(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100081
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像装置を備えたドライブレコーダ
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20240719BHJP
H04N 23/90 20230101ALI20240719BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/90
B60R11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003803
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】宮本 晃仁
【テーマコード(参考)】
3D020
5C122
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BB01
3D020BC02
3D020BC07
3D020BD03
3D020BD09
3D020BD10
3D020BE03
5C122DA03
5C122DA14
5C122EA47
5C122EA61
5C122FA18
5C122FB03
5C122FD01
5C122FD10
5C122FH04
5C122FH18
5C122GA31
5C122HB05
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】被写体との間に存在する遮蔽物の影響を抑制した撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置10は、透明又は半透明の透過部材2を介して被写体を撮影する複数のカメラ20、30と、前記複数のカメラ20、30の撮影画像を取得して前記撮影画像の被写界深度を浅くした補正画像を生成する補正処理を実行する画像処理部41と、前記補正画像を取得して記憶する記憶部402と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明の透過部材を介して被写体を撮影する複数のカメラ(20、30)と、
前記複数のカメラ(20、30)の撮影画像を取得して前記撮影画像の被写界深度を浅くした補正画像を生成する補正処理を実行する画像処理部(41)と、
前記補正画像を取得して記憶する記憶部(402)と、
を備える撮像装置(10)。
【請求項2】
前記画像処理部(41)は、前記撮影画像の前側被写界深度を浅くする補正処理を実行する、
請求項1に記載の撮像装置(10)。
【請求項3】
前記画像処理部(41)は、前記複数のカメラ(20、30)の視差に基づいて前記複数のカメラ(20、30)の撮影画像を位置合わせし、前記被写体にフォーカスを合わせ、前記位置合わせした前記複数のカメラ(20、30)の撮影画像を加算平均により合成する、
請求項1に記載の撮像装置(10)。
【請求項4】
予め前記複数のカメラ(20、30)のレンズ(21、31)から前記被写体までの距離Zを設定し、
前記複数のカメラ(20、30)は、前記被写体を撮影した際の前記複数のカメラ(20、30)間の視差Dが所定の許容視差Dε以内に収まるように前記複数のカメラ(20、30)のレンズ(21、31)間の距離Bを設定して配置されている、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の撮像装置を備えたドライブレコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は撮像装置及び撮像装置を備えたドライブレコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両の運転状況又は駐車状況を録画するドライブレコーダは、車両周辺を撮影するためのカメラと、カメラによって撮影された映像を記憶するメモリとを備える。
【0003】
車両周囲の状況を正確に把握するためには、車両の複数の方位を撮影することが好ましい。例えば乗用車などの四輪自動車の場合、車両の前方を撮影するカメラをフロントガラスに、車両の後方を撮影するカメラをリアガラスにそれぞれ設置するタイプのドライブレコーダが知られている。
【0004】
窓に雨などの水滴や汚れなどの異物が付着することがある。そのため、異物が車両の運転者の視界を遮らないように、ワイパーが設けられる。車両の後方を撮影するカメラをリアガラスに設置する場合、
図1に示すように、カメラ200をワイパーの掻き取り範囲Sに装着することがある。
【0005】
また、特許文献1には、旋回窓を介して画像を撮影するカメラと、カメラの撮影画像を入力して、表示用画像を生成する画像処理部と、画像処理部の生成した画像を表示する表示部と、パルス光出力部を有する画像処理装置であって、各カメラの撮影した画像の差分画像を生成して表示部に表示し、差分画像には、いずれかの空間のみに存在する障害物が、よりクリアに表示される画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワイパーや旋回窓が設けられていない車両がある。例えば、車両によってはフロントガラスにはワイパーが設けられているが、リアガラスにはワイパーが設けられていない車種も存在する。窓にワイパーが備えられていない場合、運転中に窓に付着した水滴を取り除くことは難しく、水滴によってカメラの視界が遮られてしまうことがある。この場合、例えばちょうど後続車のナンバープレートが水滴の陰になってしまってナンバーが読み取れない可能性もある。
【0008】
そこで、被写体との間に存在する遮蔽物の影響を抑制した撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の撮像装置は、透明又は半透明の透過部材を介して被写体を撮影する複数のカメラと、前記複数のカメラの撮影画像を取得して前記撮影画像の被写界深度を浅くした補正画像を生成する補正処理を実行する画像処理部と、前記補正画像を取得して記憶する記憶部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来例によるドライブレコーダの撮像装置の車両への設置状態を示す図
【
図2】一実施形態の撮像装置の一例の車両への設置状態を示す概略側面図
【
図4】一実施形態の撮像装置の一例の電気的構成を示すブロック図
【
図5】一実施形態の撮像装置の一例の車両への設置状態を車両内部から見て示す図
【
図6】小口径レンズを用いた場合の被写界深度と遮蔽物の画像上のズレを概念的に示す図
【
図8】大口径レンズを用いた場合の被写界深度と遮蔽物の画像上のズレを概念的に示す図
【
図10】本実施形態の撮像装置のカメラの構成と、補正処理後の画像における遮蔽物のズレを概念的に示す図
【
図11】本実施形態の撮像装置における、補正処理前のカメラ20、30それぞれの撮影画像の一例
【
図12】本実施形態の撮像装置による、補正処理後の生成画像の一例
【
図13】本実施形態の撮像装置における画像処理部による位置合わせの方法を概念的に示す図
【
図14】本実施形態の撮像装置のカメラの構成と、被写界深度との関係を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図2~
図14を参照して一実施形態による撮像装置を説明する。本実施形態の撮像装置10は、例えば車両用撮像装置として用いることができる。撮像装置10は、例えば乗用車などの車両1に設置されるドライブレコーダ100の一部を構成する。なお、明細書において
図2の上下方向を撮像装置10の上下方向、紙面左側が撮像装置10の前方、紙面右側が撮像装置10の後方、上下方向及び前後方向に垂直な方向を撮像装置10の左右方向とする。
【0012】
ドライブレコーダ100は、撮像装置10や、図示しないGPS受信機、加速度センサ、ディスプレイ101などを含んで構成される。本実施形態では、撮像装置10は、例えばリアガラス2に装着されて、主に車両1の後方を撮影する機能を有する。なお、ドライブレコーダ100は、例えばフロントガラス3に装着されて、主に車両1の前方を撮影する機能を有する他の撮像装置を含んで構成されていても良い。ディスプレイ101は、撮像装置10や、他の撮像装置によって撮像された画像を表示する機能を有する。
【0013】
撮像装置10は、透明又は半透明の透過部材例えば窓を介して当該部材の反対側つまり窓の外部を撮影する機能を有する。撮像装置10は、
図3及び
図4に示すように、筐体11と、装着部材12と、連結部材13と、複数この場合2つのカメラ20、30と、制御装置40と、を含んで構成される。筐体11は、内部に複数のカメラ20、30を収容する。装着部材12は、図示しない接着剤や接着テープなどによって車両1に接着されて、車両1に筐体11を固定する機能を有する。一般に、装着部材12は車両1のリアガラス2の上部中央に固定される。連結部材13は、装着部材12と筐体11とを相対的に回動可能に連結している。連結部材13は少なくとも上下方向及び左右方向に回動可能に構成されており、装着部材12が車両1に固定された状態で、筐体11は、車両1に対して回動可能である。ユーザまたは作業者は、撮像装置10を車両1に装着した後、筐体11を適宜回動させた状態で固定して、カメラ20、30の位置を調整することができる。
【0014】
図5は車両1の内部から見た場合の撮像装置10の装着状態の一例である。カメラ20、30は、車両1のリアガラス2に固定されて、車両1のリアガラス2を介して主に車両1の後方の状況を撮像する。
【0015】
カメラ20、30は、光軸が互いに平行となるように並べて配置されている。本実施形態では、カメラ20、30は、筐体11内に水平方向この場合左右方向に並べて配置されている。なお、他の実施形態では、カメラ20、30は、上下方向に並べて配置されていても良い。
【0016】
カメラ20、30は、動画または静止画を含む画像を撮影するデジタルカメラである。カメラ20は、レンズ21と、撮像素子22とを含んで構成される。カメラ30は、レンズ31と、撮像素子32とを含んで構成される。レンズ21、31は、同じサイズ及び性質のレンズであっても良いし、異なるサイズ及び性質のレンズであっても良い。本実施形態では、レンズ21、31は、同じサイズ及び性質のレンズである。撮像素子22、32は、同じ規格の撮像素子であっても良いし、異なる規格の撮像素子であっても良い。本実施形態では、撮像素子22、32は、同じ規格の撮像素子である。
【0017】
レンズ21、31は、車両1周囲の画像を撮像素子22、32にそれぞれ結像させる。レンズ21、31は、筐体11の後面に設けられている。すなわち、撮像装置10が車両1に装着された状態で、レンズ21、31は、車両1の後方を向いている。レンズ21、31は、レンズ21、31の光軸が互いに平行になるように配置されている。レンズ21、31は画角の広い広角レンズや魚眼レンズで構成することができる。また、レンズ21、31は、それぞれ、複数のレンズを組み合わせることにより実質的に1枚の凸レンズとして機能を有するレンズユニットとして構成しても良い。
【0018】
撮像素子22、32は、レンズ21、31に入射した光を電気信号に変換させる機能を有する。撮像素子22、32は、例えばCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等で構成することができる。
【0019】
レンズ21、31は、例えば有効口径が約1mmの小口径レンズとすることができる。撮像素子22、32は、例えば5.7mm×3.2mmの小型の撮像素子とすることができる。これらより、筐体11の物理的なサイズを小型化することで、車両1の運転者の視界を妨げることを抑制できる。また、小口径レンズと小型の撮像素子を利用することにより、撮像装置10のコストを低下することができる。
【0020】
図4に示すように、制御装置40は、CPU401や、ROM、RAM、不揮発性メモリなどの記憶領域402を有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御装置40は、ドライブレコーダ100全体の動作を管理する機能を有する。撮像装置10、ディスプレイ101、及び図示しないGPS受信機、加速度センサ、他の撮像装置は、制御装置40に電気的に接続されており、制御装置40の制御を受けて動作する。
【0021】
制御装置40は、筐体11内部に設けられていても良いし、筐体11外部に設けられていても良い。本実施形態では、制御装置40は、筐体11内部に設けられている。
【0022】
制御装置40は、画像処理部41を有する。画像処理部41は、それぞれカメラ20、30で撮像された画像を取得して補正する機能を有する。制御装置40の記憶領域402は、画像処理部41を実現するためのプログラムを記憶している。制御装置40は、記憶領域402に記憶されている上記プログラムをCPU401において実行することにより、画像処理部41をソフトウェアによって仮想的に実現する。なお、画像処理部41は、制御装置40と一体又は別体の集積回路としてハードウェア的に実現しても良い。
【0023】
画像処理部41は、補正処理を実行する。補正処理は、それぞれカメラ20、30で撮像された画像を補正し、カメラ20、30と被写体との間に存在する遮蔽物の影響を低下した画像を作成する処理である。補正処理は、それぞれカメラ20、30で撮像された画像を補正して画像の被写界深度を浅くする処理である。具体的には、補正処理は、被写体とカメラ20、30との間の透過部材つまりこの場合リアガラス2に付着した雨粒や汚れなどの影響を低下させた画像を作成する処理である。これにより、透過部材に遮蔽物が付着していても、撮影時の車両1周辺における必要な情報を読み取ることが可能となる。
【0024】
ここで、一般に、ドライブレコーダに汎用される小口径レンズは、大口径レンズよりも被写界深度が深くなる。被写界深度とは、フォーカスが合っているように見える画像の奥行き方向の範囲を指す。すなわち、任意のレンズに対して撮像面における円径が、許容錯乱円径以内となる距離の範囲を、被写界深度という。例えばCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサを用いる場合には、許容錯乱円径はCCD画素又はCMOS画素数の大きさが用いられる。
【0025】
小口径レンズL1を用いて位置xにある被写体Xを撮像した場合に、位置yにある遮蔽物YがレンズL1と被写体Xとの間に存在する場合について検討する。
図6に示すように、小口径レンズL1を用いた場合、被写界深度が深くなり、リアガラス2に付着した遮蔽物Yは、被写界深度内に位置する場合がある。レンズL1に対して垂直に入射した光は、レンズL1前方の焦点P1を通って直進する。レンズL1の中心に入射した光は、そのまま直進する。レンズL1後方の焦点P2を通ってレンズL1に入射した光は、レンズL1から前方に向けて水平に直進する。
【0026】
この場合、被写体Xの結像位置x′は、撮像素子D1上に位置する。遮蔽物Yの結像位置y′は、撮像素子D1の後方つまり紙面右側となるが、撮像素子D1においても、錯乱円径が許容錯乱円径以内であるため、フォーカスが合っているように見える。そのため、撮影画像において、被写体Xは遮蔽物Yに遮られてしまう。例えば
図7に示すように、被写体である後続の車のナンバープレートは、リアガラス2に付着した遮蔽物である水滴に遮られてナンバーの一部が読み取れない事態が発生し得る。
【0027】
なお、落下中の雨粒がレンズ21、31と被写体の間に存在していても、経時的に撮影することで、雨粒の位置が移動するため、被写体である後続の車のナンバープレートを読み取る障害にはなり難い。一方、リアガラス2に付着した水滴は、落下中の雨と違い、所定の期間、同一箇所に留まる。そのため、静止画であれば時間を置いて複数回撮影しても、動画であれば任意の期間撮影しても結局水滴が被写体を遮っている可能性がある。
【0028】
一方、大口径レンズL2を用いて位置xにある被写体Xを撮像した場合に、位置yにある遮蔽物YがレンズL2と被写体Xとの間に存在する場合について検討する。
図8に示すように、大口径レンズL2を用いた場合、被写界深度が浅くなり、リアガラス2に付着した遮蔽物Yは、被写界深度外に位置することになる。レンズL2に対して垂直に入射した光は、レンズL2前方の焦点P3を通って直進する。レンズL2の中心に入射した光は、そのまま直進する。レンズL2後方の焦点P4を通ってレンズL1に入射した光は、レンズL2から前方に向けて水平に直進する。
【0029】
この場合、被写体Xの結像位置x″は、撮像素子D2に位置する。遮蔽物Yの結像位置y″は、撮像素子D2の後方つまり紙面右側となる。撮像素子D2において、遮蔽物Yの像のずれを示す錯乱円径は許容錯乱円径より大きくなるため、フォーカスが合わず、ぼやけて見える。その結果、撮影画像において、被写体Xは遮蔽物Yに一部覆われていたとしても、Yの像がぼやけているため、透過して被写体Xも現れる。例えば
図9に示すように、被写体である後続の車のナンバープレートは、リアガラス2に付着した遮蔽物である水滴に一部を遮られたとしても、水滴の像はぼやけて映るため、ナンバーを読み取ることができる。
【0030】
本実施形態では、複数の小口径のレンズ21、31を光軸に対して垂直な方向に並べて、それぞれのカメラ20、30が撮像した画像を画像処理部41によって補正処理を施すことで、一枚の大口径レンズL2によって撮ったような被写界深度の浅い画像を作成する。
【0031】
図10に示すように、レンズ21、31はそれぞれ被写体Xを撮影する。レンズ21、31と被写体Xとの間には、遮蔽物Yが存在する。被写体Xから出た光線は、撮像素子22、32上で合焦してそれぞれ像X´2、像X´3を結像する。この場合、レンズ21、31の被写界深度は深いため、被写体Xだけでなく遮蔽物Yもレンズ21、31の被写界深度内に存在する。したがって、撮像素子22、32上の遮蔽物Yの像Y´2、像Y´3は、錯乱円径が許容錯乱円径以内であるため、フォーカスが合っているように見える。
【0032】
例えば、カメラ20の撮影した画像は、
図11の上側の図のようになる。また、カメラ30の撮影した画像は、
図11の下側の図のようになる。この場合、それぞれ、リアガラス2に付着した水滴が遮蔽物となって、被写体である後続の車のナンバープレートの一部が読み取れない状態となっている。
【0033】
画像処理部41は、撮像素子22、32の映した画像に対して補正処理を実行する。補正処理は、
図10に示すように、撮像素子22上の像X´2と撮像素子23上の像X´3とを位置合わせして合成する処理である。このとき、補正処理後の画像上において遮蔽物Yの像Y´2と像Y´3とは、相互に対して許容散乱円径よりも大きくずれるため、補正処理後の画像においては、遮蔽物Yは曖昧にぼやけて見える。
【0034】
補正処理後の画像は、例えば
図12に示すようになる。遮蔽物である水滴は、補正処理後の画像においてぼやけて、被写体である後続の車のナンバープレートが読み取れるようになる。
【0035】
図13は、カメラ20とカメラ30との視差Dを概念的に表す図である。画像処理部41は、カメラ20で撮像した画像と、カメラ30で撮像した画像とを、補正処理によって位置合わせして合成する。位置合わせは、カメラ20で撮像した画像上の被写体Xの像とカメラ30で撮像した画像上の被写体Xの像とが重なるように行われる。本実施形態では、画像処理部41は、レンズ21とレンズ31との間の視差Dに基づいて位置合わせを実行する。具体的には、画像処理部41は、カメラ20で撮像した画像と、カメラ30で撮像した画像とが視差Dの距離だけ相対的に近づくようにカメラ20で撮像した画像と、カメラ30で撮像した画像とのいずれか一方又は両方をオフセットする。
【0036】
図14に示すように、レンズ21の焦点P21a、レンズ31の焦点P31aの位置から、光軸と平行な方向つまりこの場合前後方向の距離Zの位置に被写体Xが存在するものとする。各レンズ21、31から、焦点P21a、P31aまでの距離つまり焦点距離はいずれもfである。レンズ21、31間の距離をBとする。距離Zが視差D、焦点距離fに比べて十分大きい場合、視差Dは、以下の式(1)で求められる。
【0037】
【0038】
例えば、距離Z=10m、レンズ間距離B=20mm、焦点距離f=2.57mmの場合、視差D=0.00514mmとなる。この場合、例えばカメラ20で撮像した画像を0.00514mm左にオフセットすることで位置合わせができる。
【0039】
なお、本実施形態では、レンズ21とレンズ31との距離によって発生する視差に基づいて位置合わせを行うが、位置合わせの方法は、これに限らない。他の実施形態では、位置合わせの方法として、例えば、製造工程において、所定の距離の被写体を撮影し、画像のズレを実測してオフセットを調整することもできるし、その他の既知の任意の方法により位置合わせを行っても良い。
【0040】
画像処理部41は、位置合わせした複数の画像を合成する。本実施形態では、画像処理部41は、位置合わせした画像を加算平均処理によって合成する。加算平均処理は、複数の画像を当分の割合この場合50%ずつの割合で足し合わせる処理である。これにより、補正処理後の画像が、より自然な見え方の画像となる。
【0041】
なお、本実施形態では、複数の画像を加算平均処理によって合成するが、合成方法はこれに限らない。他の実施形態では、例えば位置合わせした画像を足し合わせる加算処理や、合成する画像毎の割合を指定して足し合わせる加重平均処理、合成する画像を比較して、明るい部分或いはくらい部分のみを合成する比較処理、又はその他の既知の合成処理方法によって、複数の位置合わせした画像を合成する構成であっても良い。
【0042】
図14に示すように、複数のレンズ21、31間の距離Bは、視差Dが許容視差Dε内に収まるように設定される。また、前側被写界深度DOFnは、透過部材つまりこの場合リアガラス2が前側被写界深度に含まれず、かつ通常の運転状態で後続車が接近した場合に前側被写界深度DOFn内に含まれるように設定されることが好ましい。さらに、後側被写界深度DOFfは、無限遠となるように設定されることが好ましい。前側被写界深度とは、被写体Xよりも前方の範囲の被写界深度を指し、後側被写界深度とは、被写体Xよりも後方の範囲の被写界深度を指す。
【0043】
例えば、被写界深度は、レンズ21、31からリアガラス2までの距離0~1mを避けて設定することができる。この場合、レンズ21、31から前側被写界深度の前端までの距離は、レンズ21、31から透過部材であるリアガラス2までの距離よりも大きい、例えば2m以上に設定することができる。レンズ21、31から前側被写界深度の前端までの距離は、例えば5m以上に設定することができる。本実施掲載では、レンズ21、31から前側被写界深度の前端までの距離は、5mに設定されている。レンズ21、31から後側被写界深度の前端までの距離は、無限遠に設定されている。
【0044】
レンズ間距離Bは、被写体距離Z、許容視差Dε、焦点距離fから次の式(2)で求めることができる。
【0045】
【0046】
例えば、被写体距離Z=10m、許容視差Dε=0.00514mm、焦点距離f=2.57mmの場合、レンズ間距離B=20mmとなる。
【0047】
前側被写界深度DOFnは、レンズ間距離B、許容視差Dε、焦点距離fから次の式(3)で求めることができる。
【0048】
【0049】
例えば、レンズ間距離B=20mm、許容視差Dε=0.00514mm、焦点距離f=2.57mmの場合、前側被写界深度DOFn=5mとなる。
【0050】
後側被写界深度DOFfは、被写体距離Zが過焦点距離Hにある場合に無限大となる。逆に言うと、過焦点距離Hに被写体がある場合、後側被写界深度は無限遠となる。したがって、被写体距離Zが過焦点距離Hよりも大きい場合、後側被写界深度は常に無限遠となる。過焦点距離Hは、許容視差Dε、焦点距離fから次の式(4)で求めることができる。
【0051】
【0052】
例えば、許容視差Dε=0.00514mm、焦点距離f=2.57mmの場合、過焦点距離H=1.29mとなる。この場合H≦Zとなるため、後側被写界深度は無限遠となる。
【0053】
ここで、上述したように、例えば大口径例えば有効口径約30mmのレンズ及び大型例えば36mm×24mmの撮像素子を備えたカメラを用いると、被写界深度が浅いため、被写体にフォーカスがあっているとき、レンズからの距離が近い水滴や汚れにはフォーカスが合う範囲から大きく外れ、被写体撮像の邪魔になり難い。しかし、大口径レンズ及び大形の撮像素子は高価であり、また大口径レンズによって装置全体が嵩高くなり、車両の運転者の視界を遮る虞もある。
【0054】
これに対して、以上説明した本実施形態によれば、撮像装置10は、複数のカメラ20、30と、画像処理部41と、記憶部としての記憶領域402と、を備える。複数のカメラ20、30は、透明又は半透明の透過部材この場合リアガラス2を介して被写体Xを撮影する機能を有する。画像処理部41は、複数のカメラ20、30の撮影画像を取得して撮影画像の被写界深度を浅くした補正画像を生成する補正処理を実行する。記憶部としての記憶領域402は、補正画像を取得して記憶する。
【0055】
これにより、小口径レンズ21、31と小型の撮像素子22、32とを含んで構成されたカメラ20、30を使用しても、遮蔽物をフォーカスの当たる範囲から外すことができる。その結果、大口径レンズを用いないことでコストを抑えつつ、撮影画像に対する、窓などの透過部材に付着した遮蔽物の影響を低下することができる。例えばリアガラスにワイパーのない車両であっても、車両後方の情報をより確実に取得することができる。
【0056】
画像処理部41は、撮影画像の前側被写界深度を浅くする補正処理を実行する。
【0057】
これにより、不要な情報である遮蔽物の像はぼやけさせつつ、必要な情報を示す遮蔽物よりも後方に位置する被写体及び被写体よりも後方についてはフォーカスを合わせた画像を得ることができる。
【0058】
画像処理部41は、複数のカメラ20、30の視差に基づいて複数のカメラ20、30の撮影画像を位置合わせし、被写体Xにフォーカスを合わせ、位置合わせした複数のカメラ20、30の撮影画像を加算平均により合成する。
【0059】
これにより、遮蔽物はフォーカスを外した上で、被写体にはフォーカスが合った合成画像が作成される。更に、合成画像を加算平均処理することにより、明るすぎたり鮮やかすぎたりせず見た目が自然な補正画像が生成される。
【0060】
予め複数のカメラ20、30のレンズ21、31から被写体Xまでの距離Zを設定し、複数のカメラ20、30は、被写体Xを撮影した際の複数のカメラ20、30間の視差Dが所定の許容視差Dε以内に収まるように複数のカメラ20、30のレンズ21、31間の距離Bを設定して配置されている。
【0061】
これによれば、設定された距離に位置する被写体についてはフォーカスが合った状態の画像を撮影することができる。
【0062】
ドライブレコーダ100は、複数のカメラ20、30と、画像処理部41と、記憶部としての記憶領域402と、を有する撮像装置10を備える。複数のカメラ20、30は、透明又は半透明の透過部材この場合リアガラス2を介して被写体Xを撮影する機能を有する。画像処理部41は、複数のカメラ20、30の撮影画像を取得して撮影画像の被写界深度を浅くした補正画像を生成する補正処理を実行する。記憶部としての記憶領域402は、補正画像を取得して記憶する。
【0063】
これによれば、透過部材に付着した水滴や汚れなどの異物の影響を抑制した画像を撮影して、車両1の周辺状況の情報をより確実に取得可能なドライブレコーダ100が提供される。
【0064】
なお、他の実施形態では、撮像装置10は、ドライブレコーダの一構成として用いられるものに限らない。また、透過部材は、リアガラスなどの窓に限らない。例えば撮像装置10は、透明又は半透明のケースに収容して使用され、透過部材としてケースを介して被写体を撮影する構成であっても良い。
【0065】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0066】
1…車両、2…リアガラス(透過部材)、10…撮像装置、20…カメラ、21…レンズ、22…撮像素子、30…カメラ、31…レンズ、32…撮像素子、40…制御装置、401…CPU、402…記憶領域(記憶部)、41…画像処理部、100…ドライブレコーダ