(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099995
(43)【公開日】2023-07-14
(54)【発明の名称】ポリエチレン樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
C08F 10/02 20060101AFI20230707BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230707BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20230707BHJP
C08F 2/18 20060101ALI20230707BHJP
C08F 2/34 20060101ALI20230707BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
C08F10/02
C08L23/08
C08L23/06
C08F2/18
C08F2/34
C08J5/18 CES
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197369
(22)【出願日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0000945
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0124247
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522318173
【氏名又は名称】ハンファ トータルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TOTALENERGIES PETROCHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】103,Dokgot-2-ro, Daesan-eup, Seosan-si, Chungcheongnam-do 31900, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヒ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】パク ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジョン クン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA16
4F071AA19
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4J100FA21
4J100FA22
4J100FA34
4J100FA39
4J100FA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】延伸時の加工性に優れており、延伸可能な温度範囲が広いポリエチレン樹脂組成物及びその製造方法並びに当該組成物から得られる成形品を提供する。
【解決手段】第1の反応器及び第2の反応器を連続して用いて形成されたポリエチレン樹脂を含み、第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、180℃でゼロせん断粘度(η01st)が106ポイズ~108ポイズであり、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB1st)が5.0~20であり、第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の180℃でゼロせん断粘度比(η01st/η02nd)は、10~100であり、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数の比(SCB1st/SCB2nd)は、2~20であり、密度差(D2nd-D1st)は、0.01g/cm3~0.05g/cm3である組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の反応器及び第2の反応器を連続して用いて形成されたポリエチレン樹脂を含み、
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、180℃でARESレオメーターによるゼロせん断粘度(η01st)が106ポイズ~108ポイズであり、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB1st)が5~20であり、
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の180℃でARESレオメーターによるゼロせん断粘度比(η01st/η02nd)は、10~100であり、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数の比(SCB1st/SCB2nd)は、2~20であり、密度差(D2nd-D1st)は、0.01g/cm3~0.05g/cm3である、ポリエチレン樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度(D1st)は、0.915g/cm3~0.935g/cm3であり、
前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度(D2nd)は、0.945g/cm3~0.965g/cm3である、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項3】
前記第1の反応器でポリエチレン樹脂の形成時、コモノマーは、C2に対して10~150のg/kg供給比で供給される、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項4】
前記第1の反応器でポリエチレン樹脂の形成時、H2は、C2に対して10~100のmg/kg供給比で供給される、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1の反応器で形成されるポリエチレン樹脂の溶融温度(Tm)は、110℃~126℃であってもよく、溶融温度(Tm)と結晶化温度(Tc)の差(Tm-Tc)は、10℃~15℃である、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項6】
前記第2の反応器内でポリエチレン樹脂の形成時、H2は、C2に対して0.4~0.7のモル%/重量%の供給比で供給される、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項7】
前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、180℃でARESレオメーターによるゼロせん断粘度(η02nd)が9.0×104ポイズ~7.0×105ポイズである、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項8】
前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB2nd)が1.0~5.0である、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項9】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の重量比は、45~55:55~45である、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリエチレン樹脂組成物の密度は、0.945g/cm3~0.970g/cm3である、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリエチレン樹脂組成物の溶融指数は、190℃で2.16kgロード条件で0.4g/10分~3.0g/10分であり、190℃で5kgロード条件で2.0g/10分~10g/10分である、請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項12】
第1の反応器及び第2の反応器を連続して用いてポリエチレン樹脂を製造する段階を含み、
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、180℃でARESレオメーターによるゼロせん断粘度(η01st)が106ポイズ~108ポイズであり、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB1st)が5.0~20であり、
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の180℃でARESレオメータによるゼロせん断粘度比(η01st/η02nd)は、10~100であり、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数の比(SCB1st/SCB2nd)は、2~20であり、密度差(D2nd-D1st)は、0.01g/cm3~0.05g/cm3である、ポリエチレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリエチレン樹脂組成物を含む、成形品。
【請求項14】
前記成形品は、テンターフレーム(tenter-frame)工程により縦方向(MD)延伸率が4倍~6倍に、横方向(TD)延伸率が8倍~10倍に逐次二軸延伸されたフィルムである、請求項13に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリエチレン樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、全世界的にリサイクルに対する規制が強化され、企業固有の持続可能性に対する社会的責任及び広範囲な環境問題解決に対する意識の変化により、軟包装材料について収集、分類及びリサイクルに適するようにデザイン設計が要求されている。このための最も効果的な方案として従来の色々な素材を混用して使用していた包装材を単一素材として使用することにより、特にポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)の単一素材を適用した包装材を適用することにより、リサイクルが容易でリサイクルされた製品の品質を向上させるのに寄与できるようになる。
【0003】
しかし、一般的にブローイングまたはキャスト工程で製造されるポリエチレンフィルムは、単一素材に適用して従来のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリアミド(PA)フィルムなどの基材フィルムを単純代替するには機械的物性が多少低下するという問題が提起された。このために二軸配向(biaxially oriented)ポリエチレン(BOPE)フィルムの適用が要求される。前記二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルム製造工程においてフィルムを縦方向及び横方向に延伸する場合、ポリエチレンチェーンと結晶構造を高度に配向させることにより、より優れた機械的強度、特に衝撃強度が向上し、透明性、フィルム外観などの光学的特性が画期的に改善される。
【0004】
二軸延伸フィルムを製造する方法としては、テンターフレーム工程とチューブラー延伸方法を含む。テンターフレーム工程は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート及びポリアミドなどの汎用的な二軸延伸フィルムを加工するために使用されてきた。チューブラー延伸法と比較すると、テンターフレーム工程は延伸率がより高く、成形速度がより速く、生産効率もより速いという長所があり、製造された二軸延伸フィルムも厚さ均一性が良好で機械的物性及び光学特性に優れたフィルムを提供する。
【0005】
しかし、テンターフレーム工程の場合、フィルム加工は、原料の分子構造によって大きく影響され、延伸工程の条件が非常に厳しい。特に一般的なポリエチレンは、結晶化速度が速く、結晶性が高くて延伸可能な温度範囲が狭く、延伸率が非常に低く、延伸中においてしわが発生するか、または厚さが均一でなければ、結局、延伸時にフィルムが破れてしまう現象が発生する。したがって、延伸率の高いBOPEフィルムを製造するためのテンターフレーム工程に適したポリエチレン樹脂組成物に対する原料の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一具現例では、テンターフレーム(tenter frame)工程を用いて縦方向(MD)に6倍及び横方向(TD)に10倍まで逐次二軸延伸が可能であり、延伸時の加工性に優れており、延伸可能な温度範囲が広いポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【0007】
他の一具現例では、前記ポリエチレン樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0008】
さらに他の一具現例では、前記ポリエチレン樹脂組成物を含む成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一具現例では、第1の反応器及び第2の反応器を連続して用いて形成されたポリエチレン樹脂を含み、前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、180℃でARESレオメーターによるゼロせん断粘度(η01st)が106ポイズ~108ポイズであり、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB1st)が5.0~20であり、前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の180℃でARESレオメーターによるゼロせん断粘度比(η01st/η02nd)は、10~100であり、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数の比(SCB1st/SCB2nd)は、2~20であり、密度差(D2nd-D1st)は、0.01g/cm3~0.05g/cm3のポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【0010】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度(D1st)は、0.915g/cm3~0.935g/cm3であってもよく、前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度(D2nd)は、0.945g/cm3~0.965g/cm3であってもよい。
【0011】
前記第1の反応器でポリエチレン樹脂の形成時、コモノマーは、C2に対して10~150のg/kg供給比で供給されてもよい。
【0012】
前記第1の反応器でポリエチレン樹脂の形成時、H2は、C2に対して10~100のmg/kg供給比で供給されてもよい。
【0013】
前記第1の反応器で形成されるポリエチレン樹脂の溶融温度(Tm)は、110℃~126℃であってもよく、溶融温度(Tm)と結晶化温度(Tc)の差(Tm-Tc)は、10℃~15℃であってもよい。
【0014】
前記第2の反応器でポリエチレン樹脂の形成時、H2は、C2に対して0.4~0.7のモル%/重量%の供給比で供給されてもよい。
【0015】
前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、180℃でARESレオメーターによるゼロせん断粘度(η02nd)が9.0×104ポイズ~7.0×105ポイズであってもよい。
【0016】
前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB2nd)が1.0~5.0であってもよい。
【0017】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の重量比は、45~55:55~45であってもよい。
【0018】
前記ポリエチレン樹脂組成物の密度は、0.945g/cm3~0.970g/cm3であってもよい。
【0019】
前記ポリエチレン樹脂組成物の溶融指数は、190℃で2.16kgロード条件で0.4g/10分~3.0g/10分であり、190℃で5kgロード条件で2.0g/10分~10g/10分であってもよい。
【0020】
他の一具現例では、第1の反応器及び第2の反応器を連続して用いてポリエチレン樹脂を製造する段階を含み、前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、180℃でARESレオメーターによるゼロせん断粘度(η01st)が106ポイズ~108ポイズであり、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB1st)が5.0~20であり、前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の180℃でARESレオメータによるゼロせん断粘度比(η01st/η02nd)は、10~100であり、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数の比(SCB1st/SCB2nd)は、2~20であり、密度差(D2nd-D1st)は、0.01g/cm3~0.05g/cm3であるポリエチレン樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0021】
さらに他の一具現例では、前記ポリエチレン樹脂組成物を含む成形品を提供する。
【0022】
前記成形品は、テンターフレーム(tenter-frame)工程により縦方向(MD)延伸率が4倍~6倍に、横方向(TD)延伸率が8倍~10倍に逐次二軸延伸されたフィルムであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
一具現例によるポリエチレン樹脂組成物は、テンターフレーム(tenter-frame)工程により縦方向(MD)への延伸率が6倍及び横方向(TD)への延伸率が10倍まで逐次二軸延伸が可能であり、延伸時の加工性に優れており、延伸可能な温度範囲が広いので、優れた延伸特性を有する。これにより、透明性が向上し、機械的強度の高い最終フィルムを確保しうる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、具現例について、技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、具現例は、様々な異なる形態で具現されてもよく、ここで説明する具現例に限定されるものではない。
【0025】
一具現例によるポリエチレン樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂を含む。前記ポリエチレン樹脂は、互いに連結された第1の反応器及び第2の反応器からなる二段反応器を用いて重合を通じて形成されてもよい。具体的に、前記第1の反応器で重合して一次的にポリエチレン樹脂が形成され、このときに得られたポリエチレン樹脂は、前記第2の反応器に移して、ここでも重合して二次的にポリエチレン樹脂を得ることができる。前記第1の反応器及び第2の反応器は、スラリープロセスであってもよい。
【0026】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂よりも密度の低い低密度のポリエチレン樹脂であってもよく、前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂よりも密度の高い高密度のポリエチレン樹脂であってもよい。
【0027】
具体的に、前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度(D1st)は、0.915g/cm3~0.935g/cm3であってもよく、例えば、0.920g/cm3~0.935g/cm3であってもよい。第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度が前記範囲内の場合、最終フィルムは縦方向、横方向に安定的に逐次二軸延伸が可能で、延伸比率を向上させることができる。
【0028】
また、前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度(D2nd)は、0.945g/cm3~0.965g/cm3であってもよく、例えば、0.945g/cm3~0.960g/cm3であってもよい。第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度が前記範囲内の場合、延伸されたフィルムのモジュラスに優れており、熱安定性が向上する。
【0029】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、180℃でARESレオメーターによるゼロせん断粘度(η01st)が106ポイズ(poise)~108ポイズであってもよく、例えば、106ポイズ~107ポイズであってもよい。第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂が前記範囲内のゼロせん断粘度を有する場合、最終形成されたポリエチレン樹脂の機械的強度を向上させることができる。
【0030】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、13C-NMRによる炭素1000個当たりの短鎖分岐(short chain branch)数(SCB1st)が5~20であってもよく、例えば、5~15であってもよい。第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂が前記範囲内の短鎖分岐数を有する場合、テンターフレーム(tenter frame)工程を用いた最終フィルムの逐次二軸延伸工程において縦方向及び横方向の延伸率を高め、機械的強度の高い最終フィルムを得ることができる。
【0031】
前記第1の反応器でポリエチレン樹脂の形成時、コモノマーを供給して一緒に重合させることができる。前記コモノマーとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。前記コモノマーは、前記第1の反応器にC2に対して10~150のg/kg供給比で供給されてもよく、例えば、30~100のg/kg供給比で供給されてもよい。コモノマーが第1の反応器に前記範囲内の供給比で供給される場合、反応器のプラッギング及びファウリングが形成されるおそれがなく、最終フィルムの二軸延伸工程において縦方向及び横方向の延伸率を高め、機械的強度の高い最終フィルムを得ることができる。
【0032】
また、前記第1の反応器でポリエチレン樹脂の形成時、H2を供給して一緒に重合させることができる。前記H2は、第1の反応器にC2に対して10~100のmg/kg供給比で供給されてもよく、例えば、20~60のg/kg供給比で供給されてもよい。H2が第1の反応器に前記範囲内の供給比で供給される場合、反応器のプラッギング及びファウリングが形成されるおそれがなく、最終フィルムの二軸延伸工程において縦方向及び横方向の延伸率を高め、機械的強度の高い最終フィルムを得ることができる。
【0033】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の溶融温度(Tm)は、110℃~126℃であってもよく、例えば、120℃~126℃であってもよい。第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の溶融温度が前記範囲内の場合、最終フィルムの二軸延伸工程において延伸特性を向上させることができる。
【0034】
また、前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の溶融温度(Tm)と結晶化温度(Tc)の差(Tm-Tc)は、10℃~15℃であってもよく、例えば、10℃~12℃であってもよい。第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の溶融温度と結晶化温度の差が前記範囲内の場合、最終フィルムの延伸可能な温度範囲が広がることがある。
【0035】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の高負荷溶融流れ指数(high load melt index,HLMI)(21.6kg荷重、190℃)は、0.1~10未満であってもよく、例えば、1.0~8.0であってもよい。第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の溶融流れ指数が前記範囲内の場合、最終形成されたポリエチレン樹脂の機械的強度を向上させることができる。
【0036】
前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、180℃でARESレオメーターによるゼロせん断粘度(η02nd)が9.0×104ポイズ~7.0×105ポイズであってもよく、例えば、9.0×104ポイズ~5.0×105ポイズであってもよい。第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂が前記範囲内のゼロせん断粘度を有する場合、最終形成されたポリエチレン樹脂の機械的強度を向上させることができる。
【0037】
前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂は、13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB2nd)が1.0~5.0の範囲であってもよく、例えば、2.0~4.0であってもよい。第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂が前記範囲内の短鎖分岐数を有する場合、テンターフレーム(tenter-frame)工程を用いた最終フィルムの逐次二軸延伸工程において縦方向及び横方向の延伸率を高め、機械的強度の高い最終フィルムを得ることができる。
【0038】
前記第2の反応器でポリエチレン樹脂の形成時、コモノマーを供給して一緒に重合させることができる。前記コモノマーとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。前記コモノマーは、前記第2の反応器にC2に対して0~30のg/kg供給比で供給されてもよく、例えば、0~20のg/kg、1~20のg/kg供給比で供給されてもよい。コモノマーが第2の反応器に前記範囲内の供給比で供給される場合、反応器のプラッギング及びファウリングが形成されるおそれがなく、最終フィルムの二軸延伸工程において縦方向及び横方向の延伸率を高め、機械的強度の高い最終フィルムを得ることができる。
【0039】
また、前記第2の反応器でポリエチレン樹脂の形成時、H2を供給して一緒に重合させることができる。前記H2は、前記第2の反応器にC2に対して0.4~0.7のモル%/重量%の供給比で供給されてもよく、例えば、0.45~0.65のモル%/重量%の供給比で供給されてもよい。H2が第2の反応器に前記範囲内の供給比で供給される場合、反応器のプラッギング及びファウリングが形成されるおそれがなく、最終フィルムの二軸延伸工程において縦方向及び横方向の延伸率を高め、機械的強度の高い最終フィルムを得ることができる。
【0040】
前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は2~10であってもよく、例えば、2.5~8.5であってもよい。第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の溶融流れ指数が前記範囲内の場合、安定的なフィルム押出加工性を確保することができ、最終フィルムの機械的物性を向上させることができる。
【0041】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の180℃でARESレオメータによるゼロせん断粘度比(η01st/η02nd)は、10~100であってもよく、例えば、10~30であってもよい。第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂のゼロせん断粘度比が前記範囲内の場合、最終フィルムのモジュラスが増加し、フィルム押出時の圧力負荷による表面粗さの減少によりフィルムの透明性を向上させることができる。
【0042】
また、前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の13C-NMRによる炭素1000個あたりの短鎖分岐数の比(SCB1st/SCB2nd)は、2~20であってもよく、例えば、2~10であってもよい。第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の短鎖分岐数の比が前記範囲内の場合、最終フィルムの二軸延伸工程において縦方向及び横方向の延伸率を高め、優れた機械的強度を確保しうる。
【0043】
また、前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度差(D2nd-D1st)は、0.01g/cm3~0.05g/cm3であってもよく、例えば、0.015g/cm3~0.03g/cm3であってもよい。第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度差が前記範囲内の場合、最終フィルムの二軸延伸工程において縦方向及び横方向の延伸率を高め、優れた機械的強度を確保しうる。
【0044】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の重量比は、45~55:55~45であってもよく、例えば、47~52:53~48であってもよい。第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の重量比が前記範囲内の場合、生産効率が向上し、最終フィルムの二軸延伸工程において縦方向及び横方向の延伸率を高め、フィルムの破れを防止しうる。
【0045】
前記方法で形成された最終ポリエチレン樹脂、すなわち、各所定範囲のゼロせん断粘度(η01st)、短鎖分岐数(SCB1st)、ゼロせん断粘度比(η01st/η02nd)、短鎖分岐数の比(SCB1st/SCB2nd)及び密度差(D2nd-D1st)で形成されたポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂組成物は、テンターフレーム(tenter frame)工程により縦方向(MD)への延伸率が6倍及び横方向(TD)への延伸率が10倍まで逐次二軸延伸が可能で、延伸時の加工性に優れており、延伸可能な温度範囲が広く、優れた延伸特性を持つことができる。
【0046】
一具現例によるポリエチレン樹脂組成物の密度は、0.945g/cm3~0.970g/cm3であってもよく、例えば、0.945g/cm3~0.965g/cm3であってもよい。前記ポリエチレン樹脂組成物の密度が前記範囲内の場合、最終フィルムの熱安定性に優れており、モジュラスが増加するだけでなく透明性を向上させることができる。
【0047】
前記ポリエチレン樹脂組成物の溶融指数は、190℃で2.16kgロード条件で0.40g/10分~3.0g/10分であってもよく、例えば、0.49g/10分~2.3g/10分であってもよい。また、前記ポリエチレン樹脂組成物の溶融指数は、190℃で5kg負荷条件で2.0g/10分~10g/10分であってもよく、例えば、2.5g/10分~8.5g/10分であってもよい。前記ポリエチレン樹脂組成物の溶融指数が前記範囲内の場合、押出加工性に優れており、低分子による物性の低下を防止しうる。
【0048】
一具現例によるポリエチレン樹脂組成物は、前記ポリエチレン樹脂の他にも酸化防止剤、中和剤、またはそれらの組み合わせを含む添加剤をさらに含んでもよい。
【0049】
前記添加剤は、前記ポリエチレン樹脂組成物100重量部に対して0.005重量部~0.5重量部で含まれてもよい。
【0050】
前記酸化防止剤は、フェノール系化合物、リン系化合物またはそれらの組み合わせを含んでもよい。前記フェノール系化合物は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジテトラブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル(3-(3,5-ジテトラブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリス(3,4-ジテトラブチル-4-ヒドロキシルベンジル)イソシアネート、トリエチレングリコール-ビス(3-(テトラブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート)などが挙げられ、前記リン系化合物は、トリス(2,4-ジテトラブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4-ジフェニルジホスホネート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、2,4-ジノニルフェニルジ(4-モノノニルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0051】
前記酸化防止剤は、前記ポリエチレン樹脂組成物100重量部に対して0.01重量部~0.5重量部で含まれてもよく、例えば、0.1重量部~0.3重量部で含まれてもよい。酸化防止剤が前記含量範囲内で含まれる場合、変色や粘度変化なしに優れた加工性を得ることができる。
【0052】
前記中和剤は、カルシウムステアリン酸、亜鉛ステアリン酸、マグネシウムアルミニウムヒドロキシカーボネート、酸化亜鉛、マグネシウムヒドロキシステアリン酸、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0053】
前記中和剤は、前記ポリエチレン樹脂組成物100重量部に対して0.005重量部~0.3重量部で含まれてもよく、例えば、0.02重量部~0.1重量部で含まれてもよい。前記中和剤が前記含量範囲内に含まれる場合、変色や粘度変化なしに優れた加工性を得ることができる。
【0054】
以下、他の一具現例によって前述したポリエチレン樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0055】
前述したポリエチレン樹脂組成物は、第1の反応器及び第2の反応器を連続して用いて使用してポリエチレン樹脂を製造する段階を含む。
【0056】
具体的に、第1の反応器で重合して相対的に高分子量で低密度のポリエチレン樹脂を製造し、次に前記ポリエチレン樹脂を第2の反応器に移して重合して相対的に低分子量で高密度のポリエチレン樹脂が製造されてもよい。
【0057】
前記第1の反応器及び第2の反応器での重合は、チーグラーナッタ触媒下で行われてもよい。前記チーグラーナッタ触媒は、通常のチーグラーナッタ触媒として知られている触媒であり、元素周期律表IV族、V族またはVI族に属する遷移金属化合物を主触媒として使用するが、その中で最も多く使用されるチーグラーナッタ触媒は、マグネシウムとチタン、またはマグネシウムとバナジウムからなるハロゲン化錯体である。
【0058】
また、前記第1の反応器及び前記第2の反応器で重合時にコモノマーが投入されてもよい。前記コモノマーは、C3~C20、例えば、C4~C8、C6~C8のα-オレフィンを使用してもよい。
【0059】
前記第1の反応器での重合は、40Mpa~50Mpaの圧力、70℃~100℃の温度及び40分~70分の滞留時間の条件で行われてもよく、例えば、42Mpa~48Mpaの圧力、80℃~95℃の温度及び50分~65分の滞留時間下で行われてもよい。
【0060】
また、前記第2の反応器での重合は、40Mpa~50Mpaの圧力、80℃~110℃の温度及び20分~50分の滞留時間の条件で行われてもよく、例えば、42Mpa~48Mpaの圧力、90℃~100℃の温度及び25分~40分の滞留時間下で行われてもよい。
【0061】
前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度(D1st)、ゼロせん断粘度(η01st)、短鎖分岐数(SCB1st)、C2に対するコモノマーの供給比、C2に対するH2の供給比、溶融温度(Tm)、溶融温度(Tm)と結晶化温度(Tc)の差(Tm-Tc)、高負荷溶融流れ指数などに対する説明は前述の通りであり、前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂の密度(D2nd)、ゼロせん断粘度(η02nd)、短鎖分岐数(SCB2nd)、C2に対するコモノマーの供給比、C2に対するH2の供給比、溶融流れ指数などに対する説明は前述した通りである。また、前記第1の反応器で形成されたポリエチレン樹脂と前記第2の反応器で形成されたポリエチレン樹脂のゼロせん断粘度比(η01st/η02nd)、短鎖分岐数の比(SCB1st/SCB2nd)、密度差(D2nd-D1st)、重量比などについての説明も前述のとおりである。
【0062】
さらに他の具現例によれば、前述したポリエチレン樹脂組成物から製造された成形品が提供される。
【0063】
前記成形品は、テンターフレーム(tenter-frame)工程により縦方向(MD)延伸率が4倍~6倍に、横方向(TD)延伸率が8倍~10倍に逐次二軸延伸されたフィルムであってもよい。
【実施例0064】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載される実施例は、本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これにより本発明が制限されるものではない。また、ここに記載されていない内容は、この技術分野で熟練した者であれば十分に技術的に類推できるものであるため、その説明を省略する。
【0065】
<ポリエチレン樹脂組成物の製造>
[実施例1]
2つの反応器(各反応器の容量は、90リットル)を直列に連結し、チーグラーナッタ触媒とコモノマーを用いてエチレン重合を行った。前記チーグラーナッタ触媒は、マグネシウムとチタンからなる公知の触媒であって、通常の方法で製造されたものを使用した。
【0066】
具体的に、第1の反応器で重合されたスラリー状のポリマーを第2の反応器に移して重合を継続して行い、各反応器の重合量の割合は51:49の重量比とした。このとき、第1の反応器でコモノマーとして1-ヘキセンをC2に対して90g/kg供給比で供給し、H2をC2に対して31mg/kg供給比で供給した。また、第2の反応器でポリエチレン樹脂の重合時、コモノマーとして1-ヘキセンをC2に対して10g/kg供給比で供給し、H2をC2に対して0.52モル%/重量%供給比で供給した。第1の反応器での重合は、85℃の温度、45kgf/cm2の圧力、61分の滞留時間の条件で行い、第2の反応器での重合は、94℃の温度、45kgf/cm2の圧力、34分の滞留時間の条件で行った。各第1の反応器及び第2の反応器での工程条件及び各形成されたポリエチレン樹脂の物性を下記表1に示した。
【0067】
前記で得られたパウダー型のポリエチレン樹脂100重量部に酸化防止剤としてIrganox-1076を0.1重量部及びIrgafos-168を0.1重量部、また、中和剤としてマグネシウムアルミニウムヒドロキシカーボネート(DHT-4A)0.025重量部をヘンセルミキサーで混合した後、二軸押出機を用いてペレット状のポリエチレン樹脂組成物を製造した。
【0068】
[実施例2]
下記表1の組成によって実施例1と同じ方法でポリエチレン樹脂組成物を製造した。
【0069】
第1の反応器で重合されたスラリー状のポリマーを第2の反応器に移して重合を継続して行い、各反応器での重合量の割合は47:53の重量比とした。このとき、第1の反応器でコモノマーとして1-ヘキセンをC2に対して68g/kg供給比で供給し、H2をC2に対して38mg/kg供給比で供給し、第2の反応器でポリエチレン樹脂の重合時にコモノマーは供給しなかった。
【0070】
[実施例3]
下記表1の組成によって実施例1と同じ方法でポリエチレン樹脂組成物を製造した。
【0071】
第1の反応器で重合されたスラリー状のポリマーを第2の反応器に移して重合を継続して行い、各反応器での重合量の割合は49:51の重量比とした。このとき、第1の反応器でコモノマーとして1-ヘキセンをC2に対して40g/kg供給比で供給し、H2をC2に対して55mg/kg供給比で供給し、第2の反応器でポリエチレン樹脂の重合時にコモノマーは供給しなかった。
【0072】
[比較例1]
下記表1の組成によって実施例1と同じ方法でポリエチレン樹脂組成物を製造した。
【0073】
第1の反応器で重合されたスラリー状のポリマーを第2の反応器に移して重合を継続して行い、各反応器での重合量の割合は50:50の重量比とした。このとき、第1の反応器でコモノマーとして1-ヘキセンをC2に対して17g/kg供給比で供給し、H2をC2に対して210mg/kg供給比で供給し、第2の反応器でポリエチレン樹脂の重合時にコモノマーとして1-ヘキセンをC2に対して33g/kg供給比で供給した。
【0074】
[比較例2]
下記表1の組成によって実施例1と同じ方法でポリエチレン樹脂組成物を製造した。
【0075】
第1の反応器で重合されたスラリー状のポリマーを第2の反応器に移して重合を継続して行い、各反応器での重合量の割合は50:50の重量比とした。このとき、第1の反応器でコモノマーとして1-ヘキセンをC2に対して90g/kg供給比で供給し、H2をC2に対して120mg/kg供給比で供給し、第2の反応器でポリエチレン樹脂の重合時にコモノマーは供給しなかった。
【0076】
[比較例3]
下記表1の組成によって実施例1と同じ方法でポリエチレン樹脂組成物を製造した。
【0077】
第1の反応器で重合されたスラリー状のポリマーを第2の反応器に移して重合を継続して行い、各反応器での重合量の割合は50:50の重量比とした。このとき、第1の反応器でコモノマーとして1-ヘキセンをC2に対して13g/kg供給比で供給し、H2をC2に対して48mg/kg供給比で供給し、第2の反応器でポリエチレン樹脂重合時にコモノマーは供給しなかった。
【0078】
[評価1:ポリエチレン樹脂組成物の物性測定]
前記実施例1~3及び比較例1~3で製造されたポリエチレン樹脂組成物について下記物性を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0079】
[溶融流れ指数(melt index,MI)]
ASTM D1238によって190℃でそれぞれ2.16kg、5kg及び21.6kg荷重で測定した。
【0080】
2.16kg荷重で測定した溶融流れ指数をMI2、5kg荷重で測定した溶融流れ指数をMI5、また、21.6kg荷重で測定した溶融流れ指数をHLMIと表記した。
【0081】
[密度]
ASTM D1505に準じて測定した。
【0082】
[ゼロせん断粘度(zero shear viscosity)]
ARES(advanced rheometer expansion system)レオメーターを用いてfrequency sweep 180℃、strain 5%、0.01~400rad/s条件下で測定した後、Carreau modelでゼロせん断粘度を計算した。
【0083】
[炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB)]
定量核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、ポリエチレン樹脂の炭素1000個あたりの短鎖分岐数を計算した。Bruker 600 MHz NMR分光計を使用し、13C-NMRに最適化された10mm多核高温クライオプローブ(multinuclear high-temperature CryoProbe)を使用した。約1.2gのサンプルを1,2-ジクロロベンゼンとベンゼン-d6の4:1混合溶媒2.8mlに入れて150℃に溶かして用意し、スキャン回数(number of scan)5000、D1 12秒、パルス幅(pulse width)90°、測定温度130℃、プロトン-デカップリング(proton-decoupling)モードの実験条件で測定した。
【0084】
13C-NMRスペクトルの定量的計算は、バルクメチレン(-(CH2)n-)の化学的移動は30.0ppmで他のコモノマーシーケンスの影響を受けない特定のコモノマー、1-ヘキセンコモノマーの特性信号(38.2ppm、34.6ppm、34.2ppm)の積分比を用いてポリエチレン樹脂のモル%含量を計算した。
【0085】
これを用いて炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB)は、下記式(1)~(4)により計算された。
【0086】
ヘキセン-1のモル数(H’)=(H1+H2)/2 …(1)
【0087】
(前記式1において、
H1はAであり、Aは38.1ppmの積分値であり、
H2は(B+C)/3であり、Bは34.6ppmの積分値であり、Cは34.2ppmの積分値である。)
【0088】
エチレンのモル数(E’)=[{(D+E)-E}/2]+H’ …(2)
【0089】
(前記式2において、
D+Eは、33.9ppm~27.3ppmの積分値であり、Eは27.3ppmの積分値である。)
【0090】
ヘキセン-1のモル%=H’/(H’+E’)×100 …(3)
【0091】
炭素1000個あたりの短鎖分岐数(SCB)=H’/(E’×2+H’×6)×1000 …(4)
【0092】
[溶融温度及び結晶化温度]
示差走査熱量分析器(DSC)を用いて、ASTM D 3418に準じて10℃/分の昇温速度で測定した。
【0093】
【0094】
[評価2:二軸延伸特性の評価]
実施例1~3及び比較例1~3で製造されたポリエチレン樹脂組成物を用いて二軸延伸特性を評価するため、OCS社のPE30-CR9キャスティング成形機で220℃温度で幅300mm、厚さ800μmのフィルム用シートを製造した。押し出されたシートの中間部分で80mm×80mmサイズの正方形試片を切断し、Bruckner Karo V二軸ストレッチャーを使用して、元々の試片基準100%/sの延伸速度で二軸延伸を行った。ストレッチ前の予熱時間は、120秒で固定し、ストレッチは、2方向に同時にまたは順次に行った。同時二軸延伸では、試片は8×8延伸比で両方向に延伸された。逐次二軸延伸では、試片は一次的に縦方向(MD)に6倍まで延伸され、二次的に横方向(TD)に9倍まで延伸された。
【0095】
これを下記表2に示し、延伸可能な場合をO、延伸していない場合をXと表記した。
【0096】
【0097】
前記表2から一具現例による実施例1~3のポリエチレン樹脂組成物を用いた場合、縦方向に6倍まで、横方向に9倍まで容易に逐次延伸が可能であることを確認した。また、延伸温度の範囲が118℃~125℃の間において広い温度範囲で延伸加工が可能であることを確認した。
【0098】
[評価3:二軸延伸フィルム用シートの物性測定]
前記で製造された実施例1~3によるフィルム用シートの物性を下記のような方法で測定し、その結果を下記表3に示した。
【0099】
[曇り度(Haze)]
ASTM D 1003に準じて測定した。
【0100】
[光沢度(Gloss)]
ASTM D 2457に準じて測定した。
【0101】
[落下衝撃強さ(Dart impact strength)]
ASTM D 1709に準じて測定した。
【0102】
[貫通破壊試験(Puncture test)]
ASTM D 5748に準じて測定した。
【0103】
[引張強度(Tensile strength)、伸び率(Elongation)及びモジュラス(Modulus)]
それぞれASTM D 882に準じて測定した。
【0104】
【0105】
前記表3から一具現例による実施例1~3のポリエチレン樹脂組成物を用いて縦方向に6倍及び横方向に9倍逐次二軸延伸したフィルムの場合、透明性に優れており、衝撃強度、モジュラス及び引張強度の機械的強度も優れていることを確認した。
【0106】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。