(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100033
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
B25C 5/15 20060101AFI20240719BHJP
B25C 5/13 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B25C5/15
B25C5/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003731
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】紙元 順平
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 聖展
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA04
3C068BB01
3C068CC02
3C068CC07
3C068JJ13
(57)【要約】
【課題】ガス圧でドライバを下動させて打ち込み具を打ち込み、リフト機構によりドライバを上方に戻すガスバネ式の打ち込み工具において、リフト機構のコンパクト性を損なうことなくより幅広のステープルを打ち込み可能とする。
【解決手段】ドライバ20は打撃部材21と係合部材22を打ち込み方向に直交する方向に接合した2部材接合構造とする。リフタ33の係合部34を両端支持する第1フランジ33aと第2フランジ33bとの間隔に相当する軸方向領域E内に打撃部材21と係合部材22が収まるようにドライバ20が配置される。これによりドライバ20がリフタ33により接近して配置される。これによりリフト機構30のコンパクト性を阻害することなくより幅広の打撃部材21を用いることで幅広のステープルを打ち込み可能とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み工具であって、
ガス圧によって移動するピストンと、
前記ピストンに連結されて前記ピストンと一体で移動して打ち込み具を打撃する打撃部材と、
打ち込み方向と直交する方向に前記打撃部材と重なるように位置し、かつ前記打ち込み方向に沿って設けられた複数の係合部を具備する係合部材と、
電動モータにより回転して前記複数の係合部に順次係合する複数の被係合部を具備するリフタと、を備え、
前記複数の被係合部のそれぞれは、前記リフタの第1フランジに連結される第1端と、前記リフタの第2フランジに連結される第2端を備え、
前記被係合部の軸方向に直交する方向から見た際に、前記第1フランジと前記第2フランジの間隔に相当する軸方向領域に、前記複数の係合部と、前記複数の係合部に対応する前記打撃部材の係合部対応領域とが収まっている打ち込み工具。
【請求項2】
請求項1記載の打ち込み工具であって、
前記打撃部材と前記係合部材を連結する連結部を有する打ち込み工具。
【請求項3】
請求項2記載の打ち込み工具であって、
前記連結部を前記打ち込み方向に沿って案内する案内部を有する打ち込み工具。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記打撃部材は平板形状を有する打ち込み工具。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記打撃部材は、前記係合部材の幅内に位置する打ち込み工具。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記打撃部材と前記被係合部の最短距離は、前記打撃部材の幅より小さい打ち込み工具。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記係合部材の厚みは、前記打撃部材の厚みより大きい打ち込み工具。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記係合部材の厚み中心が前記ピストンの中心に一致する打ち込み工具。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記リフタの前記第1フランジと前記第2フランジが一部材で形成されている打ち込み工具。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記打撃部材と前記係合部材が相互に別部材であり、かつ相互に接合された打ち込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、打ち込み具を被打ち込み材に打ち込むための打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、圧縮ガスの推力を打撃力として利用するガスバネ式の打ち込み工具が開示されている。ガスバネ式の打ち込み工具は、シリンダ内を上下動するピストンと、ピストンに結合されて一体で打ち込み通路内を移動して打ち込み具を打撃するドライバを有する。ピストンとドライバは蓄圧室のガス圧で打ち込み方向に下動する。ピストンとドライバはリフト機構により反打ち込み方向に戻される。
【0003】
リフト機構は、ドライバに設けた複数の係合部に順次係合されるホイールを有する。ホイールは、ドライバの係合部に係合される片持ち支持構造の係合ピンを有する。ホイールは電動モータにより回転する。打ち込み動作後にホイールが回転してドライバの係合部にホイールの係合ピンが順次係合されることでドライバが反打ち込み方向に戻される。ピストンが反打ち込み方向に戻されることで、蓄圧室のガス圧が高められる。ドライバが戻されるとともに打ち込み通路に打ち込み具が供給される。反打ち込み方向の移動端付近で、ドライバに対するリフト機構の係合状態が解除される。これによりドライバがガス圧により移動して打ち込み具の打撃動作がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
係る打ち込み工具では、例えばステープルのような幅広の打ち込み具を打撃するためにより幅広のドライバが適用される。ドライバが幅広になると打ち込みノーズ部が大形化する問題がある。特にホイールの係合ピンが両端支持される構成ではホイールに対してドライバの干渉を避けるためにより打ち込みノーズ部が大形化しやすい。本開示では、打ち込みノーズ部の大形化を招くことなく幅広の打ち込み具を適用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面によれば、打ち込み工具は、例えばガス圧によって移動するピストンと、ピストンに連結されてピストンと一体で移動して打ち込み具を打撃する打撃部材を備える。打ち込み工具は、例えば打ち込み方向と直交する方向に打撃部材と重なるように位置し、かつ打ち込み方向に沿って設けられた複数の係合部を具備する係合部材を有する。打ち込み工具は、例えば電動モータにより回転して複数の係合部に順次係合する複数の被係合部を具備するリフタを備える。例えば複数の被係合部のそれぞれは、リフタの第1フランジに連結される第1端と、リフタの第2フランジに連結される第2端を備える。例えば被係合部の軸方向に直交する方向から見た際に、第1フランジと第2フランジの間隔に相当する軸方向領域に、複数の係合部と、複数の係合部に対応する打撃部材の係合部対応領域とが収まっている。
【0007】
従って、打撃部材と係合部材が被係合部の軸方向領域内にコンパクトに配置される。これにより打撃部材の幅広化が容易になる。打ち込みノーズ部の大形化を回避しつつ幅広の打撃部材を適用することで、幅広のステープルを安定して打ち込み可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】工具本体を
図1中矢印II方向から見た縦断面図である。本図は、ドライバが上方の待機位置に位置する状態を示している。
【
図3】工具本体を
図1中矢印II方向から見た縦断面図である。本図は、ドライバが下動端に位置する状態を示している。
【
図7】
図2中VII-VII線断面矢視図であって、打ち込み通路の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施態様において、打ち込み工具は、例えば打撃部材と係合部材を連結する連結部を有する。従って、打撃部材と係合部材の耐衝撃性が高められる。
【0010】
1つ又はそれ以上の実施態様において、打ち込み工具は、例えば連結部を打ち込み方向に沿って案内する案内部を有する。従って打撃部材の打ち込み方向への移動動作が安定化する。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば打撃部材は平板形状を有する。従って、コンパクトに配置された打撃部材により例えば幅広のステープルの打撃動作が安定化される。
【0012】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば打撃部材は、係合部材の幅内に位置する。従って、打撃部材がコンパクトに配置されて、打ち込みノーズ部の大形化が回避される。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば打撃部材と被係合部の最短距離は、打撃部材の幅より小さい。従って、打撃部材が被係合部に接近して配置されることで打ち込みノーズ部の大形化が回避される。
【0014】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば係合部材の厚みは、打撃部材の厚みより大きい。従って、被係合部に対して係合部が確実に係合されることで、打撃部材のスムーズな戻し動作が実現される。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば係合部材の厚み中心がピストンの中心に一致する。従って、ピストンのスムーズな戻し動作が実現される。
【0016】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばリフタの第1フランジと第2フランジが一部材で形成されている。従って、リフタの高い剛性が確保される。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば相互に別部材である打撃部材と係合部材が相互に接合されている。従って、打撃部材と係合部材の軽量化及び耐久性の確保が容易になる。打撃部材と係合部材が別部品として製作されることで、製作コストの低減が図られる。
【実施例0018】
本開示の実施例では、打ち込み工具1の一例として、シリンダ上方の蓄圧室のガス圧を打ち込み具tを打ち込むための推力として利用するガスばね式の打ち込み工具を例示する。打ち込み具tには例えばU字形のステープルが適用される。以下の説明では、打ち込み具tの打ち込み方向を下方向とし、反打ち込み方向を上方向とする。打ち込み工具1の使用者は、
図1において打ち込み工具1の右側(グリップ3側)に位置する。使用者の手前側を後方向(使用者側)、手前側と反対側を前方向とする。左右方向についてはグリップ3を把持した使用者を基準とする。
【0019】
図1~3に示すように打ち込み工具1は、工具本体10を有する。工具本体10は、概ね円筒形の本体ハウジング11にシリンダ12を収容した構成を有する。シリンダ12内にはピストン13が上下に往復動可能に収容される。ピストン13よりも上方のシリンダ12の上部は、蓄圧室14に連通される。蓄圧室14には、例えば空気等の圧縮ガスが封入される。蓄圧室14のガス圧は、ピストン13の上面に下動させる推力として作用する。
【0020】
工具本体10の下部に打ち込みノーズ部15が設けられている。打ち込みノーズ部15はドライバガイド16とコンタクトアーム16aを備える。ドライバガイド16の内周側が打ち込み通路17となっている。打ち込み通路17はシリンダ12の内周側に連通されている。打ち込み通路17内を長尺のドライバ20が上下に往復動可能に進入される。コンタクトアーム16aを被打ち込み材Wに押し付けて相対的に上動させることでスイッチレバー4の引き操作が有効になる。
【0021】
打ち込みノーズ部15の後面側にマガジン2が結合されている。マガジン2に多数本の打ち込み具tが装填される。工具本体10の打ち込み動作に連動して打ち込みノーズ部15の打ち込み通路17に、マガジン2内から打ち込み具tが1つずつ供給される。打ち込み通路17内に供給された1つの打ち込み具tが下動するドライバ20で打撃される。
【0022】
工具本体10の後面側に使用者が把持するグリップ3が設けられる。グリップ3の前部下面には、使用者が指先で引いて操作する起動用のスイッチレバー4が設けられる。グリップ3の後部にバッテリ取付部5が設けられている。バッテリ取付部5の後面に、バッテリパック6が装着される。バッテリパック6は上下にスライドさせることでバッテリ取付部5に対して着脱できる。バッテリパック6は、バッテリ取付部5から取り外して別途用意した充電器で充電することで繰り返し使用できる。バッテリパック6は、他の電動工具の電源としても利用できる汎用性を有する。バッテリパック6の電力を電源として後述するリフト機構30の電動モータ31が動作する。
【0023】
図2,3に示すようにシリンダ12の下部に、ピストン13の下動端での衝撃を吸収するための下動端ダンパ19が配置される。ピストン13の下面中心にドライバ20が結合されている。ドライバ20はピストン13の下面から下方へ長く延びている。ドライバ20の打ち込み方向の先端側(下部側)は下動端ダンパ19の内周側を経て打ち込み通路17内に進入している。ドライバ20は、ピストン13の上面に作用する蓄圧室14のガス圧によって打ち込み通路17内を下動する。打ち込み通路17内を下動するドライバ20の先端(下端)が打ち込み通路17内に供給された1本の打ち込み具tを打撃する。打撃された打ち込み具tが射出口18から射出される。射出された打ち込み具tは被打ち込み材Wに打ち込まれる。
【0024】
図1に示すようにグリップ3の下方にリフト機構30が設けられる。工具本体10の後面とバッテリ取付部5の下部との間に跨ってリフト機構30が設けられている。リフト機構30は駆動源として電動モータ31を有する。電動モータ31の前方に減速ギア列32を介して1つのリフタ33が支持されている。
図5,6に示すように減速ギア列32の出力軸35は軸受36,37を介してリフタハウジング38に回転可能に支持されている。出力軸35にリフタ33が支持されている。
【0025】
ドライバ20の右側部に、複数(図では6個)の係合部22aが設けられている。各係合部22aは、右方に突き出すラック歯形状を有している。複数の係合部22aはドライバ20の長手方向(上下方向)に一定の間隔で配置される。複数の係合部22aに、リフト機構30のリフタ33が順次係合される。
【0026】
ドライバ20の右側方にリフタ33が配置されている。リフタ33は、ドライバ20の係合部22aに順次係合される複数(例えば6個)の係合ピン34を有する。各係合ピン34には、円柱形の軸部材が用いられている。複数の係合ピン34は、リフタ33の外周縁に沿って一定間隔をおいて配置されている。回転方向の最初の係合ピン34と最終の係合ピン34との間には回転方向の大きな間隔(係合ピン34が存在しない領域)が設けられている。この間隔がドライバ20側に向けられると、ドライバ20の係合部22aに対するリフタ33の係合状態が解除される。
図2は、係合状態が解除される直前の待機状態を示している。
図3は係合状態が解除された打ち込み状態を示している。
【0027】
電動モータ31の起動によりリフタ33が矢印Rの方向(
図2,3において反時計回り方向)に回転する。
図3に示すようにドライバ20が下動端に至った後、リフタ33の矢印R方向の回転により、係合ピン34が順次ドライバ20の係合部22aに下方から係合されることでドライバ20が上方へ戻される。リフト機構30によりピストン13が上方へ戻されることで、蓄圧室14のガス圧が高められる。ドライバ20が
図2に示す待機位置に戻されると、電動モータ31が停止して一連の打ち込み動作が終了する。
【0028】
再度スイッチレバー4が引き操作されると、リフト機構30が再起動する。これによりリフタ33が矢印R方向に回転してドライバ20の係合部22aに対するリフタ33の係合が外れる。これによりドライバ20がピストン13に作用する蓄圧室14のガス圧により下動する。ドライバ20が打ち込み通路17を下動することで、打ち込み具tが打撃されて被打ち込み材Wに打ち込まれる。
【0029】
図4に示すようにドライバ20は、打撃部材21と係合部材22を接合して一体化した2部材接合構造を有する。打撃部材21と係合部材22はそれぞれ帯板形状を有する。打撃部材21と係合部材22は同じ材質の鋼材を素材として同じ熱処理及び表面処理が施されて一定の耐摩耗性や靭性が確保されている。
【0030】
打撃部材21の前面と係合部材22の後面が相互に接合される。打撃部材21の上側ほぼ半分の領域と係合部材22の下側ほぼ半分の領域が接合部Jとされる。打撃部材21と係合部材22は例えば銅ロウ接や溶接により強固に接合されている。
【0031】
係合部材22の上部にピストン13に対する結合部22bが設けられている。ピストン13の下面中央に二股状の連結部13aが設けられている。連結部13aに結合部22bが挿入されて連結ピン13bが差し込まれることで係合部材22がピストン13の下面に結合されている。これによりピストン13の中心軸線上に係合部材22が連結される。係合部材22の厚みe2の中心がピストン13の中心に一致している。係合部材22の厚みe2は、打撃部材21の連結部21jを除いた部位の厚みe1より大きい(e1<e2)。
【0032】
係合部材22の右側部に前記した6つの係合部22aが設けられている。係合部材22には2つの凹部22c,22dが設けられている。2つの凹部22c,22dは、それぞれ板厚方向に貫通する長溝孔形状を有している。
【0033】
打撃部材21の前面に連結部21jが設けられている。連結部21jは、突条形を有し、打撃部材21の全長にわたって設けられている。連結部21jは、打撃部材21の左右幅方向の中央に沿って一定の幅で前方へ突き出す状態に設けられている。連結部21jの前面が係合部材22の後面に接合されている。突条形の連結部21jによりドライバ20の耐衝撃性が高められる。
【0034】
打撃部材21は係合部材22の長手方向中程から打ち込み方向の先端側に突き出す長さを有している。打撃部材21は、係合部材22の係合部22aを除く幅d2よりも小さい幅d1の帯板形状を有する(d1<d2)。打撃部材21の先端20aで打ち込み具tが打撃される。
【0035】
打撃部材21には1つの当接部21aが設けられている。当接部21aは連結部21jの前面に、連結部21jと同じ幅で設けられている。当接部21aは前方(係合部材22側)に突き出している。当接部21aに係合部材22の打ち込み方向の先端22eが当接されている。これにより係合部材22に対する打撃部材21の上方への位置ズレが規制されて、ドライバ20の打ち込み時の高い耐衝撃性が確保されている。
【0036】
当接部21aの前端には上方へ張り出す引掛部21cが設けられている。引掛部21cは係合部材22の反接合面側(前面側)に張り出す。引掛部21cにより係合部材22の接合離間方向(剥離方向)の力が受けられることで、打撃部材21と係合部材22の接合強度が高められる。
【0037】
打撃部材21の前面であって当接部21aの上方に2つの凸部21d,21eが設けられている。2つの凸部21d,21eは連結部21jの前面に、連結部21jと同じ幅で設けられている。2つの凸部21d,21eは前方(係合部材22側)に突き出している。2つの凸部21d,21eはそれぞれ係合部材22の凹部22c,22dに挿入されている。2つの凸部21d,21eの前端にそれぞれ上方に張り出す引掛部21f,21gが設けられている。引掛部21f,21gは係合部材22の反接合面側(前面側)に張り出している。引掛部21f,21gによっても係合部材22の接合離間方向(剥離方向)の力が受けられる。これにより打撃部材21と係合部材22の接合強度が一層高められている。
【0038】
図6に示すように打撃部材21と係合部材22との間には連結部21jの高さに相当する間隔Gが設けられている。
図7に示すように打ち込み通路17内には、打撃部材21を通過させる案内壁部17aと、係合部材22を通過させる逃がし通路17bが前後にズレて設けられている。
【0039】
案内壁部17aと逃がし通路17bとの間に案内部としての案内レール17cが設けられている。案内レール17cは、左右に対向して設けられている。左右の案内レール17cは、打ち込み方向に沿って延在されている。左右の案内レール17c間にドライバ20の連結部21jが位置する。これにより連結部21jが左右の案内レール17cにより打ち込み方向に案内される。連結部21jが左右の案内レール17cにより案内されることで、ドライバ20が前後左右(幅方向及び板厚方向)にがたつきを生ずることなく上下に案内される。
【0040】
図5,6に示すようにリフタ33は前側の第1フランジ33aと後側の第2フランジ33bを一体に有する。第1フランジ33aと第2フランジ33bは相互に平行に径方向に張り出している。第1フランジ33aは円筒形の本体部33cの前端から径方向に張り出している。第2フランジ33bは本体部33cの後端から径方向に張り出している。第1フランジ33aと第2フランジ33bと本体部33cは相互に一体に形成されている。本体部33cの内周孔33dに減速ギア列32の出力軸35が挿通されている。本体部33cの内周孔33dを介してリフタ33は出力軸35に回転について一体化されている。
【0041】
第1フランジ33aと第2フランジ33bとに跨って複数の係合ピン34が両端支持されている。各係合ピン34の第1端(前端)34aが第1フランジ33aに支持されている。各係合ピン34の第2端(後端)34bが第2フランジ33bに支持されている。
【0042】
係合ピン34の軸方向(前後方向)に直交する方向(左右方向若しくは上下方向)から見た際に、第1フランジ33aと第2フランジ33bの間隔Lに相当する軸方向領域Eにドライバ20が配置されている。これにより軸方向領域E内に、打撃部材21と係合部材22が収まっている。従って、
図4に示すように少なくともドライバ20の長手方向の領域について、係合部材22の係合部22aが存在する係合領域Kと、係合領域Kに対応する打撃部材21の係合部対応領域Dとがリフタ33の軸方向領域E内に収まっている。
【0043】
図6に示すように打撃部材21と係合ピン34の最短距離d3は、打撃部材21の幅d1より小さい(d1>d3)。リフタ33が左右方向の相対位置について幅d1より小さい距離d3までドライバ20(打撃部材21)に接近して配置されることで、リフト機構30の主として左右方向のコンパクト化が図られている。
【0044】
本実施例では、リフト機構30の左右方向のコンパクト化を図るために打撃部材21と係合部材22を板厚方向(前後方向)に重ね合わせた2部材接合構造のドライバ20が、係合ピン34の軸方向領域E内に収まるようにリフタ33の第1フランジ33aと第2フランジ33bの間隔Lが設定されている。
【0045】
なお、第1フランジ33aと第2フランジ33bとの前後方向の間隔Lを確保するためリフタ33が後方(出力軸35の軸方向の後方)に大形化することは許容される。後方に大形化した場合でもリフト機構30の左右方向のコンパクト化が阻害されず、且つリフト機構30の前方(出力軸35の軸方向の前方)への大形化が回避されればいわゆるセンターハイトH(打ち込みノーズ部15の前端の打ち込み通路17からの高さ、
図7参照)が大きくなることがない。従って、例えば壁際での打ち込み作業の作業性が低下することがないからである。
【0046】
以上説明した実施例によれば、ドライバ20の打撃部材21と係合部材22は、リフタ33の係合ピン34の軸方向領域E(第1フランジ33aと第2フランジ33bとの間隔L)内に収まるように配置される。従って、打撃部材21と係合部材22が係合ピン34の軸方向領域E内にコンパクトに配置される。これにより打撃部材21の幅広化が容易になる。リフト機構30ひいては打ち込みノーズ部15の大形化を回避しつつ幅広の打撃部材21を適用することで、幅広のステープルを安定して打ち込み可能となる。
【0047】
実施例によれば、ドライバ20は、打撃部材21と係合部材22を連結する突条形の連結部21jを有する。従って、打撃部材21と係合部材22の耐衝撃性が高められる。
【0048】
実施例によれば、打ち込み通路17に、連結部21jを打ち込み方向に沿って案内する案内レール17cを有する。従ってドライバ20が打ち込み方向へがたつきなく案内されることで打ち込み動作の安定化が図られる。
【0049】
実施例によれば、打撃部材21は平板形状を有する。従って、コンパクトに配置された打撃部材21の先端20aにより幅広のステープルの打撃動作が安定化される。
【0050】
実施例によれば、打撃部材21は、係合部材22の幅内(d1<d2)に位置する。従って、打撃部材21がコンパクトに配置されて、打ち込みノーズ部15の大形化が回避される。
【0051】
実施例によれば、打撃部材21と係合ピン34の最短距離d3は、打撃部材21の幅d1より小さい(d1>d3)。従って、打撃部材21が係合ピン34に接近して配置されることで打ち込みノーズ部15の大形化が回避される。
【0052】
実施例によれば、係合部材22の厚みe2は、打撃部材21の厚みe1より大きい(e1<e2)。従って、係合ピン34に対して各係合部22aが確実に係合されることで、打撃部材21のスムーズな戻し動作が実現される。
【0053】
実施例によれば、係合部材22の厚み中心がピストン13の中心に一致する。従って、ピストン13のスムーズな戻し動作が実現される。
【0054】
実施例によれば、リフタ33の第1フランジ33aと第2フランジ33bが本体部33cを介して一部材で形成されている。従って、リフタ33の高い剛性が確保される。
【0055】
実施例によれば、相互に別部材である打撃部材21と係合部材22が相互に接合されている。従って、打撃部材21と係合部材22の軽量化及び耐久性の確保が容易になる。打撃部材21と係合部材22が別部品として製作されることで、製作コストの低減が図られる。
【0056】
実施例には種々変更を加えることができる。例えば打撃部材21の前面側に係合部材22を接合したドライバ20を例示したが、打撃部材を係合部材の前面側に接合したドライバについても例示した軸方向領域E内に収める構成を適用できる。
【0057】
実施例では、係合部材22の厚み中心をピストン13の中心軸に一致させる構成を例示したが、打撃部材の厚み中心をピストン13の中心軸に一致させる構成としてもよい。
【0058】
実施例では、ドライバ20の長手方向の領域について、打撃部材21の全体及び係合部材22の結合部22bを除く領域の全体が軸方向領域E内に収まる構成を例示したが、一連の打ち込み動作においてリフタ33の側方を通過しない領域については軸方向領域E内をはみ出る構成に変更してもよい。例えば
図2に示すように打撃部材21の下部領域(当接部21aよりも下方の領域)はリフタ33の側方よりも常時下方に位置する。また、例えば
図3に示すように係合部材22の上部領域(最上部の係合部22aよりも上方の領域)はリフタ33の側方よりも常時上方に位置する。これらの領域については軸方向領域Eからはみ出る場合であっても、少なくともドライバ20の長手方向の領域について、係合部材22の係合部22aが存在する係合領域Kと、係合領域Kに対応する打撃部材21の係合部対応領域Dとがリフタ33の軸方向領域E内に収まる構成であれば、リフタ33に対してドライバ20を接近させてリフト機構30及び打ち込みノーズ部15のコンパクト化を図ることができる。
【0059】
実施例の打ち込み工具1が本開示の1つの局面における打ち込み工具の一例である。実施例のピストン13が本開示の1つの局面におけるピストンの一例である。実施例の打ち込み具tが本開示の1つの局面における打ち込み具の一例である。実施例の打撃部材21が本開示の1つの局面における打撃部材の一例である。実施例の係合部材22が本開示の1つの局面における係合部材の一例である。実施例の係合部22aが本開示の1つの局面における係合部の一例である。
【0060】
実施例の電動モータ31が本開示の1つの局面における電動モータの一例である。実施例の係合ピン34が本開示の1つの局面における被係合部の一例である。実施例のリフタ33が本開示の1つの局面におけるリフタの一例である。実施例の係合ピン34が本開示の1つの局面における係合ピン34の一例である。
【0061】
実施例の第1フランジ33aが本開示の1つの局面における第1フランジの一例である。実施例の第2フランジ33bが本開示の1つの局面における第2フランジの一例である。実施例の第1端34aが本開示の1つの局面における第1端の一例である。実施例の第2端34bが本開示の1つの局面における第2端の一例である。実施例の軸方向領域Eが本開示の1つの局面における軸方向領域の一例である。実施例の係合部対応領域Dが本開示の1つの局面における係合部対応領域の一例である。