(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100071
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】空気抜き弁
(51)【国際特許分類】
F16K 24/04 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
F16K24/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003785
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】390006736
【氏名又は名称】株式会社日邦バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】粟津原 光明
【テーマコード(参考)】
3H055
【Fターム(参考)】
3H055AA02
3H055AA22
3H055CC03
3H055CC15
3H055GG37
3H055JJ03
3H055JJ15
(57)【要約】
【課題】微細な異物がハウジングの内部空間に侵入した場合でも、この異物が弁体に付着することを防止或いは抑制できる空気抜き弁を提供すること。
【解決手段】空気抜き弁1のハウジング4は、排気口5に連通する内部空間10を下側空間10Aと上側空間10Bに仕切る隔壁部12と、隔壁部12に設けられて下側空間10Aと上側空間10Bとを連通させる連通口13と、を備える。上側空間10Bは、連通口13と排気口5とを接続する排気路14である。排気路14の途中には弁室15が区画される。弁機構7は、弁室15に収容された弁体31と、弁体31を閉位置31Aに付勢する付勢部材32と、下側空間10Aに収容されたフロート33と、連通口13を介してフロート33と弁体31とを接続するリンク機構34と、を有する。隔壁部12は、その上面における弁室15と連通口13との間に、凹部21を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間および前記内部空間に連通する排気口を備える本体部、前記内部空間を上下に仕切る隔壁部、前記隔壁部に設けられて前記隔壁部よりも下方の下側空間および前記隔壁部よりも上方の上側空間を連通させる連通口、並びに、前記本体部の底部分から下方に突出する接続管部、を備えるハウジングと、
前記排気口を開閉するための弁機構と、を有し、
前記接続管部は、前記下側空間に連通し、
前記上側空間は、前記連通口と前記排気口とを接続する排気路であり、
前記ハウジングは、前記排気路の途中に弁室を区画する弁室区画壁部を備え、
前記弁機構は、前記排気路を閉じる閉位置と前記排気路を開く開位置との間で変位可能な状態で前記弁室に収容された弁体と、前記弁体を前記閉位置に付勢する付勢部材と、上下方向に移動可能な状態で前記下側空間に収容されたフロートと、前記連通口を介して前記フロートと前記弁体とを接続するとともに、前記フロートが前記隔壁部に当接しているときに前記弁体を前記閉位置に維持し、前記フロートが前記隔壁部から前記下方に離間すると前記弁体を前記閉位置から前記開位置に向かって変位させるリンク機構と、を有し、
前記隔壁部は、その上面における前記弁室と前記連通口との間に、凹部を備えることを特徴とする空気抜き弁。
【請求項2】
前記ハウジングは、鋳造品であり、
前記隔壁部は、その下面から前記下側空間に突出する突出部分を備え、
前記上下方向から見た場合に、前記突出部分と前記凹部とは、重なり、
前記フロートは、前記突出部分に前記下方から当接することを特徴とする請求項1に記載の空気抜き弁。
【請求項3】
前記上下方向から見た場合に、前記突出部分は、前記フロートの中央部分と重なり、前記連通口は、前記フロートの外周縁部分と重なることを特徴とする請求項2に記載の空気抜き弁。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記凹部の開口縁において前記弁室の側に位置する開口縁部分に、前記隔壁部から前記上方に立ち上がる壁部を備えることを特徴とする請求項3に記載の空気抜き弁。
【請求項5】
前記弁室区画壁部は、前記弁室における前記連通口の側を区画する第1区画壁部と、前記弁室における前記排気口の側を区画する第2区画壁部と、を備え、
前記第1区画壁部は、前記弁室と前記連通口とを連通させる第1開口部を備え、
前記第2区画壁部は、前記弁室と前記排気口とを連通させる第2開口部を備え、
前記弁体は、前記閉位置において前記第2開口部を封鎖し、前記開位置において前記第2開口部の封鎖を解除し、
前記付勢部材は、コイルバネであり、前記第1区画壁部と前記弁体との間に配置されて前記弁体を前記第2区画壁部に付勢し、
前記壁部は、前記第1区画壁部であることを特徴とする請求項4に記載の空気抜き弁。
【請求項6】
前記排気路は、前記上下方向と交差する交差方向に延設されており、
前記排気口は、前記交差方向に向かって開口し、
前記リンク機構は、前記弁体から、前記第1開口部を介して、前記連通口が位置する側に延びる軸状部材と、前記フロートの外周縁部分から上方に延びて前記連通口を貫通して前記軸状部材の前記弁体とは反対側の端部に接続されたリンク部材と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の空気抜き弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内などに溜まる空気を外部に排出する空気抜き弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンションなどの給水系の立て管の最頂部、鳥居配管の最頂部、圧力タンクなどの密閉容器の頭頂部などには、空気抜き弁が取り付けられる。空気抜き弁は、配管内や容器内への充水時に、排気口から排気を行って立て管内の空気を排出する。また、充水後に、配管内や容器内の水に混入した空気が空気抜き弁に溜まると、この空気を排気口から排出する。
【0003】
このような空気抜き弁は、特許文献1に記載されている。同文献の空気抜き弁は、内部空間および内部空間に連通する排気口を備える本体部と、内部空間に連通し本体部から下方に突出する接続管部を備えるハウジングと、排気口を開閉するための弁機構と、を有する。排気口は、ハウジングの天井部分の上面に設けられており、天井部分には、排気口と内部空間とを連通させる排気路が設けられている。接続管部は、給水系の立て管の最頂部に接続されている。
【0004】
特許文献1では、弁機構は、内部空間内に構成されている。弁機構は、排気路の下端開口を開閉する弁体と、内部空間内を上下方向に昇降可能な状態で弁体の下方に配置されたフロートと、フロートの昇降に応じて弁体を変位させるリンク機構と、を備える。リンク機構は、フロートが内部空間内における所定の上昇位置に到達すると、弁体を、排気路の下端開口を封鎖する閉位置に配置する。また、リンク機構は、フロートが上昇位置から下降すると、弁体を変位させて、排気路の下端開口の封鎖を解除する。
【0005】
立て管に充水が行われ、水が空気抜き弁に達すると、フロートは水面の上昇とともに浮上する。フロートが上昇位置に到達するまでの間、立て管内の空気は、内部空間、排気路および排気口を介して、空気抜き弁から外部に排出される。フロートが上昇位置に到達すると、弁体は、排気路の下端開口を封鎖する。従って、内部空間内において、水面は、所定の高さ位置に維持される。
【0006】
立て管への充水後に、立て管内の水に混入した空気が気泡となって上昇して空気抜き弁の内部空間に溜まると、水面が下がる。また、水面の下降とともに、フロートが下降する。従って、リンク機構を介してフロートに接続された弁体は変位して、排気路の下端開口の封鎖を解除する。これにより、内部空間に溜まった空気は、排気路および排気口を介して、外に排出される。排気口から空気が排出さると、弁室内の水面は、上昇する。これにより、フロートが上昇位置に復帰するので、弁体は排気路の下端開口を閉鎖する。従って、水面は、内部空間内において、所定の高さ位置に維持される。このような動作を繰り返すことにより、空気抜き弁は、脈動や腐食の要因となる空気を、立て管から自動的に排出する。
【0007】
水に混入した空気が気泡となって空気抜き弁内の水面に到達すると、気泡が水面で弾けて、水が飛散する場合がある。ここで、飛散する水にゴミなどの異物が含まれていると、異物が水面から上方に離間する弁体に付着することがある。弁体に異物が付着すると、稀に、異物が排気路の下端開口と弁体との間に噛み込まれて、弁体が下端開口を閉鎖できなくなるという事態を引き起こす。弁体が排気路の下端開口を閉鎖できなくなると、空気抜き弁が取り付けられた配管内や容器内の水は、空気抜き弁の内部空間および排気路を介して排気口から外部に流れ出して、止まらなくなる。このような問題に対して、特許文献1
では、空気抜き弁と立て管との間に、ストレーナを配置して、空気抜き弁への異物の侵入を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、立て管には、金属製の管部材のみならず、樹脂製の管部材が用いられる。ここで、樹脂製の管部材を立て管に用いる場合には、管部材を切断したときに発生する切粉が静電気により立て管の内面に付着していることがある。このような切粉は微細なので、立て管内の水に混入したときに、ストレーナでは排除できず、空気抜き弁の内部空間に到達しやすい。
【0010】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、微細な異物がハウジングの内部空間に侵入した場合でも、この異物が弁体に付着することを防止或いは抑制できる空気抜き弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の空気抜き弁は、内部空間および前記内部空間に連通する排気口を備える本体部、前記内部空間を上下に仕切る隔壁部、前記隔壁部に設けられて前記隔壁部よりも下方の下側空間および前記隔壁部よりも上方の上側空間を連通させる連通口、並びに、前記本体部の底部分から下方に突出する接続管部、を備えるハウジングと、前記排気口を開閉するための弁機構と、を有し、前記接続管部は、前記下側空間に連通し、前記上側空間は、前記連通口と前記排気口とを接続する排気路であり、前記ハウジングは、前記排気路の途中に弁室を区画する弁室区画壁部を備え、前記弁機構は、前記排気路を閉じる閉位置と前記排気路を開く開位置との間で変位可能な状態で前記弁室に収容された弁体と、前記弁体を前記閉位置に付勢する付勢部材と、前記上下方向に移動可能な状態で前記下側空間に収容されたフロートと、前記連通口を介して前記フロートと前記弁体とを接続するとともに、前記フロートが前記隔壁部に当接しているときに前記弁体を前記閉位置に維持し、前記フロートが前記隔壁部から前記下方に離間すると前記弁体を前記閉位置から前記開位置に向かって変位させるリンク機構と、を有し、前記隔壁部は、その上面における前記弁室と前記連通口との間に、凹部を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の空気抜き弁は、内部空間が隔壁部により上下に仕切られている。従って、空気抜き弁が取り付けられた配管内や容器内の水は、接続管部を介して隔壁部の下方の下側空間に流入する。また、フロートが隔壁部に下方から当接したときに弁体が排気路を封鎖するので、下側空間に流入した水の水面は、隔壁部よりも下方に維持される。この一方で、排気口を開閉するための弁体は、隔壁部の上側の上側空間に区画された弁室に収容される。これにより、水面と弁体との間には隔壁部が存在するので、水面で気泡が割れるなどして水が飛散した場合でも、その水が弁体に付着することを防止或いは抑制できる。よって、水に異物が含まれていても、異物が弁体に付着することを防止或いは抑制できる。また、飛散した水が、隔壁部に設けられた連通口を介して、隔壁部の上面に達した場合でも、隔壁部は、その上面における弁室と連通口との間に、凹部を備える。従って、水に含まれる異物が水と共に隔壁部の上面を伝って弁室に到達することを防止或いは抑制できる。よって、異物が弁体に付着することを、防止しやすい。
【0013】
本発明において、前記ハウジングは、鋳造品であり、前記隔壁部は、前記下側空間に突出する突出部分を備え、前記上下方向から見た場合に、前記突出部分と前記凹部とは、重
なり、前記フロートは、前記突出部分に前記下方から当接するものとすることができる。このようにすれば、隔壁部が突出部分を備えてない場合と比較して、フロートが隔壁部に当接してリンク機構が弁体を閉位置に配置する位置を下方に移動させることができる。これにより、弁体が閉位置に配置された時点の水面の位置も、下方に移動させることができる。よって、上下方向において、水面と弁体とを離間させることができる。また、上下方向から見た場合に、隔壁部から下方に突出する突出部分は、隔壁部の上面で下方に窪む凹部と重なる。従って、隔壁部に突出部分を設けた場合でも、突出部分において隔壁部の厚みが増加することを回避できる。ここで、ハウジングは、鋳造品である。よって、隔壁部に突出部分を設けた場合でも、鋳造時に、隔壁部に引け巣が生じて、ハウジングに鋳造欠陥が発生することを防止或いは抑制できる。
【0014】
本発明において、前記上下方向から見た場合に、前記突出部分は、前記フロートの中央部分と重なり、前記連通口は、前記フロートの外周縁部分と重なるものとすることができる。上下方向から見た場合に、突出部分がフロートの中央部分と重なれば、フロートが突出部分に当接したときに、フロートが安定する。また、上下方向から見た場合に、連通口がフロートの外周縁部分と重なれば、連通口と、弁室とを離間させることが容易となる。
【0015】
本発明において、前記ハウジングは、前記凹部の開口縁において前記弁室の側に位置する開口縁部分に、前記隔壁部から前記上方に立ち上がる壁部を備えるものとすることができる。このようにすれば、水面で気泡が割れるなどして水が飛散し、隔壁部に設けられた連通口を介して排気路に到達し、凹部を超えて弁室に侵入しようとしたときに、壁部により、水の侵入を阻むことができる。よって、水に混入した異物が弁体に付着することを、防止しやすい。
【0016】
本発明において、前記弁室区画壁部は、前記弁室における前記連通口の側を区画する第1区画壁部と、前記弁室における前記排気口の側を区画する第2区画壁部と、を備え、前記第1区画壁部は、前記弁室と前記連通口とを連通させる第1開口部を備え、前記第2区画壁部は、前記弁室と前記排気口とを連通させる第2開口部を備え、前記弁体は、前記閉位置において前記第2開口部を封鎖し、前記開位置において前記第2開口部の封鎖を解除し、前記付勢部材は、コイルバネであり、前記第1区画壁部と前記弁体との間に配置されて前記弁体を前記第2区画壁部に付勢し、前記壁部は、前記第1区画壁部であるものとすることができる。これにより、第1区画壁部が壁部を兼ねるものとすることができる。
【0017】
本発明において、前記排気路は、前記上下方向と交差する交差方向に延設されており、前記排気口は、前記交差方向に向かって開口し、前記リンク機構は、前記弁体から、前記第1開口部を介して、前記連通口が位置する側に延びる軸状部材と、前記フロートの外周縁部分から上方に延びて前記連通口を貫通して前記軸状部材の前記弁体とは反対側の端部に接続されたリンク部材と、を備えるものとすることができる。このようにすれば、排気路が上下方向に延び、排気口が上方に向かって開口する場合と比較して、ハウジングが上下方向に大きくなることを抑制しやすい。また、フロートから上方に延びるリンク部材が、軸状部材の弁体とは反対側の端に接続される。従って、フロートの昇降に伴って弁体を変位させることが容易となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の空気抜き弁は、内部空間が隔壁部により上下に仕切られている。従って、空気抜き弁が取り付けられた配管や容器から下側空間に流入した水の水面は、隔壁部よりも下方に維持される。この一方で、排気口を開閉するための弁体は、隔壁部の上側の上側空間に区画された弁室に収容される。従って、水面で気泡が割れるなどして水が飛散した場合でも、その水が弁体に付着することを防止或いは抑制できる。また、飛散した水が、隔壁部に設けられた連通口を介して、隔壁部の上面に達した場合でも、隔壁部は、その上面に
おける弁室と連通口との間に、凹部を備える。従って、水に含まれる異物が水と共に隔壁部の上面を伝って弁室に到達することを防止或いは抑制できる。よって、異物が弁体に付着することを、防止しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明を適用した空気抜き弁の設置状態の説明図である。
【
図2】排気路を閉じた状態の空気抜き弁の縦断面図である。
【
図5】排気路を開いた状態の空気抜き弁の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態である空気抜き弁を説明する。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した空気抜き弁の外観斜視図である。
図2は、排気路を閉じた状態の空気抜き弁の縦断面図である。
図3は、空気抜き弁の部分断面図である。
図4は、空気抜き弁の分解斜視図である。
図5は、排気路を開いた状態の空気抜き弁の縦断面図である。
【0022】
空気抜き弁1は、ビルやマンションなどの給水系の立て管の最頂部、鳥居配管の最頂部、液体を貯留する貯留タンクや圧力タンクなどの密閉容器の頭頂部などに取り付けられる。
図1に示すように、本例では、空気抜き弁1は、ビルやマンションなどの建造物の給水用の立て管2の最頂部に取り付けられている。空気抜き弁1は、排気口5および立て管2に接続される接続管部6を備えるハウジング4を有する。また、
図2に示すように、空気抜き弁1は、ハウジング4内に、排気口5を開閉するための弁機構7を備える。立て管2は、金属製、或いはポリエチレン製である。以下では、空気抜き弁1を、立て管2に取り付けられる設置姿勢(
図1参照)で説明する。また、接続管部6の管軸Lに沿った方向を上下方向X、管軸Lと交差する方向を交差方向Yとして説明する。空気抜き弁1が立て管2に取り付けられたときに、接続管部6の管軸は、立て管2の管軸Lと一致する。本例において、交差方向Yは、管軸Lと直交する方向である。
図2に示すように、排気口5は、交差方向Yに開口する。
【0023】
(ハウジング)
ハウジング4は、鋳造品である。
図2に示すように、ハウジング4は、内部に、排気口5に連通する内部空間10を有する本体部11を備える。また、ハウジング4は、内部空間10を上下に仕切る隔壁部12と、隔壁部12に設けられた連通口13と、を備える。連通口13は、隔壁部12よりも下方X1の下側空間10Aと、隔壁部12よりも上方X2の上側空間10Bと、を連通させる。接続管部6は、本体部11の底部分から下方X1に突出する。接続管部6は、下側空間10Aに連通する。ここで、上側空間10Bは、連通口13と排気口5とを接続する排気路14である。排気路14は、交差方向Yに延びる。弁機構7は、排気路14を開閉することにより、排気口5を開閉する。
【0024】
また、ハウジング4は、排気路14の途中に弁室15を区画する弁室区画壁部16を備える。弁室区画壁部16は、弁室15における連通口13の側を区画する第1区画壁部17と、弁室15における排気口5の側を区画する第2区画壁部18と、を備える。第1区画壁部17は、弁室15と連通口13とを連通させる第1開口部17aを備える。第2区画壁部18は、弁室15と排気口5とを連通させる第2開口部18aを備える。
【0025】
次に、隔壁部12は、その上面における弁室15と連通口13との間に、凹部21を備
える。また、隔壁部12は、その下面に、下側空間10Aに突出する突出部分22を備える。上下方向Xから見た場合に、凹部21と突出部分22とは、重なる。
図2および
図3に示すように、凹部21の開口縁において弁室15の側に位置する開口縁部分には、隔壁部12から上方X2に立ち上がる壁部が設けられている。壁部は、第1区画壁部17である。
【0026】
ここで、
図2に示すように、ハウジング4は、接続管部6を備える第1ハウジング部材25と、第1ハウジング部材25に上方X2から被せられて、第1ハウジング部材25との間に内部空間10を区画する第2ハウジング部材26と、を備える。第2ハウジング部材26は、隔壁部12を備える。第1ハウジング部材25と第2ハウジング部材26との間には、第1Oリング27が介在する。また、ハウジング4は、第2ハウジング部材26に取り付けられて排気口5を規定する排気口規定部材28を備える。排気口規定部材28は、第2区画壁部18を備える。第2ハウジング部材26と排気口規定部材28との間には、第2Oリング29が介在する。
【0027】
(弁機構)
図2に示すように、弁機構7は、排気路14を閉じる閉位置31Aと排気路14を開く開位置31Bとの間で変位可能な状態で弁室15に収容された弁体31と、弁体31を閉位置31Aに付勢する付勢部材32と、を備える。また、弁機構7は、上下方向Xに移動可能な状態で下側空間10Aに収容されたフロート33と、連通口13を介してフロート33と弁体31とを接続するリンク機構34を備える。
図2に示すように、リンク機構34は、フロート33が隔壁部12に当接しているときに弁体31を閉位置31Aに維持する。また、リンク機構34は、フロート33が隔壁部12から下方X1に離間すると弁体31を閉位置31Aから開位置31Bに向かって変位させる(
図5参照)。本例では、リンク機構34は、フロート33が隔壁部12の突出部分22に当接しているときに弁体31を閉位置31Aに維持し、フロート33が突出部分22から下方X1に離間すると弁体31を閉位置31Aから開位置31Bに向かって変位させる。
【0028】
弁体31は、弾性を備える。弁体31は、閉位置31Aにおいて、第2区画壁部18の第2開口部18aを封鎖する。また、弁体31は、開位置31Bにおいて、第2開口部18aの封鎖を解除する。付勢部材32は、コイルバネである。付勢部材32は、第1区画壁部17と弁体31との間に配置されて、弁体31を第2区画壁部18に付勢する。
【0029】
フロート33の比重は1よりも小さい。
図4に示すように、フロート33は、下方X1に向かって外径寸法が小さくなる円錐台形状のフロート本体部35と、フロート本体部35から外周側に突出する複数のリブ36と、を備える。各リブ36は、上下方向Xに延びる。また、各リブ36は、フロート本体部35の外周面に等角度間隔で設けられている。各リブ36は、下方X1に向かってフロート本体部35から突出量が大きくなる。これにより、各リブ36の稜線は、フロート本体部35の中心軸線と平行に延びる。なお、下側空間10Aにおける本体部11の底部分には、十字形状のストッパ37が配置されている。ストッパ37は、内部空間10におけるフロート33の移動範囲の下端を規定する。すなわち、フロート33は、ストッパ37に当接する下降位置33A(
図5参照)まで、下降する。
【0030】
ここで、
図2から分かるように、上下方向Xから見た場合に、隔壁部12の突出部分22は、フロート33の中央部分と重なる。連通口13は、フロート33の外周縁部分と重なる。
【0031】
リンク機構34は、弁体31から、第1開口部17aを介して、連通口13が位置する側に延びる軸状部材41と、フロート33の外周縁部分から上方X2に延びて連通口13
を貫通して軸状部材41の弁体31とは反対側の端部に接続されたリンク部材42と、を備える。
図4に示すように、リンク部材42は、交差方向Yに延びる固定板部43と、固定板部43の一方端から上方X2に延びる接続板部44と、固定板部43の接続板部44とは反対側の端から下方X1に延びる埋設板部45と、を備える。接続板部44は、上端部分にフック形状部44aを備える。リンク部材42は、固定板部43がフロート33の上面に固定され、埋設板部45がフロート本体部35の中央部分に埋設され、接続板部44が、フロート33の外周縁部分から上方X2に延びる。また、リンク部材42は、フック形状部44aが軸状部材41の端部分に係止される。
【0032】
(空気抜き弁の動作)
空気抜き弁1は、立て管2の充水時に、排気口5から排気を行って立て管2内の空気を排出する。また、立て管2への充水後に、立て管2内の水に混入した空気が空気抜き弁1に溜まると、この空気を排気口5から排出する。
【0033】
具体的には、空気抜き弁1を立て管2に取り付けた時点では、フロート33は、本体部11の底部分に配置されたストッパ37に当接する下降位置33Aに配置されている。
図5に示すように、フロート33が下降位置33Aに配置されている状態では、フロート33に固定されたリンク機構34のリンク部材42が、弁体31から延びる軸状部材41の端部分を下方X1に引いている。これにより、弁体31は、付勢部材32の付勢力に抗して、開位置31Bに位置している。
【0034】
立て管2に充水が行われて水が空気抜き弁1に達すると、下側空間10Aにおける水面40の上昇とともにフロート33が浮上する。ここで、フロート33が、下降位置33Aから隔壁部12の突出部分22に当接する上昇位置33Bに到達するまで、立て管2内の空気は、内部空間10から、排気口5を介して、空気抜き弁1の外に排出される。
【0035】
フロート33が上昇位置33Bに到達すると、
図2に示すように、弁体31は、排気路14を封鎖する。すなわち、フロート33の上昇により、リンク機構34のリンク部材42が上昇する。リンク部材42が上昇すると、弁体31から延びる軸状部材41の端部分は、付勢部材32が弁体31を付勢する付勢力によって上方X2に移動する。また、付勢部材32の付勢力により、弁体31は閉位置31Aに配置される。これにより、水面40は、下側空間10Aの所定の高さ位置に維持される。
【0036】
立て管2への充水後に、立て管2内の水に混入した空気が気泡となって上昇して空気抜き弁1の内部空間10に溜まると、水面40が下がる。また、水面40の下降とともに、フロート33が下降する。これにより、フロート33に固定されたリンク機構34のリンク部材42が、弁体31から延びる軸状部材41の端部分を下方X1に引く。従って、弁体31は閉位置31Aから変位して、開位置31Bに配置される。すなわち、弁体31は、排気路14の封鎖を解除する。これにより、内部空間10に溜まった空気は、排気路14を介して、排気口5から空気抜き弁1の外に排出される。
【0037】
ここで、排気口5から空気が排出されると、空気抜き弁1内の水面40は、上昇する。これにより、フロート33が上昇位置33Bに復帰する。従って、弁体31は閉位置31Aに配置され、排気路14を封鎖する。排気路14が封鎖されると、水面40は、下側空間10Aにおいて、所定の高さ位置に維持される。このような動作を繰り返すことにより、空気抜き弁1は、脈動や腐食などの要因となる空気を、立て管2から自動的に排出する。
【0038】
(作用効果)
空気抜き弁1の内部空間10には、立て管2内の水に混入した異物が侵入することがあ
る。例えば、立て管2に樹脂製の管部材が用いられている場合には、管部材を切断したときに発生する切粉が静電気により立て管2の内面に付着している場合がある。このような切粉が立て管2内の水に混入すると、水に含まれる空気の気泡と一緒に立て管2内を上昇して、空気抜き弁1の内部空間10に侵入する。また、このような切粉は微細なので、立て管2と空気抜き弁1との間にストレーナが配置されている場合でも、ストレーナによって排除されず、空気抜き弁1の内部空間10に侵入する場合がある。
【0039】
ここで、水に混入した空気が気泡となって水面に到達すると、気泡が水面で弾けて、水が飛散する場合がある。また、飛散する水に切粉などの異物が含まれていると、異物が水面から上方に離間する弁体31に付着する可能性がある。さらに、弁体31に異物が付着すると、異物が弁体31と、第2区画壁部18との間に噛み込まれて、弁体31が排気路14を閉鎖できなくなるという事態を引き起こす可能性がある。弁体31が排気路14を閉鎖できなくなると、立て管2内の水は、空気抜き弁1の内部空間10から排気口5を介して、空気抜き弁1の外に流れ出して、止まらなくなる。
【0040】
このような問題に対して、本例の空気抜き弁1は、内部空間10が隔壁部12により上下に仕切られており、立て管2からの水は、隔壁部12の下方X1の下側空間10Aに流入する。また、フロート33が隔壁部12に下方X1から当接したときに弁体31が排気路14を封鎖するので、下側空間10Aに流入した水の水面40は、隔壁部12よりも下方X1に維持される。この一方で、排気口5を開閉するための弁体31は、隔壁部12の上側の上側空間10Bに区画された弁室15に収容される。これにより、水面40と弁体31との間には隔壁部12が存在するので、水面40で気泡が割れるなどして水が飛散した場合でも、その水が弁体31に付着することを防止或いは抑制できる。よって、水に異物が含まれていても、異物が弁体31に付着することを防止或いは抑制できる。
【0041】
また、水面40で気泡が割れるなどして飛散した水が、隔壁部12に設けられた連通口13を介して、隔壁部12の上面に達した場合でも、隔壁部12は、その上面における弁室15と連通口13との間に、凹部21を備える。従って、水に含まれる異物が水と共に隔壁部12の上面を伝って弁室15に到達することを防止或いは抑制できる。よって、異物が弁体31に付着することを、防止しやすい。
【0042】
ここで、本例では、隔壁部12は、下側空間10Aに突出する突出部分22を備え、フロート33は、突出部分22に下方X1から当接する。従って、隔壁部12が突出部分22を備えてない場合と比較して、フロート33が隔壁部12に当接してリンク機構34が弁体31を閉位置31Aに配置する位置を下方X1に移動させることができる。これにより、弁体31が閉位置31Aに配置された時点の水面40の位置も、隔壁部12が突出部分22を備えてない場合と比較して、下方X1に移動する。よって、上下方向Xにおいて、水面40と弁体31とを、より、離間させることができる。
【0043】
また、上下方向Xから見た場合に、隔壁部12から下方X1に突出する突出部分22は、隔壁部12の上面で下方X1に窪む凹部21と重なる。従って、隔壁部12に突出部分22を設けた場合でも、突出部分22において隔壁部12の厚みが増加することを回避できる。ここで、ハウジング4は、鋳造品である。よって、隔壁部12に突出部分22を設けた場合でも、鋳造時に、隔壁部12に引け巣が生じて、ハウジング4に鋳造欠陥が発生することを防止或いは抑制できる。
【0044】
さらに、本例では、上下方向Xから見た場合に、突出部分22は、フロート33の中央部分と重なり、連通口13は、フロート33の外周縁部分と重なる。上下方向Xから見た場合に、突出部分22がフロート33の中央部分と重なれば、フロート33が突出部分22に当接したときに、フロート33が安定する。また、上下方向Xから見た場合に、連通
口13がフロート33の外周縁部分と重なれば、連通口13と、弁室15とを離間させることが容易である。
【0045】
また、ハウジング4は、凹部21の開口縁において弁室15の側に位置する開口縁部分に、隔壁部12から上方X2に立ち上がる壁部(第1区画壁部17)を備える。従って、水面40で気泡が割れるなどして水が飛散し、隔壁部12に設けられた連通口13を介して排気路14に到達し、凹部21を超えて弁室15に侵入しようとしたときに、壁部(第1区画壁部17)により、水の侵入を阻むことができる。よって、水に混入した異物が弁体31に付着することを、より、防止しやすい。
【0046】
さらに、本例では、弁室区画壁部16は、弁室15における連通口13の側を区画する第1区画壁部17と、弁室15における排気口5の側を区画する第2区画壁部18と、を備える。第1区画壁部17は、弁室15と連通口13とを連通させる第1開口部17aを備える。第2区画壁部18は、弁室15と排気口5とを連通させる第2開口部18aを備える。弁体31は、閉位置31Aにおいて第2開口部18aを封鎖し、開位置31Bにおいて第2開口部18aの封鎖を解除する。付勢部材32は、コイルバネであり、第1区画壁部17と弁体31との間に配置されて弁体31を第2区画壁部18に付勢する。壁部は、第1区画壁部17である。従って、弁室15を区画する第1区画壁部17が、弁体31に異物が付着することを防止するための壁部を兼ねるものとすることができる。
【0047】
また、本例では、排気路14は交差方向Yに延設されており、排気口5は交差方向Yに向かって開口する。従って、排気路14が上下方向Xに延びて排気口5が上方X2を向く場合などと比較して、ハウジング4が上下方向Xに大きくなることを抑制しやすい。
【0048】
さらに、リンク機構34は、弁体31から、第1開口部17aを介して、連通口13が位置する側に延びる軸状部材41と、フロート33の外周縁部分から上方X2に延びて連通口13を貫通して軸状部材41の弁体31とは反対側の端部に接続されたリンク部材42と、を備える。これにより、フロート33から上方X2に延びるリンク部材42は、軸状部材41の弁体31とは反対側の端部に接続される。従って、フロート33の昇降に伴って弁体31を変位させることが容易となる。すなわち、リンク部材42が直接弁体31を変位させる場合と比較して、弁体31を小さな力で変位させることができる。これにより、フロート33を軽くすることが可能となるので、フロート33を小さくして、空気抜き弁1を小型化することが容易となる。
【符号の説明】
【0049】
1…空気抜き弁、2…立て管、4…ハウジング、5…排気口、6…接続管部、7…弁機構、10…内部空間、10A…下側空間、10B…上側空間、11…本体部、12…隔壁部、13…連通口、14…排気路、15…弁室、16…弁室区画壁部、17…第1区画壁部、17a…第1開口部、18…第2区画壁部、18a…第2開口部、21…凹部、22…突出部分、25…第1ハウジング部材、26…第2ハウジング部材、27…第1Oリング、28…排気口規定部材、29…第2Oリング、31…弁体、31A…閉位置、31B…開位置、32…付勢部材、33…フロート、33A…下降位置、33B…上昇位置、34…リンク機構、35…フロート本体部、36…リブ、37…ストッパ、40…水面、41…軸状部材、42…リンク部材、43…固定板部、44…接続板部、44a…フック形状部、45…埋設板部、L…管軸、X…上下方向、X1…下方、X2…上方