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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100014
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】検出装置、および検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240719BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240719BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20240719BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12Q1/6844 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003703
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 皓人
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB16
4B029BB20
4B029FA12
4B063QA05
4B063QA13
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】ユーザ毎の融解温度の検出誤差を無くす。
【解決手段】検出装置200は、CPU211と、メモリ212と、を備える。CPU211は、融解曲線を前領域と後領域とに分ける境界点を設定し、開始点と終了点とを設定し、最小二乗法により近似直線を算出し、近似直線の設定処理を繰返す。CPU211は、前領域において第1直線を設定し、後領域において第2直線を設定し、第1直線と第2直線とにおいて核酸の温度が同一となる核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと融解曲線との交点に対応する核酸の温度を融解温度として検出する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置によって測定された核酸の温度と紫外光に対応する核酸の吸光度との関係を示すデータを用いて核酸の融解温度を検出する検出装置であって、
制御装置と、
前記分析装置からの前記データを記憶する記憶装置と、を備え、
前記データは、前記核酸の温度を横軸、前記核酸の吸光度を縦軸にし前記データをプロットしたとき前記核酸の温度の上昇にともなって前記核酸の吸光度が上昇する融解曲線で表され、
前記制御装置は、
前記記憶装置に記憶された前記データを前記融解曲線として表したときに前記核酸の温度に応じて前領域と後領域とに分ける境界点を設定し、
前記前領域における前記データのうち前記核酸の温度に応じて連続して変化する所定のデータ数で規定される第1データに対して最低温度を第1開始点、最高温度を第1終了点と設定し、
前記第1開始点と前記第1終了点との範囲におけるデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出し、
前記第1終了点が前記境界点に至るまで、前記第1データの範囲を前記境界点の方向に移動させつつ、移動後の各第1データを用いた近似直線の設定処理を繰返し、
前記後領域における前記データのうち前記核酸の温度に応じて連続して変化する所定のデータ数で規定される第2データに対して最高温度を第2開始点、最低温度を第2終了点と設定し、
前記第2開始点と前記第2終了点との範囲におけるデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出し、
前記第2終了点が前記境界点に至るまで、前記第2データの範囲を前記境界点の方向に移動させつつ、移動後の各第2データを用いた近似直線の設定処理を繰返し、
前記第1データにおける隣り合うデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第1の定数をK1、前記第1データの前記第1開始点から前記第1終了点までの温度差をW1、前記第1データから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K1×W1+1/rが最大となる第1直線を設定し、
前記第2データにおける隣り合うデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第2の定数をK2、前記第2データの前記第2開始点から前記第2終了点までの温度差をW2、前記第2データから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K2×W2+1/rが最大となる第2直線を設定し、
前記第1直線と前記第2直線とにおいて前記核酸の温度が同一となる前記核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと前記融解曲線との交点に対応する前記核酸の温度を前記融解温度として検出する、検出装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記前領域において前記第1データのデータ数を所定の数ずつ減少させ、減少させたデータ数に応じてW1を変更して前記第1直線の設定処理を繰返し、
前記後領域において前記第2データのデータ数を所定の数ずつ減少させ、減少させたデータ数に応じてW2を変更して前記第2直線の設定処理を繰返し、
前記第1直線と前記第2直線とにおいて前記核酸の温度が同一となる前記核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと前記融解曲線との交点に対応する前記核酸の温度を前記融解温度として検出する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1データのデータ数が予め定めた下限値となった場合に、前記第1直線の設定処理を終了し、
前記第2データのデータ数が予め定めた下限値となった場合に、前記第2直線の設定処理を終了する、請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記境界点を基準に前記溶解曲線を点対称に回転させるように前記後領域のデータのプロット位置を反転し、前記第2直線の設定処理を実行した後、設定された前記第2直線のデータのプロット位置を前記境界点を基準に再度反転する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
分析装置によって測定された核酸の温度と紫外光に対応する核酸の吸光度との関係を示すデータを用いて核酸の融解温度を検出する方法であって、
前記データは、前記核酸の温度を横軸、前記核酸の吸光度を縦軸にし前記データをプロットしたとき前記核酸の温度の上昇にともなって前記核酸の吸光度が上昇する融解曲線で表され、
前記方法は、
記憶された前記データを前記融解曲線として表したときに前記核酸の温度に応じて前領域と後領域とに分ける境界点を設定するステップと、
前記前領域における前記データのうち前記核酸の温度に応じて連続して変化する所定のデータ数で規定される第1データに対して最低温度を第1開始点、最高温度を第1終了点と設定するステップと、
前記第1開始点と前記第1終了点との範囲におけるデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出するステップと、
前記第1終了点が前記境界点に至るまで、前記第1データの範囲を前記境界点の方向に移動させつつ、移動後の各第1データを用いた近似直線の設定処理を繰返すステップと、
前記後領域における前記データのうち前記核酸の温度に応じて連続して変化する所定のデータ数で規定される第2データに対して最高温度を第2開始点、最低温度を第2終了点と設定するステップと、
前記第2開始点と前記第2終了点との範囲におけるデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出するステップと、
前記第2終了点が前記境界点に至るまで、前記第2データの範囲を前記境界点の方向に移動させつつ、移動後の各第2データを用いた近似直線の設定処理を繰返すステップと、
前記第1データにおける隣り合うデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第1の定数をK1、前記第1データの前記第1開始点から前記第1終了点までの温度差をW1、前記第1データから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K1×W1+1/rが最大となる第1直線を設定するステップと、
前記第2データにおける隣り合うデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第2の定数をK2、前記第2データの前記第2開始点から前記第2終了点までの温度差をW2、前記第2データから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K2×W2+1/rが最大となる第2直線を設定するステップと、
前記第1直線と前記第2直線とにおいて前記核酸の温度が同一となる前記核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと前記融解曲線との交点に対応する前記核酸の温度を前記融解温度として検出するステップと、を実行する、方法。
【請求項6】
前記方法は、
前記前領域において前記第1データのデータ数を所定の数ずつ減少させ、減少させたデータ数に応じてW1を変更して前記第1直線の設定処理を繰返すステップと、
前記後領域において前記第2データのデータ数を所定の数ずつ減少させ、減少させたデータ数に応じてW2を変更して前記第2直線の設定処理を繰返すステップと、
前記第1直線と前記第2直線とにおいて前記核酸の温度が同一となる前記核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと前記融解曲線との交点に対応する前記核酸の温度を前記融解温度として検出するステップと、を実行する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
前記第1データのデータ数が予め定めた下限値となった場合に、前記第1直線の設定処理を終了するステップと、
前記第2データのデータ数が予め定めた下限値となった場合に、前記第2直線の設定処理を終了するステップと、を実行する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記境界点を基準に前記溶解曲線を点対称に回転させるように前記後領域のデータのプロット位置を反転し、前記第2直線の設定処理を実行した後、設定された前記第2直線のデータのプロット位置を前記境界点を基準に再度反転するステップを実行する、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、核酸の融解温度を検出するための検出装置、および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA(デオキシリボ核酸)等の核酸の安定性を示す指標に融解温度(以下、Tm値とも称する)がある。核酸は、2本鎖構造をしている。核酸は、核酸を溶解させた溶液の温度を上昇させることによって2本鎖構造が徐々に離れ、高温溶液中においては完全に離れて1本鎖構造となる。核酸が2本鎖構造から1本鎖構造に変化する際、波長260μm付近の紫外光の吸光度が大きく上昇する。核酸は、このような特性を有するため、横軸を温度、縦軸を吸光度とした融解曲線のグラフを作成すると、グラフが急激に変化する領域が現れる。Tm値は、このような領域において1本鎖構造と2本鎖構造との占める割合が等しくなる温度である。
【0003】
特開2003-121396号公報(特許文献1)には、DNAの吸光度を高い精度で算出することが可能な装置が開示されている。これにより、特開2003-121396号公報(特許文献1)では、高い精度の融解曲線のグラフを作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-121396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Tm値は、例えば以下に示す方法(以下、「中線法」とも称する。)により求めることができる。中線法では、核酸のグラフの前領域(2本鎖構造の領域)と後領域(1本鎖構造の領域)とにおいて開始点と終了点とをそれぞれ設定し、2点を結ぶ直線を引く。中線法は、その2つの直線から核酸の温度が同一温度となる核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと融解曲線との交点における核酸の温度をTm値とする方法である。特開2003-121396号公報(特許文献1)には、Tm値の詳細な検出方法については開示されていない。
【0006】
Tm値の算出に中線法を用いる場合、開始点と終了点とはユーザが任意に設定する。このため、Tm値は、同じデータを用いた場合であってもユーザ毎に開始点と終了点とのバラツキが生じるため、検出に誤差が生じることがある。
【0007】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ユーザ毎の融解温度(Tm値)の検出誤差を無くすことが可能な検出装置、および検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る検出装置は、分析装置によって測定された核酸の温度と紫外光に対応する核酸の吸光度との関係を示すデータを用いて核酸の融解温度を検出する検出装置に関する。検出装置は、制御装置と、分析装置からのデータを記憶する記憶装置と、を備える。データは、核酸の温度を横軸、核酸の吸光度を縦軸にしデータをプロットしたとき核酸の温度の上昇にともなって核酸の吸光度が上昇する融解曲線で表される。制御装置は、記憶装置に記憶されたデータを融解曲線として表したときに核酸の温度に応じて前領域と後領域とに分ける境界点を設定し、前領域におけるデータのうち核酸の温度に応じて連続して変化する所定のデータ数で規定される第1データに対して最低温度を第1開始点、最高温度を第1終了点と設定し、第1開始点と第1終了点との範囲におけるデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出し、第1終了点が境界点に至るまで、第1データの範囲を境界点の方向に移動させつつ、移動後の各第1データを用いた近似直線の設定処理を繰返し、後領域におけるデータのうち核酸の温度に応じて連続して変化する所定のデータ数で規定される第2データに対して最高温度を第2開始点、最低温度を第2終了点と設定し、第2開始点と第2終了点との範囲におけるデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出し、第2終了点が境界点に至るまで、第2データの範囲を境界点の方向に移動させつつ、移動後の各第2データを用いた近似直線の設定処理を繰返し、第1データにおける隣り合うデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第1の定数をK1、第1データの第1開始点から第1終了点までの温度差をW1、第1データから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K1×W1+1/rが最大となる第1直線を設定し、第2データにおける隣り合うデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第2の定数をK2、第2データの第2開始点から第2終了点までの温度差をW2、第2データから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K2×W2+1/rが最大となる第2直線を設定し、第1直線と第2直線とにおいて核酸の温度が同一となる核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと融解曲線との交点に対応する核酸の温度を融解温度として検出する。
【0009】
本開示に係る検出方法は、分析装置によって測定された核酸の温度と紫外光に対応する核酸の吸光度との関係を示すデータを用いて核酸の融解温度を検出する方法に関する。データは、核酸の温度を横軸、核酸の吸光度を縦軸にしデータをプロットしたとき核酸の温度の上昇にともなって核酸の吸光度が上昇する融解曲線で表される。方法は、分析装置からのデータを記憶するステップと、記憶されたデータを融解曲線として表したときに核酸の温度に応じて前領域と後領域とに分ける境界点を設定するステップと、前領域におけるデータのうち核酸の温度に応じて連続して変化する第1数のデータに対して融解曲線上に核酸の温度が低い点から順に開始点と終了点とを設定するステップと、開始点と終了点との範囲における第1数のデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出するステップと、終了点が境界点に至るまで、開始点および終了点を1点ずつ境界点の方向に移動させつつ、第1数のデータから定める近似直線の設定処理を繰返すステップと、後領域におけるデータのうち核酸の温度に応じて連続して変化する第2数のデータに対して融解曲線上に核酸の温度が高い点から順に開始点と終了点とを設定するステップと、開始点と終了点との範囲における第2数のデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出するステップと、終了点が境界点に至るまで、開始点および終了点を1点ずつ境界点の方向に移動させつつ、第2数のデータから定める近似直線の設定処理を繰返すステップと、融解曲線において隣合う第1数のデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第1の定数をK1、第1数のデータの開始点から終了点までの幅をW1、第1数のデータから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K1×W1+1/rが最大となる第1直線を設定するステップと、融解曲線において隣合う第2数のデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第2の定数をK2、第2数のデータの開始点から終了点までの幅をW2、第2数のデータから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K2×W2+1/rが最大となる第2直線を設定するステップと、第1直線と第2直線とにおいて核酸の温度が同一となる核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと融解曲線との交点に対応する核酸の温度を融解温度として検出するステップと、を実行する。
【0010】
本開示の検出装置、および検出方法によれば、融解温度が一義的に決定されるため、ユーザ毎の融解温度(Tm値)の検出誤差を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】分析装置、および検出装置の要部の構成を示す図である。
図2】理想的な融解曲線のグラフを示す図である。
図3】実施の形態に係る融解曲線のグラフを示す図である。
図4】データ範囲を設定した場合の融解曲線のグラフを示す図である。
図5】データ範囲を移動した場合の融解曲線のグラフを示す図である。
図6】データ範囲を減少した場合の融解曲線のグラフを示す図である。
図7】Tm値の検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一の符号を付して、その説明は原則的に繰り返さない。
【0013】
図1により実施の形態に係る検出装置200が適用される分析装置100について説明する。図1は、分析装置100、および検出装置200の要部の構成を示す図である。
【0014】
分析装置100は、主要部として、いわゆるダブルビーム方式の紫外可視分光光度計の測光部1と、各種の演算処理、制御処理を行なう第1制御装置110と、マルチセル32を備えた試料ユニット30とを含む。第1制御装置110には、所定の制御プログラムが搭載されており、この制御プログラムを実行することにより後述するような各種の処理が実行される。分析装置100には、検出装置200が接続されている。
【0015】
第1制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)111と、メモリ112とを含む。CPU111は、メモリ112に記憶されたプログラムを実行することによって、測光部1、試料ユニット30内の各部の動作を制御する。第1制御装置110に接続された操作部24は、例えばキーボード、ポインティングデバイスなどであり、測定に関連する各種パラメータの設定や各種測定、処理の指示を行なうためのものである。第1制御装置110に接続された表示部25は、操作のための補助的情報、測定結果等を画面に表示するものである。
【0016】
測光部1では、光源2から発した光が分光器3に入射され、ここで所望の波長を有する単色光が取り出される。波長としては、230~280μm位の範囲内の紫外光が利用されることが多い。単色光は、反射鏡4によりセクタ鏡5に送られ、セクタ鏡5により試料側光束Sと対照側光束Rの2光束に分割される。セクタ鏡5には光の遮蔽部が設けられており、試料側光束Sおよび対照側光束Rの発生期間と交互に遮光期間が発生するようにしている。
【0017】
試料側光束Sは、反射鏡6を介して、試料ユニット30に備えられたマルチセル32のうちの1つのセルに照射される。マルチセル32のうちの1つのセルを通過した光は、反射鏡8、10を介して光検出器11の受光面に送られる。他方、対照側光束Rは、反射鏡7を介して試料ユニット30内のアパーチャ板31に照射される。アパーチャ板31を通過することによって試料側と光束径が揃えられる。アパーチャ板31を通過した光は、反射鏡9を介して同じく光検出器11の受光面に送られる。なお、アパーチャ板31の代わりにダミーのセルを配置してもよい。
【0018】
光検出器11の出力信号は、サンプルホールド回路、アナログ-デジタル変換器などを含むインターフェイス部(I/F)12を介して検出装置200へ入力される。検出装置200は、第2制御装置210を備えている。第2制御装置210は、CPU(Central Processing Unit)211と、メモリ212とを含む。CPU211は、メモリ212に記憶されたプログラムを実行することによって、各種の演算処理を実行する。
【0019】
CPU211は、例えば、検出装置200に入力されメモリ212に記憶される分析装置100からのデータを用いて吸光度を算出するための各種の演算処理を実行する。CPU211は、演算結果である吸光度を用い、核酸の温度と吸光度との関係を示すグラフである融解曲線を作成する。CPU211は、融解曲線のグラフに基づいてTm値を検出する。Tm値の検出の具体的な手法については後述する。
【0020】
試料ユニット30において、マルチセル32は、容量が10~100μl程度である小型の石英製のセルを複数一列に並べて配置したものであり、その全体がスライド駆動部37によって試料側光束Sと略直交する方向に往復直線運動をするように構成されている。これにより、いずれのセルにも選択的に試料側光束Sが照射される。このマルチセル32は、恒温ブロック33に保持されている。恒温ブロック33は、ペルチエ素子などを利用した温冷ユニット34で迅速に加温または冷却されるようになっている。恒温ブロック33には、1ないし複数の温度センサ36が付設されている。温度センサ36による検出温度は、温度制御部35に与えられている。温度制御部35は、CPU111より温度の制御目標値Tcを受け取り、検出温度がその制御目標値Tcになるように、つまりその差がゼロになるように温冷ユニット34に供給する電力を制御する。分析装置100では、制御目標値Tcを適宜に設定することにより、所定の温度範囲(通常は温冷ユニット34の能力の範囲)で任意の温度における試料の吸光度の測定が可能である。
【0021】
図2は、理想的な融解曲線のグラフを示す図である。分析条件、試料の状態等により、実際のグラフにはノイズが発生するが、図2では、ノイズが無い理想的な融解曲線のグラフを示している。図2の横軸は、核酸を溶解させた溶液の温度、縦軸は、波長260μm付近の紫外光の吸光度を示している。
【0022】
図2において、温度が低く吸光度の変化率が低い領域を前遷移領域と称する。前遷移領域は、核酸を溶解させた溶液の温度を上昇させることによって2本鎖構造が徐々に離れていく領域である。図2において、温度が高く吸光度の変化率が低い領域を後遷移領域と称する。後遷移領域は、核酸を溶解させた溶液の温度を上昇させることによって核酸のほとんどが1本鎖構造となる領域である。図2において、前遷移領域と後遷移領域との間の領域であって、吸光度の変化率が高い領域を遷移領域と称する。遷移領域は、2本鎖構造が1本鎖構造へと遷移していく領域であり、吸光度が急激に増加する領域である。遷移領域における1本鎖構造と2本鎖構造との占める割合が等しくなる温度が融解温度(Tm値)である。
【0023】
ここで、従来の方法による融解温度(Tm値)の検出について説明する。ユーザは、前遷移領域におけるグラフの傾きが安定している部分において開始点と終了点とを任意に設定する。ユーザは、後遷移領域においても同様にグラフの傾きが安定している部分において開始点と終了点とを任意に設定する。融解温度(Tm値)の算出では、前遷移領域における開始点と終了点とを結ぶ直線と、後遷移領域における開始点と終了点とを結ぶ直線とにおいて核酸の温度が同一温度となる核酸の吸光度の中間値を結ぶライン(中線)を求める。融解温度(Tm値)は、この中線と融解曲線のグラフとの交点における核酸の温度として検出される。
【0024】
ここで、従来の融解温度(Tm値)の検出方法では、ユーザが開始点と終了点とを任意に設定している。このため、Tm値は、同じデータを用いた場合であってもユーザ毎に開始点と終了点とのバラツキが生じるため、検出に誤差が生じることがある。また、分析条件、試料の状態等により、実際のグラフにはノイズが発生する。このため、そのようなグラフを用いた場合、Tm値の検出の誤差が大きくなる可能性がある。本開示の検出装置200、および検出装置200を用いた検出方法によれば、Tm値の検出においてユーザ毎の誤差を無くすことができる。以下に、具体的なTm値の検出方法について説明する。
【0025】
図3は、実施の形態に係る融解曲線のグラフを示す図である。図3に示すように、実際のグラフは、図2の理想的なグラフにノイズが重畳したグラフとなっている。以下に示す処理は、検出装置200の第2制御装置210におけるCPU211が実行する処理として説明する。CPU211は、融解曲線のグラフにおいて、境界点を決定する。境界点は、遷移領域に対応する領域に設定されるグラフ上の点であり、例えば吸光度のデータの中央値に設定される。境界点より前の領域を前領域、境界点よりも後の領域を後領域とする。
【0026】
図4は、データ範囲ΔTを設定した場合の融解曲線のグラフを示す図である。CPU211は、前領域の範囲において所定のデータ数で規定される第1データに対して最低温度を開始点、最高温度を終了点としてデータ範囲ΔTを設定する。データ範囲ΔTは、ユーザが任意に設定可能な温度範囲である。データ範囲ΔTは、CPU211が自動的に設定するようにしてもよい。データ範囲ΔTを設定することは、開始点と終了点とを含む範囲のデータの点数を設定することでもある。CPU211は、データ範囲ΔTの両端の2点間を含む範囲のデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出する。最小二乗法とは、誤差を伴う測定値の処理において、その誤差の二乗の和を最小にすることによって最も確からしい関係式を求める方法である。
【0027】
本実施の形態の検出装置200では、設定したデータ範囲ΔTを移動および減少させ、移動および減少させたデータに対して近似直線の設定処理を繰返している。本実施の形態の検出装置200では、複数得られる近似直線のうち最も適切な近似直線を前領域および後領域において1本ずつ設定している。これによって、単純に一度のみデータ範囲ΔTを設定して近似直線を求める場合よりも適切な近似直線の設定が可能となる。以下に、データ範囲ΔTを移動する場合、およびデータ範囲ΔTを減少する場合について、グラフを用いて説明する。
【0028】
図5は、データ範囲ΔTを移動した場合の融解曲線のグラフを示す図である。CPU211は、前領域の範囲において終了点が境界点に至るまで、データ範囲ΔTを境界点の方向に移動させる。CPU211は、移動したデータ範囲ΔTのデータを演算対象として最小二乗法により近似直線を算出する。CPU211は、終了点が境界点に至るまで近似直線の算出処理を繰返す。図5では、初期位置から複数点移動した際の状況が示されている。なお、開始点の初期位置は、グラフの温度が最も低い点を用いてもよいし、境界点の方へ何点か移動させた点を用いてもよい。前領域におけるグラフ上の近似直線は、温度が低い場合よりも温度が高い場合の方が近似直線の傾き大きくなる特性がある。
【0029】
図6は、データ範囲ΔTを減少した場合の融解曲線のグラフを示す図である。CPU211は、データ範囲ΔTのデータについて終了点を境界点まで移動して近似直線を設定する処理を実行した後、図6に示すようなデータ範囲ΔTのデータに対して所定の割合であるαをかけてデータ点数を減少させたデータ範囲ΔT×αのデータにおいて近似直線を設定する処理を同様に実行する。αは、ユーザが任意に設定可能な数値である。ユーザは、例えば、0.9(90%)から0.2(20%)の範囲で0.1(10%)刻みで減少させるとよい。なお、ΔTにαをかけた値が整数とならない場合は、小数点以下を切り捨て整数の値の範囲でデータ点数の設定をすればよい。
【0030】
次に、Tm値の検出処理について具体的に説明する。図7は、Tm値の検出処理を示すフローチャートである。Tm値の検出処理は、CPU211がメモリ212に記憶されている各種プログラムを実行することで実行される。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
【0031】
Tm値の検出処理において、CPU211は、サンプリング点の情報を取得する(S11)。具体的に、CPU211は、分析装置100から検出装置200のメモリ212に入力されるデータを用いて吸光度を算出し、核酸の温度と算出された吸光度との関係を示すデータを作成する。このデータは、核酸の温度を横軸、核酸の吸光度を縦軸にしてデータをプロットしたときに核酸の温度上昇にともなって核酸の吸光度が上昇する融解曲線として表される。CPU211は、複数の点から作成される融解曲線のデータをサンプリング点の情報として取得する。
【0032】
次いで、CPU211は、図3のような前領域と後領域との境界となる境界点を設定する(S12)。CPU211は、吸光度のデータの中央値として求められる点を境界点として設定する。次いで、CPU211は、図4に示すような前領域の範囲においてデータ範囲ΔTの温度範囲のデータを設定する(S13)。S13の処理は、前領域においてデータ範囲ΔTのうち最低温度を開始点、最高温度を終了点と設定し、データ範囲ΔTのデータ点数を設定することでもある。
【0033】
次いで、CPU211は、図4に示すようにΔT間のデータを用いて最小二乗法により直線フィッティングを実行する(S14)。CPU211は、S14において終了点が境界点に至るまで、データの範囲を境界点の方向に1点ずつ移動させつつ、移動後の各データを用いた近似直線の設定処理を繰返す。CPU211は、後述するS15の処理でNOの場合、およびS18の処理でNOの場合のように近似直線の設定処理が終了していな状態でS14の処理を繰返す。
【0034】
次いで、CPU211は、データ範囲ΔTの終了点が境界点に到達したか否かを判定する(S15)。CPU211は、データ範囲ΔTの終了点が境界点に到達していないと判定した場合(S15のNO)、S14の処理を実行する。CPU211は、データ範囲ΔTの終了点が境界点に到達したと判定した場合(S15のYES)、データ範囲ΔTを10%減らす(S16)。S16の処理は、データ範囲ΔTの幅を減らすことであるとともにデータ点数を削減することでもある。減少割合は、ユーザが任意に設定可能である。データ範囲ΔTに減少割合をかけた値が整数とならない場合は、小数点以下を切り捨て整数の値の範囲でデータ点数の設定をすればよい。
【0035】
次いで、CPU211は、データ範囲ΔTが20%以下まで減少したか否かを判定する(S17)。20%は、ユーザが任意に設定可能な下限値である。しかしながら、データ点数をあまりにも減らしてしまうとデータの誤差の影響が大きくなってしまい正確なTm値の検出に支障が生じるため、減少割合は20%程度までとすることが望ましい。CPU211は、データ範囲ΔTが20%以下まで減少していないと判定した場合(S17のNO)、S18においてサンプリング点が2点未満となったか否かを判定する。サンプリング点が2点未満となること(サンプリング点が1点であること)は、直線フィッティングの設定処理が実行されないことを意味する。なお、データ範囲ΔTが20%以下まで減少したとしてもサンプリング点が2点未満となることは通常想定されないが、何らかのエラーが発生した場合のエラー処理としてS18の処理が設けられている。
【0036】
CPU211は、サンプリング点が2点未満となっていないと判定した場合(S18のNO)、S14の処理を繰返す。CPU211は、S17においてデータ範囲ΔTが20%以下まで減少したと判定した場合(S17のYES)、あるいはS18においてサンプリング点が2点未満となったと判定した場合(S18のYESS)、S19の処理へ移行する。CPU211は、S19において後領域における直線フィッティングの設定処理が終了したか否かを判定する。
【0037】
CPU211は、後領域における直線フィッティングの設定処理が終了していないと判定した場合(S19のNO)、境界点を中心に後領域のデータを反転する(S20)。ここで、後領域では、データ範囲ΔTのうち最高温度を開始点、最低温度を終了点と設定するが、S20では前領域の処理手法を後領域の処理に流用するためにデータを反転している。S20の処理は、境界点を基準に融解曲線を点対称に回転させるように後領域のデータのプロット位置を反転する処理である。つまり、S20の処理では、境界点を基準に核酸の温度および核酸の吸光度に対応する後領域の各サンプリング点のデータを反転するようにデータを変更する処理が実行される。
【0038】
次いで、CPU211は、図7のS13において実行したように、後領域の範囲においてデータ範囲ΔTの温度範囲のデータを設定し(S21)、S14の処理へ移行する。S21の処理は、後領域においてデータ範囲ΔTのうち最高温度を開始点、最低温度を終了点と設定し、データ範囲ΔTのデータ点数を設定することでもある。なお、S21では、S20においてデータが反転されているため、実際の処理としては開始点がデータ範囲ΔTの最低温度となり、終了点がデータ範囲ΔTの最高温度となる。
【0039】
CPU211は、S20において境界点を基準に後領域のデータを反転する処理を実行することにより、S14~S18の処理を共通化することができ、処理負担を軽減することができる。なお、S20の処理を実行せずに後領域においてデータ範囲ΔTのうち最高温度を開始点、最低温度を終了点と設定し、終了点が境界点に至るまでデータ範囲ΔTを境界点に移動させつつ、移動後の各データを用いて直線フィッティングの処理を実行してもよい。
【0040】
CPU211は、後領域における直線フィッティングの設定処理が終了したと判定した場合(S19のYES)、直線フィッティングの算出処理を終了する(S22)。次いで、CPU211は、求めた近似直線の傾きと重み付けの関係式から前領域と後領域とにおいて最大値となる直線をフィッティングラインに設定する(S23)。
【0041】
S23の処理について具体的に説明する。融解曲線において隣り合うデータのプロット間隔(温度差)をW、Wの変化に比例して増加する定数を重み係数K、メモリ212に予め設定されている定数をCとしてシュミレーションをした場合、K=W×Cという関係が成立する。このように、データのプロット間隔に基づいて重み係数Kは変化する。前領域のデータ範囲ΔTのデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第1の定数である重み係数をK1とし、後領域のデータ範囲ΔTのデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第2の定数である重み係数をK2とする。
【0042】
S23の処理では、前領域における開始点から終了までの温度差をW1、S14により求めた近似直線の傾きをrとした場合、A1=K1×W1+1/rにおいてA1が最大となる近似直線を第1直線として前領域におけるフィッティングラインに設定する。S23の処理では、後領域における開始点から終了までの温度差をW2、S14により求めた近似直線の傾きをrとした場合、A2=K2×W2+1/rにおいてA2が最大となる近似直線を第2直線として後領域におけるフィッティングラインに設定する。
【0043】
次いで、CPU211は、前領域と後領域とにS23の処理で設定したフィッティングラインを引き、中線法により融解曲線とフィッティングラインとの交点となる核酸の温度をTm値(融解温度)として検出し、表示部25へ出力し(S24)、処理を終了する。
【0044】
ここで、実際の核酸の計測の具体例について説明する。核酸として試薬M13-25merを用い、試薬の濃度を20μM、光路長を1mm、測定温度を40~95℃とする。このような条件において分析装置100により測定を実施した場合、前領域のデータ範囲ΔTが約30℃の範囲、後領域のデータ範囲ΔTが約15℃の範囲でデータ範囲ΔTを設定することができる。試薬M13-25merでは、後領域が前領域よりも狭いため、後領域のデータ範囲ΔTが前領域のデータ範囲ΔTよりも小さくなっている。このように、様々な条件によりデータ範囲ΔTは変化する。本実施の形態の検出装置200では、データ範囲ΔTがどのように設定されたとしても図7の処理により、Tm値を一義的に検出することができる。
【0045】
図7に示すように、検出装置200では、CPU211によって前領域および後領域のフィッティングラインが最小二乗法による複数の近似直線から各1本ずつ設定される。CPU211は、前領域におけるフィッティングラインである第1直線と、後領域におけるフィッティングラインである第2直線とから、中線法により融解曲線とフィッティングラインとの交点となる核酸の温度をTm値(融解温度)として検出し、表示部25へ出力する。このように、検出装置200では、前領域と後領域とにおいてフィッティングラインが自動的に1本ずつ定まるため、ユーザ毎の融解温度(Tm値)の検出誤差を無くすことができる。
【0046】
[態様]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0047】
(第1項) 一態様に係る検出装置は、分析装置によって測定された核酸の温度と紫外光に対応する核酸の吸光度との関係を示すデータを用いて核酸の融解温度を検出する検出装置に関する。検出装置は、制御装置と、分析装置からのデータを記憶する記憶装置と、を備える。データは、核酸の温度を横軸、核酸の吸光度を縦軸にしデータをプロットしたとき核酸の温度の上昇にともなって核酸の吸光度が上昇する融解曲線で表される。制御装置は、記憶装置に記憶されたデータを融解曲線として表したときに核酸の温度に応じて前領域と後領域とに分ける境界点を設定し、前領域におけるデータのうち核酸の温度に応じて連続して変化する所定のデータ数で規定される第1データに対して最低温度を第1開始点、最高温度を第1終了点と設定し、第1開始点と第1終了点との範囲におけるデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出し、第1終了点が境界点に至るまで、第1データの範囲を境界点の方向に移動させつつ、移動後の各第1データを用いた近似直線の設定処理を繰返し、後領域におけるデータのうち核酸の温度に応じて連続して変化する所定のデータ数で規定される第2データに対して最高温度を第2開始点、最低温度を第2終了点と設定し、第2開始点と第2終了点との範囲におけるデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出し、第2終了点が境界点に至るまで、第2データの範囲を境界点の方向に移動させつつ、移動後の各第2データを用いた近似直線の設定処理を繰返し、第1データにおける隣り合うデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第1の定数をK1、第1データの第1開始点から第1終了点までの温度差をW1、第1データから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K1×W1+1/rが最大となる第1直線を設定し、第2データにおける隣り合うデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第2の定数をK2、第2データの第2開始点から第2終了点までの温度差をW2、第2データから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K2×W2+1/rが最大となる第2直線を設定し、第1直線と第2直線とにおいて核酸の温度が同一となる核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと融解曲線との交点に対応する核酸の温度を融解温度として検出する。
【0048】
第1項に記載の検出装置によれば、融解温度が一義的に検出されるため、ユーザ毎の融解温度の検出誤差を無くすことができる。
【0049】
(第2項) 第1項に記載の検出装置は、制御装置が、前領域において第1データのデータ数を所定の数ずつ減少させ、減少させたデータ数に応じてW1を変更して第1直線の設定処理を繰返し、後領域において第2データのデータ数を所定の数ずつ減少させ、減少させたデータ数に応じてW2を変更して第2直線の設定処理を繰返し、第1直線と第2直線とにおいて核酸の温度が同一となる核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと融解曲線との交点に対応する核酸の温度を融解温度として検出する。
【0050】
第2項に記載の検出装置によれば、データ数を所定の数ずつ減少させた上で第1直線および第2直線の設定が実行されるため、融解温度の検出誤差を無くすことができる。
【0051】
(第3項) 第1項または第2項に記載の検出装置は、制御装置が、第1データのデータ数が予め定めた下限値となった場合に、第1直線の設定処理を終了し、第2データのデータ数が予め定めた下限値となった場合に、第2直線の設定処理を終了する。
【0052】
第3項に記載の検出装置によれば、下限値が定められているため、検出誤差が増加するような不要な範囲のデータを使用しないようにすることができる。
【0053】
(第4項) 第1項から第3項のいずれか1項記載の検出装置は、制御装置が、境界点を基準に溶解曲線を点対称に回転させるように後領域のデータのプロット位置を反転し、第2直線の設定処理を実行した後、設定された第2直線のデータのプロット位置を境界点を基準に再度反転する。
【0054】
第4項に記載の検出装置によれば、後領域を前領域と同様に処理することができるため処理負担を軽減することができる。
【0055】
(第5項) 一態様に係る検出方法は、分析装置によって測定された核酸の温度と紫外光に対応する核酸の吸光度との関係を示すデータを用いて核酸の融解温度を検出する方法に関する。データは、核酸の温度を横軸、核酸の吸光度を縦軸にしデータをプロットしたとき核酸の温度の上昇にともなって核酸の吸光度が上昇する融解曲線で表される。方法は、分析装置からのデータを記憶するステップと、記憶されたデータを融解曲線として表したときに核酸の温度に応じて前領域と後領域とに分ける境界点を設定するステップと、前領域におけるデータのうち核酸の温度に応じて連続して変化する第1数のデータに対して融解曲線上に核酸の温度が低い点から順に開始点と終了点とを設定するステップと、開始点と終了点との範囲における第1数のデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出するステップと、終了点が境界点に至るまで、開始点および終了点を1点ずつ境界点の方向に移動させつつ、第1数のデータから定める近似直線の設定処理を繰返すステップと、後領域におけるデータのうち核酸の温度に応じて連続して変化する第2数のデータに対して融解曲線上に核酸の温度が高い点から順に開始点と終了点とを設定するステップと、開始点と終了点との範囲における第2数のデータを用いて最小二乗法により近似直線を算出するステップと、終了点が境界点に至るまで、開始点および終了点を1点ずつ境界点の方向に移動させつつ、第2数のデータから定める近似直線の設定処理を繰返すステップと、融解曲線において隣合う第1数のデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第1の定数をK1、第1数のデータの開始点から終了点までの幅をW1、第1数のデータから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K1×W1+1/rが最大となる第1直線を設定するステップと、融解曲線において隣合う第2数のデータのプロット間隔に基づいて予め設定される第2の定数をK2、第2数のデータの開始点から終了点までの幅をW2、第2数のデータから算出される近似直線の傾きをrとした場合に、K2×W2+1/rが最大となる第2直線を設定するステップと、第1直線と第2直線とにおいて核酸の温度が同一となる核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと融解曲線との交点に対応する核酸の温度を融解温度として検出するステップと、を実行する。
【0056】
第5項に記載の検出方法によれば、融解温度が一義的に検出されるため、ユーザ毎の融解温度の検出誤差を無くすことができる。
【0057】
(第6項) 第5項に記載の検出方法は、前領域において第1数のデータの幅を所定の割合ずつ減少させ、減少させた幅に応じてW1を変更し第1直線の設定処理を繰返すステップと、後領域において第2数のデータの幅を所定の割合ずつ減少させ、減少させた幅に応じてW2を変更し第2直線の設定処理を繰返すステップと、第1直線と第2直線とにおいて核酸の温度が同一となる核酸の吸光度の中間値を結ぶラインと融解曲線との交点に対応する核酸の温度を融解温度として検出するステップと、を実行する。
【0058】
第6項に記載の検出方法によれば、幅を所定の割合ずつ減少した上で第1直線および第2直線の設定が実行されるため、融解温度の検出誤差を無くすことができる。
【0059】
(第7項) 第5項または第6項に記載の検出方法は、第1数のデータのプロット数が予め定めた下限値となった場合に、第1直線の設定処理を終了するステップと、第2数のデータのプロット数が予め定めた下限値となった場合に、第2直線の設定処理を終了するステップと、を実行する。
【0060】
第7項に記載の検出方法によれば、下限値が定められているため、検出誤差が増加するような不要な範囲のデータを使用しないようにすることができる。
【0061】
(第8項) 第5項から第7項のいずれか1項記載の検出方法は、境界点を基準に溶解曲線を点対称に回転させるように後領域のデータのプロット位置を反転し、第2直線の設定処理を実行した後、設定された第2直線のデータのプロット位置を境界点を基準に再度反転するステップを実行する。
【0062】
第8項に記載の検出方法によれば、後領域を前領域と同様に処理することができるため処理負担を軽減することができる。
【0063】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 測光部、2 光源、3 分光器、4,6,7,8,9 反射鏡、5 セクタ鏡、11 光検出器、24 操作部、25 表示部、30 試料ユニット、31 アパーチャ板、32 マルチセル、33 恒温ブロック、34 温冷ユニット、35 温度制御部、36 温度センサ、37 スライド駆動部、100 分析装置、110 第1制御装置、111,211 CPU、112,212 メモリ、200 検出装置、210 第2制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7