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  • 特開-フェイスマスク基布の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099951
(43)【公開日】2023-07-14
(54)【発明の名称】フェイスマスク基布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/435 20120101AFI20230707BHJP
   A45D 44/22 20060101ALI20230707BHJP
   D04H 1/492 20120101ALI20230707BHJP
【FI】
D04H1/435
A45D44/22 D
D04H1/492
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000241
(22)【出願日】2022-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】松永 篤
(72)【発明者】
【氏名】平松 真由美
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 直樹
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AA12
4L047AA21
4L047AA27
4L047AB02
4L047AB09
4L047BA04
4L047CC03
4L047EA02
(57)【要約】
【課題】 伸縮性の良好なフェイスマスク基布の生産性を向上させる製造方法を提供する。
【解決手段】 螺旋状の立体捲縮を有すると共にジグザグ状の二次元捲縮を有するポリエステル短繊維群と、セルロース系短繊維群を均一に混合し、カード機に通して、各短繊維群を開繊及び集積してウェブを得る。このウェブに水流を施し、短繊維同士を交絡させて不織布を得る。この不織布を所定形状に打ち抜いてフェイスマスク基布を得る。セルロース系短繊維としては、コットン繊維又はレーヨン短繊維を用いる。ポリエステル短繊維は、収縮率の異なる二種の重合体で形成されてなるサイドバイサイド型複合短繊維を用いる。このサイドバイサイド型複合短繊維は、一方の重合体がポリエチレンテレフタレートであり、他方の重合体がポリテトラメチレンテレフタレートである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の立体捲縮を有すると共にジグザグ状の二次元捲縮を有するポリエステル短繊維を含む短繊維群をカード機に通して、該短繊維群を開繊及び集積してウェブを得る工程、
前記ウェブに水流を施し、前記短繊維同士を交絡させて不織布を得る工程及び
前記不織布を所定形状に成形することを特徴とするフェイスマスク基布の製造方法。
【請求項2】
短繊維群は、ポリエステル短繊維群及びセルロース系短繊維群を含むものである請求項1記載のフェイスマスク基布の製造方法。
【請求項3】
セルロース系短繊維群は、コットン繊維群及び/又はレーヨン短繊維群である請求項2記載のフェイスマスク基布の製造方法。
【請求項4】
ポリエステル短繊維は、収縮率の異なる二種の重合体で形成されてなるサイドバイサイド型複合繊維又は偏心芯鞘型複合繊維であって、一方の重合体がポリエチレンテレフタレートであり、他方の重合体がポリテトラメチレンテレフタレートである請求項1記載のフェイスマスク基布の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載のフェイスマスク基布の製造方法における不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用フェイスマスクとして適用するためのフェイスマスク基布の製造方法に関し、特にすっきりとしたフェイスラインを実現するのに適したフェイスマスク基布の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧用フェイスマスクの基布の素材として不織布が用いられている。そして、この不織布が種々の形態に打ち抜かれて、フェイスマスク基布として用いられている。フェイスマスク基布の形態としては、顔全体を覆う形態、顎下及び顔全体を覆う形態、顎下及び顎のみを覆う形態、顎下のみを覆う形態、顎のみを覆う形態、目元のみを覆う形態並びに鼻下及び口元を覆う形態等の種々のものが採用されている。このフェイスマフク基布に、保湿成分、クレンジング成分又は美白成分等の美容成分を含む化粧料を含浸してフェイスマスクとし、顔に貼付して、皮膚の美容を図ることが行われている。
【0003】
近年、フェイスマスクに顔の皮膚の美容を図る機能だけでなく、顔の皮膚をリフトアップする機能を付与することが要求されている。リフトアップ機能とは、頬の皮膚のたるみにより、顎からこめかみに亙る顔の輪郭であるフェイスラインもたるむので、顎から頬に亙る皮膚を上方に引っ張り上げて、フェンスラインをすっきりさせようというものである。このため、フェイスマスク基布に、伸縮性を付与することが提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、螺旋状の立体捲縮を有するポリエステル短繊維を集積してなる不織布をフェイスマスク基布とすることが提案されている。かかるフェイスマスク基布は、構成繊維であるポリエステル短繊維が立体捲縮を有しているため、高伸縮性であり、好ましいものである。しかしながら、立体捲縮を有するポリエステル短繊維は、カード機で開繊しにくいということがあった。すなわち、カード機の針布にポリエステル短繊維が絡み付きやすく、高速でポリエステル短繊維を開繊及び集積しにくく、フェイスマスク基布の生産性が低下するという欠点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2019-103663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、伸縮性の良好なフェイスマスク基布の生産性を向上させる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリエステル短繊維として、螺旋状の立体捲縮とジグザグ状の二次元捲縮を併せ持つものを採用することにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、螺旋状の立体捲縮を有すると共にジグザグ状の二次元捲縮を有するポリエステル短繊維を含む短繊維群をカード機に通して、該短繊維群を開繊及び集積してウェブを得る工程、前記ウェブに水流を施し、前記短繊維同士を交絡させて不織布を得る工程及び前記不織布を所定形状に成形することを特徴とするフェイスマスク基布の製造方法に関するものである。
【0008】
本発明に用いるポリエステル短繊維は、螺旋状の立体捲縮を有すると共にジグザグ状の二次元捲縮を有するものである(図1)。ポリエステル短繊維に螺旋状の立体捲縮を発現させる方法として、最も好ましい方法は、潜在捲縮性の複合繊維を用いる方法である。具体的には、熱水収縮率や乾熱収縮率等の熱収縮率の異なる二種の重合体で形成されてなるサイドバイサイド型複合繊維又は偏心芯鞘型複合繊維を用いればよい。かかる複合繊維は、繊維軸の左側と右側とで、収縮率の異なる重合体が配されているので、加熱すれば、収縮率の高い重合体側を内側にして螺旋状の立体捲縮が発現する。ポリエステル繊維の場合、二種の重合体として、ポリエチレンテレフタレートとポリテトラメチレンテレフタレートを用いるのが好ましい。両者のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートが熱収縮率が低く、ポリテトラメチレンテレフタレートが熱収縮率が高い。
【0009】
ポリエステル短繊維にジグザグ状の二次元捲縮を発現させる方法は、いわゆる機械加工を施せばよい。具体的には、ポリエステル繊維を加熱したギアローラーに通すことにより、ジグザグ状の二次元捲縮が発現する。螺旋状の立体捲縮とジグザグ状の二次元捲縮は、前者の捲縮を発現させた後、後者の捲縮を付与するのが一般的である。
【0010】
ポリエステル短繊維の繊維長は、10~100mm程度であるのが好ましい。繊維長が10mm未満になると、カード機から短繊維が脱落しやすくなる傾向が生じる。繊維長が100mmを超えると、カード機の針布に短繊維が絡み付く傾向が生じる。ポリエステル短繊維の繊度は、1~10デシテックス程度である。繊度が1デシテックス未満になると、カード機の針布に短繊維が絡み付く傾向が生じる。繊度が10デシテックスを超えると、得られるフェイスマスク基布表面が粗くなり、肌触りが悪くなる傾向が生じる。
【0011】
本発明においては、ポリエステル短繊維と共に、セルロース系短繊維を混合して用いるのが好ましい。セルロース系短繊維は、親水性及び保水性に優れており、フェイスマスク基布としたとき化粧水を含浸しやすいからである。ポリエステル短繊維とセルロース系短繊維の混合割合は、質量比で、ポリエステル短繊維:セルロース系短繊維=100:30~100であるのが好ましい。この範囲を超えて、ポリエステル短繊維の混合割合が低くなると、得られるフェイスマスク基布の伸縮性が低下する傾向が生じる。
【0012】
セルロース系短繊維の繊維長及び繊度も、上記した理由で、ポリエステル短繊維と同程度であるのが好ましい。セルロース系短繊維としては、コットン繊維及び/又はレーヨン短繊維を用いるのが好ましい。特に、コットン繊維は天然繊維であり生分解性にも優れているため、環境にやさしいという利点がある。なお、少量であれば、ポリエステル短繊維及びセルロース系短繊維外の他種繊維を混合しても差し支えない。
【0013】
上記したポリエステル短繊維群及び所望によりセルロース系短繊維群を含む短繊維群をカード機に通すと、ポリエステル短繊維もセルロース系短繊維も良好に開繊され、これを集積してウェブを得る。カード機としては従来公知のものが用いられるが、開繊性の良好なパラレルカード機又はフラットカード機を用いるのが好ましい。ポリエステル短繊維が螺旋状の立体捲縮を有しているにも拘わらず、カード機で良好に開繊できる理由は、以下のとおりであると考えられる。すなわち、本発明に用いるポリエステル短繊維は、ジグザグ状の二次元捲縮が螺旋状の立体捲縮を一部消失させるからであると考えられる。
【0014】
得られるウェブの目付は任意であるが、一般的に50~100g/m2程度である。そして、このウェブに水流を施す。水流は高圧水流が好ましく、この水流のエネルギーで短繊維群相互間を絡合させて、形態安定性の良好な不織布を得る。短繊維相互間をバインダーで結合して形態安定性の良好な不織布としない理由は、バインダーが含まれている肌荒れ等を起こす危険があり、フェイスマスク基布として好ましくないからである。
【0015】
この不織布を所定形状に打ち抜く等の手段により、所定形状に成形すれば、フェイスマスク基布が得られる。そして、所望の化粧料を含浸し、顔に貼付してフェイスマスクとするのである。本発明に係るフェイスマスク基布は、伸縮性に優れているため、フェイスマスクを顎から斜め上方に引き延ばしながら貼付することにより、リフトアップ機能が発揮される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るフェイスマスク基布は、螺旋状の立体捲縮を有すると共にジグザグ状の二次元捲縮を有するポリエステル短繊維を含む短繊維群をカード機に通して、製造される。したがって、カード機に短繊維群が絡み付きにくく、良好に開繊及び集積されて、フェイスマスク基布が製造される。したがって、本発明に係る方法によれば、フェイスマスク基布の生産性が向上するという効果を奏する。
【実施例0017】
実施例1
ポリエステル短繊維として、帝人株式会社製の「SFYTCC94VWSD」を準備した。このポリエステル短繊維は、螺旋状の立体捲縮を有すると共にジグザグ状の二次元捲縮を有するサイドバイサイド型複合短繊維である。複合短繊維の一方の重合体はポリエチレンテレフタレートであり、他方の重合体はポリテトラメチレンテレフタレートである。なお、このポリエステル短繊維の繊維長は51mmで繊度は3.3デシテックスである。
一方、セルロース系短繊維として、ダイワボウ株式会社社製の「コロナCD」を準備した。このセルロース系短繊維は、繊維長40mmで繊度1.7デシテックスのレーヨン短繊維である。
【0018】
ポリエステル短繊維70質量部とセルロース系短繊維30質量部を均一に混合して、パラレルカード機を通して、開繊及び集積し、目付70g/m2のウェブを得た。このウェブを、コンベアに搬送し、孔径0.1mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置された水流噴出装置を用い、ウェブ側から3MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで5MPaの噴出圧力、7MPa の噴射圧力で高圧水流を施した。さらにウェブを反転し、5MPaの噴射圧力、6MPa の噴射圧力を2回で高圧水流を施し、ポリエステル短繊維とセルロース系短繊維を交絡せしめ、120℃で120秒間加熱して水分を蒸発させ、目付70g/m2の不織布を製造した。
そして、この不織布を所定形状に打ち抜いて、フェイスマスク基布を得た。
【0019】
実施例2
ポリエステル短繊維とセルロース系短繊維の質量比を、ポリエステル短繊維50質量部とセルロース系繊維50質量部に変更した他は、実施例1と同一の方法でフェイスマスク基布を得た。
【0020】
実施例3
実施例1で用いたレーヨン短繊維に代えて、平均繊維長25mmのコットン繊維を用いた他は、実施例1と同一の方法でフェイスマスク基布を得た。
【0021】
実施例4
実施例1で用いたポリエステル短繊維50質量部、実施例1で用いたセルロース系短繊維30質量部及び他種繊維として東レ株式会社製「ペンタスα」(扁平多葉型断面ポリエステル短繊維)20質量部を均一に混合して、パラレルカード機を通して、開繊及び集積し、目付70g/m2のウェブを得た。その後は、実施例1と同一の方法でフェイスマスク基布を得た。
【0022】
実施例1~4に係る方法によれば、ポリエステル短繊維がパラレルカード機に絡み付くことなく、フェイスマスク基布を連続生産でき、生産性の高い方法であった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明で用いるポリエステル短繊維群の一例を示す表面写真である。
図1