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特開2024-100083薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100083
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06V 10/70 20220101AFI20240719BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240719BHJP
【FI】
G06V10/70
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003805
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000149837
【氏名又は名称】富士フイルム富山化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】横内 康治
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096FA19
5L096HA11
5L096JA11
5L096JA16
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】PTPシートに収容された薬剤を識別する薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】少なくとも1つのプロセッサが、刻印及び/又は印字が付加された識別対象薬剤であって、PTPシートに収容された識別対象薬剤が撮影された撮影画像を取得し、撮影画像からPTPシートの領域を除去し、PTPシートの領域を除去した画像から識別対象薬剤の領域を検出し、識別対象薬剤の領域に基づいて識別対象薬剤の薬種を推論し、識別対象薬剤の薬種の候補を取得する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに実行させるための命令を記憶する少なくとも1つのメモリと、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
刻印及び/又は印字が付加された識別対象薬剤であって、PTPシートに収容された識別対象薬剤が撮影された撮影画像を取得し、
前記撮影画像からPTPシートの領域を除去し、
前記PTPシートの領域を除去した画像から前記識別対象薬剤の領域を検出し、
前記識別対象薬剤の領域に基づいて前記識別対象薬剤の薬種を推論し、前記識別対象薬剤の薬種の候補を取得する、
薬剤識別装置。
【請求項2】
PTPシートに収容された薬剤の画像を入力すると前記PTPシートの領域を抽出した画像を出力する学習済みモデルであるPTPシート検出モデルを含む、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記撮影画像に対して模様が存在する領域をPTPシートの領域として除去する、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項4】
薬剤の第1画像を入力すると前記薬剤の領域を抽出した第2画像を出力する学習済みモデルである薬剤領域抽出モデルを含む、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項5】
前記第1画像は、背景色が第1色の画像であり、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記PTPシートの領域を前記第1色に変換する、
請求項4に記載の薬剤識別装置。
【請求項6】
前記第1色は黒色である、
請求項5に記載の薬剤識別装置。
【請求項7】
一包化薬剤及び無包装の薬剤を識別する第1モードと、PTPシートに収容された薬剤を識別する第2モードを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第2モードにおいて前記撮影画像からPTPシートの領域を除去する、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項8】
前記PTPシートは、透明な部材と不透明な部材とからなり、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記撮影画像から前記PTPシートの前記不透明な部材の領域を除去する、
請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記撮影画像の少なくとも前記識別対象薬剤の領域を処理して前記識別対象薬剤の刻印及び/又は印字を抽出した刻印印字抽出画像を取得し、
前記刻印印字抽出画像を入力して前記識別対象薬剤の薬種を推論する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の薬剤識別装置。
【請求項10】
刻印及び/又は印字が付加された薬剤の第3画像を入力して前記薬剤の刻印及び/又は印字を抽出した第4画像を出力する第1学習済みモデルと、
前記第4画像を入力して前記薬剤の刻印及び/又は印字に対応する薬剤の薬種を出力する第2学習済みモデルと、を含む、
請求項9に記載の薬剤識別装置。
【請求項11】
撮影画像の少なくとも薬剤の領域を入力して前記薬剤の薬種を出力する第3学習済みモデルを含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載の薬剤識別装置。
【請求項12】
少なくとも1つのプロセッサが、
刻印及び/又は印字が付加された識別対象薬剤であって、PTPシートに収容された識別対象薬剤が撮影された撮影画像を取得し、
前記撮影画像からPTPシートの領域を除去し、
前記PTPシートの領域を除去した画像から前記識別対象薬剤の領域を検出し、
前記識別対象薬剤の領域に基づいて前記識別対象薬剤の薬種を推論し、前記識別対象薬剤の薬種の候補を取得する、
薬剤識別方法。
【請求項13】
請求項12に記載の薬剤識別方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラムに係り、特にPTPシートに収容された薬剤の撮影画像から薬剤を識別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の撮影画像から薬剤を識別する薬剤識別装置が知られている(特許文献1~特許文献3参照)。
【0003】
また、特許文献4には、薬剤を撮影して得られる撮影画像から薬剤を認識して薬剤の種類を特定する際に、薬剤の認識が可能か否かを判定し、薬剤認識ができないと判定された場合に警報を発する薬剤監査装置が記載されている。特許文献4には、PTP(Press Through Pack)シートの状態において薬剤をカメラによって撮影して得られる撮影画像から薬剤の種類を認識する点が言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-535108号公報
【特許文献2】特表2016-523405号公報
【特許文献3】特表2015-523561号公報
【特許文献4】特開2017-194413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4には、PTPシートに収容された薬剤の認識について具体的な手法が記載されておらず、PTPシートの撮影画像から薬剤をどのように抽出すればよいかが明らかになっていなかった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、PTPシートに収容された薬剤を識別する薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1態様に係る薬剤識別装置は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサに実行させるための命令を記憶する少なくとも1つのメモリと、を備え、少なくとも1つのプロセッサは、刻印及び/又は印字が付加された識別対象薬剤であって、PTPシートに収容された識別対象薬剤が撮影された撮影画像を取得し、撮影画像からPTPシートの領域を除去し、PTPシートの領域を除去した画像から識別対象薬剤の領域を検出し、識別対象薬剤の領域に基づいて識別対象薬剤の薬種を推論し、識別対象薬剤の薬種の候補を取得する薬剤識別装置である。本態様によれば、PTPシートに収容された薬剤を識別することができる。PTPシートは、1つの薬剤の収容部分だけ切り離されたバラの状態、又は2つ以上の薬剤の収容部分が繋がった状態であり、かつ工場出荷時の状態である1枚シートの状態ではない状態であることが好ましい。
【0008】
本開示の第2態様に係る薬剤識別装置は、第1態様に係る薬剤識別装置において、PTPシートに収容された薬剤の画像を入力するとPTPシートの領域を抽出した画像を出力する学習済みモデルであるPTPシート検出モデルを含むことが好ましい。これにより、PTPシートの領域を適切に除去することができる。
【0009】
本開示の第3態様に係る薬剤識別装置は、第1態様に係る薬剤識別装置において、少なくとも1つのプロセッサは、撮影画像に対して模様が存在する領域をPTPシートの領域として除去することが好ましい。これにより、PTPシートの領域を適切に除去することができる。
【0010】
本開示の第4態様に係る薬剤識別装置は、第1態様に係る薬剤識別装置において、薬剤の第1画像を入力すると薬剤の領域を抽出した第2画像を出力する学習済みモデルである薬剤領域抽出モデルを含むことが好ましい。これにより、識別対象薬剤の領域を適切に検出することができる。
【0011】
本開示の第5態様に係る薬剤識別装置は、第4態様に係る薬剤識別装置において、第1画像は、背景色が第1色の画像であり、少なくとも1つのプロセッサは、PTPシートの領域を第1色に変換することが好ましい。これにより、背景色が第1色の画像から薬剤の領域を抽出する薬剤領域抽出モデルを用いることができる。
【0012】
本開示の第6態様に係る薬剤識別装置は、第5態様に係る薬剤識別装置において、第1色は黒色であることが好ましい。これにより、背景色が黒色の画像から薬剤の領域を抽出する薬剤領域抽出モデルを用いることができる。
【0013】
本開示の第7態様に係る薬剤識別装置は、第1態様に係る薬剤識別装置において、一包化薬剤及び無包装の薬剤を識別する第1モードと、PTPシートに収容された薬剤を識別する第2モードを備え、少なくとも1つのプロセッサは、第2モードにおいて撮影画像からPTPシートの領域を除去することが好ましい。これにより、必要な場合にのみPTPシートの領域を除去することができる。
【0014】
本開示の第8態様に係る薬剤識別装置は、第1態様に係る薬剤識別装置において、PTPシートは、透明な部材と不透明な部材とからなり、少なくとも1つのプロセッサは、撮影画像からPTPシートの不透明な部材の領域を除去することが好ましい。これにより、識別対象薬剤の領域を適切に検出することができる。
【0015】
本開示の第9態様に係る薬剤識別装置は、第1態様から第8態様のいずれかに係る薬剤識別装置において、少なくとも1つのプロセッサは、撮影画像の少なくとも識別対象薬剤の領域を処理して識別対象薬剤の刻印及び/又は印字を抽出した刻印印字抽出画像を取得し、刻印印字抽出画像を入力して識別対象薬剤の薬種を推論することが好ましい。これにより、識別対象薬剤の薬種の候補を適切に取得することができる。
【0016】
本開示の第10態様に係る薬剤識別装置は、第9態様に係る薬剤識別装置において、刻印及び/又は印字が付加された薬剤の第3画像を入力して薬剤の刻印及び/又は印字を抽出した第4画像を出力する第1学習済みモデルと、第4画像を入力して薬剤の刻印及び/又は印字に対応する薬剤の薬種を出力する第2学習済みモデルと、を含むことが好ましい。これにより、刻印印字抽出画像を適切に取得し、識別対象薬剤の薬種の候補を適切に取得することができる。
【0017】
本開示の第11態様に係る薬剤識別装置は、第1態様から第8態様のいずれかに係る薬剤識別装置において、撮影画像の少なくとも薬剤の領域を入力して薬剤の薬種を出力する第3学習済みモデルを含むことが好ましい。これにより、識別対象薬剤の薬種の候補を適切に取得することができる。
【0018】
上記目的を達成するために、本開示の第12態様に係る薬剤識別方法は、少なくとも1つのプロセッサが、刻印及び/又は印字が付加された識別対象薬剤であって、PTPシートに収容された識別対象薬剤が撮影された撮影画像を取得し、撮影画像からPTPシートの領域を除去し、PTPシートの領域を除去した画像から識別対象薬剤の領域を検出し、識別対象薬剤の領域に基づいて識別対象薬剤の薬種を推論し、識別対象薬剤の薬種の候補を取得する薬剤識別方法である。本態様によれば、PTPシートに収容された薬剤を識別することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、本開示の第13態様に係るプログラムは、第12態様の薬剤識別方法をコンピュータに実行させるプログラムである。本態様によれば、PTPシートに収容された薬剤を識別することができる。第13態様に係るプログラムを記憶したCD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)等の非一時的かつコンピュータ読取可能な記録媒体も本開示に含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、PTPシートに収容された薬剤を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、スマートフォンの正面斜視図である。
図2図2は、スマートフォンの背面斜視図である。
図3図3は、スマートフォンの電気的構成を示すブロック図である。
図4図4は、インカメラの内部構成を示すブロック図である。
図5図5は、薬剤識別装置の機能構成を示すブロック図である。
図6図6は、薬剤識別装置を用いた薬剤識別方法の工程を示すフローチャートである。
図7図7は、裸錠の撮影画像から識別対象薬剤の領域を検出する処理を示す図である。
図8図8は、PTPシート内の薬剤の撮影画像から識別対象薬剤の領域を検出する処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0023】
<薬剤識別装置>
本実施形態に係る薬剤識別装置は、刻印及び/又は印字が付加された識別対象薬剤であって、PTP(Press Through Pack)シートに収容された識別対象薬剤の薬種を識別し、正解薬剤を特定する装置である。なお、「刻印及び/又は印字」とは、「刻印と印字とのいずれか一方」、又は「刻印と印字との両方」を意味する。
【0024】
ここで、刻印が付加されたとは、薬剤の表面に陥没領域である溝を形成することによって識別情報が形成されたことをいう。溝は、表面を掘って形成されたものに限定されず、表面を押圧することで形成されたものであってもよい。また、刻印は、割線等の識別機能を伴わないものも含んでもよい。
【0025】
また、印字が付加されたとは、薬剤の表面に接触又は非接触で可食性インク等を付与することによって識別情報が形成されたことをいう。ここでは、印字によって付されたとは、印刷によって付されたと同義である。
【0026】
PTPシートとは、凹形状に形成されたプラスチック等の透明な部材とアルミ箔等の不透明な部材とを備え、プラスチックの凹形状の開口面側をアルミ箔で封止することで凹形状に薬剤を収容したものである。透明とは、例えば可視光の透過率が80%以上であることをいい、90%以上であることが好ましい。不透明とは、例えば可視光の透過率が10%以下であることをいい、5%以下であることが好ましい。
【0027】
アルミ箔には、一般的に網目模様等の一定周期の細かい模様が施されている。細かい模様とは、例えば1mm以下の周期の模様をいう。ユーザは、プラスチック部分を強く押してアルミ箔を破くことで、収容された薬剤を取り出すことができる。
【0028】
薬剤識別装置は、一例として携帯端末装置に搭載される。携帯端末装置は、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレット型コンピュータ端末、ノート型パーソナルコンピュータ端末、及び携帯型ゲーム機のうちの少なくとも1つを含む。以下では、スマートフォンで構成される薬剤識別装置を例に挙げ、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0029】
〔スマートフォンの外観〕
図1は、薬剤識別装置を構成するカメラ付き携帯端末装置であるスマートフォン10の正面斜視図である。図1に示すように、スマートフォン10は、平板状の筐体12を有する。スマートフォン10は、筐体12の正面にタッチパネルディスプレイ14、スピーカ16、マイクロフォン18、及びインカメラ20を備えている。
【0030】
タッチパネルディスプレイ14は、画像等を表示するディスプレイ部、及びディスプレイ部の前面に配置され、タッチ入力を受け付けるタッチパネル部を備える。ディスプレイ部は、例えばカラーLCD(Liquid Crystal Display)パネルである。
【0031】
タッチパネル部は、例えば光透過性を有する基板本体の上に面状に設けられ、光透過性を有する位置検出用電極、及び位置検出用電極上に設けられた絶縁層を有する静電容量式タッチパネルである。タッチパネル部は、ユーザのタッチ操作に対応した2次元の位置座標情報を生成して出力する。タッチ操作は、タップ操作、ダブルタップ操作、フリック操作、スワイプ操作、ドラッグ操作、ピンチイン操作、及びピンチアウト操作を含む。
【0032】
スピーカ16は、通話時及び動画再生時に音声を出力する音声出力部である。マイクロフォン18は、通話時及び動画撮影時に音声が入力される音声入力部である。インカメラ20は、動画及び静止画を撮影する撮像装置である。
【0033】
図2は、スマートフォン10の背面斜視図である。図2に示すように、スマートフォン10は、筐体12の背面にアウトカメラ22、及びライト24を備えている。アウトカメラ22は、動画及び静止画を撮影する撮像装置である。ライト24は、アウトカメラ22で撮影を行う際に照明光を照射する光源であり、例えばLED(Light Emitting Diode)により構成される。
【0034】
さらに、図1及び図2に示すように、スマートフォン10は、筐体12の正面及び側面に、それぞれスイッチ26を備えている。スイッチ26は、ユーザからの指示を受け付ける入力部材である。スイッチ26は、指等で押下されるとオンとなり、指を離すとバネ等の復元力によってオフ状態となる押しボタン式のスイッチである。
【0035】
なお、筐体12の構成はこれに限定されず、折り畳み構造又はスライド機構を有する構成を採用してもよい。
【0036】
〔スマートフォンの電気的構成〕
スマートフォン10の主たる機能として、基地局装置と移動通信網とを介した移動無線通信を行う無線通信機能を備える。
【0037】
図3は、スマートフォン10の電気的構成を示すブロック図である。図3に示すように、スマートフォン10は、前述のタッチパネルディスプレイ14、スピーカ16、マイクロフォン18、インカメラ20、アウトカメラ22、ライト24、及びスイッチ26の他、CPU(Central Processing Unit)28、無線通信部30、通話部32、メモリ34、外部入出力部40、GPS受信部42、及び電源部44を有する。
【0038】
CPU28は、メモリ34に記憶された命令を実行するプロセッサの一例である。CPU28は、メモリ34が記憶する制御プログラム及び制御データに従って動作し、スマートフォン10の各部を統括して制御する。CPU28は、無線通信部30を通じて音声通信及びデータ通信を行うために、通信系の各部を制御する移動通信制御機能と、アプリケーション処理機能を備える。
【0039】
また、CPU28は、動画、静止画、及び文字等をタッチパネルディスプレイ14に表示する画像処理機能を備える。この画像処理機能により、静止画、動画、及び文字等の情報が視覚的にユーザに伝達される。また、CPU28は、タッチパネルディスプレイ14のタッチパネル部からユーザのタッチ操作に対応した2次元の位置座標情報を取得する。さらに、CPU28は、スイッチ26からの入力信号を取得する。
【0040】
CPU28のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の機能部として作用する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるPLD(Programmable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0041】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、又はCPUとFPGAの組み合わせ、あるいはCPUとGPUの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の機能部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の機能部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント又はサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の機能部として作用させる形態がある。第2に、SoC(System On Chip)等に代表されるように、複数の機能部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の機能部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0042】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0043】
インカメラ20及びアウトカメラ22は、CPU28の指示に従って、動画及び静止画を撮影する。図4は、インカメラ20の内部構成を示すブロック図である。なお、アウトカメラ22の内部構成は、インカメラ20と共通している。図4に示すように、インカメラ20は、撮影レンズ50、絞り52、撮像素子54、AFE(Analog Front End)56、A/D(Analog to Digital)変換器58、及びレンズ駆動部60を有する。
【0044】
撮影レンズ50は、ズームレンズ50Z及びフォーカスレンズ50Fから構成される。レンズ駆動部60は、CPU28からの指令に応じて、ズームレンズ50Z及びフォーカスレンズ50Fを進退駆動して光学ズーム調整及びフォーカス調整を行う。また、レンズ駆動部60は、CPU28からの指令に応じて絞り52を制御し、露出を調整する。レンズ駆動部60は、後述するグレーの色に基づいてカメラの露光補正を行う露光補正部に相当する。ズームレンズ50Z及びフォーカスレンズ50Fの位置、絞り52の開放度等の情報は、CPU28に入力される。
【0045】
撮像素子54は、多数の受光素子がマトリクス状に配列された受光面を備える。ズームレンズ50Z、フォーカスレンズ50F、及び絞り52を透過した被写体光は、撮像素子54の受光面上に結像される。撮像素子54の受光面上には、R(赤)、G(緑)、及びB(青)のカラーフィルタが設けられている。撮像素子54の各受光素子は、受光面上に結像された被写体光をR、G、及びBの各色の信号に基づいて電気信号に変換する。これにより、撮像素子54は被写体のカラー画像を取得する。撮像素子54としては、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)、又はCCD(Charge-Coupled Device)等の光電変換素子を用いることができる。
【0046】
AFE56は、撮像素子54から出力されるアナログ画像信号のノイズ除去、及び増幅等を行う。A/D変換器58は、AFE56から入力されるアナログ画像信号を階調幅があるデジタル画像信号に変換する。なお、撮像素子54への入射光の露光時間を制御するシャッターは、電子シャッターが用いられる。電子シャッターの場合、CPU28によって撮像素子54の電荷蓄積期間を制御することで、露光時間(シャッタースピード)を調節することができる。
【0047】
インカメラ20は、撮影した動画及び静止画の画像データをMPEG(Moving Picture Experts Group)又はJPEG(Joint Photographic Experts Group)等の圧縮した画像データに変換してもよい。
【0048】
図3の説明に戻り、CPU28は、インカメラ20及びアウトカメラ22が撮影した動画及び静止画をメモリ34に記憶させる。また、CPU28は、インカメラ20及びアウトカメラ22が撮影した動画及び静止画を無線通信部30又は外部入出力部40を通じてスマートフォン10の外部に出力してもよい。
【0049】
さらに、CPU28は、インカメラ20及びアウトカメラ22が撮影した動画及び静止画をタッチパネルディスプレイ14に表示する。CPU28は、インカメラ20及びアウトカメラ22が撮影した動画及び静止画をアプリケーションソフトウェア内で利用してもよい。
【0050】
なお、CPU28は、アウトカメラ22による撮影の際に、ライト24を点灯させることで被写体に撮影補助光を照射してもよい。ライト24は、ユーザによるタッチパネルディスプレイ14のタッチ操作、又はスイッチ26の操作によって点灯及び消灯が制御されてもよい。
【0051】
無線通信部30は、CPU28の指示に従って、移動通信網に収容された基地局装置に対し無線通信を行う。スマートフォン10は、この無線通信を使用して、音声データ及び画像データ等の各種ファイルデータ、電子メールデータ等の送受信、Web(World Wide Webの略称)データ及びストリーミングデータ等の受信を行う。
【0052】
通話部32は、スピーカ16及びマイクロフォン18が接続される。通話部32は、無線通信部30により受信された音声データを復号してスピーカ16から出力する。通話部32は、マイクロフォン18を通じて入力されたユーザの音声をCPU28が処理可能な音声データに変換してCPU28に出力する。
【0053】
メモリ34は、CPU28に実行させるための命令を記憶する。メモリ34は、スマートフォン10に内蔵される内部記憶部36、及びスマートフォン10に着脱自在な外部記憶部38により構成される。内部記憶部36及び外部記憶部38は、公知の格納媒体を用いて実現される。
【0054】
メモリ34は、CPU28の制御プログラム、制御データ、アプリケーションソフトウェア、通信相手の名称及び電話番号等が対応付けられたアドレスデータ、送受信した電子メールのデータ、WebブラウジングによりダウンロードしたWebデータ、及びダウンロードしたコンテンツデータ等を記憶する。また、メモリ34は、ストリーミングデータ等を一時的に記憶してもよい。
【0055】
外部入出力部40は、スマートフォン10に連結される外部機器とのインターフェースの役割を果たす。スマートフォン10は、外部入出力部40を介して通信等により直接的又は間接的に他の外部機器に接続される。外部入出力部40は、外部機器から受信したデータをスマートフォン10の内部の各構成要素に伝達し、かつスマートフォン10の内部のデータを外部機器に送信する。
【0056】
通信等の手段は、例えばユニバーサルシリアルバス(USB:Universal Serial Bus)、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394、インターネット、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、RFID(Radio Frequency Identification)、及び赤外線通信である。また、外部機器は、例えばヘッドセット、外部充電器、データポート、オーディオ機器、ビデオ機器、スマートフォン、PDA、パーソナルコンピュータ、及びイヤホンである。
【0057】
GPS受信部42は、GPS衛星ST1,ST2,…,STnからの測位情報に基づいて、スマートフォン10の位置を検出する。
【0058】
電源部44は、不図示の電源回路を介してスマートフォン10の各部に電力を供給する電力供給源である。電源部44は、リチウムイオン二次電池を含む。電源部44は、外部のAC電源からDC電圧を生成するA/D変換器を含んでもよい。
【0059】
このように構成されたスマートフォン10は、タッチパネルディスプレイ14等を用いたユーザからの指示入力により撮影モードに設定され、インカメラ20及びアウトカメラ22によって動画及び静止画を撮影することができる。
【0060】
スマートフォン10が撮影モードに設定されると、撮影スタンバイ状態となり、インカメラ20又はアウトカメラ22によって動画が撮影され、撮影された動画がライブビュー画像としてタッチパネルディスプレイ14に表示される。
【0061】
ユーザは、タッチパネルディスプレイ14に表示されるライブビュー画像を視認して、構図を決定したり、撮影したい被写体を確認したり、撮影条件を設定したりすることができる。
【0062】
スマートフォン10は、撮影スタンバイ状態においてタッチパネルディスプレイ14等を用いたユーザからの指示入力により撮影が指示されると、AF(Autofocus)及びAE(Auto Exposure)制御を行い、動画及び静止画の撮影及び記憶を行う。
【0063】
〔機能構成〕
図5は、スマートフォン10によって実現される薬剤識別装置100の機能構成を示すブロック図である。薬剤識別装置100の各機能は、CPU28がメモリ34に記憶された薬剤識別プログラムを実行することで具現化される。図5に示すように、薬剤識別装置100は、画像取得部102、画像処理部105、薬剤検出部106、刻印印字抽出部108、薬種認識部110、候補出力部112、及び確定部114を有する。
【0064】
画像取得部102は、刻印及び/又は印字が付加された識別対象薬剤が撮影された撮影画像を取得する。撮影画像は、例えばインカメラ20又はアウトカメラ22によって撮影された画像である。撮影画像は、無線通信部30、外部記憶部38、又は外部入出力部40を介して他の装置から取得した画像であってもよい。
【0065】
撮影画像は、識別対象薬剤及びマーカが撮影された画像であってもよい。マーカは複数であってもよいし、ArUcoマーカ、円形マーカ、又は四角形マーカであってもよい。円形マーカは同心状の円形を含み、四角形マーカは同心状の四角形を含むことが好ましい。これにより、マーカの中心点座標を決定しやすくなり、様々なノイズに対して頑健に標準化画像を取得することができる。撮影画像は、識別対象薬剤及び基準となるグレーの色が撮影された画像であってもよい。基準となるグレーの色とは、0(黒)~255(白)の256の階調値で表現すると、例えば130~220の範囲の階調値であり、より好ましくは150~190の範囲の階調値である。
【0066】
撮影画像は、黒色の背景に配置された識別対象薬剤が撮影された画像であってもよい。黒色とは、0(黒)~255(白)の256の階調値で表現すると、例えば50以下の階調値であり、より好ましくは30以下の階調値である。
【0067】
撮影画像は、標準となる撮影距離及び撮影視点で撮影された画像であってもよい。撮影距離とは、識別対象薬剤及び撮影レンズ50の間の距離と撮影レンズ50の焦点距離とから表すことができる。また、撮影視点とは、マーカ印刷面と撮影レンズ50の光軸とが成す角度から表すことができる。
【0068】
撮影画像は、複数の識別対象薬剤が含まれていてもよい。複数の識別対象薬剤は、同じ薬種の識別対象薬剤に限定されず、それぞれ異なる薬種の識別対象薬剤であってもよい。撮影画像は、PTPシートに収容された識別対象薬剤が含まれていてもよい。PTPシートは、1つの薬剤の収容部分だけ切り離されたバラの状態であってもよいし、2つ以上の薬剤の収容部分が繋がった状態であってもよい。
【0069】
画像取得部102は、画像補正部104を有する。画像補正部104は、撮影画像にマーカが含まれる場合に、マーカに基づいて撮影画像の撮影距離及び撮影視点の標準化を行って標準化画像を取得する。また、画像補正部104は、撮影画像に基準となるグレーの色の領域が含まれる場合に、基準となるグレーの色に基づいて撮影画像の色調補正を行う。
【0070】
画像処理部105は、画像取得部102が取得した撮影画像に画像処理を施し、撮影画像からPTPシートの領域が除去された画像を出力する。PTPシートの領域が除去された画像は、PTPシートの領域を背景色に変換した画像であってもよい。PTPシートの領域が除去された画像は、撮影画像からPTPシートの不透明な部材の領域を除去した画像であってもよい。画像処理部105は、画像補正部104が補正した撮影画像に画像処理を施してもよい。画像処理部105は、撮影画像にPTPシートに収容された薬剤が含まれない場合は、画像処理を行わなくてよい。
【0071】
画像処理部105は、PTPシート検出モデル105Aを含む。PTPシート検出モデル105Aは、PTPシートに収容された薬剤の画像を入力として与えると画像内のPTPシートの領域を抽出した画像を出力する学習済みモデルである。PTPシート検出モデル105Aは、PTPシートに収容された複数の異なる撮影画像の学習データセットであって、PTPシートの画像と、画像内に含まれるPTPシートの領域とをセットとする学習用の学習データセットにより機械学習が行われたセグメンテーションモデルである。PTPシート検出モデル105Aは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolution Neural Network)を適用することができる。画像処理部105は、PTPシート検出モデル105Aによって検出されたPTPシートの領域を例えば黒色に塗りつぶして背景色に変換することで、PTPシートの領域が除去された画像を出力する。
【0072】
なお、PTPシートの領域を除去する手段は、PTPシート検出モデル105Aによって検出された領域を塗りつぶすことに限定されない。例えば、画像処理部105は、撮影画像に含まれるPTPシートの細かい模様が存在する領域を除去する画像処理を施してもよい。
【0073】
薬剤検出部106は、画像取得部102が取得した撮影画像から識別対象薬剤の領域を検出する。薬剤検出部106は、画像補正部104によって標準化画像が取得された場合は、標準化画像から識別対象薬剤の領域を検出する。薬剤検出部106は、撮影画像に複数の識別対象薬剤が含まれている場合は、複数の識別対象薬剤のそれぞれの領域を検出する。薬剤検出部106は、画像処理部105によってPTPシートの領域が除去された画像が取得された場合は、PTPシートの領域が除去された画像に基づいて画像取得部102が取得した撮影画像から識別対象薬剤の領域を検出する。
【0074】
薬剤検出部106は、薬剤領域抽出モデル106Aを含む。薬剤領域抽出モデル106Aは、薬剤の第1画像を入力として与えると第1画像内の薬剤の領域を抽出した第2画像を出力する学習済みモデルである。第1画像は、背景色が第1色の画像であり、第1色は例えば黒色である。薬剤領域抽出モデル106Aは、複数の異なる撮影画像の学習データセットであって、薬剤の画像と、画像に含まれる薬剤の領域とをセットとする学習用の学習データセットにより機械学習が行われたセグメンテーションモデルである。薬剤領域抽出モデル106Aは、CNNを適用することができる。
【0075】
刻印印字抽出部108は、撮影画像の少なくとも識別対象薬剤の領域を処理して識別対象薬剤の外形エッジ情報を排し、刻印及び/又は印字を抽出した刻印印字抽出画像を取得する。ここでは、刻印印字抽出画像は、刻印部分又は印字部分の輝度が刻印部分又は印字部分以外の部分の輝度よりも相対的に高く表現されることで、刻印及び/又は印字が強調された画像である。
【0076】
薬剤検出部106によって複数の識別対象薬剤のそれぞれの領域が検出された場合は、刻印印字抽出部108は、複数の識別対象薬剤にそれぞれ対応する複数の刻印印字抽出画像を取得する。
【0077】
刻印印字抽出部108は、第1学習済みモデル108Aを含む。第1学習済みモデル108Aは、刻印及び/又は印字が付加された薬剤の第3画像を入力として与えると薬剤の刻印及び/又は印字が抽出された第4画像を出力する学習済みモデルである。第1学習済みモデル108Aは、刻印及び/又は印字が付加された複数の異なる薬剤の学習データセットであって、刻印及び/又は印字が付加された薬剤の画像と、薬剤の刻印及び/又は印字が抽出された画像とをセットとする学習用の学習データセットにより機械学習が行われたものである。第1学習済みモデル108Aは、CNNを適用することができる。
【0078】
ここでは、画像補正部104によって撮影画像の撮影距離及び撮影視点の標準化と色調補正とが行われているため、第1学習済みモデル108Aの安定動作を期待することができる。
【0079】
薬種認識部110は、刻印印字抽出画像を入力して識別対象薬剤の薬種を推論し、識別対象薬剤の薬種の候補を取得する。薬種の候補は、薬剤名、商品名、略称、又はこれらの組合せからなる薬剤識別情報を含む。薬種認識部110は、複数の識別対象薬剤にそれぞれ対応する複数の刻印印字抽出画像が入力された場合は、複数の識別対象薬剤にそれぞれ対応する薬種の候補を取得する。
【0080】
薬種認識部110は、第2学習済みモデル110Aを含む。第2学習済みモデル110Aは、薬剤の刻印及び/又は印字が抽出された第4画像を入力として与えると薬剤の刻印及び/又は印字に対応する薬剤の薬種を出力する学習済みモデルである。第2学習済みモデル110Aは、刻印及び/又は印字が付加された複数の異なる薬剤の学習データセットであって、刻印及び/又は印字が抽出された薬剤の画像と、薬剤の刻印及び/又は印字に対応する薬剤の薬種とをセットとする学習用の学習データセットにより機械学習が行われたものである。第2学習済みモデル110Aは、第1学習済みモデル108Aと同様に、CNNを適用することができる。
【0081】
このように、薬種認識部110は、色情報を用いずに刻印及び/又は印字情報をベースに認識を行うため、撮影環境の影響に対してロバストとなる。
【0082】
候補出力部112は、薬種認識部110が取得した識別対象薬剤の薬種の候補を出力する。候補出力部112は、例えば識別対象薬剤の薬種の複数の候補を選択可能にタッチパネルディスプレイ14に表示させる。
【0083】
確定部114は、識別対象薬剤の薬種の候補から識別対象薬剤の正解薬剤を確定させる。確定部114は、例えばタッチパネルディスプレイ14に表示させた識別対象薬剤の薬種の複数の候補からユーザに選択された薬種の候補を正解薬剤として確定させる。確定部114は、候補出力部112によって出力された識別対象薬剤の薬種の候補が1つのみの場合は、その薬種の候補を正解薬剤として確定させてもよい。
【0084】
<薬剤識別方法>
図6は、薬剤識別装置100を用いた薬剤識別方法の工程を示すフローチャートである。薬剤識別方法は、CPU28がメモリ34から薬剤識別プログラムを読み出して実行することにより実現される。薬剤識別プログラムは、無線通信部30又は外部入出力部40を介して提供されてもよい。
【0085】
ステップS1では、ユーザは、撮影対象となる識別対象薬剤の包装状態を選択する。ここでは、裸錠、一包化薬剤、及びPTPシート内の薬剤のうちのいずれかを選択する。裸錠とは、無包装の状態の薬剤(錠剤)である。一包化薬剤とは、種類の異なる複数の薬剤が1つの分包袋に包装された状態の薬剤である。PTPシート内の薬剤とは、PTPシートに収容された状態の薬剤である。いずれの識別対象薬剤にも、刻印及び/又は印字が付加されている。
【0086】
ステップS2では、ユーザは、識別対象薬剤を撮影する。例えば、ユーザは、黒色の背景に識別対象薬剤を配置し、アウトカメラ22によって撮影する。ユーザは、ライト24によって識別対象薬剤に照明光を照射した状態で撮影してもよい。画像取得部102は、識別対象薬剤が撮影された撮影画像を取得する。画像補正部104は、取得した撮影画像に補正処理を施してもよい。
【0087】
ステップS3では、薬剤識別装置100は、ステップS1で選択された撮影対象の識別対象薬剤が、PTPシート内の薬剤であるか否かを判定する。薬剤識別装置100は、一包化薬剤及び無包装の薬剤を識別する第1モードと、PTPシートに収容された薬剤を識別する第2モードを備える。
【0088】
ステップS3において、PTPシート内の薬剤ではないと判定した場合は、第1モードとなり、ステップS5に移行する。ステップS5では、薬剤検出部106は、ステップS2で取得した撮影画像から識別対象薬剤の領域を検出する。
【0089】
図7は、裸錠の撮影画像から識別対象薬剤の領域を検出する処理を示す図である。裸錠の撮影画像I1には、裸錠である4つの錠剤T1、T2、T3、及びT4と、4つの錠剤の背景として黒色の背景BG1が写っている。また、撮影画像I1には、4つのマーカM1、M2、M3、及びM4が写っている。マーカM1~M4は、それぞれ互いに直交する2本の直線からなるクロス型(十字型)のマーカである。撮影画像I1には、4つの錠剤T1~T4がそれぞれマーカM1~M4に囲まれた位置に写っており、マーカM1~M4はそれぞれ一部だけが写っている。画像補正部104は、マーカM1~M4に基づいて撮影画像I1の撮影距離及び撮影視点の標準化処理を行い、標準化画像を取得してもよい。
【0090】
図7に示す例では、薬剤領域抽出モデル106Aに撮影画像I1を入力することで、4つの錠剤T1、T2、T3、及びT4の領域がそれぞれ検出された検出画像I2を取得している。検出画像I2では、検出された錠剤T1、T2、T3、及びT4の領域がそれぞれ枠F1、F2、F3、及びF4で囲まれている。
【0091】
図7では、裸錠の撮影画像から識別対象薬剤の領域を検出する処理について説明したが、一包化薬剤の撮影画像から識別対象薬剤の領域を検出する処理についても同様である。
【0092】
一方、ステップS3において、PTPシート内の薬剤であると判定した場合は、第2モードとなり、ステップS4に移行する。ステップS4では、画像処理部105は、ステップS2で取得した撮影画像に画像処理を施し、撮影画像からPTPシートの領域が除去された画像を出力する。そして、ステップS5では、薬剤検出部106は、ステップS4で取得したPTPシートの領域が除去された画像から識別対象薬剤の領域を検出する。このように、画像処理部105は、第2モードにおいて撮影画像からPTPシートの領域を除去する。
【0093】
図8は、PTPシート内の薬剤の撮影画像から識別対象薬剤の領域を検出する処理を示す図である。PTPシート内の薬剤の撮影画像I11には、それぞれバラの状態のPTPシートPS1、PS2、PS3、及びPS4に収容された4つの錠剤T11、T12、T13、及びT14と、4つの錠剤の背景として黒色の背景BG2が写っている。また、撮影画像I11には、4つのマーカM11、M12、M13、及びM14が写っている。マーカM11~M14は、それぞれ同心状の円形マーカである。4つの錠剤T11~T14は、それぞれマーカM11~M14に囲まれた位置に写っている。画像補正部104は、マーカM11~M14に基づいて撮影画像I11の撮影距離及び撮影視点の標準化処理を行い、標準化画像を取得してもよい。
【0094】
図8に示す例では、画像処理部105は、撮影画像I11に含まれる細かい模様が存在する領域を黒色に塗りつぶして除去することで、PTPシートPS1~PS4の領域が除去された画像I12を取得している。画像処理部105は、撮影画像I11をPTPシート検出モデル105Aに入力することで、撮影画像I11のPTPシートPS1~PS4の領域を検出し、検出した領域を黒色に塗りつぶすことで、PTPシートPS1~PS4の領域が除去された画像I12を取得してもよい。
【0095】
また、図8に示す例では、薬剤領域抽出モデル106Aに撮影画像I11を入力することで、4つの錠剤T11、T12、T13、及びT14の領域がそれぞれ検出された検出画像I13を取得している。薬剤領域抽出モデル106Aは、背景色が黒色の画像から薬剤の領域を抽出するモデルであるため、PTPシートPS1~PS4の領域を黒色に塗りつぶして除去した画像から、4つの錠剤T11~T14の領域を適切に抽出することができる。検出画像I13では、画像I12から検出された錠剤T11、T12、T13、及びT14の領域がそれぞれ枠F11、F12、F13、及びF14で囲まれている。
【0096】
第1モード及び第2モードともに、ステップS5において識別対象薬剤の領域が検出されると、ステップS6へ移行する。ステップS6では、刻印印字抽出部108は、ステップS5で検出された識別対象薬剤の領域を処理して、識別対象薬剤のそれぞれの刻印及び/又は印字を抽出した刻印印字抽出画像を取得する。刻印印字抽出部108は、第1学習済みモデル108Aによって刻印印字抽出画像を取得してもよい。刻印印字抽出画像は、例えば刻印部分又は印字部分の輝度が刻印部分又は印字部分とは異なる部分の輝度よりも相対的に高い画像である。
【0097】
ステップS7では、薬種認識部110は、ステップS6で取得した識別対象薬剤のそれぞれの刻印印字抽出画像から識別対象薬剤のそれぞれの薬種を推論し、識別対象薬剤の薬種の候補を取得する。薬種認識部110は、第2学習済みモデル110Aによって識別対象薬剤の薬種の候補を取得してもよい。
【0098】
ステップS8では、候補出力部112は、ステップS7で取得された識別対象薬剤の薬種の候補を出力する。例えば、候補出力部112は、1つの識別対象薬剤について複数の薬種の候補を出力する。
【0099】
ステップS9では、確定部114は、ステップS8で表示された識別対象薬剤の複数の薬種の候補の中から正解薬剤を確定する。例えば、確定部114は、1つの識別対象薬剤の複数の薬種の候補のうち、ユーザに選択された薬種の候補をその識別対象薬剤の
正解薬剤として確定する。
【0100】
薬剤識別装置100によれば、PTPシートに収容された識別対象薬剤が撮影された撮影画像からPTPシートの領域を除去し、PTPシートの領域を除去した画像から識別対象薬剤の領域を検出するようにしたので、識別対象薬剤の刻印及び/又は印字を抽出した刻印印字抽出画像を取得し、刻印印字抽出画像から識別対象薬剤の薬種を推論することができる。したがって、PTPシートに収容された薬剤であっても、刻印及び/又は印字により付加された識別情報のみで精度の高い薬剤の認識が可能になる。
【0101】
ここでは、バラの状態のPTPシートに収容された薬剤の識別について説明したが、PTPシートは2つ以上の薬剤の収容部分が繋がった状態であってもよい。2つ以上の薬剤の収容部分が繋がった状態は、工場出荷時の状態である1枚シートの状態であってもよいし、1枚シートから分離された状態であってもよい。1枚シートから分離された状態は、例えば、1枚シートに形成された切り取り線に沿って切り離された状態である。
【0102】
本実施形態は、PTPが1枚シートの状態であっても効果があるが、1枚シートの状態のPTPシートは、薬剤を特定できるバーコード等の情報があるため、1枚シートの状態ではない2つ以上の薬剤の収容部分が繋がった状態の場合に特に効果を発揮する。すなわち、本実施形態は、バラの状態、又は2つ以上の薬剤の収容部分が繋がった状態であり、かつ1枚シートの状態ではない場合に適用可能である。
【0103】
<変形例>
ここまでは、薬剤識別装置100は、識別対象薬剤の領域を処理して刻印印字抽出画像を取得し、刻印印字抽出画像から識別対象薬剤の薬種を推論したが、刻印印字抽出画像を取得せずに識別対象薬剤の薬種を推論してもよい。例えば、薬種認識部110は、薬剤検出部106が検出した識別対象薬剤の領域に基づいて直接に薬種を推論してもよい。
【0104】
この場合、薬種認識部110は、薬剤の撮影画像の少なくとも薬剤の領域を含む第5画像を入力として与えると薬剤の薬種を出力する第3学習済みモデルを含んでもよい。第3学習済みモデルは、複数の異なる薬剤の学習データセットであって、薬剤の領域の画像と、薬剤の薬種とをセットとする学習用の学習データセットにより機械学習が行われたものである。第3学習済みモデルは、第1学習済みモデル108Aと同様に、CNNを適用することができる。
【0105】
また、薬剤識別装置100は、以下のように刻印印字抽出画像を取得してもよい。まず、画像取得部102は、識別対象薬剤の表面への光の照明方向がそれぞれ異なる複数の撮影画像を取得する。次に、刻印印字抽出部108は、複数の撮影画像のうち少なくとも1枚の撮影画像に基づいて識別対象薬剤の刻印部分を強調する処理を行って第1強調画像を生成する。また、刻印印字抽出部108は、複数の撮影画像のうち少なくとも1枚の撮影画像に基づいて識別対象薬剤の印字部分を強調する処理を行って第2強調画像を生成する。そして、刻印印字抽出部108は、第1強調画像と第2強調画像とを統合した刻印印字抽出画像を生成する。刻印印字抽出部108は、薬剤検出部106によって検出された識別対象薬剤の領域について上記の処理を行ってもよい。
【0106】
刻印印字抽出部108は、識別対象薬剤の刻印部分の輝度値を大きくする処理及び識別対象薬剤の印字部分の輝度値を大きくする処理を行い、第1強調画像及び第2強調画像のそれぞれ対応する位置の輝度値を比較し、輝度が大きい方の輝度値を採用してもよい。
【0107】
刻印印字抽出部108は、識別対象薬剤の刻印部分の輝度値を小さくする処理及び識別対象薬剤の印字部分の輝度値を小さくする処理を行い、第1強調画像及び第2強調画像のそれぞれ対応する位置の輝度値を比較し、輝度が小さい方の輝度値を採用してもよい。
【0108】
刻印印字抽出部108は、照度差ステレオ法により識別対象薬剤の表面の三次元情報を取得して第1強調画像を生成してもよい。刻印印字抽出部108は、平滑化処理、鮮鋭化処理、及びエッジ検出処理の少なくとも1つを施して第2強調画像を生成してもよい。
【0109】
<その他>
ここまでは、スマートフォン10が単独で刻印及び/又は印字が付加された識別対象薬剤の正解薬剤を特定する薬剤識別装置100を構成する例を説明したが、薬剤識別装置100は、スマートフォン10と、スマートフォン10と通信可能なサーバとで構成されてもよいし、サーバ単独で構成されてもよい。
【0110】
薬剤識別プログラムは、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)等の非一時的な記録媒体に記憶されて提供されることも可能である。
【0111】
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0112】
10…スマートフォン
12…筐体
14…タッチパネルディスプレイ
16…スピーカ
18…マイクロフォン
20…インカメラ
22…アウトカメラ
24…ライト
26…スイッチ
30…無線通信部
32…通話部
34…メモリ
36…内部記憶部
38…外部記憶部
40…外部入出力部
42…GPS受信部
44…電源部
50…撮影レンズ
50F…フォーカスレンズ
50Z…ズームレンズ
54…撮像素子
58…A/D変換器
60…レンズ駆動部
100…薬剤識別装置
102…画像取得部
104…画像補正部
105…画像処理部
105A…PTPシート検出モデル
106…薬剤検出部
106A…薬剤領域抽出モデル
108…刻印印字抽出部
108A…第1学習済みモデル
110…薬種認識部
110A…第2学習済みモデル
112…候補出力部
114…確定部
F1…枠
F2…枠
F3…枠
F4…枠
F11…枠
F12…枠
F13…枠
F14…枠
I1…撮影画像
I11…撮影画像
PS1…PTPシート
PS2…PTPシート
PS3…PTPシート
PS4…PTPシート
S1~S9…薬剤識別方法の工程
T1…錠剤
T2…錠剤
T3…錠剤
T4…錠剤
T11…錠剤
T12…錠剤
T13…錠剤
T14…錠剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8