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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100032
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/06 20060101AFI20240719BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003730
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】紙元 順平
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 聖展
(72)【発明者】
【氏名】寺本 真輝人
(72)【発明者】
【氏名】栗木 駿
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC01
3C068CC07
3C068DD01
3C068JJ20
(57)【要約】
【課題】打撃用のドライバを取り付けたピストンを移動させて打ち込み具を打ち込む打ち込み工具において、ピストンの剛性を損なうことなく軽量化して打ち込み時の反動低減を図る。
【解決手段】ピストン13に蓄圧室に向けて開口する中空部13aを設ける。これによりピストン13が軽量化されて打ち込み時の反動が低減される。中空部13aは詰め部材13bで埋める。詰め部材13bは、ピストン13の素材の密度よりも小さい密度の材料で形成される。詰め部材13bは、中空部13aの少なくとも一部を埋める構成とする。これによりピストン13の剛性が確保される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み工具であって、
蓄圧室のガス圧によって移動するピストンと、
前記ピストンに設けられて前記ピストンと一体で移動して打ち込み具を打撃するドライバと、
前記ピストンに設けられ、かつ前記蓄圧室に向けて開口する中空部と、
前記ピストンの素材の密度よりも小さい密度の材料で形成され、かつ前記中空部の少なくとも一部を埋める詰め部材と、を備える打ち込み工具。
【請求項2】
請求項1記載の打ち込み工具であって、
前記中空部の全体が前記詰め部材で埋められる打ち込み工具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の打ち込み工具であって、
前記ピストンの前記素材がアルミニウムで、前記詰め部材が樹脂材料である、打ち込み工具。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記詰め部材が前記ピストンに一体成形されて前記中空部に充填されている打ち込み工具。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記ピストンの外周にシリンダとの間の気密性を保持するシール部材を有し、前記ピストンの移動方向について前記シール部材を跨るように前記中空部が前記ピストンに形成されている打ち込み工具。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記詰め部材は、前記蓄圧室に向いている受圧面を有し、前記受圧面は、前記蓄圧室に向いている前記ピストンの端面よりも面積が大きい打ち込み工具。
【請求項7】
打ち込み工具であって、
蓄圧室のガス圧によって移動するピストンと、
前記ピストンに設けられて前記ピストンと一体で移動して打ち込み具を打撃するドライバと、
前記ピストンに設けられ、かつ前記蓄圧室に向けて開口する中空部と、
前記中空部を前記蓄圧室に対して気密に塞ぐ蓋部材と、を備える打ち込み工具。
【請求項8】
請求項7記載の打ち込み工具であって、
前記中空部を形成する前記ピストンの内周壁に雌ねじが形成され、
前記蓋部材の外周面には、前記雌ねじに螺合する雄ねじが形成されている打ち込み工具。
【請求項9】
請求項8記載の打ち込み工具であって、
前記ピストンの移動方向において前記ピストンと前記蓋部材との間にシール部材が設けられる打ち込み工具。
【請求項10】
請求項7~9の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記ピストンには、前記中空部の前記開口の反対側において前記ドライバが螺合されるねじ孔が形成されている打ち込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、打ち込み具を被打ち込み材に打ち込むための打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、圧縮ガスの推力を打撃力として利用するガスバネ式の打ち込み工具が開示されている。ガスバネ式の打ち込み工具は、シリンダ内を上下動する中実のピストンと、ピストンに結合されて一体で打ち込み通路内を移動して打ち込み具を打撃するドライバを有する。ピストンとドライバは蓄圧室のガス圧で打ち込み方向に下動する。ピストンとドライバはリフト機構により反打ち込み方向に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-118833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
係る打ち込み工具では、打撃力を高めるためにピストンの高速化が図られると、打撃時の反動が大きくなる。打撃時の反動を低減するためピストンの軽量化が図られる。軽量化のためにピストンが例えば中空化されるとガス圧や打撃時の衝撃に対する耐久性の低下が問題になる。本開示では、ピストンの耐久性を確保しつつ軽量化により打撃力が高められるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面によれば、打ち込み工具は、例えば蓄圧室のガス圧によって移動するピストンと、ピストンに設けられてピストンと一体で移動して打ち込み具を打撃するドライバを有する。打ち込み工具は、例えばピストンに設けられ、かつ蓄圧室に向けて開口する中空部と、ピストンの素材の密度よりも小さい密度の材料で形成され、かつ中空部の少なくとも一部を埋める詰め部材を備える。
【0006】
従って、ピストンの軽量化が図られる。これによりピストンが高速化されて打撃力が高められるとともに、打ち込み時の反動低減が図られる。中空部の少なくとも一部に詰め部材が埋められることでピストンの耐久性が確保される。
【0007】
本開示の他の局面によれば、打ち込み工具は、例えば蓄圧室のガス圧によって移動するピストンと、ピストンに設けられてピストンと一体で移動して打ち込み具を打撃するドライバを有する。打ち込み工具は、ピストンに設けられ、かつ蓄圧室に向けて開口する中空部と、中空部を蓄圧室に対して気密に塞ぐ蓋部材を備える。
【0008】
従って、ピストンの気密性を確保しつつ軽量化が図られる。これによりピストンが高速化されて打撃力が高められるとともに、打ち込み時の反動低減が図られる。中空部に蓋部材が取り付けられることでピストンの耐久性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】打ち込み工具の右側面図である。
図2】打ち込みノーズ部を図1中矢印II方向から見た前面図である。
図3】工具本体及びリフト機構の内部構造を示す図である。
図4】ピストンとドライバの斜視図である。
図5】ピストン単体の縦断面図である。
図6】第2実施例に係るピストンの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば中空部の全体が詰め部材で埋められる。従って、ピストンの耐久性が高められる。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばピストンの素材がアルミニウムで、詰め部材が樹脂材料である。従って、ピストンの軽量化が図られる。
【0012】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば詰め部材がピストンに一体成形されて中空部に充填されている。従って、簡易な構成によりピストンの軽量化が図られる。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばピストンの外周にシリンダとの間の気密性を保持するシール部材を有し、ピストンの移動方向についてシール部材を跨るように中空部がピストンに形成されている。従って、ピストンの気密性を確保しつつ十分な大きさの中空部によりピストンの軽量化が図られる。
【0014】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば詰め部材は、蓄圧室に向いている受圧面を有し、受圧面は、蓄圧室に向いているピストンの端面よりも面積が大きい。従って、十分な大きさの中空部によりピストンの軽量化が図られる。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば中空部を形成するピストンの内周壁に雌ねじが形成され、蓋部材の外周面には、雌ねじに螺合する雄ねじが形成されている。従って、中空部によりピストンの軽量化が図られるとともに、蓋部材によりピストンの耐久性が確保される。蓋部材はねじ結合といった簡易な構成により中空部を埋める状態でピストンに取り付けられる。
【0016】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばピストンの移動方向においてピストンと蓋部材との間にシール部材が設けられる。従って、シール部材により中空部が蓄圧室に対して気密にシールされる。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばピストンには、中空部の開口の反対側においてドライバが螺合されるねじ孔が形成されている。従って、詰め部材とピストンの間がシール部材によってシールされていることで、蓄圧室のガス圧が中空部の開口の反対側に洩れることが防止される。これにより中空部の開口の反対側においてドライバのねじ結合が許容される。
【実施例0018】
本開示の実施例では、打ち込み工具1の一例として、シリンダ上方の蓄圧室のガス圧を打ち込み具tを打ち込むための推力として利用するガスばね式の打ち込み工具を例示する。打ち込み具tには例えば棒状の釘が適用される。以下の説明では、打ち込み具tの打ち込み方向を下方向とし、反打ち込み方向を上方向とする。打ち込み工具1の使用者は、図1において打ち込み工具1の右側(グリップ3側)に位置する。使用者の手前側を後方向(使用者側)、手前側と反対側を前方向とする。左右方向についてはグリップ3を把持した使用者を基準とする。
【0019】
図1~3に示すように打ち込み工具1は、工具本体10を有する。工具本体10は、概ね円筒形の本体ハウジング11にシリンダ12を収容した構成を有する。シリンダ12内にはピストン13が上下に往復動可能に収容される。ピストン13よりも上方のシリンダ12の上部は、蓄圧室14に連通される。蓄圧室14には、例えば空気等の圧縮ガスが封入される。蓄圧室14のガス圧は、ピストン13の上面に下動させる推力として作用する。
【0020】
工具本体10の下部に打ち込みノーズ部15が設けられている。打ち込みノーズ部15はドライバガイド16とコンタクトアーム16aを備える。ドライバガイド16の内周側が打ち込み通路17となっている。打ち込み通路17はシリンダ12の内周側に連通されている。打ち込み通路17内を長尺のドライバ20が上下に往復動可能に進入される。コンタクトアーム16aを被打ち込み材Wに押し付けて相対的に上動させることでスイッチレバー4の引き操作が有効になる。
【0021】
打ち込みノーズ部15の後面側にマガジン2が結合されている。マガジン2に多数本の打ち込み具tが装填される。マガジン2内から打ち込み通路17内に供給された1つの打ち込み具tが下動するドライバ20で打撃される。
【0022】
工具本体10の後面側に使用者が把持するグリップ3が設けられる。グリップ3の前部下面には、使用者が指先で引いて操作する起動用のスイッチレバー4が設けられる。グリップ3の後部にバッテリ取付部5が設けられている。バッテリ取付部5の後面に、バッテリパック6が装着される。バッテリパック6は上下にスライドさせることでバッテリ取付部5に対して着脱できる。バッテリパック6は、バッテリ取付部5から取り外して別途用意した充電器で充電することで繰り返し使用できる。バッテリパック6は、他の電動工具の電源としても利用できる汎用性を有する。バッテリパック6の電力を電源として後述するリフト機構30の電動モータ31が動作する。
【0023】
図2,3に示すようにシリンダ12の下部に、ピストン13の下動端での衝撃を吸収するための下動端ダンパ19が配置される。ピストン13の下面中心にドライバ20が結合されている。ピストン13の下面中央に二股状の連結部13gが設けられている。連結部13gにドライバ20の結合部20bが挿入されて連結ピン13hが差し込まれることでドライバ20がピストン13の下面に結合されている。これによりピストン13の中心軸線上にドライバ20が連結される。
【0024】
ドライバ20はピストン13の下面から下方へ長く延びている。ドライバ20の打ち込み方向の先端側(下部側)は下動端ダンパ19の内周側を経て打ち込み通路17内に進入している。ドライバ20は、ピストン13の上面に作用する蓄圧室14のガス圧によって打ち込み通路17内を下動する。打ち込み通路17内を下動するドライバ20の先端(下端)が打ち込み通路17内に供給された1本の打ち込み具tを打撃する。図3に示すようにピストン13が下動端に至って打撃された打ち込み具tが射出口18から射出される。射出された打ち込み具tは被打ち込み材Wに打ち込まれる。
【0025】
図1に示すようにグリップ3の下方にリフト機構30が設けられる。リフト機構30は工具本体10の後面とバッテリ取付部5に跨って配置されている。リフト機構30は駆動源として電動モータ31を有する。電動モータ31の前方に減速ギア列32を介して1つのリフタ33が支持されている。下動端に至ったドライバ20及びピストン13がリフト機構30により上方の待機位置に戻される。
【0026】
図2,3に示すようにドライバ20の右側部に、複数(図では8個)の係合部20aが設けられている。各係合部20aは、右方に突き出すラック歯形状を有している。複数の係合部20aはドライバ20の長手方向(上下方向)に一定の間隔で配置される。複数の係合部20aに、リフト機構30のリフタ33が順次係合される。
【0027】
ドライバ20の右側方にリフタ33が配置されている。リフタ33は、ドライバ20の係合部20aに順次係合される複数(例えば8個)の係合ピン34を有する。各係合ピン34には、円柱形の軸部材が用いられている。複数の係合ピン34は、リフタ33の外周縁に沿って一定間隔をおいて配置されている。回転方向の最初の係合ピン34と最終の係合ピン34との間には回転方向の大きな間隔(係合ピン34が存在しない領域)が設けられている。この間隔がドライバ20側に向けられると、ドライバ20の係合部20aに対するリフタ33の係合状態が解除される。図2は、係合状態が解除される直前の待機状態を示している。図3は係合状態が解除された打ち込み状態を示している。
【0028】
電動モータ31の起動によりリフタ33が矢印Rの方向(図2,3において反時計回り方向)に回転する。図3に示すようにドライバ20が下動端に至った後、リフタ33の矢印R方向の回転により、係合ピン34が順次ドライバ20の係合部20aに下方から係合されることでドライバ20が上方へ戻される。リフト機構30によりピストン13が上方へ戻されることで、蓄圧室14のガス圧が高められる。ドライバ20が図2に示す待機位置に戻されると、電動モータ31が停止して一連の打ち込み動作が終了する。
【0029】
再度スイッチレバー4が引き操作されると、リフト機構30が再起動する。これによりリフタ33が矢印R方向に回転してドライバ20の係合部20aに対するリフタ33の係合が外れる。これによりドライバ20がピストン13に作用する蓄圧室14のガス圧により下動する。ドライバ20が打ち込み通路17を下動することで、打ち込み具tが打撃されて被打ち込み材Wに打ち込まれる。
【0030】
図4,5に示すようにピストン13に中空部13aが設けられている。これによりピストン13の軽量化が図られている。中空部13aは蓄圧室14に向けて開口する円形凹形に設けられている。中空部13aは、詰め部材13bで埋められている。中空部13aの全体が詰め部材13bで埋められている。これによりピストン13の剛性が確保されている。
【0031】
詰め部材13bは、ピストン13の素材の密度よりも小さい密度の材料で形成されている。本実施例ではピストン13はアルミニウムを素材として形成されている。詰め部材13bは樹脂材料を素材として形成されている。詰め部材13bはピストン13に一体成形されて中空部13aの全体に充填されている。
【0032】
ピストン13の外周には1つのシール部材13iと2つの摺動部材13c,13dが装着されている。2つの摺動部材13c,13dの間にシール部材13iが装着されている。シール部材13iと摺動部材13c,13dはそれぞれ円環形を有して、ピストン13の外周の全周にわたって装着されている。シール部材13iによりシリンダ12とピストン13との間の気密性が確保される。樹脂製のリングである2つの摺動部材13c,13dによりピストン13のシリンダ12の内面に対する摺動性が確保される。中空部13aはピストン13の移動方向についてシール部材13iを上下に跨る領域に形成されている。
【0033】
詰め部材13bは蓄圧室14に対する受圧面13eを有する。ピストン13は中空部13aの周囲に蓄圧室14のガス圧を受ける端面13fを有する。詰め部材13bの円形の受圧面13eは、ピストン13の円環形の端面13fよりも面積が大きくなっている。
【0034】
以上説明した第1実施例によれば、ピストン13に中空部13aが設けられる。これによりピストン13の軽量化及び高速化が図られる。ピストン13が軽量化及び高速化されることで打撃力が高められるとともに、打ち込み時の反動低減が図られる。ピストン13の中空部13aには、ピストン13の素材の密度よりも小さい密度の樹脂材料で形成される詰め部材13bが充填される。これによりピストン13の剛性が高められて耐久性が確保される。
【0035】
第1実施例によれば、中空部13aの全体が詰め部材13bで埋められる。従って、ピストン13の耐久性が確実に高められる。
【0036】
第1実施例によれば、ピストン13の素材がアルミニウムで、詰め部材13bが樹脂材料である。従って、ピストン13の軽量化が図られる。
【0037】
第1実施例によれば、詰め部材13bがピストン13に一体成形されて中空部13aに充填されている。従って、簡易な構成によりピストン13の軽量化が図られる。
【0038】
第1実施例によれば、ピストン13の外周にシリンダ12に対する摺動性を確保する摺動部材13c,13dが装着される。ピストン13の移動方向についてシール部材13iを上下に跨るように中空部13aがピストン13に形成されている。従って、ピストン13の気密性を確保しつつ十分な大きさの中空部13aによりピストン13の軽量化が図られる。
【0039】
第1実施例によれば、詰め部材13bは、蓄圧室14に向いている受圧面13eを有する。受圧面13eは、蓄圧室14に向いているピストン13の端面13fよりも面積が大きい。従って、十分な大きさの中空部13aによりピストン13の軽量化が図られる。
【0040】
図6には第2実施例に係るピストン40が示されている。変更を要しない部材及び構成については同位の符合を用いて説明を省略する。第2実施例のピストン40はアルミニウム製で、蓄圧室14に開口する大口径の中空部40aを有する。ピストン40が外周面には1つのシール部材40fと2つの摺動部材40b,40cが装着されている。2つの摺動部材40b,40cの間にシール部材40fが装着されている。シール部材40fと摺動部材40b,40cはそれぞれ円環形を有して、ピストン40の外周の全周にわたって装着されている。シール部材40fによりシリンダ12とピストン40との間の気密性が確保される。樹脂製のリングである2つの摺動部材40b,40cによりピストン40のシリンダ12の内面に対する摺動性が確保される。中空部40aは、ピストン40の移動方向について上側の摺動部材40cを超えて下側の摺動部材40bの上方に至る深さで設けられている。
【0041】
中空部40aの開口は、アルミニウム製の蓋部材41で塞がれている。蓋部材41は、中空部40aに進入される本体部41aと、本体部41aの上部から側方へ張り出してピストン13の上端面に対向されるフランジ部41bを有する。本体部41aにより中空部40aの一部が埋められる。本体部41aの外周に雄ねじ41cが形成されている。ピストン40の内周壁に雌ねじ40dが形成されている。ピストン40の雌ねじ40dに雄ねじ41cが螺合されて、蓋部材41が蓄圧室14に対して中空部40aを塞ぐ状態に取り付けられている。
【0042】
ピストン40の上端面と蓋部材41のフランジ部41bと間にシール部材42が介装されている。これにより蓄圧室14と中空部40aとの間が気密にシールされる。これにより蓄圧室14のガス圧が中空部40aやピストン40の下面側(大気側)へ洩れることが防止されている。
【0043】
ピストン40の下面中心に概ね丸棒形のドライバ43がねじ結合される。ピストン40には、中空部40aの開口の反対側(中空部40aの底部)においてドライバ43が螺合されるねじ孔40eが形成されている。ねじ孔40eにドライバ43の上部に設けたねじ軸部43aが螺合されてピストン40の下面中心にドライバ43が結合されている。ねじ孔40eとねじ軸部43aとの間にシール部材44が介装されている。これにより、ピストン40の中空部40aとピストン40の下面側(大気側)との間が気密にシールされている。シール部材42とシール部材44により蓄圧室14とピストン40の下面側が二重にシールされている。これにより蓄圧室14のガス圧の洩れがより確実に防止される。
【0044】
第2実施例によれば、ピストン40に中空部40aが設けられる。これによりピストン40の軽量化及び高速化が図られる。ピストン40が軽量化及び高速化されることで打撃力が高められるとともに、打ち込み時の反動低減が図られる。ピストン40の中空部40aは、蓋部材41で塞がれる。蓋部材41の本体部41aが中空部40a内に螺合される。これによりピストン40の剛性が高められて耐久性が確保される。
【0045】
第2実施例によれば、蓋部材41は中空部40aの開口を塞ぎ、蓋部材41とピストン40の間は、シール部材42によってシールされている。従って、ピストン40の気密性を確保しつつ、ピストン40の軽量化が図られるとともに耐久性が確保される。
【0046】
第2実施例によれば、中空部40aを形成するピストン40の内周壁に雌ねじ40dが形成され、蓋部材41の外周面には、雌ねじ40dに螺合する雄ねじ41cが形成されている。従って、蓋部材41はねじ結合といった簡易な構成により中空部40aを埋める状態でピストン40に取り付けられる。
【0047】
第2実施例によれば、蓋部材41のフランジ部41bとピストン40の上面との間にシール部材42が設けられる。従って、蓋部材41がねじ結合されることで中空部40aが蓄圧室14に対して気密にシールされる。
【0048】
第2実施例によれば、ピストン40の下面にドライバ43がねじ結合される。ねじ孔40eとねじ軸部43aとの間にシール部材44が介装されている。シール部材42とシール部材44により蓄圧室14のガス圧がねじ結合部を経てピストン40の下面側に洩れることが防止される。これにより中空部40aの開口の反対側(ピストン40の下面側)においてドライバ43のねじ結合が許容される。
【0049】
以上説明した第1、第2実施例にはさらに変更を加えることができる。例えば、第1実施例において中空部13aの全体を詰め部材13bで埋める構成を例示したが、中空部13aの少なくとも一部が詰め部材により埋められる構成としてもよい。樹脂製の詰め部材13bを中空部13aに一体成形により充填する構成を例示したが、これに代えて例えば樹脂製の詰め部材を中空部に押し込んで充填する構成としてもよい。
【0050】
第1実施例では、シール部材13iを上下に跨る領域に大形の中空部13aを例示したが、より小さな領域の中空部に変更してもよい。また、より小径の中空部に変更してもよい。
【0051】
上下の全体がほぼ同径の中空部を例示したが、蓄圧室14側の開口が奥部(下部)よりも小径に縮小された壺形の中空部としてもよい。
【0052】
第1、第2実施例において、ピストン13(40)の素材はアルミニウムに代えて鋼製あるいは樹脂製に変更してもよい。また、第1実施例において詰め部材13bは樹脂製に代えて軽金属製あるいはゴム製に変更してもよい。第2実施例において、蓋部材41はアルミニウム製に代えて鋼製あるいはゴム製に変更してもよい。
【0053】
第2実施例ではねじ結合形のドライバ43を例示したが、第1実施例と同様ピン結合によりドライバが結合されるピストンについて例示した中空部40a及び蓋部材41を適用することができる。
【0054】
第1、第2実施例では、打ち込み具tとして棒状の釘を例示したが、U字形のステープルを打ち込む打ち込み工具について例示した中空ピストン13(40)を適用してもよい。
【0055】
第1、第2実施例の打ち込み工具1が本開示の1つの局面における打ち込み工具の一例である。第1実施例のピストン13、第2実施例のピストン40が本開示の1つの局面におけるピストンの一例である。第1、第2実施例の打ち込み具tが本開示の1つの局面における打ち込み具の一例である。
【0056】
第1実施例のドライバ20、第2実施例のドライバ43が本開示の1つの局面におけるドライバの一例である。第1、第2実施例の蓄圧室14が本開示の1つの局面における蓄圧室の一例である。第1実施例の中空部13a、第2実施例の中空部40aが本開示の1つの局面における中空部の一例である。
【0057】
第1実施例のアルミニウムが本開示の1つの局面におけるピストンの素材の一例である。第1実施例の樹脂材料が本開示の1つの局面における小さい密度の材料の一例である。第1実施例の詰め部材13bが本開示の1つの局面における詰め部材の一例である。第2実施例の蓋部材41が本開示の他の局面における蓋部材の一例である。
【符号の説明】
【0058】
W…被打ち込み材
t…打ち込み具
1…打ち込み工具
2…マガジン
3…グリップ
4…スイッチレバー
5…バッテリ取付部
6…バッテリパック
10…工具本体
11…本体ハウジング
12…シリンダ
13…ピストン(第1実施例)
13a…中空部、13b…詰め部材、13c,13d…摺動部材
13e…受圧面、13f…端面、13g…連結部、13h…連結ピン
13i…シール部材
14…蓄圧室
15…打ち込みノーズ部
16…ドライバガイド
16a…コンタクトアーム
17…打ち込み通路
18…射出口
19…下動端ダンパ
20…ドライバ
20a…係合部、20b…結合部
30…リフト機構
31…電動モータ
32…減速ギア列
33…リフタ
34…係合ピン
40…ピストン(第2実施例)
40a…中空部、40b,40c…摺動部材、40d…雌ねじ、40e…ねじ孔
40f…シール部材
41…蓋部材
41a…本体部、41b…フランジ部、41c…雄ねじ
42…シール部材
43…ドライバ
43a…ねじ軸部
44…シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6