(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100109
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H01L29/78 652D
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 653A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003853
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】登尾 正人
(57)【要約】
【課題】オン抵抗が増加することを抑制しつつ、コンタクト抵抗が増加することを抑制する。
【解決手段】第2不純物領域17は、第1当接領域171の境界部171a、171bから他方のトレンチ13に向かう部分が直線状部173a、173bとされ、第2当接領域172の境界部172a、172bから一方のトレンチ13に向かう部分が直線状部174a、174bとされ、一方のトレンチ13と第1当接領域と繋がる2つの直線状部173a、173bとの間における2つの角度θ1、θ2のうちの一方の角度が90°未満とされると共に、他方の角度が90°以下とされ、他方のトレンチ13と第2当接領域172と繋がる2つの直線状部174a、174bとの間における2つの角度θ3、θ4のうちの一方の角度が90°未満とされると共に、他方の角度が90°以下とされる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート構造を有する半導体装置であって、
第1導電型のドリフト層(11)と、
前記ドリフト層上に配置された第2導電型のベース層(12)と、
前記ドリフト層を挟み、前記ベース層と反対側に形成された第1導電型または2導電型の不純物層(20)と、
前記ベース層を貫通すると共に、前記ドリフト層と前記ベース層との積層方向と交差する一方向を長手方向として延設されたトレンチ(13)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(14)と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(15)と、を有する複数の前記トレンチゲート構造と、
前記ベース層の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(16)と、
前記ベース層の表層部に形成され、前記ベース層よりも高不純物濃度とされた第2導電型の第2不純物領域(17)と、
前記第1不純物領域および前記第2不純物領域と電気的に接続される第1電極(19)と、
前記不純物層と電気的に接続される第2電極(21)と、を備え、
前記第1不純物領域および前記第2不純物領域は、前記トレンチの長手方向に沿って交互に形成され、
前記第2不純物領域は、前記ドリフト層と前記ベース層との積層方向において、
前記長手方向と交差する方向において隣合う前記トレンチの一方のトレンチと当接し、所定長さを有すると共に前記トレンチから離れる2つの境界部(171a、171b)を有する第1当接領域(171)と、隣合う前記トレンチの他方のトレンチと当接し、所定長さを有すると共に前記トレンチから離れる2つの境界部(172a、172b)を有する第2当接領域(172)と、を有し、
前記第1当接領域のそれぞれの境界部から前記他方のトレンチに向かう部分が直線状部(173a、173b)とされていると共に、前記第2当接領域のそれぞれの境界部から前記一方のトレンチに向かう部分が直線状部(174a、174b)とされ、
前記一方のトレンチと前記第1当接領域と繋がる2つの前記直線状部との間における2つの角度(θ1、θ2)のうちの一方の角度が90°未満とされると共に、他方の角度が90°以下とされ、
前記他方のトレンチと前記第2当接領域と繋がる2つの前記直線状部との間における2つの角度(θ3、θ4)のうちの一方の角度が90°未満とされると共に、他方の角度が90°以下とされている半導体装置。
【請求項2】
前記一方のトレンチと前記第1当接領域と繋がる2つの前記直線状部との間における2つの角度をθ1およびθ2とし、前記他方のトレンチと前記第2当接領域と繋がる前記直線状部との間における2つの角度をθ3およびθ4とすると、1/tanθ1+1/tanθ2=1/tanθ3+1/tanθ4とされている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記一方のトレンチと前記第1当接領域と繋がる2つの前記直線状部との間における2つの角度のうちの一方の角度と、前記他方のトレンチと前記第2当接領域と繋がる2つの前記直線状部との間における2つの角度のうちの一方の角度とが等しくされている請求項2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トレンチゲート構造を有する半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この半導体装置は、n-型のドリフト層を構成する半導体基板を有しており、ドリフト層上にベース層が形成されている。そして、半導体基板には、ベース層を貫通すると共に半導体基板の面方向における一方向を長手方向とした複数のトレンチが形成されている。各トレンチには、壁面を覆うようにゲート絶縁膜が形成されていると共に、ゲート絶縁膜上にゲート電極が形成されている。
【0003】
ベース層の表層部には、トレンチと接するように、n+型のソース領域およびp+型のコンタクト領域が形成されている。つまり、ソース領域およびコンタクト領域は、トレンチの長手方向に沿って交互に形成されている。また、ソース領域およびコンタクト領域は、平面形状が矩形状とされている。
【0004】
半導体基板の一面側には、ソース領域およびコンタクト領域と接続される第1電極が配置され、半導体基板の他面側には、ドレイン層と接続される第2電極が配置されている。
【0005】
このような半導体装置は、ゲート電極に所定の閾値電圧以上の電圧が印加されると、ベース層のうちのトレンチと接する部分に反転層が形成される。そして、半導体装置は、第1電極からソース領域および反転層を通じてドレイン層に電流が流れることでオン状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の半導体装置では、トレンチと接する部分のコンタクト領域は電流経路とならないため、オン抵抗が増加し易くなる。このため、上記の半導体装置において、例えば、コンタクト領域におけるトレンチの長手方向に沿った長さを短くすることが考えられる。しかしながら、コンタクト領域におけるトレンチの長手方向に沿った長さを短くすると、コンタクト領域と第1電極との接続面積が小さくなる。したがって、この構成では、コンタクト抵抗が大きくなる。特に、半導体基板を炭化珪素で構成した場合には、コンタクト領域の抵抗が大きくなるため、コンタクト抵抗の増加の影響が大きくなり易い。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、オン抵抗が増加することを抑制しつつ、コンタクト領域と第1電極とのコンタクト抵抗が増加することを抑制できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1では、トレンチゲート構造を有する半導体装置であって、第1導電型のドリフト層(11)と、ドリフト層上に配置された第2導電型のベース層(12)と、ドリフト層を挟み、ベース層と反対側に形成された第1導電型または2導電型の不純物層(20)と、ベース層を貫通すると共に、ドリフト層とベース層との積層方向と交差する一方向を長手方向として延設されたトレンチ(13)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(14)と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(15)と、を有する複数のトレンチゲート構造と、ベース層の表層部に形成され、ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(16)と、ベース層の表層部に形成され、ベース層よりも高不純物濃度とされた第2導電型の第2不純物領域(17)と、第1不純物領域および第2不純物領域と電気的に接続される第1電極(19)と、不純物層と電気的に接続される第2電極(21)と、を備えている。そして、半導体装置は、第1不純物領域および第2不純物領域は、トレンチの長手方向に沿って交互に形成され、第2不純物領域は、ドリフト層とベース層との積層方向において、長手方向と交差する方向において隣合うトレンチの一方のトレンチと当接し、所定長さを有すると共にトレンチから離れる2つの境界部(171a、171b)を有する第1当接領域(171)と、隣合うトレンチの他方のトレンチと当接し、所定長さを有すると共にトレンチから離れる2つの境界部(172a、172b)を有する第2当接領域(172)と、を有し、第1当接領域のそれぞれの境界部から他方のトレンチに向かう部分が直線状部(173a、173b)とされていると共に、第2当接領域のそれぞれの境界部から一方のトレンチに向かう部分が直線状部(174a、174b)とされ、一方のトレンチと第1当接領域と繋がる2つの直線状部との間における2つの角度(θ1、θ2)のうちの一方の角度が90°未満とされると共に、他方の角度が90°以下とされ、他方のトレンチと第2当接領域と繋がる2つの直線状部との間における2つの角度(θ3、θ4)のうちの一方の角度が90°未満とされると共に、他方の角度が90°以下とされている。
【0010】
これによれば、第2不純物領域における各角度が90°とされている(すなわち、第2不純物領域が平面矩形状とされている)場合と比較して、当接領域の長さをを長くしなくても、ドレイン層とベース層との積層方向における第2不純物領域の面積を大きくできる。言い換えると、第2不純物領域における各角度が90°とされている場合と比較して、当接領域の長さを短くした場合には、ドレイン層とベース層との積層方向における第2不純物領域の面積を確保し易くしつつ、オン抵抗を低減できる。したがって、この半導体装置では、オン抵抗が増加することを抑制しつつ、コンタクト抵抗が増加することを抑制できる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図2】ソース領域とコンタクト領域の位置関係を示す平面図である。
【
図3】コンタクト領域の形状を説明するための平面図である。
【
図4】トレンチが第2方向にずれた場合の状態を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態の変形例におけるコンタクト領域の形状を説明するための平面図である。
【
図6】第1実施形態の変形例におけるコンタクト領域の形状を説明するための平面図である。
【
図7】第1実施形態の変形例におけるコンタクト領域の形状を説明するための平面図である。
【
図8】第2実施形態の変形例におけるコンタクト領域の形状を説明するための平面図である。
【
図9A】
図8中のIXA領域におけるトレンチがずれた際の拡大模式図である。
【
図9B】
図8中のIXB領域におけるトレンチがずれた際の拡大模式図である。
【
図10】第2実施形態の変形例におけるコンタクト領域の形状を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の半導体装置は、例えば、インバータ等に使用されるパワースイッチング素子として利用されると好適である。
【0015】
半導体装置は、
図1に示されるように、半導体基板10を用いて構成されている。なお、半導体基板10は、シリコン基板、炭化珪素基板、または窒化ガリウム基板等を用いて構成される。半導体基板10は、n型のドリフト層11を有しており、ドリフト層11上に、比較的不純物濃度が低く設定されたp型のベース層12が配置されている。以下、半導体基板10のうちのベース層12側の面を半導体基板10の一面10aとし、半導体基板10のうちのドリフト層11側の面を他面10bとして説明する。
【0016】
半導体基板10には、一面10a側からベース層12を貫通してドリフト層11に達するように複数のトレンチ13が形成され、このトレンチ13によってベース層12が複数個に分離されている。なお、複数のトレンチ13は、半導体基板10の一面10aの面方向のうちの一方向(すなわち、
図1中紙面奥行き方向)を長手方向とし、各トレンチ13が等間隔にストライプ状となるように延設されている。
【0017】
各トレンチ13内は、各トレンチ13の壁面を覆うように形成されたゲート絶縁膜14と、このゲート絶縁膜14の上に形成されたポリシリコン等により構成されるゲート電極15とにより埋め込まれている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。
【0018】
ベース層12の表層部には、
図1および
図2に示されるように、n
+型のソース領域16およびp
+型のコンタクト領域17が形成されている。具体的には、ソース領域16は、ドリフト層11よりも高不純物濃度で構成され、コンタクト領域17は、ベース層12よりも高不純物濃度で構成されている。そして、本実施形態では、ソース領域16およびコンタクト領域17は、トレンチ13の長手方向に沿って交互に形成されている。なお、コンタクト領域17の具体的な形状については後述する。また、本実施形態では、ソース領域16が第1不純物領域に相当し、コンタクト領域17が第2不純物領域に相当する。
【0019】
半導体基板10の一面10a上には、
図1に示されるように、BPSG(すなわち、Boron Phosphorus Silicon Glass)等で構成される層間絶縁膜18が形成されている。そして、層間絶縁膜18には、ソース領域16およびコンタクト領域17を露出させるコンタクトホール18aが形成されている。層間絶縁膜18上には、コンタクトホール18aを通じてソース領域16およびコンタクト領域17と電気的に接続される上部電極19が形成されている。なお、本実施形態では、上部電極19が第1電極に相当する。
図1は、
図2中のI-I線に沿った断面に相当している。
図2は、半導体基板10の一面10a側における平面図であり、断面図ではないが、理解をし易くするために後述するゲート絶縁膜14およびゲート電極15にハッチングを施してある。
【0020】
ドリフト層11のうちのベース層12側と反対側(すなわち、半導体基板10の他面10b側)には、ドレイン層20が形成されている。そして、ドレイン層20を挟んでドリフト層11と反対側には、ドレイン層20と電気的に接続される下部電極21が形成されている。つまり、半導体基板10の他面10b上には、ドレイン層20と電気的に接続される下部電極21が形成されている。なお、本実施形態では、ドレイン層が不純物層に相当し、下部電極21が第2電極に相当する。
【0021】
以上が本実施形態における半導体装置の基本的な構成である。なお、本実施形態では、n型、n+型が第1導電型に相当し、p型、p+型が第2導電型に相当している。そして、このような半導体装置では、上記のように、ドレイン層20、ドリフト層11、ベース層12、ソース領域16、コンタクト領域17等を含んで半導体基板10が構成されている。
【0022】
このような半導体装置は、ゲート電極15に所定の閾値電圧以上の電圧が印加されると、ベース層12のうちのトレンチ13と接する部分に反転層が形成される。そして、半導体装置は、上部電極19からソース領域16および反転層を通じてドレイン層20に電流が流れることでオン状態となる。なお、トレンチ13と接する部分のコンタクト領域17は、電流経路とならない。このため、トレンチ13と接する部分のコンタクト領域17が大きくなるほどオン抵抗が増加し易くなる。
【0023】
次に、本実施形態におけるコンタクト領域17の形状について、
図2および
図3を参照しつつ具体的に説明する。なお、
図3は、
図2に示すコンタクト領域17近傍の拡大図である。以下では、
図2および
図3に示されるように、トレンチ13の長手方向に沿った方向を第1方向とし、第1方向と直交すると共に半導体基板10の面方向に沿った方向を第2方向として説明する。なお、
図2および
図3では、紙面左右方向が第1方向となり、紙面上下方向が第2方向となる。
【0024】
コンタクト領域17は、半導体基板10の一面10aに対する法線方向(以下では、単に法線方向においてともいう)において、隣合うトレンチ13の間に形成されている。なお、法線方向においてとは、言い換えると、ドリフト層11とベース層12との積層方向においてということもできる。また、法線方向においてとは、言い換えると、法線方向から視たときということもできる。
【0025】
コンタクト領域17は、法線方向において、隣合うトレンチ13のそれぞれと当接する当接領域171、172を有するように形成されている。以下、法線方向において、コンタクト領域17のうちの隣合うトレンチ13の一方のトレンチ13と当接する領域を第1当接領域171ともいう。同様に、コンタクト領域17のうちの隣合うトレンチ13の他方のトレンチ13と当接する領域を第2当接領域172ともいう。なお、
図3中では、第2方向に配列された2つのトレンチ13のうちの紙面上側のトレンチ13が一方のトレンチ13となり、紙面下側のトレンチ13が他方のトレンチ13となる。
【0026】
そして、第1当接領域171は、0より大きい第1当接長さaでトレンチ13と当接するように形成されている。同様に、第2当接領域172は、0より大きい第2当接長さbでトレンチ13と当接するように形成されている。このため、コンタクト領域17は、第1当接領域171の両端部でトレンチ13から離れる2つの第1境界部171a、171bを有すると共に、第2当接領域172の両端部でトレンチ13から離れる2つの第2境界部172a、172bを有する形状とされている。つまり、コンタクト領域17は、法線方向において、点状ではなく、線状でトレンチ13と接する部分を有する形状とされている。
【0027】
また、コンタクト領域17は、法線方向において、2つの第1境界部171a、171bから他方のトレンチ13側に向かう外形線が直線状部173a、173bとされている。コンタクト領域17は、法線方向において、2つの第2境界部172a、172bから一方のトレンチ13側に向かう外形線が直線状部174a、174bとされている。そして、本実施形態のコンタクト領域17は、法線方向において、各直線状部173a、173b、174a、174bと各トレンチ13との間の第1~第4角度θ1~θ4が90°未満の鋭角とされている。さらに、本実施形態のコンタクト領域17は、第1~第4角度θ1~θ4がそれぞれ等しくされた六角形状とされている。なお、外形線とは、コンタクト領域17の平面形状を形作る線のことであり、法線方向においては、ソース領域16との境界線ともいえる。
【0028】
以上説明した本実施形態によれば、第1~第4角度θ1~θ4が90°未満とされている。このため、第1~第4角度θ1~θ4が90°とされている(すなわち、コンタクト領域17が平面矩形状とされている)場合と比較して、第1当接長さaおよび第2当接長さbを長くしなくても、法線方向におけるコンタクト領域17の面積を大きくできる。言い換えると、第1~第4角度θ1~θ4が90°とされている場合と比較して、第1当接長さaおよび第2当接長さbを短くした場合には、法線方向におけるコンタクト領域17の面積を確保し易くしつつ、オン抵抗を低減できる。したがって、本実施形態の半導体装置では、オン抵抗が増加することを抑制しつつ、コンタクト抵抗が増加することを抑制できる。
【0029】
(1)本実施形態では、第1~第4角度θ1~θ4が同じ角度とされている。このため、
図4に示されるように、製造誤差等によってトレンチ13が一方のトレンチ13側の第2方向にずれた場合、トレンチ13がずれたことによる当接長さの変化量をdとすると、第1当接長さは、a-dとなり、第2当接長さはb+dとなる。しかしながら、第1当接長さと第2当接長さとの和は、トレンチ13が第2方向にずれたとしても、a+bで変化しない。したがって、本実施形態の半導体装置によれば、製造誤差等によってトレンチ13が第2方向へずれたとしても、オン抵抗が変化することを抑制でき、特性が変化することを抑制できる。
【0030】
(2)本実施形態では、第1~第4角度θ1~θ4が同じ角度とされている。このため、第1~第4角度θ1~θ4がそれぞれ異なる値とされている場合と比較して、コンタクト領域17における視認検査を行い易くできる。
【0031】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態において、コンタクト領域17は、各直線状部173a、173b、174a、174bと非平行な直線状部175a、175bを有する形状とされていてもよく、例えば、
図5に示されるように、平面形状が八角形状とされていてもよい。すなわち、第1当接領域171と繋がる直線状部173aと第2当接領域172と繋がる直線状部174aとが直線状部175aで繋がる構成とされ、第1当接領域171と繋がる直線状部173bと第2当接領域172と繋がる直線状部174bとが直線状部175bで繋がる構成とされていてもよい。これによれば、上記第1実施形態と比較すると、法線方向において、コンタクト領域17の角部の角度が大きくなる。ここで、コンタクト領域17は、例えば、半導体基板10の一面10a上にマスクを配置し、p型の不純物をイオン注入することで形成される。この場合、上記第1実施形態と比較すると、コンタクト領域17の角部の角度が大きくなることにより、コンタクト領域17を形成した際にコンタクト領域17の平面形状が崩れ難くなる。したがって、コンタクト抵抗が変化することを抑制し易くできる。
【0032】
なお、ここでは、コンタクト領域17の平面形状が八角形状である例を説明したが、コンタクト領域17は、例えば、平面形状が十角形状とされていてもよいし、十二角形状とされていてもよい。
【0033】
さらに、上記第1実施形態において、
図6に示されるように、第1当接領域171と繋がる直線状部173aと第2当接領域172と繋がる直線状部174aとが円弧状部176aで繋がる構成とされていてもよい。また、第1当接領域171と繋がる直線状部173bと第2当接領域172と繋がる直線状部174bとが円弧状部176bで繋がる構成とされていてもよい。さらに、特に図示しないが、例えば、第1当接領域171と繋がる直線状部173aと第2当接領域172と繋がる直線状部174aとが直線状部175aで繋がり、第1当接領域171と繋がる直線状部173bと第2当接領域172と繋がる直線状部174bとが円弧状部176bで繋がる構成とされていてもよい。つまり、第1当接領域171と繋がる直線状部173aと第2当接領域172と繋がる直線状部174aとの間、および第1当接領域171と繋がる直線状部173bと第2当接領域172と繋がる直線状部174bとの間の形状は、適宜変更可能である。
【0034】
また、上記第1実施形態において、第1角度θ1および第2角度θ2のうちの一方の角度が90°以下とされていてもよい。同様に、第3角度θ3および第4角度θ4のうちの一方の角度が90°以下とされていてもよい。例えば、
図7に示されるように、第2角度θ2および第4角度θ4が90°とされ、第1当接領域171と繋がる直線状部173bと第2当接領域172と繋がる直線状部174bとが共通の直線状部とされていてもよい。このようなコンタクト領域17としても、第1~第4角度θ1~θ4が全て90°とされている場合と比較すれば、コンタクト領域17の法線方向における面積を増加でき、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、コンタクト領域17の平面形状を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0036】
本実施形態のコンタクト領域17は、
図8に示されるように、第1~第4角度θ1~θ4が全て同じ角度とはされていない。但し、第1~第4角度θ1~θ4は、トレンチ13が第2方向にずれたとしても第1当接長さと第2当接長さとの和が変化しないように、以下の数式1を示すように形成されている。
【0037】
(数1)1/tanθ1+1/tanθ2=1/tanθ3+1/tanθ4…(数式1)
ここで、上記数式1の理由について、
図9Aおよび
図9Bを参照しつつ説明する。トレンチ13が一方のトレンチ13側(すなわち、紙面上側)にずれた場合、第1当接領域171側では、トレンチ13のずれ量をΔLとし、トレンチ13のずれによる第1当接長さの変化量をd1、d2とすると、下記数式2および数式3が成立する。
【0038】
(数2)ΔL/d1=tanθ1…(数式2)
【0039】
(数3)ΔL/d2=tanθ2…(数式3)
したがって、第1当接長さの全体の変化量は、下記数式4となる。
【0040】
(数4)d1+d2=ΔL/tanθ1+ΔL/tanθ2…(数式4)
同様に、第2当接領域172側では、トレンチ13のずれによる第2当接長さの変化量をd3、d4とすると、下記数式5および数式6が成立する。
【0041】
(数5)ΔL/d3=tanθ3…(数式5)
【0042】
(数6)ΔL/d4=tanθ4…(数式6)
したがって、第2当接長さの全体の変化量は、下記数式7となる。
【0043】
(数7)d3+d4=ΔL/tanθ3+ΔL/tanθ4…(数式7)
そして、トレンチ13が第2方向にずれたとしても第1当接長さと第2当接長さとの和が変化しないようにするためには、数式4と数式7が等しければよいため、下記数式8が成立するようにすればよい。
【0044】
(数8)ΔL/tanθ1+ΔL/tanθ2=ΔL/tanθ3+ΔL/tanθ4…(数式8)
そして、上記数式8を変形すると、上記数式1となる。したがって、本実施形態では、上記数式1を満たすように、第1~第4角度θ1~θ4が調整されている。
【0045】
また、本実施形態のコンタクト領域17は、上記第1実施形態の変形例と同様に、第1当接領域171と繋がる直線状部173aと第2当接領域172と繋がる直線状部174aとが直線状部175aで繋がる構成とされている。コンタクト領域17は、第1当接領域171と繋がる直線状部173bと第2当接領域172と繋がる直線状部174bとが直線状部175bで繋がる構成とされている。
【0046】
このような構成としても、トレンチ13が第2方向に沿ってずれた場合に第1当接長さと第2当接長さとの和は変化しない。なお、本実施形態のコンタクト領域17は、第1角度θ1と第3角度θ3とが等しくされていると共に、第2角度θ2と第4角度θ4とが等しくなる構成とされることにより、上記数式1を満たすように構成されている。また、上記第1実施形態では、第1~第4角度θ1~θ4が全て等しくされているため、上記数式1を満たしている。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、第1角度θ1および第2角度θ2が90°未満とされ、第3角度θ3および第4角度θ4が90°未満とされているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(1)本実施形態のように、上記数式1を満たすようにコンタクト領域17を形成することにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、上記数式1を満たすようにコンタクト領域17が形成されていればよいため、第1~第4角度θ1~θ4が全て等しくされている上記第1実施形態と比較すると、コンタクト領域17の形状の自由度を向上できる。
【0049】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態の変形例について説明する。上記第2実施形態において、上記数式1を満たすのであれば、コンタクト領域17の形状は適宜変更可能である。例えば、
図10に示されるように、コンタクト領域17は、第1角度θ1と第3角度θ3とが等しくされていると共に、第2角度θ2と第4角度θ4とが等しくされた構成とされていてもよい。
【0050】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0051】
例えば、上記第1実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成された半導体装置について説明した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、例えばnチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されで半導体装置が構成されていてもよい。さらに、半導体装置は、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTが形成された構成とされていてもよい。IGBTの場合、上記第各施形態におけるn+型のドレイン層をp+型のコレクタ層に変更する以外は、上記各実施形態で説明したMOSFETと同様である。
【符号の説明】
【0052】
11 ドリフト層
12 ベース層
16 ソース領域(第1不純物領域)
17 コンタクト領域(第2不純物領域)
19 上部電極(第1電極)
20 ドレイン層(不純物層)
21 下部電極(第2電極)
171 第1当接領域
171a、171b 境界部
172 第2当接領域
172a、172b 境界部
173a、173b 直線状部
174a、174b 直線状部
θ1~θ4 第1~第4角度