(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100108
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/30 20060101AFI20240719BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240719BHJP
H01F 27/26 20060101ALI20240719BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240719BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01F27/30 160
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F27/26 130W
H01F27/24 Q
H01F37/00 A
H01F37/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003851
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅木 陸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 清文
(72)【発明者】
【氏名】杉本 聡
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043FA04
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA08
5E070CA15
5E070DB06
(57)【要約】
【課題】コア同士の接着剥がれなどを防止し、耐久性に優れたコイル装置を提供すること。
【解決手段】主コア30と、副コア40と、コイル本体20とを有するコイル装置である。主コア30は、中脚部33と、中脚部33とベース部31でつながっている外脚部35a,35bと、を持つ。副コア40は、中脚部33を挟んでベース部31に対向して配置される。コイル本体20は、導電性であり、中脚部33と外脚部35a,35bとの間に形成してある端子用溝38a,38bに配置してあり、副コア40に向かい合う対向面を持つ。コイル本体20の対向面にはコイル凹部24a,24bが具備してあり、コイル凹部24a,24bに充填してある接着剤50bにより、コイル本体20と副コア40とが接続してある。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中脚部と、前記中脚部とベース部でつながっている外脚部と、を持つ主コアと、
前記中脚部を挟んで前記ベース部に対向して配置される副コアと、
前記中脚部と前記外脚部との間に形成してある端子用溝に配置してあり、前記副コアに向かい合う対向面を持つ導電性のコイル本体と、を有するコイル装置であって、
前記コイル本体の前記対向面にはコイル凹部が具備してあり、
前記コイル凹部に充填してある第1接着剤により、前記コイル本体と前記副コアとが接続してあるコイル装置。
【請求項2】
前記コイル凹部の深さは、前記コイル本体の厚みの1/2以下である請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記コイル凹部の幅は、前記コイル本体の幅の1/10以上から9/10の範囲内である請求項1に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記コイル凹部は複数であり、複数の前記コイル凹部は、前記コイル本体の長手方向に沿って所定間隔で配置してある請求項1に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記コイル凹部の横断面積は、前記コイル凹部の開口から底部に向けて徐々に小さくなっている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記副コアに向き合っている前記中脚部の頂面と前記副コアとの間には、第2接着剤が具備してあり、前記第2接着剤により、前記主コアと副コアとが接着してある請求項1に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記第2接着剤は、樹脂ビーズを含んでおり、
前記樹脂ビーズの粒径が、前記中脚部の頂面と前記副コアとの間のギャップを規定している請求項6に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記中脚部の頂面には、コア凹部が具備してあり、前記コア凹部に前記第2接着剤が充填してある請求項6に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記第2接着剤は、樹脂ビーズを含んでおり、
前記樹脂ビーズの粒径が、前記コア凹部の深さよりも大きい請求項8に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、たとえばインダクタなどとして用いられるコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタとして用いられるコイル装置は、たとえばDC-DCコンバータを始めとして、様々な電子回路に用いられる。このようなインダクタとしては、たとえば特許文献1に示すインダクタが知られている。
【0003】
特許文献1に示すインダクタでは、コイル導体とコアとの絶縁を確保するために、絶縁シートを介在してあるが、より簡便な方法として、接着剤などをコイル導体の表面に塗布し硬化させることで、コイル導体とコアとの絶縁を確保すると共に、コイル導体とコアとの接合を図る場合がある。
【0004】
ところが、接着剤は、接着剤などをコイル導体の表面に塗布した後に、そのコイル導体の表面にコアを押し付ける際に、コイル導体を収容している収容溝の底壁まで接着剤が回り込むことがある。その回り込んだ接着剤から成る硬化した樹脂が、温度変化などにより膨張する際に、コイル導体を収容溝から押し上げて、コア同士の接着剥がれやコアのクラックなどの原因となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、コア同士の接着剥がれなどを防止し、耐久性に優れたコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示に係るコイル装置は、
中脚部と、前記中脚部とベース部でつながっている外脚部と、を持つ主コアと、
前記中脚部を挟んで前記ベース部に対向して配置される副コアと、
前記中脚部と前記外脚部との間に形成してある端子用溝に配置してあり、前記副コアに向かい合う対向面を持つ導電性のコイル本体と、を有するコイル装置であって、
前記コイル本体の前記対向面にはコイル凹部が具備してあり、
前記コイル凹部に充填してある第1接着剤により、前記コイル本体と前記副コアとが接続してある。
【0008】
本開示に係るコイル装置では、コイル本体の対向面にはコイル凹部が具備してあり、コイル凹部に充填してある第1接着剤により、コイル本体と副コアとが接続してある。そのため、コイル本体のコイル凹部に第1接着剤を塗布した後に、そのコイル本体の表面に副コアを押し付ける際に、コイル凹部が余分な第1接着剤を吸収し、コイル本体を収容している収容溝の底壁まで第1接着剤が回り込むことがなくなる。また、環境温度の変化などにより第1接着剤が膨張したとしても、副コアとコイル本体との間の隙間が第1接着剤の膨張などを吸収し、コア同士の接着剥がれやコアのクラックなどを抑制することができる。
【0009】
好ましくは、前記コイル凹部の深さは、前記コイル本体の厚みの1/2以下である。このような範囲に設定することで、コイル本体の電気抵抗を良好に保ちながら、コイル凹部の作用効果を高めることが可能になる。
【0010】
好ましくは、前記コイル凹部の幅は、前記コイル本体の幅の1/10以上から9/10の範囲内である。このような範囲に設定することで、コイル本体の電気抵抗を良好に保ちながら、コイル凹部の作用効果を高めることが可能になる。
【0011】
前記コイル凹部は単一でも複数であってもよく、複数の前記コイル凹部は、前記コイル本体の長手方向に沿って所定間隔で配置してあってもよい。
【0012】
前記コイル凹部の横断面積は、前記コイル凹部の開口から底部に向けて徐々に小さくなっていてもよい。このように構成することで、コイル凹部に第1接着剤が流れ込みやすくなる。
【0013】
前記副コアに向き合っている前記中脚部の頂面と前記副コアとの間には、第2接着剤が具備してあってもよい。また、この第2接着剤により、主コアと副コアとが接着してあってもよい。
【0014】
前記第2接着剤は、樹脂ビーズを含んでいてもよく、樹脂ビーズの粒径が、中脚部の頂面と副コアとの間のギャップを規定していてもよい。このように構成することで、中脚部と副コアとの間のギャップを制御しやすくなる。
【0015】
前記中脚部の頂面には、コア凹部が具備してあってもよく、コア凹部に第2接着剤が充填してあってもよい。このコア凹部は、コイル凹部と同様な作用効果を期待することができ、しかもコイル凹部に加えてコア凹部が存在することで、主コアと副コアとの接続強度が向上する。
【0016】
前記第2接着剤は、樹脂ビーズを含んでいてもよく、前記樹脂ビーズの粒径が、前記コア凹部の深さよりも大きくてもよい。このように構成することで、主コアの中脚部と副コアとの間のギャップを制御しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本開示の一実施形態に係るコイル装置の概略斜視図である。
【
図3】
図3は
図1に示すコイル装置の主コアと副コアとコイル本体との関係を示す分解斜視図である。
【
図4B】
図4Bは本開示の他の実施形態に係るコイル凹部が形成してあるコイル本体の断面の拡大図である。
【
図4C】
図4Cは本開示のさらに他の実施形態に係るコイル凹部が形成してあるコイル本体の断面の拡大図である。
【
図4D】
図4Dは本開示のさらに他の実施形態に係るコイル凹部が形成してあるコイル本体の断面の拡大図である。
【
図5】
図5は本発明の比較例と実施例に係るコイル装置の横押し試験における破壊強度のバラツキを示すグラフである。
【
図6】
図6は本発明の比較例と実施例に係るコイル装置の横押し試験の結果からワイブル解析を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示す実施形態について説明する。
【0019】
図1に示す実施形態に係るコイル装置10は、たとえば電源系インダクタなどとして用いられる。なお、図面において、X軸(第1軸)、Y軸(第2軸)およびZ軸(第3軸)は、相互に垂直である。このコイル装置10は、コイル本体20と、主コア30と、副コア40と、を有する。コイル本体20は、主コア30のZ軸方向の上部に配置され、さらにその上部に副コア40が配置してある。
【0020】
図3に示すように、本実施形態では、コイル本体20は、第1本体部21aと第2本体部21bと第3本体部21cとを有する。このコイル本体20は、一枚の板状導体をプレス加工することにより得ることができるが、第1本体部21aと第2本体部21bと第3本体部21cとを別々に成形して接続することによりコイル本体20を成形してもよい。
【0021】
第1本体部21aおよび第2本体部21bは、相互にY軸に沿って所定距離で離れて略平行にX軸に沿って延在している。第1本体部21aのX軸に沿っての一方の端部には第1端子部22aが設けられ、第2本体部21bのX軸に沿っての同じ側の端部には第2端子部22bが設けられている。第1端子部22aおよび第2端子部22bは、それぞれ第1本体部21aおよび第2本体部21bの同じ側の一方の端部から、Z軸の下方に向けて折り曲げられて成形してある。
【0022】
また、第1本体部21aのX軸に沿っての他方の端部には、第1ダミー端子部23aが設けられ、第2本体部21bのX軸に沿っての他方の端部には、第2ダミー端子部23bが設けられている。第1ダミー端子部23aおよび第2ダミー端子部23bは、それぞれ第1本体部21aおよび第2本体部21bの同じ側の他方の端部から、Z軸の下方に向けて折り曲げられて成形してある。第1端子部22a、第2端子部22b、第1ダミー端子部23aおよび第2ダミー端子部23bのZ軸方向の下方先端は、テーパ状に狭くなっている。
【0023】
本実施形態では、第1本体部21aの第1ダミー端子部23aと第2本体部21bの第2ダミー端子部23bとを接続するように、Y軸に沿って第3本体部21cが、第1本体部21aおよび第2本体部21bと一体化して形成してある。本実施形態では、第1本体部21aと第2本体部21bと第3本体部21cとは、同じ板厚で構成してあることが好ましいが、異なっていてもよい。また、
図2Aに示す第1本体部21aのY軸方向幅と、第2本体部21bのY軸方向幅とは、同じ幅であることが好ましく、さらに、これらの幅は、
図3に示す第3本体部21cのZ軸方向幅と同じであることが好ましい。
【0024】
コイル本体20を構成する導体としては、特に限定されないが、たとえば銅、銅合金、銀、金などが用いられる。コイル本体20の表面には、端子部22a,22b,23a,23bの先端を除き、絶縁被膜が形成してあってもよい。端子部22a,22b,23a,23bの先端は、たとえば実装用基板のランドパターンなどに電気的に接続されるために、導体部分が露出していることが好ましい。また、端子部22a,22b,23a,23b以外では、主コア30または副コア40に接触することから、これらのコア30および40の表面が導体である場合には、絶縁されることが好ましいためである。なお、これらのコア30および40の表面に絶縁被膜がなされていてもよい。
【0025】
図3に示すように、主コア30は、略矩形平板状のベース部31を有する。ベース部31のY軸に沿って中央部には、Z軸の上方に突出する中脚部33がX軸に沿って形成してある。また、ベース部31のY軸方向の一端には、Z軸の上方に突出する第1外脚部35aがX軸に沿って形成してある。さらに、ベース部31のY軸方向の他端には、Z軸の上方に突出する第2外脚部35bがX軸に沿って形成してある。
【0026】
ベース部31の上部で、中脚部33と、中脚部33のY軸方向の両側に位置する一対の外脚部35a,35bとは、X軸に沿って相互に平行である。中脚部33のX軸方向の一端は、ベース部31の一端よりもX軸に沿って突出しており、中脚部33のX軸方向の他端は、ベース部31の他端と同一平面上に位置するようになっている。なお、
図3において、X軸方向の一端とは、X軸に沿って奥側であり、X軸方向の他端とは、X軸に沿って手前側である。
【0027】
また、一対の外脚部35a,35bのそれぞれの一端は、ベース部31よりもX軸に沿って、中脚部33と同程度に突出している。そのため、ベース部31のX軸方向の一端には、外脚部35aと中脚部33との間で、第1端子用溝39aが形成され、外脚部35bと中脚部33との間で、第2端子用溝39bが形成される。
【0028】
また、一対の外脚部35a,35bのそれぞれの他端は、中脚部33よりもX軸方向に突出している。そのため、ベース部31のX軸方向の他端には、外脚部35aと外脚部35bとの間で、第3端子用溝39cが形成される。ベース部31の底面32に対して、一対の外脚部35a,35bのそれぞれの底面は、Z軸の下方に突出して形成してあるが、
図2Aに示すように、同一平面(面一)となるように形成してもよい。
【0029】
図3に示すように、ベース部31の上部には、Y軸に沿って外脚部35aと中脚部33との間に、X軸方向に延びる第1端子用溝38aが形成してあり、Y軸に沿って外脚部35bと中脚部33との間に、X軸方向に延びる第2端子用溝38bが形成してある。第1本体収容溝38aは、第1端子用溝39aと同じY軸方向の幅を持ち、第1端子用溝39aと第3本体収容溝38cとを連絡している。第2本体収容溝38bは、第2端子用溝39bと同じY軸方向の幅を持ち、第2端子用溝39bと第3本体収容溝38cとを連絡している。
【0030】
第1端子用溝39aには、コイル本体20の第1端子部22aが入り込み、第2端子用溝39bには、コイル本体20の第2端子部22bが入り込むようになっている。また、第1本体収容溝38aには、コイル本体20の第1本体部21aが入り込み、第2本体収容溝38bには、コイル本体20の第2本体部21bが入り込むようになっている。
【0031】
さらに、第3本体収容溝38cには、第1ダミー端子部23aと、第2ダミー端子部23bと、第3本体部21cとが、一体的に入り込むようになっている。したがって、コイル本体20の各端子部22a,22b,23a,23bは、主コア30のX軸方向の両端からX軸方向に突出しないようになっている。第3本体部21cに関しても同様である。
【0032】
ただし、コイル本体20の各端子部22a,22b,23a,23bと第3本体部21cとは、主コア30のX軸方向の両端からX軸方向に多少は突出してもよい。コイル本体20の各端子部22a,22b,23a,23bのX軸方向の外面に付着する可能性があるハンダフィレットを確認しやすくするためである。
【0033】
なお、第1端子用溝39a、第2端子用溝39bおよび第3本体収容溝38cを、主コア30に設けなくてもよい。その場合には、コイル本体20の各端子部22a,22b,23a,23bと第3本体部21cとは、主コア30のX軸方向の両端からX軸方向に、コイル本体20の厚み相当分以上で突出することになる。
【0034】
第1端子部22a、第2端子部22b、第1ダミー端子部23aおよび第2ダミー端子部23bのZ軸に沿った下方先端は、ベース底面32および外脚部35a,35bの底面よりも下方に突き出るようになっている。これらの下方先端が、たとえば実装基板のランドパターンに電気的に接続されるためである。
【0035】
本実施形態では、コイル本体20の第1本体部21a、第2本体部21bおよび第3本体部21cが、主コア30の中脚部33の周囲3方を囲み、1ターン以下で巻回してあるコイルを構成している。
【0036】
図2に示すように、主コア30のZ軸方向の上部には、副コア40が配置される。副コア40は、内面41と外面とを有し、全体として矩形板形状を有する。副コア40のX軸方向幅とY軸方向幅は、主コア30のそれらと同等であることが好ましいが、多少異なっていてもよい。
【0037】
本実施形態では、
図1に示すように、副コア40のX軸方向の一辺の長さは、第1外脚部35aの側面37aおよび第2外脚部35bの側面37bのX軸方向の長さと略同じである。また、副コア40のY軸方向の一辺の長さは、第1外脚部35aの側面37aと第2外脚部35bの側面37bとの間隔と略同じである。
【0038】
副コア40の外面42は、平坦面であり、その外周縁が面取りされていてもよい。外面42には、略平面であり、外面42に真空吸着ヘッドなどが着脱自在に吸着し、コイル装置10を搬送可能になっている。副コア40の内面41も平坦面であり、その内面41には、中脚33の頂面34、外脚部35aおよび35bの各頂面36aおよび36bが向き合うように、主コア30のZ軸方向の上部に副コア40が配置して固定してある。
【0039】
本実施形態では、主コア30および副コア40は、フェライトコアで形成されている。あるいは主コア30および副コア40は、金属磁性体(アモルファス合金磁性体を含む)および樹脂を含む複合磁性体であってもよく、あるいは、主コア30は、金属磁性体の焼結体であってもよい。また、副コア40も同様に、金属磁性体および樹脂を含む複合磁性体で形成されていてもよい。あるいは、副コア40は、金属磁性体の焼結体であってもよい。主コア30および副コア40の比透磁率は、たとえば15~100の範囲内である。金属磁性体としては、たとえばCo基アモルファス合金などが用いられる。
【0040】
なお、主コア30と副コア40とは、異なる種類の磁性体で構成されていてもよく、あるいは、副コア40は、たとえば樹脂やセラミックなどの非磁性体で構成してあってもよい。
【0041】
図2Aに示すように、中脚部33のY軸に沿う幅w3は、外脚部35a,35bの各幅w4よりも大きく、好ましくは、1.5~2.5倍となるように設計してある。なお、第1外脚部35aの幅w4と、第2外脚部35bの幅w4とは、必ずしも同じ長さではなくてもよいが、略同一であることが好ましい。また、第1本体収容溝38aおよび第2本体収容溝38bのY軸に沿う各幅w5は、それぞれ第1本体部21aおよび第2本体部21bが各本体収容溝38a,38bに入り込むように決定され、これらのY軸に沿う幅よりも少し大きくしてある。
【0042】
第1本体収容溝38aおよび第2本体収容溝38bのY軸に沿う各幅w5は、好ましくは、外脚部35aおよび35bの各幅w4と同等以上で、中脚部33の幅w3よりは小さくなるように決定される。中脚部33の幅w3は、主コア30のY軸に沿う全幅w0に対して、1/6~1/2程度である。
【0043】
本実施形態では、各本体収容溝38a,38bの底面からの中脚部33の頂面34までの高さh1は、各本体収容溝38a,38bの底面からの各外脚部35a,35bの頂面までの高さh2よりも低くしてある。高さh2と高さh1との差(h2-h1)は、好ましくは、15~55μm、さらに好ましくは20~50μmである。
【0044】
また、本実施形態では、中脚部33の頂面34と副コア40の内面41との間の隙間であるセンターギャップをw1とし、外脚部35a,35bの各頂面36a,36bと副コア40の内面41との間の隙間をサイドギャップw2とした場合に、サイドギャップw2よりもセンターギャップw1が大きいことが好ましいが、同じでも逆であってもよい。また、外脚部35a,35bの各頂面36a,36bと副コア40の内面41とは接触していることが好ましく、サイドギャップw2は実質的に0であることが好ましいが、0よりも大きくともよい。
【0045】
各本体収容溝38aおよび38bに収容されている本体部21a,21bのZ軸に沿う厚みt1(
図4A参照)は、
図2Aに示す中脚部33の高さh1と同程度であることが好ましいが、それよりも小さくてもよく、大きくてもよい。本体部21a,21bのZ軸に沿う厚みが大きいほど、コイル本体20の直流抵抗を小さくすることができる。
【0046】
本実施形態では、本体部21a,21bのZ軸に沿う厚みt1(
図4A参照)は、
図2Aに示す外脚部35a,35bの高さh2と同等か、それよりも小さいことが好ましい。ただし、副コア40の内面41を平坦面では無く、各本体収容溝38a,38bに対応する位置で、内面41に本体収容溝を形成することで、本体部21a,21bのZ軸に沿う厚みは、外脚部35a,35bの高さh2よりも大きくすることも可能である。
【0047】
本実施形態では、コイル本体20の第1本体部21aおよび第2本体部21bのZ軸に沿った上面(副コア40との対向面)に、それぞれコイル凹部24a,24bが具備してある。本実施形態では、それぞれの本体部21a,21bの長手方向(X軸)に沿って所定間隔で二つ以上の複数でコイル凹部24a,24bが具備してあるが、それぞれ単数で具備してあってもよい。
【0048】
コイル凹部24a,24bが具備してあるコイル本体20の第1本体部21aおよび第2本体部21bの表面(対向面)は、
図2Aに示すように、副コア40の内面41に所定間隔で向き合っている。第1本体部21aおよび第2本体部21bの表面と、副コア40の内面41と、の間の所定間隔は、前述のセンターギャップw1と同程度であるが、異なっていてもよい。
【0049】
図4Aに示すように、それぞれのコイル凹部24a,24bのZ軸に沿う深さd1は、コイル本体20の本体部21a,21bの厚みの1/2以下、さらに好ましくは、1/20~1/5である。このような範囲に設定することで、コイル本体20の本体部24a,24bの電気抵抗を良好に保ちながら、コイル凹部24a,24bの作用効果を高めることが可能になる。なお、本実施形態では、コイル凹部24a,24bが具備してある本体部21a,21bの面と反対側の面は、平坦面であることが好ましいが、各凹部24a,24bに対応して凸部が設けられていてもよい。
【0050】
図4Aに示すように、それぞれのコイル凹部24a,24bの幅w6は、コイル本体20の本体部21a,21bの幅w7の1/10以上から9/10の範囲内であり、さらに好ましくは1/4~1/2である。このような範囲に設定することで、コイル本体の電気抵抗を良好に保ちながら、コイル凹部24a,24bの作用効果を高めることが可能になる。なお、コイル本体20の本体部21a,21bの幅w7は、
図2Aに示す第1本体収容溝38aおよび第2本体収容溝38bのY軸に沿う各幅w5よりも小さい。
【0051】
図2Aに示すように、本実施形態では、中脚33の頂面34と副コア40の内面41との間に接着剤50aが介在してあり、外脚部35aおよび35bの頂面36a,36bと副コア40の内面との間には接着剤が介在されていない。すなわち、本実施形態では、主コア30と副コア40とは、中脚部33の接着剤50aで固定してある。接着剤50aの厚みは、センターギャップw1と同じであることが好ましい。
【0052】
また、本実施形態では、
図2Aに示すように、コイル本体20の本体部24a,24bの上面と副コア40の内面41との間に接着剤50bが介在してあり、コイル本体20と副コア40とは、接着剤50bで固定してある。
【0053】
本実施形態では、コイル本体20の本体部21a,21bの上面にはコイル凹部24a,24bが具備してあり、コイル凹部24a,24bに充填してある接着剤(第1接着剤)50bにより、コイル本体20と副コア40とが接続してある。
【0054】
そのため、
図2Bに示すように、コイル本体20のコイル凹部24a,24bに接着剤50bを塗布した後に、そのコイル本体20の表面に副コア40を押し付ける際に、コイル凹部24a,24bが余分な接着剤50bを吸収し、コイル本体20を収容している収容溝38a,38bの底壁まで接着剤50bが回り込むことがなくなる。
【0055】
また、環境温度の変化などにより接着剤50bが膨張したとしても、副コア40とコイル本体20との間の隙間が接着剤50bの膨張などを吸収し、コア30,40同士の接着剥がれやコア30,40のクラックなどを抑制し、コイル装置の耐久性が向上する。
【0056】
なお、本実施形態では、
図4B、
図4Cまたは
図4Dに示すように、コイル凹部24a,24bの横断面積は、コイル凹部24a,24bの開口から底部に向けて徐々に小さくなっていてもよい。
図4Bでは、コイル凹部24a,24bの横断面形状は、逆台形の形状であり、
図4Cでは、コイル凹部24a,24bの横断面形状は、逆三角形の形状であり、
図4Dでは、コイル凹部24a,24bの横断面形状は、真円または楕円の円弧形状を有する。このように構成することで、コイル凹部24a,24bに接着剤50bが流れ込みやすくなる。
【0057】
さらに、本実施形態では、
図2Aに示すように、副コア40の内面41に向き合っている中脚部33の頂面34と副コア40との間には、接着剤(第2接着剤)50aが具備してあってもよい。また、この接着剤50aにより、主コア30と副コア40とが接着してあってもよい。
【0058】
接着剤50aは、樹脂ビーズを含んでいてもよく、樹脂ビーズの粒径が、中脚部33の頂面34と副コア40との間のギャップw1を規定していてもよい。このように構成することで、中脚部33と副コア40との間のギャップw1を制御しやすくなる。
【0059】
さらに、他の実施形態では、
図2Cに示すように、中脚部33の頂面34には、コア凹部34aが具備してあってもよく、コア凹部34aに接着剤50aが充填してあってもよい。このコア凹部34aは、コイル凹部24a,24bと同様な作用効果を期待することができ、しかもコイル凹部24a,24bに加えてコア凹部34aが存在することで、主コア30と副コア40との接続強度が向上する。
【0060】
なお、接着剤50bが樹脂ビーズを含んでいる場合には、樹脂ビーズの粒径が、コア凹部34aの深さよりも大きくてもよい。このように構成することで、主コア30の中脚部33と副コア40との間のギャップw1を制御しやすくなる。
【0061】
作業性の観点からは、接着剤50aと接着剤50bとは、同じ種類の接着剤であることが好ましいが、必ずしも同一種類の接着剤である必要はない。たとえば一方の接着剤を樹脂ビーズを含み、他方の接着剤は、樹脂ビーズを含まなくてもよい。あるいは、接着剤の主成分を異ならしめてもよい。接着剤の主成分としては、特に限定されないが、たとえばエポキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが好適に用いられる。
【0062】
なお、金属磁性体を含むコア30および40は、一般的には、比透磁率が15~100であり、フェライトコアに比較して比透磁率が低いが、中脚部33と副コア40との間の隙間の幅w1を調節することによって、所望の高いインダクタンスを得ることができる。なお、金属磁性体を含むコア以外であっても、比透磁率が15~100程度に低いコアを有するコイル装置に、本実施形態の構成を適用することで、所望の高いインダクタンスを得ることができる。
【0063】
本実施形態では、中脚部33と副コア40との間のセンターギャップw1が、15~55μm、さらに好ましくは20~50μmである。このような所定幅のセンターギャップw1に設定することで、インダクタンスが向上することが確認されている。
【0064】
しかも本実施形態では、コイル本体20が、板状の導体で形成されている。このように構成することで、直流抵抗も低くなり、大容量の電流を流すことができ、たとえば電源系のインダクタとしても好適に用いることができる。
【0065】
さらに、本実施形態のコイル装置10では、コイル本体20が、中脚部33に1ターン未満で巻回されている場合であっても、中脚部33と副コア40との間の隙間の幅w1を調節することによって、所望の高いインダクタンスを得ることができる。また、コイル本体20を、1ターン未満とすることで、直流抵抗も低くなり、コイル本体20に対して比較的に大きな許容電流を流すことが可能になる。
【0066】
また本実施形態では、
図3に示す第1端子部22aと第2端子部22bとは、それぞれインダクタ素子の入出力端子として用いることが可能であり、図示省略してある実装用基板に接続すれば、基板に装着してある他の電子素子に接続することができる。また、双方のダミー端子部23a,23bも実装用基板に接続されることで、実装用基板に対するコイル装置10の実装強度が向上する。
【0067】
しかも本実施形態では、コイル本体20が、副コア40のみに固定されている。コイル本体20が、主コア30および副コア40の双方に固定されてしまうと、導体であるコイル本体20と、非導体で構成された主コア30または副コア40との間で、高温での温度変化による熱応力により変形が生じる可能性があり、センターギャップまたはサイドギャップが変化する可能性がある。しかしながら、コイル本体20が、副コア40のみに固定してあれば、高温での温度変化による熱膨張差などによる応力などの影響が少なく、温度変化に対する特性の安定性が高まる。
【0068】
また本実施形態では、中脚部33の幅w3が、外脚部35a,35bの幅w4よりも大きく、好ましくは、中脚部33の幅w3が、外脚部35a,35bの幅w4の1.5~2.5倍である。このように設定することで、コイル本体20の周りに発生する磁力線の通りがよくなり、インダクタンスなどの特性が向上する。
【0069】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々に改変することができる。たとえば、上述した実施形態では、第3本体部21cは、第1ダミー端子23aおよび第2ダミー端子23bを介して、第1本体部21aおよび第2本体部21bと接続しているが、第3本体部21cは、第1本体部21aおよび第2本体部21bと直接に接続していてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、頂面34、頂面36aおよび頂面36bは平面であるが、これらの頂面はいずれも、曲面であってもよく、段差面であってもよい。
【0071】
さらに、上述した実施形態では、副コア40として、いわゆるIコアを用いたが、外脚部を有するいわゆるCコアを用いて、副コア40の外脚部が、主コア30の外脚部35a,35bに向き合うように配置してもよい。あるいは、主コア30のように、中脚部33および外脚部35a,35bを有するいわゆるEコアを副コア40として用いてもよい。すなわち、副コアの中脚部および外脚部が、主コアの中脚部および外脚部に向き合うように配置してもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、主コア30は、高温環境下(100~170℃)で使用するために、温度変化の小さい金属磁性体を用いているが、これに限定されず、フェライトコアであってもよい。
【0073】
さらに、他の実施形態として、主コア30の中脚部をY軸方向に2つ以上で、平行に配置してあってもよい。この場合は、各中脚部の間に、本体収容溝をさらに形成することになる。この実施形態でも、コイル本体は、1つの板状の導体で形成されることが可能であり、端部に通電用の端子部を有している。
【実施例0074】
以下、さらに詳細な実施例について説明する。
【0075】
実施例1
図1に示すコイル装置を作製した。第1本体部21aおよび第2本体部21bには、
図4Bに示す横断面形状のコイル凹部24a,24bを、それぞれ2つ形成した。第1本体部21aおよび第2本体部21bの厚みt1(
図4A参照)は、それぞれ0.6mmであり、幅w7は1.2mmであり、コイル凹部24a,24bの深さd1は0.12mmであり、コイル凹部24a,24bの最大幅w6は、0.6mmであった。
【0076】
図2Aに示す接着剤50aおよび50bとしては、エポキシ樹脂系接着剤を用い、4つのコイル凹部24a,24bの位置に、それぞれ接着剤50bを約0.01グラムで塗布し、中脚部33のZ軸に沿う頂面には、接着剤50aを、それぞれ約0.02グラムでX軸に沿って略均等間隔で3カ所に塗布した。これらの接着剤50a,50bを用いて、コイル本体20が装着してある主コア30を副コア40と接着し、30個のコイル装置10のサンプルを作製した。
【0077】
このようにして得られたコイル装置10のサンプルを実装用基板に接着し、基板付きのコイル装置についてリフロー熱処理(260°Cがピーク温度)を10回行い、その後に、副コアのみにX軸に沿う横押し荷重を加え、副コア40がコイル本体20から剥がれてコイル装置10が破壊される破壊強度(N)を求めた。結果を、
図5中のEx.1で示す。また、破壊強度試験の結果から、ワイブル解析により、コイル装置の製品としての保証値の目安となる推定不良率が3ppb(10億個に3個)となる強度を算出したところ、
図6のEx.1に示すように、約95.84Nとの結果が得られた。
【0078】
比較例1
コイル凹部24a,24bを形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、30個のコイル装置10のサンプルを作製した。実施例1と同様にして破壊強度試験とワイブル解析を行った。結果を
図5および
図6のCEx.1に示す。比較例1では、
図6のCEx.1に示すように、約39.58Nとの結果が得られた。
【0079】
評価
図5に示すように、比較例1(CEx.1)に比較して、実施例1(Ex.1)では、破壊強度のバラツキを示す標準偏差σが2/3程度に減少することが確認できた。その理由としては、接着剤50bがコイル凹部24a,24bに留まり、破壊強度のバラツキが小さくなったと考えられる。また、
図6に示すように、比較例1(CEx.1)に比較して、実施例1(Ex.1)では、保証可能な破壊強度が2倍以上に向上することが確認できた。