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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100013
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両用周囲監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/87 20060101AFI20240719BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240719BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01S13/87
G01S13/931
G01S13/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003702
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤二
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC02
5J070AD02
5J070AF03
5J070AK03
5J070BD01
5J070BD04
5J070BF07
(57)【要約】
【課題】簡素な構造で、車両の直近における死角領域が少ない車両用周囲監視装置を提供する。
【解決手段】車両用周囲監視装置は、車両の周囲に、水平方向に亘って複数設置した測距センサから、車両の外側に向けて波動を放射し、波動の反射波を受信することによって、車両の周囲の障害物までの距離を計測するものであって、測距センサが距離を計測できない非計測領域である、測距センサの各々の直近領域と、隣接する測距センサの間の領域と、測距センサの測距範囲の外側の領域と、において、非計測領域が、別の測距センサの計測領域でカバーされるように、複数の測距センサの各々の測距範囲の中心軸の方向を設定する。
【選択図】図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲に、水平方向に亘って複数設置した測距センサから、当該車両の外側に向けて波動を放射し、当該波動の反射波を受信することによって、前記車両の周囲の障害物までの距離を計測する車両用周囲監視装置であって、
前記測距センサが前記距離を計測できない非計測領域である、前記測距センサの各々の直近領域と、隣接する前記測距センサの間の領域と、前記測距センサの計測領域の外側の領域と、において、前記非計測領域が別の測距センサの計測領域でカバーされるように、複数の前記測距センサの各々の測距範囲の中心軸の方向を設定する、
車両用周囲監視装置。
【請求項2】
複数の前記測距センサは水平方向の位置をずらして配置されて、
複数の前記測距センサの測距範囲の中心軸のうち、いずれか2つの測距センサの中心軸は、水平方向で互いに近づくように配置される、
請求項1に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項3】
複数の前記測距センサはミリ波レーダであって、当該測距センサは、前記車両のバンパーの表面にセンサ面が露出しないように配置される、
請求項1または請求項2に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項4】
前記測距センサは、前記車両のバンパーの表面から、前記測距センサの直近の非計測領域のサイズに応じた量だけ内側に配置される、
請求項3に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項5】
前記車両を上面視した際に、前記測距センサの測距範囲の中心軸は、水平方向で互いに遠ざかるように配置される、
請求項4に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項6】
前記測距センサはミリ波レーダであって、前記測距センサの測距範囲の外側に、前記測距センサの測距範囲を拡大する電波拡散部材が設置される、
請求項1に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項7】
車両の周囲に、水平方向に亘って複数設置した測距センサから、当該車両の外側に向けて波動を放射し、当該波動の反射波を受信することによって、前記車両の周囲の障害物までの距離を計測する車両用周囲監視方法であって、
前記測距センサが前記距離を計測できない非計測領域である、前記測距センサの各々の直近領域と、隣接する前記測距センサの間の領域と、前記測距センサの計測領域の外側の領域と、において、前記非計測領域が別の測距センサの計測領域でカバーされるように、複数の前記測距センサの各々の測距範囲の中心軸の方向を設定する、
車両用周囲監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用周囲監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ターゲットに放射したレーダ波の反射波を検出することによって、ターゲットまでの測距を行うレーダ装置が開示されている。このような測距装置を車載して、車両周囲の障害物の検知を行う場合、車両の直近における死角領域をできるだけ少なくすることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-83609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のレーダ装置では、至近距離のターゲットまでの距離を測定するために、ビート周波数を高周波側にシフトさせて、低周波ノイズの影響を受けないようにしている。しかしながら、このような従来技術によると、ハードウエアの変更が必要であるため、装置の構造が複雑になるとともに、コストが上昇するという問題があった。
【0005】
本開示は、簡素な構造で、車両の直近における死角領域が少ない車両用周囲監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両用周囲監視装置は、車両の周囲に、水平方向に亘って複数設置した測距センサから、当該車両の外側に向けて波動を放射し、当該波動の反射波を受信することによって、前記車両の周囲の障害物までの距離を計測する車両用周囲監視装置であって、前記測距センサが前記距離を計測できない非計測領域である、前記測距センサの各々の直近領域と、隣接する前記測距センサの間の領域と、前記測距センサの計測領域の外側の領域と、において、前記非計測領域が別の測距センサの計測領域でカバーされるように、複数の前記測距センサの各々の測距範囲の中心軸の方向を設定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る車両用周囲監視装置によれば、簡素な構造で、車両の直近における死角領域を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、レーダを用いた測距センサの概略構成の一例を示すブロック図である。
図2A図2Aは、レーダを用いた測距センサを車載した、一般的な車両用周囲監視装置における死角領域を示す第1の図である。
図2B図2Bは、レーダを用いた測距センサを車載した、一般的な車両用周囲監視装置における死角領域を示す第2の図である。
図3A図3Aは、第1の実施形態に係る車両用周囲監視装置を構成する測距センサの設置レイアウトの一例を示す第1の図である。
図3B図3Bは、第1の実施形態に係る車両用周囲監視装置を構成する測距センサの設置レイアウトの一例を示す第2の図である。
図3C図3Cは、第1の実施形態に係る車両用周囲監視装置の測距領域の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態の第1の変形例である車両用周囲監視装置の概略構成を示す第1の図である。
図5図5は、第1の実施形態の第1の変形例である車両用周囲監視装置の概略構成を示す第2の図である。
図6図6は、第1の実施形態の第2の変形例である車両用周囲監視装置の概略構成を示す図である。
図7A図7Aは、第2の実施形態に係る車両用周囲監視装置を構成する測距センサの設置レイアウトの一例を示す第1の図である。
図7B図7Bは、第2の実施形態に係る車両用周囲監視装置を構成する測距センサの設置レイアウトの一例を示す第2の図である。
図7C図7Cは、第2の実施形態に係る車両用周囲監視装置の測距領域の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態および第2の実施形態の構成を組み合わせた車両用周囲監視装置の測距領域の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示に係る車両周囲監視装置の第1の実施形態について説明する。
【0010】
(測距センサの概略構成)
まず、図1を用いて、車両10に設置されて、当該車両10の周囲の障害物を検出する車両周囲監視装置に用いられる測距センサ12の概略構成を説明する。図1は、レーダを用いた測距センサの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0011】
測距センサ12は、図1に示すように、送信アンテナ43から送信波51(例えばミリ波)を放射して、物標60で反射した反射波52を、受信アンテナ44で検出する。
【0012】
送信アンテナ43から送信される送信波51は、送信波生成器41で生成される。送信波生成器41で生成された送信波51は、分配器42で2つに分配される。分配された一方の送信波51は、送信アンテナ43から放射される。分配器42で分配された他方の送信波51は、受信アンテナ44が受信した反射波52と、混合器45によって混合される。
【0013】
混合器45によって混合された送信波51と反射波52は、AD変換器46でデジタル信号に変換される。AD変換器46で生成されたデジタル信号は、DSP47に入力される。DSP47は、送信波51の送信時刻と、反射波52の受信時刻とを特定する信号処理を行う。この信号処理によって、送信波51の送信時刻から反射波52の受信時刻までに経過した時間が特定される。このようにして特定された時間は、送信アンテナ43が送信した送信波51が、物標60で反射して、反射波52が受信アンテナ44に受信されるまでの時間を表す。送信波51および反射波52の速度は既知であるため、送信アンテナ43(または受信アンテナ44)から物標までの距離Dが特定される。
【0014】
以下に示す複数の実施形態は、いずれも、このようなミリ波レーダを用いた測距センサ12を利用したものである。なお、測距センサ12は、ミリ波レーダに限定されるものではなく、音波を用いた超音波センサを用いることもできる。但し、車両周囲監視装置の構成によっては、超音波センサが適用できない形態もあるため、各実施形態の中で言及する。
【0015】
(車両用周囲監視装置における死角領域)
本実施形態について説明する前に、図2A図2Bを用いて、一般的な車両用周囲監視装置の概略構成と、死角領域について説明する。図2Aは、レーダを用いた測距センサを車載した、一般的な車両用周囲監視装置における死角領域を示す第1の図である。図2Bは、レーダを用いた測距センサを車載した、一般的な車両用周囲監視装置における死角領域を示す第2の図である。
【0016】
車両用周囲監視装置は、車両10の水平方向の外周に沿って設置された複数の測距センサを用いて、車両10が駐車を行う際などに、車両10と接触する可能性のある物標を検出して報知を行う。なお、車両用周囲監視装置は、車両10と接触する可能性のある物標を検出した際に、車両10のブレーキを制御することによって、車両10を停止させてもよい。
【0017】
図2Aは、車両10のリアバンパーの表面に、測距センサ12a、12bを、車両10の外側を向けて水平に設置した例である。なお、説明のために、XYZ座標系を設定する。X軸は、車両10の左右方向を示す軸である。Y軸は、車両10の前後方向を示す軸である。Z軸は、車両10の高さ方向を示す軸である。
【0018】
図2Aにおいて、測距センサ12aは、水平方向に亘って放射角θの範囲にミリ波を放射する。即ち、測距センサ12aは、図2Aに示す測距範囲14aに亘ってミリ波を放射する。放射角θは、例えば150°程度である。なお、測距センサ12aの測距範囲14aの中心軸13aは、車両10の前後方向、即ちY軸と一致しているものとする。
【0019】
ミリ波レーダを利用した測距センサ12aにあっては、送信波51(図1参照)が受信アンテナ44に回り込む場合がある。このような回り込みが発生すると、測距センサ12
aは、自身の至近距離に物標があるものと誤認識する。このような誤認識を防止するために、測距センサ12aから至近距離daの範囲は非計測領域、即ち距離を計測できない死角領域とする。以後、このような死角領域を不感領域と呼ぶ。測距センサ12aから至近距離daの範囲に形成される不感領域5は、図2Aに示すように、放射角θの範囲で、至近距離daを半径とする扇形の領域になる。より具体的には、測距センサ12aは、測距された距離が至近距離da以下である場合には、その計測結果を読み飛ばす。
【0020】
測距センサ12bは、測距センサ12aから、水平方向に所定距離だけ離れた位置に、測距センサ12aと同じ高さで設置される。測距センサ12bは、測距センサ12aと同じ周波数、同じ強度のミリ波を、放射角θの範囲に放射する。また、測距センサ12bの中心軸13bは、測距センサ12aの中心軸13aと平行になるように配置されている。したがって、測距センサ12bは、図2Aに示す測距範囲14bに亘ってミリ波を放射する。
【0021】
測距センサ12bも、測距センサ12aと同様に、測距センサ12bから至近距離daの範囲が不感領域6とされる。
【0022】
また、測距センサ12a,12bは、有限な視野角(FOV:Field Of View)、具体的には、測距センサ12a,12bは、ミリ波の放射角θの範囲のみで測距を行うため、水平方向の測距可能な範囲が限定される。したがって、図2Bに示すように、2つの測距センサ12a,12bの間に非計測領域、即ち距離を計測できない不感領域7が生じる。また、測距センサ12aの視野角のX軸負側に非計測領域、即ち距離を計測できない不感領域8が生じる。更に、測距センサ12bの視野角のX軸正側に非計測領域、即ち距離を計測できない不感領域9が生じる。なお、測距センサ12a,12bは、センサ面が、車両10のリアバンパーの表面に露出した状態で設置されている。なお、測距センサ12a,12bは、センサ面が車両10のリアバンパーの表面に露出しない状態で設置されてもよい。例えば、測距センサ12a,12bは、後述する第2の実施形態で説明するように、リアバンパーの内側に設置されてもよい。
【0023】
このように、本来であれば車両用周囲監視装置が計測したい、車両10の直近に、測距できない領域が発生する。以下、このような不感領域(死角領域)を減少させることが可能な、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施形態の車両用周囲監視装置の概略構成)
図3Aから図3Cを用いて、第1の実施形態である車両用周囲監視装置2aの概略構成を説明する。図3Aは、第1の実施形態に係る車両用周囲監視装置を構成する測距センサの設置レイアウトの一例を示す第1の図である。図3Bは、第1の実施形態に係る車両用周囲監視装置を構成する測距センサの設置レイアウトの一例を示す第2の図である。図3Cは、第1の実施形態に係る車両用周囲監視装置の測距領域の一例を示す図である。
【0025】
車両用周囲監視装置2aを構成する測距センサ12a,12bは、車両10の同じ高さの位置に水平方向の位置をずらして配置されて、それぞれの測距範囲16a,16bの中心軸15a,15bが、水平方向で互いに近づくように配置される。
【0026】
具体的には、測距センサ12aの測距範囲16aの中心軸15aは、図3Aに示すように、車両10の前後方向(Y軸)に平行な軸Cに対して、偏角ωaだけ測距センサ12bの側に向けられる。測距センサ12aをこのように配置することによって、測距センサ12aの測距範囲は、前記した測距センサ12bの不感領域6をカバーする。
【0027】
また、測距センサ12bの測距範囲16bの中心軸15bは、図3Bに示すように、車両10の前後方向(Y軸)に平行な軸Cに対して、偏角ωaだけ測距センサ12aの側に向けられる。測距センサ12bをこのように配置することによって、測距センサ12bの測距範囲は、前記した測距センサ12aの不感領域5をカバーする。
【0028】
測距センサ12a,12bを、図3A図3Bに示すように配置することによって、車両用周囲監視装置2aは、図3Cに示す測距範囲16a,16bに亘って測距を行うことができる。図3Cに示すように、図2Aの構成では非計測領域であった測距センサ12a,12bの各々の直近領域(不感領域5,6)が、別の測距センサの測距範囲(計測領域)でカバーされるようになる。また、隣接する測距センサ12a,12bの間の領域(図2Bの不感領域7)も、測距センサ12a,12bのそれぞれの測距範囲16a,16b(計測領域)でカバーされる。更に、中心軸15a,15bを、水平方向で互いに近づくように配置したことによって、図2Bの構成では非計測領域であった不感領域8,9も解消される。
【0029】
なお、測距センサ12a,12bにミリ波レーダを用いた場合、ミリ波レーダは車両10のバンパーを透過する。したがって、図示はしないが、測距センサ12aの中心軸15aの偏角ωaと、測距センサ12bの中心軸15bの偏角ωaとを更に大きくして、測距センサ12aの測距範囲16aと、測距センサ12bの測距範囲16bとが、ともに反対側のリアバンパーの隅部を超えるように配置してもよい。このような配置によると、車両10のリアバンパーの隅部を超えて、測距範囲を更に拡大することができる。
【0030】
また、ここでは、測距センサ12a,12bを車両10のリアバンパーに取り付けた例を説明したが、測距センサの取付位置は、リアバンパーに限定されない。即ち、複数の測距センサを、車両10のフロントバンパーや、左側面や、右側面に設置した場合であっても、前記した車両用周囲監視装置2aと同様の効果を奏することができる。なお、測距センサ12a,12bは、必ずしも同じ高さの位置に設置する必要はなく、異なる高さの位置に設置してもよい。
【0031】
(第1の実施形態の第1の変形例)
次に、図4図5を用いて、第1の実施形態の第1の変形例である、車両用周囲監視装置2b,2cについて説明する。図4は、第1の実施形態の第1の変形例である車両用周囲監視装置の概略構成を示す第1の図である。図5は、第1の実施形態の第1の変形例である車両用周囲監視装置の概略構成を示す第2の図である。
【0032】
図4に示す車両用周囲監視装置2bは、3個の測距センサ12a,12b,12cを車両10のリアバンパーの同じ高さの位置に水平方向の位置をずらして設置した例である。3個の測距センサのうち、中央に配置された測距センサ12bの中心軸17bは、車両10の前後方向、即ちY軸と一致している。そして、測距センサ12aの中心軸17aと、測距センサ12cの中心軸17cとは、水平方向に傾いた状態で、互いに近づくように配置される。
【0033】
3個の測距センサ12a,12b,12cをこのように配置することによって、測距センサ12aの不感領域は測距センサ12b,12cによってカバーされる。また、測距センサ12bの不感領域は測距センサ12a,12cによってカバーされる。そして、測距センサ12cの不感領域は測距センサ12a,12bによってカバーされる。このように、複数の測距センサ12a,12b,12cのそれぞれの測距範囲18a,18b,18cは、互いの不感領域をカバーしあうことによって、車両10の直近の不感領域を減少させることができる。
【0034】
図5に示す車両用周囲監視装置2cは、4個の測距センサ12a,12b,12c,12dを車両10のリアバンパーの同じ高さの位置に水平方向の位置をずらして設置した例である。そして、測距センサ12aの中心軸19aと、測距センサ12cの中心軸19cとは、水平方向に傾いた状態で、互いに近づくように配置される。また、測距センサ12bの中心軸19bと、測距センサ12dの中心軸19dとは、水平方向に傾いた状態で、互いに近づくように配置される。
【0035】
4個の測距センサ12a,12b,12c,12dをこのように配置することによって、複数の測距センサ12a,12b,12c,12dのそれぞれの測距範囲20a,20b,20c,20dは、互いの不感領域をカバーしあうことによって、車両10の直近の不感領域を減少させることができる。
【0036】
このように、車両10の側面に複数の測距センサを設置した場合であっても、いずれか2つの測距センサの中心軸を水平方向に傾けて、互いに近づくように設置することによって、不感領域を減少させることができる。なお、図4図5において、複数の測距センサは、必ずしも同じ高さの位置に設置する必要はなく、異なる高さの位置に設置してもよい。
【0037】
(第1の実施形態の第2の変形例)
次に、図6を用いて、第1の実施形態の第2の変形例である、車両用周囲監視装置2dについて説明する。図6は、第1の実施形態の第2の変形例である車両用周囲監視装置の概略構成を示す図である。
【0038】
図6に示す車両用周囲監視装置2dは、2個の測距センサ12a,12bと、電波拡散部材31a,31bと、を車両10のリアバンパーに設置したものである。電波拡散部材31aは、測距センサ12aの位置から、リアバンパーの右隅に回り込むように設置されている。また、電波拡散部材31bは、測距センサ12bの位置から、リアバンパーの左隅に回り込むように設置されている。
【0039】
電波拡散部材31a,31bは、電磁波の波長よりも細かな構造体を有し、誘電率と透磁率とを自由に制御可能な物質である。測距センサが放射したミリ波を電波拡散部材31a,31bの内部に入射すると、ミリ波は電波拡散部材31a,31bの内部で拡散しながら進行する。そして、電波拡散部材31a,31bは、屈折率を制御できるため、決められた位置から、内部を進行したミリ波を、電波拡散部材31a,31bの外部に放射することができる。即ち、測距センサのミリ波の放射位置を自由に設定することができる。なお、メタマテリアルが、電波拡散部材31a,31bの一例である。
【0040】
このような電波拡散部材31a,31bを用いることによって、実際には測距センサが設置されていない位置に、中心軸15cを有する測距範囲16cと、中心軸15dを有する測距範囲16dを設定することができる。そして、測距範囲16cからの反射波は、電波拡散部材31aを逆向きに進行して、測距センサ12aに検出される。また、測距範囲16dからの反射波は、電波拡散部材31bを逆向きに進行して、測距センサ12bに検出される。
【0041】
このように、車両用周囲監視装置2dは、第1の実施形態で説明した車両用周囲監視装置2aの測距範囲を、更に拡大することができる。
【0042】
(第1の実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る車両用周囲監視装置2aは、車両10の周囲に、水平方向に亘って複数設置した測距センサ12a,12bから、当該車両10の外側に向けて波動を放射し、当該波動の反射波を受信することによって、車両10の周囲の障害物までの距離を計測するものであって、測距センサ12a,12bが距離を計測できない非計測領域である、測距センサ12a,12bの各々の直近領域(不感領域5,6)と、隣接する測距センサ12a,12bの間の領域(不感領域7)と、測距センサ12a,12bの測距範囲の外側の領域(不感領域8,9)と、において、非計測領域が別の測距センサの計測領域でカバーされるように、複数の測距センサ12a,12bの各々の測距範囲の中心軸15a,15bの方向が設定される。したがって、簡素な構造で、車両10の直近における死角領域を減らすことができる。
【0043】
また、本実施形態に係る車両用周囲監視装置2a,2b,2cにおいて、複数の測距センサ12a,12b,12c,12dは、水平方向の位置をずらして配置されて、複数の測距センサ12a,12b,12c,12dの測距範囲の中心軸のうち、いずれか2つの測距センサの中心軸は、水平方向で互いに近づくように配置される。したがって、配置される測距センサの数によらずに、簡素な構造で、車両10の直近における死角領域を減らすことができる。
【0044】
また、本実施形態に係る車両用周囲監視装置2dにおいて、測距センサ12a,12bはミリ波レーダであって、測距センサ12a,12bの測距範囲の外側に、測距センサ12a,12bの測距範囲を拡大する電波拡散部材31a,31bが設置される。したがって、測距センサ12a,12bの測距範囲を更に拡大することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示に係る車両周囲監視装置の第2の実施形態について説明する。
【0046】
(第2の実施形態の車両用周囲監視装置の概略構成)
図7Aから図7Cを用いて、第2の実施形態である車両用周囲監視装置2eの概略構成を説明する。図7Aは、第2の実施形態に係る車両用周囲監視装置を構成する測距センサの設置レイアウトの一例を示す第1の図である。図7Bは、第2の実施形態に係る車両用周囲監視装置を構成する測距センサの設置レイアウトの一例を示す第2の図である。図7Cは、第2の実施形態に係る車両用周囲監視装置の測距領域の一例を示す図である。
【0047】
車両用周囲監視装置2eは、車両10に備えられて、ミリ波レーダによって測距を行う2つの測距センサ12a,12bを備える。測距センサ12aは、図7Aに示すように、車両10の左右方向中央に、車両10の後方を向けて設置される。なお、測距センサ12aは、センサ面が、車両10のリアバンパーの表面から、距離dbだけ内側の位置に設置される。即ち、測距センサ12aのセンサ面は、車両10のリアバンパーの表面に露出していない。なお、距離dbは、測距センサ12aの前述した不感領域5の扇形の半径である至近距離daよりも大きく設定される。
【0048】
測距センサ12bは、図7Bに示すように、車両10の左右方向中央に、測距センサ12aとは異なる高さの位置に、車両10の後方を向けて設置される。なお、測距センサ12bは、センサ面が、車両10のリアバンパーの表面から、距離dbだけ内側の位置に設置される。即ち、測距センサ12bのセンサ面は、車両10のリアバンパーの表面に露出していない。なお、距離dbは、測距センサ12bの前述した不感領域6の扇形の半径である至近距離daよりも大きく設定される。
【0049】
測距センサ12a,12bは、放射角θの範囲にミリ波を放射する。そして、測距センサ12a,12bの各々の測距範囲22a,22bの中心軸21a,21bは、水平方向で互いに遠ざかるように配置される。具体的には、測距センサ12aの中心軸21aは、図7Aに示すように、車両10の前後方向(Y軸)に平行な軸Cに対して、偏角ωbだけX軸の負側に向けられる。また、測距センサ12bの中心軸21bは、図7Bに示すように、車両10の前後方向(Y軸)に平行な軸Cに対して、偏角ωbだけX軸の正側に向けられる。
【0050】
測距センサ12a,12bを、図7A図7Bに示すように配置することによって、車両用周囲監視装置2eは、図7Cに示す測距範囲22a,22bに亘って測距を行うことができる。測距センサ12a,12bにミリ波レーダを用いた場合、ミリ波レーダは車両10のバンパーを透過する。したがって、測距センサ12a,12bを、各々の測距センサ12a,12bから至近距離daの領域が、車両10のリアバンパーの内側に収まるように設置することによって、車両10のリアバンパーの直近を、測距センサ12a,12bのそれぞれの測距範囲22a,22bとすることができる。更に、中心軸21a,21bを、水平方向で互いに遠ざかる方向に配置したことによって、図2Bの構成では非計測領域であった不感領域7,8,9も解消される。なお、図7A図7B図7Cでは、測距センサ12a,12bは、同じ水平位置の異なる高さの位置に設置する例を説明したが、測距センサ12a,12bは、第1の実施形態で説明したように、水平位置が異なる位置に並べて設置されてもよい。
【0051】
(第2の実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る車両用周囲監視装置2eにおいて、複数の測距センサ12a,12bはミリ波レーダであって、測距センサ12a,12bは、車両10のバンパーの表面にセンサ面が露出しないように配置される。したがって、不感領域である測距センサ12a,12bから至近距離daの領域の一部が車両10のバンパー内に収まるため、車両10の近傍における不感領域5,6を小さくすることができる。
【0052】
また、本実施形態の車両用周囲監視装置2eにおいて、測距センサ12a,12bは、車両10のバンパーの表面から、測距センサ12a,12bの直近の不感領域非計測領域のサイズに応じた量だけ内側に配置される。したがって、不感領域である測距センサ12a,12bから至近距離daの領域が、車両10のバンパー内に全て収まるため、車両10の直近まで測距範囲とすることができる。
【0053】
また、本実施形態の車両用周囲監視装置2eにおいて、測距センサ12a,12bは、車両10を上面視した際に、測距センサ12a,12bの測距範囲の中心軸21a,21bは、水平方向で互いに遠ざかるように配置される。したがって、簡素な構造で、車両10の直近における死角領域を減らすことができる。
【0054】
なお、車両用周囲監視装置は、前述した第1の実施形態とその変形例、および第2の実施形態の構成を適宜組み合わせることによって構成しても、前述したのと同様の効果が得られる。
【0055】
例えば、図8は、第1の実施形態および第2の実施形態の構成を組み合わせた車両用周囲監視装置の測距領域の一例を示す図である。
【0056】
図8に示す車両用周囲監視装置2fは、車両10のリアバンパーに、4つの測距センサ12a,12b,12c,12dを設置した例である。4つの測距センサのうち、測距センサ12aと測距センサ12bは、リアバンパーの表面に、図3Cと同じレイアウトで配置されている。即ち、測距センサ12aの中心軸15aと、測距センサ12bの中心軸15bとは、互いに交差するように配置される。したがって、互いの不感領域を補完し合って、図8に示す測距範囲16a,16bに亘って測距を行うことができる。更に、車両用周囲監視装置2fは、測距センサ12c,12dのセンサ面が、車両10のリアバンパーの表面に露出しないように配置されている。そして、測距センサ12cの中心軸21cと、測距センサ12dの中心軸21dとは、それぞれ、車両10のリアバンパーの隅部に向かう方向に設置される。したがって、図8に示す測距範囲22c,22dに亘って測距を行うことができる。このように、車両用周囲監視装置2fによると、車両10のリアバンパーの隅部を超える広い領域に亘って測距を行うことができる。なお、図8に示す構成の変形例として、測距センサ12c,12dを、センサ面が車両10のリアバンパーの表面に露出した状態で設置しても構わない。この場合、当該変形例は、第1の実施形態の構成に、測距センサ12c,12dを追加したものとなる。
【0057】
また、車両10に設置される複数の測距センサは、互いにミリ波の送信タイミングをずらしてもよい。また、車両10に設置される複数の測距センサは、使用するミリ波の周波数を互いに異なるものにしてもよいし、送信波にFM変調を加えたFMCW方式として、互いの送信波が干渉しないように周波数を制御してもよい。また、複数の測距センサからの送信波が互いに干渉しないように、互いの送信波の符号系列が制御されてもよい。更に、複数の測距センサが異なる種類のセンサであってもよい。例えば、ミリ波レーダと超音波センサがともに使用可能な装置構成である場合に、ミリ波レーダと超音波センサとが混在してもよい。
【0058】
また、前述した各実施形態では、測距センサの向き(中心軸の方向)を変更する構成を説明したが、測距センサが、指向性の異なる複数のアンテナを備えて、ビームフォーミングによってビームの方向を変更する構成にしてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
2a,2b,2c,2d,2e,2f 車両用周囲監視装置
5,6,7,8,9 不感領域
10 車両
12,12a,12b 測距センサ
13a,13b,15a,15b,15c,15d,17a,17b,17c,19a,19b,19c,19d,21a,21b,21c,21d 中心軸
14a,14b,16a,16b,16c,16d,18a,18b,18c,20a,20b,20c,20d,22a,22b,22c,22d 測距範囲
31a,31b 電波拡散部材
43 送信アンテナ
44 受信アンテナ
51 送信波
52 反射波
60 物標
da 至近距離
db 距離
θ 放射角
ωa,ωb 偏角
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8