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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100053
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】液体供給装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240719BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240719BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/175 201
B41J2/18
B41J2/175 501
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003762
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】林田 健太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA26
2C056EC17
2C056EC40
2C056KA01
2C056KB16
2C056KB19
2C056KB26
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】液体供給路において、インクの溜まりを抑制することにより、固形物が析出し難い液体供給装置を提供する。
【解決手段】画像記録装置100は、インクサブタンク47と、インクサブタンク47から供給されたインクを吐出するヘッドユニット38と、インクサブタンク47とヘッドユニット38とを繋ぐ液体供給路61と、を備える。液体供給路61は、外テーパ面73を有するオス型ルアーフィッティング70と、内テーパ面83を有するメス型ルアーフィッティング80と、を有する。オス型ルアーフィッティング70は、メス型ルアーフィッティング80よりも液体供給路61において供給向き6の上流に位置しており、且つメス型ルアーフィッティング80に嵌合されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクと、
上記タンクから供給された液体を吐出するためのインクジェットヘッドと、
上記タンクと上記インクジェットヘッドとを繋ぐ液体供給路と、を備えており、
上記液体供給路は、
第1基端から第1先端へ向けて外径が縮小する外テーパ面を有するオス型ルアーフィッティングと、
第2先端から第2基端へ向けて内径が縮小する内テーパ面を有するメス型ルアーフィッティングと、を有しており、
上記オス型ルアーフィッティングは、上記メス型ルアーフィッティングよりも上記液体供給路において上記タンクから上記インクジェットヘッドへ液体が流れる供給向きの上流に位置しており、且つ上記メス型ルアーフィッティングに嵌合されており、
上記オス型ルアーフィッティングと上記メス型ルアーフィッティングとが嵌合された嵌合状態において、上記外テーパ面と上記内テーパ面とが接触しており、
上記液体は、樹脂微粒子と水とを含有する液体供給装置。
【請求項2】
上記オス型ルアーフィッティングおよび上記メス型ルアーフィッティングは、上記液体供給路において、他のオス型ルアーフィッティングおよびメス型ルアーフィッティングよりも、上記インクジェットヘッドに最も近い位置にある請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
上記液体供給路において、嵌合されたオス型ルアーフィッティングおよびメス型ルアーフィッティングが複数あり、
上記メス型ルアーフィッティングよりも上記供給向きの上流に位置して上記メス型ルアーフィッティングに嵌合された上記オス型ルアーフィッティングは、上記複数のうちの半数以上である請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項4】
上記液体供給路において、嵌合されたオス型ルアーフィッティングおよびメス型ルアーフィッティングが複数あり、
上記オス型ルアーフィッティングおよび上記メス型ルアーフィッティングは、上記複数のすべてである請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項5】
上記液体供給路に位置しており、液体中の固形物を捕捉するフィルタをさらに有しており、
上記オス型ルアーフィッティングおよび上記メス型ルアーフィッティングは、上記液体供給路において、上記フィルタよりも上記供給向きの下流に位置する請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項6】
上記インクジェットヘッドと上記タンクとを繋ぐ液体排出路と、
上記液体供給路を通じて上記タンクから上記インクジェットヘッドへ液体を供給し、上記液体排出路を通じて上記インクジェットヘッドから上記タンクへ液体を排出するための圧力を加えるポンプと、をさらに備える請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項7】
コントローラをさらに備えており、
上記コントローラは、上記液体供給路における液体の流量が3mL/秒未満の第1値となるように上記ポンプを駆動する請求項6に記載の液体供給装置。
【請求項8】
上記コントローラは、液体の流量が上記第1値未満の第2値となるように上記ポンプの駆動を開始したのち、上記第1値となるように上記ポンプを駆動する請求項7に記載の液体供給装置。
【請求項9】
上記コントローラは、
液体の流量が上記第1値となるように上記ポンプを駆動した後、上記第1値未満の第3値となるように上記ポンプを駆動し、
液体の流量が上記第3値となるように上記ポンプを駆動したのち、上記ポンプを停止する請求項7に記載の液体供給装置。
【請求項10】
上記樹脂微粒子は、ガラス転移温度が50℃未満である請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項11】
上記液体は、少なくとも1種類の有機溶剤をさらに含有しており、
上記有機溶剤のうち、25℃において液体である有機溶剤が液体全体に対して10重量パーセント以下である請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項12】
上記液体の表面張力が、32mN/m以下である請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項13】
上記液体は、顔料を色材としてさらに含有する請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項14】
ポンプを更に備えており、
上記ポンプは、上記液体供給路において上記タンクから上記インクジェットヘッドへ向かう供給向きに液体を流通させる請求項1に記載の液体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに貯留された液体をインクジェットヘッドへ供給する液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドからインクを吐出する液体吐出装置として、例えば、特許文献1に記載されたインクジェット記録装置が知られている。特許文献1の記録装置は、記録ヘッドと、インクタンクと、記録ヘッドとインクタンクとを繋ぐ供給路と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-232447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
供給路は、チューブに加えてルアーフィッティングなどにより構成される。これは、供給路は、装置の内部空間において占有領域が小さくなるようにコンパクトに設計されるためである。また、供給路の設計において、記録ヘッドなどの交換の容易性などが考慮される。供給路においてルアーフィッティングを用いた接続箇所は、記録ヘッドなどの交換において容易に接続が解除できる。
【0005】
ルアーフィッティングによる接続には、オス型ルアーフィッティングおよびメス型ルアーフィッティングによる接続がある。オス型ルアーフィッティングは、基端から先端へ向けて外径が縮小する外テーパ面を有する。メス型ルアーフィッティングは、先端から基端へ向けて内径が縮小する内テーパ面を有する。これらが嵌合されると、外テーパ面と内テーパ面とが接触する。
【0006】
供給路にインクが流れると、外テーパ面と内テーパ面とが接触する箇所に向けてインクが進入することがある。外テーパ面と内テーパ面とが接触する箇所に向けて進入したインクは、排出されずに留まり乾燥することがある。溜まったインクが乾燥すると、上記箇所付近で当該インクから固形物が析出する場合がある。その後に、供給路にインクが流入した場合に、析出した固定物がインクに溶解しないまま、記録ヘッドに流入してしまうことを、本発明者が見出した。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体供給路において、インクの溜まりを抑制することにより、固形物が析出し難い液体供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る液体供給装置は、液体を貯留するタンクと、上記タンクから供給された液体を吐出するためのインクジェットヘッドと、上記タンクと上記インクジェットヘッドとを繋ぐ液体供給路と、を備える。上記液体供給路は、第1基端から第1先端へ向けて外径が縮小する外テーパ面を有するオス型ルアーフィッティングと、第2先端から第2基端へ向けて内径が縮小する内テーパ面を有するメス型ルアーフィッティングと、を有する。上記オス型ルアーフィッティングは、上記メス型ルアーフィッティングよりも上記液体供給路において上記タンクから上記インクジェットヘッドへ液体が流れる供給向きの上流に位置しており、且つ上記メス型ルアーフィッティングに嵌合されている。上記オス型ルアーフィッティングと上記メス型ルアーフィッティングとが嵌合された嵌合状態において、上記外テーパ面と上記内テーパ面とが接触している。上記液体は、樹脂微粒子と水とを含有する。
【0009】
オス型ルアーフィッティングの外テーパ面とメス型ルアーフィッティングの内テーパ面とは、外テーパ面の断面の円周の大きさが次第に小さくなる向きの下流端において隙間が生じ得る。外テーパ面の断面の円周の大きさが次第に小さくなる向きが、液体供給路の供給向きと合致する。したがって、液体供給路における液体の流れが上記隙間へ向かっていないので、上記隙間に液体が進入し難い。その結果、上記隙間において、インクの溜まりが抑制されるので、固形物が析出し難くなる。
【0010】
(2) 上記オス型ルアーフィッティングおよび上記メス型ルアーフィッティングは、上記液体供給路において、他のオス型ルアーフィッティングおよびメス型ルアーフィッティングよりも、上記インクジェットヘッドに最も近い位置にあってもよい。
【0011】
固形物がインクジェットヘッドへ流れ込むリスクが比較的低い。
【0012】
(3) 上記液体供給路において、嵌合されたオス型ルアーフィッティングおよびメス型ルアーフィッティングが複数あり、上記メス型ルアーフィッティングよりも上記供給向きの上流に位置して上記メス型ルアーフィッティングに嵌合された上記オス型ルアーフィッティングは、上記複数のうちの半数以上であってもよい。
【0013】
(4) 上記液体供給路において、嵌合されたオス型ルアーフィッティングおよびメス型ルアーフィッティングが複数あり、上記オス型ルアーフィッティングおよび上記メス型ルアーフィッティングは、上記複数のすべてであってもよい。
【0014】
(5) 上記液体供給路に位置しており、液体中の固形物を捕捉するフィルタをさらに有しており、上記オス型ルアーフィッティングおよび上記メス型ルアーフィッティングは、上記液体供給路において、上記フィルタよりも上記供給向きの下流に位置してもよい。
【0015】
フィルタより供給向きの下流において、固形物が析出し難くなる。
【0016】
(6) 上記液体供給装置は、上記インクジェットヘッドと上記タンクを繋ぐ液体排出路と、上記液体供給路を通じて上記タンクから上記インクジェットヘッドへ液体を供給し、上記液体排出路を通じて上記インクジェットヘッドから上記タンクへ液体を排出するための圧力を加えるポンプと、をさらに備えてもよい。
【0017】
液体供給路においてポンプによる圧力が液体に加わっても、オス型ルアーフィッティングの外テーパ面とメス型ルアーフィッティングの内テーパ面とが接触する箇所において、上記隙間に液体が進入し難い。その結果、インクの溜まりが抑制されるので、固形物が析出し難くなる。
【0018】
(7) 上記液体供給装置は、コントローラをさらに備えており、上記コントローラは、上記液体供給路における液体の流量が3mL/秒未満の第1値となるように上記ポンプを駆動してもよい。
【0019】
ポンプにより液体供給路において液体に加わる圧力が所定未満となるので、オス型ルアーフィッティングの外テーパ面とメス型ルアーフィッティングの内テーパ面とが接触する箇所に液体が進入し難い。
【0020】
(8) 上記コントローラは、液体の流量が上記第1値未満の第2値となるように上記ポンプの駆動を開始したのち、上記第1値となるように上記ポンプを駆動してもよい。
【0021】
第1値となるようにポンプを駆動する場合と比較して、液体供給路における液体の圧力の変動が緩やかとなるので、オス型ルアーフィッティングの外テーパ面とメス型ルアーフィッティングの内テーパ面とが接触する箇所に液体が進入し難い。
【0022】
(9) 上記コントローラは、液体の流量が上記第1値となるように上記ポンプを駆動した後、上記第1値未満の第3値となるように上記ポンプを駆動し、液体の流量が上記第3値となるように上記ポンプを駆動したのち、上記ポンプを停止してもよい。
【0023】
第1値からポンプを停止する場合と比較して、液体供給路における液体の圧力の変動が緩やかとなるので、オス型ルアーフィッティングの外テーパ面とメス型ルアーフィッティングの内テーパ面とが接触する箇所に液体が進入し難い。
【0024】
(10) 上記樹脂微粒子は、ガラス転移温度が50℃未満であってもよい。
【0025】
(11) 上記液体は、少なくとも1種類の有機溶剤をさらに含有しており、上記有機溶剤のうち、25℃において液体である有機溶剤が液体全体に対して10重量パーセント以下であってもよい。
【0026】
(12) 上記液体の表面張力が、32mN/m以下であってもよい。
【0027】
(13) 上記液体は、顔料を色材としてさらに含有してもよい。
【0028】
(14) 上記液体供給装置は、ポンプを更に備えており、上記ポンプは、上記液体供給路において上記タンクから上記インクジェットヘッドへ向かう供給向きに液体を流通させてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、液体供給路において、インクの溜まりが抑制されることにより、固形物が析出し難い液体供給装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の実施形態に係る画像記録装置100の外観斜視図である。
図2図2は、図1のII-II断面を示す断面図である。
図3図3は、オス型ルアーフィッティング70の斜視図である。
図4図4は、メス型ルアーフィッティング80の斜視図である。
図5図5は、嵌合状態のオス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80の部分断面図である。
図6図6は、コントローラ130を示すブロック図である。
図7図7は、コントローラ130による液体供給路61における流量の制御を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明においては、画像記録装置100が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、排出口33が設けられている側を手前側(前面)として前後方向8が定義され、画像記録装置100を手前側(前面)から見て左右方向9が定義される。
【0032】
[画像記録装置100の外観構成]
図1に示される画像記録装置100は、インクジェット記録方式でロール体37(図2参照)から延びるシートSに画像を記録する。画像記録装置100は、液体吐出装置の一例である。
【0033】
図1に示されるように、画像記録装置100は、筐体30を備える。筐体30は、上筐体31及び下筐体32を備える。上筐体31及び下筐体32は、全体として概ね直方体形状であって、卓上に載置可能な大きさである。すなわち、画像記録装置100は、卓上に載置されて使用されるのに適している。もちろん、画像記録装置100は、床面やラックに載置されて使用されてもよい。なお、筐体30の内部には、各部材を支持するためのフレームが適宜設けられてもよい。
【0034】
図2に示されるように、上筐体31は、下筐体32によって回動可能に支持されている。上筐体31は、後下端部に設けられ且つ左右方向9に延びる回動軸15周りに、図2に示される閉位置と、開位置とに回動可能である。なお、上筐体31が回動する構成は、回動軸15によるものに限らず、例えば蝶番などによって回動してもよい。
【0035】
図2に示されるように、上筐体31が閉位置のとき、上筐体31の内部空間31Aと下筐体32の内部空間32Aとが、外部に対して遮蔽される。上筐体31が開位置のとき、上筐体31の内部空間31Aと下筐体32の内部空間32Aとが、外部に対して露出される。
【0036】
図1に示されるように、下筐体32の前面32Fには、左右方向9に長いスリット状の排出口33が形成されている。排出口33からは、画像記録済みのシートS(図2参照)が排出される。
【0037】
上筐体31の前面31Fには、操作パネル44が設けられている。ユーザは、操作パネル44に、画像記録装置100を動作させたり各種設定を確定したりするための入力を行う。
【0038】
図1に示されるように、下筐体32の右面32Rには、右カバー35Aが位置する。右カバー35Aの開閉により、シート収容空間32Cに位置するホルダ35等(図2参照)が露出したり遮蔽されたりする。
【0039】
図1に示されるように、下筐体32の前面32Fには、前カバー39が位置する。前カバー39は、下端付近において左右方向9に沿って延びる回動軸(不図示)周りに、上端側が前方へ倒れるように開くことができる。前カバー39の開閉により、下筐体32の内部空間32Aに位置する装着ケース110等(図2参照)が露出されたり遮蔽されたりする。
【0040】
[画像記録装置100の内部構成]
図2に示されるように、内部空間31A,32Aには、ホルダ35、テンショナ45、搬送ローラ対36、搬送ローラ対40、ヘッドユニット38、プラテン51、インクタンク34、装着ケース110、およびインクサブタンク47などが配置されている。なお、図示されていないが、内部空間32Aには、定着ユニット、画像センサ、カッタ、メンテナンス機構等が位置してもよい。ヘッドユニット38は、インクジェットヘッドの一例である。インクサブタンク47は、タンクの一例である。
【0041】
内部空間32Aには、隔壁41が設けられている。隔壁41は、内部空間32Aの後下部を仕切って、シート収容空間32Cを区画する。シート収容空間32Cは、隔壁41、下筐体32により包囲され、ヘッドユニット38などから隔離された空間である。
【0042】
テンショナ45は、内部空間32Aの後部において隔壁41よりも上方に位置する。テンショナ45は、下筐体32の外側を向いている外周面45Aを有している。外周面45Aは、左右方向9においてシートの最大幅以上の大きさであり、通紙中心(シートSの左右方向9における中心)に対して互いに対称な形状を有している。外周面45Aの上端は、上下方向7において搬送ローラ対36のニップ位置と概ね同じ位置にある。
【0043】
外周面45Aには、ロール体37から引き出されたシートSが掛けられ当接する。シートSは、外周面45Aに沿って前方に湾曲して、搬送向き8Aに延びて搬送ローラ対36に案内される。搬送向き8Aは、前後方向8に沿う前向きである。テンショナ45は、周知の手法により、シートSにテンションを与える。
【0044】
テンショナ45の前方には、搬送ローラ対36が位置する。搬送ローラ対36は、搬送ローラ36Aとピンチローラ36Bとを有する。搬送ローラ36A、及びピンチローラ36Bのニップ位置は、上下方向7において外周面45Aの上端と概ね同じ位置である。
【0045】
搬送ローラ対36の前方には、搬送ローラ対40が位置する。搬送ローラ対40は、搬送ローラ40Aとピンチローラ40Bとを有する。搬送ローラ40A、及びピンチローラ40Bのニップ位置は、上下方向7において外周面45Aの上端と概ね同じ位置である。
【0046】
搬送ローラ36A,40Aは、モータ53(図6参照)から駆動力が伝達されて回転する。搬送ローラ対36は、テンショナ45から搬送向き8Aに延びるシートSをニップしつつ回転することにより、搬送向き8AにシートSを送り出す。搬送ローラ対40は、搬送ローラ対36から送り出されたシートSをニップしつつ回転することにより搬送向き8AにシートSを送り出す。搬送ローラ対36,40の回転により、シートSは、シート収容空間32Cから隙間42を通ってテンショナ45に向けて引き出される。
【0047】
図2に示されるように、内部空間32Aには、外周面45Aの上端から排出口33に至る搬送路43が形成されている。搬送路43は、搬送向き8Aに沿ってほぼ直線的に延びており、シートSが通過可能な空間である。搬送路43は、搬送向き8A及び左右方向9に拡がり且つ搬送向き8Aに長い搬送面43Aに沿っている。なお、図2では、搬送面43Aは、搬送路43を示す二点鎖線で示されている。搬送路43は、上下方向7に離れて位置するガイド部材(不図示)や、ヘッドユニット38、プラテン51などによって区画されている。
【0048】
ヘッドユニット38は、搬送路43の上方において搬送ローラ対36よりも搬送向き8Aの下流に位置する。ヘッドユニット38は、複数のノズル38Aを有するヘッドモジュール49を有する。複数のノズル38Aは、インクサブタンク47から供給されたインクを搬送ベルト101に支持されたシートSへ向かって下方へ吐出する。これにより、シートSに画像が記録される。インクは、液体の一例である。
【0049】
プラテン51は、搬送路43の下方において搬送ローラ対36よりも搬送向き8Aの下流に位置する。プラテン51は、ヘッドユニット38の下方に位置しており、ヘッドユニット38と対向している。プラテン51は、搬送ベルト101と支持部104を有する。搬送ベルト101は、搬送ローラ対36によって搬送向き8Aに搬送されてヘッドユニット38の直下に位置するシートSを支持する。搬送ベルト101は、支持しているシートSを搬送向き8Aに搬送する。搬送ベルト101は、モータ53か(図6参照)ら駆動力が伝達されて回動する。
【0050】
装着ケース110は、下筐体32の前端および下端付近に位置しており、前方を向いて開口する箱形状である。装着ケース110には、後向きへインクタンク34が挿入される。装着ケース110の後向きの終面111には、前方へ向かって延びるインクニードル112が位置する。インクニードル112の前端は開口しており、後端はインクチューブ113に連結されている。インクチューブ113は、インクニードル112の内部空間とインクサブタンク47の内部空間47Aとをインクが流通可能に連結している。装着ケース110にインクタンク34が装着されると、インクニードル112がインクタンク34の流出口(図示せず)に挿入される。これにより、インクタンク34に貯留されたインクが、インクニードル112およびインクチューブ113を通じてインクサブタンク47に供給される。インクチューブ113には、インクチューブ113の流路を開閉可能なインク補給バルブ114が配置されている。インク補給バルブ114の開閉は、コントローラ130によって制御される。
【0051】
インクタンク34は、インクを貯留している。インクの詳細は後述される。インクタンク34は、インクが消費されると装着ケース110から取り外され、インクを貯留している新しいインクタンク34と交換される。
【0052】
インクサブタンク47は、インクタンク34の上方に位置している。インクサブタンク47は、インクタンク34から供給されたインクを貯留している。インクサブタンク47には、液体供給路61、液体排出路62、及び大気連通路64が接続されている。液体供給路61および液体排出路62は、インクサブタンク47とヘッドユニット38とをインクが流通可能に連結している。大気連通路64の一端は、インクサブタンク47の内部空間47Aの上部に開口しており、他端は、上筐体31の内部空間31Aに開口している。
【0053】
液体供給路61には正圧ポンプ63が配置されている。正圧ポンプ63は、液体供給路61においてヘッドユニット38へ向かう向きにインクに圧力を付与する。正圧ポンプ63としては、例えば、ダイヤフラムポンプを挙げることができる。正圧ポンプ63の駆動は、コントローラ130によって制御される。正圧ポンプ63は、ポンプの一例である。
【0054】
大気連通路64には負圧ポンプ65が配置されている。負圧ポンプ65は、インクサブタンク47の内部空間47Aの空気を吸引することにより、インクサブタンク47の内部空間47Aを減圧する。負圧ポンプ65としては、例えば、ダイヤフラムポンプを挙げることができる。負圧ポンプ65によって吸引された空気は大気連通路64を通して大気に放出される。負圧ポンプ65の駆動は、コントローラ130によって制御される。負圧ポンプ65は、ポンプの一例である。
【0055】
液体供給路61にはフィルタ66が配置されている。フィルタ66は、正圧ポンプ63とヘッドユニット38との間に位置している。なお、図2においては、液体供給路61の流路形状やフィルタ66の配置は簡略化されて示されている。フィルタ66は、流出ポートおよび流入ポートを有するハウジングの内部空間に、例えば、所定の内径の複数の孔を有するメッシュタイプのフィルタ部材が収容されたものである。流入ポートからハウジングの内部空間に流入したインクがフィルタ部材を通過するときに、インク中の異物がフィルタ部材に捕捉される。これにより、インク中の異物がヘッドユニット38に流れることを抑制している。異物としては、インクに当初から含まれていなかったゴミであったり、インクに含まれていた固形物が凝集等することにより粗大化したものが想定される。
【0056】
液体供給路61には、圧力センサ48が配置されている。圧力センサ48は、液体供給路61における液体の圧力を検知する。
【0057】
[液体供給路61]
図2において、液体供給路61は、簡略的に直線で示されているが、液体供給路61は、筐体30の内部に配置される各部材との干渉を避けるために屈曲されたりする。液体供給路61は、例えば、弾性を有するチューブと、ルアーフィッティングとの組み合わせにより構成される。ルアーフィッティングには、オス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80が含まれる。
【0058】
オス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80は、相互に嵌合可能である。液体供給路61がオス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80を含んで構成されることにより、メンテナンス等においてヘッドユニット38や正圧ポンプ63、フィルタ66などの取り外し作業が容易となる。なお、図2には示されていないが、液体排出路62も、オス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80を含んで構成されてもよい。
【0059】
本実施形態では、図2に示されるように、液体供給路61における3箇所にオス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80が位置する。1箇所目は、フィルタ66とヘッドユニット38と正圧ポンプ63との間である。この箇所が、液体供給路61においてフィルタ66よりも液体の供給向きの下流の位置であって、且つヘッドユニット38に最も近い位置である。2箇所目は、正圧ポンプ63とフィルタ66との間である。3箇所目は、インクサブタンク47と正圧ポンプ63との間である。
【0060】
液体供給路61の3箇所に位置するオス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80のそれぞれは同じ形状である。図3に示されるように、オス型ルアーフィッティング70は、基端71および先端72を有する概ね円管形状である。基端71および先端72において、円管形状の内部空間が開口している。基端71は、第1基端の一例である。先端72は、第1先端の一例である。
【0061】
オス型ルアーフィッティング70は、先端72付近の外周に、基端71から先端72へ向けて外形が次第に縮小する外テーパ面73を有する。外テーパ面73は、先端72まで延びている。外テーパ面73は、基端71側において、円管形状の外周面74と連続する。オス型ルアーフィッティング70は、外周面74においてフランジ部75を有する。フランジ部75は、外周面74から径方向外向きへ突出する円盤形状である。オス型ルアーフィッティング70は、外周面74におけるフランジ部75より基端71側に径方向外向きへ膨出する膨出部76を有する。
【0062】
オス型ルアーフィッティング70の先端72、外テーパ面73、および外周面74の一部は、メス型ルアーフィッティング80の内部空間に挿入される。オス型ルアーフィッティング70の基端71、外周面74、および膨出部76には、弾性を有するチューブ(不図示)が外嵌される。チューブの内部空間に、基端71、外周面74、および膨出部76が挿入されると、膨出部76によってチューブが径方向外向きに弾性変形し、その復元力によってチューブの内面と膨出部76とが液密に圧接する。チューブの端面がフランジ部75に当接することにより、チューブの外嵌位置が規制される。
【0063】
図4に示されるように、メス型ルアーフィッティング80は、基端81および先端82を有する概ね円管形状である。基端81および先端82において、円管形状の内部空間が開口している。基端81は、第2基端の一例である。先端82は、第2先端の一例である。
【0064】
図5に示されるように、メス型ルアーフィッティング80は、先端82付近の内周に、先端82から基端81へ向けて外形が次第に縮小する内テーパ面83を有する。内テーパ面83は、先端82まで延びていない。内テーパ面83は、先端82側において、円管形状の内周面88と連続する。内周面88は、基端81まで延びている。
【0065】
内テーパ面83がメス型ルアーフィッティング80の軸線方向90に対して傾斜する角度A1は、外テーパ面73がオス型ルアーフィッティング70の軸線方向91に対して傾斜する角度A2と概ね等しい。内テーパ面83のメス型ルアーフィッティング80の軸線方向90に沿った長さL1は、外テーパ面73のオス型ルアーフィッティング70の軸線方向91に沿った長さL2と概ね等しい。メス型ルアーフィッティング80の内周面84の内径D1は、オス型ルアーフィッティング70の外周面74の外径D2と概ね等しい。メス型ルアーフィッティング80の内周面88の内径D1は、オス型ルアーフィッティング70の先端72の外径D3よりも小さい。なお、軸線方向90と軸線方向91とは合致している。
【0066】
図4に示されるように、メス型ルアーフィッティング80は、外周面87においてフランジ部85を有する。フランジ部85は、外周面87から径方向外向きへ突出する円盤形状である。メス型ルアーフィッティング80は、外周面87におけるフランジ部85より基端81側に径方向外向きへ膨出する膨出部86を有する。
【0067】
メス型ルアーフィッティング80の先端82の開口を通じて、オス型ルアーフィッティング70の先端72、外テーパ面73、および外周面74の一部が、メス型ルアーフィッティング80の内部空間に挿入される。メス型ルアーフィッティング80の基端81、外周面87、および膨出部86には、弾性を有するチューブ(不図示)が外嵌される。チューブの内部空間に、基端81、外周面87、および膨出部86が挿入されると、膨出部86によってチューブが径方向外向きに弾性変形し、その復元力によってチューブの内面と膨出部86とが液密に圧接する。チューブの端面がフランジ部85に当接することにより、チューブの外嵌位置が規制される。
【0068】
メス型ルアーフィッティング80の先端82の開口を通じて、オス型ルアーフィッティング70の先端72、外テーパ面73、および外周面74の一部が、メス型ルアーフィッティング80の内部空間に挿入されることにより、図5に示されるように、オス型ルアーフィッティング70とメス型ルアーフィッティング80とが嵌合状態となる。嵌合状態において、オス型ルアーフィッティング70の外テーパ面73とメス型ルアーフィッティング80の内テーパ面83とが液密に接触する。オス型ルアーフィッティング70の外周面74とメス型ルアーフィッティング80の内周面84とが接触する。
【0069】
液体供給路61においてインクが流れる供給向き6に対して、オス型ルアーフィッティング70は、メス型ルアーフィッティング80よりも上流に位置する。したがって、オス型ルアーフィッティング70においては、基端71から先端72へ向かう向きが供給向き6と一致する。メス型ルアーフィッティング80においては、先端82から基端81へ向かう向きが供給向き6と一致する。液体供給路61の3箇所に位置するオス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80の嵌合状態は、いずれも図5と同じである。
【0070】
[コントローラ130]
図6に示されるように、コントローラ130は、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、およびASIC135を備えており、これらは内部バス137によって接続されている。ROM132には、CPU131の各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0071】
ASIC135には、モータ53、正圧ポンプ63、負圧ポンプ65、インク補給バルブ114が接続されている。なお、これらは、必要に応じてこれらを駆動するための駆動回路を介してASIC135と接続されている。ASIC135は、モータ53を回転させるための駆動信号を生成し、この駆動信号によりモータ53を制御する。コントローラ130は、正圧ポンプ63および負圧ポンプ65の駆動を制御する。コントローラ130は、インク補給バルブ114の開閉を制御する。
【0072】
ASIC35には、操作パネル44、およびヘッドユニット38が接続されている。操作パネル44は、ユーザによる操作に応じた操作信号をコントローラ130に出力する。操作パネル44は、例えば、押ボタンを有していてもよいし、ディスプレイに重畳されたタッチセンサを有していてもよい。コントローラ130は、ヘッドユニット38の圧電素子への給電を制御し、複数のノズル38Aから選択的にインク滴を吐出させる。
【0073】
[インク]
以下、インクの詳細が説明される。インクは、樹脂微粒子、色材、有機溶剤、界面活性剤、及び水を有する。インクは、樹脂微粒子、色材、有機溶剤、および水を含む水性インクである。
【0074】
インクは、コート紙、プラスチック、フィルム、OHPシート等の疎水性の記録媒体への濡れ性があるが、これに限定されるものではなく、例えば、普通紙、光沢紙、マット紙等の疎水性の記録媒体以外の画像記録に好適なものであってもよい。「コート紙」とは、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙等のパルプを主要な構成要素とした普通紙に、平滑性、白色度、光沢度等の向上を目的として、コート剤を塗布したものを言い、具体的には、上級コート紙、中級コート紙等があげられる。
【0075】
樹脂微粒子としては、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸の少なくとも一方をモノマーとして含むものを用いることができ、例えば、市販品を用いてもよい。樹脂微粒子は、例えば、モノマーとして、さらに、スチレン、塩化ビニル等を含んでもよい。樹脂微粒子は、例えば、エマルジョンに含まれるものであってもよい。エマルジョンは、例えば、樹脂微粒子と、分散媒(例えば、水等)とで構成されるものである。樹脂微粒子は、分散媒に対して溶解状態ではなく、特定の粒子径の範囲で分散している。樹脂微粒子としては、例えば、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系エステル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、カーボネート型樹脂、ポリカーボネート型樹脂、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの共重合体樹脂等が挙げられるが、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0076】
樹脂微粒子としては、例えば、0℃以上200℃以下の範囲内においてガラス転移温度(Tg)を有する樹脂が用いられる。より好ましくは、ガラス転移温度(Tg)は、20℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは、30℃以上150℃以下であり、特に好ましくは、30℃以上50℃未満である。
【0077】
エマルジョンとしては、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス(登録商標)870」(Tg:71℃)、「スーパーフレックス(登録商標)150」(Tg:40℃)、ジャパンコーティングレジン(株)製の「モビニール(登録商標)6760」(Tg:-28℃)、「モビニール(登録商標)DM774」(Tg:33℃)、昭和電工(株)製の「ポリゾール(登録商標)AP-3270N」(Tg:27℃)、星光PMC(株)製の「ハイロース-X(登録商標)KE-1062」(Tg:112℃)、「ハイロース-X(登録商標)QE-1042」(Tg:69℃)等が挙げられる。
【0078】
樹脂微粒子の平均粒子径は、例えば、30nm以上200nm以下の範囲内である。平均粒子径は、例えば、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB-550」を用いて、算術平均径として測定可能である。
【0079】
インク全量における樹脂微粒子の含有量(R)は、例えば、0.1wt%以上30wt%以下の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは0.5wt%以上20wt%以下の範囲内であり、特に好ましくは1.0wt%以上15.0wt%以下の範囲内である。樹脂微粒子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0080】
色材は、例えば、顔料分散用樹脂(樹脂分散剤)によって、水に分散可能な顔料である。色材としては、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等が挙げられる。
【0081】
インク全量における色材の固形分含有量は、特に限定されず、例えば、所望の光学濃度又は彩度等により、適宜決定できる。色材の固形分含有量は、例えば、0.1wt%以上20.0wt%以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは1.0wt%以上15.0wt%以下の範囲内である。色材の固形分含有量は、顔料のみの重量であり、樹脂微粒子の重量は含まない。色材は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0082】
有機溶剤としては、特に限定はなく、任意のものが使用できる。有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,2-ブタンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、プロピレンオキサイド基を有するグリコールエーテルが好ましい。その他の有機溶剤の例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの炭素数1~4のアルキルアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2~6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン、エチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテルなどのアルキレングリコール類の低級アルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0083】
25℃において単体で液体として存在する有機溶剤の含有量は、インク全量に対して10wt%以下であることが好ましく、更に好ましくは9wt%である。
【0084】
水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。インク全量における水の含有量は、例えば、15wt%以上95wt%以下の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは25wt%以上85wt%以下の範囲内である。水の含有量は、例えば、インク中に含まれる水以外の残部としてもよい。
【0085】
インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防腐剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、ノズル乾燥防止剤、エマルジョンなどのポリマー成分、染料等が挙げられる。界面活性剤は、さらに、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、またはノニオン性界面活性剤を含んでもよい。これら界面活性剤は、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1010」、「オルフィン(登録商標)E1006」、「オルフィン(登録商標)E1004」、「シルフェイスSAG503A」、及び「シルフェイスSAG002」等が挙げられる。インク全量における界面活性剤の含有量は、例えば、5wt%以下、3wt%以下、0.1wt%~2wt%である。粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等が挙げられる。
【0086】
インクは、例えば、樹脂微粒子と、色材と、有機溶剤と、水と、必要に応じて他の添加剤とを、公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
【0087】
インクの表面張力は、32mN/m以下であることが好ましく、さらに好ましくは、30mN/m以下であり、特に好ましくは、28mN/m以下である。インクの表面張力は、例えば表面張力計(協和界面科学株式会社製表面張力計DY-300)により測定できる。
【0088】
[インクタンク34からインクサブタンク47へのインク供給]
コントローラ130は、例えば、装着ケース110にインクタンク34が装着されたことに基づいて、インク補給バルブ114を開いて負圧ポンプ65を駆動する。これにより、インクサブタンク47の気体層が減圧され、インクサブタンク47内の圧力とインクタンク34内の圧力との間の圧力差により、インクタンク34内のインクがインクチューブ113を通ってインクサブタンク47に供給される。負圧ポンプ65が、一定時間駆動されることにより、所定量のインクがインクタンク34からインクサブタンク47へ供給される。インクの補給が完了すると、インク補給バルブ114は閉じられる。
【0089】
[画像記録動作]
次に、ロール体37から引き出されたシートSに画像が記録されるときの画像記録装置100の動作について説明する。
【0090】
コントローラ130は、操作パネル44や、画像記録装置100とLANなどによって接続された情報処理装置などの外部から、シートSに画像を記録する旨の命令を受け取ると、図7に示されるように、液体供給路61におけるインクの流量がV2mL/秒となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を一定時間だけ駆動する。流量V2mL/秒は、例えば2mL/秒である。一定時間は、例えば、10秒である。これにより、インクサブタンク47とヘッドユニット38との間の圧力差により、インクが液体供給路61および液体排出路62を循環する。
【0091】
コントローラ130は、流量がV2mL/秒となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を一定時間だけ駆動した後、液体供給路61におけるインクの流量がV1mL/秒となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を一定時間だけ駆動する。流量V1mL/秒は、流量V2mL/秒よりも大きく、例えば2.8mL/秒である。液体供給路61を供給向き6へ流れるインクは、フィルタ66において、フィルタ部材の孔の内径よりも大きなインク中の異物がフィルタ部材に捕捉される。フィルタ66を通過したインクはヘッドユニット38に到達する。
【0092】
ヘッドユニット38に到達したインクは、プラテン51に支持されているシートSに向けてノズル38Aから吐出される。これにより、シートSに画像が記録される。画像が記録されたシートSは、カッタ等によって所定のサイズに切断されて排出口33から排出される。
【0093】
ここで、インクが消費されること等によって液体供給路61におけるインクの圧力が変動し得る。圧力センサ48の検知信号に基づいて、コントローラ130が、例えば、液体供給路61における圧力が所定の閾値よりも小さくなったと判定したとき、コントローラ130は、正圧ポンプ63の吐出圧力を大きくする制御を行う。そして、ヘッドユニット38からインクが吐出されるに伴って、インクサブタンク47内の水位が下がっていく。
【0094】
インクサブタンク47内の水位が所定の水位よりも低くなると、コントローラ130は、インクサブタンク47に設置されたセンサからの検知信号に基づいてインク補給バルブ114を開く。これにより、負圧ポンプ65によって減圧されているインクサブタンク47と大気圧となっているインクタンク34との間の圧力差によってインクタンク34からインクサブタンク47にインクがくみ上げられる。インクサブタンク47内の水位が所定の水位に達すると、コントローラ130は、インクサブタンク47のセンサからの検知信号に基づいてインク補給バルブ114を閉じる。このようにして、インクがインクサブタンク47に補充される。
【0095】
画像記録を終了するとき、コントローラ130は、図7に示されるように、液体供給路61におけるインクの流量がV3mL/秒となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を一定時間だけ駆動する。流量V3mL/秒は流量V1mL/秒よりも小さく、例えば2mL/秒である。一定時間は、例えば、10秒である。なお、流量V2mL/秒および流量V3mL/秒は、いずれもが流量V1mL/秒よりも小さければよく(V1>V2,V3)、流量V2mL/秒と流量V3mL/秒とは、同じ値でなくてもよい。
【0096】
コントローラ130は、流量がV3mL/秒となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を一定時間だけ駆動した後、正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を停止する。
【0097】
[実施形態の作用効果]
液体供給路61において嵌合するオス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80には、外テーパ面73と内テーパ面83との間に隙間89が生じ得る。隙間89は、例えば、オス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80の製造誤差や個体差などを原因として生じ得る。
【0098】
本実施形態によれば、液体供給路61において嵌合するオス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80は、外テーパ面73の断面の円周の大きさが次第に小さくなる向きの先端72の周囲において、外テーパ面73と内テーパ面83との間に隙間89が生じ得る。外テーパ面73の断面の円周の大きさが次第に小さくなる向きが、液体供給路61の供給向き6と合致する。したがって、液体供給路61における供給向き6に沿うインクの流れが隙間89へ向かっていないので、隙間89にインクが進入し難い。その結果、隙間89にインクが溜まることが抑制されるので、固形物が析出し難くなる。
【0099】
また、液体供給路61においてヘッドユニット38に最も近い位置にオス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80が位置しても、乾燥によるインクの固形物がヘッドユニット38へ流れ込むリスクが比較的低い。
【0100】
また、液体供給路61においてフィルタ66より供給向き6の下流にオス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80が位置しても、フィルタ66より供給向き6の下流において、固形物が析出し難くなる。
【0101】
また、液体供給路61において正圧ポンプ63および負圧ポンプ65による圧力がインクに加わっても、オス型ルアーフィッティング70の外テーパ面73とメス型ルアーフィッティング80の内テーパ面83とが接触する箇所にインクが進入し難い。その結果、当該箇所にインクが溜まりにくくなることにより、固形物が析出し難くなる。
【0102】
また、コントローラ130は、液体供給路61におけるインクの流量が3mL/秒未満の流量V1となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を駆動する。したがって、オス型ルアーフィッティング70の外テーパ面73とメス型ルアーフィッティング80の内テーパ面83とが接触する箇所にインクが進入し難い。
【0103】
また、コントローラ130は、液体供給路61におけるインクの流量がV2mL/秒となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65の駆動を開始したのち、流量がV1mL/秒となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を駆動する。したがって、V1mL/秒となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65の駆動を開始する場合と比較して、液体供給路61におけるインクの圧力の変動が緩やかとなる。これにより、オス型ルアーフィッティング70の外テーパ面73とメス型ルアーフィッティング80の内テーパ面83とが接触する箇所にインクが進入し難い。
【0104】
また、コントローラ130は、液体供給路61におけるインクの流量がV1mL/秒となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65ポンプを駆動した後、流量がV3mL/秒となるように正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を駆動する。さらに、コントローラ130は、その後、正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を停止する。したがって、V1mL/秒から正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を停止する場合と比較して、液体供給路61におけるインクの圧力の変動が緩やかとなる。これにより、オス型ルアーフィッティング70の外テーパ面73とメス型ルアーフィッティング80の内テーパ面83とが接触する箇所にインクが進入し難い。
【0105】
[変形例]
前述された実施形態では、液体供給路61の3箇所すべてにおいてオス型ルアーフィッティング70の外テーパ面73の断面の円周の大きさが次第に小さくなる向きが、液体供給路61の供給向き6と合致していたが、これに限らない。例えば、液体供給路61の複数の箇所において嵌合されたオス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80のうち、半数以上においてオス型ルアーフィッティング70の外テーパ面73の断面の円周の大きさが次第に小さくなる向きが、液体供給路61の供給向き6と合致してもよい。したがって、前述された実施形態では、液体供給路61の2箇所において、オス型ルアーフィッティング70の外テーパ面73の断面の円周の大きさが次第に小さくなる向きが、液体供給路61の供給向き6と合致してもよい。その場合、液体供給路61においてヘッドユニット38に最も近い位置、およびフィルタ66より供給向き6の下流の位置において、オス型ルアーフィッティング70の外テーパ面73の断面の円周の大きさが次第に小さくなる向きが、液体供給路61の供給向き6と合致することが好ましい。
【0106】
また、オス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80は、チューブの抜け防止のための返し形状やロック形状などを有していてもよい。さらに、オス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80の形状としては、様々な変形が採用され得る。例えば、オス型ルアーフィッティング70およびメス型ルアーフィッティング80は、インクが流れる方向に対して断面が垂直でなくてもよいし、断面形状が円形でなくてもよい。また、外テーパ面73や内テーパ面83は、インクが流れる方向に沿った断面において外形が直線でなくてもよい。また、外テーパ面73や内テーパ面83は平滑な面でなくてもよい。また、外テーパ面73と内テーパ面83とは面で嵌合する必要はなく、線で接触して嵌合してもよい。さらに、外テーパ面73および内テーパ面83は、インクが流れる方向に対して交差する段差面を有していてもよい。
【符号の説明】
【0107】
38・・・ヘッドユニット(インクジェットヘッド)
47・・・インクサブタンク(タンク)
61・・・液体供給路
62・・・液体排出路
63・・・正圧ポンプ(ポンプ)
65・・・負圧ポンプ(ポンプ)
66・・・フィルタ
70・・・オス型ルアーフィッティング
71・・・基端(第1基端)
72・・・先端(第1先端)
73・・・外テーパ面
80・・・メス型ルアーフィッティング
81・・・基端(第2基端)
82・・・先端(第2先端)
83・・・内テーパ面
100・・・画像記録装置(液体供給装置)
130・・・コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7