終点がないときでも長期的な毎日の投与(1日1回、2回、又は3回)を包含する。いくつかの例において、長期治療は、少なくとも1週間のAARリガンドの毎日の投与、ある時は1ヶ月の毎日の治療、ある時は少なくとも2、3、4、5、6、又は12ヶ月のリガンドの毎日の投与、ある時は少なくとも1、2、3、4、5、6又はそれ以上の年のリガンドの毎日の投与を含む。
【0124】
一実施形態では、治療期間は、少なくとも1年間続く長期治療である。
【0125】
ARリガンドは、治療的抗がん効果を達成するのに十分な量で投与される。理解されるように、AARリガンドの量は、疾患の重症度、意図される治療レジメン、及び所望の治療用量に依存するであろう。例として、用量が1日あたり50mgであり、所望の投与レジメンが1日2回の投与である場合、医薬組成物中の活性剤の量は25mgである。
【0126】
所望の効果を達成するのに有効な量は、当技術分野で知られている考慮事項によって決定される。本明細書の目的のための「有効量」は、治療効果を達成するために有効でなければならず、治療効果は、前述のように定義される。
【0127】
有効量は、選択されたAARアゴニストのAARへの親和性、体内分布プロファイル、体内半減期のような様々な薬理学的パラメータ、もしあれば望ましくない副作用、治療される対象の年齢や性別等の要因など様々な要因に依存することが理解される。有効量は、通常、有効用量範囲、最大耐容量、最適量を見出すことを目的とした臨床試験で検証される。このような臨床試験の実施方法は、臨床開発の技術に精通した者に周知である。
【0128】
本発明の一実施形態によれば、AARアゴニストの投与は、好ましくは1日1回~数回、好ましくは1日1回~2回の毎日の投与であり、各投与における用量は、約1~約1000μg/kg体重、好ましくは50μg/kg~10mg/kg体重、好ましくは100μg/kg~5mg/kg体重、又は200μg/kg~1mg/kg体重の範囲である。
【0129】
いくつかの実施形態、AARリガンドは、1~50mg、好ましくは5~30mgの用量で1日2回経口投与されるCl-IB-MECAである。
【0130】
具体的な実施形態では、進行固形腫瘍は進行HCCであり、AARアゴニストはCl-IB-MECA(1日2回)であり、用量は25mgを12時間ごとに経口投与する。
【0131】
ARアゴニストは医薬組成物に配合される。本発明の文脈における「組成物」は、活性剤と、一緒に又は別々に、薬学的に許容される担体及び他の添加剤との組み合わせを意味することを意図している。担体は、標的組織への有効成分の送達又は浸透を改善し、薬物の安定性を改善し、クリアランス速度を遅くし、徐放特性を付与し、望ましくない副作用を低減する等の効果を有する場合がある。また、担体は、製剤を安定化させる物質(例えば、防腐剤)であってもよい。担体、安定剤、及びアジュバントの例については、E.W.Martin,REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,MacK Pub Co(June 1990)を参照。
【0132】
本発明の文脈における「薬学的に許容される担体」という用語は、AARアゴニストと反応せず、希釈剤、担体として製剤に添加することができ、又は製剤に形態若しくは粘稠性を与えることができる、不活性で非毒性の材料のいずれか1つを指す。
【0133】
本発明の組成物は、個々の患者の臨床状態、投与部位及び投与方法、投与のスケジュール、患者の年齢、性別、体重、その他医療従事者に知られている要因を考慮し、良好な医療慣行に従って投与され、投薬される。担体の選択は、特定の有効成分によって部分的に決定され、また、組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。従って、本発明の適切な医薬組成物は多種多様である。
【0134】
上述のように、AARアゴニストの治療的使用は、時として、モノクローナル抗体(例えば、抗体アテゾリズマブ単独若しくはベバシズマブとの併用、又はVEGFR2阻害剤ラムシルマブ、抗PD1受容体モノクローナル抗体ペムブロリズマブ及びニボルマブ単独若しくは抗CTLA-4抗体イピリムマブとの併用)、並びにマルチキナーゼ阻害剤(例:ソラフェニブ、レゴラフェニブ、カボザンチニブ、レンバチニブ)のような他の抗がん薬と併用されることがある。このような併用治療において、他の薬剤とAARアゴニストは、それぞれの薬剤の投与スケジュールに応じて、患者に同時に投与してもよいし、異なるタイミングで投与してもよい。
【0135】
本発明は例示的な方法で説明されており、使用されてきた用語は、限定ではなく説明を意図しているものと理解されるべきものである。明らかに、本発明の多くの修正及び変形は、上記の教示を鑑みて可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、以下に具体的に記載される以外の方法で実施され得ることが理解されるであろう。
【実施例0136】
試験参加者
試験対象集団は、ソラフェニブに忍容性のなかった、又は以前にソラフェニブ治療で疾患が進行した、進行期/治療抵抗性のHCC及びCPB肝硬変の18歳以上の患者で構成された。診断時に肝硬変の基礎疾患のない対象におけるHCC診断には、細胞診及び/又は組織学が必要であった。診断時に肝硬変の基礎疾患のある対象については、米国肝臓学会議の診療ガイドラインアルゴリズム[Marrero J.A.,et al.,Hepatology.2018;68:723-750]に従ってHCC診断を確定した。ソラフェニブに忍容性があった対象では、3週間以上の前治療が必要であり、試験開始の2週間以上前に終了した。組み入れ基準:ECOG PS≦2;CPB肝硬変がある(すなわち、CPスコア7~9);アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の値が正常値の上限(ULN)の5倍以下;総ビリルビン3.0mg/dL以下;血清アルブミン2.8g/dL以上;プロトロンビン時間(PT)が対照より6秒未満延長;血清クレアチニン2.0mg/dL以下;好中球絶対数1500×109/L以上;血小板数75,000×109/L以上。除外基準:肝性脳症の有無;4週間以内に輸血を要する消化管出血が認められた。
【0137】
試験デザイン及び治療法
本試験は、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床試験(ClinicalTrials.gov ID:NCT02128958)であった。本試験は、イスラエル、欧州、米国の15施設で実施された。
【0138】
対象は参加施設によって登録され、独立した生物統計学者によって作成された中央無作為化スケジュールを用いて、無作為化前の層別化は行わず、2対1の割合で無作為に割り付けられた。患者はナモデノソン(Cl-IB-MECA)25mg又は適合するプラセボに無作為に割り付けられ、非忍容性、同意撤回、又は死亡による中止まで12時間ごとに経口投与された。治療は継続的に行われたが、データ記録のために治療期間を4週間サイクルに分けた。当初、クロスオーバーは認められなかったが、プロトコール修正により、盲検下での治療を継続する患者には、治療割り付けを解除した上で、ナモデノソン(25mg1日2回)が提供された。試験実施施設のスタッフは、試験期間中、患者の治療について盲検化されていた。
【0139】
本試験は、各国の関連規制当局及び地域の倫理委員会/施設審査委員会により承認されている。本試験はヘルシンキ宣言に基づき実施され、すべての患者から書面によるインフォームドコンセントを取得した。
【0140】
評価項目
本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)であった。副次評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性とした。進行したHCCと同様に、PFSはOSと中程度の相関があることが判明しており、本疾患においてPFSは妥当な副次評価項目である[Llovet J.M.,et al.,J.Hepatol.2019,70:1262-1277]。疾患反応性評価は、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)バージョン1.1[Eisenhauer E.A.,et al.Eur.J.Cancer.2009;45:228-247]を用いて独立盲検放射線医2人が局所的に評価しました。腫瘍の状態は、ベースライン時及びその後8週間ごとにコンピュータ断層撮影法又は磁気共鳴画像法で評価された。安全性は、米国国立がん研究所の有害事象共通用語基準(CTCAE)v4.03を使用したAEの評価を通じて監視されました。バイタルサイン、臨床検査パラメータ、心電図、身体検査、及びECOG PSのベースラインからの変化も評価されました。AFPレベルは、ベースライン時とその後4週間ごとに評価され、血清ALT、AST、ビリルビン、アルブミンレベル、PT、国際感度比など、肝機能障害と肝硬変に関連する検査パラメータも評価されました。ALBIスコアは、前述のように、アルブミンとビリルビンのレベルから計算されました[Johnson P.J.,et al.J.Clin.Oncol.2015;33:550-558]。
【0141】
バイオマーカー試験
別の副次的目的は、選択した研究センター(n=53人の患者)で、ベースラインとその後の各サイクルで評価した白血球(WBC)AAR発現(これは、HCC腫瘍細胞[Bar-Yehuda S.,et al.Int.J.Oncol.2008;33:287-295]における発現をミラーすることが示唆されている)と臨床反応の間の関係を評価することであった。WBCにおけるAAR mRNA発現は、QuantiGene Plex 2.0(登録商標)アッセイ(米国マサチューセッツ州ウォルサム、サーモフィッシャー)を用いて、PAX遺伝子RNAチューブ(オランダ、ベンロ、Qiagen)に採取した血液から測定した。β-アクチンを対照として用い、オリゴヌクレオチドプローブセットをThermo Fisherによりデザインした。各特定のプローブセットからの発光をGloMax Multi(Promega, Madison,ウィスコンシン州(アメリカ合衆国))で捕捉した。AARは単位で表現し、1単位を健康な対象(n=50)におけるAAR発現の平均と定義した。健康な対象は20~70歳で、既知の疾患も治療歴もなかった。
【0142】
統計分析
検出力の計算では、ハザード比を0.5と仮定した場合の死亡75例について、有意水準0.05でログランク検定に80%の検出力が得られると判定された。有効性の主要な解析はITT集団で実施された。記述統計を用いて患者/腫瘍の特徴及び安全性を要約した。OS/PFSの推定にはKaplan-Meier曲線を用い、比較にはログランク検定を用いた。共変量の影響を評価するために、Cox比例ハザード回帰モデルを使用しました。ORR/DCRは、治療法別に二項分布の正規近似を用いて決定された。統計解析計画は、CPスコアによるサブグループ解析を含めるために、盲検化解除前に修正された。統計学的検定はすべて両側で行い、p<0.05を統計学的に有意とみなした。統計解析はSAS 9.4(SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)を用いて行った。
【0143】
実施例1
第II相盲検無作為化プラセボ対照試験において、ナモデノソンの評価対象用量は経口25mg BID(1日2回)、対象は二次治療としてナモデノソンの投与を受けた進行した肝細胞がん(HCC)及びCPB肝硬変患者78人であった。患者はナモデノソン25mg BID(n=50)又はプラセボ(n=28)に2対1で無作為に割り付けられた。
【0144】
治療に関連した死亡は報告されなかった。また、試験から脱落した患者はなく、ナモデノソンによる用量減少も認められなかった。重要なことに、肝毒性は報告されず、肝機能検査ではナモデノソンに関連する有害事象がないことが示された。血清アルブミン値とアルブミン‐ビリルビン(ALBI)スコアの平均値も、試験期間中、両群で有意に変化しなかった。グレード3の治療関連AEは1例のみ報告された(低ナトリウム血症)。
【0145】
初期結果の分析
抗腫瘍効果に関しては、主要評価項目であるOSのプラセボに対する優越性は満たされなかった。OSの中央値はナモデノソンで4.1カ月、プラセボで4.3カ月だった(ハザード比[HR]、0.82;95%信頼区間[CI]0.49-1.38;p=0.46)。同様に、無増悪生存期間(PFS)に関しても優越性は認められなかった。本試験の対象となったCBP患者のうち、Child-Pughスコア7(CPB分類の中で最も重度でない肝機能障害)の患者が最も多いグループであった(ナモデノソン投与群34名、プラセボ投与群22名)。Child-Pughスコア別に患者を評価する、事前に計画した解析では、Child-Pughスコア7の患者のOSとPFSに有意差は認められなかった。このサブカテゴリーでは、OSの中央値はナモデノソン群で6.9ヶ月、プラセボ群で4.3ヶ月であった(HR,0.81;95% CI 0.45-1.43;p=0.46)。PFS中央値は3.5ヶ月対1.9ヶ月(HR,0.89;95% CI 0.51-1.55;p=0.67)であった。Child-Pughスコア8の患者(13名、ナモデノソン投与群7名、プラセボ投与群6名)では、OS及びPFSはナモデノソン投与群とプラセボ投与群で同等で、Child-Pughスコア7のサブグループの報告よりも全体的に短かった(OS:3.3カ月対3.4カ月、それぞれナモデノソン及びプラセボ群でHR、0.88、95% CI 0.28-2.77、p=0.83。PFS:それぞれ2.1ヶ月対1.9ヶ月、HR:0.71、95%CI:0.23-2.17、p=0.53)。Child-Pughスコア9の患者9名(全員ナモデノソン群)のOS及びPFSの中央値は、Child-Pughスコア8の患者と同様、それぞれ3.5カ月及び2.2カ月であった。治療群別のOSと、性別、アルファフェトプロテイン値、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス(PS)、HPB、HPCの状態、局所療法、肝外拡散の状態、門脈血栓症の状態による層別化を比較した探索的解析では、いずれのサブグループにおいても試験群間で統計的に有意な差は見られず、これは一部の群ではサンプルサイズが比較的小さいことが起因している可能性がある。
【0146】
長期治療の分析
しかし、初期結果とは対照的に、12か月のOS率の差は統計的に有意であった(ナモデノソン群とプラセボ群でそれぞれ44%と18%、p=0.028)(図1)。
【0147】
ベースライン後の評価が1回以上可能であった全患者(55名、ナモデノソン投与34名、プラセボ投与21名)の反応を解析した結果、ナモデノソン投与群ではCRが1名、PRはナモデノソン投与群3名(9%)に対してプラセボ群では皆無であった(表1参照)。PRを達成した3名の患者の奏効期間は、2ヶ月、6ヶ月、26ヶ月であった。
【0148】
【0149】
上記表1に示すように、1名の患者が完全奏効を示した。この患者は、肝細胞がん(HCC)を対象としたナモデノゾンの第II相試験の非盲検延長プログラムで5年間の治療を受け、ナモデノゾンでがん病巣がすべて消失したことを意味する完全奏効(CR)を経験した。
【0150】
基礎疾患にChild Pugh B7(CPB7)肝硬変を有する進行した転移HCC患者は、ナモデノソン(25mg、1日2回経口投与)治療により、現在5年間生存している。患者の胸部、腹部、骨盤のスキャンにより、腹水が消失し、肝機能が正常になり、腹膜がん腫症が消失し、がん病巣が完全に消失するなどの臨床的治療効果が得られていることが示されている。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-クロロ-N -(3-ヨードベンジル)-アデノシン-5’-N-メチルウロナミド(Cl-IB-MECA)、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、Child-Pugh B(CPB)肝硬変スコア7(CPB7)、Child-Pugh B(CPB)肝硬変スコア8(CPB8)、又はChild-Pugh B(CPB)肝硬変スコア9(CPB9)の進行した肝細胞がんを有する哺乳動物対象の全生存率を増加させるためのものであり、全生存率の増加が、12ヶ月以上の治療期間の後に測定される、医薬組成物。
【請求項2】
追加の治療剤と組み合わせた、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記追加の治療剤が、抗がん薬、例えば、モノクローナル抗体及び/又はマルチキナーゼ阻害剤である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記対象が、Child-Pugh B(CPB)肝硬変スコア7(CPB7)の進行した肝細胞がんを有する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記Cl-IB-MECAが、1日1回、1日2回、又は1日3回投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記Cl-IB-MECAが、治療期間を通じて12時間ごとに投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記Cl-IB-MECAが連続的に投与される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記治療期間がサイクル(例えば、4週間サイクル)に分割されている、請求項又はに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記哺乳動物対象がヒト対象である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記Cl-IB-MECAが、50μg/kg~10mg/kg体重、好ましくは100μg/kg~5mg/Kg体重、又は200μg/kg~1mg/Kg体重の量で投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記Cl-IB-MECA1~50mg、好ましくは5~30mgの用量で1日2回経口投与される、請求項1~10のいずれか項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記対象が、以前に別の抗がん薬で治療されて治療が失敗した後に、前記Cl-IB-MECAを受ける、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記投与が、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年又は少なくとも5年の治療期間である、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
腫瘍の長期の完全な寛解を達成するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記長期の完全な寛解が、少なくとも5年である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
(a)請求項1~15のいずれか一項に記載のCl-IB-MECAを含む医薬組成物;及び
(b)Child-Pugh B(CPB)肝硬変スコア7(CPB7)、Child-Pugh B(CPB)肝硬変スコア8(CPB8)、又はChild-Pugh B(CPB)肝硬変スコア9(CPB9)の進行した肝細胞がんを有する哺乳動物対象の全生存率を増加させるための、医薬組成物の投与のための説明書
を含むキット。
【外国語明細書】