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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100106
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
B60N2/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003848
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BC22
3B087CE06
(57)【要約】
【課題】シートバックが起立姿勢で使用される場合にチャイルドシート固定用のアンカを固定状態にすることが可能であると共にシートバックが前倒しされる場合にアンカを回動させることが可能な車両用シートを得る。
【解決手段】第一ロック機構はシートバックを起立姿勢でロック可能となっている。起立姿勢のシートバックのシート下方側にアンカ装置40が配置され、アンカ装置40はアンカ42を備える。アンカ42は、使用位置42Xと退避位置との間でシート幅方向の軸線回りに回動可能になっている。アンカ装置40に設けられた第二ロック機構46はアンカ42を使用位置42Xでロックすると共に当該ロックを解除可能になっている。連動機構80は、第一ロック機構と第二ロック機構46とを連結し、第一ロック機構のロックが解除されるのに連動させて第二ロック機構46のロックを解除させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションに着座する乗員の背部を支持可能な起立姿勢と、前倒しされて背凭れ面をシート下方側へ向けて配置させた前倒し姿勢と、の間でシート幅方向の軸線回りに回動可能とされたシートバックと、
前記起立姿勢の前記シートバックに対してシート下方側に配置され、チャイルドシート固定用のアンカを備え、チャイルドシートを固定可能な使用位置と、前記使用位置と比べて先端位置がシート下方側に下げられた退避位置と、の間で前記アンカをシート幅方向の軸線回りに回動可能に支持するアンカ装置と、
前記シートバック及び車体側に構成部が設けられ、前記シートバックを前記起立姿勢で前記車体側にロックすると共に当該ロックを解除可能とされた第一ロック機構と、
前記アンカ装置に設けられ、前記アンカを前記使用位置でロックすると共に当該ロックを解除可能とされた第二ロック機構と、
前記第一ロック機構と前記第二ロック機構とを連結し、前記第一ロック機構のロックが解除されるのに連動させて前記第二ロック機構のロックを解除させる連動機構と、
を備える車両用シート。
【請求項2】
前記アンカ装置は、前記アンカの回動の中心軸がその軸線方向にスライド可能に支持されるように構成され、
前記連動機構は、前記第一ロック機構のロックが解除される場合に、前記中心軸をその軸線方向にスライドさせることによって、前記第二ロック機構のロックを解除させる、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第二ロック機構は、
前記中心軸の外周部にその周方向に沿って間隔をあけて形成された複数の凸状の係合部と、
前記中心軸の軸受孔に形成されて前記係合部が係合可能な第一被係合部と、
前記アンカの取付基部に貫通形成されて前記中心軸が挿通され、前記係合部が係合可能な第二被係合部が形成された貫通孔と、
を有し、前記中心軸がその軸線方向にスライドすることによって、前記係合部が前記第一被係合部及び前記第二被係合部と係合するロック状態と、前記係合部が前記第一被係合部及び前記第二被係合部の両方と係合しないアンロック状態と、に切り替わるように構成されている、請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記第二ロック機構は、前記中心軸を前記ロック状態となる位置方向へ付勢する付勢部材を有する、請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
シートクッションと、
前記シートクッションに着座する乗員の背部を支持可能な起立姿勢と、前倒しされて背凭れ面をシート下方側へ向けて配置させた前倒し姿勢と、の間でシート幅方向の軸線回りに回動可能とされ、前記起立姿勢でロック可能なシートバックと、
前記起立姿勢の前記シートバックに対してシート下方側に配置され、チャイルドシート固定用のアンカを備え、チャイルドシートを固定可能な使用位置と、前記使用位置と比べて先端位置がシート下方側に下げられた退避位置と、の間で前記アンカをシート幅方向の軸線回りに回動可能に支持するアンカ装置と、
前記シートバックのフレームの下端部に固定されて前記シートバックの回動の中心を成す第一回転軸と、
前記アンカと一体的に設けられて前記アンカの回動の中心を成す第二回転軸と、
複数の歯車を含んで構成されて前記第一回転軸と前記第二回転軸とを連結し、前記第一回転軸の回転力を前記第二回転軸に伝達して前記第二回転軸を前記第一回転軸と同じ方向に回転させる連動機構と、
を備える車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、チャイルドシートを取り付けることができる起伏式自動車用シートに関する技術が開示されている。簡単に説明すると、この自動車用シートでは、座席シートのシート座部を前方に反転させて水平とし、前記シート座部の位置に背もたれを倒して平坦な床とすることを可能になっている。そして、座席シートのシート座部の後部位置にはアイソフィックスバーの保持部材が回動可能に取り付けられている。これにより、チャイルドシートを取り付けることができて、かつ平坦な床となった座席シートの上にアイソフィックスバーが突き出ないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-28607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成では、チャイルドシートを固定する際に、アイソフィックスバーの保持部材が回動してしまう可能性があり、この点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、シートバックが起立姿勢で使用される場合にチャイルドシート固定用のアンカを固定状態にすることが可能であると共にシートバックが前倒しされる場合にアンカを回動させることが可能な車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、シートクッションと、前記シートクッションに着座する乗員の背部を支持可能な起立姿勢と、前倒しされて背凭れ面をシート下方側へ向けて配置させた前倒し姿勢と、の間でシート幅方向の軸線回りに回動可能とされたシートバックと、前記起立姿勢の前記シートバックに対してシート下方側に配置され、チャイルドシート固定用のアンカを備え、チャイルドシートを固定可能な使用位置と、前記使用位置と比べて先端位置がシート下方側に下げられた退避位置と、の間で前記アンカをシート幅方向の軸線回りに回動可能に支持するアンカ装置と、前記シートバック及び車体側に構成部が設けられ、前記シートバックを前記起立姿勢で前記車体側にロックすると共に当該ロックを解除可能とされた第一ロック機構と、前記アンカ装置に設けられ、前記アンカを前記使用位置でロックすると共に当該ロックを解除可能とされた第二ロック機構と、前記第一ロック機構と前記第二ロック機構とを連結し、前記第一ロック機構のロックが解除されるのに連動させて前記第二ロック機構のロックを解除させる連動機構と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、シートバックは、シートクッションに着座する乗員の背部を支持可能な起立姿勢と、前倒しされて背凭れ面をシート下方側へ向けて配置させた前倒し姿勢と、の間でシート幅方向の軸線回りに回動可能となっている。また、起立姿勢のシートバックに対してシート下方側にはアンカ装置が配置されており、アンカ装置のチャイルドシート固定用のアンカは、チャイルドシートを固定可能な使用位置と、使用位置と比べて先端位置がシート下方側に下げられた退避位置と、の間でシート幅方向の軸線回りに回動可能に支持される。
【0008】
また、シートバック及び車体側に構成部が設けられた第一ロック機構は、シートバックを起立姿勢で車体側にロックすると共に当該ロックを解除可能になっている。また、アンカ装置に設けられた第二ロック機構は、アンカを使用位置でロックすると共に当該ロックを解除可能になっている。この第二ロック機構によってアンカが使用位置でロックされることで、アンカが固定された状態でチャイルドシートを固定することができる。
【0009】
ここで、連動機構は、第一ロック機構と第二ロック機構とを連結し、第一ロック機構のロックが解除されるのに連動させて第二ロック機構のロックを解除させる。このため、第一ロック機構のロックが解除されてシートバックが起立姿勢から前倒し姿勢になるように回動される場合、第二ロック機構のロックも解除されてアンカは回動可能となるので、アンカが存在してもシートバックの回動は妨げられない。
【0010】
請求項2に記載する本発明の車両用シートは、請求項1に記載の構成において、前記アンカ装置は、前記アンカの回動の中心軸がその軸線方向にスライド可能に支持されるように構成され、前記連動機構は、前記第一ロック機構のロックが解除される場合に、前記中心軸をその軸線方向にスライドさせることによって、前記第二ロック機構のロックを解除させる。
【0011】
上記構成によれば、アンカの回動の中心軸を第二ロック機構のロック解除のための要素として兼用することができる。
【0012】
請求項3に記載する本発明の車両用シートは、請求項2に記載の構成において、前記第二ロック機構は、前記中心軸の外周部にその周方向に沿って間隔をあけて形成された複数の凸状の係合部と、前記中心軸の軸受孔に形成されて前記係合部が係合可能な第一被係合部と、前記アンカの取付基部に貫通形成されて前記中心軸が挿通され、前記係合部が係合可能な第二被係合部が形成された貫通孔と、を有し、前記中心軸がその軸線方向にスライドすることによって、前記係合部が前記第一被係合部及び前記第二被係合部と係合するロック状態と、前記係合部が前記第一被係合部及び前記第二被係合部の両方と係合しないアンロック状態と、に切り替わるように構成されている。
【0013】
上記構成によれば、中心軸の外周部には、その周方向に沿って間隔をあけて複数の凸状の係合部が形成されている。これに対して、中心軸の軸受孔には、係合部が係合可能な第一被係合部が形成されている。また、アンカの取付基部に貫通形成されて中心軸が挿通される貫通孔には、係合部が係合可能な第二被係合部が形成されている。さらに、中心軸がその軸線方向にスライドすることによって、係合部が第一被係合部及び第二被係合部と係合するロック状態と、係合部が第一被係合部及び第二被係合部の両方と係合しないアンロック状態と、に切り替わる。このため、構成を複雑化しないで第二ロック機構によるロック及びロック解除を実現することができる。
【0014】
請求項4に記載する本発明の車両用シートは、請求項3に記載の構成において、前記第二ロック機構は、前記中心軸を前記ロック状態となる位置方向へ付勢する付勢部材を有する。
【0015】
上記構成によれば、第一ロック機構のロックが解除されない場合、付勢部材が中心軸を付勢することによって、第二ロック機構を自動的にロック状態にさせることができるので、アンカを自動的に固定することができる。
【0016】
請求項5に記載する本発明の車両用シートは、シートクッションと、前記シートクッションに着座する乗員の背部を支持可能な起立姿勢と、前倒しされて背凭れ面をシート下方側へ向けて配置させた前倒し姿勢と、の間でシート幅方向の軸線回りに回動可能とされ、前記起立姿勢でロック可能なシートバックと、前記起立姿勢の前記シートバックに対してシート下方側に配置され、チャイルドシート固定用のアンカを備え、チャイルドシートを固定可能な使用位置と、前記使用位置と比べて先端位置がシート下方側に下げられた退避位置と、の間で前記アンカをシート幅方向の軸線回りに回動可能に支持するアンカ装置と、前記シートバックのフレームの下端部に固定されて前記シートバックの回動の中心を成す第一回転軸と、前記アンカと一体的に設けられて前記アンカの回動の中心を成す第二回転軸と、複数の歯車を含んで構成されて前記第一回転軸と前記第二回転軸とを連結し、前記第一回転軸の回転力を前記第二回転軸に伝達して前記第二回転軸を前記第一回転軸と同じ方向に回転させる連動機構と、を備える。
【0017】
上記構成によれば、シートバックは、シートクッションに着座する乗員の背部を支持可能な起立姿勢と、前倒しされて背凭れ面をシート下方側へ向けて配置させた前倒し姿勢と、の間でシート幅方向の軸線回りに回動可能となっており、起立姿勢でロック可能になっている。また、起立姿勢のシートバックに対してシート下方側にはアンカ装置が配置されており、アンカ装置のチャイルドシート固定用のアンカは、チャイルドシートを固定可能な使用位置と、使用位置と比べて先端位置がシート下方側に下げられた退避位置と、の間でシート幅方向の軸線回りに回動可能に支持される。
【0018】
また、この車両用シートでは、シートバックのフレームの下端部に固定された第一回転軸は、シートバックの回動の中心を成し、アンカと一体的に設けられた第二回転軸は、アンカの回動の中心を成している。第一回転軸と第二回転軸とは連動機構によって連結され、連動機構は、複数の歯車を含んで構成され、第一回転軸の回転力を第二回転軸に伝達して第二回転軸を第一回転軸と同じ方向に回転させる。これにより、シートバックを起立姿勢から前倒し方向へ回動させるとそれに連動してアンカは使用位置から退避位置へ向けて回動する。また、シートバックが起立姿勢でロックされた場合には、連動機構の複数の歯車は、回転できないため、アンカ装置のアンカは使用位置で固定される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の車両用シートによれば、シートバックが起立姿勢で使用される場合にチャイルドシート固定用のアンカを固定状態にすることが可能であると共にシートバックが前倒しされる場合にアンカを回動させることが可能であるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートをシートバック起立姿勢の状態で示す模式的な側面図である。
図2図1のアンカ装置及び連動機構の一部を斜め前方側から見て拡大した状態で示す斜視図である。
図3図2のアンカ装置及び連動機構の一部を分解して示す分解斜視図である。
図4図4(A)はアンカがロック状態にあるアンカ装置及び連動機構の一部を示す背面図である。図4(B)はアンカがアンロック状態にあるアンカ装置及び連動機構の一部を示す背面図である。
図5図5(A)はアンカがロック状態にあるアンカ装置の右側構成部を示す斜視図である。図5(B)はアンカがアンロック状態にあるアンカ装置の右側構成部を示す斜視図である。
図6図6(A)はアンカがロック状態にあるアンカ装置の左側構成部及び連動機構の一部を示す斜視図である。図6(B)はアンカがアンロック状態にあるアンカ装置の左側構成部及び連動機構の一部を示す斜視図である。
図7図1の車両用シートをシートバック前倒し姿勢の状態で示す模式的な側面図(第一ロック機構及び連動機構の一部の図示は省略した図)である。
図8図7の状態にあるアンカ装置の右側構成部を拡大して示す斜視図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る車両用シートにおけるシートバックフレームの下端側の一部とアンカ装置との連結状態を示す斜視図である。
図10図10(A)は図9に示す構成部をシートバック起立姿勢の状態で示す側面図である。図10(B)は図9に示す構成部をシートバック前倒し姿勢の状態で示す側面図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る車両用シートにおけるシートバックフレームの下端側の一部とアンカ装置との連結状態を示す斜視図である。
図12図11の矢印A方向視の図である。
図13図13(A)は図11に示す構成部をシートバック起立姿勢の状態で示す側面図である。図13(B)は図11に示す構成部をシートバック前倒し姿勢の状態で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車両用シートについて図1図8を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両用シートの前方側を示し、矢印UPは車両用シートの上方側を示し、矢印RHは車両用シートの右方側を示し、矢印LHは車両用シートの左方側を示している。また、図面の寸法比率は、説明の便宜上、適宜誇張されており、実際の寸法比率とは異なる場合がある。さらに、各図においては、図面を見易くする関係から、一部の符号を省略している場合がある。
【0022】
(構成)
図1には、車両用シート10の模式的な側面図が示されている。本実施形態に係る車両用シート10は、例えば、自動車のリヤシートとされ、ダブルフォールディング機構を備えており、図7に示されるようなシートアレンジメントが可能とされている。図1に示されるように、車両用シート10は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を支持するシートバック14と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、を備えている。図1では、シートクッション12は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持する着座用位置12Xに配置された状態が図示され、シートバック14は、シートクッション12に着座する乗員の背部を支持可能な起立姿勢14Xにある状態が図示されている。
【0023】
本実施形態の車両用シート10が備えるダブルフォールディング機構は、公知の機構であるため詳細説明は省略するが、図7に示されるように、シートクッション12の座面12Aを跳ね上げてシート前方側へ向けた状態にし、それによって空けられた空間にシートバック14を前倒してフルフラット状態で格納することができる機構である。図中において、シートクッション12と車体フロア20側とを連結しているのは、左右一対のリンク18であり、このリンク18がシート幅方向の軸線回りに回動することで、シートクッション12を回動させることができるようになっている。
【0024】
すなわち、図1に示されるシートクッション12は、乗員の着座用位置12Xに配置可能でかつ当該着座用位置12Xから図7に示される退避位置12Yに移動可能に設けられている。また、図1及び図7に示されるシートバック14は、一例として、車体側部側に回動可能に支持され、図1に示される起立姿勢14Xと、図7に示されるように前倒しされて背凭れ面14Aをシート下方側に向けて配置させた前倒し姿勢14Yと、の間でシート幅方向の回転軸14Jの軸線回りに回動可能に構成されている。
【0025】
また、図1に示されるシートバック14は、起立姿勢14Xでロック可能とされている。すなわち、車両用シート10は、シートバックロック用の第一ロック機構30を有している。第一ロック機構30は、シートバック14及び車体側に構成部が設けられ、シートバック14を起立姿勢14Xで車体側にロックすると共に当該ロックを解除可能とされる。なお、第一ロック機構30には、公知の構成を適用できるため、第一ロック機構30の詳細説明は省略するが、以下、第一ロック機構30について簡単に説明する。
【0026】
第一ロック機構30は、一例として、シートバック14の側面部14Sに設けられたロック部材32Aを備えたロック装置32(ブロック化して図示)と、車体側部22(図中では車体側部の一部を矩形の二点鎖線で図示)に設けられてロック部材32Aが係合(ロック)されるストライカ34と、を有する。また、第一ロック機構30は、ロック解除用の機構として、一例として、シートバック14の肩口部14Bに設けられた操作レバー36(模式化して図示)と、操作レバー36とロック装置32とを接続する操作力伝達部38と、を有している。操作力伝達部38は、例えばケーブルを含んで構成されている。
【0027】
操作レバー36が操作された場合、その操作力が操作力伝達部38を介してロック装置32に伝達され、ロック装置32のロック部材32Aが変位することによってストライカ34に対するロック部材32Aの係合状態(ロック状態)が解除されるようになっている。
【0028】
起立姿勢14Xのシートバック14に対してシート下方側には、アンカ装置40が配置されている。アンカ装置40は、チャイルドシートを車両用シートに固定する方式の国際標準規格であるISOFIXに対応した装置とされ、更に可倒式の装置とされる。すなわち、アンカ装置40は、チャイルドシート固定用のアンカ(「ISO-FIXワイヤ」ともいう。)42を備え、チャイルドシート(図示省略)を固定可能な使用位置42Xと、使用位置42Xと比べて先端位置(シート前後方向の前端側の位置)がシート下方側に下げられた退避位置42Y(図7参照)と、の間でアンカ42をシート幅方向の軸線回りに回動可能に支持する構成となっている。なお、チャイルドシートには、その下端部における後端部からシート後方側へ突出するコネクタを有するものが適用されるが、そのようなチャイルドシートは、例えば、特開2017-217985号公報等で公知であるため、図示及び詳細説明を省略する。
【0029】
図2には、アンカ装置40等を斜め前方側から見た状態の斜視図が示されている。なお、図2に示されるアンカ装置40を含むユニットは、アンカ装置ユニット(「ISO-FIXユニット」ともいう。)として把握することができる。アンカ装置40には、第二ロック機構46が設けられており、第二ロック機構46は、アンカ42を使用位置42Xでロックすると共に当該ロックを解除可能とされている。以下、第二ロック機構46が設けられたアンカ装置40について詳細に説明する。
【0030】
図3には、図2のアンカ装置40等を分解した分解斜視図が示されている。図2及び図3に示されるように、アンカ42は、シート上方側から見てシート後方側が開放されたU字状の固定用ワイヤ部42Aと、固定用ワイヤ部42Aの基部側に一体に形成された屈曲パネル部42Bと、を有している。
【0031】
図1及び図7に示されるように、固定用ワイヤ部42Aは、本実施形態では、シートバック14の下端側の部分の近傍に配置される。シートバック14が起立姿勢14X(図1参照)から前倒し姿勢14Y(図7参照)になるように回動される場合、アンカ42は、シートバック14の下端側の部分に押されることによって、使用位置42X(図1参照)から退避位置42Y(図7参照)へ回動するように構成されている。
【0032】
図2及び図3に示されるように、アンカ42において、屈曲パネル部42Bは、固定用ワイヤ部42Aの左右構成部の基部上面側に配置されてかつ固定用ワイヤ部42Aの左右構成部をシート幅方向に繋ぐ上パネル部42Uを備えると共に、上パネル部42Uのシート幅方向の両端からシート下方側に曲げられた左右一対のサイドパネル部42Sを備えている。上パネル部42Uは、シート上方側から見てシート幅方向を長手方向とする略矩形状とされている。左右一対のサイドパネル部42Sは、互いにシート幅方向に対向するように配置され、両者間に固定用ワイヤ部42Aの左右構成部の基部が位置している。左右一対のサイドパネル部42Sには、アンカ42の回動の中心軸としてのシャフト44が貫通している(詳細後述)。
【0033】
シャフト44の軸線方向の両側は、ベースブラケットアッシー48に支持されている。ベースブラケットアッシー48は、車体フロア20(図1参照)に固定され、アッパブラケット部50とロアブラケット部60とが一体化されて構成されている。
【0034】
アッパブラケット部50は、シート幅方向に延在する矩形状の底板部52と、底板部52のシート幅方向の両端から曲げられて立ち上がる左右一対の側板部54と、を有している。なお、図2及び図3では、左右一対の側板部54のうちのシート左右方向右側の側板部54については符号54の後に括弧書きで54Rを付し、左右一対の側板部54のうちのシート左右方向左側の側板部54については符号54の後に括弧書きで54Lを付す。なお、以下の説明において、シート左右方向右側の側板部54(54R)及びシート左右方向左側の側板部54(54L)の両方を指す場合には、単に左右一対の側板部54という。前述したアンカ42の左右一対のサイドパネル部42Sは、左右一対の側板部54との間に配置される。
【0035】
図3に示されるように、アッパブラケット部50の左右一対の側板部54には、シート幅方向に貫通する軸受孔56が形成されている。左右一対の軸受孔56は、シャフト44の軸受孔とされる。この左右一対の軸受孔56によって、シャフト44は、その軸線回りに回転可能に支持される。また、本実施形態のアンカ装置40は、左右一対の軸受孔56によって、図4(A)及び図4(B)に示されるように、シャフト44がその軸線方向にスライド可能に支持されるように構成されている。
【0036】
図3に示されるように、シャフト44の外周部には、その周方向に沿って間隔をあけて複数の凸状の係合部44Eが形成されている。複数の凸状の係合部44Eは、シャフト44の軸線方向の両側の端部に近い部位に形成されている。これに対して、軸受孔56には、係合部44Eが係合可能な第一被係合部56A(部分拡大図参照)が形成されている。また、アンカ42のサイドパネル部42Sの取付基部42Cには、貫通孔42Hが貫通形成されており、この貫通孔42Hには、シャフト44が挿通されると共に、係合部44Eが係合可能な第二被係合部42D(部分拡大図参照)が形成されている。
【0037】
ここで、図5及び図6に拡大して示されるシート幅方向右側及びシート幅方向左側の第二ロック機構46は、シャフト44がその軸線方向にスライドすることによって、係合部44Eが第一被係合部56A(図3参照)及び第二被係合部42Dと係合(嵌合)するロック状態46X(図5(A)及び図6(A)参照)と、係合部44Eが第一被係合部56A(図3参照)及び第二被係合部42Dの両方と係合しないアンロック状態46Y(図5(B)及び図6(B)参照)と、に切り替わるように構成されている。
【0038】
また、図3に示されるように、アッパブラケット部50には、左右一対の側板部54のそれぞれの後端部側の上端部から互いに接近する側へ曲げられたストッパ部58が形成されている。すなわち、アッパブラケット部50のストッパ部58は、左右一対で設けられている。左右一対のストッパ部58には、図2に示されるアンカ42の左右一対のサイドパネル部42Sの後端面が当接可能になっている。
【0039】
図2及び図3に示されるように、ロアブラケット部60は、シート幅方向に延在する矩形状の底板部62と、底板部62のシート幅方向の一端側(ここではシート左右方向左端側)から曲げられて立ち上がる側板部64と、を有している。前述したアッパブラケット部50の底板部52は、ロアブラケット部60の底板部62の上面において側板部64側とは反対側に寄せられた状態で配置されている。
【0040】
図3に示されるように、アッパブラケット部50の底板部52には取付孔52Aが貫通形成され、ロアブラケット部60の底板部62には、取付孔52Aに対応する位置に取付孔62Aが貫通形成されている。取付孔52A、62Aは、ボルト挿通用とされ、取付孔52A、62Aを上方側から貫通したボルト(図示省略)の軸部が車体フロア20(図1参照)側の部材をも貫通してナット(図示省略)に螺合されることによって、ベースブラケットアッシー48が車体フロア20(図1参照)に固定される。
【0041】
一方、シャフト44の外周面におけるシート左右方向右端側には、取付溝44Gが全周に亘って形成されており、この取付溝44Gには、円環状の止め輪66の内周端側が取り付けられる。図2に示されるように、シャフト44のシート左右方向右端側の端部44Aは、アッパブラケット部50に対してシート左右方向右側に突き出しており、止め輪66は、アッパブラケット部50のシート左右方向右側の側板部54(54R)よりもシート左右方向右側に配置されてシャフト44に同軸的に固着されている。
【0042】
止め輪66とシート左右方向右側の側板部54(54R)との間には、付勢部材としての圧縮コイルバネ68が配置されている。圧縮コイルバネ68は、シャフト44の外周側に巻装されている。圧縮コイルバネ68は、第二ロック機構46の一部を構成し、シャフト44をロック状態46X(図4(A)参照)となる位置方向へ付勢する。
【0043】
シャフト44の外周部のシート幅方向中間部には、ねじりコイルバネ70が巻装されている。ねじりコイルバネ70は、アンカ42の左右一対のサイドパネル部42Sの間に配置されている。ねじりコイルバネ70は、螺旋状のコイル部70Aと、コイル部70Aの一端部からシート前方斜め下方側に直線状に延出された第一腕部70Bと、コイル部70Aの他端部からシート上方斜め前方側へ直線状に延出された第二腕部70Cと、を有している。ねじりコイルバネ70は、第一腕部70Bの先端側がアッパブラケット部50の底板部52の前端側凹部52B(図3では図示省略)に嵌まり込むと共に、第二腕部70Cの先端側がアンカ42の上パネル部42Uの前端側に当接して、アンカ42の上パネル部42Uの前端側をシート上方斜め後方側へ付勢している。アンカ42は、図2に示される使用位置42Xでは、左右一対のサイドパネル部42Sの後端面がそれぞれストッパ部58に当接して回動が規制されている。
【0044】
シャフト44のシート左右方向左端側の端部44Bは、アッパブラケット部50に対してシート左右方向左側に突き出している。シャフト44のシート左右方向左端側の端部44Bのうちアッパブラケット部50側の部分には、径方向外側へ張り出した鍔状のフランジ部44Fが形成されている。図2に示される状態では、前述した圧縮コイルバネ68の付勢力によって、止め輪66が取り付けられたシャフト44がシート左右方向右側へ付勢されてフランジ部44Fがアッパブラケット部50のシート左右方向左側の側板部54(54L)に当接した状態になっている。
【0045】
図3に示されるように、シャフト44のシート左右方向左端側の端部44Bのうちフランジ部44Fよりも先端側の部分には、取付孔44Hが貫通形成されている。取付孔44Hは、第一ロック機構30(図1参照)と第二ロック機構46(図2参照)とを連結する連動機構80との接続用とされ、連動機構80の一端部を構成する取付金具82が取り付けられる。
【0046】
連動機構80は、ロック解除ケーブル84(図3等では一部を図示)を有している。ロック解除ケーブル84は、管状のアウタケーブル86と、管状のアウタケーブル86の内部に挿通された線状のインナケーブル88と、を備え、インナケーブル88の一端部に設けられた取付金具固定部89に取付金具82が取り付けられている。
【0047】
ロアブラケット部60の側板部64には、上端側から切り欠かれた保持溝部64Aが形成され、この保持溝部64Aにアウタケーブル86の一端部が配置されて保持されている。また、インナケーブル88の他端部は、図1に示される第一ロック機構30に接続されており、操作レバー36が第一ロック機構30のロック解除操作をされた場合、図4(B)及び図6(B)に示されるように、インナケーブル88は引っ張られるようになっている(矢印B参照)。
【0048】
以上の構成によって、図2に一部が示される連動機構80は、第一ロック機構30(図1参照)のロックが解除される場合に、シャフト44をその軸線方向にスライドさせることによって、第一ロック機構30(図1参照)のロックが解除されるのに連動させて第二ロック機構46のロックを解除させるようになっている。つまり、連動機構80は、シートバック14(図1参照)とアンカ装置40とを連結してシートバック14のロック解除に連動させてアンカ42が使用位置42Xでロックされた状態を解消させるように構成されている。
【0049】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0050】
図1及び図7に示されるように、シートクッション12は、乗員の着座用位置12X(図1参照)に配置可能でかつ当該着座用位置12Xから退避位置12Y(図7参照)に移動可能になっている。また、シートバック14は、図1に示されるようにシートクッション12に着座する乗員の背部を支持可能な起立姿勢14Xと、図7に示されるように前倒しされて背凭れ面14Aをシート下方側に向けて配置させた前倒し姿勢14Yと、の間でシート幅方向の軸線回りに回動可能になっている。さらに、図1に示される第一ロック機構30は、シートバック14を起立姿勢14Xでロックすると共に当該ロックを解除可能となっている。
【0051】
一方、起立姿勢14Xのシートバック14に対してシート下方側にはアンカ装置40が配置され、このアンカ装置40は、チャイルドシート固定用のアンカ42を備えている。アンカ42は、チャイルドシートを固定可能な使用位置42Xと、使用位置42Xと比べて先端位置がシート下方側に下げられた退避位置42Y(図7参照)と、の間でシート幅方向の軸線回りに回動可能になっている。また、図2に示されるアンカ装置40に設けられた第二ロック機構46は、アンカ42を使用位置42Xでロックすると共に当該ロックを解除可能になっている。このため、第二ロック機構46によってアンカ42が使用位置42Xでロックされることで、アンカ42が固定された状態でチャイルドシートを固定することができ、固定式のアンカと同様の使用感でアンカ42を使用することができる。
【0052】
また、本実施形態では、連動機構80は、第一ロック機構30(図1参照)と第二ロック機構46とを連結し、第一ロック機構30のロックが解除されるのに連動させて第二ロック機構46のロックを解除させる。このため、図1に示される第一ロック機構30のロックが解除されてシートバック14が起立姿勢14Xから前倒し姿勢14Y(図7参照)になるように回動される場合、図5(B)及び図6(B)に示されるように第二ロック機構46のロックも解除されて図8に示されるようにアンカ42はシート下方側(矢印42R方向参照)へ回動可能となるので、図1に示されるシートバック14がアンカ42に当たってもアンカ42がシート下方側へ回動されることでシートバック14の回動は妨げられない。なお、図8の矢印Cは、第二ロック機構46のロック解除時におけるシャフト44の移動方向を示している。
【0053】
また、本実施形態では、図4(A)及び図4(B)に示されるように、アンカ42の回動の中心軸としてのシャフト44は、その軸線方向にスライド可能に支持されている。連動機構80は、第一ロック機構30(図1参照)のロックが解除される場合に、インナケーブル88が引っ張られて移動することによってシャフト44をその軸線方向の一方側(図4(B)の矢印B方向参照)にスライド(摺動)させ、そのスライドによって図4(B)に示される状態にして第二ロック機構46のロックを解除させる。したがって、本実施形態では、アンカ42の回動の中心軸であるシャフト44を第二ロック機構46のロック解除のための要素として兼用することができる。
【0054】
また、本実施形態では、図5及び図6に示されるように、第二ロック機構46は、シャフト44がその軸線方向にスライドすることによって、係合部44Eが第一被係合部56A(図3参照)及び第二被係合部42Dと係合するロック状態46X(図5(A)及び図6(A)参照)と、係合部44Eが第一被係合部56A(図3参照)及び第二被係合部42Dの両方と係合しないアンロック状態46Y(図5(B)及び図6(B)参照)と、に切り替わる。このため、構成を複雑化しないで第二ロック機構46によるロック及びロック解除を実現することができる。
【0055】
また、本実施形態では、図2に示されるように、第二ロック機構46は、シャフト44をロック状態46X(図4(A)参照)となる位置方向へ付勢する圧縮コイルバネ68を有する。このため、第一ロック機構30のロックが解除されない場合、圧縮コイルバネ68がシャフト44を付勢することによって、第二ロック機構46を自動的にロック状態にさせることができるので、アンカ42を自動的に固定することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の図1に示される車両用シート10によれば、シートバック14が起立姿勢14Xで使用される場合にチャイルドシート固定用のアンカ42を固定状態にすることが可能であると共にシートバック14が前倒しされる場合にアンカ42を回動させることができる。
【0057】
なお、本実施形態のアンカ装置40は、車体フロア20に固定されているので、シートクッション12、シートバック14及びヘッドレスト16からなるシート本体においては、アンカ装置40を設置するための強度対策をする必要がなくなるため、シート本体の重量化を抑えることができる。
【0058】
また、本実施形態は、例えば特開2003-165365号公報に開示されているようなシートバックの下端部に切り欠き部を形成してストライカ(アンカ)が起立状態のシートバックと干渉するのを回避するという構成にはしていないので、シートバック14の外観品質が維持される。また、前記の対比例のようなシートバックの下端部に切り欠き部を形成した構成の場合、シートバックの回動時にシートバックパッドの下端部の薄い部分でストライカ(アンカ)を押すことになるので、繰り返し使用された場合、シートバックパッドの変形、擦り切れ等が懸念されるが、本実施形態では前記の対比例のような切り欠き部が形成されていないのでシートバック14の下端部の変形、擦り切れが抑えられる。
【0059】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、図9及び図10を用いて説明する。図9には、第2の実施形態に係る車両用シート90におけるシートバックフレーム14Fの下端側の一部とアンカ装置40との連結状態が斜視図で示されている。また、図10(A)は図9に示す構成部をシートバック起立姿勢の状態で示す側面図であり、図10(B)は図9に示す構成部をシートバック前倒し姿勢の状態で示す側面図である。
【0060】
図9及び図10に示されるように、本実施形態の車両用シート90は、シートバック14が回動する場合に連結機構94を介してアンカ装置40が荷重を受ける点で、第1の実施形態に係る車両用シート10とは異なる。他の構成は、第1の実施形態と実質的に同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
図10に示されるように、連結機構94は、シートバックフレーム14Fの下端側に設けられたブロック状部材92と、アンカ装置40のアンカ42における上パネル部42Uの後端部と、を連結する。なお、上パネル部42Uは、第1の実施形態の上パネル部42U(図2等参照)よりもシート後方側に延長された延長部42Eを備えている点で第1の実施形態の上パネル部42Uとは異なるが、便宜上同一符号を付す。
【0062】
図9に示されるように、ブロック状部材92は、連結機構94の一端側を取り付けるための取付フランジ部92Fを備えている。取付フランジ部92Fには、シートバック前方側から切り欠かれた切欠部92Aが形成されている。切欠部92Aの前端側の開放部はスリット状に形成され、切欠部92Aの前端側を除く部分は円孔状に形成されている。
【0063】
連結機構94は、連動ワイヤ96及び引張りコイルバネ98(図9及び図10ではコイル部分を簡略化して図示)を備えている。連動ワイヤ96の一端部にはボール部97が取り付けられている。連動ワイヤ96の一端側は切欠部92Aに通され、ボール部97が取付フランジ部92Fに支持されている。連動ワイヤ96の他端部にはバネ取付部96Aが一体的に設けられ、このバネ取付部96Aに引張りコイルバネ98の一端部が取り付けられている。一方、アンカ装置40のアンカ42における上パネル部42Uの延長部42Eには、その後端側に取付孔(図示省略)が貫通形成されており、この取付孔に引張りコイルバネ98の他端部が取り付けられている。
【0064】
本実施形態の構成では、図10(A)に示される起立姿勢14Xのシートバック14のロック状態を解除し、シートバック14を起立姿勢14Xから前倒し方向(矢印14R参照)へ回動させると、連動ワイヤ96及び引張りコイルバネ98が引っ張られ(矢印P方向参照)、アンカ42の延長部42Eの後端が引き上げられる。これによって、使用位置42Xにあったアンカ42がシャフト44の軸線回りにシート下方側(矢印42R参照)へ回動する。そして、図10(B)に示されるように、シートバック14が前倒し姿勢14Yになると、アンカ42は退避位置42Yに配置される。
【0065】
以上説明した第2の実施形態によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、本実施形態では、回動するシートバック14とアンカ装置40との動作量の差を引張りコイルバネ98によって吸収することができる。
【0066】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について、図11図13を用いて説明する。図11には、第3の実施形態に係る車両用シート100のシートバック14のフレームとしてのシートバックフレーム14Fの下端側の一部とアンカ装置140との連結状態が斜視図で示され、図12には、図11の矢印A方向視の図が示されている。
【0067】
図11及び図12に示されるように、本実施形態の車両用シート100は、第1の実施形態のアンカ装置40(図2等参照)に代えて、アンカ装置140を備え、第1の実施形態の連動機構80(図1等参照)に代えて、連動機構110を備える点で第1の実施形態に係る車両用シート10(図1等参照)とは異なる。他の構成は、以下において第1の実施形態とは異なる説明をするものを除き、第1の実施形態と実質的に同様の構成となっている。なお、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して適宜説明を省略する。
【0068】
図11及び図12に示されるように、シートバックフレーム14Fは、シートバックフレーム14Fの側部を構成するサイドフレーム102を有する。サイドフレーム102は、シート幅方向を板厚方向とするサイドパネル部102Aと、サイドパネル部102Aの後端からシート幅方向外側に張り出した後側パネル部102Bと、サイドパネル部102Aの下端からシート幅方向外側に張り出した下側パネル部102Cと、を含んで構成されている。下側パネル部102Cには、シートバック前方側及びシート幅方向外側から切り欠かれた切欠部102Dが形成されている。
【0069】
サイドフレーム102のサイドパネル部102Aの下端部にはシートバック14の回動の中心を成す第一回転軸としての回転軸14Jが固定されている。回転軸14Jは、サイドフレーム102のサイドパネル部102Aを貫通してサイドパネル部102Aに対してシート幅方向外側に突出している。
【0070】
一方、アンカ装置140は、起立姿勢14Xのシートバック14に対してシート下方側に配置され、チャイルドシート固定用のアンカ142を有している。アンカ142は、第1の実施形態のアンカ42(図2参照)と同様の固定用ワイヤ部42Aと、屈曲パネル部142Bと、を備えている。屈曲パネル部142Bは、左右一対のサイドパネル部142Sに第1の実施形態で説明した第二被係合部42D(図3の部分拡大図参照)が形成されていない点を除いて第1の実施形態の屈曲パネル部42B(図3参照)と同様の構成とされる。
【0071】
アンカ装置140は、左右一対のサイドパネル部142Sをシート幅方向に貫通した第二回転軸としてのシャフト144を有している。シャフト144の軸線方向の両端部は、ベースブラケット部150の外側に配置されている。シャフト144は、アンカ142と一体的に設けられてアンカ142の回動の中心を成す。すなわち、シャフト144がその軸線回りに回転するとアンカ142が回動するように構成されている。
【0072】
ベースブラケット部150は、第1の実施形態で説明した第一被係合部56A(図3の部分拡大図参照)を有さない点を除いて第1の実施形態のアッパブラケット部50(図3参照)と同様の構成とされる。ベースブラケット部150の左右一対の側板部154には、互いに対向する位置においてシート幅方向に貫通する軸受孔156(図11参照)が形成されている。左右一対の軸受孔156は、シャフト144の軸受孔とされる。この左右一対の軸受孔156によって、シャフト144は、その軸線回りに回転可能に支持される。
【0073】
すなわち、図13に示されるように、アンカ装置140は、チャイルドシートを固定可能な使用位置142X(図13(A)参照)と、使用位置142Xと比べて先端位置がシート下方側に下げられた退避位置142Y(図13(B)参照)と、の間でアンカ142をシート幅方向の軸線回りに回動可能に支持する構成を備える。
【0074】
図11及び図12に示されるように、連動機構110は、サイドフレーム102のサイドパネル部102Aの下端部の左の側方側からアンカ装置140の左の側方側にかけての領域に設けられている。この連動機構110は、複数の(一例として四個の)歯車としてのかさ歯車112、114、116、118を含んで構成されてシートバック回動用の回転軸14Jとアンカ装置140のシャフト144とを連結し、シートバック回動用の回転軸14Jの回転力をアンカ装置140のシャフト144に伝達してシャフト144を回転軸14Jと同じ方向に回転させるように構成されている。以下、連動機構110の構成について具体的に説明する。
【0075】
第1のかさ歯車112は、シートバックフレーム14Fにおけるサイドフレーム102に固定された回転軸14Jの先端部に同軸に固定されている。第2のかさ歯車114は、回転軸115の一端部に同軸に固定され、第1のかさ歯車112に噛み合っている。回転軸115は、その軸線回りに回転可能となるように図示しない軸受によって軸支され、シートバック回動用の回転軸14Jに対して直交する方向に延在している。
【0076】
第3のかさ歯車116は、回転軸115の他端部に同軸に固定されている。第4のかさ歯車118は、アンカ装置140のシャフト144の軸線方向の一方側(ここではシート左右方向の左側)の先端部に同軸に固定され、第3のかさ歯車116に噛み合っている。アンカ装置140のシャフト144と回転軸115とは互いに直交する方向に延在している。
【0077】
以上により、シートバック14が起立姿勢14Xでロックされた状態では、かさ歯車112、114、116、118が回転不可とされることによってアンカ装置140のアンカ142は使用位置142Xで固定されるようになっている。
【0078】
次に、本実施形態の作用及び効果について、図13(A)及び図13(B)の側面図を参照しながら説明する。
【0079】
図13(A)に示されるシートバック14が起立姿勢14Xでロックされている場合、かさ歯車112、114、116、118は回転できないため、アンカ装置140のアンカ142は使用位置142Xで固定される。このためアンカ142が固定された状態でチャイルドシートを固定することができる。
【0080】
次に、シートバック14のロック状態を解除し、シートバック14を起立姿勢14Xから前倒し方向(矢印14R参照)へ回動させると、連動機構110がシートバック回動用の回転軸14Jの回転力をアンカ装置140のシャフト144に伝達し、アンカ装置140のシャフト144をシートバック回動用の回転軸14Jと同じ方向に回転させる。これにより、使用位置142Xにあるアンカ142がシャフト144の軸線回りにシート下方側(矢印142R参照)へ回動する。そして、図13(B)に示されるように、シートバック14が前倒し姿勢14Yになると、アンカ142は退避位置142Yに配置される。
【0081】
以上説明した第3の実施形態によっても、シートバック14が起立姿勢14Xで使用される場合にチャイルドシート固定用のアンカ142を固定状態にすることが可能であると共にシートバック14が前倒しされる場合にアンカ142を回動させることができる。
【0082】
また、本実施形態では、シートバック14の下端部側でアンカ142を押し倒す構成ではないので、シートバック14の下端部側の表皮にアンカ142による圧痕が残るということもない。また、アンカ142は、シートバック14の回動に連動して回動するので、確実に使用位置142Xへ復帰させることも可能である。
【0083】
[実施形態の補足説明]
なお、図1図8に示される上記第1の実施形態では、連動機構80は、第一ロック機構30のロックが解除される場合に、シャフト44をその軸線方向にスライドさせることによって、第一ロック機構30のロックが解除されるのに連動させて第二ロック機構46のロックを解除させるようになっているが、第1の実施形態の変形例として、連動機構は、第一ロック機構(30)のロックが解除される場合に、シャフト(44)をその軸線方向にスライドさせずに第二ロック機構(46)のロック用の構成要素を変位させることによって第一ロック機構(30)のロックが解除されるのに連動させて第二ロック機構(46)のロックを解除させるようにしてもよい。
【0084】
また、上記第1の実施形態では、一例として、第二ロック機構46は、シャフト44の外周部に形成された凸状の係合部44Eと、軸受孔56に形成されて係合部44Eが係合可能な第一被係合部56Aと、アンカ42の貫通孔42Hに形成されて係合部44Eが係合可能な第二被係合部42Dと、を有するが、第二ロック機構は、他の係合可能な構造を備えることによって、アンカ(42)を使用位置(42X)でロックしてもよい。
【0085】
また、上記第1の実施形態では、一例として、第二ロック機構46は、シャフト44をロック状態46Xとなる位置方向へ付勢する付勢部材としての圧縮コイルバネ68を有しており、このような構成が好ましいが、上記第1の実施形態の変形例として、圧縮コイルバネ68を設けないで例えば操作力によってシャフト(44)をロック状態(46X)となる位置方向へ移動させるような構成を採ることも可能である。
【0086】
また、上記第1の実施形態の変形例として、アンカ(42)の左右のサイドパネル部(42S)のうちの一方がアッパブラケット部(50)の左右一対の側板部(54)に対して外側に配置され、更に、第二ロック機構は、中心軸としてのシャフト(44)がその軸線方向にスライドすることによって、シャフト(44)の係合部(44E)がアッパブラケット部(50)の第一被係合部(56A)及びアンカ(42)の第二被係合部(42D)と係合するロック状態と、シャフト(44)の係合部(44E)がアッパブラケット部(50)の第一被係合部(56A)とは係合しているもののアンカ(42)の第二被係合部(42D)とは係合しないアンロック状態と、に切り替わるように構成されている、という形態も採り得る。
【0087】
また、上記第1の実施形態の変形例として、起立姿勢(14X)のシートバック(14)に対してシート下方側に配置されるアンカ装置がシート幅方向に計二台並ぶ構成において、アンカ(42)の回動の中心軸としてのシャフトが計二個のアンカ(42)に対して一本設けられた構成としてもよい。このような構成では、前記シャフトがその軸線方向にスライドすることによって、計二個のアンカ(42)のロック状態を同時に解除することができるという点で、合理的といえる。
【0088】
なお、上記第1、第2の実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0089】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
14A 背凭れ面
14F シートバックフレーム(シートバックのフレーム)
14J 回転軸(第一回転軸)
14X 起立姿勢
14Y 前倒し姿勢
22 車体側部(車体)
30 第一ロック機構
40 アンカ装置
42 アンカ
42X 使用位置
42Y 退避位置
42C 取付基部
42H 貫通孔
42D 第二被係合部
44 シャフト(アンカの回動の中心軸)
44E 係合部
46 第二ロック機構
46X ロック状態
46Y アンロック状態
56 軸受孔
56A 第一被係合部
68 圧縮コイルバネ(付勢部材)
80 連動機構
90 車両用シート
100 車両用シート
110 連動機構
112,114,116,118 かさ歯車(歯車)
140 アンカ装置
142 アンカ
142X 使用位置
142Y 退避位置
144 シャフト(第二回転軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13