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特開2023-99941連続測温プローブ及び連続測温プローブの固定構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099941
(43)【公開日】2023-07-14
(54)【発明の名称】連続測温プローブ及び連続測温プローブの固定構造
(51)【国際特許分類】
   F27D 21/00 20060101AFI20230707BHJP
   B22D 41/00 20060101ALI20230707BHJP
   B22D 11/10 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
F27D21/00 G
B22D41/00 Z
B22D11/10 310Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000225
(22)【出願日】2022-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】593228564
【氏名又は名称】日本サーモテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】谷内江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 謙太
【テーマコード(参考)】
4K056
【Fターム(参考)】
4K056AA02
4K056AA05
4K056AA06
4K056CA02
4K056FA12
(57)【要約】
【課題】真の溶湯温度を測定可能で、スクラップ又は溶融金属流から受ける衝撃荷重に耐えられる高強度の連続測温プローブ及び連続測温プローブの固定構造を提供する。
【解決手段】連続測温プローブの固定構造10では、熱電対13が内部に組込まれたサーメット保護管14と、サーメット保護管14の先側外周を覆う耐火性の保護スリーブ15と、サーメット保護管14の基側から延設されて保護スリーブ15の基側から突出し基側端部に電気接続端子16を備えた外部接続体17とを有する連続測温プローブ11が用いられ、取鍋12の周壁23の一部を構成するプローブ取付部24の挿通孔25に挿抜可能に保持される連続測温プローブ11の先側が取鍋12の内部に突出し、外部接続体17が取鍋12の外部に突出して、連続測温プローブ11が挿通孔25から取鍋12の外部に抜けないように、取鍋12の外表面に取付けられた固定手段26で保持される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼工程で用いられる溶融金属保持容器に取付けられ、前記溶融金属保持容器内の溶融金属の温度を連続的に測定可能な連続測温プローブであって、
熱電対と、該熱電対が内部に組込まれたサーメット保護管と、該サーメット保護管の先側外周を覆う耐火性の保護スリーブと、前記サーメット保護管の基側から延設され基側端部に電気接続端子を備えた外部接続体とを有することを特徴とする連続測温プローブ。
【請求項2】
請求項1記載の連続測温プローブであって、前記保護スリーブは、先側保護部と、基側保護部に分割され、前記先側保護部が交換可能であることを特徴とする連続測温プローブ。
【請求項3】
請求項2記載の連続測温プローブであって、前記先側保護部は、黒色系耐火物又は白色系耐火物で形成され、前記基側保護部は、内部耐火材と、該内部耐火材の外周を覆うメタルケースとを有し、前記内部耐火材は、黒色系耐火物、白色系耐火物及び砂のいずれか1つからなることを特徴とする連続測温プローブ。
【請求項4】
請求項1記載の連続測温プローブであって、前記保護スリーブは、黒色系耐火物及び白色系耐火物のいずれか一方又は双方からなることを特徴とする連続測温プローブ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1記載の連続測温プローブであって、前記保護スリーブは、先側が円錐台状に形成され基側が角柱状又は円柱状に形成されていることを特徴とする連続測温プローブ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1記載の連続測温プローブを用いて溶融金属保持容器内の溶融金属の温度を連続的に測定するための連続測温プローブの固定構造であって、
前記溶融金属保持容器の周壁又は底壁の一部を構成し、前記連続測温プローブが挿抜可能に保持される挿通孔を有し、前記連続測温プローブの先側を前記溶融金属保持容器の内部に突出させ、前記外部接続体を前記溶融金属保持容器の外部に突出させるプローブ取付部と、前記溶融金属保持容器の外表面に取付けられて、前記連続測温プローブが前記挿通孔から前記溶融金属保持容器の外部に抜けないように保持する固定手段とを備えたことを特徴とする連続測温プローブの固定構造。
【請求項7】
請求項6記載の連続測温プローブの固定構造であって、前記プローブ取付部は、内壁煉瓦と外壁煉瓦で構成される二層構造を有し、前記挿通孔は前記内壁煉瓦を貫通する内壁貫通部と前記外壁煉瓦を貫通する外壁貫通部に分割されていることを特徴とする連続測温プローブの固定構造。
【請求項8】
請求項7記載の連続測温プローブの固定構造であって、前記内壁煉瓦は、前記内壁貫通部が形成される内周煉瓦と、該内周煉瓦の外周を囲繞する外周煉瓦で構成される二重構造を有することを特徴とする連続測温プローブの固定構造。
【請求項9】
請求項5記載の連続測温プローブを用いて溶融金属保持容器内の溶融金属の温度を連続的に測定するための連続測温プローブの固定構造であって、
前記溶融金属保持容器の周壁又は底壁に挿通孔が形成され、該挿通孔に保持される前記連続測温プローブの先側が前記溶融金属保持容器の内部に突出し、前記周壁又は前記底壁の外表面及び前記連続測温プローブの保護スリーブの基側端面を覆う鉄皮にプローブ取出孔が形成され、前記外部接続体が前記プローブ取出孔から前記溶融金属保持容器の外部に突出していることを特徴とする連続測温プローブの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の鋳造の分野において、転炉内の溶銑又は電気炉内若しくは取鍋内の溶鋼等の溶融金属(製鋼工程において溶融金属が収容される転炉や取鍋等をまとめて溶融金属保持容器という)の温度を連続測温するための連続測温プローブ及び連続測温プローブの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼における転炉での精錬は、溶銑内に含まれる炭素の脱炭、目標出鋼温度への昇熱又は珪素、リン、マンガン等の不純物をスラグとして分離させ、除去することを目的として行われている。
この工程にて、溶銑から溶鋼へと精錬され、溶鋼取鍋に出湯された後、LF、RH、CAS、REDA、DHといった二次精錬を経て、最終的に鋳造される。
【0003】
転炉での精錬は、原料組成、温度、排ガスの二次燃焼比率等から成る吹錬モデルに基づいて酸素の吹錬が行われ、サブランスによる含有炭素量と温度の測定結果から酸素吹錬量を調節し、炭素含有量が目標値となるまでの推測値を算出し自動で吹錬を終了するダイナミックコントロールの手法が広く用いられている。
このため、転炉内の溶銑、溶鋼の温度を測定することは、転炉での精錬において不可欠な作業である。
【0004】
取鍋に出鋼された溶鋼は、LF処理にて昇熱、造滓、脱硫が行われ、RHやCAS、REDA、DHといった処理にて、脱ガス、成分調整が行われる。溶鋼の種類によっては、LF処理のみが行われ、次工程が鋳造となっているものもあれば、LF処理を行わずに脱ガス、成分調整の処理と同時に、アルミニウムの添加や酸素ブローによって温度調整を行うものもある。いずれの処理においても、処理前に消耗型熱電対プローブを用いて、溶融金属のバッチ測温が実施され、処理中にも必要に応じて複数回のバッチ測温を行い、必要な処理の時間、昇熱量、合金添加実施等を決定している。
【0005】
前記の通り、転炉での一次精錬及び取鍋での二次精錬の工程においては、溶融金属の測温は不可欠であるが、転炉及び取鍋のいずれの精錬工程においても、処理前、処理中、処理終了前、処理終了後の各タイミングで、消耗型熱電対を使用した、バッチ測温が行われている。そして、測温値から、従来の実績に基づいた手法で以降の処理を決定しているが、測温を実施した時点の温度から処理時点での温度を推測して、処理を行っている。また、推測値と併せて、オペレーターの経験に基づいた判断による制御も行われている。しかし、この推測値については、転炉又は取鍋の消耗の度合いや、精錬する溶融金属の材質の違いにより常に変化していくことから、必ずしも処理時点での実際の温度と合致するものとはいえない。
【0006】
このように、バッチ測温を基準として処理を進める場合、推測値と経験による制御となる。これに対し、処理中の溶融金属の温度が常に連続的に測定され、リアルタイムにシステム及びオペレーターに伝えられれば、処理時点での転炉又は電気炉若しくは取鍋の状態、及び溶融金属そのものの温度を反映することとなるため、より精度が高く、効率の良い処理が実現できる。しかしながら、現在でもこの技術は確立されていない。
【0007】
溶融金属の連続的な測温は、過去に取鍋のポーラス煉瓦等の耐火物内部に、シース熱電対等の温度センサーを埋め込み、炉壁材内部の温度を測定することで、溶融金属の温度を推測可能か否かの検証がなされたことはある(特許文献1参照)が、操業の進行或いは転炉又は取鍋の使用回数の増加により、周囲の耐火物表面に金属及びスラグが付着(堆積)したり、周囲の耐火物表面が損耗したりすることで、測定対象との距離や伝熱特性が常に変化していくことから、補正が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-41069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
温度センサーの外径及び長さを適切に確保した上で、温度センサーを溶融金属と直に接触させることで測温精度を向上させることができるが、シース熱電対を溶融金属と接触させると、容易に破損する。そこで、シース熱電対の溶融金属との接触部分を耐火物から成る保護管にて覆ったものとすれば、温度による早期の破損は、ある程度防止できる。一方で、機械的破損に関しては、耐火物の高温強度が低いことと、温度センサーが溶融金属保持容器の内部に所定の長さ飛び出した形であることから、容器内に投入されるスクラップ又は受銑若しくは受鋼時の溶融金属流から受ける衝撃荷重に耐えることが出来ず、温度センサーが破砕してしまうことが懸念される。
【0010】
この点に関し、耐火物部分の肉厚を増すことにより機械的強度は上がるが、肉厚増大による温度センサーの大型化により、スラグ付着面積が増大するという問題がある。また、耐火物部分の肉厚化により、耐火物の熱伝導率の低さが大きく影響し、溶融金属の熱が、周囲の耐火物によって抜熱(吸収)されてしまい、センサーの測温点に到達し難く、溶融金属の温度を正確に捉えることが困難になるという問題もある。特に、溶鋼取鍋において一般的に耐久性が高いとされているアルミナ‐マグネシア系耐火物は、低熱伝導率であることから温度測定への影響度が高い。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたもので、補正値(推測値)でなく真の溶湯温度を測定可能としながら、同時に、スクラップ又は受銑若しくは受鋼時の溶融金属流から受ける衝撃荷重に耐えられる強度を持った連続測温プローブ及び連続測温プローブの固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的に沿う第1の発明に係る連続測温プローブは、製鋼工程で用いられる溶融金属保持容器に取付けられ、前記溶融金属保持容器内の溶融金属の温度を連続的に測定可能な連続測温プローブであって、
熱電対と、該熱電対が内部に組込まれたサーメット保護管と、該サーメット保護管の先側外周を覆う耐火性の保護スリーブと、前記サーメット保護管の基側から延設され基側端部に電気接続端子を備えた外部接続体とを有する。
【0013】
第1の発明に係る連続測温プローブにおいて、前記保護スリーブは、先側保護部と、基側保護部に分割され、前記先側保護部が交換可能であることが好ましい。
【0014】
第1の発明に係る連続測温プローブにおいて、前記先側保護部は、黒色系耐火物又は白色系耐火物で形成され、前記基側保護部は、内部耐火材と、該内部耐火材の外周を覆うメタルケースとを有し、前記内部耐火材は、黒色系耐火物、白色系耐火物及び砂のいずれか1つからなってもよい。
【0015】
第1の発明に係る連続測温プローブにおいて、前記保護スリーブは、黒色系耐火物及び白色系耐火物のいずれか一方又は双方からなってもよい。
【0016】
第1の発明に係る連続測温プローブにおいて、前記保護スリーブは、先側が円錐台状に形成され基側が角柱状又は円柱状に形成されてもよい。
【0017】
前記目的に沿う第2の発明に係る連続測温プローブの固定構造は、第1の発明に係る連続測温プローブを用いて溶融金属保持容器内の溶融金属の温度を連続的に測定するための連続測温プローブの固定構造であって、
前記溶融金属保持容器の周壁又は底壁の一部を構成し、前記連続測温プローブが挿抜可能に保持される挿通孔を有し、前記連続測温プローブの先側を前記溶融金属保持容器の内部に突出させ、前記外部接続体を前記溶融金属保持容器の外部に突出させるプローブ取付部と、前記溶融金属保持容器の外表面に取付けられて、前記連続測温プローブが前記挿通孔から前記溶融金属保持容器の外部に抜けないように保持する固定手段とを備える。
【0018】
第2の発明に係る連続測温プローブの固定構造において、前記プローブ取付部は、内壁煉瓦と外壁煉瓦で構成される二層構造を有し、前記挿通孔は前記内壁煉瓦を貫通する内壁貫通部と前記外壁煉瓦を貫通する外壁貫通部に分割されていることが好ましい。
【0019】
第2の発明に係る連続測温プローブの固定構造において、前記内壁煉瓦は、前記内壁貫通部が形成される内周煉瓦と、該内周煉瓦の外周を囲繞する外周煉瓦で構成される二重構造を有することができる。
【0020】
前記目的に沿う第3の発明に係る連続測温プローブの固定構造は、第1の発明に係る連続測温プローブを用いて溶融金属保持容器内の溶融金属の温度を連続的に測定するための連続測温プローブの固定構造であって、
前記溶融金属保持容器の周壁又は底壁(鉄皮を除く)に挿通孔が形成され、該挿通孔に保持される前記連続測温プローブの先側が前記溶融金属保持容器の内部に突出し、前記周壁又は前記底壁の外表面及び前記連続測温プローブの保護スリーブの基側端面を覆う鉄皮にプローブ取出孔が形成され、前記外部接続体が前記プローブ取出孔から前記溶融金属保持容器の外部に突出している。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明に係る連続測温プローブによれば、サーメット保護管の先側外周が耐火性の保護スリーブで覆われることにより、サーメット保護管が、保護スリーブの骨材として作用し、保護スリーブのみでは耐えられない衝撃に耐える強度を持ち、保護スリーブの薄肉化を図ると共に、サーメット保護管の高熱伝導性によって良好な測温精度を兼ね備えることができる。
【0022】
第2の発明に係る連続測温プローブの固定構造によれば、熱間状態でも連続測温プローブを容易に交換することができ、連続測温プローブのメンテナンス性に優れる。
【0023】
第3の発明に係る連続測温プローブの固定構造によれば、簡素な構造で、連続測温プローブの取付けに手間がかからず、施工性に優れると共に耐久性に優れ、連続測温プローブの交換頻度を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造により周壁に連続測温プローブが取付けられた取鍋を示す断面図である。
図2】同連続測温プローブの固定構造を示す要部断面拡大図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造を示す要部断面拡大図である。
図4】本発明の第3の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造を示す要部断面拡大図である。
図5】本発明の第4の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造を示す要部断面拡大図である。
図6】本発明の第5の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造を示す要部断面拡大図である。
図7】実施例1の測温データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
以下、図1図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造10及びそれに用いられる連続測温プローブ11について説明する。なお、図1は構造を一部省略した概略図であり、詳細構造は図2に示す通りである。
図1図2に示す本発明の第1の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造10は、連続測温プローブ11を用いて取鍋(製鋼工程で用いられる溶融金属保持容器の一例)12内の溶融金属の温度を連続的に測定するためのものである。
連続測温プローブ11は、熱電対13と、熱電対13が内部に組込まれたサーメット保護管14と、サーメット保護管14の先側外周を覆う耐火性の保護スリーブ15と、サーメット保護管14の基側から延設され基側端部に電気接続端子16を備えた外部接続体17とを有する。保護スリーブ15は先細りの円錐台状に形成されている。
【0026】
外部接続体17はステンレス等の金属製で、熱電対13を保護して連続測温プローブ11に必要な全長を確保するものであり、図1に示すように、熱電対延長ケーブル18と接続される。本実施の形態では、外部接続体17として、金属パイプ19の基側に、電気接続端子16となるワンタッチ式のコネクタ用部品が溶接されたもの(実用新案登録第3211664号公報参照)を用いることにより、熱電対延長ケーブル18との着脱を容易にした。なお、外部接続体の構造はこれに限定されるものではなく、熱電対と熱電対延長ケーブルを電気的に接続できるものであればよい。
取鍋12の外部に取付けられた断熱ボックス20の内部には無線送信機21がセットされており、熱電対延長ケーブル18と無線送信機21が接続されることにより、熱電対13に発生する起電力が無線送信機21に読み込まれ、測定された温度データ(測温データ)が無線送信機21からパソコン(図示せず)等に送信される仕組みとなっている。
サーメット保護管14としては、高温下での熱伝導率及び熱間強度を確保するため、冷間等方圧加圧法により成形され、焼結炉にて焼結された焼結密度の高いものが好適に用いられる。但し、保護スリーブ15が溶損や浸食により消耗して、サーメット保護管14が取鍋12の内部に露出する前に、連続測温プローブ11が交換されることを前提とする場合は、押出成形で成形され、焼結されたサーメット保護管が採用されてもよい。
【0027】
図2に示すように、連続測温プローブの固定構造10は、取鍋12の周壁(側壁)23の一部を構成するプローブ取付部24を備えている。このプローブ取付部24は、連続測温プローブ11が挿抜可能に保持される挿通孔25を有し、連続測温プローブ11の先側を取鍋12の内部に突出させ、外部接続体17を取鍋12の外部に突出させるものである。そして、連続測温プローブの固定構造10は、取鍋12の周壁23の外表面に取付けられて、連続測温プローブ11が挿通孔25から取鍋12の外部に抜けないように保持する固定手段26を備えている。挿通孔25は保護スリーブ15の形状に合わせて、取鍋12の内部に向かって縮径するテーパ状に形成されている。
プローブ取付部24は、マス煉瓦で形成された内壁煉瓦28と、マス煉瓦で形成された外壁煉瓦29で構成される二層構造を有し、挿通孔25は内壁煉瓦28を貫通する内壁貫通部30と外壁煉瓦29を貫通する外壁貫通部31に分割されている。このプローブ取付部24は、取鍋12の周壁23の所望の位置に孔をあけて、内壁煉瓦28及び外壁煉瓦29を埋め込む(嵌め込む)ことにより形成される。
周壁23のプローブ取付部24以外の部分(既存の周壁)は、複数層の煉瓦33~36及び鉄皮37で構成されている。内壁煉瓦28、外壁煉瓦29及び煉瓦33~36の材質は、取鍋12内に注湯されて運搬される溶融金属の種類により、適宜、選択される。なお、特に、溶融金属に接触し、高温化する、保護スリーブ15、内壁煉瓦28及び煉瓦33には、線膨張率及び熱伝導率の近い材質が好適に用いられる。
【0028】
本実施の形態では、アルミナ-マグネシア系の耐火物(キャスタブル)である煉瓦33に合わせて、保護スリーブ15として、煉瓦33と同様の耐火物を流し込みで成形したプレキャストスリーブを採用した。保護スリーブの材質は、連続測温プローブの使用環境に応じて、適宜、選択されるが、アルミナ-カーボン、スピネル-カーボン、マグネシア-カーボン、ジルコニア-カーボン、炭化ケイ素-カーボン等のカーボンを原料に含む黒色系耐火物、及びアルミナ、アルミナ-シリカ、アルミナ-スピネル、アルミナ-マグネシア、マグネシア等のアルミナ若しくはマグネシアを原料に含む白色系耐火物のいずれか一方または双方からなるものが好適に用いられる。
【0029】
固定手段26は、取鍋12の外表面に固定されるベース金具38と、連続測温プローブ11の基側に外挿されベース金具38と締結される締結金具39とを有している。
ここで、保護スリーブ15の基側端面と締結金具39との間には、隙間調整部材40が配置されており、プローブ取付部24の挿通孔25の大きさに応じて、連続測温プローブ11の挿入長(連続測温プローブ11の取鍋12の内部への突出量)を調整する(連続測温プローブ11を図2の上下方向に移動させる)際に、隙間調整部材40の総厚を選択する(変化させる)ことにより、保護スリーブ15と締結金具39との隙間が埋められ、締結金具39で連続測温プローブ11が取鍋12の内部に向かって押付けられて確実に固定される。本実施の形態では、隙間調整部材40として、押さえ煉瓦41と複数枚(ここでは5枚)の調整用スペーサ42を用いたが、隙間の大きさに応じて、押さえ煉瓦の厚さ及び調整用スペーサの枚数を適宜、選択することができ、いずれか一方又は双方を省略することもできる。
【0030】
また、本実施の形態では、環状に形成されたベース金具38を鉄皮37の外表面に螺子止め又は溶接で固定しておき、締結金具39の円筒部44の先端を隙間調整部材40(調整用スペーサ42)に押付けながら回転させ、円筒部44の外周に設けた複数(例えば3つ)の爪45を、ベース金具38の内周側に設けた複数(例えば3つ)の突起46に係合させることにより、連続測温プローブ11を固定した。このように、締結金具39と隙間調整部材40(調整用スペーサ42)を密着させ、固定手段26で連続測温プローブ11を取鍋12の内部に向かって押付けることにより、連続測温プローブ11の移動を確実に防止することができる。但し、ベース金具及び締結金具の形状及び固定方法は、本実施の形態に限定されることなく、適宜、選択される。例えば、固定手段26(締結金具39)は、必ずしも連続測温プローブ11を取鍋12の内部に向かって押付ける力を加えるものである必要はなく、連続測温プローブ11に対して無負荷であってもよく、締結金具39と隙間調整部材40(調整用スペーサ42)との間に微小な隙間があってもよい。
また、固定手段は、連続測温プローブ11が挿通孔25から取鍋12の外部に抜け落ちないように保持(固定)することができればよく、ベース金具及び締結金具を用いたものに限定されず、その構成及び固定方法は、適宜、選択される。
【0031】
以上の構成により、取鍋12の予熱又は注湯等の終了後に、耐火物(保護スリーブ15、内壁煉瓦28、外壁煉瓦29及び煉瓦33等)に蓄熱された熱間状態であっても、連続測温プローブ11を挿通孔25から引き抜いて容易に交換することが可能となり、メンテナンス性を向上させることができる。また、靭性、耐熱衝撃性及び高温強度に優れ、高い熱伝導率を備えたサーメット保護管14が、保護スリーブ15の骨材として作用することにより、連続測温プローブ11は、保護スリーブ15のみでは耐えられない衝撃に耐える強度を備え、それに伴って保護スリーブ15が薄肉化され、軽量化が図られると共に、優れた熱伝導性による良好な測温精度を兼ね備えることができる。
【0032】
本実施の形態では、連続測温プローブ11が、溶融金属保持容器の一例である取鍋12の周壁(側壁)23に取付けられる場合について説明したが、連続測温プローブは、取鍋の底壁に取付けられてもよいし、取鍋以外の溶融金属保持容器(例えば転炉又は電気炉等)の周壁又は底壁に取付けられてもよい。
特に、連続測温プローブが、溶融金属保持容器の周壁に取付けられる場合、残湯又はスラグが堆積する高さよりも上方に配置されることにより、連続測温プローブが残湯又はスラグと接触する時間が低減され、保護スリーブが侵食され難くなると共に、連続測温プローブの周囲に残湯又はスラグが堆積することがなく、溶融金属保持容器の内部に突出した連続測温プローブの長さ(突出長さ)も変化しないため、長期間にわたって安定した測温精度が保たれる。また、連続測温プローブが、残湯又はスラグによる侵食及び埋没の影響を受け難いため、連続測温プローブ(保護スリーブ)を細く、短くして、連続測温プローブの小型化及び軽量化を図ることができ、低コスト性及び施工性も向上する。
【0033】
次に、図3を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造50及びそれに用いられる連続測温プローブ51について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、連続測温プローブの固定構造50では、取鍋12の周壁23に挿通孔52が形成され、挿通孔52に保持される連続測温プローブ51の先側が取鍋12の内部に突出し、周壁23の外表面及び連続測温プローブ51の保護スリーブ53の基側端面54を覆う鉄皮37にプローブ取出孔55が形成され、外部接続体17がプローブ取出孔55から取鍋12の外部に突出している。
このように、連続測温プローブ51が直接、周壁23に埋め込まれることにより、連続測温プローブの固定構造10のような内壁煉瓦28及び外壁煉瓦29で構成されるプローブ取付部24並びに固定手段26(図2参照)を不要として構造を簡素化し、連続測温プローブ51の取付けにかかる手間を削減することができる。また、保護スリーブ53は、先側が円錐台状に形成され基側が角柱状又は円柱状に形成されて、全体の肉厚が増加することにより耐久性が向上する。従って、取鍋12の補修時に、冷間状態で煉瓦33~36を差し替えたり、煉瓦33~36の損耗箇所を不定形耐火物で増厚したりするまで、連続測温プローブ51を交換する必要がなく、連続測温プローブ51の交換頻度を低く抑えることができる。
【0034】
次に、図4を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造57及びそれに用いられる連続測温プローブ58について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
連続測温プローブの固定構造57が、連続測温プローブの固定構造10と異なる点は、プローブ取付部60を構成する内壁煉瓦61が、外形が円形で中心に挿通孔62の一部となる内壁貫通部63が形成される内周煉瓦64と、内周煉瓦64の外周を囲繞する外形が四角形の外周煉瓦65で構成される二重構造を有している点である。これにより、取鍋12の補修時に、損耗した内周煉瓦64のみを冷間状態で交換することができ、省資源性に優れる。なお、取鍋12の周壁23を全面補修する際には、外壁煉瓦29及び外周煉瓦65も周囲の煉瓦33~36と共に解体され張替えられる。
【0035】
また、連続測温プローブ58が連続測温プローブ11と異なる点は、保護スリーブ66が、先側保護部66aと、基側保護部66bに分割され、先側保護部66aが交換可能となっている点である。ここで、先側保護部66aの材質は、前述の保護スリーブ15と同様であり、黒色系耐火物又は白色系耐火物が好適に用いられる。また、基側保護部66bは、内部耐火材67と、内部耐火材67の外周を覆うメタルケース68とを有しており、メタルケース68の内側の要所には、内部耐火材67とメタルケース68を固定(一体化)するために、複数のスタッド(突起)69が設けられている。内部耐火材67としては、前述の黒色系耐火物又は白色系耐火物が好適に用いられ、メタルケース68としては、SS材等の鋼板が好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。先側保護部66aの材質と、内部耐火材67の材質は、同一でも異なっていてもよいし、メタルケースは、上記以外の合金又は金属で形成されてもよい。
【0036】
以上の構成により、溶融金属と直接接触し、損耗が発生し易い先側保護部66aが、連続測温プローブ58を挿通孔62から引き抜く際に破損しても、熱電対13及びサーメット保護管14と共に基側保護部66bを回収することができ、先側保護部66aのみを交換して連続測温プローブ58として繰り返し使用することが可能となり、ランニングコストを削減することができる。特に、先側保護部66aの全長(例えば150~400mm)の内、先側部分(例えば100~300mm)が取鍋12の内部に突出し、基側部分(例えば50~100mm)が内周煉瓦64で覆われることにより、溶融金属の熱が、基側保護部66bに伝わり難く、基側保護部66bの寿命を延ばすことができる。また、先側保護部66aの先端径50~100mmに対し、内周煉瓦64の外径を100~250mmとすることにより、外周煉瓦65の損耗を削減し、外周煉瓦65の交換頻度を低く抑えることができる。なお、上記の各部の寸法は、上記の範囲に限定されるものではなく、適宜、選択される。
【0037】
次に、図5を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造57a及びそれに用いられる連続測温プローブ58aについて説明する。なお、第1~第3の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
連続測温プローブの固定構造57aが連続測温プローブの固定構造57と異なる点は、連続測温プローブ58の代わりに、連続測温プローブ58aが用いられている点である。この連続測温プローブ58aが連続測温プローブ58と異なる点は、内部耐火材67aが、耐火性を有する砂(耐火砂)からなり、メタルケース68aの内部にスタッド69が形成されていない点である。内部耐火材67aとなる砂は、少なくとも溶鋼温度の1650~1700℃を上回る耐火度を有するものであればよいが、高融点、低熱膨張率及び低熱伝導率を兼ね備えたものが好ましい。具体的には、例えば、クロマイトサンド(耐火性クロマイト砂)、ムライト系セラミック砂又はシェルモールド鋳造等に使用されるコーテッドサンド等が用いられる。
内部耐火材67aは、製造時に加熱され乾燥されることにより、保形性を有し、内部のサーメット保護管14を保持(固定)することができるが、連続測温プローブ58aの使用に伴う熱負荷で脆くなる特性がある。従って、連続測温プローブ58aの交換時に、連続測温プローブ58aを挿通孔62から引き抜く際に、メタルケース68aが変形しても、それに応じて内部耐火材67aの形状が変化し、内部の熱電対13及びサーメット保護管14に負荷が加わることはなく、熱電対13及びサーメット保護管14を確実に回収することができる。
【0038】
次に、図6を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造70及びそれに用いられる連続測温プローブ71について説明する。なお、第1~第4の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
連続測温プローブの固定構造70が、連続測温プローブの固定構造10と異なる点は、プローブ取付部72が、挿通孔73を有する1つの煉瓦74で構成されている点である。これにより、プローブ取付部72の構造を簡素化することができる。また、固定手段75は、円筒状に形成されたベース金具76を鉄皮37の外表面に螺子止め又は溶接で固定しておき、環状に形成された締結金具77を連続測温プローブ71の基側に挿通して保護スリーブ15の基側端面に当接させた状態でベース金具76と固定する構成となっている。ベース金具76と締結金具77の固定方法は適宜、選択することができ、例えばベース金具76の基側のフランジ部78に締結金具77を螺子止めしてもよいし、締結金具77とフランジ部78の外周を万力のような挟持手段で挟持してもよい。
連続測温プローブ71が連続測温プローブ11と異なる点は、外部接続体80が、金属パイプ19と、金属パイプ19の基側に接続され内部に熱電対素線が挿通されるステンレス等の金属製のフレキシブルホース81と、フレキシブルホース81の基側に取付けられたメタルコネクタ又はセラミックスコネクタ等の電気接続端子82で構成されている点である。これにより、必要に応じてフレキシブルホース81を変形(湾曲又は屈曲等)させ、電気接続端子82の位置及び向きを選択(変更)することができ汎用性に優れる。
なお、本実施の形態では、連続測温プローブ71が取付けられる取鍋12aの周壁(側壁)84が、三層の煉瓦85~87と鉄皮37で構成されているが、周壁の構成は適宜、選択される。
【実施例0039】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1)
図6に示した第5の実施の形態に係る連続測温プローブの固定構造70により周壁84に連続測温プローブ71が取付けられた取鍋12aを用いて、操業中に温度測定を実施したところ、図7のグラフに示す測温データが得られた。この時の測温点は、取鍋12aの底面から90mmの位置である。図7に示されるように、連続測温プローブ71は予熱時から取鍋12a内部の温度を検出しており、その測温データは、二次精錬のLF処理時及びRH処理時に実施された、消耗型熱電対プローブによるバッチ測温の測温データ(図7中の三角形のプロット)とほぼ同等であることがわかる。
従って、連続測温プローブ71及び連続測温プローブの固定構造70により、連続測温プローブ71の一部が取鍋12a内部に露出していても、受鋼時に受ける溶融金属流の衝撃荷重に耐える強度を保ちながら、正確な温度測定を連続的に行うことができ、測温の信頼性及び安定性を向上できることが確認された。
【0040】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、それぞれの実施の形態の連続測温プローブの固定構造と連続測温プローブとの組合せは適宜、選択される。
【符号の説明】
【0041】
10:連続測温プローブの固定構造、11:連続測温プローブ、12、12a:取鍋(溶融金属保持容器の一例)、13:熱電対、14:サーメット保護管、15:保護スリーブ、16:電気接続端子、17:外部接続体、18:熱電対延長ケーブル、19:金属パイプ、20:断熱ボックス、21:無線送信機、23:周壁、24:プローブ取付部、25:挿通孔、26:固定手段、28:内壁煉瓦、29:外壁煉瓦、30:内壁貫通部、31:外壁貫通部、33~36:煉瓦、37:鉄皮、38:ベース金具、39:締結金具、40:隙間調整部材、41:押さえ煉瓦、42:調整用スペーサ、44:円筒部、45:爪、46:突起、50:連続測温プローブの固定構造、51:連続測温プローブ、52:挿通孔、53:保護スリーブ、54:基側端面、55:プローブ取出孔、57、57a:連続測温プローブの固定構造、58、58a:連続測温プローブ、60:プローブ取付部、61:内壁煉瓦、62:挿通孔、63:内壁貫通部、64:内周煉瓦、65:外周煉瓦、66:保護スリーブ、66a:先側保護部、66b:基側保護部、67、67a:内部耐火材、68、68a:メタルケース、69:スタッド、70:連続測温プローブの固定構造、71:連続測温プローブ、72:プローブ取付部、73:挿通孔、74:煉瓦、75:固定手段、76:ベース金具、77:締結金具、78:フランジ部、80:外部接続体、81:フレキシブルホース、82:電気接続端子、84:周壁、85~87:煉瓦
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7