(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100028
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】遮音板およびそれを用いた遮音壁
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20240719BHJP
E01D 19/10 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
E01F8/00
E01D19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003726
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 行介
(72)【発明者】
【氏名】堀田 善彦
(72)【発明者】
【氏名】瀧山 翔太
【テーマコード(参考)】
2D001
2D059
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D059AA21
2D059GG25
(57)【要約】
【課題】支柱間に遮音板を設置するタイプの遮音壁において、遮音板を所定位置に容易に設置できるようにする。
【解決手段】遮音板1の正面の幅方向両端近傍の段押し部1bに、三角形の位置決めマーク7を、支柱3の一対のフランジ部3aの間へ挿入される挿入領域よりも幅方向内側に設けることにより、遮音板1を支柱3の間に積み重ねていく際に、正面から遮音板1の位置決めマーク7と支柱3のフランジ部3aの幅方向内側端面との間の距離を測定することができ、遮音板1を支柱3間の所定位置に簡単に設置できるようにしたのである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で立設される支柱の間に設置されて遮音壁を構築する遮音板において、
前記遮音壁の正面となる側または背面となる側に、前記支柱間の所定位置に設置するための目安となる位置決めマークが設けられていることを特徴とする遮音板。
【請求項2】
前記支柱が、一対の帯板状のフランジ部と、両フランジ部どうしを接続する帯板状のウェブ部とを有する断面H字状の部材からなるものであり、前記支柱の一対のフランジ部の間へ挿入される所定幅の挿入領域よりも幅方向内側に、前記位置決めマークが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の遮音板。
【請求項3】
前記位置決めマークが、前記挿入領域の境界に接する状態で設けられていることを特徴とする請求項2に記載の遮音板。
【請求項4】
前記位置決めマークが、段押し部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の遮音板。
【請求項5】
前記位置決めマークが、上下端部の幅方向の同じ位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の遮音板。
【請求項6】
所定の間隔で立設される支柱と、前記支柱の間に設置される遮音板とによって構築される遮音壁において、
前記支柱は、一対の帯板状のフランジ部と、両フランジ部どうしを接続する帯板状のウェブ部とからなる断面H字状の部材であり、前記遮音板は、請求項1乃至5のいずれかに記載のものが前記支柱の間に複数段積み重なる状態で設置され、前記各遮音板の幅方向端部が前記支柱の一対のフランジ部の間で固定されていることを特徴とする遮音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音板と、それを用いて構築され騒音源から発生する騒音を遮る遮音壁に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路では、一般に、車両の走行によって発生する騒音の周辺地域への拡散を抑えるために、その騒音を遮る遮音壁が設置されている。この遮音壁としては、道路の路側部や中央分離帯等に所定の間隔で立設したH型鋼からなる支柱の間に、吸音材を収納した遮音板を高さ方向に複数段積み重ねて構築したタイプのものが多く見られる(例えば、特許文献1参照。)。このような遮音壁は、線路を走行する鉄道車両や工場等の騒音源から発生する騒音を遮るために設置されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のタイプの遮音壁の設置作業においては、通常、立設した支柱の間に遮音板を積み重ねていく際に、配置する遮音板の幅方向の位置決めを正確に行うために、遮音板の幅方向端面とこれに対向する支柱の側面との間の距離を測定しており、この測定に手間がかかっていた。
【0005】
特に、支柱がH型鋼等、一対の帯板状のフランジ部と、両フランジ部の幅方向中央部どうしを接続する帯板状のウェブ部とからなる断面H字状の部材であり、遮音板をその幅方向端部が支柱の一対のフランジ部間に挿入される状態で設置する場合には、遮音壁の上方から遮音板の幅方向端面と支柱のウェブ部の内側面との間の距離を測定することが必要となり、遮音板を積み重ねていくほど、測定作業の煩雑さが一層増大するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、支柱間に遮音板を設置するタイプの遮音壁において、遮音板を所定位置に容易に設置できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の遮音板は、所定の間隔で立設される支柱の間に設置されて遮音壁を構築する遮音板において、前記遮音壁の正面となる側または背面となる側に、前記支柱間の所定位置に設置するための目安となる位置決めマークが設けられている構成を採用した(構成1)。
【0008】
上記構成1の遮音板を用いれば、遮音壁の支柱間に遮音板を設置する際に、遮音壁の正面となる側または背面となる側から遮音板の位置決めマークを用いて遮音板の位置決めを行えるので、遮音板を所定位置に容易に設置することができる。
【0009】
また、前記支柱が、一対の帯板状のフランジ部と、両フランジ部どうしを接続する帯板状のウェブ部とを有する断面H字状の部材からなるものである場合、上記構成1の遮音板を、前記支柱の一対のフランジ部の間へ挿入される所定幅の挿入領域よりも幅方向内側に、前記位置決めマークが設けられているものとすれば(構成2)、従来の遮音壁上方からの距離測定作業が不要となり、遮音板を積み重ねていっても遮音板の位置決めは容易に行えるようになる。そして、この構成2における前記位置決めマークを、前記挿入領域の境界に接する状態で設けるようにすれば(構成3)、遮音板の位置決め時の距離測定作業自体を省略することも可能となる。
【0010】
また、上記構成1乃至3のいずれの遮音板においても、前記位置決めマークが、段押し部に設けられているものとすれば(構成4)、遮音板を積み重ねて設置する場合、遮音板の設置後は段押し部がその上に設置される遮音板の下端のカバー部に覆われ、位置決めマークが外側から見えなくなるので、景観的に好ましいものとなる。
【0011】
また、上記構成1乃至4のいずれの遮音板においても、前記位置決めマークが、上下端部の幅方向の同じ位置にそれぞれ設けられているものとすれば(構成5)、遮音板を積み重ねて設置する場合に、最下段の遮音板のみを厳密に位置決めし、それより上段の遮音板は下側で接する遮音板と位置決めマークの位置合わせを行うだけで済むようになり、設置作業がより効率よく行えるようになる。この構成5では、位置決めマークは、遮音板を積み重ねて設置する場合に隠れない位置に設けることが好ましい。
【0012】
そして、本発明の遮音壁は、所定の間隔で立設される支柱と、前記支柱の間に設置される遮音板とによって構築される遮音壁において、前記支柱は、一対の帯板状のフランジ部と、両フランジ部どうしを接続する帯板状のウェブ部とからなる断面H字状の部材であり、前記遮音板は、上記構成1乃至5のいずれかのものが前記支柱の間に複数段積み重なる状態で設置され、前記各遮音板の幅方向端部が前記支柱の一対のフランジ部の間で固定されている構成を採用したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上述したように、遮音壁を構築する遮音板の正面側または背面側に位置決めマークを設けることにより、遮音板を支柱間の所定位置に設置する際に、遮音壁の正面側または背面側から遮音板の位置決めマークを用いて位置決めを行えるようにしたので、作業効率の大幅な向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)、(b)は、それぞれ第1実施形態の遮音板を用いた遮音壁の上面図および正面図
【
図4】
図1(b)のIV-IV線に沿った断面図(遮音板の内部構造を除く)
【
図6】第2実施形態の遮音板を用いた遮音壁の正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
図1乃至
図5は第1実施形態の遮音板1を用いた遮音壁を示す。この遮音壁は、
図1(a)、(b)に示すように、基礎2の上面に所定の間隔で支柱3を立設し、その支柱3の間に複数の遮音板1を高さ方向に積み重ねて構築している。
【0016】
支柱3は、
図2にも示すように、一対の帯板状のフランジ部3aと、両フランジ部3aの幅方向中央部どうしを接続する帯板状のウェブ部3bとを有するH型鋼からなるものであり、その下端部に溶接されたベースプレート4を基礎2の上面に載置し、そのベースプレート4を貫通する複数のアンカーボルト5(頭部のみ図示)を基礎2に埋め込むことによって、ベースプレート4とともに基礎2上に固定されている。なお、支柱はH型鋼以外の断面H字状の部材で構成することもできる。
【0017】
遮音板1は、全体として横長の中空部材であり、正面(遮音壁の正面となる側の面)にルーバー状に多数の吸音孔1aがあけられ、内部空間に厚板状の吸音材(図示省略)が収納されている。そして、
図4および
図5に示すように、幅方向全長にわたって、正面の上端部に厚み方向奥側へ入り込んだ段押し部1bが形成され、背面の中央部分には全体としての断面強度を向上させるための凹部1cが形成されている。また、最下段以外の遮音板1は、正面の下端に底面の正面側縁部から下方へ突出するカバー部1dが設けられており、積み重ねられたときにカバー部1dでその下に設置された遮音板1の段押し部1bを覆うようになっている。
【0018】
そして、
図1および
図2に示すように、遮音板1の幅方向の両端部が、それぞれ支柱3の一対のフランジ部3aの間(両フランジ部3aとウェブ部3bとで形成されるコの字断面内)へ挿入されるようになっている。
【0019】
ここで、遮音板1は、その幅寸法が両側の支柱3のウェブ部3b間のスパンよりも短く形成されており、幅方向端面とこれに対向する支柱3のウェブ部3bの内側面との距離δが両側で均等となるように(全体として支柱3間の中央に)配置される。また、遮音板1の厚みは支柱3の両フランジ部3a間の間隔よりも薄く形成されており、遮音板1の幅方向端部の背面と支柱3の背面側のフランジ部3aの内側面との間に板バネ状の固定金具6が圧入されている。この固定金具6が遮音板1の幅方向端部を正面側のフランジ部3aの内側面に押し付けることにより、遮音板1の幅方向端部が一対のフランジ部3aの間で固定されている。
【0020】
また、この遮音板1には、
図1(b)および
図3に示すように、正面の幅方向両端近傍の段押し部1bに三角形の位置決めマーク7が刻印によって設けられている。位置決めマーク7は、支柱3の一対のフランジ部3aの間へ挿入される挿入領域(
図2中の一点鎖線よりも右側の部分)よりも幅方向内側に、その挿入領域の境界に対して三角形の頂点の一つが接し、一辺が平行となる状態で設けられている。なお、挿入領域の幅、つまり遮音板1の幅方向端面から挿入領域の境界までの距離は、遮音板1を支柱3間の中央に配置するという条件から、両側の支柱3のウェブ部3b間のスパンと遮音板1の幅寸法によって容易に求められる。
【0021】
したがって、遮音板1を支柱3の間に積み重ねていく際に、
図3に示すように、正面から見て遮音板1の位置決めマーク7が支柱3のフランジ部3aの幅方向内側端面に接するように位置決めするだけで、遮音板1を支柱3間の所定位置(中央)に設置することができる。
【0022】
この遮音壁は、上述したように、遮音板1の正面に遮音板1を支柱3間の中央に設置するための目安となる位置決めマーク7を設けたので、遮音板1を積み重ねる際に、従来実施していた遮音板1の幅方向端面と支柱3のウェブ部3bの内側面との距離δの測定を行う必要がなく、正面側から遮音板1の位置決めマーク7を用いて遮音板1の位置決めを正確かつ容易に行うことができ、ひいては設置作業全体を効率よく行うことができる。
【0023】
なお、位置決めマークは、実施形態のような刻印のほか、シールの貼り付け等によって設けるようにしてもよく、その形状も含めて特に限定されるものではない。
【0024】
また、上述した実施形態では、遮音板1の位置決めマーク7を支柱3のフランジ部3a間への挿入領域の境界に接する状態で設けたが、位置決めマーク7は、支柱3立設位置の設計公差等を考慮して、遮音板1の挿入領域の境界からある程度離れた幅方向内側に設けるようにしてもよい。その場合には、位置決めマーク7と支柱3のフランジ部3aの幅方向内側端面との距離を測定することが必要となるが、その距離測定は遮音壁の正面側から行うことができるので、従来の遮音壁上方からの距離測定作業を行うのに比べると、作業負荷は大幅に軽減される。
【0025】
また、実施形態の遮音板1は、設置後には位置決めマーク7を設けた段押し部1bがその上に設置される遮音板1のカバー部1dに覆われて、位置決めマーク7が外側から見えなくなり、景観的に好ましいものとなる。
【0026】
図6および
図7は第2実施形態の遮音板1を用いた遮音壁を示す。この第2実施形態では、遮音板1の位置決めマーク7を上下端部の幅方向中央位置にそれぞれ設けている。そのうち、上側の位置決めマーク7は、その上に遮音板1を積み重ねても外側から見えるように、段押し部1bよりも下方に設けられ、下側の位置決めマーク7はカバー部1dの下端に接するように設けられている。また、各位置決めマーク7の形状は、第1実施形態と同じ三角形であるが、遮音板1を積み重ねたときに上下で対向する位置決めマーク7の頂点の一つが突き合わされる状態で形成されている。
【0027】
これにより、遮音板1を設置する際は、最下段の遮音板1のみを厳密に位置決めし、それよりも上段の遮音板1は下側で接する遮音板1と位置決めマーク7の位置合わせを行うだけで済むので、設置作業がより効率よく行えるようになる。
【0028】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
例えば、遮音板の位置決めマークは通常は正面側に設けられるが、遮音壁を高速道路の路側部に設置する際に遮音壁の背面側で高所作業車を使用する可能性があること等を考慮して、遮音板の背面側に位置決めマークを設けるようにしてもよい。また、遮音板は実施形態のような吸音性能を有するものに限定されず、例えば、透光性の遮音板でもよい。
【0030】
また、本発明は、遮音板を実施形態のように積み重ねず、単体で支柱間に設置する場合にも、もちろん適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 遮音板
1b 段押し部
1d カバー部
2 基礎
3 支柱
3a フランジ部
3b ウェブ部
4 ベースプレート
5 アンカーボルト
6 固定金具
7 位置決めマーク