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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099964
(43)【公開日】2023-07-14
(54)【発明の名称】モータ駆動システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
H02P27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000275
(22)【出願日】2022-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100220663
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 基
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB06
5H505CC04
5H505DD03
5H505HA05
5H505HA16
5H505HB01
5H505KK05
(57)【要約】
【課題】電子回路基板に能動的な電子回路部品を搭載することなく、交流モータに、モータ駆動用の交流電力を非接触給電する。
【解決手段】モータ駆動システム(1)は、交流電圧指令を出力する上位コントローラ(10)と、直流電圧を高周波交流電圧に変換して出力する第一及び第二の高周波インバータと、高周波交流電力を非接触給電する第一及び第二の送電用コイルと、を有する第一の送電装置(2a)と、高周波交流電流が誘起される第一及び第二の受電用コイルと、第一の受電用コイルに誘起された高周波交流電流を正の電流に整流する第一の整流ダイオードと、第二の受電用コイルに誘起された高周波交流電流を負の電流に整流する第二の整流ダイオードと、を有する第一の受電装置(3a)と、正の電流と負の電流とが合成された交流電流が流れると磁界の発生により、ロータを回転させる第一のステータコイルを有する交流モータ(9)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流モータにモータ駆動用の交流電力を非接触給電するモータ駆動システムであって、
第一及び第二の高周波インバータのそれぞれに交流電圧指令を出力する上位コントローラと、
直流電圧を前記交流電圧指令に基づく高周波交流電圧に変換して出力する前記第一及び第二の高周波インバータと、前記第一及び第二の高周波インバータから供給される高周波交流電流により発生する磁束をそれぞれ第一及び第二の受電用コイルに結合させることにより、高周波交流電力を前記第一及び第二の受電用コイルに非接触給電する、第一及び第二の送電用コイルと、を有する第一の送電装置と、
前記第一及び第二の送電用コイルからの非接触給電により、高周波交流電流が誘起される前記第一及び第二の受電用コイルと、前記第一の受電用コイルに誘起された高周波交流電流を、正の電流に整流する第一の整流ダイオードと、前記第二の受電用コイルに誘起された高周波交流電流を、負の電流に整流する第二の整流ダイオードと、を有する第一の受電装置と、
前記正の電流と、前記負の電流とが合成された交流電流が流れると磁界を発生させることにより、ロータを回転させる第一のステータコイルを有する交流モータと、を備えるモータ駆動システム。
【請求項2】
前記第一の高周波インバータは、直列接続されている第一の送信用コイル及び第一の共振コンデンサによって決定される共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧を出力し、
前記第二の高周波インバータは、直列接続されている第二の送信用コイル及び第二の共振コンデンサによって決定される共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧を出力する、
請求項1に記載のモータ駆動システム。
【請求項3】
前記第一の高周波インバータは、前記上位コントローラが出力する前記交流電圧指令により、前記交流モータの駆動周波数の半周期ごとに前記高周波交流電圧と0電圧とを出力し、
前記第二の高周波インバータは、前記上位コントローラが出力する前記交流電圧指令により、前記第一の高周波インバータの出力電圧と相補の関係になるように前記交流モータの駆動周波数の半周期ごとに前記高周波交流電圧と0電圧とを出力する、請求項2に記載のモータ駆動システム。
【請求項4】
前記交流モータは、
第一及び第二のコイル巻き線がそれぞれ巻かれているインナーステータ及びアウターステータを有する前記第一のステータコイルと、
前記インナーステータと前記アウターステータとの間に設置される、かご型構造を有するロータと、を備え、
前記第一のステータコイルは、前記インナーステータ及びアウターステータのそれぞれに巻かれたコイル巻き線の一端が前記交流モータの外部で接続され、前記交流モータの入力の中性点として引きだされている、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ駆動システム。
【請求項5】
前記第一のステータコイルは、前記中性点が第一及び第二の整流用ダイオードのアノードと接続されており、
前記第一の整流ダイオードにより整流された前記正の電流は、前記第一のステータコイルの一端に供給され、
前記第二の整流ダイオードにより整流された前記負の電流は、前記第一のステータコイルの他端に供給され、
前記正の電流及び前記負の電流は、前記中性点を介してそれぞれ前記第一の受電用コイル及び前記第二の受電用コイルに環流する、請求項4に記載のモータ駆動システム。
【請求項6】
前記第一の送電装置と同一の構成を有する第二の送電装置及び第三の送電装置と、
前記第一の受電装置と同一の構成を有する第二の受電装置及び第三の受電装置と、を更に備え、
前記交流モータは、
前記第一のステータコイルと同一の構成を有する第二及び第三のステータコイルを更に有し、
前記第一から第三のステータコイルは、三相デルタ結線される、請求項1から5のいずれか一項に記載のモータ駆動システム。
【請求項7】
前記上位コントローラは、前記第一の送電装置が有する第一及び第二の高周波インバータと、前記第二の送電装置が有する第三及び第四の高周波インバータと、前記第三の送電装置が有する第五及び第六の高周波インバータのそれぞれに前記交流電圧指令を出力する、請求項6に記載のモータ駆動システム。
【請求項8】
三相デルタ結線される前記第一から第三のステータコイルの中性点は、それぞれ前記第一及び第二の整流ダイオードのアノード、第三及び第四の整流ダイオードのアノード、及び第五及び第六の整流ダイオードのアノード、と接続されており、
前記第一から第三のステータコイルを三相デルタ結線する三端子のそれぞれの端子には、前記第一の整流ダイオードによって整流された正の電流及び前記第六の整流ダイオードによって整流された負の電流と、前記第三の整流ダイオードによって整流された正の電流及び前記第二の整流ダイオードによって整流された負の電流と、前記第五の整流ダイオードによって整流された正の電流及び前記第四の整流ダイオードによって整流された負の電流と、がそれぞれ供給され、
前記第一、第三及び第五の整流ダイオードによって整流された正の電流は、それぞれが供給されるステータコイルの中性点を介して、第一、第三及び第五の受電用コイルに環流し、
前記第二、第四及び第六の整流ダイオードによって整流された負の電流は、それぞれが供給されるステータコイルの中性点を介して、第二、第四及び第六の受電用コイルに環流する、請求項6又は7に記載のモータ駆動システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交流モータにモータ駆動用の交流電力を非接触給電するモータ駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インホイールモータによって駆動される電気自動車において、インホイールモータに非接触給電することにより、電気自動車を走行制御する技術がある。インホイールモータとは、電気自動車(EV)等の車輪(ホイール)内部に装着されたモータのことをいう。例えば、特許文献1には、電気自動車等のホイール内部に駆動源を配置したインホイールモータに非接触給電しつつ、インホイールモータを安定して駆動制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/133301号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術によりインホイールモータに非接触給電する場合、受電側に電子回路基板が必要である。しかし、電子回路基板に搭載される電解コンデンサの寿命、車輪に加わる荷重、振動等により電子回路基板が歪むことによる能動的な電子回路部品、コネクタ等の半田接続部の信頼性、堅牢な防塵防滴の必要性等の、電子回路基板の信頼性上の課題があった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、車輪に搭載される電子回路基板に能動的な電子回路部品を搭載することなく、車輪に搭載された交流モータに、モータ駆動用の交流電力を非接触給電するモータ駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、一実施形態に係るモータ駆動システムは、交流モータにモータ駆動用の交流電力を非接触給電するモータ駆動システムであって、第一及び第二の高周波インバータのそれぞれに交流電圧指令を出力する上位コントローラと、直流電圧を前記交流電圧指令に基づく高周波交流電圧に変換して出力する前記第一及び第二の高周波インバータと、前記第一及び第二の高周波インバータから供給される高周波交流電流により発生する磁束をそれぞれ第一及び第二の受電用コイルに結合させることにより、高周波交流電力を前記第一及び第二の受電用コイルに非接触給電する、第一及び第二の送電用コイルと、を有する第一の送電装置と、前記第一及び第二の送電用コイルからの非接触給電により、高周波交流電流が誘起される前記第一及び第二の受電用コイルと、前記第一の受電用コイルに誘起された高周波交流電流を、正の電流に整流する第一の整流ダイオードと、前記第二の受電用コイルに誘起された高周波交流電流を、負の電流に整流する第二の整流ダイオードと、を有する第一の受電装置と、前記正の電流と、前記負の電流とが合成された交流電流が流れると磁界を発生させることにより、ロータを回転させる第一のステータコイルを有する交流モータと、を備える。
【0007】
さらに、一実施形態において、前記第一の高周波インバータは、直列接続されている第一の送信用コイル及び第一の共振コンデンサによって決定される共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧を出力し、前記第二の高周波インバータは、直列接続されている第二の送信用コイル及び第二の共振コンデンサによって決定される共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧を出力してもよい。
【0008】
さらに、一実施形態において、前記第一の高周波インバータは、前記上位コントローラが出力する前記交流電圧指令により、前記交流モータの駆動周波数の半周期ごとに前記高周波交流電圧と0電圧とを出力し、前記第二の高周波インバータは、前記上位コントローラが出力する前記交流電圧指令により、前記第一の高周波インバータの出力電圧と相補の関係になるように前記交流モータの駆動周波数の半周期ごとに前記高周波交流電圧と0電圧とを出力してもよい。
【0009】
さらに、一実施形態において、前記交流モータは、コイル巻き線がそれぞれ巻かれているインナーステータ及びアウターステータを有する前記第一のステータコイルと、前記インナーステータと前記アウターステータとの間に設置される、かご型構造を有する前記ロータと、を備え、前記第一のステータコイルは、前記インナーステータ及びアウターステータのそれぞれに巻かれたコイル巻き線の一端が前記交流モータの外部で接続され、前記交流モータの入力の中性点として引きだされていてもよい。
【0010】
さらに、一実施形態において、前記第一のステータコイルは、前記中性点が第一及び第二の整流用ダイオードのアノードと接続されており、前記第一の整流ダイオードにより整流された前記正の電流は、前記第一のステータコイルの一端に供給され、前記第二の整流ダイオードにより整流された前記負の電流は、前記第一のステータコイルの他端に供給され、前記正の電流及び前記負の電流は、前記中性点を介してそれぞれ前記第一の受電用コイル及び前記第二の受電用コイルに環流してもよい。
【0011】
さらに、一実施形態において、前記第一の送電装置と同一の構成を有する第二の送電装置及び第三の送電装置と、前記第一の受電装置と同一の構成を有する第二の受電装置及び第三の受電装置と、を更に備え、前記交流モータは、前記第一のステータコイルと同一の構成を有する第二及び第三のステータコイルを更に有し、前記第一から第三のステータコイルは、三相デルタ結線されてもよい。
【0012】
さらに、一実施形態において、前記上位コントローラは、前記第一の送電装置が有する第一及び第二の高周波インバータと、前記第二の送電装置が有する第三及び第四の高周波インバータと、前記第三の送電装置が有する第五及び第六の高周波インバータのそれぞれに前記交流電圧指令を出力してもよい。
【0013】
さらに、一実施形態において、三相デルタ結線される前記第一から第三のステータコイルの中性点は、それぞれ前記第一及び第二の整流ダイオードのアノード、第三及び第四の整流ダイオードのアノード、及び第五及び第六の整流ダイオードのアノード、と接続されており、前記第一から第三のステータコイルを三相デルタ結線する三端子のそれぞれの端子には、前記第一の整流ダイオードによって整流された正の電流及び前記第六の整流ダイオードによって整流された負の電流と、前記第三の整流ダイオードによって整流された正の電流及び前記第二の整流ダイオードによって整流された負の電流と、前記第五の整流ダイオードによって整流された正の電流及び前記第四の整流ダイオードによって整流された負の電流と、がそれぞれ供給され、前記第一、第三及び第五の整流ダイオードによって整流された正の電流は、それぞれが供給されるステータコイルの中性点を介して、第一、第三及び第五の受電用コイルに環流し、前記第二、第四及び第六の整流ダイオードによって整流された負の電流は、それぞれが供給されるステータコイルの中性点を介して、第二、第四及び第六の受電用コイルに環流してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、車輪に搭載される受電装置の電子回路基板に高信頼性を要求される能動的な電子回路部品を搭載することなく、車輪に搭載された交流モータに、モータ駆動用の交流電力を非接触給電することが可能となる。
【0015】
たとえば、送電装置に搭載される共振コイルと共振コンデンサとによって決定される共振周波数が85kHzであった場合、送電装置は、85kHzの高周波交流電力を受電装置に非接触給電する。該高周波交流電力の振幅は任意に制御することができるため、50Hzの正弦波状に高周波交流電力の波高値を変調することも可能である。受電装置は、非接触給電を受けた85kHzの高周波交流電力から、交流モータを駆動し得る50Hzの正弦波状の交流電力を合成して交流モータを駆動する。このようにして、本開示に係るモータ駆動システムは、モータ駆動用の交流電力を交流モータに非接触給電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一の実施形態に係るモータ駆動システムの構成例を示す回路図である。
図2】第二の実施形態に係るモータ駆動システムの構成例を示す回路図である。
図3】高周波インバータにより出力される高周波交流電圧の例を示す図である。
図4】ステータコイルの両端に印加される電圧を示す図である。
図5】本開示に係る交流モータの構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態が、図面を参照しながら詳細に説明される。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態に係るモータ駆動システムの構成例を示す回路図である。図1に示すように、本実施形態に係るモータ駆動システム1は、上位コントローラ10と、第一及び第二の高周波インバータ11a,12aと、第一及び第二の共振コンデンサ21a,22aと、第一及び第二の送電用コイル41a,42aと、を有する第一の送電装置2aと、第一及び第二の受電用コイル51a,52aと、第一及び第二の受電用共振コンデンサ31a,32aと、第一及び第二の整流ダイオード81a,82aと、第一及び第二の平滑コンデンサ71a,72aと、を有する第一の受電装置3aと、第一のステータコイル6aを有する交流モータ9と、を備える。上位コントローラ10及び第一の送電装置2aは、電気自動車等の車体4に搭載される。第一の受電装置3a及び交流モータ9は、電気自動車等の車輪5に搭載される。モータ駆動システム1は、交流モータ9にモータ駆動用の交流電力を非接触給電する。
【0019】
<上位コントローラ>
上位コントローラ10は、車体4に搭載されており、第一及び第二の高周波インバータ11a,12aのそれぞれに交流電圧指令を出力する。上位コントローラ10は、たとえば第一及び第二の高周波インバータ11a,12aと通信可能なPC、マイコン、コンピュータ等の専用のハードウェアであって、上位コントローラ10は、それぞれの高周波インバータが出力する電圧を決定する交流電圧指令を出力する。交流電圧指令とは、周波数、振幅、位相、タイミング等の出力させる交流電圧の電圧仕様の指令をいう。
【0020】
<第一の送電装置>
図1において、第一の送電装置2aは、第一及び第二の高周波インバータ11a,12aと、第一及び第二の共振コンデンサ21a,22aと、第一及び第二の送電用コイル41a,42aと、を備える。第一の送電装置2aは、車体4に搭載されており、車輪5に搭載される第一の受電装置3aに非接触給電を行う。
【0021】
第一及び第二の高周波インバータ11a,12aは、車体4に搭載されており、直流電圧を上位コントローラ10が出力した交流電圧指令に基づく高周波交流電圧に変換して出力する。たとえば、第一及び第二の高周波インバータ11a,12aは、バッテリー等の直流電圧源を備え、該直流電圧源が出力する直流電圧を交流電圧指令により任意の高周波交流電圧に変換して出力する。第一及び第二の高周波インバータ11a,12aは、前述のように、個別に直流電圧源を備えてもよいし、第一及び第二の高周波インバータ11a,12aと並列に接続される外部バッテリー等の直流電圧源から直流電圧の供給を受けてもよい。ここで、高周波交流電圧とは、モータ駆動用の交流電力の周波数と比較し、たとえば数倍程度高い周波数の交流電圧であることをいう。
【0022】
たとえば、第一及び第二の高周波インバータ11a,12aは、単相電圧源インバータで構成されてもよい。
【0023】
第一及び第二の高周波インバータ11a,12aは、それぞれ第一及び第二の共振コンデンサ21a,22aを介して、第一及び第二の送電用コイル41a,42aと接続される。第一及び第二の共振コンデンサ21a,22aの一端と第一及び第二の送電用コイル41a,42aの一端とは、接続されており、直列接続回路を構成する。第一及び第二の共振コンデンサ21a,22aの他端と第一及び第二の送電用コイル41a,42aの他端とは、それぞれの第一又は第二の高周波インバータ11a,12aの出力端に接続される。第一の高周波インバータ11aは、直列接続されている第一の送電用コイル41a及び第一の共振コンデンサ21aによって決定される共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧を出力する。第二の高周波インバータ12aは、直列接続されている第二の送電用コイル42a及び第二の共振コンデンサ22aによって決定される共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧を出力する。出力された高周波交流電圧は、第一及び第二の送電用コイル41a,42aと第一及び第二の共振コンデンサ21a,22aとを直列接続するそれぞれの直列接続回路に印加される。
【0024】
たとえば、直列接続されている第一の送電用コイル41a及び第一の共振コンデンサ21aによって決定される共振周波数が85kHzであった場合、第一の高周波インバータ11aは、85kHzの高周波交流電圧を出力する。
【0025】
第一の高周波インバータ11aは、上位コントローラ10が出力する交流電圧指令により、交流モータ9の駆動周波数の半周期ごとに、高周波交流電圧(上述の直列接続されている第一の送電用コイル41aと、第一の共振コンデンサ21aとによって決定される共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧)と0電圧とを出力する。第二の高周波インバータ12aは、上位コントローラ10が出力する交流電圧指令により、第一の高周波インバータ11aの出力電圧と相補の関係になるように交流モータ9の駆動周波数の半周期ごとに該高周波交流電圧と0電圧とを出力する。
【0026】
また、第一及び第二の高周波インバータ11a,12aは、高周波交流電力の振幅を交流電圧指令により、任意に制御することができるため、たとえば、50Hzの正弦波状に高周波交流電圧の波高値を変調することも可能である。
【0027】
図3は、高周波インバータにより出力される高周波交流電圧の例を示す図である。図3に示す高周波交流電圧Va,Vbは、それぞれ第一及び第二の送電用コイル41a,42aと、第一及び第二の共振コンデンサ21a,22aと、によって決定される共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧を、上位コントローラ10が出力する交流電圧指令により、変調された高周波交流電圧が、特許文献1に開示された技術によって非接触給電された電圧の例である。図3に示すように、第一の高周波インバータ11a及び第二の高周波インバータ12aは、それぞれが非接触給電し得る高周波交流電圧と、交流モータ9を駆動し得る正弦波状のより低い周波数の交流電圧成分とを含有する高周波交流電圧を出力している。また、第一の高周波インバータ11a及び第二の高周波インバータ12aは、それぞれ周期的に運転と停止とを交互に繰り返している。運転とは、図3に示すように、一定期間、矩形波の高周波交流電圧をその振幅を制御しながら出力し、その後の一定期間、0電圧を出力する、という間欠的なサイクルを周期的に繰り返すことをいう。
【0028】
第一の高周波インバータ11aの出力電圧の波形は、負荷となる交流モータ9の第一のステータコイル6aの入力電圧の半周期の間、第一の送電用コイル41aと第一の共振コンデンサ21aとによって決定される共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧であって、かつ、第一のステータコイル6aの入力電圧の半周期の電圧の包絡線が正弦波の半周期となる形状の電圧波形となる。そして、第一の高周波インバータ11aは、第一のステータコイル6aの入力電圧の残りの半周期には、0電圧を出力する。第二の高周波インバータ12aは、第一の高周波インバータ11aが高周波交流電圧を出力している期間は0電圧を出力し、第一の高周波インバータ11aが0電圧を出力している期間は該高周波交流電圧と等しい波形の電圧を出力する。
【0029】
第一及び第二の送電用コイル41a,42aは、車体4に搭載されており、車輪5に搭載される第一及び第二の受電用コイル51a,52aとそれぞれ物理的に離間された状態で、相互に対向する位置に配置される送電用コイルである。第一及び第二の高周波インバータ11a,12aと第一及び第二の共振コンデンサ21a,22aとは、それぞれ直列接続回路を構成する。第一及び第二の送電用コイル41a,42aは、第一及び第二の高周波インバータ11a,12aから供給される高周波交流電流により発生する磁束をそれぞれ第一及び第二の受電用コイル51a,52aに結合させることにより、高周波交流電力を、第一及び第二の受電用コイル51a,52aに非接触給電する。ここで、高周波交流電流とは、モータ駆動用の交流電力の周波数と比較し、たとえば数倍程度高い周波数の交流電流であることをいう。また、高周波交流電力とは、モータ駆動用の交流電力の周波数と比較し、たとえば数倍程度高い周波数の交流電力であることをいう。
【0030】
<第一の受電装置>
図1において、第一の受電装置3aは、第一及び第二の受電用コイル51a,52aと、第一及び第二の受電用共振コンデンサ31a,32aと、第一及び第二の整流ダイオード81a,82aと、第一及び第二の平滑コンデンサ71a,72aと、を備える。第一の受電装置3aは、車輪5に搭載されており、第一の送電装置2aから非接触給電により誘起される高周波交流電流を整流する。第一の受電装置3aは、車輪5に搭載された電子回路部品を搭載した電子回路基板上に実現される。
【0031】
第一及び第二の受電用コイル51a,52aは、車輪5に搭載されており、第一及び第二の送電用コイル41a,42aからの非接触給電により、それぞれ高周波交流電流が誘起される。
【0032】
第一及び第二の受電用コイル51a,52aは、第一及び第二の送電用コイル41a,42aとほぼ同等の形状を有する。第一及び第二の受電用コイル51a,52aの数は、第一及び第二の送電用コイル41a,42aの数と同数である。第一及び第二の送電用コイル41a,42aと第一及び第二の受電用コイル51a,52aとは、たとえば、それぞれ数cmから数10cmほど物理的に離間された状態で、かつほぼ相互に対向する位置に配置される。第一及び第二の受電用コイル51a,52aには、それぞれ第一及び第二の受電用共振コンデンサ31a,32aが直列接続される。
【0033】
第一及び第二の整流ダイオード81a,82aは、車輪5に搭載されている。第一の整流ダイオード81aのカソードは、一端が第一の受電用コイル51aの出力端子に接続される第一の受電用共振コンデンサ31aの他端と接続されており、第一の整流ダイオード81aのアノードは、一端が第一の受電用共振コンデンサ31aと接続されていない側の第一の受電用コイル51aの他端と接続される。また、第二の整流ダイオード82aのアノードは、一端が第二の受電用コイル52aの出力端子に接続される第二の受電用共振コンデンサ32aの他端と接続されており、第二の整流ダイオード82aのカソードは、一端が第二の受電用共振コンデンサ32aと接続されていない側の第二の受電用コイル52aの他端と接続される。また、第一の整流ダイオード81aのアノードと第二の整流ダイオード82aのアノードは接続される。
【0034】
第一の整流ダイオード81aは、第一の受電用コイル51aに誘起された高周波交流電流を、正の電流に整流する。第二の整流ダイオード82aは、第二の受電用コイル52aに誘起された高周波交流電流を、負の電流に整流する。
【0035】
第一の受電装置3aは、特許文献1に開示された非接触給電技術により、第一及び第二の整流ダイオード81a,82aの両端に、第一及び第二の受電用コイル51a,52aと、第一及び第二の受電用共振コンデンサ31a,32aとによって決定されるそれぞれの共振周波数と等しい周波数の高周波交流電圧を発生させる。ここで、第一の整流ダイオード81a及び第二の整流ダイオード82aの両端に発生する電圧Va,Vbは、図3に示すように、交流モータ9を駆動し得る正弦波状のより低い周波数の交流電圧成分を含有する、間欠的な高周波交流電圧である。第一の整流ダイオード81aは、第一の整流ダイオード81aの両端に発生する高周波交流電圧Vaを正の電圧に整流する。また、第二の整流ダイオード82aは、第二の整流ダイオード82aの両端に発生する高周波交流電圧Vbを負の電圧に整流する。
【0036】
第一の整流ダイオード81aと並列に第一の平滑コンデンサ71aが接続される。さらに第二の整流ダイオード82aと並列に第二の平滑コンデンサ72aが接続される。第一の平滑コンデンサ71aは、第一の整流ダイオード81aにより整流された段階では変動のある正の直流電圧を、一定の大きさの安定した直流電圧に変換する。第二の平滑コンデンサ72aは、第二の整流ダイオード82aにより整流された段階では変動のある負の直流電圧を、一定の大きさの安定した直流電圧に変換する。
【0037】
以上のとおり、より低い周波数の交流電圧成分を含有する、間欠的な高周波交流電圧は、第一の受電装置3aが有する第一及び第二の整流ダイオード81a,82a、第一及び第二の平滑コンデンサ71a,72a等により構成される受動素子回路を介することにより、交流モータ9を駆動し得るより低い周波数のモータ駆動用の交流電圧に合成され、該モータ駆動用の交流電圧が交流モータ9の第一のステータコイル6aに印加される。
【0038】
たとえば、第一の受電装置3aは、85kHzの高周波交流電力の非接触給電を受けたとする。かかる場合、該85kHzの高周波交流電力の波高値が50Hzの正弦波状に変調されていたとすると、第一の受電装置3aは、上述の受動素子回路を介することにより、該85kHzの高周波交流電力から、交流モータ9を駆動し得る50Hzの正弦波状の交流電力を合成する。そして、合成された50Hzの正弦波状のモータ駆動用の交流電力は、交流モータ9へ供給される。
【0039】
<交流モータ>
図1の符号9を付して示す破線で囲まれた回路は、モータ駆動システム1の負荷となる交流モータ9の有する第一のステータコイル6aの等価回路を示している。交流モータ9の有する第一のステータコイル6aは中性点96aを有し、中性点96aは交流モータ9の入力線として交流モータ9の外部にその入力端子が引き出されている。
【0040】
第一のステータコイル6aは、車輪5に搭載されており、一方の入力端子が第一の整流ダイオード81aのカソードに接続され、中性点96aが第一の整流ダイオード81aのアノード及び第二の整流ダイオード82aのアノードに接続され、他方の入力端子が第二の整流ダイオード82aのカソードにそれぞれ接続される。第一のステータコイル6aは、第一の整流ダイオード81aにより整流された正の電流と、第二の整流ダイオード82aにより整流された負の電流とが合成された交流電流が流れると磁界を発生させることにより、後述する図5に示す、交流モータ9を構成する回転子であるロータ93を回転させる。図4は、ステータコイルの両端の電圧を示す図である。第一のステータコイル6aの両端の電圧Vcは、図4に示すように、正の電圧と負の電圧とが合成された正弦波交流電圧となる。かかる正弦波交流電圧は、交流モータ9を駆動し得る周波数の交流電圧である。
【0041】
第一のステータコイル6aは、中性点96aが第一の整流ダイオード81aのアノード及び第二の整流ダイオード82aのアノードと接続されている。第一の整流ダイオード81aにより整流された正弦波交流電流を構成する正の電流は、第一のステータコイル6aの一端に供給される。第二の整流ダイオード82aにより整流された正弦波交流電流を構成する負の電流は、第一のステータコイル6aの他端に供給される。正の電流及び負の電流は、中性点96aを介してそれぞれ第一の受電用コイル51a及び第二の受電用コイル52aに環流する電流経路をとる。
【0042】
図5は、本開示に係る交流モータの構造を説明する図である。図5は、交流モータ9の1/2モデルを2Dモデルとして示している。交流モータ9は、インナーステータ92及びアウターステータ91と定義される二つのステータを有する誘導機である。誘導機とは、固定子(ステータ)及び回転子(ロータ)に互いに独立した電機子巻線を施し、一方の巻線電流による電磁誘導作用により他方の巻線がエネルギーを受けて動作する仕組みの交流機をいう。交流モータ9は、第一及び第二のコイル巻き線94,95がそれぞれ巻かれているインナーステータ92及びアウターステータ91を有する第一のステータコイル6aと、インナーステータ92とアウターステータ91の間に設置される、かご型構造を有するロータ93と、を備える。図5に示すように、インナーステータ92は、交流モータ9の最も内側に設けられ、アウターステータ91は、交流モータ9の最も外側に設けられる。図5において、第一のコイル巻き線94は、アウターステータ91のコイル巻線を示している。また、第二のコイル巻き線95は、インナーステータ92のコイル巻線を示しており、第一及び第二のコイル巻き線94,95は、それぞれアウターステータ91及びインナーステータ92それぞれのスロットを通して巻き線として設けられる。第一のステータコイル6aは、インナーステータ92及びアウターステータ91のそれぞれに巻かれた第一及び第二のコイル巻き線94,95の一端が交流モータ9の外部で接続され、交流モータ9の入力の中性点として引きだされている。
【0043】
本開示に係るモータ駆動システム1は、第一及び第二の高周波インバータ11a,12aが、それぞれが非接触給電し得る高周波交流電圧と、交流モータ9を駆動し得る正弦波状のより低い周波数の交流電圧成分を含有する高周波交流電圧を間欠的に出力し、かかる間欠的な高周波交流電圧が、第一の受電装置3aが有する受動素子回路を介することにより、交流モータ9を駆動し得る正弦波状のより低い周波数のモータ駆動用の交流電圧に合成する。該モータ駆動用の交流電圧により、交流モータ9の駆動が可能となることを特徴とする。
【0044】
本開示に係るモータ駆動システム1によれば、車輪5に高信頼性を要求される能動的な電子回路部品を搭載した電子回路基板を搭載することなく、車輪5に搭載された交流モータ9にモータ駆動用の交流電力を非接触給電することが可能となり、車輪5に搭載される電子回路の信頼性上の課題を解決することが可能となる。信頼性上の課題とは、電子回路基板に搭載される電解コンデンサの長寿命化の課題、車輪に加わる荷重、振動等により電子回路基板が歪むことによる能動的な電子回路部品、コネクタ等の半田接続部の信頼性の課題、堅牢な防塵防滴の必要性の課題等である。
【0045】
(第二の実施形態)
図2は、第二の実施形態に係るモータ駆動システムの構成例を示す回路図である。図2に示すように、本実施形態に係るモータ駆動システム1′は、上位コントローラ10と、第一及び第二の高周波インバータ11a,12aと、第一及び第二の共振コンデンサ21a,22aと、第一及び第二の送電用コイル41a,42aと、を有する第一の送電装置2aと、第三及び第四の高周波インバータ11b,12bと、第三及び第四の共振コンデンサ21b,22bと、第三及び第四の送電用コイル41b,42bと、を有する第二の送電装置2bと、第五及び第六の高周波インバータ11c,12cと、第五及び第六の共振コンデンサ21c,22cと、第五及び第六の送電用コイル41c,42cと、を有する第三の送電装置2cと、第一及び第二の受電用コイル51a,52aと、第一及び第二の受電用共振コンデンサ31a,32aと、第一及び第二の整流ダイオード81a,82aと、第一及び第二の平滑コンデンサ71a,72aと、を有する第一の受電装置3aと、第三及び第四の受電用コイル51b,52bと、第三及び第四の受電用共振コンデンサ31b,32bと、第三及び第四の整流ダイオード81b,82bと、第三及び第四の平滑コンデンサ71b,72bと、を有する第二の受電装置3bと、第五及び第六の受電用コイル51c,52cと、第五及び第六の受電用共振コンデンサ31c,32cと、第五及び第六の整流ダイオード81c,82cと、第五及び第六の平滑コンデンサ71c,72cと、を有する第三の受電装置3cと、第一のステータコイル6aと、第二のステータコイル6bと、第三のステータコイル6cと、を有する交流モータ9′と、を備える。第一から第三のステータコイル6a,6b,6cは、三相デルタ結線される。三相デルタ結線された交流モータ9′は、以下三相交流モータ9′とも称する。モータ駆動システム1′は、三相交流モータ9′に三相交流モータ9′を駆動するモータ駆動用の交流電力を非接触給電する。モータ駆動システム1′は、第一の実施形態に係るモータ駆動システム1と比較して、第一の送電装置2aと同一の構成を有する第二の送電装置2b及び第三の送電装置2cと、第一の受電装置3aと同一の構成を有する第二の受電装置3b及び第三の受電装置3cと、を更に備え、交流モータ9′は、第一のステータコイル6aと同一の構成を有する第二のステータコイル6b及び第三のステータコイル6cと、を更に有する点が相違する。第一の実施形態と同一の構成については、第一の実施形態と同一の参照番号を付して適宜説明を省略する。また、第一の実施形態と同一の構成の説明は、適宜重複する説明を省略する。
【0046】
<上位コントローラ>
上位コントローラ10は、車体4に搭載されており、第一の送電装置2aが有する第一及び第二の高周波インバータ11a,12aと、第二の送電装置2bが有する第三及び第四の高周波インバータ11b,12bと、第三の送電装置2cが有する第五及び第六の高周波インバータ11c,12cのそれぞれに交流電圧指令を出力する。上位コントローラ10は、たとえば第一から第六の高周波インバータ11a,12a,11b,12b,11c,12cと通信可能なPC、マイコン、コンピュータ等の専用のハードウェアであって、上位コントローラ10は、それぞれの高周波インバータが出力する電圧を決定する交流電圧指令を出力する。交流電圧指令とは、周波数、振幅、位相、タイミング等の出力させる交流電圧の電圧仕様の指令をいう。
【0047】
<第二の送電装置>
図2において、第二の送電装置2bは、第三及び第四の高周波インバータ11b,12bと、第三及び第四の共振コンデンサ21b,22bと、第三及び第四の送電用コイル41b,42bと、を備える。第二の送電装置2bは、車体4に搭載されており、車輪5に搭載される第二の受電装置3bに非接触給電を行う。
【0048】
第三及び第四の高周波インバータ11b,12bは、車体4に搭載されており、交流電圧指令に基づいて、直流電圧を上位コントローラ10が出力した交流電圧指令に基づく高周波交流電圧に変換して出力する。たとえば、第三及び第四の高周波インバータ11b,12bは、バッテリー等の直流電圧源を備え、該直流電圧源が出力する直流電圧を交流電圧指令により任意の高周波交流電圧に変換して出力する。第三及び第四の高周波インバータ11b,12bは、前述のように、個別に直流電圧源を備えてもよいし、第三及び第四の高周波インバータ11b,12bと並列に接続される外部バッテリー等の直流電圧源から直流電圧の供給を受けてもよい。
【0049】
また、第一から第三の送電装置2a,2b,2cの有する第一から第六の高周波インバータ11a,12a,11b,12b,11c,12cは、ひとつの直流電圧源と並列に接続されていてもよい。この場合、第一から第六の高周波インバータ11a,12a、11b,12b、11c,12cは、それぞれ該直流電圧源から直流電圧の供給を受ける。
【0050】
第一及び第二の高周波インバータ11a,12aと同様に、第二の送電装置2bの有する第三及び第四の高周波インバータ11b,12bは、単相電圧源インバータで構成されていてもよい。
【0051】
第二の送電装置2bの有する第三及び第四の高周波インバータ11b,12bは、それぞれ第三及び第四の共振コンデンサ21b,22bを介して、第三及び第四の送電用コイル41b,42bと接続される。第三及び第四の共振コンデンサ21b,22bの一端と第三及び第四の送電用コイル41b,42bの一端とは、それぞれ接続されており、直列接続回路を構成する。第三及び第四の共振コンデンサ21b,22bの他端と第三及び第四の送電用コイル41b,42bの他端とは、それぞれの第三及び第四の高周波インバータ11b,12bの出力端に接続される。第三及び第四の高周波インバータ11b,12bは、第三及び第四の送電用コイル41b,42bと第三及び第四の共振コンデンサ21b,22bとによって決定されるそれぞれの共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧を出力する。出力された高周波交流電圧は、第三及び第四の送電用コイル41b,42bと第三及び第四の共振コンデンサ21b,22bとを直列接続するそれぞれの直列接続回路に印加される。
【0052】
第三の高周波インバータ11bは、上位コントローラ10が出力する交流電圧指令により、三相交流モータ9′の駆動周波数の半周期ごとに高周波交流電圧と0電圧とを出力する。第四の高周波インバータ12bは、上位コントローラ10が出力する交流電圧指令により、第三の高周波インバータ11bの出力電圧と相補の関係になるように三相交流モータ9′の駆動周波数の半周期ごとに該高周波交流電圧と0電圧を出力する。
【0053】
図3に示すように、第三の高周波インバータ11b及び第四の高周波インバータ12bは、それぞれが非接触給電し得る高周波交流電圧と、三相交流モータ9′を駆動し得る正弦波状のより低い周波数の交流電圧成分とを含有する高周波交流電圧を出力している。また、第三の高周波インバータ11b及び第四の高周波インバータ12bは、それぞれ周期的に運転と停止とを交互に繰り返している。運転とは、図3に示すように、一定期間、矩形波の高周波交流電圧をその振幅を制御しながら出力し、その後の一定期間、0電圧を出力する、という間欠的なサイクルを周期的に繰り返すことをいう。
【0054】
第三の高周波インバータ11bの出力電圧の波形は、負荷となる三相交流モータ9′の第二のステータコイル6bの入力電圧の半周期の間、第三の送電用コイル41bと第三の共振コンデンサ21bとの共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧であって、かつ、第二のステータコイル6bの入力電圧の半周期の包絡線が正弦波の半周期となるような形状の電圧波形となる。そして、第三の高周波インバータ11bは、第二のステータコイル6bの入力電圧の残りの半周期には、0電圧を出力する。第四の高周波インバータ12bは、第三の高周波インバータ11bが高周波交流電圧を出力している期間は0電圧を出力し、第三の高周波インバータ11bが0電圧を出力している期間は該高周波交流電圧と等しい波形の電圧を出力する。
【0055】
第三及び第四の送電用コイル41b、42bは、車体4に搭載されており、車輪5に搭載される第三及び第四の受電用コイル51b,52bとそれぞれ物理的に離間された状態で、相互に対向する位置に配置される送信用コイルである。第三及び第四の高周波インバータ11b,12bと第三及び第四の共振コンデンサ21b,22bとは、それぞれ直列接続回路を構成する。第三及び第四の送電用コイル41b,42bは、第三及び第四の高周波インバータ11b,12bから供給される高周波交流電流により発生する磁束をそれぞれ第三及び第四の受電用コイル51b,52bに結合させることにより、高周波交流電力を、第三及び第四の受電用コイル51b,52bに非接触給電する。
【0056】
<第三の送電装置>
図2において、第三の送電装置2cは、第五及び第六の高周波インバータ11c,12cと、第五及び第六の共振コンデンサ21c,22cと、第五及び第六の送電用コイル41c,42cと、を備える。第三の送電装置2cは、車体4に搭載されており、車輪5に搭載される第三の受電装置3cに非接触給電を行う。
【0057】
第五及び第六の高周波インバータ11c,12cは、車体4に搭載されており、直流電圧を上位コントローラ10が出力した交流電圧指令に基づく高周波交流電圧に変換して出力する。たとえば、第五及び第六の高周波インバータ11c,12cは、バッテリー等の直流電圧源を備え、該直流電圧源が出力する直流電圧を交流電圧指令により任意の高周波交流電圧に変換して出力する。第五及び第六の高周波インバータ11c,12cは、前述のように、個別に直流電圧源を備えてもよいし、第五及び第六の高周波インバータ11c,12cと並列に接続される外部バッテリー等の直流電圧源から直流電圧の供給を受けてもよい。
【0058】
また、第一から第三の送電装置2a,2b,2cの有する第一から第六の高周波インバータ11a,12a,11b,12b,11c,12cは、ひとつの直流電圧源と並列に接続されていてもよい。この場合、第一から第六の高周波インバータ11a,12a、11b,12b、11c,12cは、それぞれ該直流電圧源から直流電圧の供給を受ける。
【0059】
第一から第四の高周波インバータ11a,12a,11b,12bと同様に、第三の送電装置2cの有する第五及び第六の高周波インバータ11c,12cは、単相電圧源インバータで構成されていてもよい。
【0060】
第三の送電装置2cの有する第五及び第六の高周波インバータ11c,12cは、それぞれ第五及び第六の共振コンデンサ21c,22cを介して、第五及び第六の送電用コイル41c,42cと接続される。第五及び第六の共振コンデンサ21c,22cの一端と第五及び第六の送電用コイル41c,42cの一端とは、それぞれ接続されており、直列接続回路を構成する。第五及び第六の共振コンデンサ21c,22cの他端と第五及び第六の送電用コイル41c,42cの他端とは、それぞれの第五及び第六の高周波インバータ11c,12cの出力端に接続される。第五及び第六の高周波インバータ11c,12cは、第五及び第六の送電用コイル41c,42cと第五及び第六の共振コンデンサ21c,22cとによって決定されるそれぞれの共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧を出力する。出力された高周波交流電圧は、第五及び第六の送電用コイル41c,42cと第五及び第六の共振コンデンサ21c,22cとを直列接続するそれぞれの直列接続回路に印加される。
【0061】
第五の高周波インバータ11cは、上位コントローラ10が出力する交流電圧指令により、三相交流モータ9′の駆動周波数の半周期ごとに高周波交流電圧と0電圧とを出力する。第六の高周波インバータ12cは、上位コントローラ10が出力する交流電圧指令により、第五の高周波インバータ11cの出力電圧と相補の関係になるように三相交流モータ9′の駆動周波数の半周期ごとに該高周波交流電圧と0電圧を出力する。
【0062】
図3に示すように、第五の高周波インバータ11c及び第六の高周波インバータ12cは、それぞれが非接触給電し得る高周波交流電圧と、三相交流モータ9′を駆動し得る正弦波状のより低い周波数の交流電圧成分とを含有する高周波交流電圧を出力している。また、第五の高周波インバータ11c及び第六の高周波インバータ12cは、それぞれ周期的に運転と停止とを交互に繰り返している。運転とは、図3に示すように、一定期間、矩形波の高周波交流電圧をその振幅を制御しながら出力し、その後の一定期間、0電圧を出力する、という間欠的なサイクルを周期的に繰り返すことをいう。
【0063】
第五の高周波インバータ11cの出力電圧の波形は、負荷となる三相交流モータ9′の第三のステータコイル6cの入力電圧の半周期の間、第五の送電用コイル41cと第五の共振コンデンサ21cとの共振周波数に近似する周波数の高周波交流電圧であって、かつ、第三のステータコイル6cの入力電圧の半周期の包絡線が正弦波の半周期となるような形状の電圧波形となる。そして、第五の高周波インバータ11cは、第三のステータコイル6cの入力電圧の残りの半周期には、0電圧を出力する。第六の高周波インバータ12cは、第五の高周波インバータ11cが高周波交流電圧を出力している期間は0電圧を出力し、第五の高周波インバータ11cが0電圧を出力している期間は該高周波交流電圧と等しい波形の電圧を出力する。
【0064】
第五及び第六の送電用コイル41c,42cは、車体4に搭載されており、車輪5に搭載される第五及び第六の受電用コイル51c,52cとそれぞれ物理的に離間された状態で、相互に対向する位置に配置される送信用コイルである。第五及び第六の高周波インバータ11c,12cと第五及び第六の共振コンデンサ21c,22cとは、それぞれ直列接続回路を構成する。第五及び第六の送電用コイル41c,42cは、第五及び第六の高周波インバータ11c,12cから供給される高周波交流電流により発生する磁束をそれぞれ第五及び第六の受電用コイル51c,52cに結合させることにより、高周波交流電力を、第五及び第六の受電用コイル51c,52cに非接触給電する。
【0065】
<第二の受電装置>
図2において、第二の受電装置3bは、第三及び第四の受電用コイル51b,52bと、第三及び第四の受電用共振コンデンサ31b,32bと、第三及び第四の整流ダイオード81b,82bと、第三及び第四の平滑コンデンサ71b,72bと、を備える。第二の受電装置3bは、車輪5に搭載されており、第二の送電装置2bからの非接触給電により誘起された高周波交流電流を整流する。第二の受電装置3bは、車輪5に搭載された電子回路部品を搭載した電子回路基板上に実現される。
【0066】
第三及び第四の受電用コイル51b,52bは、車輪5に搭載されており、第三及び第四の送電用コイル41b,42bからの非接触給電により、それぞれ高周波交流電流が誘起される。
【0067】
第三及び第四の受電用コイル51b,52bは、第三及び第四の送電用コイル41b,42bとほぼ同等の形状を有する。第三及び第四の受電用コイル51b,52bの数は、第三及び第四の送電用コイル41b,42bの数と同数である。第三及び第四の送電用コイル41b,42bと第三及び第四の受電用コイル51b,52bとは、たとえば、それぞれ数cmから数10cmほど物理的に離間された状態で、かつほぼ相互に対向する位置に配置される。第三及び第四の受電用コイル51b,52bには、それぞれ第三及び第四の受電用共振コンデンサ31b,32bが直列接続される。
【0068】
第三及び第四の整流ダイオード81b,82bは、車輪5に搭載されている。第三の整流ダイオード81bのカソードは、一端が第三の受電用コイル51bの出力端子に接続される第三の受電用共振コンデンサ31bの他端、と接続されており、第三の整流ダイオード81bのアノードは、一端が第三の受電用共振コンデンサ31bと接続されていない側の第三の受電用コイル51bの他端と接続される。また、第四の整流ダイオード82bのアノードは、一端が第四の受電用コイル52bの出力端子に接続される第四の受電用共振コンデンサ32bの他端、と接続されており、第四の整流ダイオード82bのカソードは、一端が第四の受電用共振コンデンサ32bと接続されていない側の第四の受電用コイル52bの他端と接続される。また、第三の整流ダイオード81bのアノードと第四の整流ダイオード82bのアノードは接続される。
【0069】
第三の整流ダイオード81bは、第三の受電用コイル51bに誘起された高周波交流電流を、正の電流に整流する。第四の整流ダイオード82bは、第四の受電用コイル52bに誘起された高周波交流電流を、負の電流に整流する。
【0070】
第二の受電装置3bは、特許文献1に開示された非接触給電技術により、第三及び第四の整流ダイオード81b,82bの両端に、第三及び第四の受電用コイル51b,52bと、第三及び第四の受電用共振コンデンサ31b,32bとによって決定されるそれぞれの共振周波数と等しい周波数の高周波交流電圧を発生させる。ここで、第三の整流ダイオード81b及び第四の整流ダイオード82bの両端に発生する電圧Va,Vbは、図3に示すように、三相交流モータ9′を駆動し得る正弦波状のより低い周波数の交流電圧成分を含有する、間欠的な高周波交流電圧である。第三の整流ダイオード81bは、第三の整流ダイオード81bの両端に発生する高周波交流電圧Vaを正の電圧に整流する。また、第四の整流ダイオード82bは、第四の整流ダイオード82bの両端に発生する高周波交流電圧Vbを負の電圧に整流する。
【0071】
第三の整流ダイオード81bと並列に第三の平滑コンデンサ71bが接続される。さらに第四の整流ダイオード82bと並列に第四の平滑コンデンサ72bが接続される。第三の平滑コンデンサ71bは、第三の整流ダイオード81bにより整流された段階では変動のある正の直流電圧を、一定の大きさの安定した直流電圧に変換する。第四の平滑コンデンサ72bは、第四の整流ダイオード82bにより整流された段階では変動のある負の直流電圧を、一定の大きさの安定した直流電圧に変換する。
【0072】
以上のとおり、正弦波状のより低い周波数の交流電圧成分を含有する、間欠的な高周波交流電圧は、第二の受電装置3bが有する第三及び第四の整流ダイオード81b,82b、第三及び第四の平滑コンデンサ71b,72b等により構成される受動素子回路を介することにより、三相交流モータ9′を駆動し得る正弦波状のより低い周波数のモータ駆動用の交流電圧に合成され、これが三相交流モータ9′の第二のステータコイル6bに印加される。
【0073】
<第三の受電装置>
図2において、第三の受電装置3cは、第五及び第六の受電用コイル51c,52cと、第五及び第六の受電用共振コンデンサ31c,32cと、第五及び第六の整流ダイオード81c,82cと、第五及び第六の平滑コンデンサ71c,72cと、を備える。第三の受電装置3cは、車輪5に搭載されており、第三の送電装置2cから非接触給電により誘起された高周波交流電流を整流する。第三の受電装置3cは、車輪5に搭載された電子回路部品を搭載した電子回路基板により実現される。
【0074】
第五及び第六の受電用コイル51c,52cは、車輪5に搭載されており、第五及び第六の送電用コイル41c,42cからの非接触給電により、それぞれ高周波交流電流が誘起される。
【0075】
第五及び第六の受電用コイル51c,52cは、第五及び第六の送電用コイル41c,42cとほぼ同等の形状を有する。第五及び第六の受電用コイル51c,52cの数は、第五及び第六の送電用コイル41c,42cの数と同数である。第五及び第六の送電用コイル41c,42cと第五及び第六の受電用コイル51c,52cとは、たとえば、それぞれ数cmから数10cmほど物理的に離間された状態で、かつほぼ相互に対向する位置に配置される。第五及び第六の受電用コイル51c,52cには、それぞれ第五及び第六の受電用共振コンデンサ31c,32cが直列接続される。
【0076】
第五及び第六の整流ダイオード81c,82cは、車輪5に搭載されている。第五の整流ダイオード81cのカソードは、一端が第五の受電用コイル51cの出力端子に接続される第五の受電用共振コンデンサ31cの他端、と接続されており、第五の整流ダイオード81cのアノードは、一端が第五の受電用共振コンデンサ31cと接続されていない側の第五の受電用コイル51cの他端と接続される。また、第六の整流ダイオード82cのアノードは、一端が第六の受電用コイル52cの出力端子に接続される第六の受電用共振コンデンサ32cの他端、と接続されており、第六の整流ダイオード82cのカソードは、一端が第六の受電用共振コンデンサ32cと接続されていない側の第六の受電用コイル52cの他端と接続される。また、第五の整流ダイオード81cのアノードと第六の整流ダイオード82cのアノードは接続される。
【0077】
第五の整流ダイオード81cは、第五の受電用コイル51cに誘起された高周波交流電流を、正の電流に整流する。第六の整流ダイオード82cは、第六の受電用コイル52cに誘起された高周波交流電流を、負の電流に整流する。
【0078】
第三の受電装置3cは、特許文献1に開示された非接触給電技術により、第五及び第六の整流ダイオード81c,82cの両端に、第五及び第六の受電用コイル51c,52cと、第五及び第六の受電用共振コンデンサ31c,32cとによって決定されるそれぞれの共振周波数と等しい周波数の高周波交流電圧を発生させる。ここで、第五の整流ダイオード81c及び第六の整流ダイオード82cの両端に発生する電圧Va,Vbは、図3に示すように、三相交流モータ9′を駆動し得る正弦波状のより低い周波数の交流電圧成分を含有する、間欠的な高周波交流電圧である。第五の整流ダイオード81cは、第五の整流ダイオード81cの両端に発生する高周波交流電圧Vaを正の電圧に整流する。また、第六の整流ダイオード82cは、第六の整流ダイオード82cの両端に発生する高周波交流電圧Vbを負の電圧に整流する。
【0079】
第五の整流ダイオード81cと並列に第五の平滑コンデンサ71cが接続される。さらに第六の整流ダイオード82cと並列に第六の平滑コンデンサ72cが接続される。第五の平滑コンデンサ71cは、第五の整流ダイオード81cにより整流された段階では変動のある正の直流電圧を、一定の大きさの安定した直流電圧に変換する。第六の平滑コンデンサ72cは、第六の整流ダイオード82cにより整流された段階では変動のある負の直流電圧を、一定の大きさの安定した直流電圧に変換する。
【0080】
以上のとおり、正弦波状のより低い周波数の交流電圧成分を含有する、間欠的な高周波交流電圧は、第三の受電装置3cが有する第五及び第六の整流ダイオード81c,82c、第五及び第六の平滑コンデンサ71c,72c等により構成される受動素子回路を介することにより、三相交流モータ9′を駆動し得る正弦波状のより低い周波数のモータ駆動用の交流電圧に合成され、これが三相交流モータ9′の第三のステータコイル6cに印加される。
【0081】
<三相交流モータ>
本実施形態に係る三相交流モータ9′は、第一のステータコイル6aと同一の構成を有する第二及び第三のステータコイル6b,6cを更に有し、第一から第三のステータコイル6a,6b,6cは、三相デルタ結線される。図2の符号9′を付して示す破線で囲まれた回路は、モータ駆動システム1′の負荷となる三相交流モータ9′の第一から第三のステータコイル6a,6b,6cの等価回路を示している。三相交流モータ9′の有する第一、第二及び第三のステータコイル6a,6b,6cは、U相、V相、W相と定義された3相のコイルであり、U相のステータコイルが符号6a、V相のステータコイルが符号6b、W相のステータコイルが符号6cで表記されている。第一、第二及び第三のステータコイル6a,6b,6cはそれぞれ中性点96a,96b,96cを有し、該中性点は三相交流モータ9′の入力線として三相交流モータ9′の外部にその入力端子が引き出されている。
【0082】
ここで、三相交流モータ9′の巻線の結線方法は三相デルタ結線としている。たとえば、図2に示すように、三相交流モータ9′のU相の一方の入力端子は、第一の整流ダイオード81aのカソードに接続され、三相交流モータ9′のU相の中性点(96a)は、第一の整流ダイオード81aのアノード及び第二の整流ダイオード82aのアノードに接続され、三相交流モータ9′のもう一方のU相入力端子は、第二の整流ダイオード82aのカソードに接続される。のこりのV相、W相の入力端子についても同様に結線される。
【0083】
すなわち、三相デルタ結線される第一から第三のステータコイル6a,6b,6cの中性点96a,96b,96cは、それぞれ第一及び第二の整流ダイオード81a,82aのアノード、第三及び第四の整流ダイオード81b,82bのアノード、及び第五及び第六の整流ダイオード81c,82cのアノード、と接続されている。
【0084】
上述のとおり、第一及び第二の高周波インバータ11a,12a、第三及び第四の高周波インバータ11b,12b、及び第五及び第六の高周波インバータ11c,12cは、上位コントローラ10が出力した交流電圧指令により、それぞれ周期的に運転と停止とを交互に繰り返している。運転とは、たとえば図3に示すように、一定期間、矩形波の高周波交流電圧をその振幅を制御しながら出力し、その後の一定期間、0電圧を出力する、というサイクルを周期的に繰り返すことをいう。
【0085】
そして、第一及び第二の送電用コイル41a,42a、第三及び第四の送電用コイル41b,42b、及び第五及び第六の送電用コイル41c,42cからの非接触給電を受けた、第一及び第二の受電用コイル51a,52a、第三及び第四の受電用コイル51b,52b、及び第五及び第六の受電用コイル51c,52cには、それぞれ高周波交流電流が誘起される。さらに、第一から第六の受電用コイル51a,52a,51b,52b,51c,52cに誘起されたそれぞれの高周波交流電流は、第一から第六の整流ダイオード81a,82a,81b,82b,81c,82cのそれぞれに供給される。
【0086】
第一から第三のステータコイル6a,6b,6cを三相デルタ結線する三端子のそれぞれの端子には、第一の整流ダイオード81aによって整流された正の電流及び第六の整流ダイオード82cによって整流された負の電流と、第三の整流ダイオード81bによって整流された正の電流及び第二の整流ダイオード82aによって整流された負の電流と、第五の整流ダイオード81cによって整流された正の電流及び第四の整流ダイオード82bによって整流された負の電流と、がそれぞれ供給される。第一から第三のステータコイル6a,6b,6cを三相デルタ結線する三端子のそれぞれの端子に印加される電圧は、図4に示す電圧Vcように、正の電圧と負の電圧とが合成された正弦波交流電圧となる。
【0087】
上位コントローラ10は、第一から第六の高周波インバータ11a,12a,11b,12b,11c,12cのそれぞれに交流電圧指令を出力することにより、三相交流モータ9′に供給する三相の正弦波交流電流(正の電流と負の電流が合成されている交流電流)を生成させ、三相交流モータ9′を制御する。上位コントローラ10の制御に基づいて生成された三相の正弦波交流電流は、三相デルタ結線された第一から第三のステータコイル6a,6b,6cに供給される。第一から第三のステータコイル6a,6b,6cは、三相の正弦波交流電流が流れると磁界を発生させることにより、ロータ93を回転させる。三相交流モータ9′は、フレミングの右手の法則に従って回転する。
【0088】
第一、第三及び第五の整流ダイオード81a,81b,81cによって整流された三相の正弦波交流電流を構成する正の電流は、それぞれが供給されるステータコイルの中性点96a,96b,96cを介して、第一、第三及び第五の受電用コイル51a,51b,51cに環流し、第二、第四及び第六の整流ダイオード82a,82b,82cによって整流された三相の正弦波交流電流を構成する負の電流は、それぞれが供給されるステータコイルの中性点96a,96b,96cを介して、第二、第四及び第六の受電用コイル52a,52b,52cに環流する電流経路をとる。
【0089】
従来、第一から第三のステータコイル6a,6b,6cのインダクタンスが磁気飽和により低下すると、過電流が流れることにより、三相交流モータ9′が焼損するという問題があった。しかし、各相の電流の直流成分が三相デルタ結線された第一から第三のステータコイル6a,6b,6c間を環流する本実施形態によれば、かかる三相交流モータ9′の焼損の発生を防止することができる。
【0090】
本開示に係るモータ駆動システム1′は、第一から第六の高周波インバータ11a,12a,11b,12b,11c,12cが、それぞれが非接触給電し得る高周波交流電圧と、三相交流モータ9′を駆動し得る正弦波状のより低い周波数の交流電圧成分を含有する高周波交流電圧を間欠的に出力し、かかる間欠的な高周波交流電圧が、第一から第三の受電装置3a,3b,3cが有する受動素子回路を介することにより、三相交流モータ9′を駆動し得る正弦波状のより低い周波数のモータ駆動用の交流電圧に合成する。該モータ駆動用の交流電圧により、三相交流モータ9′の駆動が可能となることを特徴とする。
【0091】
本実施形態に係るモータ駆動システム1′によれば、車輪5に搭載する電子回路基板に高信頼性を要求される能動的な電子回路部品を搭載することなく、三相交流モータ9′にモータ駆動用の交流電力を非接触給電することが可能となる。
【0092】
本実施形態に係るモータ駆動システム1′によれば、車輪5側に搭載する電子回路基板に能動的な電子回路部品を搭載しないため、車輪5側に搭載される該電子回路基板を小型化することが可能であり、高い安全性が要求される電気自動車(EV)等の車輪を4輪独立に制御することが容易となる。
【0093】
本実施形態に係るモータ駆動システム1′によれば、各相の電流の直流成分が三相デルタ結線されたステータコイル間を環流するため、ステータコイルの磁気飽和によるインダクタンス低下を防止することが可能となる。これにより、インダクタンス低下に伴う過電流に起因する三相交流モータ9′の焼損を防止することが可能となる。
【0094】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。たとえば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1,1′ モータ駆動システム
2a 第一の送電装置
2b 第二の送電装置
2c 第三の送電装置
3a 第一の受電装置
3b 第二の受電装置
3c 第三の受電装置
4 車体
5 車輪
6a 第一のステータコイル(U相のステータコイル)
6b 第二のステータコイル(V相のステータコイル)
6c 第三のステータコイル(W相のステータコイル)
9 交流モータ
9′ 交流モータ(三相交流モータ)
10 上位コントローラ
11a 第一の高周波インバータ
12a 第二の高周波インバータ
11b 第三の高周波インバータ
12b 第四の高周波インバータ
11c 第五の高周波インバータ
12c 第六の高周波インバータ
21a 第一の共振コンデンサ
22a 第二の共振コンデンサ
21b 第三の共振コンデンサ
22b 第四の共振コンデンサ
21c 第五の共振コンデンサ
22c 第六の共振コンデンサ
31a 第一の受電用共振コンデンサ
32a 第二の受電用共振コンデンサ
31b 第三の受電用共振コンデンサ
32b 第四の受電用共振コンデンサ
31c 第五の受電用共振コンデンサ
32c 第六の受電用共振コンデンサ
41a 第一の送電用コイル
42a 第二の送電用コイル
41b 第三の送電用コイル
42b 第四の送電用コイル
41c 第五の送電用コイル
42c 第六の送電用コイル
51a 第一の受電用コイル
52a 第二の受電用コイル
51b 第三の受電用コイル
52b 第四の受電用コイル
51c 第五の受電用コイル
52c 第六の受電用コイル
71a 第一の平滑コンデンサ
72a 第二の平滑コンデンサ
71b 第三の平滑コンデンサ
72b 第四の平滑コンデンサ
71c 第五の平滑コンデンサ
72c 第六の平滑コンデンサ
81a 第一の整流ダイオード
82a 第二の整流ダイオード
81b 第三の整流ダイオード
82b 第四の整流ダイオード
81c 第五の整流ダイオード
82c 第六の整流ダイオード
91 アウターステータ
92 インナーステータ
93 ロータ
94 第一のコイル巻線
95 第二のコイル巻線
96,96a,96b,96c 中性点
図1
図2
図3
図4
図5