(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100030
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20240719BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240719BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003728
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 英輝
(72)【発明者】
【氏名】栗橋 翠
(72)【発明者】
【氏名】細川 真之
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BA44
3D241BA57
3D241DC02Z
(57)【要約】
【課題】自車両の運転者を含む操作者に違和感を与えることなく、走行速度制御により自車両を走行させるために消費されるエネルギー量を少なくすることができる車両運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両運転支援装置10は、設定速度を基準にして自車両100の走行速度を自律的に制御する走行速度制御を実行する。車両運転支援装置は、走行速度制御により現在の設定速度である第1設定速度を基準にして自車両を走行させるために消費されるエネルギー量よりも、走行速度制御により第1設定速度とは異なる走行速度である第2設定速度を基準にして自車両を走行させるために消費されるエネルギー量のほうが小さい場合、自車両の操作者に設定速度を第1設定速度から第2設定速度に変更することを提案し、操作者が承認した場合、第2設定速度を基準にして走行速度制御により自車両を走行させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された走行速度である設定速度を基準にして自車両の走行速度を自律的に制御する走行速度制御を実行する制御装置を備えた車両運転支援装置において、
前記自車両に付与される駆動力を発生する駆動装置を備え、
前記制御装置は、
前記走行速度制御の実行中、当該走行速度制御により現在の前記設定速度である第1設定速度を基準にして前記自車両を走行させるために消費されるエネルギー量よりも、前記走行速度制御により前記第1設定速度とは異なる走行速度である第2設定速度を基準にして前記自車両を走行させるために消費されるエネルギー量のほうが小さい場合、前記自車両の操作者に前記設定速度を前記第1設定速度から前記第2設定速度に変更することを提案し、
前記設定速度を前記第1設定速度から前記第2設定速度に変更することを前記操作者が承認した場合、前記第2設定速度を基準にして前記走行速度制御により前記自車両を走行させる、
ように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両運転支援装置において、
前記制御装置は、
前記第2設定速度が複数存在する場合、それら複数の第2設定速度を前記操作者に提案し、
前記複数の第2設定速度のうち、前記操作者が承認した第2設定速度を基準にして前記走行速度制御により前記自車両を走行させる、
ように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両運転支援装置において、
前記制御装置は、前記操作者に前記設定速度を前記第1設定速度から前記第2設定速度に変更することを提案するときに、当該変更を行った場合の目的地までの所要時間を前記操作者に通知するように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両運転支援装置において、
前記走行速度制御は、前記自車両の走行速度を前記設定速度に維持する第1走行速度制御と、前記自車両の走行速度が前記設定速度を含む所定の範囲で変動することを許容しつつ前記自車両の力行と惰行とを交互に行う第2走行速度制御と、を含んでおり、
前記制御装置は、
前記第2走行速度制御の実行中に所定の制御変更条件が成立した場合、前記走行速度制御を前記第2走行速度制御から前記第1走行速度制御に変更するとともに、前記走行速度制御を前記第2走行速度制御から前記第1走行速度制御に変更した理由を前記操作者に通知するように構成されている、
車両運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の走行速度が予め設定された走行速度(設定速度)に維持されるように自車両の加減速を自律的に制御する走行速度制御を実行する車両運転支援装置が知られている。こうした車両運転支援装置として、走行速度制御の実行時、設定速度に応じて自車両の加速度の上限値を設定し、自車両の加速度を上限値に制限することにより、自車両を走行させるために消費されるエネルギー量を低減するようにした車両運転支援装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、自車両の走行速度が異なると、自車両が受ける空気抵抗等の走行抵抗も異なってくる。このため、走行速度制御における設定速度が異なると、自車両が受ける走行抵抗が異なり、設定速度によっては、自車両を走行させるために消費されるエネルギー量(消費エネルギー量)が異なってくる。従って、消費エネルギー量を低減するためには、設定速度を消費エネルギー量がより小さい設定速度に変更することが好ましい。しかしながら、車両運転支援装置が設定速度を自発的に変更してしまうと、自車両の運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、自車両の運転者を含む操作者に違和感を与えることなく、走行速度制御により自車両を走行させるために消費されるエネルギー量を少なくすることができる車両運転支援装置を提供することにある。
【0006】
本発明に係る車両運転支援装置は、予め設定された走行速度である設定速度を基準にして自車両の走行速度を自律的に制御する走行速度制御を実行する制御装置を備えている。又、本発明に係る車両運転支援装置は、前記自車両に付与される駆動力を発生する駆動装置を備えている。前記制御装置は、前記走行速度制御の実行中、当該走行速度制御により現在の前記設定速度である第1設定速度を基準にして前記自車両を走行させるために消費されるエネルギー量よりも、前記走行速度制御により前記第1設定速度とは異なる走行速度である第2設定速度を基準にして前記自車両を走行させるために消費されるエネルギー量のほうが小さい場合、前記自車両の操作者に前記設定速度を前記第1設定速度から前記第2設定速度に変更することを提案するように構成されている。そして、前記制御装置は、前記設定速度を前記第1設定速度から前記第2設定速度に変更することを前記操作者が承認した場合、前記第2設定速度を基準にして前記走行速度制御により前記自車両を走行させるように構成されている。
【0007】
自車両の走行速度が大きくなると、自車両の走行抵抗が大きくなる等の理由から、自車両を走行させるために消費されるエネルギー量(消費エネルギー量)が大きくなる傾向にある。従って、走行速度制御の実行中に設定速度を変更したほうが消費エネルギー量が小さくなる場合、設定速度を変更するという選択肢がある。しかしながら、設定速度の変更を車両運転支援装置が自発的に行った場合、自車両の操作者に違和感を与えてしまう可能性がある。
【0008】
本発明に係る車両運転支援装置によれば、走行速度制御の実行中に設定速度を変更したほうが自車両を走行させるために消費されるエネルギー量が小さくなる場合、設定速度を変更することが自車両の操作者に提案される。そして、その提案に対する承認が操作者から得られた場合に設定速度の変更が行われる。このため、操作者に違和感を与えることなく、走行速度制御により自車両を走行させるために消費されるエネルギー量を少なくすることができる。
【0009】
尚、本発明に係る車両運転支援装置において、前記制御装置は、前記第2設定速度が複数存在する場合、それら複数の第2設定速度を前記操作者に提案し、前記複数の第2設定速度のうち、前記操作者が承認した第2設定速度を基準にして前記走行速度制御により前記自車両を走行させるように構成され得る。
【0010】
本発明に係る車両運転支援装置によれば、第2設定速度が複数存在する場合、それら第2設定速度が提案される。このため、運転者は、より自分の好みに合った設定速度を選択することができる。
【0011】
又、本発明に係る車両運転支援装置において、前記制御装置は、前記操作者に前記設定速度を前記第1設定速度から前記第2設定速度に変更することを提案するときに、当該変更を行った場合の目的地までの所要時間を前記操作者に通知するように構成され得る。
【0012】
本発明に係る車両運転支援装置によれば、運転者は、目的地までの所要時間も考慮して、設定速度の承認を行うことができる。
【0013】
又、本発明に係る車両運転支援装置において、前記走行速度制御は、例えば、前記自車両の走行速度を前記設定速度に維持する第1走行速度制御と、前記自車両の走行速度が前記設定速度を含む所定の範囲で変動することを許容しつつ前記自車両の力行と惰行とを交互に行う第2走行速度制御と、を含んでいる。この場合、前記制御装置は、前記第2走行速度制御の実行中に所定の制御変更条件が成立した場合、前記走行速度制御を前記第2走行速度制御から前記第1走行速度制御に変更するとともに、前記走行速度制御を前記第2走行速度制御から前記第1走行速度制御に変更した理由を前記操作者に通知するように構成され得る。
車両運転支援装置。
【0014】
本発明に係る車両運転支援装置によれば、走行速度制御が第2走行速度制御から第1走行速度制御に変更されたときに、その理由が自車両の操作者に通知される。このため、走行速度制御の変更に対する疑問を操作者に抱かせることを避けることができる。
【0015】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置を示した図である。
【
図2】
図2の(A)は、先行車が存在する場面を示した図であり、
図2の(B)は、先行車が存在しない場面を示した図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートを示した図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートを示した図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置について説明する。
図1に、車両運転支援装置10が示されている。車両運転支援装置10は、自車両100に搭載される。以下、自車両100の操作者が自車両100に乗車して当該自車両100の運転を行う者(即ち、自車両100の運転者)である場合を例にして、車両運転支援装置10について説明する。
【0018】
しかしながら、自車両100の操作者は、自車両100に乗車せずに当該自車両100の運転を遠隔で行う者(即ち、自車両100の遠隔操作者)であってもよい。自車両100の操作者が遠隔操作者である場合、車両運転支援装置10は、自車両100と、自車両100の運転を遠隔で行うために自車両100の外に設置された遠隔操作設備とにそれぞれ搭載され、以下で説明する車両運転支援装置10の機能は、自車両100に搭載された車両運転支援装置10と、遠隔操作設備に搭載された車両運転支援装置10とでそれぞれ分担して行われることになる。
【0019】
図1に示したように、車両運転支援装置10は、制御装置としてのECU(電子制御装置)90を備えている。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM及び不揮発性メモリ等の記憶媒体、並びに、インターフェース等を含む。CPUは、記憶媒体に格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。特に、本例において、車両運転支援装置10は、後述する自律走行制御を実行する自律走行プログラムを記憶媒体に記憶している。
【0020】
車両運転支援装置10は、自動運転制御又は自律運転制御として、自律走行制御を実行する。自律走行制御は、駆動装置20及び制動装置30の作動を自律的に制御して自車両100を加減速することにより、自車両100を走行させる制御であり、本例において、車間距離制御及び走行速度制御を含んでいる。又、駆動装置20は、自車両100に付与される駆動力を発生する装置であり、本例において、内燃機関21及びモータ22を備えている。又、制動装置30は、自車両100に制動力を付与する装置であり、本例において、油圧ブレーキ装置31を備えている。
【0021】
車間距離制御は、
図2の(A)に示したように、自車両100の前に先行車200が存在するときに実行される制御であって、目標距離Dtgtを基準にして自車両100を自律的に加減速する制御である。先行車200は、自車両100の前を走行している他車両であって、自車両100から所定の距離以内を走行している他車両である。車両運転支援装置10は、後述する周辺検出情報ISに基づいて先行車200を検出する。又、目標距離Dtgtは、車間距離制御による制御目標として運転者により設定される車間距離Dである。車間距離Dは、自車両100と先行車200との間の距離である。車両運転支援装置10は、後述する周辺検出情報ISに基づいて車間距離Dを取得する。
【0022】
一方、走行速度制御は、
図2の(B)に示したように、自車両100の前に先行車200が存在しないときに実行される制御であって、設定速度Vsetを基準にして自車両100の走行速度(自車速V)を自律的に制御する制御である。設定速度Vsetは、走行速度制御による制御目標として運転者により予め設定される自車両100の走行速度(自車速V)である。車両運転支援装置10は、車速検出装置40により自車速Vを取得する。
【0023】
<車両運転支援装置の作動>
次に、車両運転支援装置10の作動について、具体的に説明する。車両運転支援装置10は、
図3に示したルーチンを所定演算周期で実行することにより、自律走行制御を実行する。
【0024】
車両運転支援装置10は、所定のタイミングになると、
図3に示したルーチンのステップS300から処理を開始し、その処理をステップS305に進め、第1条件C1が成立しているか否かを判定する。第1条件C1は、自律走行実施可能条件Cexeが成立しており且つ自律走行制御の実行が要求されており且つ第2自律走行制御(エコノミー走行制御)の実行が要求されていないとの条件である。自律走行実施可能条件Cexeは、例えば、周辺情報検出装置60が正常に機能している等、自律走行制御の実行に必要なシステムが正常に機能しているとの条件、或いは、自車両100が走行している道路の勾配が比較的大きくなく、第2自律走行制御の実行が好ましくないと判断される状況にないとの条件である。尚、第1条件C1は、自律走行実施可能条件Cexeが成立しているとの条件を含んでいなくてもよい。
【0025】
運転者は、走行支援ボタン等の自律走行要求操作器51を操作することにより、自律走行制御の実行を車両運転支援装置10に要求することができる。又、運転者は、エコノミー走行ボタン等の第2自律走行要求操作器52を操作することにより、第2自律走行制御の実行を車両運転支援装置10に要求することができる。
【0026】
尚、本例において、第2自律走行制御は、後述する第2車間距離制御及び第2走行速度制御を含んでいる。
【0027】
車両運転支援装置10は、ステップS305にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS310に進め、先行車200が存在するか否かを判定する。車両運転支援装置10は、周辺検出情報ISに基づいて先行車200が存在するか否かを判定する。
【0028】
周辺検出情報ISは、自車両100に搭載された周辺情報検出装置60から提供される情報である。本例において、周辺情報検出装置60は、レーダセンサ61及びカメラセンサ62を備えている。周辺情報検出装置60は、レーダセンサ61により取得される自車両100の周辺の情報(レーダ検出情報)を周辺検出情報ISとして車両運転支援装置10に提供する。又、周辺情報検出装置60は、カメラセンサ62により取得される自車両100の周辺の画像データ(カメラ画像情報)を周辺検出情報ISとして車両運転支援装置10に提供する。
【0029】
車両運転支援装置10は、ステップS310にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS315に進め、自律走行制御として、第1車間距離制御を実行する。その後、車両運転支援装置10は、処理をステップS395に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。第1車間距離制御は、第1自律走行制御の1つであって、車間距離Dが目標距離Dtgtに維持されるように自車両100の加減速を自律的に制御する制御である。従って、第1車間距離制御は、いわゆる追従走行制御又はアダプティブクルーズコントロールである。尚、車両運転支援装置10は、第1車間距離制御の実行中に、自車速Vが上昇して設定速度Vsetに達した場合、第1走行速度制御を実行するように構成されてもよい。
【0030】
一方、車両運転支援装置10は、ステップS310にて「No」と判定した場合、処理をステップS320に進め、自律走行制御として、第1走行速度制御を実行する。その後、車両運転支援装置10は、処理をステップS395に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。第1走行速度制御は、第1自律走行制御の1つであって、自車速Vが設定速度Vsetに維持されるように自車両100の加減速を自律的に制御する制御である。従って、第1走行速度制御は、いわゆる定速走行制御又はクルーズコントロールである。
【0031】
又、車両運転支援装置10は、ステップS305にて「No」と判定した場合、処理をステップS325に進め、第2条件C2が成立しているか否かを判定する。第2条件C2は、自律走行実施可能条件Cexeが成立しており且つ自律走行制御の実行が要求されており且つ第2自律走行制御(エコノミー走行制御)の実行が要求されているとの条件である。尚、第2条件C2は、自律走行実施可能条件Cexeが成立しているとの条件を含んでいなくてもよい。
【0032】
車両運転支援装置10は、ステップS325にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS330に進め、先行車200が存在するか否かを判定する。車両運転支援装置10は、ステップS330にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS335に進め、自律走行制御として、第2車間距離制御を実行する。その後、車両運転支援装置10は、処理をステップS395に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0033】
第2車間距離制御は、車間距離Dが減少して所定の範囲(所定距離範囲RD)の下限値(下限距離Dlower)に達したときに自車両100を惰行させる惰行制御を実行し、車間距離Dが増大して所定距離範囲RDの上限値(上限距離Dupper)に達したときに自車両100を力行させる力行制御(最適力行制御)を実行することにより、車間距離Dが所定距離範囲RD内の距離に維持されるように自車両100の加減速を自律的に制御する制御である。本例において、所定距離範囲RDは、目標距離Dtgtを含む範囲に設定される。
【0034】
又、最適力行制御は、最も高いエネルギー効率で駆動装置20から駆動力が出力されるように駆動装置20の作動を制御する制御、特に、内燃機関21を最適動作点(又は最適動作点近傍の動作点)で作動させる制御である。又、惰行制御は、自車両100が惰性走行するように駆動装置20の作動を制御する制御である。
【0035】
尚、車両運転支援装置10は、第2車間距離制御の実行中に、自車速Vが上昇して後述する上限速度Vupperに達した場合、第2走行速度制御を実行するように構成されてもよい。
【0036】
一方、車両運転支援装置10は、ステップS330にて「No」と判定した場合、処理をステップS345に進め、自律走行制御として、第2走行速度制御を実行する。その後、車両運転支援装置10は、処理をステップS395に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0037】
第2走行速度制御は、自車速Vが上昇して所定の範囲(所定速度範囲RV)の上限値(上限速度Vupper)に達したときに惰行制御を開始し、自車速Vが低下して所定速度範囲RVの下限値(下限速度Vlower)に達したときに最適力行制御を開始することにより、自車速Vが所定速度範囲RV内の速度に維持されるように自車両100の加減速を自律的に制御する制御である。本例において、所定速度範囲RVは、設定速度Vsetを含む範囲に設定される。従って、第2走行速度制御は、自車速Vが設定速度Vsetを含む所定の範囲(所定速度範囲RV)で変動することを許容しつつ自車両100の力行と惰行とを交互に行う制御である。
【0038】
又、車両運転支援装置10は、ステップS325にて「No」と判定した場合、処理をステップS350に進め、第1走行速度制御を実行する。次いで、車両運転支援装置10は、処理をステップS395に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。尚、自律走行実施可能条件Cexeが成立していない場合、ステップS325にて「No」と判定される。即ち、所定の制御変更条件が成立した場合、ステップS325にて「No」と判定される。
【0039】
更に、車両運転支援装置10は、
図4に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、車両運転支援装置10は、
図4に示したルーチンのステップS400から処理を開始し、その処理をステップS405に進め、通知実施条件Cnotが成立したか否かを判定する。通知実施条件Cnotは、自律走行制御が第2車間距離制御又は第2走行速度制御から第1走行速度制御に変更されたとの条件である。
【0040】
車両運転支援装置10は、ステップS405にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS410に進め、制御モード変更理由を通知し、その後、処理をステップS415に進める。制御モード変更理由は、自律走行制御が第2車間距離制御又は第2走行速度制御から第1走行速度制御に変更された理由である。制御モード変更理由の通知は、通知装置70のディスプレイ71における画像表示及び/又は通知装置70のスピーカー72からの音声出力により実現される。
【0041】
一方、車両運転支援装置10は、ステップS405にて「No」と判定した場合、処理をステップS415に直接進める。
【0042】
車両運転支援装置10は、処理をステップS415に進めると、第1提案実施条件Cpps_1が成立しているか否かを判定する。第1提案実施条件Cpps_1は、所定時間の間、自律走行制御が第2走行速度制御から第2車間距離制御に変更された等の自律走行制御の変更が実施されておらず且つ設定速度Vsetの変更も実施されていないとの条件である。
【0043】
車両運転支援装置10は、ステップS415にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS420に進め、予測消費エネルギー量Econ_preを取得する。
【0044】
予測消費エネルギー量Econ_preは、現在の設定速度Vset(第1設定速度)とは異なる走行速度を設定速度Vsetとして自律走行制御により自車両100を走行させたときに駆動装置20にて消費されると予測されるエネルギー量である。
【0045】
予測消費エネルギー量Econ_preは、例えば、(1)現在の設定速度Vsetで自律走行制御により自車両100を所定時間、走行させたときに駆動装置20において実際に消費されたエネルギー量と、(2)現在の設定速度Vsetとは異なる設定速度Vsetで自律走行制御により自車両100を走行させたときの自車両100の走行抵抗と、に基づいて算出可能である。
【0046】
予測消費エネルギー量Econ_preの算出方法として、より具体的な例を挙げると、以下のような方法がある。即ち、現在の設定速度Vsetで自律走行制御により自車両100を所定時間、走行させたときに駆動装置20から自車両100に供給されたエネルギー量(車両供給エネルギー量)を求めるとともに、現在の設定速度Vsetで自律走行制御により自車両100を所定時間、走行させたときの自車両100の走行抵抗を求め、それら車両供給エネルギー量と自車両100の走行抵抗とに基づいて、自車両100の駆動系効率を求め、求めた駆動系効率を用いて現在の設定速度Vsetとは異なる設定速度Vsetで自律走行制御により自車両100を走行させたときに駆動装置20において消費されると予測されるエネルギー量を予測消費エネルギー量Econ_preとして算出するという方法がある。
【0047】
尚、本例において、駆動系効率は、自車両100の走行抵抗を車両供給エネルギー量で除算することにより得られる値である。又、走行抵抗は、例えば、自車両100の転がり抵抗と、自車両100に対する空気抵抗と、道路勾配抵抗(自車両100が走行している道路の勾配に起因する抵抗)と、加速抵抗(自車両100の加速に起因して発生する抵抗)と、を合計することにより得られる値である。尚、自車両100が走行している道路の勾配は、例えば、自車両100に搭載された加速度センサにより取得されればよく、或いは、GPS信号から求まる自車両100の現在位置と地図情報とに基づいて取得されればよい。
【0048】
又、空気抵抗は、下式1の計算式により得られる値である。下式1において、「Rair」は空気抵抗であり、「Cd」はいわゆるCd値(空気抵抗係数)であり、「ρair」は空気密度であり、「S」は自車両100の前面投影面積であり、「V」は自車速である。
【0049】
Rair=1/2・Cd・ρair・S・V2 …(1)
【0050】
次いで、車両運転支援装置10は、処理をステップS425に進め、予測消費エネルギー量Econ_preに基づいて第2提案実施条件Cpps_2が成立しているか否かを判定する。第2提案実施条件Cpps_2は、現在の設定速度Vsetで自律走行制御を実行した場合の消費エネルギー量Econよりも小さい消費エネルギー量Econで自律走行制御を実行することができる設定速度Vset(第2設定速度)が存在するとの条件である。
【0051】
車両運転支援装置10は、ステップS425にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS430に進め、設定速度変更提案を実施する。設定速度変更提案は、消費エネルギー量Econを低減することができる設定速度Vset(提案設定速度Vset_pps又は第2設定速度)が存在するため、設定速度Vsetを提案設定速度Vset_ppsに変更することを運転者に提案する処理である。このとき、提案設定速度Vset_ppsが複数存在する場合には、設定速度変更提案により、設定速度Vsetをそれら提案設定速度Vset_ppsの何れかに変更することが運転者に提案される。尚、設定速度変更提案は、通知装置70のディスプレイ71における画像表示及び/又は通知装置70のスピーカー72からの音声出力により実現される。
【0052】
次いで、車両運転支援装置10は、処理をステップS435に進め、承認条件Cappが成立したか否かを判定する。
【0053】
承認条件Cappは、設定速度変更提案に対して運転者が承認操作を行ったとの条件である。承認操作は、例えば、自車両100のハンドル等に設けられた承認ボタン等の承認操作子53に対する運転者による操作である。尚、ステップS430にて設定速度Vsetを複数の提案設定速度Vset_ppsの何れかに変更することが提案された場合、運転者は、複数の提案設定速度Vset_ppsの何れを選択する選択操作を行ったうえで、承認操作を行うことができる。選択操作は、例えば、自車両100のハンドル等に設けられた選択ボタン等の選択操作子54に対する運転者による操作である。
【0054】
車両運転支援装置10は、ステップS435にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS440に進め、設定速度Vsetを運転者が承認した提案設定速度Vset_ppsに変更する。そして、車両運転支援装置10は、処理をステップS495に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。これにより、以降、運転者が承認した提案設定速度Vset_ppsで自律走行制御が実行される。
【0055】
尚、車両運転支援装置10は、ステップS415又はステップS425又はステップS435にて「No」と判定した場合、処理をステップS495に直接進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0056】
又、車両運転支援装置10は、
図4に示したルーチンに代えて、
図5に示したルーチンを実行するように構成されてもよい。この場合、所定のタイミングになると、車両運転支援装置10は、
図5に示したルーチンのステップS500から処理を開始し、その処理をステップS505に進める。
【0057】
尚、
図5に示したルーチンにおいて、ステップS505乃至ステップS525の処理は、
図4に示したルーチンのステップS405乃至ステップS425の処理とそれぞれ同じである。又、
図5に示したルーチンにおいて、ステップS535及びステップS540の処理は、
図4に示したルーチンのステップS435及びステップS440の処理と同じである。
【0058】
車両運転支援装置10は、ステップS525にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS526に進め、目的地条件Cdesが成立しているか否かを判定する。目的地条件Cdesは、いわゆるナビゲーションシステム等により自車両100を到着させる目的地が設定されているとの条件である。
【0059】
車両運転支援装置10は、ステップS526にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS527に進め、提案設定速度Vset_ppsで自動走行制御を実行したときに自車両100が目的地に到着するまでに要する時間(所要時間Treq)を算出する。このとき、提案設定速度Vset_ppsが複数存在する場合には、車両運転支援装置10は、各提案設定速度Vset_ppsについて、所要時間Treqを算出する。
【0060】
次いで、車両運転支援装置10は、処理をステップS530に進め、設定速度変更提案を実施する。ここでの設定速度変更提案によれば、提案設定速度Vset_ppsが存在するため、設定速度Vsetを提案設定速度Vset_ppsに変更することが運転者に提案されるとともに、所要時間Treqが通知される。このとき、提案設定速度Vset_ppsが複数存在する場合には、設定速度変更提案により、設定速度Vsetをそれら提案設定速度Vset_ppsの何れかに変更することが運転者に提案されるとともに、各提案設定速度Vset_ppsに対応する所要時間Treqが通知される。
【0061】
一方、車両運転支援装置10は、ステップS526にて「No」と判定した場合、処理をステップS530に直接進め、設定速度変更提案を実施する。ここでの設定速度変更提案によれば、提案設定速度Vset_ppsが存在するため、設定速度Vsetを提案設定速度Vset_ppsに変更することが運転者に提案される。このとき、提案設定速度Vset_ppsが複数存在する場合には、設定速度変更提案により、設定速度Vsetをそれら提案設定速度Vset_ppsの何れかに変更することが運転者に提案される。
【0062】
以上が車両運転支援装置10の作動である。
【0063】
<効果>
自車速Vが大きくなると、自車両100の走行抵抗が大きくなる等の理由から、消費エネルギー量Econが大きくなる傾向にある。従って、走行速度制御の実行中に設定速度Vsetを変更したほうが消費エネルギー量Econが小さくなる場合、設定速度Vsetを変更するという選択肢がある。しかしながら、設定速度Vsetの変更を車両運転支援装置10が自発的に行った場合、自車両100の運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。
【0064】
車両運転支援装置10によれば、走行速度制御の実行中に設定速度Vsetを変更したほうが消費エネルギー量Econが小さくなる場合、設定速度Vsetを変更することが自車両100の運転者に提案される。そして、その提案に対する承認が運転者から得られた場合に設定速度Vsetの変更が行われる。このため、運転者に違和感を与えることなく、走行速度制御により消費エネルギー量Econを少なくすることができる。
【0065】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…車両運転支援装置、20…駆動装置、30…制動装置、60…周辺情報検出装置、70…通知装置、90…ECU、100…自車両、200…先行車