(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100097
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】触媒ユニット
(51)【国際特許分類】
F01N 3/02 20060101AFI20240719BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20240719BHJP
F01N 3/05 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F01N3/02 101E
F01N3/20 D ZAB
F01N3/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003834
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰則
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091BA04
3G091BA07
(57)【要約】
【課題】劣化状況に応じて、異なる温度環境を触媒に与えること。
【解決手段】触媒ユニットは、触媒コンバータと、触媒コンバータを収容し、第1開口を含むハウジングと、触媒コンバータとハウジングとの間の隙間に少なくとも部分的に配置される断熱材と、ハウジングの外側に配置され、外部から空気を取り込む第2開口を有するシャッターと、ハウジングに対してシャッターを接続し、シャッターを支持する支持部と、を備え、支持部は、所定値より大きい熱負荷を経験すると、不可逆的に変化し、シャッターは、支持部が変化する前は、支持部によって第1位置に保持され、シャッターは、支持部が変化すると、第1位置から第2位置に移動し、第1位置では、第2開口は、第1開口と連通し、第2位置では、第2開口と第1開口との間の連通は遮断または低減される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒コンバータと、
前記触媒コンバータを収容し、第1開口を含むハウジングと、
前記触媒コンバータと前記ハウジングとの間の隙間に少なくとも部分的に配置される断熱材と、
前記ハウジングの外側に配置され、外部から空気を取り込む第2開口を有するシャッターと、
前記ハウジングに対して前記シャッターを接続し、前記シャッターを支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、所定値より大きい熱負荷を経験すると、不可逆的に変化し、
前記シャッターは、前記支持部が変化する前は、前記支持部によって第1位置に保持され、
前記シャッターは、前記支持部が変化すると、前記第1位置から第2位置に移動し、
前記第1位置では、前記第2開口は、前記第1開口と連通し、
前記第2位置では、前記第2開口と前記第1開口との間の連通は遮断または低減される、
触媒ユニット。
【請求項2】
前記支持部は、異なる耐熱性を有するように異なる寸法を有する複数の要素を含む、請求項1に記載の触媒ユニット。
【請求項3】
前記支持部は、異なる耐熱性を有する複数の材料によって形成される複数の要素を含む、請求項1に記載の触媒ユニット。
【請求項4】
前記支持部の耐熱性は、前記ハウジングおよび前記シャッターの耐熱性よりも低い、請求項1に記載の触媒ユニット。
【請求項5】
前記支持部は、前記熱負荷によって延伸または変形する、請求項1に記載の触媒ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンからの排気ガスは、NOx等の有害物質を含む。これらの有害物質を除去するために、排気管には触媒が配置される場合がある。触媒反応は、触媒が特定の温度以上に加熱されると加速される。したがって、この分野では、エンジンの始動時に触媒を素早く加熱するための技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、触媒を収容する触媒容器と、触媒容器を収容する伝熱制御容器と、を備える触媒コンバータを開示する。触媒容器と伝熱制御容器との間の空間には、水素吸蔵材が配置される。また、この空間は水素ガスで充填される。水素吸蔵材は、特定の温度より低い温度では、空間中の水素を吸収する。したがって、エンジンの始動時には、水素吸蔵材は特定の温度より低く、空間中の水素を吸収する。このため、エンジンの始動時には、空間は断熱層として働く。その結果、エンジンの始動時には、触媒容器は断熱層によって断熱され、排気ガスからの熱によって触媒が素早く加熱される。対照的に、水素吸蔵材は、特定の温度以上の温度では、空間に水素を放出する。水素は伝熱性に優れているため、空間は伝熱層として働く。したがって、一旦触媒が加熱されると、排気ガスからの熱は、触媒容器から伝熱層を介して伝熱制御容器に放出される。その結果、触媒の過加熱および劣化が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、触媒反応は、触媒が特定の温度以上に加熱されると加速される。また、一旦触媒が加熱されると、触媒の過加熱および劣化を防止するために、排気ガスからの熱は放出された方がよい。しかしながら、長い期間熱に晒された触媒は劣化する。この場合、触媒は、反応速度を維持するために、一旦触媒が加熱された後も、より高い温度に保たれた方が良い。したがって、触媒は、劣化状況に応じて、異なる温度環境を必要とする。
【0006】
本発明は、劣化状況に応じて、異なる温度環境を触媒に与えることができる、触媒ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る触媒ユニットは、
触媒コンバータと、
前記触媒コンバータを収容し、第1開口を含むハウジングと、
前記触媒コンバータと前記ハウジングとの間の隙間に少なくとも部分的に配置される断熱材と、
前記ハウジングの外側に配置され、外部から空気を取り込む第2開口を有するシャッターと、
前記ハウジングに対して前記シャッターを接続し、前記シャッターを支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、所定値より大きい熱負荷を経験すると、不可逆的に変化し、
前記シャッターは、前記支持部が変化する前は、前記支持部によって第1位置に保持され、
前記シャッターは、前記支持部が変化すると、前記第1位置から第2位置に移動し、
前記第1位置では、前記第2開口は、前記第1開口と連通し、
前記第2位置では、前記第2開口と前記第1開口との間の連通は遮断または低減される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、劣化状況に応じて、異なる温度環境を触媒に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る触媒ユニットを示す概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、支持部が変化する前の
図1の触媒ユニットを示す概略的な断面図である。
【
図3】
図3は、変化前の支持部を示す概略的な平面図である。
【
図4】
図4は、部分的な変化後の支持部を示す概略的な平面図である。
【
図5】
図5は、支持部が変化した後の
図1の触媒ユニットを示す概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る触媒ユニットを示す概略的な断面図である。
【
図7】
図7は、支持部が変化した後の
図6の触媒ユニットを示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、明細書および図面において、実質的に同一の機能および構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る触媒ユニット100を示す概略的な斜視図である。例えば、触媒ユニット100は、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、ガソリン自動車、または、ディーゼル自動車等、不図示のエンジンを備える車両500に適用される。他の実施形態では、触媒ユニット100は、自動車以外の他の機械のエンジンに適用されてもよい。触媒ユニット100は、エンジンに接続される不図示の排気管内に配置される、または、排気管に取り付けられる。
【0012】
本実施形態では、触媒ユニット100は、後述する触媒コンバータ1の軸線が車両500の左右方向に平行になるように、車両500の底部に配置される。
図1における左側は、ドライバから見て右側であり、
図1における右側は、ドライバから見て左側である。したがって、
図1では、触媒ユニット100の前側が示される。
【0013】
触媒ユニット100は、例えば、触媒コンバータ1と、断熱材2と、ハウジング3と、シャッター4と、を備える。触媒ユニット100は、他の構成要素をさらに備えてもよい。
【0014】
例えば、触媒コンバータ1は、三元触媒を含んでもよい。例えば、触媒コンバータ1は、ハニカム構造等の多孔形状を有する担体を含む。担体には、例えば、プラチナ、パラジウムおよびロジウム等の貴金属が担持される。触媒コンバータ1はこれに限定されず、三元触媒以外の他の触媒を含んでもよい。本実施形態では、触媒コンバータ1は、円筒形状を有する。排気ガスgは、軸線方向に沿って触媒コンバータ1の内部を通過する。
【0015】
断熱材2は、触媒コンバータ1とハウジング3との間の隙間に少なくとも部分的に配置される。例えば、断熱材2は、グラスウールを含んでもよい。また、例えば、断熱材2は、後述する断熱材2の劣化を促進するために、グラスウールよりも早期に劣化する樹脂またはゲル等の材料を、部分的に、具体的には、後述する支持部5(
図2を参照)の近傍に含んでもよい。
【0016】
図1を参照して、例えば、断熱材2は、軸線方向に垂直な断面のうち、後述する第1開口31および第2開口41を通らない断面では、触媒コンバータ1の周りに全体的に配置されてもよいし、または、触媒コンバータ1の周りに部分的に配置されてもよい。
【0017】
図2は、支持部5が変化する前の
図1の触媒ユニットを示す概略的な断面図である。
図2および後述する
図5は、
図1中の平面Xに沿って得られる断面である。平面Xは、触媒コンバータ1の軸線方向に対して垂直、すなわち、排気ガスgの流路に対して垂直であり、第1開口31および第2開口41を通る。
図2では、支持部5はまだ変化しておらず、シャッター4は、第1位置P1に在る。第1位置P1では、第2開口41は、第1開口31と対向し連通する。
【0018】
図2では、左側が車両500の前方であり、右側が車両500の後方である。上記のように、本実施形態では、触媒ユニット100は、車両500の底部に位置する。したがって、車両500が前進する場合には、触媒ユニット100は、前方(
図2において左側)から空気Aの流れを受ける。
【0019】
例えば、断熱材2は、軸線方向に垂直な断面のうち、第1開口31および第2開口41を通る断面では、触媒コンバータ1の周りに部分的に配置されてもよいし、または、触媒コンバータ1の周りに配置されなくてもよい。より具体的には、断熱材2は、触媒コンバータ1とハウジング3との間の隙間に、空気Aの流路Cが形成されるように配置される。言い換えると、断熱材2は、触媒コンバータ1とハウジング3との間の隙間に、前方の第1開口31と後方の第1開口31とを接続する流路Cが形成されるように配置される。
【0020】
断熱材2は、使用によってまたは時間経過によって劣化する。例えば、断熱材2の品質、量、厚さ、および、配置位置等の少なくとも1つの因子は、意図した時期に断熱材2が劣化するように調整されてもよい。このような構成によれば、意図された時期に、例えば、触媒コンバータ1が劣化し始める時期に、断熱材2が劣化し、排気ガスgからの熱を支持部5に伝達することができる。言い換えると、断熱材2の品質、量、厚さ、および、配置位置等の少なくとも1つの因子を調整することによって、後述する支持部5の変化を制御することができる。
【0021】
図1を参照して、ハウジング3は、触媒コンバータ1および断熱材2を収容する。本実施形態では、ハウジング3は、円筒形状を有する。ハウジング3の内面は、断熱材2の外面と接触する。例えば、ハウジング3は、遮熱特性を有する金属または樹脂等の材料により作成されてもよい。
【0022】
ハウジング3は、複数の第1開口31を含む。例えば、複数の第1開口31は、前方側に少なくとも1つの第1開口31と、後方側に少なくとも1つの第1開口31と、を含む。本実施形態では、ハウジング3は、前方側に8つの第1開口31と、後方側に8つの第1開口31と、を含む。なお、
図1では、前方側の8つの第1開口31のみが示される。また、本実施形態では、ハウジング3は、前方側および後方側に同じ数の第1開口31を含むが、他の実施形態では、前方側の第1開口31の数と後方側の第1開口31の数とは異なってもよい。
【0023】
図2を参照して、各第1開口31は、ハウジング3の壁を貫通し、ハウジング3の内部と外部とを互いに接続する。前方側の第1開口31と後方側の第1開口31との間には、断熱材2が配置されない領域、すなわち、空気Aの流路Cが形成される。なお、
図2では、前方側の第1開口31と後方側の第1開口31とが同一断面上に位置するが、他の実施形態では、空気Aの流路Cが形成される限りにおいて、前方側の第1開口31と後方側の第1開口31とは同一断面上に位置しなくてもよい。例えば、各第1開口31には、異物の侵入を防ぐための不図示のメッシュが設けられてもよい。
【0024】
シャッター4は、ハウジング3の外側に移動可能に配置される。本実施形態では、シャッター4は、円筒形状を有する。円筒形状のシャッター4およびハウジング3は、触媒コンバータ1に対して同心に配置されており、シャッター4は、ハウジング3周りに回転するように構成される。例えば、シャッター4は、遮熱特性を有する金属または樹脂等の材料により作成されてもよい。シャッター4の内面とハウジング3の外面との間には、シャッター4がハウジング3の外面に沿って移動可能なように、隙間が形成される。なお、ハウジング3およびシャッター4の間の隙間は、支持部5が配置可能な限りにおいて、
図2に示されるものよりも小さくてもよい。
【0025】
図1を参照して、ハウジング3は、シャッター4の移動をサポートするためのガイド32を含む。例えば、ガイド32は、ハウジング3の外面から突出する突起であってもよい。例えば、ガイド32は、円環形状を有する。ガイド32は、シャッター4の両端に配置される。例えば、ガイド32とシャッター4との間の少なくとも一方の接触面には、クリアランスを制御するための不図示のコーティングが施されていてもよい。例えば、コーティングによってシャッター4の振動および異物の混入を防止することができる。
【0026】
シャッター4は、複数の第2開口41を含む。複数の第2開口41は、第1位置P1において、第1開口31に径方向に対向する位置に形成される。したがって、複数の第2開口41は、前方側に少なくとも1つの第2開口41と、後方側に少なくとも1つの第2開口41と、を含む。本実施形態では、シャッター4は、前方側に8つの第2開口41と、後方側に8つの第2開口41と、を含む。なお、
図1では、前方側の8つの第2開口41のみが示される。また、本実施形態では、シャッター4は、前方側および後方側に同じ数の第2開口41を含むが、他の実施形態では、ハウジング3の第1開口31の数に応じて、前方側の第2開口41の数と後方側の第2開口41の数とは異なってもよい。
【0027】
図2を参照して、各第2開口41は、シャッター4の壁を貫通し、シャッター4の内部および外部、より具体的には、ハウジング3の内部およびシャッター4の外部を互いに接続する。第2開口41は、外部から空気Aをハウジング3の内部に取り込む。したがって、第1位置P1では、触媒コンバータ1は、空気Aによって冷却される。よって、第1位置P1では、触媒コンバータ1の過加熱が防止される。例えば、各第2開口41には、異物の侵入を防ぐための不図示のメッシュが設けられてもよい。
【0028】
シャッター4は、窓42と、蓋43と、を含む。窓42は、シャッター4の壁を貫通する。窓42は、シャッター4において、支持部5が外部から視認可能である位置に形成される。蓋43は、窓42を塞ぐように、シャッター4の外面に取り付けられる。
図1を参照して、蓋43は、例えばボルトB等の留め具によって、シャッター4の外面に取り外し可能に取り付けられる。
【0029】
シャッター4には、重り44が設けられる。重り44は、支持部5が変化したときに、シャッター4が第1位置P1から後述する第2位置P2(
図5参照)に移動するように構成される。
図2を参照して、例えば、重り44は、シャッター4の一部の厚みまたは材料を増すことによって形成されてもよい。代替的に、重り44は、シャッター4において重り44以外の箇所の厚みまたは材料を減らすことによって形成されてもよい。例えば、重り44は、シャッター4と一体的に形成されてもよい。他の実施形態では、重り44は、シャッター4とは別部材として形成されてもよく、例えば溶接または接着等によってシャッター4に取り付けられてもよい。
【0030】
本実施形態では、触媒ユニット100は、ストッパ6を備える。ストッパ6は、シャッター4が第1位置P1から移動するときに、シャッター4を第2位置P2において止める。例えば、ストッパ6は、第1の部分61と、第2の部分62と、を含む。第1の部分61は、ハウジング3に設けられる。例えば、第1の部分61は、ハウジング3の外面から径方向外側に突出する。第2の部分62は、シャッター4に設けられる。例えば、第2の部分62は、シャッター4の内面から径方向内側に突出する。第2の部分62は、第1位置P1では、円周方向において第1の部分61から離間し、第2位置P2では、第1の部分61と接触するように構成される(
図5参照)。
【0031】
図2を参照して、ハウジング3とシャッター4との間の隙間には、支持部5が配置される。支持部5は、ハウジング3に対してシャッター4を固定し、シャッター4を支持するように構成される。また、支持部5は、断熱材2が劣化した後に、排気ガスgから所定値より大きい熱負荷を経験すると、不可逆的に変化(例えば、断裂、延伸、変形または昇華)するように構成される。
【0032】
図3は、変化前の支持部5を示す概略的な平面図である。
図3および後述の
図4に示されるような支持部5の状態は、蓋43を取り外した後に、窓42を通して確認することができる。したがって、例えば、整備員は、窓42を通して支持部5の変化状況を確認することができ、触媒コンバータ1が受ける現在の熱負荷を推定することができる。
【0033】
図3を参照して、例えば、支持部5は、異なる耐熱性を有する複数の要素51,52,53,54,55を含んでもよい。本実施形態では、支持部5は、5つの要素51,52,53,54,55を含む。要素の数はこれに限定されず、支持部5は、5つ未満または5つより多い要素を含んでもよい。例えば、要素51,52,53,54,55は、互いに並列にシャッター4をハウジング3に接続してもよい。つまり、各要素51,52,53,54,55が、シャッター4をハウジング3に接続してもよい。
【0034】
例えば、耐熱性は、要素51,52,53,54,55の寸法および材料等の少なくとも1つの因子によって調整されてもよい。例えば、本実施形態では、要素51,52,53,54,55は、同じ材料で作成され、互いに異なる幅(すなわち、寸法)を有する。他の実施形態では、要素51,52,53,54,55は、異なる耐熱性を有する複数の材料で作成されてもよく、同じ寸法を有してもよい。
【0035】
例えば、要素51,52,53,54,55は、金属または樹脂によって作成されてもよい。例えば、要素51,52,53,54,55は、ハウジング3およびシャッター4の耐熱性よりも低い耐熱性を有する材料により作成されてもよい。具体的には、要素51,52,53,54,55は、銅や真鍮、グラスファイバーで作成されてもよい。耐熱性は、例えば、荷重たわみ温度、ビカット軟化温度、連続使用温度、ガラス転移点、および、融点等、材料に関する少なくとも1つの耐熱温度によって示されてもよい。例えば、要素51,52,53,54,55の耐熱温度は、300℃以上700℃以下であってもよい。
【0036】
本実施形態では、要素51,52,53,54,55は、排気ガスgの流れに沿って直列に配置される。例えば、要素51,52,53,54,55は、耐熱性が、真中の要素53から最も上流の位置の要素51に向かって減少し、かつ、真中の要素53から最も下流の位置の要素55に向かって減少するように、構成されてもよい。すなわち、真中の要素53が最も高い耐熱性を有し、両端の要素51,55が最も低い耐熱性を有してもよい。別の観点では、最も上流の位置に配置される要素51と、最も下流の位置に配置される要素55とが、互いに同じ耐熱性を有してもよい。本実施形態では、真中の要素53は、最も大きな幅を有し、最も高い耐熱性を有する。また、両端の要素51,55は、最も小さな幅を有し、最も低い耐熱性を有する。
【0037】
図4は、部分的な変化後の支持部5を示す概略的な平面図である。
図4を参照して、この状態では、支持部5は部分的に断裂しており、シャッター4は、ハウジング3にまだ固定されている。具体的には、この状態では、最も低い耐熱性を有する両端の要素51,55が断裂しており、他の要素52,53,54はまだ断裂していない。この状態では、支持部5が受ける熱負荷は、要素51,55が許容可能な熱負荷よりも大きく、要素52,54が許容可能な熱負荷よりは小さい。したがって、このような構成によれば、支持部5が受ける熱負荷を推定することが可能となる。また、複数の要素51,52,53,54,55のうち、最も上流の位置に配置される要素51は、最も高温に晒される可能性がある。したがって、
図4に示されるように、最も上流の位置に配置される要素51は、最も下流の位置に配置される要素55よりも大きく断裂する可能性がある。したがって、このような構成によれば、触媒ユニット100における温度分布を推定することが可能となる。
【0038】
続いて、触媒ユニット100の動作について説明する。
【0039】
図5は、支持部5が変形した後の
図1の触媒ユニット100を示す概略的な断面図である。本実施形態では、排気ガスgからの熱負荷によって全ての要素51,52,53,54,55が断裂すると、シャッター4は、重り44への重力によって回転する。シャッター4は、
図2に示される第1位置P1から回転し、
図5に示される第2位置P2において、ストッパ6の第1の部分61および第2の部分62の間の接触によって停止する。第2位置P2では、第2開口41は、第1開口31と対向せず、第2開口41と第1開口31との間の連通は遮断される、または、少なくとも低減される。したがって、空気Aは、第1開口31を介してハウジング3の内部に流入することができない、または、ハウジング3の内部に流入し難くなる。よって、第2位置P2では、触媒コンバータ1は、排気ガスgからの熱によって保温される。
【0040】
以上のような触媒ユニット100は、触媒コンバータ1と、触媒コンバータ1を収容し、第1開口31を含むハウジング3と、触媒コンバータ1とハウジング3との間の隙間に少なくとも部分的に配置される断熱材2と、ハウジング3の外側に配置され、外部から空気を取り込む第2開口41を有するシャッター4と、ハウジング3に対してシャッター4を接続し、シャッター4を支持する支持部5と、を備える。支持部5は、所定値より大きい熱負荷を経験すると不可逆的に変形する。シャッター4は、支持部5が変形する前は、支持部5によって第1位置P1に保持される。また、シャッター4は、支持部5が変形すると、第1位置P1から第2位置P2に移動する。第1位置P1では、第2開口41は、第1開口31と連通する。第2位置P2では、第2開口41と第1開口31との間の連通は遮断または低減される。このような構成によれば、触媒コンバータ1が長期に使用される前には、支持部5は熱負荷により変形せず、シャッター4は支持部5によって第1位置P1に保持される。第1位置P1では、第2開口41は第1開口31と連通する。したがって、外部から空気Aがハウジング3の内部に取り込まれ、触媒コンバータ1は空気Aによって冷却される。その後、触媒コンバータ1が長期に使用され、断熱材2が劣化すると、排気ガスgからの熱によって支持部5は断裂し、シャッター4は第2位置P2に移動する。第2位置P2では、第2開口41と第1開口31との間の連通は遮断または低減され、空気Aはハウジング3の内部に取り込まれない、または、取り込まれ難くなる。したがって、触媒コンバータ1は排気ガスgからの熱によって保温される。その結果、触媒ユニット100は、劣化状況に応じて、異なる温度環境を触媒コンバータ1に与えることができる。
【0041】
また、触媒ユニット100では、支持部5は、異なる耐熱性を有するように異なる寸法を有する複数の要素51,52,53,54,55を含む。このような構成によれば、要素51,52,53,54,55の変形状態を確認することによって、支持部5が受ける現在の熱負荷を推定することが可能となる。また、このような構成によれば、特定の要素の固有振動、腐食または化学的劣化等の望ましくない現象を抑制することができる。
【0042】
また、触媒ユニット100では、支持部5は、異なる耐熱性を有する複数の材料によって形成される複数の要素51,52,53,54,55を含んでもよい。この場合にも、要素51,52,53,54,55の変形状態を確認することによって、支持部5が受ける現在の熱負荷を推定することが可能となる。また、このような構成によれば、特定の要素の固有振動、腐食または化学的劣化等の望ましくない現象を抑制することができる。
【0043】
また、触媒ユニット100では、支持部5の耐熱性は、ハウジング3およびシャッター4の耐熱性よりも低い。このような構成によれば、ハウジング3およびシャッター4を過加熱することなく、支持部5を変形させることができる。
【0044】
続いて、他の実施形態について説明する。
【0045】
図6は、第2実施形態に係る触媒ユニット100Aを示す概略的な断面図である。触媒ユニット100Aは、シャッター4Aの形状において、第1実施形態に係る触媒ユニット100と異なる。その他の構成については、触媒ユニット100Aは、触媒ユニット100と同じであってもよい。
【0046】
本実施形態では、シャッター4Aは、半円筒形状を有する。具体的には、シャッター4Aは、第1実施形態に係るシャッター4と比べて、後側半分を含まない。したがって、第1位置P1では、シャッター4Aは、ハウジング3の前側を覆い、ハウジング3の後側を覆わない。
【0047】
図7は、支持部5が変形した後の
図6の触媒ユニット100Aを示す概略的な断面図である。本実施形態においもて、排気ガスgからの熱負荷によって支持部5が断裂すると、シャッター4は、重り44への重力によって回転する。シャッター4は、
図6に示される第1位置P1から回転し、
図7に示される第2位置P2において、ストッパ6の第1の部分61および第2の部分62の間の接触によって停止する。第2位置P2では、第2開口41は、前側の第1開口31と対向せず、第2開口41と第1開口31との間の連通は遮断される、または、少なくとも低減される。したがって、空気Aは、第1開口31を介してハウジング3の内部に流入することができない、または、ハウジング3の内部に流入し難くなる。よって、第2位置P2では、触媒コンバータ1は、排気ガスgからの熱によって保温される。
【0048】
このような触媒ユニット100Aは、第1実施形態に係る触媒ユニット100と同様な効果を奏する。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば、上記の実施形態では、支持部5は、所定値より大きい熱負荷を経験すると、不可逆的に断裂するように構成される。他の実施形態では、支持部5は、所定値より大きい熱負荷を経験すると、第2開口41が第1開口31と対向しない位置までシャッター4が移動するように、不可逆的に延伸または変形するように構成されてもよい。この場合、触媒ユニット100,100Aは、ストッパ6を備えなくてもよい。したがって、部品点数を低減することができる。また、支持部5が熱負荷に比例して延伸または変形する場合には、熱負荷に応じて、第2開口41と第1開口31との間の連通を減少させることができる。
【0051】
また、上記の実施形態では、要素51,52,53,54,55は、金属または樹脂で作成される。他の実施形態では、例えば、支持部5は、所定値より大きい熱負荷を経験すると昇華する接着剤等の材料であってもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、支持部5は、ハウジング3の外面とシャッター4の内面との間の隙間に配置される。他の実施形態では、支持部5は、別の場所に配置されてもよい。
図1を参照して、例えば、支持部5は、ガイド32とシャッター4の端面との間に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 触媒コンバータ
2 断熱材
3 ハウジング
4 シャッター
4A シャッター
5 支持部
31 第1開口
41 第2開口
51 要素
52 要素
53 要素
54 要素
55 要素
100 触媒ユニット
100A 触媒ユニット
A 空気
P1 第1位置
P2 第2位置