(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100104
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240719BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240719BHJP
C23C 16/509 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/302 101C
C23C16/509
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003845
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】長町 学
(72)【発明者】
【氏名】安藤 瞭汰
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 夏生
(72)【発明者】
【氏名】中尻 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】安東 靖典
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084BB05
2G084BB23
2G084BB26
2G084BB28
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD04
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2G084DD25
2G084DD33
2G084DD34
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF22
2G084FF32
4K030AA06
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA40
4K030BA44
4K030FA04
4K030KA02
4K030KA30
5F004BB13
5F004BD04
5F004CA06
(57)【要約】
【課題】アンテナを長くしてプラズマ処理を行う場合であっても、絶縁カバーの損傷を防止する。
【解決手段】高周波電流が流されてプラズマPを発生させるためのアンテナ装置10であって、直線状をなすアンテナ3と、アンテナ3の外側周面3cを覆い、直管状をなす絶縁カバー4と、アンテナ3の軸方向両端部3a、3bの間に設けられ、アンテナ3の外側周面3cよりも絶縁カバー4の内側周面4a側に突出するとともに、絶縁材料からなる突出絶縁部5とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電流が流されてプラズマを発生させるためのアンテナ装置であって、
直線状をなすアンテナと、
前記アンテナの外側周面を覆い、直管状をなす絶縁カバーと、
前記アンテナの軸方向両端部の間に設けられ、前記アンテナの外側周面よりも前記絶縁カバーの内側周面側に突出するとともに、絶縁材料からなる突出絶縁部とを備える、アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナは、
少なくとも2つの導体要素と、
互いに隣り合う前記導体要素の間に設けられて、それら導体要素を絶縁する絶縁要素と、
互いに隣り合う前記導体要素と電気的に直列接続された容量素子とをさらに備える、請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナの外側周面には、前記突出絶縁部を構成する絶縁体を収容する収容凹部が形成されている、請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記導体要素の軸方向端面と前記絶縁要素の軸方向端面との間に前記収容凹部が形成されている、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記導体要素の外側周面に前記収容凹部が形成されている、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何か一項に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナが内部又は外部に配置された真空容器と、
前記アンテナに高周波電流を印加する高周波電源とを備える、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電流が流されて誘導結合型のプラズマを発生されるためのアンテナ装置、及び、このアンテナ装置を備えたプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンテナに高周波電流を流し、それによって生じる誘導電界により誘導結合型のプラズマ(略称ICP)を発生させ、この誘導結合型のプラズマを用いて基板に処理を施すプラズマ処理装置が従来から提案されている。
【0003】
この種のプラズマ処理装置においては、直線状のアンテナと、アンテナを覆う絶縁カバーとを備えるアンテナ装置が提案されている。そして、大型の基板に対応する等のためにアンテナを長くするとアンテナが撓む可能性があるので、アンテナの外径よりも大きい外径を有するナットをアンテナに外嵌させている。これにより、仮にアンテナが撓んだとしても、ナットによってアンテナが絶縁カバーに接触しないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなアンテナ装置を用いてプラズマ処理を行う場合、ナットの外径がアンテナの外径よりも大きいので、ナットの突出部分において電界が集中する。その結果、プラズマ処理を行う場合、プラズマ中のイオンが、ナットの突出部分に近接した絶縁カバーに衝突することによって、絶縁カバーがエッチングされ損傷する可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、アンテナを長くしてプラズマ処理を行う場合であっても、絶縁カバーの損傷を防止することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るアンテナ装置は、高周波電流が流されてプラズマを発生させるためのアンテナ装置であって、直線状をなすアンテナと、前記アンテナの外側周面を覆い、直管状をなす絶縁カバーと、前記アンテナの軸方向両端部の間に設けられ、前記アンテナの外側周面よりも前記絶縁カバーの内側周面側に突出するとともに、絶縁材料からなる突出絶縁部とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成であれば、突出絶縁部において電界が集中しないので、プラズマ中のイオンが、突出絶縁部に近接した絶縁カバーに衝突せず、絶縁カバーがエッチングされ損傷することを防ぐことができる。
また、アンテナ又は絶縁カバーが撓んだ場合であっても、突出絶縁部によってアンテナと絶縁カバーとの接触を回避することができる。
【0009】
アンテナを長くすると撓みが発生しやすい。そして、特に撓みが発生しやすいアンテナの具体的態様として、前記アンテナは、少なくとも2つの導体要素と、互いに隣り合う前記導体要素の間に設けられて、それら導体要素を絶縁する絶縁要素と、互いに隣り合う前記導体要素と電気的に直列接続された容量素子とをさらに備えるLCアンテナが挙げられる。
このような構成であれば、撓みが発生しやすいLCアンテナであっても、突出絶縁部によってアンテナと絶縁カバーとの接触を回避することができる。
また、容量素子が一対の導体要素と電気的に直列接続されているので、アンテナの合成リアクタンスを、誘導性リアクタンスから容量性リアクタンスを差し引いた形にすることができる。その結果、アンテナのインピーダンスを低減させることができ、アンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大が抑制され、アンテナに高周波電流が流れやすくなり、均一性の良いプラズマを効率良く発生させることができる。
【0010】
前記アンテナ装置は、前記アンテナの外側周面において、前記突出絶縁部を構成する絶縁体を収容する収容凹部が形成されているものが好ましい。
このような構成であれば、突出絶縁部が収容凹部に設けられるので、軸方向における突出絶縁部の移動は収容凹部内に規制される。したがって、アンテナが撓みやすい箇所に収容凹部を設けることによって、アンテナと絶縁カバーとの接触をより回避することができる。
【0011】
導体要素及び絶縁要素の接続部分でアンテナの撓みが発生しやすいので、前記アンテナ装置は、前記導体要素の軸方向端面と前記絶縁要素の軸方向端面との間に前記収容凹部が形成されているものが好ましい。
このような構成であれば、撓みが発生しやすい箇所に突出絶縁部が設けられるので、アンテナと絶縁カバーとの接触をさらに回避することができる。
【0012】
前記アンテナ装置は、前記導体要素の外側周面に前記収容凹部が形成されているものが望ましい。
このような構成であれば、突出絶縁部は、絶縁要素から離れて設けられるので、軸方向において突出絶縁部と絶縁要素との接触を防ぐことができ、突出絶縁部が絶縁要素に与える温度影響を抑制することができる。その結果、絶縁要素の間で温度差の発生を防止することができるので、絶縁要素の破損を防止することができる。
【0013】
また、本発明に係るプラズマ処理装置は、上述したアンテナと、前記アンテナが内部又は外部に配置された真空容器と、前記アンテナに高周波電流を印加する高周波電源とを具備することを特徴とするものである。
このように構成されたプラズマ処理装置であれば、上述したように絶縁カバーの損傷が防止されるので、膜の厚み等の品質を担保することができ、信頼性の向上を図れる。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、アンテナを長くしてプラズマ処理を行う場合であっても、絶縁カバーの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】同実施形態のアンテナ装置の周辺構成を模式的に示す拡大断面図である。
【
図3】同実施形態の突出絶縁部の周辺構成を模式的に示す拡大断面図である。
【
図4】同実施形態の突出絶縁部の周辺構成におけるA-A線断面図である。
【
図5】変形実施形態の突出絶縁部の周辺構成を模式的に示す拡大断面図である。
【
図6】変形実施形態の突出絶縁部の周辺構成におけるA-A線断面図である。
【
図7】変形実施形態の突出絶縁部の周辺構成を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている場合がある。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0017】
<装置構成>
本実施形態のプラズマ処理装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いて基板Wに処理を施すものである。ここで、基板Wは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、基板Wに施す処理は、例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0018】
なお、このプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0019】
具体的にプラズマ処理装置100は、
図1に示すように、真空排気され且つガスGが導入される真空容器2と、真空容器2内に配置された直線状のアンテナ3と、直管状をなす絶縁カバー4と、絶縁材料からなる突出絶縁部5と、真空容器2内に誘導結合型のプラズマPを生成するための高周波をアンテナ3に印加する高周波電源6とを備えている。なお、アンテナ3に高周波電源6から高周波を印加することによりアンテナ3には高周波電流IRが流れて、真空容器2内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマPが生成される。また、本実施形態において、アンテナ3、絶縁カバー4、及び、突出絶縁部5によりアンテナ装置10が構成される。
【0020】
真空容器2は、例えば金属製の容器であり、その内部は真空排気装置7によって真空排気される。真空容器2はこの例では電気的に接地されている。
【0021】
真空容器2内に、例えば流量調整器(図示省略)及び真空容器2の側壁に形成された複数のガス導入口21を経由して、ガスGが導入される。ガスGは、基板Wに施す処理内容に応じたものにすれば良い。例えば、プラズマCVD法によって基板Wに膜形成を行う場合には、ガスGは、原料ガス又はそれを希釈ガス(例えばH2)で希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiH4の場合はSi膜を、SiH4+NH3の場合はSiN膜を、SiH4+O2の場合はSiO2膜を、SiF4+N2の場合はSiN:F膜(フッ素化シリコン窒化膜)を、それぞれ基板W上に形成することができる。
【0022】
また、真空容器2内には、基板Wを保持する基板ホルダ8が設けられている。この例のように、基板ホルダ8にバイアス電源9からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のパルス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Wに入射する時のエネルギーを制御して、基板Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ8内に、基板Wを加熱するヒータ81を設けておいても良い。
【0023】
アンテナ3は、真空容器2内における基板Wの上方に、基板Wの表面に沿うように(例えば、基板Wの表面と実質的に平行に)配置されている。真空容器2内に配置するアンテナ3は、1つでも良いし、複数でも良い。
【0024】
アンテナ3の両端部付近は、真空容器2の相対向する側壁をそれぞれ貫通している。アンテナ3の両端部を真空容器2外へ貫通させる部分には、絶縁部材11がそれぞれ設けられている。この各絶縁部材11を、アンテナ3の両端部が貫通しており、その貫通部は例えばパッキン12によって真空シールされている。各絶縁部材11と真空容器2との間も、例えばパッキン13によって真空シールされている。なお、絶縁部材11の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英、又はポリフェニンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリングプラスチック等である。
【0025】
さらに、アンテナ3において、真空容器2内に位置する部分は、直管状の絶縁カバー4により覆われている。この絶縁カバー4の両端部は絶縁部材11によって支持されている。なお、絶縁カバー4の両端部と絶縁部材11間はシールしなくても良い。絶縁カバー4内の空間にガスGが入っても、当該空間は小さくて電子の移動距離が短いので、通常は空間にプラズマPは発生しないからである。なお、絶縁カバー4の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等である。
【0026】
絶縁カバー4を設けることによって、プラズマP中の荷電粒子がアンテナ3を構成する金属パイプ31に入射するのを抑制することができるので、金属パイプ31に荷電粒子(主として電子)が入射することによるプラズマ電位の上昇を抑制することができると共に、金属パイプ31が荷電粒子(主としてイオン)によってスパッタされてプラズマPおよび基板Wに対して金属汚染(メタルコンタミネーション)が生じるのを抑制することができる。
【0027】
アンテナ3の一端部である給電端部3aには、整合回路41を介して高周波電源6が接続されており、他端部である終端部3bは直接接地されている。なお、給電端部3aは、コンデンサ又はコイル等を介して高周波電源6に接続しても良いし、終端部3bは、コンデンサ又はコイル等を介して接地しても良い。
【0028】
上記構成によって、高周波電源6から、整合回路41を介して、アンテナ3に高周波電流IRを流すことができる。高周波電流IRの周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
【0029】
アンテナ3は、内部に冷却液CLが流通する流路を有する中空構造のものである。なお、冷却液CLは、真空容器2の外部に設けられた循環流路14によりアンテナ3を流通するものであり、循環流路14には、冷却液CLを一定温度に調整するための熱交換器などの温調機構141と、循環流路14において冷却液CLを循環させるためのポンプなどの循環機構142とが設けられている。冷却液CLとしては、電気絶縁の観点から、高抵抗の水が好ましく、例えば純水またはそれに近い水が好ましい。その他、例えばフッ素系不活性液体などの水以外の液冷媒を用いても良い。
【0030】
具体的にアンテナ3は、
図2に示すように、少なくとも2つの管状をなす金属製の導体要素31(以下、「金属パイプ31」という。)と、互いに隣り合う金属パイプ31の間に設けられて、それら金属パイプ31を絶縁する管状の絶縁要素32(以下、「絶縁パイプ32」という。)と、互いに隣り合う金属パイプ31と電気的に直列接続された容量素子であるコンデンサ33とを備えている。
【0031】
本実施形態では金属パイプ31の数は2つであり、絶縁パイプ32及びコンデンサ33の数は各1つである。以下の説明において、一方の金属パイプ31を「第1の金属パイプ31A」、他方の金属パイプを「第2の金属パイプ31B」ともいう。なお、アンテナ3は、3つ以上の金属パイプ31を有する構成であってもしても良く、この場合、絶縁パイプ32及びコンデンサ33の数はいずれも金属パイプ31の数よりも1つ少ないものになる。
【0032】
金属パイプ31は、内部に冷却液CLが流れる直線状の流路31xが形成された直管状をなすものである。金属パイプ31の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0033】
また、金属パイプ31の少なくとも長手方向一端部の外周部には、雄ねじ部31aが形成されている。なお、複数の金属パイプ31を接続する構成との部品の共通化を図るべく、金属パイプ31の長手方向両端部に雄ねじ部31aを形成して互換性を持たせておくことが望ましい。
【0034】
絶縁パイプ32は、内部に冷却液CLが流れる直線状の流路32xが形成された直管状をなすものである。なお、絶縁パイプ32の材質は、例えば、アルミナ、フッ素樹脂、ポリエチレン(PE)、エンジニアリングプラスチック(例えばポリフェニンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など)等である。
【0035】
さらに、絶縁パイプ32の内周面には、金属パイプ31の雄ねじ部31aと螺合して接続される雌ねじ部32aが形成されている。また、絶縁パイプ32の内壁には、それぞれの雌ねじ部32aよりも軸方向中央側に、コンデンサ33を構成する一対の電極33A、33Bを嵌合させるための凹部32bが周方向全体に亘って形成されている。本実施形態の絶縁パイプ32は、単一の部材から形成しているが、複数の部材を接合して形成しても良い。
【0036】
コンデンサ33は、絶縁パイプ32の内部に設けられており、具体的には、絶縁パイプ32の冷却液CLが流れる流路32xの内部に設けられている。
【0037】
具体的にコンデンサ33は、互いに隣り合う金属パイプ31の一方(第1の金属パイプ31A)と電気的に接続された第1の電極33Aと、互いに隣り合う金属パイプ31の他方(第2の金属パイプ31B)と電気的に接続されるとともに、第1の電極33Aに対向して配置された第2の電極33Bとを備えており、第1の電極33A及び第2の電極33Bの間の空間を冷却液CLが満たすように構成されている。つまり、この第1の電極33A及び第2の電極33Bの間の空間を流れる冷却液CLが、コンデンサ33を構成する誘電体となる。
【0038】
各電極33A、33Bは、概略回転体形状をなすとともに、その中心軸に沿って中央部に主流路33xが形成されている。具体的に各電極33A、33Bは、金属パイプ31における絶縁パイプ32側の端部に電気的に接触するフランジ部331と、当該フランジ部331から絶縁パイプ32側に延出した延出部332とを有している。各電極33A、33Bは、フランジ部331及び延出部332を単一の部材から形成しても良いし、別部品により形成してそれらを接合しても良い。電極33A、33Bの材質は、例えば、アルミニウム、銅、これらの合金等である。
【0039】
フランジ部331は、金属パイプ31における絶縁パイプ32側の端部に周方向全体に亘って接触している。具体的には、フランジ部331の軸方向端面は、金属パイプ31の端部に形成された円筒状の接触部313の先端面に周方向全体に亘って接触している。
【0040】
延出部332は、円筒形状をなすものであり、その内部に主流路33xが形成されている。第1の電極33Aの延出部332及び第2の電極33Bの延出部332は、互いに同軸上に配置されている。つまり、第1の電極33Aの延出部332の内部に第2の電極33Bの延出部332が挿し込まれた状態で設けられている。これにより、第1の電極33Aの延出部332と第2の電極33Bの延出部332との間に、流路方向に沿った円筒状の空間が形成される。
【0041】
このように構成された各電極33A、33Bは、絶縁パイプ32の内壁に形成された凹部32bに嵌合されている。具体的には、絶縁パイプ32の軸方向一端側に形成された凹部32bに第1の電極33Aが嵌合され、絶縁パイプ32の軸方向他端側に形成された凹部32bに第2の電極33Bが嵌合されている。このように各凹部32bに各電極33A、33Bを嵌合させることによって、第1の電極33Aの延出部332及び第2の電極33Bの延出部332は、互いに同軸上に配置される。また、各凹部32bの軸方向外側を向く面に各電極33A、33Bのフランジ部331の端面が接触することによって、第1の電極33Aの延出部332に対する第2の電極33Bの延出部332の挿入寸法が規定される。
【0042】
また、絶縁パイプ32の各凹部32bに各電極33A、33Bを嵌合させるとともに、当該絶縁パイプ32の雌ねじ部32aに金属パイプ31の雄ねじ部31aを螺合させることによって、金属パイプ31の接触部313の先端面が電極33A、33Bのフランジ部331に接触して各電極33A、33Bが、絶縁パイプ32と金属パイプ31との間に挟まれて固定される。このように本実施形態のアンテナ3は、金属パイプ31、絶縁パイプ32、第1の電極33A及び第2の電極33Bが同軸上に配置された構造となる。
【0043】
この構成において、第1の金属パイプ31Aから冷却液CLが流れてくると、冷却液CLは、第1の電極33Aの主流路33xを通じて第2の電極33B側に流れる。第2の電極33B側に流れた冷却液CLは、第2の電極33Bの主流路33xを通じて第2の金属パイプ31Bに流れる。このとき、第1の電極33Aの延出部332と第2の電極33Bの延出部332との間の円筒状の空間が冷却液CLに満たされて、当該冷却液CLが誘電体となりコンデンサ33が構成される。
【0044】
さらに本実施形態では、金属パイプ31及び絶縁パイプ32の接続部が、真空及び冷却液CLに対するシール構造を有している。このシール構造は、雄ねじ部31aの基端部に設けられたパッキン等のシール部材15により実現されているが、例えば管用テーパねじ構造を用いても良い。
【0045】
上述した構成により、金属パイプ31及び絶縁パイプ32の間のシール構造、金属パイプ31と各電極33A、33Bとの電気的接触が、雄ねじ部31a及び雌ねじ部32aの締結と共に行われるので、組み立て作業が非常に簡便となる。
【0046】
然して、本実施形態のアンテナ装置10は、アンテナ3の軸方向両端部3a、3bの間に設けられ、アンテナ3の外側周面3cよりも絶縁カバー4の内側周面4a側に突出するとともに、絶縁材料からなる突出絶縁部5をさらに備える。具体的に突出絶縁部5は、絶縁カバー4で覆われているアンテナ3の外側周面3cに設けられ、アンテナ3の外側周面3cから突出している。より詳細には、
図3及び
図4に示すように、突出絶縁部5を構成する絶縁体51は環状をなしており、絶縁体51の外側周面51aは、アンテナ3の外側周面3cよりも絶縁カバー4の内側周面4a側に位置している。これにより、アンテナ3が撓んだとしても、アンテナ3と絶縁カバー4との接触を回避している。なお、絶縁材料は、例えば石英、アルミナといった高融点セラミックスであり、長時間のプラズマ処理を行う場合でも、変形しにくい材料が好ましい。
【0047】
また、アンテナ3の外側周面3cには、絶縁体51を収容する収容凹部34が形成されている。具体的に収容凹部34は、絶縁カバー4で覆われているアンテナ3の外側周面3cに形成され、本実施形態において、金属パイプ31の軸方向端面311aと絶縁パイプ32の軸方向端面32cとの間に設けられている。
【0048】
より詳細には、金属パイプ31は、大径部311と、大径部311の軸方向端面311aに形成され、軸方向に延びる小径部312とを有する。また、絶縁パイプ32は、軸方向端面32cに形成され、軸方向に延びるとともに、小径部312が差し込まれる差し込み凹部321を有する。この構成により、収容凹部34は、大径部311の軸方向端面311a、小径部312の外側周面312a、及び、絶縁パイプ32の軸方向端面32cにより形成される。すなわち、大径部311の軸方向端面311a、及び、絶縁パイプ32の軸方向端面32cが、それぞれ絶縁体51の端面51c、51dに対向する対向面34a、34bを形成し、小径部312の外側周面312aが、収容凹部34の底面34cを形成する。
【0049】
そして、絶縁体51は収容凹部34に取り付けられる。具体的に絶縁体51は、小径部312の外側周面312aに沿って、大径部311の軸方向端面311aに移動させることにより金属パイプ31に取り付けられる。その後、小径部312を差し込み凹部321に差し込むことによって、絶縁体51は、収容凹部34に設けられる。
【0050】
絶縁体51が収容凹部34に取り付けられた状態において、絶縁体51の内側周面51bは、小径部312の外側周面312aに接し、絶縁体51の一方の端面51cの一部が大径部311の軸方向端面311aに接し、他方の端面51dの一部が絶縁パイプ32の軸方向端面32cに接している。これにより、絶縁体51は、軸方向において収容凹部34に固定される。また、絶縁体51が環状をなし、小径部312の外側周面312aに亘って設けられるので、絶縁体51が小径部312の径方向の移動を規制することにより、アンテナ3の撓みが抑制される。
【0051】
また、この状態において、絶縁体51の端面51c、51dの径方向の長さが、軸方向端面311a、32cの径方向の長さよりも長く構成されている。したがって、絶縁体51の端面51c、51dは、軸方向端面311a、32cに対して突出しており、絶縁体51の外側周面51aは、大径部311の外側周面311bよりも絶縁カバー4の内側周面4a側に位置する。すなわち、突出絶縁部5は、絶縁体51の外側周面51a、端面51c、51dの突出部分により構成されている。
【0052】
<実験例>
本実施形態におけるプラズマ処理装置100において、アンテナ3に高周波を印加させてArプラズマ(15Pa、3kW)を生成したところ、1000時間安定してArプラズマが点灯した。一方、従来のプラズマ処理装置において、アンテナに高周波を印加させてArプラズマ(15Pa、3kW)を生成したところ、累計400時間程度で金属パイプ31と絶縁パイプ32の突合せ部付近で絶縁カバーに穴が開き、容量素子が破損した。
【0053】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、突出絶縁部5において電界が集中しないので、プラズマ中のイオンが、突出絶縁部5に近接した絶縁カバー4に衝突することがなく、絶縁カバー4がエッチングされて損傷することを防ぐことができる。また、仮にアンテナ3又は絶縁カバー4が撓んだ場合であっても、突出絶縁部5によってアンテナ3と絶縁カバー4との接触を回避することができる。
【0054】
本実施形態によれば、アンテナ3は、導体要素31、絶縁要素32、及び、容量素子であるコンデンサ33を備えるLCアンテナであるので、コンデンサ33が一対の導体要素31と電気的に接続されており、アンテナ3の合成リアクタンスを、誘導性リアクタンスから容量性リアクタンスを差し引いた形にすることができる。その結果、アンテナ3のインピーダンスを低減させることができ、アンテナ3を長くする場合でもそのインピーダンスの増大が抑制され、アンテナ3に高周波電流が流れやすくなり、均一性の良いプラズマを効率良く発生させることができる。
【0055】
本実施形態によれば、突出絶縁部5が収容凹部34に設けられるので、軸方向における突出絶縁部5の移動は収容凹部34内に規制される。したがって、アンテナ3が撓みやすい箇所に収容凹部34を設けることによって、アンテナ3と絶縁カバー4との接触を回避することができる。
【0056】
特に本実施形態によれば、アンテナ3はLCアンテナであるので、アンテナ3を長くした場合に、金属パイプ31及び絶縁パイプ32の接続部分で撓みを発生しやすい。ここで、金属パイプ31の軸方向端面311aと絶縁パイプ32の軸方向端面32cとの間に収容凹部34が設けられ、絶縁体51が収容凹部34に収容されるので、アンテナ3の撓みが発生したとしても、突出絶縁部5によってアンテナ3と絶縁カバー4との接触をより回避することができる。
【0057】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0058】
前記実施形態において、アンテナ3は、導体要素31、絶縁要素32、及び、コンデンサ33とを備えるLCアンテナであったが、アンテナ3は、LCアンテナに限られず、その他のアンテナであってもよい。
【0059】
前記実施形態において、突出絶縁部5を構成する絶縁体51は環状をなすものであったが、絶縁体51の形状はこれに限られない。例えば、絶縁体51は、部分環状をなすものであってもよいし、突起形状をなすものであってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0060】
前記実施形態において、A-A断面図において、絶縁体51の外側周面51aは、絶縁カバー4の内側周面4aに沿った形状であったが、これに限られない。A-A断面図において、絶縁体51の外側周面51aは、凸状をなすもの、湾曲形状をなすもの、又は、その他の形状をなすものであってもよい。
【0061】
前記実施形態において、収容凹部34は、金属パイプ31の軸方向端面311aと絶縁パイプ32の軸方向端面32cとの間に設けられていたが、収容凹部34が設けられる位置はこれに限られない。例えば、
図5に示すように、収容凹部34は、金属パイプ31の大径部311の外側周面311bに形成されていてもよい。具体的に収容凹部34は、大径部311の軸方向端面311a及び他方の端面の間の外側周面311bに形成される。
【0062】
この場合、
図6に示すように、絶縁体51は、分割された2つの部分環状をなしており、2つの絶縁体51を、収容凹部34を挟むように被せることにより、2つの絶縁体51が収容凹部34に取り付けられる。絶縁体51が収容凹部34に取り付けられた状態において、絶縁体51の内側周面51bは、収容凹部34を形成する外側周面311bと接し、絶縁体51の端面51c、51dは、収容凹部34の対向面34a、34bと接している。これにより、突出絶縁部5は、絶縁要素32から離れて収容凹部34に設けられるので、突出絶縁部5と絶縁要素32との接触を防ぐことができ、突出絶縁部5が絶縁要素32に与える温度影響を抑制することができる。その結果、絶縁パイプ32の間で温度差の発生を防止することができるので、絶縁パイプ32の破損を防止することができる。なお、
図6において部分環状をなす絶縁体51は、2つであったが、3つ以上であってもよいし、1つであってもよい。
【0063】
または、収容凹部34が、金属パイプ31の大径部311の外側周面311bに形成される場合、
図7に示すように、絶縁体51の端面51c、51dが、収容凹部34の対向面34a、34bから離れて設けられていてもよい。この場合、突出絶縁部5は、絶縁要素32に加えて導体要素31からも離れて設けられるので、突出絶縁部5が導体要素31及び絶縁要素32に与える温度影響を抑制することができる。
【0064】
前記実施形態において、小径部312は導体パイプ31に形成され、差し込み凹部321は絶縁パイプ32に形成されていたが、小径部が絶縁パイプ32に形成され、差し込み凹部が導体パイプ31に形成されていてもよい。
【0065】
加えて、金属パイプ及び絶縁パイプは、1つの内部流路を有する管状をなすものであったが、2以上の内部流路を有するもの、或いは、分岐した内部流路を有するものであっても良い。また、金属パイプ及び絶縁パイプは中実のものであっても良い。
【0066】
前記実施形態の電極において延出部は、円筒状であったが、その他の角筒状であっても良いし、平板状又は湾曲又は屈曲した板状であっても良い。
【0067】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
100・・・プラズマ処理装置
10 ・・・アンテナ装置
W ・・・基板
P ・・・誘導結合プラズマ
2 ・・・真空容器
3 ・・・アンテナ
31 ・・・金属パイプ(導体要素)
32 ・・・絶縁パイプ(絶縁要素)
33 ・・・コンデンサ
33A・・・第1の電極
33B・・・第2の電極
34 ・・・収容凹部
4 ・・・絶縁カバー
5 ・・・突出絶縁部
51 ・・・絶縁体
CL ・・・冷却液(液体の誘電体)