(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100101
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 15/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
F26B15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003842
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小牧 毅史
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AB06
3L113AC10
3L113AC31
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC48
3L113AC54
3L113AC67
3L113BA28
3L113CB06
3L113CB21
3L113DA21
(57)【要約】
【課題】樹脂フィルムから蒸発する溶剤による爆発をより好適に防止するための技術を提供する。
【解決手段】乾燥装置は、樹脂フィルム上の溶剤を乾燥させる。乾燥装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置され、ハウジング内の空間を第1空間と第2空間とに隔離する隔壁と、樹脂フィルムを第1空間内で搬送させる搬送装置と、第2空間内に配置され、搬送装置で搬送される樹脂フィルムに電磁波を照射する第1のヒータと、隔壁に配置され、第1のヒータから照射される電磁波を透過可能な窓と、を備えている。第1のヒータは、4.0μm未満の波長帯域の電磁波を樹脂フィルムに照射すると共に、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム上の溶剤を乾燥させる乾燥装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、前記ハウジング内の空間を第1空間と第2空間とに隔離する隔壁と、
前記樹脂フィルムを前記第1空間内で搬送させる搬送装置と、
前記第2空間内に配置され、前記搬送装置で搬送される前記樹脂フィルムに電磁波を照射する第1のヒータと、
前記隔壁に配置され、前記第1のヒータから照射される電磁波を透過可能な窓と、
を備えており、
前記第1のヒータは、4.0μm未満の波長帯域の電磁波を前記樹脂フィルムに照射すると共に、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収するように構成されている、乾燥装置。
【請求項2】
前記第1のヒータは、3.5μm以下の波長帯域の電磁波を前記樹脂フィルムに照射すると共に、3.5μm以上の波長帯域の電磁波を吸収するように構成されている、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記第1のヒータは、
前記樹脂フィルムが搬送される搬送方向と直交する方向に伸びる発熱体と、
前記発熱体の外周に配置され、前記発熱体を取り囲む第1の管と、
前記第1の管の外周に配置され、前記第2の管を取り囲む第2の管と、を備えており、
前記第1の管及び前記第2の管は、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収する材料で形成されている、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記第1のヒータは、4.0μm未満の波長帯域の赤外線エネルギーを80%以上含む電磁波を前記樹脂フィルムに照射する、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記第1のヒータは、可視光及び紫外線を含む電磁波を前記樹脂フィルムに照射する、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記窓は、前記隔壁に設けられる支持枠と、前記支持枠に支持されて前記第1のヒータから照射される電磁波を透過可能な透過体と、を備えており、
前記支持枠と前記透過体との間は、シール部材によってシールされている、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記第1空間と前記第2空間の少なくとも一方に雰囲気ガスを供給する給気装置と、
前記第1空間と前記第2空間の少なくとも一方から雰囲気ガスを排気する排気装置と、をさらに備えており、
前記給気装置と前記排気装置によって、前記第1空間が前記第2空間より陰圧にされている、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記第2空間に開口して前記窓に向かってガスを吹き付ける給気口をさらに備えている、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記ハウジングの下面に設けられ、前記ハウジングの下方から前記第1空間内の雰囲気ガスを排気する排気口をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記搬送方向に伸びており、内部に前記樹脂フィルムが搬送されるように構成される管状部材をさらに備えており、
前記隔壁は、前記管状部材の上面及び下面であり、
前記窓は、前記上面と前記下面の一方に少なくとも配置されており、
前記第1のヒータは、前記上面と前記下面の一方の近傍であって、前記上面と前記下面の一方に配置される前記窓に向かって電磁波を照射するように配置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項11】
前記窓は、前記上面と前記下面の他方にさらに設置されており、
前記上面と前記下面の他方の近傍であって、前記上面と前記下面の他方に配置される前記窓に向かって電磁波を照射するように配置されている第2のヒータをさらに備えており、
前記第2のヒータは、前記第1のヒータと同一構成を備えている、請求項10に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池のセパレータ等に使用される樹脂フィルムを製造する際に、樹脂フィルムの表面に溶剤を塗布することがある。この場合、樹脂フィルム上の溶剤を乾燥させる必要がある。例えば、特許文献1には、樹脂フィルム上の溶剤を乾燥させる乾燥装置が開示されている。特許文献1の乾燥装置は、樹脂フィルムを搬送する搬送装置と、搬送装置で搬送されている樹脂フィルムに遠赤外線を照射するヒータを備えている。
【0003】
ヒータから照射される遠赤外線によって樹脂フィルム上の溶剤を乾燥させる場合、ヒータからの熱によって樹脂フィルムの近傍が高温になることがある。樹脂フィルム上の溶剤として有機溶剤が用いられる場合に、樹脂フィルムの近傍が高温になると、樹脂フィルムから蒸発した溶剤により爆発する虞がある。特許文献1の乾燥装置には、蒸発した溶剤による爆発を防ぐために、ヒータが設置される加熱層と、樹脂フィルムが搬送される領域(防爆層)との間に、断熱層が設けられている。断熱層には、空気が流通されており、断熱層内を換気することによって、断熱層内が高温になることを抑制している。また、断熱層と防爆層との間には、遠赤外線を透過可能な窓が設置されており、ヒータから照射される遠赤外線は、断熱層を介して樹脂フィルムまで照射可能とされている。加熱層と防爆層との間に断熱層を設けることによって、ヒータから照射される遠赤外線を樹脂フィルムに照射しながら、樹脂フィルムが搬送される防爆層が高温になることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の乾燥装置では、加熱層と防爆層との間に断熱層を設けている。しかしながら、乾燥装置を作動し続けると、ヒータから照射される遠赤外線により断熱層内は徐々に高温となり、断熱層と防爆層との間に設置される窓も高温になることがある。窓が高温になると、窓を介して防爆層内も高温になる虞がある。
【0006】
本明細書は、樹脂フィルムから蒸発する溶剤による爆発をより好適に防止するための技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示する技術の第1の態様では、乾燥装置は、樹脂フィルム上の溶剤を乾燥させる。乾燥装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置され、ハウジング内の空間を第1空間と第2空間とに隔離する隔壁と、樹脂フィルムを第1空間内で搬送させる搬送装置と、第2空間内に配置され、搬送装置で搬送される樹脂フィルムに電磁波を照射する第1のヒータと、隔壁に配置され、第1のヒータから照射される電磁波を透過可能な窓と、を備えている。第1のヒータは、4.0μm未満の波長帯域の電磁波を樹脂フィルムに照射すると共に、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収するように構成されている。
【0008】
上記の乾燥装置では、第1のヒータは、樹脂フィルムに4.0μm未満の波長帯域の電磁波を照射する一方で、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収するように構成されている。4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収することにより、第1のヒータから照射される電磁波によってハウジング内(すなわち、第1空間及び第2空間)が高温になり難く、樹脂フィルムの近傍が高温になることが抑制される。このため、樹脂フィルムから蒸発する溶剤が高温になることを抑制することができ、樹脂フィルムから蒸発する溶剤による爆発を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る乾燥装置の概略構成を示す図。
【
図4】実施例2に係る乾燥装置の概略構成を示す図。
【
図5】実施例3に係る乾燥装置の概略構成を示す図。
【
図6】実施例4に係る乾燥装置の概略構成を示す図。
【
図7】管状部材、ヒータ及び樹脂フィルムを示す斜視図。
【
図8】実施例4に係る乾燥装置の他の一例の概略構成を示す図。
【0010】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0011】
本明細書に開示する技術の第2の態様では、上記の第1の態様において、第1のヒータは、3.5μm以下の波長帯域の電磁波を樹脂フィルムに照射すると共に、3.5μm以上の波長帯域の電磁波を吸収するように構成されていてもよい。
【0012】
本明細書に開示する技術の第3の態様では、上記の第1又は2の態様において、第1のヒータは、樹脂フィルムが搬送される搬送方向と直交する方向に伸びる発熱体と、発熱体の外周に配置され、発熱体を取り囲む第1の管と、第1の管の外周に配置され、第2の管を取り囲む第2の管と、を備えていてもよい。第1の管及び第2の管は、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収する材料で形成されていてもよい。このような構成によると、第1のヒータから、4.0μm以上の波長帯域の電磁波をほとんど照射せず、4.0μm未満の波長帯域の電磁波のみを好適に照射することができる。
【0013】
本明細書に開示する技術の第4の態様では、上記の第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、第1のヒータは、4.0μm未満の波長帯域の赤外線エネルギーを80%以上含む電磁波を樹脂フィルムに照射してもよい。このような構成によると、樹脂フィルムに4.0μm未満の波長帯域の電磁波を好適に照射することができる。
【0014】
本明細書に開示する技術の第5の態様では、上記の第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、第1のヒータは、可視光及び紫外線を含む電磁波を樹脂フィルムに照射してもよい。
【0015】
本明細書に開示する技術の第6の態様では、上記の第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、窓は、隔壁に設けられる支持枠と、支持枠に支持されて第1のヒータから照射される電磁波を透過可能な透過体と、を備えていてもよい。支持枠と透過体との間は、シール部材によってシールされていてもよい。このような構成によると、支持枠と透過体との間がシール部材によってシールされていることにより、樹脂フィルムから蒸発した溶剤がヒータの近傍に移動することを抑制することができる。第1のヒータの表面は高温になり難いものの、第1のヒータを長時間作動し続けると、第1のヒータの周囲は、樹脂フィルムの近傍と比較すると温度が高くなる。第1のヒータの周囲に樹脂フィルムから蒸発した溶剤が移動することを抑制することによって、乾燥装置内での爆発を防止することができる。
【0016】
本明細書に開示する技術の第7の態様では、上記の第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、乾燥装置は、第1空間と第2空間の少なくとも一方に雰囲気ガスを供給する給気装置と、第1空間と第2空間の少なくとも一方から雰囲気ガスを排気する排気装置と、をさらに備えていてもよい。給気装置と排気装置によって、第1空間が第2空間より陰圧にされていてもよい。このような構成よると、第1空間を第2空間より陰圧にすることによって、第1空間から第2空間にガスが移動し難くなる。このため、第1空間内を搬送される樹脂フィルムから蒸発した溶剤を、第2空間内に設置される第1のヒータの近傍に移動し難くすることができる。
【0017】
本明細書に開示する技術の第8の態様では、上記の第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、乾燥装置は、第2空間に開口して窓に向かってガスを吹き付ける給気口をさらに備えていてもよい。窓の第2空間側の表面には、第1のヒータから電磁波が直接照射され続けるため、窓の第2空間側の表面は高温になる虞がある。窓の第2空間側の表面にガスを吹き付けることによって、窓の表面温度を下げることができ、窓が高温になることによって窓を介して樹脂フィルム側の第1空間が高温になることを抑制することができる。
【0018】
本明細書に開示する技術の第9の態様では、上記の第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、乾燥装置は、ハウジングの下面に設けられ、ハウジングの下方から第1空間内の雰囲気ガスを排気する排気口をさらに備えていてもよい。このような構成によると、第1空間内のガスを下方から排気できる。樹脂フィルム上の溶剤は、蒸発すると空気より重いことが多い。第1空間内のガスを下方から排気することによって、樹脂フィルムから蒸発した溶剤をハウジング内から排気し易くなる。
【0019】
本明細書に開示する技術の第10の態様では、上記の第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、乾燥装置は、搬送方向に伸びており、内部に前記樹脂フィルムが搬送されるように構成される管状部材をさらに備えていてもよい。隔壁は、管状部材の上面及び下面であってもよい。窓は、上面と下面の一方に少なくとも配置されていてもよい。第1のヒータは、上面と下面の一方の近傍であって、上面と下面の一方に配置される窓に向かって電磁波を照射するように配置されていてもよい。このような構成であっても、第1空間と第2空間との間でガスが移動することを防止することができ、樹脂フィルムから蒸発した溶剤がヒータの近傍に移動することを抑制することができる。
【0020】
本明細書に開示する技術の第11の態様では、上記の第10の態様において、窓は、上面と下面の他方にさらに設置されていてもよい。乾燥装置は、上面と下面の他方の近傍であって、上面と下面の他方に配置される窓に向かって電磁波を照射するように配置されている第2のヒータをさらに備えていてもよい。第2のヒータは、第1のヒータと同一構成を備えていてもよい。このような構成によると、第1空間内で搬送される樹脂フィルムの両面に電磁波を照射することができる。このため、より効率良く樹脂フィルムを乾燥させることができる。
【実施例0021】
(実施例1)
図面を参照して、乾燥装置10について説明する。乾燥装置10は、樹脂フィルム2の表面に塗布された溶剤を乾燥するために用いられる。本実施例では、樹脂フィルム2は、リチウムイオン電池のセパレータに使用されるポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムである。
図1に示すように、乾燥装置10は、炉体12と、搬送装置20と、ヒータ40と、給気装置60と、排気装置62と、給気ノズル64を備えている。
【0022】
炉体12は、略直方体形状であり、内部に隔壁14が配置されている。炉体12及び隔壁14は、例えばアルミ合金、ステンレス等の非鉄金属によって形成されている。なお、炉体12の内表面は、ヒータ40から照射される電磁波(後に詳述)の反射率を向上させるために、研磨加工を施してもよい。隔壁14は、炉体12の上面及び下面と略平行に配置されており、炉体12内の空間を下方と上方の2つの空間に分割している。以下では、隔壁14より下方の空間を第1空間16と称し、隔壁14より上方の空間を第2空間18と称する。
【0023】
搬送装置20は、第1空間16内で樹脂フィルム2を搬送する。搬送装置20は、送出ローラ22と、送出ガイドローラ24と、巻取ローラ26と、巻取ガイドローラ28を備えている。
【0024】
送出ローラ22は、処理前(詳細には、溶剤が塗布される前)の樹脂フィルム2が巻き付けられている。樹脂フィルム2は、送出ローラ22から供給され、送出ガイドローラ24及び巻取ガイドローラ28を介して、巻取ローラ26に巻き取られる。送出ローラ22及び巻取ローラ26は、図示しないモータによって回転する。送出ローラ22及び巻取ローラ26が回転することによって、樹脂フィルム2は搬送される。なお、巻取ローラ26のみがモータによって回転してもよい。
【0025】
送出ローラ22及び送出ガイドローラ24は、樹脂フィルム2の搬送方向の上流側(
図1では-X方向)に配置されている。送出ローラ22及び送出ガイドローラ24は、炉体12の外部に配置されている。炉体12の送出ローラ22側の面(
図1では-X方向の面)には、貫通孔12aが設けられている。貫通孔12aにより、炉体12の外部と第1空間16とが連通している。送出ローラ22から供給された樹脂フィルム2は、送出ガイドローラ24によって送り出され、貫通孔12aを介して炉体12の外部から内部(詳細には、第1空間16)に搬送される。
【0026】
また、送出ガイドローラ24の近傍には、溶剤塗布部30が設置されている。溶剤塗布部30は、送出ガイドローラ24で送り出される樹脂フィルム2の表面(
図1では、樹脂フィルム2の上面)に溶剤を塗布する。したがって、樹脂フィルム2の搬送方向の上流側(
図1では-X方向)では、送出ローラ22から処理前の樹脂フィルム2が供給され、溶剤塗布部30によって樹脂フィルム2の表面に溶剤が塗布され、表面に溶剤が塗布された樹脂フィルム2は、送出ガイドローラ24によって貫通孔12aを介して第1空間16内に送り出される。溶剤が塗布された樹脂フィルム2は、貫通孔12aから第1空間16内に搬入され、第1空間16を搬送される。
【0027】
巻取ローラ26及び巻取ガイドローラ28は、樹脂フィルム2の搬送方向の下流側(
図1では+X方向)に配置されている。巻取ローラ26及び巻取ガイドローラ28は、炉体12の外部に配置されている。炉体12の巻取ローラ26側の面(
図1では+X方向の面)には、貫通孔12b設けられている。貫通孔12bにより、第1空間16と炉体12の外部とが連通している。貫通孔12bを介して炉体12の内部(詳細には、第1空間16)から外部に送り出された樹脂フィルム2は、巻取ガイドローラ28を介して巻取ローラ26に送られ、巻取ローラ26に巻き取られる。
【0028】
樹脂フィルム2は、送出ローラ22から供給され、溶剤塗布部30でその表面に溶剤が塗布された後、乾燥装置10内を搬送される。乾燥装置10内を搬送される間に、樹脂フィルム2の表面に塗布された溶剤は、ヒータ40から照射される電磁波(後に詳述)によって乾燥される。表面に塗布された溶剤が乾燥した状態となった樹脂フィルム2は、巻取ガイドローラ28を介して巻取ローラ26に巻き取られる。
【0029】
ヒータ40は、第2空間18内に設置されている。ヒータ40は、円筒状であり、樹脂フィルム2の搬送方向と直交する方向(
図1ではY方向)に伸びている。第2空間18内には、複数のヒータ40が樹脂フィルム2の搬送方向(
図1ではX方向)に間隔を空けて配置されている。
【0030】
図2に示すように、ヒータ40は、発熱体42と、内管44と、外管46を備えている。発熱体42は、通電加熱により電磁波を照射する。
【0031】
内管44は、発熱体42の外周を覆っている。内管44は、4.0μm未満の波長帯域の電磁波を透過し、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収する材料で形成されている。本実施例では、内管44は、石英で形成されている。発熱体42から照射された電磁波のうち、4.0μm未満の波長帯域の電磁波は内管44を透過し、4.0μm以上の波長帯域の電磁波は内管44に吸収されほとんど透過しない。一方で、4.0μm以上の波長帯域の電磁波が内管44に吸収されることにより、内管44は加熱される。内管44が4.0μm以上の波長帯域の電磁波により加熱されると、内管44自体が4.0μm以上の波長帯域の電磁波の放射体となり、内管44から4.0μm以上の波長帯域の電磁波が二次輻射する。
【0032】
外管46は、内管44の外周を覆っている。外管46も、4.0μm未満の波長帯域の電磁波を透過し、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収する材料で形成されており、本実施例では、外管46も、石英で形成されている。外管46と内管44との間の空間48には、冷却用流体(例えば、冷却ガス)が流されている。
【0033】
内管44が4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収して加熱されると、内管44から4.0μm以上の波長帯域の電磁波が二次輻射する。内管44から二次輻射された4.0μm以上の波長帯域の電磁波は、内管44と外管46との間に放射される。外管46と内管44との間の空間48に冷却用流体を流すことにより、内管44及び外管46を冷却することができ、内管44及び外管46の温度が上昇することを抑制することができる。また、外管46は、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収するため、内管44と外管46との間に放射された4.0μm以上の波長帯域の電磁波が外管46まで到達しても、外管46によって吸収される。このため、4.0μm以上の波長帯域の電磁波は、外管46の外部(すなわち、ヒータ40の外部)に照射されない。したがって、ヒータ40からは、4.0μm未満の波長帯域の電磁波が照射され、4.0μm以上の波長帯域の電磁波はほとんど照射されない。
【0034】
本実施例では、内管44及び外管46は、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を吸収するローパスフィルタの機能を有している。すなわち、ヒータ40から照射される電磁波(すなわち、ヒータ40の最外周に位置する外管46の外部まで透過される電磁波)は、ほとんどが4.0μm未満の波長帯域の電磁波であり、さらにそのうちのほとんどが3.5μm未満の波長帯域の電磁波である。具体的には、ヒータ40から照射される電磁波は、80%以上が4.0μm未満の波長帯域の赤外線エネルギーであり、20%以下が4.0μm以上の波長帯域の赤外線エネルギーである。なお、ヒータ40から照射される電磁波は、ほとんどが4.0μm未満の波長帯域の電磁波であるが、可視光や紫外線も含んでいてもよい。
【0035】
本実施例では、ヒータ40から照射される電磁波のほとんどが4.0μm未満の波長帯域の電磁波であるため、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を遮断しないヒータと比較して、ヒータ40の外表面が高温になり難い。具体的には、4.0μm以上の波長帯域の電磁波を遮断しないヒータでは、表面温度が200度を超える一方で、本実施例のヒータ40の表面温度は、200度以下に抑えられる。このため、ヒータ40が設置される第2空間18が高温になることを抑制することができる。
【0036】
また、本実施例では、ヒータ40から4.0μm未満の波長帯域の電磁波が照射されるため、4.0μm未満の波長帯域の電磁波を吸収し易い官能基を含む物質(例えば、O-H基、N-H基、C-H基等)を効率良く蒸発させることができる。樹脂フィルム2に塗布される溶剤には、4.0μm未満の波長帯域の電磁波を吸収し易い官能基を含む物質が用いられることが多い。ヒータ40から4.0μm未満の波長帯域の電磁波を照射することによって、樹脂フィルム2に塗布された溶剤を効率良く蒸発させることができる。なお、ヒータ40から照射される電磁波のほとんどは4.0μm未満の波長帯域であるため、以下では、ヒータ40から照射される電磁波は、単に「4.0μm未満の波長帯域の電磁波」ともいう。
【0037】
ここで、第1空間16と第2空間18とを隔離する隔壁14について説明する。
図1に示すように、隔壁14は、第1空間16と第2空間18との間に配置されている。隔壁14には、複数の窓50が設けられている。窓50は、樹脂フィルム2の搬送方向に沿って複数設けられており、各窓50の近傍にはヒータ40が設置されている。窓50は、第2空間18に設置されるヒータ40から照射される電磁波を、第1空間16内を搬送される樹脂フィルム2に照射するために設けられている。具体的には、隔壁14には、各ヒータ40に沿って複数の貫通孔14aが設けられており、窓50は、貫通孔14aに設置されている。
【0038】
図3に示すように、窓50は、支持枠52と、ガラス板54と、シール部材56を備えている。支持枠52は、貫通孔14aに設けられている。支持枠52は、例えばアルミ合金、ステンレス等の非鉄金属で形成されており、ガラス板54を支持している。ガラス板54は、ヒータ40から照射される電磁波を透過可能であり、ヒータ40から照射された電磁波を第2空間18から第1空間16に透過する。上述したように、ヒータ40は、4.0μm未満の波長帯域の電磁波を照射するため、ガラス板54を透過して第1空間16に照射される電磁波は、4.0μm未満の波長帯域の電磁波である。また、炉体12及び隔壁14は、非鉄金属で形成されているため、ヒータ40から照射される電磁波を透過しない。このため、ガラス板54のみを介して、第1空間16に電磁波が照射される。ガラス板54を透過した4.0μm未満の波長帯域の電磁波は、第1空間16内を搬送される樹脂フィルム2に照射される。これにより、樹脂フィルム2に塗布された溶剤が蒸発する。なお、本実施例では、ガラス板54を用いていたが、例えば、例えば石英、アルミナ、サファイア等のO-H基をほとんど含まない無機材料で形成された板であれば、ガラス板でなくてもよい。O-H基をほとんど含まない無機材料で形成された板を用いることにより、4.0μm未満の波長帯域の電磁波を透過することができる。
【0039】
シール部材56は、支持枠52とガラス板54との間に配置され、支持枠52とガラス板54との間をシールしている。シール部材56で支持枠52とガラス板54との間をシールすることにより、第1空間16と第2空間18との間でガスが移動することを防止することできる。第1空間16では樹脂フィルム2に塗布された溶剤が蒸発するため、第1空間16内のガスには、蒸発した溶剤が含まれる。溶剤として有機溶剤を使用することもあり、溶剤が蒸発したガスは、高温になると爆発する虞がある。第2空間18にはヒータ40が設置されている。本実施例のヒータ40は4.0μm未満の波長帯域の電磁波を照射するため、ヒータ40の表面温度は高温になり難いが、ヒータ40を作動し続けると、ヒータ40が設置される第2空間18は、ヒータ40が設置されない第1空間16と比較すると高温になる。支持枠52とガラス板54との間をシール部材56でシールすることによって、第1空間16内の溶剤が蒸発したガスが第2空間18に移動することを防止することができる。このため、溶剤が蒸発したガスが、第2空間18内でヒータ40によって高温になり爆発することを防止することができる。
【0040】
図1に示すように、給気装置60は、第1空間16内に雰囲気ガスを供給するように構成されている。具体的には、給気装置60の給気口60aは、樹脂フィルム2の搬送方向の下流側(
図1では+X方向側)に設けられており、給気装置60は、樹脂フィルム2の搬送方向の下流側に雰囲気ガスを供給する。本実施例では、給気装置60は、炉体12の上面から雰囲気ガスを供給し、炉体12の樹脂フィルム2の搬送方向の下流側の面(
図1では+X方向の面)に沿って設けられた供給流路61を通り、給気口60aから第1空間16内に供給される。
【0041】
排気装置70は、炉体12の内部から雰囲気ガスを排気するように構成されている。排気装置70は、第1排気流路72と、第2排気流路74を備えている。
【0042】
第1排気流路72は、第1空間16から炉体12の外部に雰囲気ガスを排気するように構成されている。具体的には、第1排気流路72の一端に設けられた排気口72aは、第1空間16に開口しており、樹脂フィルム2の搬送方向の上流側(
図1では-X方向側)に設けられている。第1空間16内の雰囲気ガスは、樹脂フィルム2の搬送方向の上流側の排気口72aから第1排気流路72内に排出される。第1排気流路72は、炉体12の樹脂フィルム2の搬送方向の上流側の面(
図1では-X方向の面)に沿って設けられており、炉体12の上面を通って炉体12の外部にまで伸びている。したがって、第1空間16内の雰囲気ガスは、第1空間16から排気口72aを通って第1排気流路72に排気され、第1排気流路72を通って、炉体12の上面から炉体12の外部に排出される。第1排気流路72から排気される雰囲気ガスの排気量は、給気装置60から供給される雰囲気ガスの供給量より多くなるように調整されている。すなわち、貫通孔12a、12bを介して外部の空気が第1空間16に流入するようになっている。
【0043】
第2排気流路74は、第2空間18から炉体12の外部に雰囲気ガスを排気するように構成されている。具体的には、第2排気流路74の排気口74aは、炉体12の上面に設けられており、炉体12の上部から第2空間18内の雰囲気ガスを炉体12の外部に排気する。第2排気流路74の排気口74aとは反対側の端部は、炉体12の上方で第1排気流路72と接続している。第2空間18内の雰囲気ガスは、第2空間18から排気口74aを通って第2排気流路74に排気され、第1空間16から第1排気流路72を介して排気された雰囲気ガスと合流する。
【0044】
給気装置60は第1空間16に雰囲気ガスを供給し、排気装置70は第1空間16から雰囲気ガスを排出する。これにより、第1空間16内に、給気装置60と排気装置70による雰囲気ガスの流れが生成される。また、給気装置60は、樹脂フィルム2の搬送方向の下流側に雰囲気ガスを供給し、排気装置70は、樹脂フィルム2の搬送方向の上流側から雰囲気ガスを排気する。これにより、第1空間16内の雰囲気ガスは、樹脂フィルム2の搬送方向とは反対方向に流れる。第1空間16内では、樹脂フィルム2から溶剤が蒸発する。樹脂フィルム2の搬送方向の上流側では、樹脂フィルム2の表面に多くの溶剤が残っているため、樹脂フィルム2の搬送方向の下流側より上流側のほうが、樹脂フィルム2の表面から蒸発した溶剤の濃度が高くなり易い。第1空間16内の雰囲気ガスを樹脂フィルム2の搬送方向とは反対方向に流すことによって、樹脂フィルム2の搬送方向の下流側に高濃度の溶剤を含むガスが移動することを抑制することができる。このため、既に多くの溶剤が蒸発して乾燥している下流側の樹脂フィルム2に、高濃度の溶剤を含むガスが接触することを抑制することができる。
【0045】
また、排気装置70から排気される雰囲気ガスの排気量は、給気装置60から供給される雰囲気ガスの供給量より多くされている。これにより、第1空間16内は陰圧になる。すなわち、第1空間16は、第2空間18より陰圧になる。第1空間16を第2空間18より陰圧にすることによって、第1空間16から第2空間18にガスが移動し難くなる。上述したように、第1空間16と第2空間18との間は、窓50に設けられるシール部材56によって隔離されているため、第1空間16と第2空間18との間は、通常はガスが移動しない。しかしながら、例えば、シール部材56の劣化やガラス板54の破損等により、第1空間16と第2空間18との間でガスが物理的に移動可能な状態になる可能性がある。第1空間16を第2空間18より陰圧にすることによって、第1空間16と第2空間18との間でガスが移動可能な状態になった場合であっても、第1空間16から第2空間18に向かってガスを移動し難くなる。これにより、第1空間16で溶剤が蒸発したガスが、ヒータ40が設置される第2空間18に移動することをより確実に防止することができる。
【0046】
給気ノズル64は、第2空間18に設置されている。給気ノズル64は、各窓50の近傍に設置されている。給気ノズル64の給気口64aは、ガラス板54の表面(具体的には、第2空間18側の表面)に向かって開口しており、給気ノズル64は、ガラス板54の表面に雰囲気ガスを吹き付ける。本実施例では、給気ノズル64は、ガラス板54の+X方向側(樹脂フィルム2の搬送方向の下流側)の端部近傍に設置され、樹脂フィルム2の搬送方向の下流側から上流側に向かって雰囲気ガスを吹き出す。
【0047】
乾燥装置10が作動している間、ガラス板54にはヒータ40から照射される電磁波が照射され続ける。このため、ガラス板54のヒータ40側の表面(すなわち、第2空間18側の表面)は、高温になることがある。ガラス板54の第2空間18側の表面が高温になると、ガラス板54全体が高温になり、ガラス板54を介して第1空間16が高温になる虞がある。給気ノズル64からガラス板54の第2空間18側の表面に雰囲気ガスを吹き付けることにより、高温になり易いガラス板54の第2空間18側の表面の温度を下げることができる。これにより、ガラス板54が高温になることを防止することができ、ガラス板54を介して第1空間16が高温になることを防止することができる。
【0048】
(実施例2)
上記の実施例1では、乾燥装置10は、上方から雰囲気ガスを排気する排気装置70を備えていたが、このような構成に限定されない。例えば、
図4に示すように、乾燥装置110は、上方から雰囲気ガスを排気する排気装置70に加え、下方から雰囲気ガスを排気する排気装置170をさらに備えていてもよい。なお、本実施例の乾燥装置110は、上記の実施例1の乾燥装置10に排気装置170が追加されており、その他の構成は、上記の実施例1の乾燥装置10と略同一である。このため、以下では、排気装置170について説明する。また、本実施例の乾燥装置110は、2つの排気装置70、170を備えているため、以下では、排気装置70を「第1排気装置70」と称し、排気装置170を「第2排気装置170」と称することがある。
【0049】
第2排気装置170は、炉体12の下方に配置されている。本実施例では、炉体112の下面に、排気口172が設けられている。第2排気装置170は、第1空間16内の雰囲気ガスを排気口172から炉体112の外部に排気するように構成されている。また、本実施例では、炉体112の下面(詳細には、下面の内表面)は、排気口172が最も下方に位置するように傾斜している。第1空間16には、樹脂フィルム2から蒸発したガスが含まれている。樹脂フィルム2から蒸発したガスは、一般的に空気より重いため、第1空間16の下方に移動する。炉体12の下面が排気口172に向かって傾斜していることによって、樹脂フィルム2から蒸発したガスが排気口172に向かって移動し易くなり、樹脂フィルム2から蒸発したガスを排気口172から排気し易くすることができる。また、樹脂フィルム2から蒸発したガス(溶剤)が再び液化した場合にも、液化した溶剤が排気口172に向かって移動し易くなり、液化した溶剤が炉体112内に堆積することを抑制することができる。
【0050】
(実施例3)
上記の実施例1及び2では、炉体12の外部に設置されたローラ22、24、26、28で樹脂フィルム2を搬送していたが、このような構成に限定されない。例えば、炉体12の内部に設置された搬送部材で、樹脂フィルム2を支持しながら搬送してもよい。
【0051】
図5に示すように、乾燥装置210は、搬送装置(222、224)を備えている。なお、本実施例の乾燥装置210は、搬送装置20の代わりに搬送装置(222、224)を備えている点が、上記の実施例1の乾燥装置10と相違しており、その他の構成は略同一である。このため、以下では、搬送装置(222、224)について説明する。
【0052】
搬送装置(222、224)は、複数の搬送ローラ222と、駆動装置224を備えている。複数の搬送ローラ222は、炉体12の第1空間16内に配置されている。複数の搬送ローラ222は、全てが同じ直径を有しており、搬送方向(
図5のX方向)に一定のピッチで等間隔に配置されている。搬送ローラ222は、その軸線回りに回転可能に支持されており、駆動装置224の駆動力が伝達されることによって回転する。駆動装置224は、搬送ローラ222を駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。樹脂フィルム2は、搬送ローラ222上に載置され、搬送ローラ222によって第1空間16内を搬送される。このため、第1空間16内で樹脂フィルム2を支持しながら搬送することができる。なお、本実施例では、乾燥装置210は、第1排気装置70のみを備えているが、第1排気装置70と第2排気装置170の両方を備えていてもよい。
【0053】
また、本実施例では、搬送ローラ222で樹脂フィルムを支持しながら搬送したが、このような構成に限定されない。例えば、搬送ローラ222の代わりに、第1空間16内に配置されたベルトを用いて樹脂フィルム2を搬送してもよい。ベルトを用いて樹脂フィルム2を搬送した場合であっても、第1空間16内で樹脂フィルム2を支持しながら搬送することができる。
【0054】
(実施例4)
上記の実施例1~3では、炉体12の中央に固定されていた隔壁14によって第1空間16と第2空間18が分離されていたが、このような構成に限定されない。例えば、
図6に示すように、炉体312内に管状部材80を設置することによって第1空間316と第2空間318を分離してもよい。本実施例の乾燥装置310は、管状部材80で第1空間316と第2空間318を分離している点が、上記の実施例1の乾燥装置10と相違しており、その他の構成は略同一である。このため、以下では、管状部材80の構成について説明する。
【0055】
図6及び
図7に示すように管状部材80は、両端が開口した略直方体状であり、その軸線が搬送方向(
図6のX方向)に伸びている。管状部材80は、搬送方向の入口側と出口側が開口している。管状部材80の入口側と出口側の開口部には、フランジ82が設けられている。炉体312内には、複数の管状部材80が、搬送方向に連続して連結されており、隣接する管状部材80のフランジ82間は、シールされている。
【0056】
管状部材80は、上面にガラス板154aが嵌め込まれており、下面にガラス板154bが嵌め込まれている。具体的には、管状部材80の上面及び下面には、支持枠(図示省略)が形成されており、支持枠によってガラス板154a、154bが支持されている。また、支持枠とガラス板154a、154bとの間は、シール部材(図示省略)によってシールされている。
【0057】
管状部材80の上面の近傍と下面の近傍には、ヒータ40と給気ノズル64が設置されている。なお、
図7では図面を見易くするために、給気ノズル64と下面側のガラス板154bの図示は省略されている。ヒータ40は、搬送方向と直交する方向に伸びている。炉体312内には、複数のヒータ40が、搬送方向に間隔を空けて設置されている。本実施例では、1つのガラス板154aの近傍に2つのヒータ40が設置されている。なお、1つのガラス板154aの近傍に設置するヒータ40の数は特に限定されない。また、ヒータ40及び給気ノズル64は、上記の実施例1のヒータ40及び給気ノズル64と同一の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0058】
本実施例では、管状部材80の上面の近傍と下面の近傍の両方に、ヒータ40が設置されている。このため、管状部材80内の第1空間316には、上方から電磁波が照射されると共に、下方からも電磁波が照射される。すなわち、管状部材80内の第1空間316を搬送される樹脂フィルム2には、上方から電磁波が照射されると共に、下方からも電磁波が照射される。このため、より短い時間で樹脂フィルム2に塗布された溶剤を蒸発させることができ、炉体312の搬送方向の長さを短くすることができる。
【0059】
また、本実施例では、支持枠とガラス板154a、154bとの間をシールすることによって、管状部材80内の第1空間316と、炉体312内かつ管状部材80外の第2空間318との間でガスが移動することを防止することができる。また、隣接する2つの管状部材80のフランジ82間もシールされている。このため、隣接する管状部材80の間から、第1空間316と第2空間318との間でガスが移動することも防止される。管状部材80内の第1空間316では、樹脂フィルム2が搬送され、管状部材80外の第2空間318には、ヒータ40が設置されている。第1空間316と第2空間318との間でガスが移動することが防止されていることにより、第1空間316内で溶剤が蒸発したガスが第2空間318に移動することを防止することができる。
【0060】
本実施例の乾燥装置310は、管状部材80を用いて、樹脂フィルム2が搬送される第1空間316と、ヒータ40が設置される第2空間318を分離している。樹脂フィルム2から蒸発した溶剤は、第1空間316内の下方に移動し、再び液化することがある。樹脂フィルム2を管状部材80内で搬送することによって、炉体312の底面に液化した溶剤が堆積することを回避することができる。また、管状部材80で第1空間316を形成することによって、第1空間316の搬送方向に直交する方向の断面積を小さくすることができる。これにより、第1空間316を陰圧に制御し易くなる。また、1空間316の搬送方向に直交する方向の断面積を小さくすることによって、給気装置60と排気装置70により生成される雰囲気ガスの流速を速くすることができる。これにより、第1空間316内のガスを排気し易くなり、樹脂フィルム2から蒸発した溶剤を排気し易くすることできる。
【0061】
なお、本実施例では、管状部材80の上方と下方の両方にヒータ40が設置されていたが、このような構成に限定されない。例えば、
図8に示すように、管状部材80の上方のみにヒータ40が設置されており、管状部材80の下方にはヒータ40が設置されていなくてもよい。
図8の乾燥装置410は、管状部材80の下方にはヒータ40が設置されていない点のみが、
図7の乾燥装置310と相違しており、その他の構成は略同一である。乾燥装置410においても、炉体312の底面に液化した溶剤が堆積することを回避できると共に、第1空間316を陰圧にしたり、樹脂フィルム2から蒸発した溶剤を排気したりし易くできる。あるいは、
図8に示す実施例とは異なり、管状部材80の下方のみにヒータが設置され、管状部材80の上方にはヒータが設置されていなくてもよい。
【0062】
実施例で説明した乾燥装置10に関する留意点を述べる。実施例の炉体12は、「ハウジング」の一例であり、内管44は、「第1の管」の一例であり、外管46は、「第2の管」の一例であり、ガラス板54は、「透過体」の一例であり、給気ノズル64の給気口64aは、「給気口」の一例であり、排気口172は、「排気口」の一例である。
【0063】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。