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  • 特開-化粧シート、及び化粧材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100072
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】化粧シート、及び化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240719BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240719BHJP
   E04F 15/02 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
B32B27/00 E ZAB
B32B27/32
E04F15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003786
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 臣吾
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彩加
(72)【発明者】
【氏名】野口 祥太
(72)【発明者】
【氏名】明石 彩
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA53
2E220BB02
2E220GB01X
2E220GB11X
2E220GB31X
2E220GB32X
2E220GB32Z
2E220GB33X
2E220GB37Z
2E220GB42X
2E220GB43X
4F100AA01A
4F100AA01B
4F100AA01E
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4F100AA08B
4F100AA08E
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4F100AA20E
4F100AA21A
4F100AA21B
4F100AA21E
4F100AA33A
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4F100AA33E
4F100AA37A
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4F100AB13B
4F100AB13E
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4F100AK01D
4F100AK01E
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4F100AK03E
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4F100AK25E
4F100BA05
4F100BA07
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4F100JC00B
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4F100JK12
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4F100JL11D
4F100JN01E
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】材料における石油依存性を低減して石油資源を節約することが可能な化粧シート及び化粧材を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る化粧シート1は、プライマー層8と、着色基材層2と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明樹脂層5と、表面保護層6とをこの順に備え、プライマー層8、着色基材層2、絵柄層3、透明樹脂層5および表面保護層6は、バイオマス由来の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマー層と、着色熱可塑性樹脂層と、絵柄層と、接着性樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とをこの順に備え、
前記プライマー層、前記着色熱可塑性樹脂層、前記絵柄層、前記透明熱可塑性樹脂層および前記表面保護層は、バイオマス由来の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記着色熱可塑性樹脂層または前記透明熱可塑性樹脂層のうち少なくとも一方は、前記樹脂組成物の主材料となる前記バイオマス由来の樹脂材料に核剤が添加されている
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記核剤はナノサイズであり、
前記核剤の添加量は、前記バイオマス由来の樹脂材料の質量を基準として500ppm以上2000ppm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記着色熱可塑性樹脂層及び前記透明熱可塑性樹脂層は、前記樹脂組成物の主材料としてバイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記着色熱可塑性樹脂層及び前記透明熱可塑性樹脂層は、前記バイオマス由来のオレフィンを5質量%以上99質量%未満の範囲内で含む
ことを特徴とする請求項4に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記着色熱可塑性樹脂層または前記透明熱可塑性樹脂層のうち少なくとも一方は、無機物または機能性添加物のうち少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物のうちのいずれか一つ又は複数であり、
前記機能性添加物は、抗菌剤、抗ウイルス剤及び紫外線吸収剤のうちいずれか一つ又は複数である
ことを特徴とする請求項6に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記着色熱可塑性樹脂層は、厚みが30μm以上150μm以下の範囲内であり、比重が0.9以上1.6以下の範囲内であり、
前記透明熱可塑性樹脂層は、厚みが10μm以上150μm以下であり、比重が0.9以上1.4以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記着色熱可塑性樹脂層は、厚みが30μm以上150μm以下の範囲内であり、比重が0.9以上1.6以下の範囲内であり、
前記透明熱可塑性樹脂層は、厚みが10μm以上150μm以下であり、比重が0.9以上0.99以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項4に記載の化粧シート。
【請求項10】
前記プライマー層は、無機物を含んでおり、厚みが0.3μm以上3.0μm以下の範囲内であり、塗布量が0.3g/m以上3.0g/m以下の範囲内であり、
前記プライマー層における前記無機物の含有量は、前記樹脂組成物の主材料となる前記バイオマス由来の樹脂材料に対して重量比で1.0%以上60.0%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項11】
前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物のうちのいずれか一つ又は複数である
ことを特徴とする請求項10に記載の化粧シート。
【請求項12】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に貼り合わされた請求項1から11のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備える
ことを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧シート及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル製の化粧シートに代わる化粧シートとして、例えば、特許文献1に開示されているように、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-188941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、環境問題の背景から、化粧シートの材料を、従来の材料である石油由来の材料から植物由来の材料へ代えることで石油依存性を低減して石油資源を節約し、二酸化炭素の排出量削減を削減して環境にやさしく持続可能な社会へ貢献するという要求がある。しかしながら、化粧シートに用いることが可能な植物由来の材料は少なく、化粧シートの材料において石油依存性の低減が実現できていないという課題があった。
【0005】
本開示は、上述した問題点を鑑み、材料における石油依存性を低減して石油資源を節約することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様による化粧シートは、プライマー層と、着色熱可塑性樹脂層と、絵柄層と、接着性樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とをこの順に備え、前記プライマー層、前記着色熱可塑性樹脂層、前記絵柄層、前記透明熱可塑性樹脂および前記表面保護層は、バイオマス由来の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である。
【0007】
また上記課題を解決するために、本発明の他の一態様による化粧材は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に貼り合わされた前記化粧シートと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、材料における石油依存性を低減して石油資源を節約することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態における化粧シート及び化粧材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0011】
以下、図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図1に示すように、化粧シート1と、基材9とを備える。
なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
基材9は、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板等を用いて板状に形成されており、一方の面(図1では、上側の面)に、化粧シート1が積層されている。すなわち、化粧材10は、基材9と、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える。化粧シート1と基材9とは、基材9上に設けられた接着剤層11を介して貼り合わされている。なお、化粧シート1は、基材9の他方の面に積層されてもよい。つまり、化粧材10において化粧シート1は、基材9の少なくとも一方の面に積層されていればよい。
【0012】
接着剤層11は、基材9に用いる材料(例えば、木質基材又は金属系基材)に応じて適宜選択した接着剤を用いることができる。例えば、基材9が木質基材であれば、接着剤層11として酢酸ビニル(酢ビ)系、ウレタン系(溶剤系)等の接着剤を用いることができる。これらの接着剤の形態は、水性エマルジョンでもよいし、1液硬化型、2液硬化型のいずれでもよい。
また、基材9が金属系基材であれば、ウレタン系(溶剤系)、ゴム系(溶剤系)等の接着剤を用いることができる。
【0013】
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図1に示すように、着色基材層(着色熱可塑性樹脂層)2と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明樹脂層(透明熱可塑性樹脂層)5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8とを備える。
本実施形態に係る化粧シート1は、プライマー層8と、着色基材層2と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明樹脂層5と、表面保護層6とをこの順に備えていればよい。詳しくは後述するが、本実施形態係る化粧シート1において、プライマー層8、着色基材層2、絵柄層3、透明樹脂層5および表面保護層6は、バイオマス植物由来の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である。これにより、本実施形態に係る化粧シート1は、材料における石油依存性を低減して石油資源を節約することができる。したがって、二酸化炭素の排出量削減を削減して環境にやさしく持続可能な社会へ貢献することができる。
【0014】
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層である。より具体的には、本実施形態において着色基材層2は、バイオマス由来(植物由来)の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である。本実施形態において着色基材層2は、樹脂組成物の主材料としてバイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含んでいる。例えば本実施形態に係る化粧シート1における着色基材層2は、バイオマス由来の樹脂材料としてバイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層である。
以下、着色基材層2の組成について詳しく説明する。
(バイオマス由来のポリエチレン)
本実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたエチレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
【0015】
バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび化石燃料由来のα-オレフィンの少なくとも一種をさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
【0016】
上記のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリエチレンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
【0017】
バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
【0018】
上記のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本実施形態においては、ポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=PC14/105.5×100
【0019】
本実施形態においては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0となる。
【0020】
本実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンやそのポリエチレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
【0021】
本実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
【0022】
エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0023】
また、バイオマス由来のポリエチレンとして、エチレンの重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0024】
(バイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物)
本実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリエチレンを主成分として含むものである。着色基材層2を形成する樹脂組成物、すなわち着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5質量%以上99質量%未満の範囲内、より好ましくは25質量%以上90質量%以下の範囲内で含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来の化石燃料を用いる場合に比べてより確実に化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0025】
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリエチレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0026】
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよびα-オレフィンの少なくとも一方とを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリエチレンをさらに含んでもよい。つまり、本実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
【0027】
本実施形態によれば、着色基材層2を形成する樹脂組成物、すなわち着色基材層2は、化石燃料由来のポリエチレンとの混合物を用いる場合、5質量%以上好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%のバイオマス由来のポリエチレンを含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエチレンと、例えば化石燃料由来のポリエチレンとの混合物を含んでいてもよく、このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、5質量%以上好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%の範囲内であればよい。
【0028】
(核剤)
着色基材層2を形成する樹脂組成物の主材料となるバイオマス由来のポリエチレンには、核剤(造核剤)が添加されていてもよい。
上記核剤は例えばナノ化されていることが好ましい。すなわち核剤はナノサイズであることが好ましい。また、着色基材層2において上記造核剤は、バイオマス由来のポリエチレンの質量を基準として、500ppm以上2000ppm以下の範囲内で、バイオマス由来のポリエチレンに添加されていれば好ましく、1500ppm以上2000ppm以下の範囲内で、バイオマス由来のポリエチレンに添加されていればさらに好ましい。
着色基材層2が上記範囲内で核剤を含むことにより高結晶という効果を奏する。
【0029】
(添加物)
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された着色基材層2を形成する樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリエチレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。つまり、着色基材層2は各種の添加物を含んでいてもよい。添加剤(添加物)としては、例えば、充填剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、熱安定剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤(酸化防止剤)、イオン交換剤、および着色剤(着色顔料)、帯電防止剤、滑剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等を添加することができる。また、着色基材層2を形成する樹脂組成物には、上述の添加剤のうち特に機能性添加物として抗菌剤、抗ウイルス剤及び紫外線吸収剤のうちいずれか一つ又は複数を添加することが好ましい。これにより、着色基材層2に対して優れた機能性を付与することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、より好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
【0030】
(無機物)
着色基材層2は無機物を含んでいてもよい。つまり着色基材層2を形成する樹脂組成物は無機物を含んで構成されてもよい。無機物を添加することにより、着色基材層2の比重を好適に制御することができる。無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他酸化物等のうちのいずれか一つ又は複数を適用することができる。
【0031】
さらに、着色基材層2は、比重が0.9以上1.6以下の範囲内となるように構成されることが好ましい。無機物が添加されていることにより、着色基材層2の比重を上記範囲内に制御することができる。比重が0.9以上1.6以下となるように、着色基材層2に無機物を添加することによって、着色基材層2の隠蔽性を高めることができる。
【0032】
以上のように、着色基材層2は、バイオマス由来のエチレンを着色基材層2全体に対して5質量%以上好ましくは、5質量%以上99質量%未満の範囲内で含んでなるものである。着色基材層2中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を確実に削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0033】
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもの、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと化石燃料由来のポリエチレンとを含むもの、化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含むもののうちのいずれであっても良く、また、着色基材層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
なお、バイオマス由来の高密度ポリエチレンとは、密度が0.94を超えるポリエチレンをいう。また、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとは、密度が0.94以下のポリエチレンをいう。
着色基材層2は、バイオマス由来のポリエチレンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレン(バイオマス由来のものであっても、化石燃料由来のものであってもよい)を、95:5~70:30の範囲内でブレントしたものが良い。低密度ポリエチレンの含有量が少ないと製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと柔らかくなりすぎてしまうという問題がある。
【0034】
着色基材層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
【0035】
着色基材層2の厚みは、30μm以上150μm以下の範囲内であることが好ましく、51μm以上150μm以下であることがより好ましく、55μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。これは、着色基材層2の厚みが30μm以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが150μm以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
【0036】
なお、本実施形態では、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリエチレンに代えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、本実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
【0037】
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。上述のように本実施形態において絵柄層3は、バイオマス由来(植物由来)の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
【0038】
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
【0039】
絵柄層3は、上述の着色剤とバインダ樹脂とを含んで形成される。以下、本実施形態において絵柄層3に用いられるバインダ樹脂について、説明する
【0040】
〔バインダ樹脂〕
絵柄層3が含有するバインダ樹脂は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含む。
また絵柄層3において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。ポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかは、バイオマス由来成分を含んでもよく、含んでいなくてもよい。以下の説明において、バイオマス由来成分を含むウレタン(メタ)アクリレートのことを、バイオウレタン(メタ)アクリレートとも称する。
つまり、絵柄層3は、上述の着色剤と、バイオウレタン(メタ)アクリレートと、を含有する樹脂層である。すなわち絵柄層3は、着色剤とバイオマス由来成分とを含んでいる。
【0041】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール及びイソシアネートとヒドロキ
シ(メタ)アクリレートとの反応によって得られるものである。バイオウレタン(メタ)アクリレートにおいては、ポリオールとして植物由来のポリオールを使用するか、イソシアネートとして植物由来のイソシアネートを使用するか、或いはポリオール及びイソシアネートの何れも植物由来のものを使用することができる。
【0042】
ポリオールとしては、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオール、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であるポリエーテルポリオール、又は、多官能アルコールとカーボネートとの反応物であるポリカーボネートポリオールを用いることができる。以下、各ポリオールについて説明する。
【0043】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能カルボン酸の少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物
【0044】
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、及びサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
【0045】
バイオマス由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較し、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
バイオマス由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、これを水添することによって製造することができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。
【0046】
化石燃料由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2個以上、好ましくは2~8個の水酸基を有する化合物を用いることができる。具体的には、化石燃料由来の多官能アルコールとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコールの他、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等を使用することができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0047】
バイオマス由来の多官能カルボン酸としては、再生産可能な大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油、ひまし油等の植物由来の油、及びそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油等の植物原料から得られる脂肪族多官能カルボン酸を用いることがで
きる。バイオマス由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本発明では、特に、バイオマス由来のコハク酸又はバイオマス由来のセバシン酸を用いることが好ましい。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0048】
化石燃料由来の多官能カルボン酸としては、脂肪族多官能カルボン酸や芳香族多官能カルボン酸を用いることができる。化石燃料由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、アジピン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、及びダイマー酸、ならびにそれらのエステル化合物等が挙げられる。また、化石燃料由来の芳香族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、及びピロメリット酸、ならびにそれらのエステル化合物等を用いることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0049】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能イソシアネートの少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物
【0050】
バイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールを用いることができる。
【0051】
バイオマス由来の多官能イソシアネートとしては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化し、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られたものを用いることができる。バイオマス由来の多官能イソシアネートは、例えば、バイオマス由来のジイソシアネートである。バイオマス由来のジイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のジイソシアネートを得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
【0052】
1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの他の合成方法としては、ホスゲン化法やカルバメート化法が挙げられる。より具体的には、ホスゲン化方法は、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩を直接ホスゲンと反応させる方法や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法により、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。また、カルバメート化法は、まず、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩をカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメ
ート(PDC)を生成させた後、熱分解することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。本発明において、好適に使用されるポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(商品名:スタビオ(登録商標))が挙げられる。
【0053】
化石燃料由来の多官能イソシアネートとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート等も挙げられる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0054】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、ポリカーボネートポリオールとしては、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いることができる。または、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含むカーボネートとの反応物を用いることができる。カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコールを用いることができる。
【0056】
<イソシアネート化合物>
次に、イソシアネート化合物について説明する。バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物としては、ポリエーテルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能イソシアネートを用いることができる。
【0057】
<ヒドロキシ(メタ)アクリレート>
次に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートについて説明する。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を一つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を二つ以上有するヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
また、絵柄層3のバインダ樹脂は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、絵柄層3は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートに加えてニトロセルロースを含んでいてもよい。
【0059】
<ニトロセルロース>
ニトロセルロースは、セルロース骨格の水酸基の一部を硝酸エステル化したニトロ基置換体のセルロース系樹脂である。ニトロセルロース樹脂のセルロース骨格は、バイオマス材料である。ニトロセルロースとしては、一般的なニトロセルロースが支障なく利用できるが、とりわけ、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1.3~2.7個のニトロ基で置換されたものを利用することが好ましい。
【0060】
ニトロセルロースには、分子量に応じてLタイプとHタイプがある。有機溶剤に対する溶解性の面からは、Lタイプのものを利用することが好ましい。
【0061】
絵柄層3は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上99%以下、さらに好ましくは10%以上70%以下のバイオマス度を有する。
バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。絵柄層3の乾燥後の重量は、好ましくは0.1g/m以上20g/m以下、より好ましくは1g/m以上15g/m以下、さらに好ましくは3g/m以上10g/m以下である。
絵柄層3は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.5μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.7μm以上3μm以下の厚さを有する。なお、このような重量や厚さを有する絵柄層3が複数設けられていてもよい。
「バイオマス度」について、例えばバイオウレタン(メタ)アクリレートの場合には、上述のとおり、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値として求められる。
【0062】
また「バイオマス度」について、例えばニトロセルロースの場合には、出発物質であるセルロース骨格を構成するグルコース単位1個(式量=172)当たりに含まれる水酸基の数が3個であるから、この水酸基の1~3個が硝酸エステル化し(水素がニトロ基(非
バイオマス材料、式量=46)に置換され)得る。そうすると、もとのセルロース骨格が
バイオマス材料100重量%からなるとして、グルコース単位1個あたりの置換されたニトロ基の数が平均してn個の場合、ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合(重量%)は、(172-n)×100/(172-n+46n)で計算できる。
ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合は、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1個のニトロ基で置換された場合は、約78.8重量%、2個のニトロ基で置換された場合は約64.9重量%、3個のニトロ基に置換された場合は約55.0重量%になる(上記の式での計算値)。
【0063】
また、絵柄層3の厚さが10μm以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
【0064】
絵柄層3の絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
【0065】
<接着性樹脂層>
接着性樹脂層4は、絵柄層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着性樹脂層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。特に透明樹脂層5との接着性からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0066】
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着性樹脂層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層である。より具体的には、本実施形態において透明樹脂層5は、バイオマス由来(植物由来)の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である。本実施形態において透明樹脂層5は、着色基材層2と同様に樹脂組成物の主材料としてバイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含んでいる。例えば本実施形態に係る化粧シート1における着色基材層2は、バイオマス由来の樹脂材料としてバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層である。
【0067】
(バイオマス由来のポリプロピレン)
本実施形態において、バイオマス由来のポリプロピレンは、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のプロピレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたプロピレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のプロピレンを用いているため、重合されてなるポリプロピレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリプロピレンの原料モノマーは、バイオマス由来のプロピレンを100質量%含むものでなくてもよい。
【0068】
バイオマス由来のポリプロピレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のプロピレンをさらに含んでもよい。
【0069】
バイオマス由来の原料であるプロピレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
【0070】
上記のポリプロピレン中のバイオマス由来のプロピレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、上記放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値であり、ポリプロピレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本実施形態においては、ポリプロピレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=PC14/105.5×100
【0071】
本実施形態においては、理論上、ポリプロピレンの原料として、全てバイオマス由来のプロピレンを用いれば、バイオマス由来のプロピレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリプロピレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリプロピレン中のバイオマス由来のプロピレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリプロピレンのバイオマス度は0となる。
【0072】
本実施形態において、バイオマス由来のポリプロピレンやそのポリプロピレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
【0073】
本実施形態において、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、プロピレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
【0074】
プロピレン重合体の重合方法は、目的とするポリプロピレンの種類、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0075】
また、バイオマス由来のポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンをそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上混合して
用いてもよい。
【0076】
(バイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物)
本実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリプロピレンを主成分として含むものである。透明樹脂層5を形成する樹脂組成物、すなわち透明樹脂層5は、バイオマス由来のプロピレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5質量%以上99質量%未満の範囲内、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内で含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のプロピレンの濃度が5質量%以上99質量%未満の範囲内であれば、従来に比べてより確実に化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0077】
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリプロピレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のプロピレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0078】
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のプロピレンをさらに含んでもよい。つまり、本実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリプロピレンと、化石燃料由来のポリプロピレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
【0079】
本実施形態によれば、樹脂組成物は、化石燃料由来のポリプロピレンとの混合物である場合、好ましくは5質量%以上99質量%未満の範囲内、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内のバイオマス由来のポリプロピレンと、好ましくは1質量%以上95質量%以下の範囲内、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内の化石燃料由来のポリプロピレンとを含むものである。このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のプロピレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0080】
(核剤)
透明樹脂層5を形成する樹脂組成物の主材料となるバイオマス由来のポリプロピレンには、核剤(造核剤)が添加されていてもよい。
上記核剤は例えばナノ化されていることが好ましい。すなわち核剤はナノサイズであることが好ましい。また、透明樹脂層5において上記造核剤は、バイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として、500ppm以上2000ppm以下の範囲内で、バイオマス由来のポリプロピレンに添加されていれば好ましく、1500ppm以上2000ppm以下の範囲内で、バイオマス由来のポリプロピレンに添加されていればさらに好ましい。透明樹脂層5に上記範囲内の核剤を添加することで、ヘイズ(曇り値)を低減して透明樹脂層5の透明度を向上することができる。
【0081】
なお本実施形態に係る化粧シート1において、上記核剤は、着色基材層2または透明樹脂層5のうち少なくとも一方に添加されていればよい。つまり、化粧シート1の着色基材層2および透明樹脂層5において、上記核剤は着色基材層2および透明樹脂層5の両方に含まれてもよいし、着色基材層2のみに含まれてもよいし、透明樹脂層5のみに含まれてもよい。
【0082】
(添加物)
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された透明樹脂層5を形成する樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリプロピレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。つまり、透明樹脂層5は各種の添加物を含んでいてもよい。添加剤(添加物)としては、例えば着色基材層2と同様に、充填剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、熱安定剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤(酸化防止剤)、イオン交換剤、および着色剤(着色顔料)、帯電防止剤、滑剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等を添加することができる。また着色基材層2と同様に、透明樹脂層5を形成する樹脂組成物には、上述の添加剤のうち特に機能性添加物として抗菌剤、抗ウイルス剤及び紫外線吸収剤のうちいずれか一つ又は複数を添加することが好ましい。これにより、透明樹脂層5に対して優れた機能性を付与することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、より好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
【0083】
(無機物)
着色基材層2と同様に、透明樹脂層5は無機物を含んでいてもよい。つまり透明樹脂層5を形成する樹脂組成物は無機物を含んで構成されてもよい。無機物を添加することにより、透明樹脂層5の比重を好適に制御することができる。着色基材層2と同様に、透明樹脂層5において無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他酸化物等のうちのいずれか一つ又は複数を適用することができる。
【0084】
なお、本実施形態に係る化粧シート1において、着色基材層2または透明樹脂層5のうち少なくとも一方に、無機物または上記機能性添加物が含まれていればよい。つまり、化粧シート1の着色基材層2および透明樹脂層5において、無機物は着色基材層2および透明樹脂層5の両方に含まれてもよいし、着色基材層2のみに含まれてもよいし、透明樹脂層5のみに含まれてもよい。また、上記機能性添加物は、着色基材層2および透明樹脂層5の両方に含まれてもよいし、着色基材層2のみに含まれてもよいし、透明樹脂層5のみに含まれてもよい。
【0085】
さらに、透明樹脂層5は、比重が0.9以上0.99以下の範囲内となるように構成されることが好ましい。無機物が添加されていることにより、透明樹脂層5の比重を上記範囲内に制御することができる。比重が0.9以上0.99以下となるように、透明樹脂層5に無機物を添加することによって、透明樹脂層5の隠蔽性を高めることができる。
【0086】
以上のように、透明樹脂層5は、バイオマス由来のプロピレンを透明樹脂層5全体に対して5質量%以上、好ましくは5質量%以上99質量%未満、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内で含んでなるものである。透明樹脂層5中のバイオマス由来のプロピレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量をより確実に削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0087】
透明樹脂層5は、透明樹脂層5全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。また透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリプロピレン以外に、化石燃料由来のポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0088】
透明樹脂層5の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
【0089】
透明樹脂層5の厚みは、10μm以上150μm以下の範囲内であることが好ましく、51μm以上150μm以下の範囲内であることがより好ましく、55μm以上100μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。厚みが上記範囲内であれば、耐摩耗性、耐傷性能において、十分実用範囲である。あるいは、意匠性の面でも、透明樹脂層5の存在が絵柄層3と相俟って、より深みや奥行きを感じさせる効果を持つ。具体的には、透明樹脂層5の厚さが10μm未満であると、表面硬度が低減して耐摩耗性、耐傷性能が十分に得られないことがある。一方、透明樹脂層5の厚さが150μmを超えると、製造時の生産性が劣りコスト的にも不利となることがある。
【0090】
なお、本実施形態では、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリプロピレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリプロピレンに加えて、バイオマス由来のポリプロピレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、本実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
【0091】
また、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂はバイオマス由来のポリオレフィンに限られない。透明樹脂層5は、バイオマス由来のポリオレフィン以外のバイオマスプラスチックで構成されてもよい。この場合、当該バイオマスプラスチックで構成される透明樹脂層5は、比重が0.9以上1.4以下の範囲内となるように構成されることが好ましい。無機物が添加されていることにより、当該バイオマスプラスチックで構成される透明樹脂層5の比重を上記範囲内に制御することで透明樹脂層5の隠蔽性を高めることができる。
【0092】
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
【0093】
表面保護層6は、絵柄層3のバインダ樹脂と同様の材料を用いて形成することができる。このため、表面保護層6の構成は、着色剤を含まない点以外は、絵柄層3の構成と同様である。
表面保護層6は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレート、すなわちバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されている。また表面保護層6において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。つまり、表面保護層6は、バイオマス由来成分を含んでいる。したがって、上述のように本実施形態において表面保護層6は、バイオマス由来(植物由来)の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である。
【0094】
また、表面保護層6は、絵柄層3のバインダ樹脂と同様に、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、表面保護層6は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートにニトロセルロースを添加して形成されてもよい。
【0095】
表面保護層6は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下のバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。表面保護層6の乾燥後の重量は、好ましくは0.1g/m以上15g/m以下、より好ましくは3g/m2以上10g/m以下、さらに好ましくは6g/m以上9g/m以下である。表面保護層6は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上10μm以下、さらに好ましくは6μm以上9μm以下の厚さを有する。
【0096】
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
【0097】
<凹凸部>
凹凸部7は、透明樹脂層5と表面保護層6の複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
【0098】
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(図1では、下側の面)に積層されている。
【0099】
プライマー層8は、表面保護層6と同様に、絵柄層3のバインダ樹脂と同様の材料を用いて形成することができる。このため、プライマー層8の構成は表面保護層6と同様であり、さらに着色剤を含まない点以外は、絵柄層3の構成と同様である。
プライマー層8は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレート、すなわちバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されている。またプライマー層8において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。つまり、プライマー層8は、バイオマス由来成分を含んでいる。したがって、上述のように本実施形態においてプライマー層8は、バイオマス由来(植物由来)の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である。
【0100】
(無機物)
着色基材層2、透明樹脂層5と同様に、プライマー層8は無機物を含んでいてもよい。つまりプライマー層8を形成する樹脂組成物は無機物を含んで構成されてもよい。無機物を添加することにより、化粧シート1の保管(例えばロール状、折り畳み状の保管)時等におけるブロッキングの発生を抑制し、さらに着色基材層2と基材9との密着性(基材密着性)を向上することができる。着色基材層2と同様に、プライマー層8において無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他酸化物等のうちのいずれか一つ又は複数を適用することができる。
また、無機物の含有量は、プライマー層8を形成する樹脂組成物の主材料となるバイオマス由来の樹脂材料に対して重量比で1.0%以上60.0%以下の範囲内であることが好ましい。無機物の含有量が当該範囲内であることで、プライマー層8においてブロッキングの抑制をより確実に抑制し、さらに基材密着性をより向上することができる。
【0101】
またプライマー層8は、厚みが0.3μm以上3.0μm以下の範囲内であることが好ましく、1.0μm以上2.5μm以下の範囲内がより好ましい。これは、プライマー層8の厚みが0.3μm以上である場合、着色基材層2と基材9との密着性(基材密着性)・耐食性を向上することができることに起因する。また、プライマー層8の厚みが3.0μm以下である場合、プライマー層8を必要以上に厚く形成することがなく、密着性・耐食性の向上と、良好な後加工性とを両立し、且つ化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
【0102】
またプライマー層8は、塗布量が0.3g/m以上3.0g/m以下の範囲内であることが好ましく、1.0g/m以上2.5g/m以下の範囲内がより好ましい。塗布量が当該範囲内であることにより、基材密着性を確実に良好とすることができる。
【0103】
(本実施形態の効果)
本実施形態および上記変形例に係る化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)本実施形態に係る化粧シート1は、プライマー層8と、着色基材層2と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明樹脂層5と、表面保護層6とをこの順に備え、
プライマー層8、着色基材層2、絵柄層3、透明樹脂層5および表面保護層6は、バイオマス由来の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である。
この構成によれば、材料における石油依存性を低減して石油資源を節約することが可能な化粧シートを提供することが可能となる。
(2)本実施形態に係る化粧シート1において、着色基材層2または透明樹脂層5のうち少なくとも一方は、上記樹脂組成物の主材料となる上記バイオマス植物由来の樹脂材料に核剤が添加されている。
この構成によれば、着色基材層2に核剤を添加することで着色基材層2を高結晶とすることができ、さらに透明樹脂層5に核剤を添加することでヘイズ(曇り値)を低減して透明樹脂層5の透明度を向上することができる。
(3)
本実施形態に係る化粧シート1において、上記核剤はナノサイズであり、上記核剤の添加量は、上記バイオマス由来の樹脂材料の質量を基準として500ppm以上2000ppm以下の範囲内である。
この構成によれば、核剤の添加により着色基材層2をより確実に高結晶とすることができ、さらに核剤の添加により確実にヘイズ(曇り値)を低減して透明樹脂層5の透明度を確実に向上することができる。
【0104】
(4)本実施形態に係る化粧シート1において、着色基材層2及び透明樹脂層5は、上記樹脂組成物の主材料としてバイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む。
この構成によれば、石油依存性を低減し、さらに環境に配慮した化粧シートを提供することが可能となる。
(5)本実施形態に係る化粧シート1において、着色基材層2及び透明樹脂層5は、バイオマス由来のオレフィンを5質量%以上99質量%未満の範囲内で含む。
この構成によれば、従来に比べてより確実に化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0105】
(6)本実施形態に係る化粧シート1において、着色基材層2または透明樹脂層5のうち少なくとも一方は、無機物または機能性添加物のうち少なくとも一方を含む。
この構成によれば、無機物の添加により比重を好適に制御することができ、また機能性添加物により優れた機能性を付与することができる。
(7)本実施形態に係る化粧シート1において、上記(6)の無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物のうちのいずれか一つ又は複数であり、上記(6)の機能性添加物は、抗菌剤、抗ウイルス剤及び紫外線吸収剤のうちいずれか一つ又は複数である
この構成によれば、無機物の添加により比重を好適に制御することができ、また抗菌性・抗ウイルス性、耐候性といった優れた機能性を付与することができる。
(8)本実施形態に係る化粧シート1において、着色基材層2は、厚みが30μm以上150μm以下の範囲内であり、比重が0.9以上1.6以下の範囲内であり、透明樹脂層5は、厚みが10μm以上150μm以下であり、比重が0.9以上1.4以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、着色基材層2、透明樹脂層5をバイオマス由来のポリオレフィン以外のバイオマスプラスチックで形成する場合に、着色基材層2において化粧シートを下地となる基材(床材等)に貼り付けた際の施工仕上がりを良好にし、かつ製造コストを削減することができ、さらに隠蔽性を高めることができる。また透明樹脂層5において耐摩耗性、耐傷性能を向上し且つ意匠性を高めることができる。
(9)本実施形態に係る化粧シート1において、着色基材層2は、厚みが30μm以上150μm以下の範囲内であり、比重が0.9以上1.6以下の範囲内であり、透明樹脂層5は、厚みが10μm以上150μm以下であり、比重が0.9以上0.99以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、着色基材層2、透明樹脂層5をバイオマス由来のポリオレフィンで形成する場合に、着色基材層2の施工仕上がりを良好にしつつ製造コストを削減可能であり、隠蔽性を向上することができる。また、また透明樹脂層5において耐摩耗性、耐傷性能を向上し且つ意匠性を高めることができる。
【0106】
(10)本実施形態に係る化粧シート1において、プライマー層8は、無機物を含んでおり、厚みが0.3μm以上3.0μm以下の範囲内であり、塗布量が0.3g/m以上3.0g/m以下の範囲内であり、プライマー層8における上記無機物の含有量は、上記樹脂組成物の主材料となるバイオマス由来の樹脂材料に対して重量比で1.0%以上60.0%以下の範囲内である。
この構成によれば、化粧シート1の保管時等におけるブロッキングの発生を確実に抑制し、さらに着色基材層2と基材9との密着性(基材密着性)・耐食性の向上と、良好な後加工性とを両立し、且つ化粧シート1の製造コストを削減することが可能である。
(11)上記(10)における無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物のうちのいずれか一つ又は複数である。
この構成によれば、ブロッキングの発生抑制と、基材密着性向上を確実に実現することができる。
(12)本実施形態に係る化粧材10は、基材9と、基材9の少なくとも一方の面に貼り合わされた化粧シート1と、を備える。
この構成によれば、材料における石油依存性を低減して石油資源を節約することが可能な化粧材を提供することが可能となる。
【0107】
[実施例]
本実施形態を参照しつつ、以下、各実施例、比較例の化粧材について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0108】
(実施例1)
基材の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の一方の面に、ウレタン系印刷インキで印刷された木目柄の絵柄層を設け、基材の他方の面にコロナ放電処理を施した後、基材との接着性を向上させる目的でプライマー層を塗布した。さらに、絵柄層上にウレタン系接着剤層(接着性樹脂層)と、透明樹脂層とを重ねて設け、さらに表面保護の目的でトップコート樹脂を塗布して乾燥硬化させて表面保護層を形成して実施例1の化粧シートを得た。以下、実施例1の化粧シートの各層について具体的に説明する。
【0109】
〔着色基材層〕
実施例1では、基材として、バイオマス由来のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成された着色基材層(厚さ:70μm(0.07mm))を用いた。バイオマス由来のポリエチレン含有量は、樹脂組成物全体に対して80質量%とした。また、着色基材層の比重が1.25となるように、無機物として酸化チタンおよび無機顔料(カーボンブラック)を配合した。この樹脂組成物をカレンダー成形することで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層の重量は、87.2g/mであり、バイオマス度は80%である。なお、実施例1において着色基材層には核剤は添加しなかった。
【0110】
〔透明樹脂層〕
実施例1では、バイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物を用いて形成された透明樹脂層(厚さ:70μm(0.07mm))を用いた。バイオマス由来のポリプロピレン含有量は、樹脂組成物全体に対して94質量%とした。透明樹脂層には無機物を含まず、比重は0.91とした。また透明樹脂層にはバイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として500ppmの核剤を添加した。さらに、透明樹脂層には紫外線吸収剤(機能性添加物)を樹脂組成物全体に対して15質量%添加した。こうして形成された透明樹脂層の重量は、63.0g/mであり、バイオマス度は94%である。
【0111】
〔絵柄層〕
実施例1では、絵柄層のバインダ樹脂には、バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールと化石燃料由来のイソシアネート化合物と化石燃料由来のヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物である、バイオウレタン(メタ)アクリレートを用いた。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとしては、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオールを用いた。
【0112】
〔表面保護層〕
実施例1において表面保護層は、絵柄層のバインダ樹脂と同じバイオウレタン(メタ)アクリレートを用いて形成した。
〔プライマー層〕
実施例1では、プライマー層には主材料として絵柄層のバインダ樹脂と同じバイオウレタン(メタ)アクリレートを用いた。プライマー層には上記主材料に対し、無機物(炭酸カルシウム)を重量比で9%配合した。またプライマー層は塗布量を1.2g/mとし、厚みを1μmとした。
【0113】
〔化粧材〕
実施例1の化粧シートを形成した後、プライマー層の基材と対向する面に、ジャパンコーティングレジン製の「BA-10L(硬化剤:BA-11B)」を用いてMDF(Medium density fiberboard:中質繊維板)を貼り合わせることで実施例1の化粧材を得ることができる。
【0114】
(実施例2)
透明樹脂層における核剤の添加量を、バイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として2000ppmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例2の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例3)
着色基材層に核剤を添加した。核剤の添加量は、着色基材層におけるバイオマス由来のポリエチレンの質量を基準として500ppmとした。また透明樹脂層に核剤を添加しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして実施例3の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例4)
着色基材層における核剤の添加量を、バイオマス由来のポリエチレンの質量を基準として2000ppmとした。それ以外は、実施例3と同様にして実施例4の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0115】
(実施例5)
着色基材層および透明樹脂層に核剤を添加した。具体的には、着色基材層における核剤の添加量を、イオマス由来のポリエチレンの質量を基準として1000ppmとし、透明樹脂層における核剤の添加量を、バイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として1000ppmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例5の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例6)
着色基材層および透明樹脂層のいずれにも、核剤を添加しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして実施例6の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0116】
(実施例7)
着色基材層においてバイオマス由来のポリエチレンの含有量を、樹脂組成物全体に対して5質量%とし、透明樹脂層における核剤の添加量を、バイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として1000ppmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例7の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例8)
着色基材層においてバイオマス由来のポリエチレンの含有量を、樹脂組成物全体に対して99質量%とした。それ以外は、実施例7と同様にして実施例8の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例9)
透明樹脂層においてバイオマス由来のポリプロピレンの含有量を、樹脂組成物全体に対して5質量%とし、透明樹脂層における核剤の添加量を、バイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として1000ppmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例9の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例10)
透明樹脂層においてバイオマス由来のポリプロピレンの含有量を、樹脂組成物全体に対して99質量%とした。それ以外は、実施例9と同様にして実施例10の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0117】
(実施例11)
着色基材層においてバイオマス由来のポリエチレンの含有量を、樹脂組成物全体に対して3質量%とした。それ以外は、実施例7と同様にして実施例11の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例12)
透明樹脂層においてバイオマス由来のポリプロピレンの含有量を、樹脂組成物全体に対して3質量%とした。それ以外は、実施例9と同様にして実施例12の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0118】
(実施例13)
透明樹脂層に無機物および機能性添加物(紫外線吸収剤)を添加せず、透明樹脂層における核剤の添加量を、バイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として1000ppmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例13の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例14)
着色基材層において紫外線吸収剤(機能性添加物)を樹脂組成物全体に対して15質量%添加し、無機物は添加せず、比重を0.91とした。それ以外は実施例13と同様にして、実施例14の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例15)
着色基材層において無機物および機能性添加物の両方を添加し、紫外線吸収剤(機能性添加物)を樹脂組成物全体に対して15質量%添加した。それ以外は実施例13と同様にして、実施例15の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例16)
着色基材層に無機物および機能性添加物のいずれも添加せず、比重を0.95とした。また透明樹脂層において比重が1.25となるように無機物として酸化チタンを添加した。それ以外は実施例13と同様にして、実施例16の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例17)
透明樹脂層において無機物を添加せず、実施例1と同様に紫外線吸収剤(機能性添加物)を添加した。それ以外は実施例16と同様にして、実施例17の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例18)
透明樹脂層において、実施例1と同様に紫外線吸収剤(機能性添加物)を添加した。それ以外は実施例16と同様にして、実施例18の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例19)
透明樹脂層において比重が1.25となるように無機物として酸化チタンを添加し、実施例1と同様に紫外線吸収剤(機能性添加物)を添加した。それ以外は実施例15と同様にして、実施例19の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例20)
透明樹脂層に無機物および機能性添加物のいずれも添加しなかった。それ以外は実施例17と同様にして、実施例20の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0119】
(実施例21)
着色基材層の厚みを30μmとし、透明樹脂層における核剤の添加量を、バイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として1000ppmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例21の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例22)
着色基材層の厚みを150μmとした。それ以外は、実施例21と同様にして実施例22の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例23)
透明樹脂層の厚みを10μmとし、透明樹脂層における核剤の添加量を、バイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として1000ppmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例23の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例24)
透明樹脂層の厚みを150μmとした。それ以外は、実施例23と同様にして実施例24の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0120】
(実施例25)
着色基材層に無機物を添加せずに比重を0.91とし、透明樹脂層における核剤の添加量を、バイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として1000ppmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例25の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例26)
着色基材層の比重が1.6となるように無機物として酸化チタンおよびカーボンブラックを添加した。それ以外は実施例25と同様にして実施例26の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0121】
(実施例27)
バイオマス由来のポリプロピレンの質量を基準として1000ppmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例27の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例28)
透明樹脂層において比重が0.99となるように無機物として酸化チタンを添加した。それ以外は、実施例27と同様にして実施例28の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例29)
着色基材層の厚みを25μmとし、透明樹脂層の厚みを8μmとした。それ以外は、実施例27と同様にして実施例29の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例30)
着色基材層の厚みを160μmとし、透明樹脂層の厚みを160μmとした。それ以外は、実施例27と同様にして実施例30の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0122】
(実施例31)
着色基材層において比重が1.8となるように無機物として酸化チタンおよびカーボンブラックを添加し、透明樹脂層において比重が1.6となるように無機物として酸化チタンを添加した。それ以外は、実施例27と同様にして実施例31の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例32)
プライマー層の厚みを0.3μmとした。それ以外は、実施例27と同様にして実施例32の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例33)
プライマー層の厚みを3.0μmとした。それ以外は、実施例27と同様にして実施例33の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例34)
プライマー層の塗布量を0.3g/mとした。それ以外は、実施例27と同様にして実施例34の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例35)
プライマー層の塗布量を3.0g/mとした。それ以外は、実施例27と同様にして実施例35の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0123】
(実施例36)
プライマー層の厚みを0.2μmとした。それ以外は、実施例27と同様にして実施例36の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例37)
プライマー層の厚みを4.0μmとした。それ以外は、実施例27と同様にして実施例37の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例38)
プライマー層の塗布量を0.2g/mとした。それ以外は、実施例27と同様にして実施例38の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0124】
(実施例39)
プライマー層において主材料(バイオウレタン(メタ)アクリレート)に対し、無機物(炭酸カルシウム)を重量比で1.0%配合した。それ以外は、実施例27と同様にして実施例39の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例40)
プライマー層において主材料(バイオウレタン(メタ)アクリレート)に対し、無機物(炭酸カルシウム)を重量比で60.0%配合した。それ以外は、実施例27と同様にして実施例40の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例41)
プライマー層の塗布量を5.0g/mとした。それ以外は、実施例27と同様にして実施例41の化粧シートおよび化粧材を得た。
(実施例42)
プライマー層において主材料(バイオウレタン(メタ)アクリレート)に対し、無機物(炭酸カルシウム)を配合しなかった。それ以外は、実施例27と同様にして実施例42の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0125】
(比較例1)
着色基材層を化石燃料由来のポリエチレンで形成し、透明樹脂層を化石燃料由来のポリプロピレンで形成した。つまり、着色基材層および透明樹脂層においてバイオマス由来の樹脂材料を用いなかった。それ以外は、実施例27と同様にして比較例1の化粧シートおよび化粧材を得た。
【0126】
(性能評価、評価結果)
核実施例および比較例の化粧シートまたは化粧材に対し、それぞれ、「意匠性(透明樹脂層の透明性)」、「表面硬度(鉛筆硬度)」、「生産性(印刷適正、押出適性)」、「後加工性(曲げ加工適正、切削性)」、「石油依存性」、「ブロッキング性」、「基材密着性」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0127】
<意匠性(透明樹脂層の透明性)>
紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製:「UV-3600」)を用いて、透明樹脂層のヘイズ%を測定した。
透明樹脂層のヘイズ%を測定する際には、まず、各実施例・比較例の化粧シートが備える透明樹脂層と、同じ組成である樹脂を、厚さを70[μm]以上80[μm]以下の範囲内に設定して押し出すことで、樹脂フィルムを形成した。次に、波長が555[nm]のヘイズを、分光光度計(積分球)により測定して、ヘイズを評価した。そして、ヘイズが15%未満である場合を「〇」と評価し、ヘイズが15%以上25%未満の範囲内である場合を「△」と評価し、ヘイズが25%以上である場合を「×」と評価した。本実施例では、「△」以上を合格とした。
【0128】
<表面硬度(鉛筆硬度)>
JIS K5600-5-4 引っかき硬度(鉛筆法)に準じた試験を行った。
各実施例・比較例の化粧シートを用いた化粧材に対し、硬度の異なる鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面(表面保護層)に発生した損傷(抉れ)を確認して、表面硬度を評価した。そして、硬度が2B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「◎」と評価し、硬度が3B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「○」と評価し、硬度が4B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「△」と評価した。これに加え、硬度が5B以下の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「×」と評価した。本実施例では、「△」以上を合格とした。
【0129】
<生産性(印刷適正)>
各実施例・比較例の評価シート(化粧材)における化粧シートについて、着肉不良の有無、乾燥時の熱ジワの有無、テンションの調整状態などを目視により判定した。現行の石油由来の材料による化粧シートの印刷適正と遜色がなく、使用上問題がない場合を「〇」、現行の印刷適正よりも劣り改善が必要であるが、使用が可能である場合を「△」、使用上問題がある場合を「×」とした。
本実施例では、「△」以上を合格とした。
【0130】
<生産性(押出適性)>
生産ラインにおいて、着色基材層、透明樹脂層を押出成形する際に支障がなかったもの(問題なく成形できるもの)を「〇」と評価し、押出成形する際に少し支障があったもの(不良が出る可能性があるもの)を「△」と評価し、押出成形する際に、そのほとんどに支障があったもの(不良が出る可能性が極めて高いもの)を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。また、評価が「△」であれば、使用上問題はない。
【0131】
<後加工性(曲げ加工適正)>
MDF(Medium Density Fiberboard)に貼り合わせた化粧シート(すなわち、化粧材)を用いて、Vカット加工適性(折り曲げ白化の有無)を確認して、曲げ加工適正を評価した。そして、白化が生じなかったものを「〇」(合格)と評価し、少し白化が生じてしまったものを「△」(合格)と評価し、白化が生じしてしまったものを「×」(不合格)と評価した。
【0132】
<後加工性(切削性)>
MDFに貼り合わせた化粧シート(すなわち、化粧材)に対して、丸鋸による切断加工と、ハンドルータによるMDFに達する切削加工を行い、化粧シートに発生したバリの状態を確認して、切削性を評価した。そして、バリが発生しない場合を「○」と評価し、バリがほぼ全面に発生し、修正も困難である場合を「×」と評価した。
【0133】
<石油依存性>
化粧シートを作成する際の化石燃料への依存性を評価した。
【0134】
<ブロッキング性>
化粧シートを三つ折りにすることで、対向させたプライマー層と、表面保護層とプライマー層を重ね、三つ折りにした化粧シートに2[Kg/cm]の重石を乗せ、40[℃]の環境下で3日間放置した後に、接触している層に対し、密着の状態を確認した。
ブロッキング試験では、ブロッキングが生じずに使用上問題がない場合を「〇」と評価し、わずかにブロッキングが生じたが使用が可能である場合を「△」と評価し、全体的にブロッキングが生じて使用不可の場合を「×」と評価した。なお、本実施例では、評価が「△」以上であれば合格とした。
【0135】
<基材密着性>
各実施例・比較例の化粧シートによる化粧部材の作製後に室温環境で24時間保存した試料について、化粧シートと木質基材との間におけるT字剥離強度を測定した(試料幅:25mm、引張り速度:5mm/s)。
<評価基準>
〇:剥離界面ができずに化粧シートが破断
△:剥離面が生成されたが剥離強度が測定可能;
×:試料ハンドリング時に剥離が生じ、測定不可
なお、本実施例では、評価が「○」以上であれば合格とした。
【0136】
以下の表1に、実施例における各実施例及び比較例の化粧シートの構成を示し、表2に上記各種評価結果を示す。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
表1および表2に示すように、実施例1~42の化粧シートはいずれも、石油依存性が低いとの評価結果となり、材料における石油依存性を低減して石油資源を節約することが実現可能であることがわかった。
【0140】
また実施例1~42の化粧シートはいずれも意匠性の評価が合格(△以上)となった。なお実施例29の化粧シートは厚みが29μmと薄いことから、意匠性が他の実施例よりやや劣る結果(△)となった。
また実施例1~42の化粧シートはいずれも表面硬度の評価が合格(△以上)となった。なお、実施例6の化粧シートは着色基材層および透明樹脂層に核剤を含有していないこと、実施例11は着色基材層におけるバイオマス由来のオレフィンの含有量が5質量%未満であること、実施例12は透明樹脂層におけるバイオマス由来のオレフィンの含有量が5質量%未満であることから、他の実施例よりも表面硬度がやや劣る結果(△)となった。
【0141】
また、実施例1~42の化粧シートはいずれも、生産性(印刷適性、押出適性)において使用可能との評価(△以上)となった。なお、実施例26は、着色基材層の比重が1.6と大きいこと、実施例31は着色基材層の比重が1.8かつ透明樹脂層の比重が1.6であり当該2層の比重が大きいことから、他の実施例よりも生産性がやや劣る結果(△)となった。
また、実施例1~42の化粧シートはいずれも、後加工性(曲げ加工適性、切削性)の評価が合格(△以上)となった。なお、実施例30は、着色基材層および透明樹脂層の厚みが160μmと厚いことから他の実施例よりも後加工性がやや劣る結果(△)となった。
【0142】
また、実施例1~40の化粧シートはいずれも、ブロッキング性の評価が合格(△以上)となった。なお、実施例35はプライマー層の塗布量が3.0g/mと多いこと、実施例39は無機物の配合量が主材料に対して重量比で1.0%と少ないことから、他の実施例よりもブロッキング性がやや劣る結果(△)となった。また実施例41はプライマー層の塗布量が3.0g/mを超過する6.0g/mであること、実施例42は無機物を含有していないことからブロッキング性が不合格(×)となった。
また、実施例1~35、39、40の化粧シートは基材密着性が合格(〇)となった。なお、実施例36、37はプライマー層の厚みが0.3μm以上3.0μm以下の範囲外であること、実施例38、41はプライマー層の塗布量が0.3g/m以上3.0g/m以下の範囲外であり、実施例42はプライマー層に無機物を含有しないことから、他の実施例よりも基材密着性やや劣る結果(△)となった。
【0143】
このように、プライマー層、着色熱可塑性樹脂層、絵柄層、透明樹脂層および表面保護層が、バイオマス由来の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である化粧シートは、石油依存性を低減して石油資源を節約することが実現可能であることが分かった。また各層の組成を適宜制御することで意匠性や化粧シートとしての用途に適した各種物性にも優れる構成とすることが可能であることが分かった。
【0144】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
プライマー層と、着色熱可塑性樹脂層と、絵柄層と、接着性樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とをこの順に備え、
前記プライマー層、前記着色熱可塑性樹脂層、前記絵柄層、前記透明熱可塑性樹脂層および前記表面保護層は、バイオマス由来の樹脂材料を含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である
ことを特徴とする化粧シート。
(2)
前記着色熱可塑性樹脂層または前記透明熱可塑性樹脂層のうち少なくとも一方は、前記樹脂組成物の主材料となる前記バイオマス由来の樹脂材料に核剤が添加されている
ことを特徴とする上記(1)に記載の化粧シート。
(3)
前記核剤はナノサイズであり、
前記核剤の添加量は、前記バイオマス由来の樹脂材料の質量を基準として500ppm以上2000ppm以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(2)に記載の化粧シート。
(4)
前記着色熱可塑性樹脂層及び前記透明熱可塑性樹脂層は、前記樹脂組成物の主材料としてバイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む
ことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(5)
前記着色熱可塑性樹脂層及び前記透明熱可塑性樹脂層は、前記バイオマス由来のオレフィンを5質量%以上99質量%未満の範囲内で含む
ことを特徴とする上記(4)に記載の化粧シート。
(6)
前記着色熱可塑性樹脂層または前記透明熱可塑性樹脂層のうち少なくとも一方は、無機物または機能性添加物のうち少なくとも一方を含む
ことを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(7)
前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物のうちのいずれか一つ又は複数であり、
前記機能性添加物は、抗菌剤、抗ウイルス剤及び紫外線吸収剤のうちいずれか一つ又は複数である
ことを特徴とする上記(6)に記載の化粧シート。
(8)
前記着色熱可塑性樹脂層は、厚みが30μm以上150μm以下の範囲内であり、比重が0.9以上1.6以下の範囲内であり、
前記透明熱可塑性樹脂層は、厚みが10μm以上150μm以下であり、比重が0.9以上1.4以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(9)
前記着色熱可塑性樹脂層は、厚みが30μm以上150μm以下の範囲内であり、比重が0.9以上1.6以下の範囲内であり、
前記透明熱可塑性樹脂層は、厚みが10μm以上150μm以下であり、比重が0.9以上0.99以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(10)
前記プライマー層は、無機物を含んでおり、厚みが0.3μm以上3.0μm以下の範囲内であり、塗布量が0.3g/m以上3.0g/m以下の範囲内であり、
前記プライマー層における前記無機物の含有量は、前記樹脂組成物の主材料となる前記バイオマス由来の樹脂材料に対して重量比で1.0%以上60.0%以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)から(9)のいずれか1項に記載の化粧シート。
(11)
前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他の酸化物のうちのいずれか一つ又は複数である
ことを特徴とする上記(10)に記載の化粧シート。
(12)
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に貼り合わされた上記(1)から(11)のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備える
ことを特徴とする化粧材。
【符号の説明】
【0145】
1…化粧シート、2…着色基材層、3…絵柄層、4…接着性樹脂層、5…透明樹脂層、6…表面保護層、7…凹凸部、8…プライマー層、9…基材、10…化粧材、11…接着剤層
図1