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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100102
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 15/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
F26B15/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003843
(22)【出願日】2023-01-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】青木 道郎
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AB06
3L113AC10
3L113AC31
3L113AC54
3L113AC67
3L113BA28
3L113CB06
3L113CB21
3L113DA02
(57)【要約】
【課題】ヒータの出力を低減することができる技術を開示する。
【解決手段】乾燥装置は、入口と出口とを備えており、入口から出口に向けてフィルムが走行する乾燥空間を内部に画定する本体と、乾燥空間内において、乾燥空間内を走行するフィルムの表面と対向して配置されるヒータであって、内管と外管とを備えており、内管と外管との間を流体が流れることにより外管の表面温度が200度以下に設定され、外管から電磁波を放射するヒータと、ヒータを少なくとも部分的に覆っており、ヒータの外管から放射される電磁波の少なくとも一部を、乾燥空間内を走行するフィルムに向けて反射する反射体と、を備えている。ヒータは、所定の波長未満の波長帯域の電磁波をフィルムに放射すると共に、所定の波長以上の波長帯域の電磁波を吸収するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの溶媒を乾燥する乾燥装置であって、
入口と出口とを備えており、前記入口から前記出口に向けて前記フィルムが走行する乾燥空間を内部に画定する本体と、
前記乾燥空間内において、前記乾燥空間内を走行する前記フィルムの表面と対向して配置されるヒータであって、内管と外管とを備えており、前記内管と前記外管との間を流体が流れることにより前記外管の表面温度が200度以下に設定され、前記外管から電磁波を放射するヒータと、
前記ヒータを少なくとも部分的に覆っており、前記ヒータの前記外管から放射される前記電磁波の少なくとも一部を、前記乾燥空間内を走行する前記フィルムに向けて反射する反射体と、を備えており、
前記ヒータは、所定の波長未満の波長帯域の前記電磁波を前記フィルムに放射すると共に、前記所定の波長以上の波長帯域の前記電磁波を吸収するように構成されている、乾燥装置。
【請求項2】
前記反射体は、前記ヒータに対して、前記乾燥空間内を走行する前記フィルムと反対側に配置される第1反射部を備えている、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記反射体は、前記第1反射部の前記ヒータ側の表面に設けられた金属コート層をさらに備えており、
前記電磁波に対する前記金属コート層の反射率は、前記電磁波に対する前記第1反射部の反射率よりも高い、請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記反射体は、前記ヒータと、前記乾燥空間内を走行する前記フィルムの表面との間に、前記電磁波が通過する通過空間を画定しており、前記フィルムの走行方向に直交する前記フィルムの幅方向に離れている2個の反射側部を備えており、
前記フィルムは、前記フィルムの前記幅方向に関して、前記2個の反射側部の間に位置する、請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記電磁波を透過可能であり、前記通過空間に配置されている仕切体をさらに備えており、
前記仕切体は、前記通過空間を、前記仕切体に対して前記ヒータ側に配置されるヒータ側空間と、前記仕切体に対して前記フィルム側に配置されるフィルム側空間とに分ける、請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記電磁波に対する前記反射体の反射率は、0.7以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記電磁波に対する前記反射体の反射率は、0.9以上である、請求項6に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記ヒータは、4.0マイクロメートル未満の波長帯域の前記電磁波を放射すると共に、4.0マイクロメートル以上の波長帯域の前記電磁波を吸収するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記ヒータは、4.0マイクロメートル未満の波長帯域の電磁波を80%以上含む前記電磁波を前記フィルムに放射する、請求項8に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記ヒータから放射される前記電磁波の放射強度は、4.0マイクロメートルよりも小さい基準波長で最大となり、
4.0マイクロメートルの前記電磁波の前記放射強度は、前記基準波長の前記電磁波の前記放射強度の10%未満である、請求項8に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、フィルムの溶媒を乾燥する乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乾燥装置が開示されている。この乾燥装置は、フィルムが走行する乾燥空間を内部に画定する本体と、乾燥空間内において、所定の波長未満の波長帯域の赤外線を放射することによりフィルムを加熱するヒータと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5842220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の乾燥装置では、ヒータから放射された赤外線は、フィルムだけでなく、本体の炉壁等にも照射される。このため、炉壁等に照射される赤外線を考慮して、ヒータの出力を高く設定する必要があった。
【0005】
本明細書は、ヒータの出力を低減することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する技術の第1の態様では、乾燥装置は、フィルムの溶媒を乾燥する。乾燥装置は、入口と出口とを備えており、入口から出口に向けてフィルムが走行する乾燥空間を内部に画定する本体と、乾燥空間内において、乾燥空間内を走行するフィルムの表面と対向して配置されるヒータであって、内管と外管とを備えており、内管と外管との間を流体が流れることにより外管の表面温度が200度以下に設定され、外管から電磁波を放射するヒータと、ヒータを少なくとも部分的に覆っており、ヒータの外管から放射される電磁波の少なくとも一部を、乾燥空間内を走行するフィルムに向けて反射する反射体と、を備えている。ヒータは、所定の波長未満の波長帯域の電磁波をフィルムに放射すると共に、所定の波長以上の波長帯域の電磁波を吸収するように構成されている。
【0007】
上記の構成によれば、ヒータから放射された電磁波の一部は、反射体で反射されることなくフィルムに照射され、ヒータから放射された電磁波の他の一部は、反射体で反射されてフィルムに照射される。このため、乾燥装置が反射体を備えていない構成と比較して、ヒータから放射される電磁波を効率良くフィルムに照射することができる。これにより、ヒータの出力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例の乾燥装置の概略断面図である。
図2】第1実施例の乾燥装置の概略断面図である。
図3】第1実施例のヒータの断面図である。
図4】第1実施例のヒータから放射される電磁波の波長と放射強度との関係を示す図である。
図5】第2実施例の乾燥装置の概略断面図である。
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する技術の第2の態様では、上記の第1の態様において、反射体は、ヒータに対して、乾燥空間内を走行するフィルムと反対側に配置される第1反射部を備えていてもよい。上記の構成によれば、ヒータに対してフィルムと反対側に向かってヒータから照射された電磁波を、反射体で反射させて、フィルムに照射することができる。このため、ヒータから放射される電磁波を効率良くフィルムに照射することができる。これにより、ヒータの出力をより低減することができる。
【0011】
本明細書に開示する技術の第3の態様では、上記の第2の態様において、反射体は、第1反射部のヒータ側の表面に設けられた金属コート層をさらに備えていてもよい。電磁波に対する金属コート層の反射率は、電磁波に対する第1反射部の反射率よりも高くてもよい。上記の構成によれば、第1反射部を金属コート層と同様の構成で作製する場合と比較して、電磁波に対する反射率を容易に変更することができる。
【0012】
本明細書に開示する技術の第4の態様では、上記の第2または第3の態様において、反射体は、ヒータと、乾燥空間内を走行するフィルムの表面との間に、電磁波が通過する通過空間を画定しており、フィルムの走行方向に直交するフィルムの幅方向に離れている2個の反射側部を備えていてもよい。フィルムは、フィルムの幅方向に関して、2個の反射側部の間に位置してもよい。ヒータに対してフィルムと同じ側にヒータから電磁波が照射されても、電磁波の一部がフィルムに照射されないことがある。上記の構成によれば、ヒータに対してフィルムと同じ側にヒータから照射された電磁波を、反射体で反射させて、フィルムに照射することができる。このため、ヒータから放射される電磁波を効率良くフィルムに照射することができる。これにより、ヒータの出力をさらに低減することができる。
【0013】
本明細書に開示する技術の第5の態様では、上記の第4の態様において、乾燥装置は、電磁波を透過可能であり、通過空間に配置されている仕切体をさらに備えていてもよい。仕切体は、通過空間を、仕切体に対してヒータ側に配置されるヒータ側空間と、仕切体に対してフィルム側に配置されるフィルム側空間とに分けてもよい。上記の構成によれば、フィルムから蒸発した溶媒がヒータに触れることを抑制することができる。
【0014】
本明細書に開示する技術の第6の態様では、上記の第1から第5の態様のいずれか1つにおいて、電磁波に対する反射体の反射率は、0.7以上であってもよい。上記の構成によれば、反射体に吸収される電磁波を低減することができる。これにより、ヒータの出力をより低減することができる。
【0015】
本明細書に開示する技術の第7の態様では、上記の第6の態様において、電磁波に対する反射体の反射率は、0.9以上であってもよい。上記の構成によれば、反射体に吸収される電磁波をより低減することができる。これにより、ヒータの出力をさらに低減することができる。
【0016】
本明細書に開示する技術の第8の態様では、上記の第1から第7の態様のいずれか1つにおいて、ヒータは、4.0マイクロメートル未満の波長帯域の電磁波を放射すると共に、4.0マイクロメートル以上の波長帯域の電磁波を吸収するように構成されていてもよい。フィルム内の溶媒は、電磁波を吸収し、溶媒の電磁波の吸収帯域は、3マイクロメートル付近にある。上記の構成によれば、ヒータから放射される電磁波は、溶媒に吸収される。これにより、溶媒を効率良く乾燥させることができる。
【0017】
本明細書に開示する技術の第9の態様では、上記の第8の態様において、ヒータは、4.0マイクロメートル未満の波長帯域の電磁波を80%以上含む電磁波をフィルムに放射してもよい。上記の構成によれば、ヒータから放出される電磁波は、溶媒により吸収される。これにより、溶媒をより効率良く乾燥させることができる。
【0018】
本明細書に開示する技術の第10の態様では、上記の第8または第9の態様において、ヒータから放射される電磁波の放射強度は、4.0マイクロメートルよりも小さい基準波長で最大となってもよい。4.0マイクロメートルの電磁波の放射強度は、基準波長の電磁波の放射強度の10%未満であってもよい。上記の構成によれば、ヒータから放出される電磁波は、溶媒により吸収される。これにより、溶媒をより効率良く乾燥させることができる。
【0019】
(第1実施例)
図1に示す第1実施例の乾燥装置10は、ロールトゥロール方式の乾燥装置である。乾燥装置10は、フィルム2を電磁波を用いて乾燥する。フィルム2は、樹脂フィルム本体4と、塗膜6と、を備えている。樹脂フィルム本体4は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレートからなる。図2に示すように、塗膜6は、樹脂フィルム本体4の表面に配置されている。塗膜6は、活物質と、溶媒と、を備えている。活物質は、例えば、セラミックス、ポリイミド、フッ素樹脂、アラミド繊維、カーボン、リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン、リン酸鉄、または芳香族ポリアミドである。溶媒は、例えば、有機溶媒または水溶媒である。溶媒は、3.5マイクロメートル以下(例えば、1.5~3.5マイクロメートル)の波長帯域の電磁波を吸収する。例えば、水溶媒では、1.5マイクロメートル近傍の波長帯域の電磁波や2.9~3.1マイクロメートル近傍の波長帯域の電磁波が吸収される。また、有機溶媒のイソプロパノール、テルピネオール、N-メチル-2-ピロリドン、トルエンでは、3.3マイクロメートル近傍の波長帯域の電磁波が吸収され、イソプロパノールやテルピネオールでは、2.9~3.1マイクロメートル近傍の波長帯域の電磁波がさらに吸収される。溶媒は、乾燥装置10からの電磁波を吸収することにより蒸発する。乾燥されたフィルム2は、例えば、リチウムイオン電池に使用される。
【0020】
図1に示すように、乾燥装置10は、本体12と、第1ローラ14と、第2ローラ16と、塗工装置18と、送気装置20と、第1吸気装置22と、第2吸気装置24と、複数のヒータ26と、複数の仕切体28と、反射体30と、制御ユニット32と、を備えている。制御ユニット32は、第1ローラ14と、第2ローラ16と、塗工装置18と、送気装置20と、第1吸気装置22と、第2吸気装置24と、ヒータ26を制御する。
【0021】
本体12は、壁部36と、入口38と、出口40と、を備えている。壁部36は、X方向に長手方向を有する略直方体形状の断熱構造体である。壁部36は、内部に乾燥空間42を画定している。入口38は、壁部36の第1側壁36aに配置されている。出口40は、壁部36の第2側壁36bに配置されている。第2側壁36bは、第1側壁36aの反対側に位置している。乾燥空間42は、入口38と出口40を介して、本体12の外部の空間と連通している。
【0022】
第1ローラ14と塗工装置18は、本体12の外部であって、入口38の近傍に配置されている。塗工装置18は、活物質と溶媒とを備える塗工液を樹脂フィルム本体4の表面に塗布可能である。第2ローラ16は、本体12の外部であって、出口40の近傍に配置されている。第1ローラ14と第2ローラ16が回転すると、樹脂フィルム本体4は、供給ドラム44から引き出され、その後、塗工装置18が樹脂フィルム本体4の表面上に塗工液を塗布する。これにより、塗膜6(図2参照)が樹脂フィルム本体4の表面上に塗布される。その後、塗膜6が塗布された樹脂フィルム本体4(即ち、フィルム2)は、入口38から乾燥空間42に入り、乾燥空間42内を入口38から出口40に向かって+X方向(走行方向D1)に通過する。フィルム2は、乾燥空間42を通過している間に、塗膜6の溶媒や樹脂フィルム本体4内の水分が蒸発することにより乾燥される。その後、フィルム2は、出口40から本体12の外部に出て、巻取ドラム46に巻き取られる。
【0023】
送気装置20は、送気管50と、送気ファン52と、を備えている。送気管50は、壁部36の上壁36cを貫通している、送気管50の送気口50aは、出口40近傍に配置されている。送気ファン52は、雰囲気ガスを送気口50aから乾燥空間42に送る。雰囲気ガスは、例えば、不活性ガス(例えば窒素ガス)である。
【0024】
第1吸気装置22は、第1吸気管54と、第1吸気ファン56と、を備えている。第1吸気管54は、壁部36の上壁36cを貫通している。第1吸気管54の第1吸気口54aは、入口38近傍に配置されている。第1吸気口54aは、送気口50aを向いている。第1吸気ファン56は、乾燥空間42内のガスを、第1吸気口54aを介して第1吸気管54に吸引する。乾燥空間42内のガスは、雰囲気ガスに加えて、例えば、フィルム2から蒸発した溶媒や水蒸気を含んでいる。
【0025】
第2吸気装置24は、第2壁部58と、第2吸気管60と、第2吸気ファン62と、を備えている。第2壁部58の内部には、第1ローラ14と塗工装置18が配置されている。第2吸気管60は、第2壁部58を貫通している。第2吸気ファン62は、第2壁部58内のガスを、第2吸気管60の第2吸気口60aを介して第2吸気管60に吸引する。第2壁部58内のガスは、例えば、蒸発した溶媒を含んでいる。
【0026】
複数のヒータ26は、乾燥空間42内でX方向に並んで配置されている。ヒータ26は、乾燥空間42を走行するフィルム2の表面と対向している。図2および図3に示すように、ヒータ26は、フィルム2の走行方向D1と略直交するY方向に延びている。ヒータ26は、発熱体66と、内管68と、外管70と、2個のキャップ72と、給気管74と、排気管76と、を備えている。発熱体66は、フィラメントである。発熱体66は、制御ユニット32(図1参照)に制御されることにより、発熱する。発熱体66の発熱温度は、700度から1500度である。発熱体66は、発熱することにより、電磁波、例えば、赤外線(または紫外線または可視光)を放射する。内管68は、略円筒形状を有する。内管68は、発熱体66の外面を囲んでいる。内管68は、例えば、石英ガラスまたはボウ珪酸ガラスからなる。外管70は、略円筒形状を有する。外管70は、内管68の外面を囲んでいる。外管70は、内管68の材料と同様の材料からなる。外管70と内管68との間には、流体通路78が画定されている。流体通路78には、冷却流体が流れる。冷却流体は、例えば、空気または不活性ガスである。一方のキャップ72は、外管70の一端に嵌合しており、他方のキャップ72は、外管70の他端に嵌合している。2個のキャップ72の間には、発熱体66と内管68が配置されている。発熱体66と内管68は、外管70と2個のキャップ72により覆われている。給気管74は、一方のキャップ72に取り付けられている。排気管76は、他方のキャップ72に取り付けられている。冷却流体は、給気管74、流体通路78、排気管76の順番に流れる。これにより、内管68と外管70が冷却される。
【0027】
内管68と外管70のそれぞれは、4.0マイクロメートル未満の波長帯域の電磁波W1(図3参照)を放射し、4.0マイクロメートル以上の波長帯域の電磁波W2(図3参照)を吸収する。このため、ヒータ26は、4.0マイクロメートル未満の波長帯域の電磁波W1を放射し、4.0マイクロメートル以上の波長帯域の電磁波W2を吸収する。ここで、「吸収」は、電磁波を全て吸収することだけでなく、電磁波の一部を吸収することも含む。図4に示すように、ヒータ26から放射される電磁波の放射強度は、基準波長で最大となる。基準波長は、3.0マイクロメートル以下の値であり、本実施例では、1.8マイクロメートルである。4.0マイクロメートルの電磁波の放射強度は、基準波長の電磁波の放射強度の10%未満である。また、3.5マイクロメートルの電磁波の放射強度は、基準波長の電磁波の放射強度の20%未満である。ヒータ26から放射される電磁波は、4.0マイクロメートル未満の波長帯域の電磁波W1を80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上含む。また、ヒータ26から放射される電磁波は、3.5マイクロメートル未満の波長帯域の電磁波を80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上含む。ヒータ26、具体的には、内管68と外管70が4.0マイクロメートル(または3.5マイクロメートル)以上の波長帯域の電磁波W2を吸収するものの、冷却流体が流体通路78を流れるため、ヒータ26の表面(外管70の表面)の温度は、200度以下、本実施例では、150度以下に設定される。
【0028】
図1に示すように、複数の仕切体28は、ヒータ26と走行するフィルム2の表面の間に配置されている。複数の仕切体28は、接続部材79を介して互いに接続されている。仕切体28は、送気管50の送気口50aと第1吸気管54の第1吸気口54aよりもヒータ26側に配置されている。このため、送気管50の送気口50aから流出した雰囲気ガスは、仕切体28の表面に沿って第1吸気管54の第1吸気口54aまで流れることができる。また、仕切体28は、例えば、マッフルからなる。仕切体28は、ヒータ26から放射される電磁波を透過可能である。これにより、ヒータ26から放射された電磁波は、仕切体28を通って、走行するフィルム2に照射される。さらに、仕切体28は、ガスが通り抜けることを禁止する。これにより、フィルム2から蒸発した溶媒や水蒸気が仕切体28を通りヒータ26に接触することを抑制することができる。
【0029】
図1および図2に示すように、反射体30は、X方向に長手方向を有する板形状を有している。図1に示すように、反射体30は、乾燥空間42内で、X方向に並ぶ複数のヒータ26のそれぞれを部分的に覆っている。反射体30は、第1反射部80と、金属コート層82(図2参照)と、第2反射部84と、を備えている。第1反射部80は、XY平面に略平行な板形状を有している。第1反射部80は、ヒータ26の表面(外管70の表面)を部分的に覆っている。第1反射部80は、ヒータ26と壁部36の上壁36cとの間に配置されている。第1反射部80は、ヒータ26と上壁36cから離れている。図2に示すように、第1反射部80は、ヒータ26に対して、走行するフィルム2と反対側に配置されている。第1反射部80は、ヒータ26よりも走行するフィルム2から離れている。第1反射部80と仕切体28との間には、ヒータ26が配置されている。
【0030】
第1反射部80は、金属材料、例えば、アルミニウムまたはステンレス鋼からなる。第1反射部80の表面は、バフ研磨されている。このため、第1反射部80の表面は、鏡面処理されている。第1反射部80の表面粗さRaは、5マイクロメートル未満、好ましくは1マイクロメートル未満、より好ましくは、0.1マイクロメートル未満である。ここで、表面粗さRaは、算術平均粗さを示す。電磁波に対する第1反射部80の反射率は、70%以上であり、好ましくは、90%以上である。例えば、第1反射部80の反射率は、3.5マイクロメートル以上の波長域の電磁波に対しては、85%以上であり、2.5マイクロメートルの電磁波に対しては、82%以上であり、1.5マイクロメートルの電磁波に対しては、79%以上であり、0.5マイクロメートルの電磁波に対しては、74%以上である。また、例えば、第1反射部80の反射率は、3.5マイクロメートル以上の波長域の電磁波に対しては、95%以上であり、2.5マイクロメートルの電磁波に対しては、92%以上であり、1.5マイクロメートルの電磁波に対しては、91%以上であり、0.5マイクロメートルの電磁波に対しては、90%以上である。
【0031】
金属コート層82は、第1反射部80の表面に部分的に配置されており、外管70の表面を部分的に覆っている。変形例では、金属コート層82は、第1反射部80の表面の全体に配置されていてもよい。金属コート層82は、ヒータ26に対して、走行するフィルム2と反対側に配置されている。金属コート層82は、第1反射部80と外管70の表面との間に配置されている。金属コート層82は、ヒータ26と対向している。金属コート層82は、金属材料、例えば、金または白金からなる。金属コート層82は、例えば、金属材料を備えるコート剤を第1反射部80の表面に吹き付けるスプレーコート法により形成される。金属コート層82の厚みは、第1反射部80の厚みよりも薄い。なお、図2および図5では、金属コート層82の厚みが誇張して図示されている。金属コート層82は、例えば、第1反射部80の材料と異なる材料からなる。電磁波に対する金属コート層82の反射率は、電磁波に対する第1反射部80の反射率よりも高い。電磁波に対する金属コート層82の反射率は、95%以上であり、好ましくは99%以上である。
【0032】
第2反射部84は、第1反射部80と一体的に形成されている。第2反射部84は、第1反射部80に接続されている。第2反射部84は、ヒータ26と仕切体28を囲んでいる。第2反射部84は、壁部36から離れている。図1に示すように、第2反射部84は、送気管50の送気口50a近傍から第1吸気管54の第1吸気口54aの近傍まで、フィルム2の走行方向D1(X方向)に延びている。図2に示すように、第2反射部84は、2個の反射側部86を備えている。反射側部86は、ヒータ26のキャップ72と当接している。このため、反射側部86は、ヒータ26の外管70に当接していない。2個の反射側部86は、フィルム2の幅方向D2(Y方向)において、フィルム2を挟むように配置されている。なお、フィルム2の幅方向D2は、フィルム2の走行方向D1に略直交している。フィルム2は、幅方向D2において、2個の反射側部86の間に位置している。また、走行方向D1と幅方向D2の両方に略直交する方向(Z方向)に関して、2個の反射側部86は、第1反射部80からフィルム2を超えて-Z方向に延びている。2個の反射側部86のY方向の間隔は、フィルム2の幅(フィルム2のY方向の長さ)よりも大きい。このため、Y方向に関して、反射側部86とフィルム2との間に隙間が形成されている。これにより、フィルム2が走行時に反射側部86と接触することが抑制される。
【0033】
第2反射部84は、2個の第2反射部84の間であって、かつ、ヒータ26と走行するフィルム2との間に通過空間90を画定している。Y方向に関して、通過空間90の幅は、フィルム2の幅よりも大きい。また、Z方向に関して、通過空間90は、フィルム2の全体と重なり合っている。第2反射部84は、シール部材88を介して、2個の反射側部86の間で仕切体28を挟持している。仕切体28とシール部材88は、通過空間90に配置されている。仕切体28は、通過空間90を、ヒータ側空間92と、フィルム側空間94とに分ける。シール部材88は、仕切体28と反射側部86との間をシールする。これにより、ヒータ側空間92とフィルム側空間94とが気密に分けられる。
【0034】
ヒータ側空間92は、仕切体28に対してヒータ26側に配置されており、フィルム2の走行方向D1と幅方向D2に直交するZ方向に関して、ヒータ26と仕切体28との間に配置されている。フィルム側空間94は、仕切体28に対して走行するフィルム2側に配置されており、仕切体28とフィルム2との間に配置されている。フィルム側空間94では、送気管50の送気口50aから第1吸気管54の第1吸気口54aに向かって、雰囲気ガスが流れる。
【0035】
第2反射部84は、金属材料、例えば、アルミニウムまたはステンレス鋼からなる。第2反射部84は、第1反射部80の材料と同様の材料からなる。第2反射部84の表面は、バフ研磨されている。このため、第2反射部84の表面は、鏡面処理されている。第2反射部84の表面粗さRaは、5マイクロメートル未満、好ましくは1マイクロメートル未満、より好ましくは、0.1マイクロメートル未満である。第2反射部84の表面粗さRaは、第1反射部80の表面粗さRaと略同一である。電磁波に対する第2反射部84の反射率は、電磁波に対する第1反射部80の反射率と略同一である。
【0036】
次に、図2を参照して、ヒータ26から放射された電磁波(赤外線)によりフィルム2を乾燥する挙動を説明する。発熱体66が発熱すると、電磁波が発熱体66から放射される。放射された電磁波は、内管68と外管70を通過して、ヒータ26からヒータ側空間92に放射される。ヒータ26から放射される電磁波は、主に4.0マイクロメートル未満の波長帯域の電磁波W1である。ヒータ26から放射された電磁波は、仕切体28を通過した後、フィルム側空間94を通過して、フィルム2の塗膜6に照射される。電磁波がヒータ26からフィルム2に向かって(図2では紙面下方向に)放射されたときには、電磁波は、第2反射部84(例えば反射側部86)で反射されて、または、第2反射部84で反射されることなく、フィルム2の塗膜6に照射される。一方、電磁波がフィルム2から離れる方向に(図2では紙面上方向)ヒータ26から放射されたときには、電磁波は、金属コート層82(または第1反射部80)でフィルム2に向かって反射される。その後、電磁波は、第2反射部84(例えば反射側部86)で反射されて、または、第2反射部84で反射されることなく、フィルム2の塗膜6に照射される。反射体30が用いられることにより、電磁波が壁部36に照射されることが抑制されるため、電磁波がフィルム2に効率良く照射される。この結果、ヒータ26の出力(発熱体66への通電電力)が低減される。
【0037】
フィルム2に照射された電磁波は、塗膜6の溶媒に吸収される。さらに、フィルム2に照射された電磁波は、樹脂フィルム本体4にも到達し、樹脂フィルム本体4に含まれる水分にも吸収される。これらにより、塗膜6の溶媒と樹脂フィルム本体4に含まれる水分が蒸発し、フィルム2が乾燥される。また、電磁波が溶媒や水分に吸収されることから、塗膜6や樹脂フィルム本体4が加熱され難い。これにより、フィルム2が加熱されることが抑制され、乾燥に伴うフィルム2の強度低下が発生し難い。
【0038】
(効果)
本実施例の乾燥装置10は、ヒータ26の外管70から放射される電磁波の少なくとも一部を、乾燥空間42内を走行するフィルム2に向けて反射する反射体30を備えている。ヒータ26から放射された電磁波は、その一部が反射体30で反射されることなくフィルム2に照射されるとともに、他の一部が反射体30で反射されてフィルム2に照射される。このため、乾燥装置10が反射体30を備えていない構成と比較して、ヒータ26から放射される電磁波を効率良くフィルム2に照射することができる。これにより、ヒータ26の出力を低減することができる。
【0039】
(第2実施例)
図5を参照して第2実施例を説明する。第2実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明する。第2実施例では、反射体30は、第1実施例の第2反射部84を備えていない。第2実施例では、仕切体28は、シール部材188を介して、壁部36に固定されている。仕切体28は、壁部36の内部の乾燥空間42を、ヒータ側空間192と、フィルム側空間194とに分ける。シール部材188は、仕切体28と壁部36との間をシールする。これにより、ヒータ側空間192とフィルム側空間194が気密に分けられる。
【0040】
ヒータ側空間192は、仕切体28に対してヒータ26側に配置されている。フィルム側空間194は、仕切体28に対して走行するフィルム2側に配置されている。フィルム側空間194には、送気管50の送気口50aから第1吸気管54の第1吸気口54aに向かって、雰囲気ガスが流れる。
【0041】
次に、ヒータ26から放射された電磁波によりフィルム2を乾燥する挙動を説明する。ヒータ26からヒータ側空間192に放射された電磁波は、仕切体28を通過した後、フィルム側空間194を通過して、フィルム2の塗膜6に照射される。電磁波がヒータ26からフィルム2に向かって(図5では紙面下方向に)放射されたときには、電磁波は、フィルム2の塗膜6に直接照射される。一方、電磁波がフィルム2から離れる方向に(図5では紙面上方向)ヒータ26から放射されたときには、電磁波は、金属コート層82(または第1反射部80)でフィルム2に向かって反射される。その後、電磁波は、フィルム2の塗膜6に照射される。フィルム2に照射された電磁波は、塗膜6の溶媒や樹脂フィルム本体4に含まれる水分に吸収される。これらにより、溶媒と水分が蒸発し、フィルム2が乾燥される。
【0042】
(変形例)
一実施形態では、金属コート層82が第2反射部84の表面にも配置されていてもよい。金属コート層82が第2反射部84の表面に配置される場合、第2反射部84の表面全体に金属コート層82が配置されてもよく、第2反射部84の表面の一部に配置されてもよい。
【0043】
一実施形態では、反射体30は、金属コート層82を備えていなくてもよい。
【0044】
一実施形態では、第2反射部84は、フィルム2を超えることなく、第1反射部80からフィルム2の手前まで延びていてもよい。この場合、Z方向に関して、第2反射部84とフィルム2と間に隙間が形成されている。
【0045】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
2 :フィルム
4 :樹脂フィルム本体
6 :塗膜
10 :乾燥装置
12 :本体
26 :ヒータ
28 :仕切体
30 :反射体
32 :制御ユニット
38 :入口
40 :出口
42 :乾燥空間
66 :発熱体
68 :内管
70 :外管
74 :給気管
76 :排気管
78 :流体通路
80 :第1反射部
82 :金属コート層
84 :第2反射部
90 :通過空間
92、192:ヒータ側空間
94、194:フィルム側空間
D1 :走行方向
D2 :幅方向
W1、W2:電磁波
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの溶媒を乾燥する乾燥装置であって、
入口と出口とを備えており、前記入口から前記出口に向けて前記フィルムが走行する乾燥空間を内部に画定する本体と、
前記乾燥空間内において、前記乾燥空間内を走行する前記フィルムの表面と対向して配置されるヒータであって、内管と外管とを備えており、前記内管と前記外管との間を流体が流れることにより前記外管の表面温度が200度以下に設定され、前記外管から電磁波を放射するヒータと、
前記ヒータを少なくとも部分的に覆っており、前記ヒータの前記外管から放射される前記電磁波の少なくとも一部を、前記乾燥空間内を走行する前記フィルムに向けて反射する反射体と、を備えており、
前記ヒータは、所定の波長未満の波長帯域の前記電磁波を前記フィルムに放射すると共に、前記所定の波長以上の波長帯域の前記電磁波を吸収するように構成されており、
前記反射体は、
前記ヒータに対して、前記乾燥空間内を走行する前記フィルムと反対側に配置される第1反射部と、
前記ヒータと、前記乾燥空間内を走行する前記フィルムの表面との間に、前記電磁波が通過する通過空間を画定しており、前記フィルムの走行方向に直交する前記フィルムの幅方向に離れている2個の反射側部と、を備えており、
前記2個の反射側部は、前記第1反射部に接続されており、前記フィルムの前記幅方向において前記フィルムを挟んでおり、
前記2個の反射側部の先端は、前記フィルムよりも反ヒータ側に位置している、乾燥装置。
【請求項2】
前記反射体は、前記第1反射部の前記ヒータ側の表面に設けられた金属コート層をさらに備えており、
前記電磁波に対する前記金属コート層の反射率は、前記電磁波に対する前記第1反射部の反射率よりも高い、請求項に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記電磁波を透過可能であり、前記通過空間に配置されている仕切体をさらに備えており、
前記仕切体は、前記通過空間を、前記仕切体に対して前記ヒータ側に配置されるヒータ側空間と、前記仕切体に対して前記フィルム側に配置されるフィルム側空間とに分ける、請求項に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記電磁波に対する前記反射体の反射率は、0.7以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記電磁波に対する前記反射体の反射率は、0.9以上である、請求項に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記ヒータは、4.0マイクロメートル未満の波長帯域の前記電磁波を放射すると共に、4.0マイクロメートル以上の波長帯域の前記電磁波を吸収するように構成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記ヒータは、4.0マイクロメートル未満の波長帯域の電磁波を80%以上含む前記電磁波を前記フィルムに放射する、請求項に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記ヒータから放射される前記電磁波の放射強度は、4.0マイクロメートルよりも小さい基準波長で最大となり、
4.0マイクロメートルの前記電磁波の前記放射強度は、前記基準波長の前記電磁波の前記放射強度の10%未満である、請求項に記載の乾燥装置。