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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100067
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】制動力測定方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20240719BHJP
【FI】
F03D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003781
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】野原 修
(72)【発明者】
【氏名】小森 啓史
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB41
3H178BB56
3H178BB73
3H178DD43Z
3H178DD52X
3H178DD70X
3H178EE06
(57)【要約】
【課題】制動装置の制動力を安全に簡単に測定することができる制動力測定方法を提供する。
【解決手段】実施形態の制動力測定方法は、風力発電機のタワーに固定されたリングギヤと、ナセルに固定されリングギヤに噛み合うピニオンを駆動して風力発電機をヨー旋回させるヨー駆動装置と、リングギヤに摩擦体を押し付けてナセルがヨー旋回しないように保持する制動装置と、を備えた風力発電機における制動装置の制動力を測定する制動力測定方法である。制動力測定方法は、制動装置がリングギヤを制動する制動ステップと、制動されたリングギヤに噛み合うピニオンの回転軸にかかる負荷を測定する測定ステップと、ナセルが保持された状態で、摩擦体が滑り始め前記ナセルがヨー旋回し始めるまで入力トルクをピニオンに与えて、その間の負荷の最大値を特定する特定ステップと、特定された負荷を制動力に換算する換算ステップと、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電機のタワー又は前記風力発電機のナセルの一方に固定されたリングギヤと、前記タワー又は前記ナセルの他方に固定され前記リングギヤに噛み合うピニオンを駆動して前記風力発電機をヨー旋回させるヨー駆動装置と、前記リングギヤに摩擦体を押し付けて前記ナセルがヨー旋回しないように保持する制動装置と、を備えた前記風力発電機における前記制動装置の制動力を測定する制動力測定方法であって、
前記制動装置が前記リングギヤを制動する制動ステップと、
制動された前記リングギヤに噛み合う前記ピニオンの回転軸にかかる負荷を測定する測定ステップと、
前記ナセルが保持された状態で、前記摩擦体が滑り始め前記ナセルがヨー旋回し始めるまで入力トルクを前記ピニオンに与えて、その間の前記負荷の最大値を特定する特定ステップと、
特定された前記負荷を前記制動力に換算する換算ステップと、を有する、
制動力測定方法。
【請求項2】
外部動力装置から前記入力トルクが入力される入力部と、前記入力トルクを減速して伝達するウォームギヤと、が一体となった治具を前記ピニオンの回転軸に取り付ける取付ステップを更に含み、
前記特定ステップでは、前記ナセルが保持された状態で、前記摩擦体が滑り始め前記ナセルがヨー旋回し始めるまで前記外部動力装置から前記入力トルクを前記ピニオンに与えて、その間の前記負荷の最大値を特定する、
請求項1に記載の制動力測定方法。
【請求項3】
前記風力発電機は、前記リングギヤに噛み合う前記ピニオンを複数有し、
前記取付ステップでは、複数の前記ピニオンのそれぞれに前記治具を取り付け、
前記特定ステップでは、前記ナセルが保持された状態で、複数の前記治具の内の第1の治具が有する前記入力部に前記外部動力装置から第1の入力トルクを入力し、その後、複数の前記治具の内の前記リングギヤに沿った円周における対角線上に位置する第2の治具が有する前記入力部に前記外部動力装置から第2の入力トルクを入力する、
請求項2に記載の制動力測定方法。
【請求項4】
前記治具は、前記入力部と前記ウォームギヤとを連結する回転軸に取り付けられるトルクメータを更に有し、
前記測定ステップでは、前記トルクメータの検出値を前記負荷として測定する、
請求項2又は3に記載の制動力測定方法。
【請求項5】
前記風力発電機は、前記ヨー駆動装置を前記ナセルに取り付けるボルトにかかる歪を測定するボルト歪センサを有し、
前記測定ステップでは、前記ボルト歪センサの検出値を前記負荷として測定する、
請求項1に記載の制動力測定方法。
【請求項6】
前記特定ステップでは、前記ナセルが保持された状態で、前記摩擦体が滑り始め前記ナセルがヨー旋回し始めるまで前記ヨー駆動装置から前記入力トルクを前記ピニオンに与えて、その間の前記負荷の最大値を特定する、
請求項5に記載の制動力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電機は、ブレードのヨー旋回部(ナセル)を保持するためのリングギヤに摩擦体を押し付けてナセルを制動する制動装置を有する。風力によりナセルが回転する力が大きいため、制動装置の制動力も大きくなる。制動装置の制動力を、例えば、応力センサなどで直接測定することは困難である。従来は、リングギヤを制動した状態で、ブレードやハブにワイヤを括り付け、大型重機等で引っ張り、ナセルが回転し始めた外力を実際の制動力として測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-140777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の場合、大型重機等が必要となることに加え、ワイヤを括り付けるブレード又はハブに負荷が集中し、故障・破損のリスクがある。そのため、制動装置の制動力を安全に簡単に測定する手法が求められている。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、制動装置の制動力を安全に簡単に測定することができる制動力測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る制動力測定方法は、風力発電機のタワー又は前記風力発電機のナセルの一方に固定されたリングギヤと、前記タワー又は前記ナセルの他方に固定され前記リングギヤに噛み合うピニオンを駆動して前記風力発電機をヨー旋回させるヨー駆動装置と、前記リングギヤに摩擦体を押し付けて前記ナセルがヨー旋回しないように保持する制動装置と、を備えた前記風力発電機における前記制動装置の制動力を測定する制動力測定方法であって、前記制動装置が前記リングギヤを制動する制動ステップと、制動された前記リングギヤに噛み合う前記ピニオンの回転軸にかかる負荷を測定する測定ステップと、前記ナセルが保持された状態で、前記摩擦体が滑り始め前記ナセルがヨー旋回し始めるまで入力トルクを前記ピニオンに与えて、その間の前記負荷の最大値を特定する特定ステップと、特定された前記負荷を前記制動力に換算する換算ステップと、を有する。
【0007】
この構成によれば、ナセルが保持された状態で、摩擦体が滑り始め前記ナセルがヨー旋回し始めるまで入力トルクをピニオンに与えて、その間の負荷の最大値を特定し、特定された負荷(最大値)を制動力に換算することで、制動装置の制動力を測定することができる。そのため、大型重機等でブレードやハブを直接引っ張る必要なく、制動装置の制動力を測定することができる。したがって、制動装置の制動力を安全に簡単に測定することができる。
【0008】
(2)上記(1)に記載の制動力測定方法では、外部動力装置から前記入力トルクが入力される入力部と、前記入力トルクを減速して伝達するウォームギヤと、が一体となった治具を前記ピニオンの回転軸に取り付ける取付ステップを更に含み、前記特定ステップでは、前記ナセルが保持された状態で、前記摩擦体が滑り始め前記ナセルがヨー旋回し始めるまで前記外部動力装置から前記入力トルクを前記ピニオンに与えて、その間の前記負荷の最大値を特定してもよい。
【0009】
(3)上記(2)に記載の制動力測定方法では、前記風力発電機は、前記リングギヤに噛み合う前記ピニオンを複数有し、前記取付ステップでは、複数の前記ピニオンのそれぞれに前記治具を取り付け、前記特定ステップでは、前記ナセルが保持された状態で、複数の前記治具の内の第1の治具が有する前記入力部に前記外部動力装置から第1の入力トルクを入力し、その後、複数の前記治具の内の前記リングギヤに沿った円周における対角線上に位置する第2の治具が有する前記入力部に前記外部動力装置から第2の入力トルクを入力してもよい。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)に記載の制動力測定方法では、前記治具は、前記入力部と前記ウォームギヤとを連結する回転軸に取り付けられるトルクメータを更に有し、前記測定ステップでは、前記トルクメータの検出値を前記負荷として測定してもよい。
【0011】
(5)上記(1)に記載の制動力測定方法では、前記風力発電機は、前記ヨー駆動装置を前記ナセルに取り付けるボルトにかかる歪を測定するボルト歪センサを有し、前記測定ステップでは、前記ボルト歪センサの検出値を前記負荷として測定してもよい。
【0012】
(6)上記(5)に記載の制動力測定方法では、前記特定ステップでは、前記ナセルが保持された状態で、前記摩擦体が滑り始め前記ナセルがヨー旋回し始めるまで前記ヨー駆動装置から前記入力トルクを前記ピニオンに与えて、その間の前記負荷の最大値を特定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、制動装置の制動力を安全に簡単に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の風力発電機の斜視図である。
図2】第1実施形態のタワーとヨー駆動装置との関係を示す上面図である。
図3】第1実施形態のヨー駆動装置を示す図である。
図4】第1実施形態の風力発電機のブロック図である。
図5】第1実施形態の制動力測定方法のフローチャートである。
図6】第1実施形態の治具とヨー駆動装置とを示す斜視図である。
図7】入力トルクと時間との関係を示す図である。
図8】第2実施形態の制動力測定方法のフローチャートである。
図9】ひずみ量と出力トルクとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の風力発電機における制動装置の制動力を測定する制動力測定方法について図面を参照して説明する。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を意味するのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も含むものとする。以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
<風力発電機>
図1は、第1実施形態の風力発電機の斜視図である。
図1に示すように、風力発電機1は、ナセル10と、タワー20と、ブレード30と、ハブ40と、を備える。
【0017】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。例えば、X方向及びY方向は、水平面において互いに直交する方向である。Z方向は、X方向及びY方向に直交する方向(鉛直方向)である。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。+Z側は鉛直方向の上側に相当し、-Z側は鉛直方向の下側に相当する。
【0018】
ナセル10は、タワー20の上端(+Z端)に取り付けられる。ナセル10には、ハブ40を介してブレード30が取り付けられる。ナセル10は、ブレード30及びハブ40の向きをヨー方向で調整するために旋回駆動する。
【0019】
タワー20は、地上又は海上に設置される。タワー20は、地上又は海上から鉛直方向上向きに延びる形状を有する。
【0020】
ブレード30は、風力を受けて回転力を発生する羽である。図の例では、ブレード30の枚数は、3枚であるが、特に限定されない。例えば、ブレード30の枚数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0021】
ハブ40は、ナセル10に取り付けられる。ハブ40には、3枚(複数の一例)のブレード30が取り付けられる。ハブ40は、ブレード30が受けた風力による回転力(動力)を回転軸(不図示)に伝達する。ハブ40は、回転軸を介してナセル10に風力に基づく動力を伝達する。
【0022】
ハブ40には、各ブレード30をピッチ方向に回転させるピッチ駆動力を発生するピッチ駆動機構(不図示)が内蔵される。ピッチ駆動機構は、ブレード30ごとに設けられる。ピッチ駆動機構は、風速に応じて各ブレード30をピッチ方向に回転させることで各ブレード30の角度を制御する。
【0023】
風力発電機1は、ブレード30の回転による動力をハブ40からナセル10内の発電機(不図示)に伝達する。風力発電機1は、発電機により動力を電力に変換する。これにより、風力発電機1は、風力発電を行う。
【0024】
図2は、第1実施形態のタワーとヨー駆動装置との関係を示す上面図である。図3は、第1実施形態のヨー駆動装置を示す図である。
図2及び図3を併せて参照し、風力発電機1は、リングギヤ22と、ヨー駆動装置100と、制動装置54と、を備える。
リングギヤ22は、タワー20に固定される。リングギヤ22は、タワー20の上部に設けられる。リングギヤ22は、タワー20の内壁に設けられる。リングギヤ22は、ナセル10をヨー方向に旋回駆動させるためのギヤである。なお、リングギヤ22は、タワー20の外壁に設けられてもよい。
【0025】
ヨー駆動装置100は、ナセル10に固定される。ヨー駆動装置100は、リングギヤ22に噛み合うピニオン150を駆動して風力発電機1をヨー旋回させる。
【0026】
本実施形態では、4台のヨー駆動装置100-1、100-2、100-3及び100-4がナセル10に取り付けられる。以下、ヨー駆動装置100-1、100-2、100-3及び100-4を総称する場合には単に「ヨー駆動装置100」と記載する。ヨー駆動装置100は、モータ駆動力により図2中のR方向に回転駆動する。なお、ヨー駆動装置100は、R方向とは反対方向にも回転駆動可能であってよい。
【0027】
リングギヤ22とピニオン150とが噛み合っている状態で、ナセル10又はタワー20等に突風等の力が与えられた場合、リングギヤ22とピニオン150との間に接線力が発生する。接線力とは、リングギヤ22のギヤ形成面の接線方向に生ずる力である。接線力は、ヨー駆動装置100における減速部164に捻り応力を与える。また、接線力は、ヨー駆動装置100における固定具に引っ張り応力及び圧縮応力を与える。
【0028】
ヨー駆動装置100は、ケース110と、フランジ120と、ボルト130と、出力軸140と、ピニオン150と、を備える。
【0029】
ケース110には、フランジ120が取り付けられる。フランジ120は、ボルト130によりナセル10と接続される。なお、ボルト130は、ヨー駆動装置100をナセル10に固定する固定具の一例である。例えば、固定具は、ボルト130に限定されず、他の部材であってよい。
【0030】
出力軸140の一方端(+Z端)は、ケース110及びフランジ120の内部に接続される。出力軸140の他方端(-Z端)には、ピニオン150が設けられる。出力軸140及びピニオン150は、ヨー駆動装置100からタワー20に駆動力及び制動力を伝達する伝達部の一例である。
【0031】
ピニオン150は、リングギヤ22と噛み合うように配置される。ピニオン150は、出力軸140から出力された駆動力により回転し、ヨー駆動装置100を旋回方向(装置移動方向)に旋回させる。これにより、ヨー駆動装置100は、タワー20に対してナセル10をヨー旋回させる。
【0032】
ヨー駆動装置100は、モータ制動部160と、モータ駆動部162と、減速部164と、を備える。
【0033】
モータ制動部160は、出力軸140に対して制動力を発生させる。なお、モータ制動部160は、出力軸140に直接的に制動力を与えることに限らず、出力軸140に間接的に制動力を与えてもよい。例えば、モータ制動部160の力は、出力軸140とは異なる部材に与えられ、当該部材から出力軸140に伝達されてもよい。
【0034】
モータ制動部160は、外部から供給された制御信号に応じて電磁作用により制動力を発生する。モータ制動部160は、電圧が供給された状態で制動力を発生させる。モータ制動部160は、電圧が供給されていない状態では制動力を発生させない。例えば、モータ制動部160は、電磁ブレーキである。例えば、モータ制動部160は、供給される電力が高いほど高い制動力を発生する。なお、モータ制動部160は、電圧が供給されていない状態で制動力を発生させてもよい。例えば、モータ制動部160は、電圧が供給されていない状態でブレーキをかける電磁ブレーキであってもよい。
【0035】
モータ駆動部162は、出力軸140に対して駆動力を発生させる。モータ駆動部162は、外部から供給された制御信号に応じて電磁作用により駆動力を発生する。
【0036】
減速部164は、モータ駆動部162により発生した駆動力に応じた回転速度を低減させ、駆動トルクを上昇させる。なお、ヨー駆動装置100は、駆動力及び制動力を発生させることに限らない。例えば、ヨー駆動装置100は、ナセル10の回転させるための駆動力の方向から逆転した方向の駆動力を制動力として発生させてもよい。この場合、ヨー駆動装置100は、モータ制動部160を備えなくてもよい。
【0037】
ヨー駆動装置100は、ボルト歪センサ166a及び166bを備える。ボルト歪センサ166a及び166bを総称する場合には単に「ボルト歪センサ166」と記載する。ボルト歪センサ166は、負荷に関する情報を取得する取得部の一例である。ボルト歪センサ166は、ヨー駆動装置100をナセル10に取り付けるボルト130にかかる歪を測定する。ボルト歪センサ166は、ボルト130に生ずる歪みに応じた信号を出力する。ボルト130に生ずる歪みは、接線力に応じて変化する値である。
【0038】
制動装置54は、リングギヤ22に摩擦体50を押し付けてナセル10がヨー旋回しないように保持する。例えば、制動装置54は、リングギヤ22に制動力を与える油圧ブレーキである。例えば、制動装置54は、キャリパーブレーキ機構を含む。制動装置54は、油圧制動部52と、摩擦体50と、を備える。
【0039】
油圧制動部52は、外部から供給された制御信号に応じて摩擦体50を図3中のZ方向に移動させる。油圧制動部52は、摩擦体50をリングギヤ22に押し当てることでリングギヤ22に制動力を与える。風力発電機1は、リングギヤ22に付与する制動力を調整することができることが望ましい。
【0040】
なお、制動装置54は、油圧ブレーキであることに限らず、バネブレーキであってもよい。例えば、バネブレーキのバネ力(弾性力)により、リングギヤ22に制動力を与えてもよい。例えば、制動装置54は、油圧ブレーキ及びバネブレーキの両方を含んでもよい。例えば、制動装置54の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0041】
図4は、第1実施形態の風力発電機のブロック図である。
図4を併せて参照し、ヨー駆動装置100は、制御部170と、ボルト歪センサ166-1、166-2、166-3、166-4と、モータ制動部160-1、160-2、160-3、160-4と、モータ駆動部162-1、162-2、162-3、162-4と、油圧制動部52と、風センサ200と、を備える。なお、以下の説明においてボルト歪センサ166-1、166-2、166-3、166-4を総称する場合には単に「ボルト歪センサ166」と記載し、モータ制動部160-1、160-2、160-3、160-4を総称する場合には単に「モータ制動部160」と記載し、モータ駆動部162-1、162-2、162-3、162-4を総称する場合には単に「モータ駆動部162」と記載する。
【0042】
ボルト歪センサ166-1は、ヨー駆動装置100-1におけるボルト歪センサ166a及び166bに相当する。ボルト歪センサ166-2は、ヨー駆動装置100-2におけるボルト歪センサ166a及び166bに相当する。ボルト歪センサ166-3は、ヨー駆動装置100-3におけるボルト歪センサ166a及び166bに相当する。ボルト歪センサ166-4は、ヨー駆動装置100-4におけるボルト歪センサ166a及び166bに相当する。なお、ボルト歪センサ166は、1つのヨー駆動装置100に対して2個より多く備えてもよい。
【0043】
モータ制動部160-1は、ヨー駆動装置100-1におけるモータ制動部160に相当する。モータ制動部160-2は、ヨー駆動装置100-2におけるモータ制動部160に相当する。モータ制動部160-3は、ヨー駆動装置100-3におけるモータ制動部160に相当する。制動部160-4は、ヨー駆動装置100-4におけるモータ制動部160に相当する。
【0044】
モータ駆動部162-1は、ヨー駆動装置100-1におけるモータ駆動部162に相当する。モータ駆動部162-2は、ヨー駆動装置100-2におけるモータ駆動部162に相当する。モータ駆動部162-3は、ヨー駆動装置100-3におけるモータ駆動部162に相当する。モータ駆動部162-4は、ヨー駆動装置100-4におけるモータ駆動部162に相当する。
【0045】
風センサ200は、例えばナセル10の上面に設けられる。風センサ200は、風速及び風向きを検出する。風センサ200は、風速及び風向きの検出結果を制御部170に出力する。なお、風センサ200は、風速センサ及び風向センサから構成されてもよい。
【0046】
制御部170は、4台(複数の一例)のヨー駆動装置100を統括的に制御する。制御部170は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。制御部170は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。
【0047】
制御部170には、ボルト歪センサ166-1、166-2、166-3及び166-4のそれぞれから歪み検出信号が供給される。制御部170には、風センサ200から風検出信号(風速及び風向きの検出結果)が供給される。制御部170は、歪み検出信号及び風検出信号に基づいて、制動部160-1、160-2、160-3、160-4、モータ駆動部162-1、162-2、162-3、162-4、及び油圧制動部52に制御信号を出力する。
【0048】
<制動力測定方法>
以下、本実施形態の風力発電機1における制動装置54の制動力を測定する制動力測定方法について説明する。
図5は、第1実施形態の制動力測定方法のフローチャートである。図6は、第1実施形態の治具とヨー駆動装置とを示す斜視図である。図7は、入力トルクと時間との関係を示す図である。
図5から図7を併せて参照し、本実施形態の制動力測定方法は、制動装置54がリングギヤ22を制動する制動ステップ(ステップS11)と、治具70をピニオン150の回転軸に取り付ける取付ステップ(ステップS12)と、制動されたリングギヤ22に噛み合うピニオン150の回転軸にかかる負荷を測定する測定ステップ(ステップS13)と、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまで入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷の最大値を特定する特定ステップ(ステップS14)と、特定された負荷を制動力に換算する換算ステップ(ステップS15)と、を有する。
【0049】
制動ステップでは、摩擦体50をリングギヤ22に押し当てることでリングギヤ22に制動力を与える。これにより、リングギヤ22が制動された状態となる。制動ステップの後、取付ステップに移行する。
【0050】
例えば、取付ステップで使用する治具70は、外部動力装置80から入力トルクが入力される入力部72と、入力トルクを減速して伝達するウォームギヤ74と、が一体となったものである。例えば、外部動力装置80は、電動レンチ、電動ドライバー等である。
【0051】
治具70は、円筒フランジ78と、入力部72と、ウォームギヤ74と、トルクメータ76と、を備える。ウォームギヤ74及びトルクメータ76は、円筒フランジ78の内部に設けられる。トルクメータ76は、入力部72とウォームギヤ74とを連結する回転軸に取り付けられる。
【0052】
なお、ウォームギヤ74は、一方向の回転は許容し且つ他方向の回転は制限する一方向回転機構の一例である。例えば、一方向回転機構は、ウォームギヤ74で構成されることに限らず、クラッチ(例えば、ワンウェイクラッチ、電磁クラッチ等)で構成されてもよい。例えば、一方向回転機構の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0053】
例えば、取付ステップでは、ヨー駆動装置100のケース110(図3参照)等を外すことで、治具70のウォームギヤ74をピニオン150の回転軸に連結してもよい。例えば、取付ステップでは、治具70の円筒フランジ78を、ボルト130(図3参照)によりヨー駆動装置100のフランジ120(図3参照)と接続してもよい。なお、ボルト130は、治具70をピニオン150の回転軸に取り付ける取付部材の一例である。例えば、治具70の取付部材は、ボルト130に限定されず、他の部材であってよい。
【0054】
例えば、取付ステップでは、ファンカバー101(図6参照)を取り外すことで、治具70をピニオン150の回転軸に直接取り付けてもよい。例えば、取付ステップでは、モータ102(図6参照)を取り外すことで、治具70をピニオン150の回転軸に直接取り付けてもよい。例えば、治具70をピニオン150の回転軸に取り付ける方法は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0055】
本実施形態に係る制動力測定方法では、風力発電機1は、リングギヤ22に噛み合うピニオン150を4つ(複数の一例)有する。取付ステップでは、4つ(複数の一例)のピニオン150の回転軸のそれぞれに治具70を取り付ける。取付ステップの後、測定ステップに移行する。
【0056】
測定ステップでは、トルクメータ76の検出値を負荷として測定する。測定ステップでは、制動されたリングギヤ22に噛み合うピニオン150の回転軸にかかる負荷を間接的に測定してもよい。測定ステップの後、特定ステップに移行する。
【0057】
特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまで外部動力装置80から入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷(トルクメータ76の検出値)の最大値を特定する。
【0058】
特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、4台(複数の一例)の治具70の内の第1の治具70(例えば、ヨー駆動装置100-1に取り付けられた治具70)が有する入力部72に外部動力装置80から第1の入力トルクを入力する。その後、複数の治具70の内のリングギヤ22に沿った円周における対角線上に位置する第2の治具70(例えば、ヨー駆動装置100-3に取り付けられた治具70)が有する入力部72に外部動力装置80から第2の入力トルクを入力する。
【0059】
まず、特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、複数の治具70の内の第1の治具70(例えば、ヨー駆動装置100-1に取り付けられた治具70)が有する入力部72に外部動力装置80から第1の入力トルクを入力する。例えば、第1の入力トルクは、第1の所定値(例えば、第1の入力トルクの上限値)まで徐々に上昇させるように入力してもよい。
【0060】
次に、特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、複数の治具70の内の第2の治具70(例えば、ヨー駆動装置100-3に取り付けられた治具70)が有する入力部72に外部動力装置80から第2の入力トルクを入力する。例えば、第2の入力トルクは、第2の所定値(例えば、第2の入力トルクの上限値)まで徐々に上昇させるように入力してもよい。
【0061】
図7の例では、ヨー駆動装置100-3に取り付けられた治具70の入力部72に対する第2の入力トルクが第2の所定値に達する前に、摩擦体50が押し当てられているリングギヤ22が動き始めた場合を示す。リングギヤ22が動き始めると、第2の入力トルクは上昇しない。この場合、トルクメータ76の検出値は、静定した値となる。厳密に言うと、内部隙間分だけ回転する。
【0062】
例えば、第1の入力トルク(第1の所定値)を100とし、第2の入力トルク(第2の所定値に達する前の第2の入力トルク)を50とした場合、入力トルクの合計値は150となる。例えば、特定ステップでは、上記の入力トルクの合計値を、ナセル10が保持された状態で摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまでの間の負荷(トルクメータ76の検出値)の最大値として特定する。特定ステップの後、換算ステップに移行する。
【0063】
換算ステップでは、特定された負荷(トルクメータ76の検出値)を制動力に換算する。例えば、換算ステップでは、上記の入力トルクを、出力トルクに換算し、換算した出力トルクを制動装置54の制動力とみなしてもよい。例えば、出力トルクは、以下の式(1)により算出する。
【0064】
Tout=Tin×A×B×H ・・・ (1)
【0065】
上記の式(1)において、Toutは出力トルク、Tinは入力トルク、Aは治具70の減速比、Bはヨー駆動装置100の減速比、Hは係数をそれぞれ示す。減速比Aは、治具70が有する減速機構(例えば、ウォームギヤ74等を含む機構)の減速比に相当する。減速比Bは、ヨー駆動装置100が有する減速機構(例えば、減速部164等を含む機構)の減速比に相当する。
【0066】
なお、換算ステップでは、換算した出力トルクを制動装置54の制動力とみなすことに限らない。例えば、上記の入力トルクと制動装置54の制動力との対応関係(例えば、関係グラフ等)が予め構成されている場合には、関係グラフ等に基づいて制動装置54の制動力を求めてもよい。
【0067】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態に係る制動力測定方法は、風力発電機1のタワー20に固定されたリングギヤ22と、ナセル10に固定されリングギヤ22に噛み合うピニオン150を駆動して風力発電機1をヨー旋回させるヨー駆動装置100と、リングギヤ22に摩擦体50を押し付けてナセル10がヨー旋回しないように保持する制動装置54と、を備えた風力発電機1における制動装置54の制動力を測定する制動力測定方法である。制動力測定方法は、制動装置54がリングギヤ22を制動する制動ステップと、制動されたリングギヤ22に噛み合うピニオン150の回転軸にかかる負荷を測定する測定ステップと、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまで入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷の最大値を特定する特定ステップと、特定された負荷を制動力に換算する換算ステップと、を有する。
【0068】
この構成によれば、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまで入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷の最大値を特定し、特定された負荷(最大値)を制動力に換算することで、制動装置54の制動力を測定することができる。そのため、大型重機等でブレード30やハブ40を直接引っ張る必要なく、制動装置54の制動力を測定することができる。したがって、制動装置54の制動力を安全に簡単に測定することができる。
【0069】
本実施形態に係る制動力測定方法では、外部動力装置80から入力トルクが入力される入力部72と、入力トルクを減速して伝達するウォームギヤ74と、が一体となった治具70をピニオン150の回転軸に取り付ける取付ステップを更に含む。特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまで外部動力装置80から入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷の最大値を特定する。
この構成によれば、入力部72及びウォームギヤ74が一体となった治具70をピニオン150の回転軸に取り付けることで、治具70の入力部72及びウォームギヤ74を通じて、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまで外部動力装置80から入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷の最大値を特定することができる。そして、特定された負荷(最大値)を制動力に換算することで、制動装置54の制動力を測定することができる。したがって、治具70及び外部動力装置80を利用した簡単な構成で、制動装置54の制動力を安全に簡単に測定することができる。
【0070】
本実施形態に係る制動力測定方法では、風力発電機1は、リングギヤ22に噛み合うピニオン150を複数有する。取付ステップでは、複数のピニオン150のそれぞれに治具70を取り付ける。特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、複数の治具70の内の第1の治具70(例えば、ヨー駆動装置100-1に取り付けられた治具70)が有する入力部72に外部動力装置80から第1の入力トルクを入力する。その後、複数の治具70の内のリングギヤ22に沿った円周における対角線上に位置する第2の治具70(例えば、ヨー駆動装置100-3に取り付けられた治具70)が有する入力部72に外部動力装置80から第2の入力トルクを入力する。
例えば、ナセル10が保持された状態で、複数の治具70の内の第1の治具70(例えば、ヨー駆動装置100-1に取り付けられた治具70)が有する入力部72に外部動力装置80から第1の入力トルクを入力し、その後、第1の治具70と隣り合う位置にある第2の治具70(例えば、ヨー駆動装置100-2に取り付けられた治具70)が有する入力部72に外部動力装置80から第2の入力トルクを入力すると、リングギヤ22に対して不均等に入力トルクが入力される可能性が高い。これに対し本構成によれば、ナセル10が保持された状態で、複数の治具70の内の第1の治具70(例えば、ヨー駆動装置100-1に取り付けられた治具70)が有する入力部72に外部動力装置80から第1の入力トルクを入力し、その後、複数の治具70の内のリングギヤ22に沿った円周における対角線上に位置する第2の治具70(例えば、ヨー駆動装置100-3に取り付けられた治具70)が有する入力部72に外部動力装置80から第2の入力トルクを入力することで、リングギヤ22に対して均等に入力トルクを入力することができる。したがって、リングギヤ22に対して不均等に入力トルクが入力される事態を防ぐことができる。
【0071】
本実施形態に係る制動力測定方法では、治具70は、入力部72とウォームギヤ74とを連結する回転軸に取り付けられるトルクメータ76を更に有する。測定ステップでは、トルクメータ76の検出値を負荷として測定する。
この構成によれば、治具70の入力部72及びウォームギヤ74を通じて、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまで外部動力装置80から入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷(トルクメータ76の検出値)の最大値を特定することができる。そして、特定されたトルクメータ76の検出値(最大値)を制動力に換算することで、制動装置54の制動力を測定することができる。したがって、治具70及び外部動力装置80を利用した簡単な構成で、制動装置54の制動力を安全に簡単に測定することができる。
【0072】
<第1実施形態の変形例>
上述した実施形態では、風力発電機は、リングギヤに噛み合うピニオンを複数有し、取付ステップでは、複数のピニオンのそれぞれに治具を取り付け、特定ステップでは、ナセルが保持された状態で、複数の治具の内の第1の治具が有する入力部に外部動力装置から第1の入力トルクを入力し、その後、複数の治具の内のリングギヤに沿った円周における対角線上に位置する第2の治具が有する入力部に外部動力装置から第2の入力トルクを入力する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ナセルが保持された状態で、複数の治具の内の第1の治具が有する入力部に外部動力装置から第1の入力トルクを入力し、その後、第1の治具と隣り合う位置にある第2の治具が有する入力部に外部動力装置から第2の入力トルクを入力してもよい。例えば、ナセルが保持された状態で、所定の治具が有する入力部に外部動力装置から入力トルクを入力すればよい。例えば、治具に対して入力トルクを入力する態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0073】
上述した実施形態では、治具は、入力部とウォームギヤとを連結する回転軸に取り付けられるトルクメータを更に有し、測定ステップでは、トルクメータの検出値を負荷として測定する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、治具は、トルクメータを有しなくてもよい。例えば、測定ステップでは、制動されたリングギヤに噛み合うピニオンの回転軸にかかる負荷を直接的に測定してもよい。例えば、トルクメータの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0074】
<第2実施形態>
以下に、第2実施形態に係る制動力測定方法について説明する。以下の説明において、第1実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称及び符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。
【0075】
図8は、第2実施形態の制動力測定方法のフローチャートである。図9は、ひずみ量と出力トルクとの関係を示す図である。ひずみ量は、ボルト歪センサの検出値に相当する。
図8及び図9を併せて参照し、第2実施形態に係る制動力測定方法は、制動装置54がリングギヤ22を制動する制動ステップ(ステップS21)と、制動されたリングギヤ22に噛み合うピニオン150の回転軸にかかる負荷を測定する測定ステップ(ステップS22)と、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまで入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷の最大値を特定する特定ステップ(ステップS23)と、特定された負荷を制動力に換算する換算ステップ(ステップS24)と、を有する。第2実施形態に係る制動力測定方法は、図5で示した第1実施形態のフローチャートと比較すると、治具70の取付ステップを有しない。なお、予めボルト歪センサの校正(センサ測定結果と制動力との換算式の把握)ができている場合のみ治具不要である。
【0076】
制動ステップでは、摩擦体50をリングギヤ22に押し当てることでリングギヤ22に制動力を与える。これにより、リングギヤ22が制動された状態となる。制動ステップの後、測定ステップに移行する。
【0077】
上述の通り、風力発電機1は、ヨー駆動装置100をナセル10に取り付けるボルト130にかかる歪を測定するボルト歪センサ166を有する。本実施形態に係る測定ステップでは、ボルト歪センサ166の検出値を負荷として測定する。測定ステップでは、制動されたリングギヤ22に噛み合うピニオン150の回転軸にかかる負荷を間接的に測定してもよい。測定ステップの後、特定ステップに移行する。
【0078】
本実施形態に係る特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまでヨー駆動装置100から入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷(ボルト歪センサ166の検出値)の最大値を特定する。
【0079】
特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、複数のヨー駆動装置100の内の第1のヨー駆動装置100(例えば、ヨー駆動装置100-1)から第1の入力トルクを入力する。その後、複数のヨー駆動装置100の内のリングギヤ22に沿った円周における対角線上に位置する第2のヨー駆動装置100(例えば、ヨー駆動装置100-3)から第2の入力トルクを入力する。
【0080】
まず、特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、複数のヨー駆動装置100の内の第1のヨー駆動装置100(例えば、ヨー駆動装置100-1)から第1の入力トルクを入力する。例えば、第1の入力トルクは、第1の所定値(例えば、第1の入力トルクの上限値)まで徐々に上昇させるように入力してもよい。
【0081】
次に、特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、複数のヨー駆動装置100の内の第2のヨー駆動装置100(例えば、ヨー駆動装置100-3)から第2の入力トルクを入力する。例えば、第2の入力トルクは、第2の所定値(例えば、第2の入力トルクの上限値)まで徐々に上昇させるように入力してもよい。
【0082】
なお、ヨー駆動装置100からの入力トルクは、徐々に上昇させることに限らない。例えば、複数のピニオン150の各々のヨー駆動装置100(例えば、ヨー駆動装置100-1、100-2、100-3及び100-4)を一気に制御してもよい。例えば、2回の入力トルクの上昇でリングギヤ22が動き始めると、ヨー駆動装置100からの入力トルクは上昇しない。この場合、ボルト歪センサ166の検出値は、静定した値となる。
【0083】
例えば、特定ステップでは、上記の静定した値を、ナセル10が保持された状態で摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまでの間の負荷(ボルト歪センサ166の検出値)の最大値として特定する。特定ステップの後、換算ステップに移行する。
【0084】
換算ステップでは、特定された負荷(ボルト歪センサ166の検出値)を制動力に換算する。例えば、換算ステップでは、上記の静定した値を、出力トルクに換算し、換算した出力トルクを制動装置54の制動力とみなしてもよい。例えば、図9に示すように、上記の静定した値(ひずみ量)と出力トルクとの対応関係(例えば、関係グラフ等)が予め構成されている場合には、関係グラフ等に基づいて制動装置54の制動力を求めてもよい。
【0085】
<作用効果>
本実施形態に係る制動力測定方法では、風力発電機1は、ヨー駆動装置100をナセル10に取り付けるボルト130にかかる歪を測定するボルト歪センサ166を有する。測定ステップでは、ボルト歪センサ166の検出値を負荷として測定する。
この構成によれば、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまで入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷(ボルト歪センサ166の検出値)の最大値を特定し、特定されたボルト歪センサ166の検出値(最大値)を制動力に換算することで、制動装置54の制動力を測定することができる。したがって、ボルト歪センサ166を利用した簡単な構成で、制動装置54の制動力を安全に簡単に測定することができる。
【0086】
本実施形態に係る制動力測定方法では、特定ステップでは、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまでヨー駆動装置100から入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷の最大値を特定する。
この構成によれば、ナセル10が保持された状態で、摩擦体50が滑り始めナセル10がヨー旋回し始めるまでヨー駆動装置100から入力トルクをピニオン150に与えて、その間の負荷(ボルト歪センサ166の検出値)の最大値を特定することができる。そして、特定されたボルト歪センサ166の検出値(最大値)を制動力に換算することで、制動装置54の制動力を測定することができる。したがって、ヨー駆動装置100を利用した簡単な構成で、制動装置54の制動力を安全に簡単に測定することができる。
【0087】
<第2実施形態の変形例>
上述した実施形態では、風力発電機は、ヨー駆動装置をナセルに取り付けるボルトにかかる歪を測定するボルト歪センサを有し、測定ステップでは、ボルト歪センサの検出値を負荷として測定する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、風力発電機は、ボルト歪センサを有しなくてもよい。例えば、測定ステップでは、制動されたリングギヤに噛み合うピニオンの回転軸にかかる負荷を直接的に測定してもよい。例えば、ボルト歪センサの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0088】
<他の変形例>
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0089】
上述した実施形態では、リングギヤがタワーに固定され、ヨー駆動装置がナセルに固定される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、リングギヤがナセルに固定され、ヨー駆動装置がタワーに固定されてもよい。例えば、風力発電機のタワー又はナセルに対するリングギヤ及びヨー駆動装置の固定態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0090】
以上に示した実施形態に係る制御部170の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティングシステム(OS:Operating System)あるいは周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0091】
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合の情報処理装置やクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)あるいは電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0092】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能である。また、上述した各変形例を組み合わせても構わない。
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0093】
1…風力発電機、10…ナセル、20…タワー、22…リングギヤ、50…摩擦体、54…制動装置、70…治具、72…入力部、74…ウォームギヤ、76…トルクメータ、80…外部動力装置、100…ヨー駆動装置、130…ボルト、150…ピニオン、166…ボルト歪センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9