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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100111
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ソレノイドバルブ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20240719BHJP
   H01F 7/18 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F16K31/06 310Z
H01F7/18 S
H01F7/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003856
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】竹内 翔太
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106EE22
3H106EE23
3H106EE28
3H106FA01
3H106FB02
3H106FB26
3H106FB46
(57)【要約】
【課題】処理負荷を低減できるソレノイドバルブ駆動装置を提供すること。
【解決手段】ECUは、電源とソレノイドバルブのコイルとの通電経路上に設けられたスイッチング素子を駆動する駆動部405と、電源の電圧を検出する電圧検出部30と、コイルを流れる電流を検出する電流検出部20と、通電経路の抵抗を推定する抵抗推定部401と、推定抵抗に基づいて電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す演算式を生成する演算式生成部403を備える。駆動部は、初回駆動時において、予め設定された条件でスイッチング素子を駆動する。抵抗推定部は、初回駆動時に検出される電源の電圧および電流に基づいて第1抵抗を推定する。演算式生成部は、初回駆動時に推定される第1抵抗に基づいて第1演算式を生成する。駆動部は、通常駆動時において、通常駆動時に検出される電源の電圧と第1演算式とに基づいてデューティ比を設定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源とソレノイドバルブのコイルとの通電経路上に設けられ、オンすることで前記コイルに電流を流すスイッチング素子(12)と、
前記スイッチング素子を駆動する駆動部(405)と、
前記電源の電圧を検出する電圧検出部(30)と、
前記コイルを流れる電流を検出する電流検出部(20)と、
前記通電経路の抵抗を推定する抵抗推定部(401)と、
推定された前記抵抗に基づいて、前記電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す演算式を生成する演算式生成部(403)と、
を備え、
前記駆動部は、前記ソレノイドバルブの初回駆動時において、予め設定された条件で前記スイッチング素子を駆動し、
前記抵抗推定部は、前記抵抗として、前記初回駆動時に検出される前記電源の電圧および前記電流に基づいて第1抵抗を推定し、
前記演算式生成部は、前記演算式として、前記初回駆動時に推定される前記第1抵抗に基づいて第1演算式を生成し、
前記駆動部は、前記初回駆動時より後の通常駆動時において、前記通常駆動時に検出される前記電源の電圧と前記第1演算式とに基づいてデューティ比を設定し、設定したデューティ比で前記スイッチング素子を駆動する、ソレノイドバルブ駆動装置。
【請求項2】
前記ソレノイドバルブの温度を検出する温度検出部(50)をさらに備え、
前記抵抗推定部は、前記温度検出部により検出される前記通常駆動時の温度と前記初回駆動時の温度との差分が予め設定された閾値よりも大きい場合に、前記抵抗として第2抵抗を推定し、
前記演算式生成部は、前記演算式として、前記通常駆動時に推定される前記第2抵抗に基づいて第2演算式を生成し、
前記駆動部は、前記通常駆動時において、
前記差分が前記閾値以下の場合に、前記第1演算式に基づいて前記デューティ比を設定し、
前記差分が前記閾値よりも大きい場合に、前記第2演算式に基づいて前記デューティ比を設定する、請求項1に記載のソレノイドバルブ駆動装置。
【請求項3】
前記抵抗推定部は、前記差分が前記閾値よりも大きい場合に、前記通常駆動時の温度と、予め設定された温度と抵抗との対応関係とに基づいて前記第2抵抗を推定する、請求項2に記載のソレノイドバルブ駆動装置。
【請求項4】
前記通常駆動時において予め設定された時間ごとに、前記電圧検出部が前記電源の電圧を検出するとともに前記温度検出部が前記ソレノイドバルブの温度を検出する、請求項2または請求項3に記載のソレノイドバルブ駆動装置。
【請求項5】
前記抵抗推定部により推定された抵抗が異常閾値を超える場合に、外部に通知する異常時処理部(503)をさらに備える、請求項1または請求項2に記載のソレノイドバルブ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、ソレノイドバルブ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ソレノイドバルブ駆動装置を開示している。ソレノイドバルブ駆動装置は、電源とソレノイドバルブのコイルとの通電経路上に設けられたスイッチング素子を備える。この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-199438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のソレノイドバルブ駆動装置は、ソレノイドバルブのコイルに流れる電流を検出して検出電流が目標電流に近づくようにフィードバック制御を実行し、スイッチング素子を駆動するためのPWM信号のデューティ比を演算する。このため、電流を検出するごとに、平均化処理、PI制御演算、補正演算などを実行する必要がある。つまり、処理負荷が高い。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、ソレノイドバルブ駆動装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、処理負荷を低減できるソレノイドバルブ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のひとつであるソレノイドバルブ駆動装置は、
電源とソレノイドバルブのコイルとの通電経路上に設けられ、オンすることでコイルに電流を流すスイッチング素子(12)と、
スイッチング素子を駆動する駆動部(405)と、
電源の電圧を検出する電圧検出部(30)と、
コイルを流れる電流を検出する電流検出部(20)と、
通電経路の抵抗を推定する抵抗推定部(401)と、
推定された抵抗に基づいて、電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す演算式を生成する演算式生成部(403)と、
を備え、
駆動部は、ソレノイドバルブの初回駆動時において、予め設定された条件でスイッチング素子を駆動し、
抵抗推定部は、抵抗として、初回駆動時に検出される電源の電圧および電流に基づいて第1抵抗を推定し、
演算式生成部は、演算式として、初回駆動時に推定される第1抵抗に基づいて第1演算式を生成し、
駆動部は、初回駆動時より後の通常駆動時において、通常駆動時に検出される電源の電圧と第1演算式とに基づいてデューティ比を設定し、設定したデューティ比でスイッチング素子を駆動する。
【0007】
開示のソレノイドバルブ駆動装置によれば、初回駆動時に電源の電圧およびコイルに流れる電流に基づいて通電経路の抵抗(第1抵抗)を推定し、第1抵抗に基づいてデューティ比を演算するための第1演算式を生成する。そして、通常駆動時に検出される電源の電圧と初回駆動時に生成された第1演算式を用いて、通常駆動時のデューティ比を設定する。よって、都度電流を検出し、電流フィードバック方式でデューティ比を設定する構成に較べて、処理負荷を低減することができる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、航続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るECUを示す図である。
図2】マイコンの機能ブロックを示す図である。
図3】駆動方法を示すフローチャートである。
図4】初回駆動時に実行する処理を示すフローチャートである。
図5】電源電圧とデューティ比との対応関係を示す図である。
図6】通常駆動時に実行する処理を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態に係るECUを示す図である。
図8】マイコンの機能ブロックを示す図である。
図9】初回駆動時に実行する処理を示すフローチャートである。
図10】通常駆動時に実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0011】
(第1実施形態)
まず、図1に基づいて、ソレノイドバルブ100の駆動機能を備えたECU10の概略構成について説明する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。ソレノイドバルブ100は、ソレノイド、電磁弁などと称されることがある。ECU10は、電子制御装置と称されることがある。
【0012】
<ECU>
駆動対象であるソレノイドバルブ100は、たとえば車両、飛行体、船舶、建設機械、農業機械などの移動体や、工場、設備などにおいて用いられる。ECU10は、上記した移動体や工場などに配置(搭載)され得る。ECU10が、ソレノイドバルブ駆動装置に相当する。ECU10は、複数の機能のひとつとしてソレノイドバルブ100を駆動する機能を備えてもよいし、ソレノイドバルブ100を駆動する機能のみを備えてもよい。
【0013】
図1に示すように、ソレノイドバルブ100はコイル100Cを備えている。コイル100Cの電源側(上流側)の端部はECU10の端子P1に接続され、グランド側(下流側)の端部は端子P2に接続されている。コイル100Cは、ワイヤハーネス102を介して端子P1,P2に接続されている。図1に示す符号Rcはコイル100Cの抵抗、符号Rwはワイヤハーネス102の抵抗を示している。図1では、便宜上、ソレノイドバルブ100をひとつのみ示しているが、ECU10により駆動されるソレノイドバルブ100の数はひとつに限定されない。複数でもよい。
【0014】
ECU10は、スイッチ12,14、ダイオード16,18、電流検出部20、電圧検出部30、およびマイコン40を備えている。
【0015】
スイッチ12は、+Bを供給する電源と、ソレノイドバルブ100のコイル100Cとの通電経路上に設けられている。通電経路は、電源(電源端子)から、コイル100Cを介してグランドまでの電流が流れる経路である。スイッチ12は、マイコン40から供給される駆動信号により、オンオフがPWM制御される。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。スイッチ12がオンすると、コイル100Cに電流が供給され、オフすると電流の供給が遮断される。スイッチ12は、電源とコイル100Cとを導通または遮断する。
【0016】
一例として本実施形態のスイッチ12は、MOSFETである。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。MOSFETのゲートに駆動指令に応じた駆動電圧を入力することで、スイッチ12を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させることができる。スイッチ12は、コイル100Cに対してグランド側(下流側)に配置されている。このような配置のスイッチ12は、ローサイドスイッチと称されることがある。後述のスイッチ14と区別するため、図中ではスイッチ12をローサイドSWと示している。スイッチ12が、スイッチング素子に相当する。
【0017】
スイッチ14も、電源とコイル100Cとの通電経路上に設けられている。スイッチ14は、ソレノイドバルブ100の駆動時において、オン状態に維持される。たとえば異常発生時にスイッチ14をオフすることで、コイル100Cへの通電を遮断することができる。つまりスイッチ14をオフすることで、ソレノイドバルブ100の駆動を禁止することができる。一例として本実施形態のスイッチ14は、MOSFETである。スイッチ14は、コイル100Cに対して電源側(上流側)に配置されている。このような配置のスイッチ14は、ハイサイドスイッチと称されることがある。スイッチ12と区別するため、図中ではスイッチ14をハイサイドSWと示している。
【0018】
ダイオード16は、還流用のダイオードである。ダイオード16のアノードは通電経路においてスイッチ12と端子P2との間に接続され、カソードは電源に接続されている。ダイオード18は、消弧用のダイオードである。ダイオード18のアノードはグランドに接続され、カソードは通電経路においてスイッチ14と端子P1との間に接続されている。
【0019】
電流検出部20は、コイル100Cに流れる電流を検出する。電流検出部20は、抵抗21と、差動増幅回路22を有している。抵抗21は、コイル100Cに対して直列に接続されている。抵抗21は、通電経路において端子P2とグランドとの間に配置されている。一例として本実施形態の抵抗21は、端子P2とスイッチ12との間に配置されている。抵抗21は、両端に生じる電圧が、コイル100Cに流れる電流に応じた電圧となるように設けられている。
【0020】
差動増幅回路22は、抵抗21の両端間で発生する電圧を増幅して出力するよう設けられている。差動増幅回路22の入力端子のひとつは抵抗21の上流側の端子に接続され、負極入力端子の他のひとつは抵抗21の下流側の端子に接続されている。電流検出部20は、さらにマイコン40のADコンバータ44を含んで構成されている。マイコン40は、コイル100Cに流れる電流をモニタする。
【0021】
電圧検出部30は、電源の電圧(+B)を検出する。電圧検出部30は、抵抗31,32を有している。抵抗31,32は、+Bを供給する電源とグランドとの間で、抵抗31を上流側として直列接続されている。電源電圧は、抵抗分圧されてマイコン40に入力される。電圧検出部30は、さらにマイコン40のADコンバータ44を含んで構成されている。マイコン40は、電源の電圧をモニタする。
【0022】
マイコン40は、CPU41、ROM42、RAM43、ADコンバータ44、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたマイクロコンピュータである。CPUは、Central Processing Unitの略称である。ROMは、Read Only Memoryの略称である。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ROM42は、書き換え可能な不揮発性メモリであり、各種プログラムやデータを記憶する。ROM42は、たとえばフラッシュメモリである。CPU41は、RAM43の一時格納機能を利用しつつ、ROM42に格納された種々のプログラムを実行することで、複数の機能部を構築する。次に、複数の機能部について説明する。
【0023】
<マイコン>
図2は、マイコン40に構築される複数の機能部を示している。CPU41によるプログラムの実行により、マイコン40には、抵抗推定部401、異常時処理部402、演算式生成部403、演算式記憶部404、および駆動部405などが構築される。
【0024】
図2では、電流検出部20を構成するADコンバータ44と、電圧検出部30を構成するADコンバータ44についても合わせて図示している。電流検出部20のADコンバータ44は、差動増幅回路22の出力、つまりコイル100Cに流れる電流値をデジタル値に変換し、抵抗推定部401に出力する。電圧検出部30のADコンバータ44は、抵抗分圧された電源の電圧値をデジタル値に変換し、抵抗推定部401または駆動部405に出力する。
【0025】
抵抗推定部401は、上記した通電経路の抵抗を推定する。以下において、抵抗推定部401により推定される抵抗を推定抵抗と示すことがある。抵抗推定部401は、後述するソレノイドバルブ100の初回駆動時において、ADコンバータ44から取得する電源の電圧および電流に基づいて、抵抗(第1抵抗)を推定する。一例として本実施形態の抵抗推定部401は、ソレノイドバルブ100の通常駆動時において、通電経路の推定を実行しない。
【0026】
抵抗推定部401は、推定した抵抗と予め設定された異常閾値とを比較し、推定抵抗が異常閾値を超える場合に異常を示す信号を異常時処理部402に出力する機能を有している。異常閾値は、予めROM42に記憶されている。マイコン40は、抵抗推定部401とは別に、異常判定部を備えてもよい。
【0027】
異常時処理部402は、上記した異常を示す信号を取得すると、図1に示す表示装置104に対して、異常状態を通知する信号を出力する。表示装置104は、信号を取得すると異常状態を示す表示を実行する。このようにして、ユーザにソレノイドバルブ100の異常を通知することができる。なお、異常時処理部402による指示信号の出力先は、表示装置104に限定されない。たとえば音声で異常を通知する装置など、ユーザに対して何らかの報知が可能な装置であればよい。
【0028】
異常時処理部402は、異常を示す信号を取得すると、ソレノイドバルブ100の駆動を禁止する処理を実行する。一例として本実施形態の異常時処理部402は、ハイサイド側のスイッチ14を強制的にオフさせる。これにより、電源とコイル100Cとの通電経路が遮断され、ソレノイドバルブ100の駆動が禁止状態となる。これに代えて、ローサイド側のスイッチ12を強制的にオフさせてもよい。異常時処理部402は、禁止処理の要否を示す信号を出力してもよい。禁止処理が必要である場合に、駆動部405がスイッチ12に対する駆動信号のデューティ比を0%に設定してもよいし、スイッチ14をオフ駆動させてもよい。
【0029】
演算式生成部403は、抵抗推定部401により推定される抵抗に基づいて、電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す演算式を生成する。演算式生成部403は、抵抗推定部401より、抵抗および電源の電圧を取得する。演算式生成部403は、ソレノイドバルブ100の初回駆動時において、第1演算式を生成する。一例として本実施形態の演算式生成部403は、ソレノイドバルブ100の通常駆動時において、演算式の生成を実行しない。
【0030】
演算式生成部403は、初回駆動時において、推定抵抗と基準抵抗とに基づいて、電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す第1演算式を生成する。基準抵抗は、目標電流値と取得した電源の電圧とにより得られる。目標電流値は、駆動対象であるソレノイドバルブ100を目標状態にするため、コイル100Cに流すべき電流値である。マイコン40は、目標電流値を図示しない上位ECUより取得してもよいし、図示しないセンサなどから入力される信号に基づいて演算を実行し、取得してもよい。
【0031】
演算式記憶部404は、演算式生成部403により生成された演算式を記憶する。演算式記憶部404は、RAM43に構築される。
【0032】
駆動部405は、ソレノイドバルブ100の通常駆動時において、ADコンバータ44から取得する電源の電圧と演算式記憶部404に保存された演算式とに基づき、デューティ比を設定する。そして、設定したデューティ比および予め設定された周期のPWM信号を生成し、スイッチ12のゲートに出力する。
【0033】
<駆動方法>
図3は、駆動方法の一例を示すフローチャートである。マイコン40(CPU41)によって上記した各機能ブロックの処理が実行されることが、駆動方法が実行されることに相当する。マイコン40は、たとえば電源が投入されて起動すると、図3に示す処理を実行する。マイコン40は、まずステップS100の初回駆動時処理を実行する。初回駆動時処理が終了すると、次いでステップS200の通常駆動時処理を実行する。マイコン40は、たとえば電源のオフにより一連の処理を終了する。
【0034】
図4は、初回駆動時処理の一例を示すフローチャートである。マイコン40は、初回駆動時処理としてまずステップS101の初回駆動を実行する。マイコン40の駆動部405は、予め設定された初期条件で、ソレノイドバルブ100を駆動する。初期条件は、ROM42に予め記憶されている。初期条件は、コイル100Cに電流が流れる条件であればよい。一例として本実施形態の初期条件は、常時閉タイプのソレノイドバルブ100をフルオープンとする条件である。
【0035】
次いでマイコン40は、ステップS102の電圧検出処理を実行する。電圧検出部30を構成するADコンバータ44が、電源の電圧を検出(取得)する。また、マイコン40は、ステップS103の電流検出処理を実行する。電流検出部20を構成するADコンバータ44が、コイル100Cに流れる電流ILを検出(取得)する。電圧と電流の検出順序は特に限定されない。電流を検出してから電圧を検出してもよい。電圧と電流を実質的にほぼ同じタイミングで検出してもよい。
【0036】
次いでマイコン40の抵抗推定部401が、ステップS104の抵抗推定処理を実行する。マイコン40の抵抗推定部401は、初回駆動時における通電経路の抵抗R1を推定する。抵抗R1が第1抵抗に相当する。抵抗推定部401は、ステップS102で取得した電圧と、ステップS103で取得した電流とに基づいて、オームの法則により抵抗R1を推定する。
【0037】
次いでマイコン40は、ステップS105の異常判定処理を実行する。抵抗推定部401は、推定した抵抗R1が異常閾値Rth以下か否かを判定する。抵抗推定部401は、抵抗R1が異常閾値Rth以下、つまり抵抗R1が小さい場合、ソレノイドバルブ100のコイル100Cに対して必要な電流が流せると判断する。この場合、異常時処理部402に対して、異常を示す信号を出力しない。
【0038】
抵抗R1が異常閾値Rth以下の場合、次いでマイコン40は、ステップS106の第1演算式生成処理を実行する。演算式生成部403は、ステップS104で推定された抵抗R1に基づいて、電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す演算式(第1演算式)を生成し、生成した演算式を演算式記憶部404に保存(格納)する。演算式は、たとえば図5に示すように、電源の電圧が増加するほどデューティ比が減少する関係を示す。図5は、電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す図である。
【0039】
演算式生成部403は、目標電流値とステップS102で検出された電圧とに基づいて、基準抵抗R0を算出する。そして、演算式生成部403は、ステップS104で推定された抵抗R1と基準抵抗R0とに基づいて、第1演算式を生成する。一例として本実施形態の演算式生成部403は、第1演算式として、(R0-R1)/R0を傾きとし、目標電流値の時のデューティ比を切片とする一次関数を生成する。切片は、初期値として予め設定される。
【0040】
ステップS106が終了すると、次いでマイコン40は、ステップS107の駆動停止処理を実行し、一連の処理を終了する。ステップS107において、マイコン40は、ソレノイドバルブ100の駆動を停止する。マイコン40は、初回駆動時処理が終了すると、次いで通常駆動時処理を実行する。
【0041】
ステップS105において、抵抗R1が異常閾値Rthよりも大きい、つまり抵抗R1が大きい場合、抵抗推定部401は、ソレノイドバルブ100のコイル100Cに対して駆動に必要な電流が流せないと判断する。抵抗推定部401は、異常時処理部402に対して、異常を示す信号を出力する。
【0042】
次いでマイコン40は、ステップS108の異常通知処理を実行する。異常時処理部402は、表示装置104に対して異常状態を通知する信号を出力する。これにより、表示装置104が、異常状態を示す表示を実行する。また、マイコン40は、ステップS109の駆動禁止処理を実行し、一連の処理を終了する。ステップS109において、異常時処理部402は、ソレノイドバルブ100の駆動を禁止する処理を実行する。一例として本実施形態での異常時処理部402は、ハイサイド側のスイッチ14を強制的にオフさせる。これにより、電源とコイル100Cとの通電経路が遮断され、ソレノイドバルブ100の駆動が禁止状態となる。マイコン40は、初回駆動時処理の終了後、ステップS200の通常駆動時処理をスキップして、図3に示す一連の処理を終了する。
【0043】
図6は、通常駆動時処理の一例を示すフローチャートである。初回駆動時処理が終了すると、マイコン40は、通常駆動時処理としてまずステップS201の駆動開始処理を実行する。マイコン40の駆動部405は、予め設定された所定の駆動条件で、ソレノイドバルブ100を駆動する。駆動条件は、ROM42に予め記憶されている。一例として本実施形態の駆動条件は、上記した初期条件と同様、フルオープンするようソレノイドバルブ100を駆動させる条件である。
【0044】
次いでマイコン40は、ステップS202の電圧検出処理を実行する。電圧検出部30を構成するADコンバータ44が、電源の電圧を検出(取得)する。通常駆動時には、電圧を検出し、電流は検出しない。
【0045】
次いでマイコン40は、ステップS203の第1演算式による設定処理を実行する。駆動部405は、演算式記憶部404から第1演算式を取得し、第1演算式とステップS202で取得した電圧とに基づいて、デューティ比を設定する。そして、マイコン40は、ステップS204の駆動処理を実行する。駆動部405は、設定したデューティ比の駆動信号を生成し、スイッチ12のゲートに出力する。つまり、設定したデューティ比でスイッチ12を駆動する。
【0046】
次いでマイコン40は、ステップS205の停止判定処理を実行する。マイコン40は、ソレノイドバルブ100の駆動停止指令があるか否かを判定する。たとえばマイコン40の電源オフやユーザの操作などにともなって、駆動停止指令が生成される。駆動停止指令がある場合、マイコン40はステップS206の駆動停止処理を実行し、一連の処理を終了する。ステップS206において、マイコン40は、ソレノイドバルブ100の駆動を停止させる。
【0047】
ステップS205において駆動停止指令がない場合、マイコン40は、ステップS207の経過時間判定処理を実行する。マイコン40は、図示しないタイムカウント機能を有している。マイコン40は、ステップS202の電圧検出から所定時間が検出したか否かを判定する。所定時間が経過している場合、マイコン40は、ステップS202以降の処理を再び実行する。マイコン40のカウンタは、所定時間の経過によりゼロにリセットされ、ステップS202の処理を実行する際にカウントを開始する。
【0048】
ステップS207において所定時間が経過していない場合、マイコン40は、ステップS204の処理を継続する。つまり、現在設定されているデューティ比でのスイッチ12の駆動を継続する。
【0049】
なお、初回駆動時において、ソレノイドバルブ100の駆動停止処理の実行タイミングは、上記した例に限定されない。電圧と電流を検出した後であれば、駆動停止が可能である。
【0050】
駆動禁止に関連する処理は、上記した例に限定されない。スイッチ14を強制的にオフする構成に代えて、スイッチ12を強制的にオフ、たとえばデューティ比0%で固定してもよい。駆動禁止処理の実行後に通常時処理をスキップする構成に代えて、通常駆動時処理内において駆動禁止処理の実行有無を判定し、駆動禁止処理を実行中の場合に通常駆動時処理を終了してもよい。異常時処理部402がステップS109において禁止処理が必要であることを示す信号を出力し、通常時処理において駆動部405がスイッチ12またはスイッチ14をオフしてもよい。
【0051】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態のECU10、つまりソレノイドバルブ駆動装置によれば、ソレノイドバルブ100の初回駆動時に、電源の電圧およびコイル100Cに流れる電流を検出して、通電経路の抵抗R1(第1抵抗)を推定する。そして、推定した抵抗R1に基づいて、電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す第1演算式を生成する。
【0052】
また、ソレノイドバルブ100の通常駆動時に、電源の電圧を検出し、検出した電源の電圧と初回駆動時に生成された第1演算式とを用いて、通常駆動時のデューティ比を設定する。よって、都度電流を検出し、電流フィードバック方式でデューティ比を設定する構成に較べて扱う変数が少ないため、処理負荷を低減することができる。たとえばマイコン40の処理負荷を低減することができる。
【0053】
本実施形態のECU10は、上記したように、車両、飛行体、船舶、建設機械、農業機械などの移動体や、工場、設備など様々な環境において使用され得る。このためECU10とソレノイドバルブ100の位置関係は、常に一定ではなく、使用環境によって異なる。ワイヤハーネス102の長さ、つまり抵抗Rwhは、使用環境によって変動し得る。抵抗Rwhの増加により、必要な電流をコイル100Cに流すことができない虞がある。
【0054】
本実施形態では、上記したように、初回駆動時に電源の電圧およびコイル100Cに流れる電流を検出して通電経路の抵抗R1を推定し、抵抗R1に基づいてデューティ比を設定するための第1演算式を生成する。このように、使用環境による抵抗Rwhの変動を考慮して第1演算式を生成するため、様々な使用環境においてソレノイドバルブ100を駆動することができる。
【0055】
一例として本実施形態では、推定した抵抗R1(第1抵抗)が異常閾値Rthを超える場合に、外部に通知する。これにより、異常が生じていることをユーザに通知することができる。たとえば、ユーザの安全確保に貢献することができる。
【0056】
<変形例>
推定した抵抗R1と異常閾値Rthとを比較し、抵抗R1が異常閾値Rthを超える場合に、異常通知処理と駆動禁止処理を実行する例を示したが、これに限定されない。駆動禁止処理を実行しない構成、つまり異常判定処理と異常通知処理のみを実行する構成としてもよい。異常判定処理、異常通知処理、および駆動禁止処理を実行しない構成、つまり図4においてステップS105、S108、S109を排除した構成としてもよい。
【0057】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、通常駆動時に必ず第1演算式を用いてデューティ比を設定した。これに代えて、ソレノイドバルブの温度が所定の条件を満たす場合に第1演算式を用いてデューティ比を設定し、条件を満たさない場合に温度に基づいて新たな演算式を生成し、デューティ比を設定してもよい。
【0058】
<ECU>
図7は、本実施形態に係るECU10の概略構成を示している。図7は、図1に対応している。自己発熱等によってソレノイドバルブ100(コイル100C)の温度が変化すると、抵抗Rcが変化する。コイル100Cの温度が高くなるほど、抵抗Rcは大きくなる。本実施形態では、ソレノイドバルブ100の温度を検出するために、温度センサ106がコイル100C(ソレノイド部)の近傍に配置されている。一例として本実施形態の温度センサ106は、サーミスタである。
【0059】
温度センサ106は、ECU10の端子P3に接続されている。図7に示すようにECU10は、温度検出部50をさらに備えている。温度検出部50は、端子P3を介して温度センサ106の検出信号、つまり温度情報を取得する。温度検出部50は、マイコン40のADコンバータ44を含んで構成されている。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0060】
<マイコン>
図8は、マイコン40に構築される複数の機能部を示している。図8は、図2に対応している。図8では、電流検出部20を構成するADコンバータ44と、電圧検出部30を構成するADコンバータ44に加えて、温度検出部50を構成するADコンバータ44を合わせて図示している。温度検出部50のADコンバータ44は、温度センサ106の検出信号をデジタル値に変換し、抵抗推定部401に出力する。電圧検出部30を構成するADコンバータ44と温度検出部50を構成するADコンバータ44は、通常駆動時において所定時間が経過するごとに、つまり所定周期で電圧および温度を検出する。
【0061】
図8に示すように、マイコン40には、抵抗推定部401、異常時処理部402、演算式生成部403、演算式記憶部404、および駆動部405に加えて、抵抗-温度データ記憶部406が構築される。
【0062】
抵抗-温度データ記憶部406には、ソレノイドバルブ100の温度とコイル100Cの抵抗Rcとの対応関係を示すデータが予め記憶されている。データは、試作時等に得られたデータであり、たとえばマップや関数として示される。抵抗-温度データ記憶部406は、ROM42に構築される。
【0063】
抵抗推定部401は、先行実施形態同様、ソレノイドバルブ100の初回駆動時において、ADコンバータ44から取得する電源の電圧および電流に基づいて、抵抗(第1抵抗)を推定する。本実施形態の抵抗推定部401は、ソレノイドバルブ100の通常駆動時において、所定の温度条件を満たす場合に通電経路の抵抗(第2抵抗)を推定する。抵抗推定部401は、初回駆動時に取得した温度と、通常駆動時に取得する温度との差が大きい場合に新たに抵抗を推定し、温度差が小さい場合に抵抗を推定しない。
【0064】
本実施形態の抵抗推定部401も、推定した抵抗(第1抵抗、第2抵抗)と予め設定された異常閾値とを比較し、推定抵抗が異常閾値を超える場合に異常を示す信号を異常時処理部402に出力する機能を有している。異常閾値は、予めROM42に記憶されている。また、抵抗推定部401は、初回駆動時に取得した温度T1と通常駆動時に取得する温度T2との差と、所定の閾値ΔTthとを比較し、比較結果を出力する温度判定機能を有している。マイコン40は、抵抗推定部401とは別に、温度判定部を備えてもよい。
【0065】
演算式生成部403は、先行実施形態同様、初回駆動時において電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す演算式(第1演算式)を生成する。本実施形態の演算式生成部403は、通常駆動時において、所定の条件を満たす場合に演算式(第2演算式)を生成し、条件を満たさない場合に演算式を生成しない。演算式生成部403は、通常駆動時に抵抗(第2抵抗)を推定する場合に新たに演算式(第2演算式)を生成する。
【0066】
演算式生成部403は、通常駆動時において、推定抵抗(第2抵抗)と基準抵抗とに基づいて、電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す第2演算式を生成する。基準抵抗は、目標電流値と取得した電源の電圧とにより得られる。
【0067】
演算式記憶部404は、演算式生成部403により生成された演算式を記憶する。本実施形態の演算式記憶部404は、初回駆動時に生成される第1演算式と、通常駆動時に生成される第2演算式を記憶する。第2演算式については、新たに第2演算式が生成されると更新される。
【0068】
駆動部405は、通常駆動時において、抵抗(第2抵抗)を推定しない場合、つまり上記した温度差が小さい場合に、演算式記憶部404に保存された第1演算式を用いてデューティ比を設定する。駆動部405は、抵抗(第2抵抗)を推定した場合、つまり上記した温度差が大きい場合に、演算式記憶部404に保存された第2演算式を用いてデューティ比を設定する。駆動部405は、設定したデューティ比および予め設定された周期のPWM信号を生成し、スイッチ12のゲートに出力する。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0069】
<駆動方法>
図9は、初回駆動時処理の一例を示すフローチャートである。図9は、図4に対応している。図9に示すように、まずマイコン40は、ステップS111の初回駆動処理を実行し、次いでステップS112の電圧検出処理を実行する。ステップS111は図4に示したステップS101の処理と同様であり、ステップS112はステップS102の処理と同様である。次いで本実施形態のマイコン40は、ステップS113の温度検出処理を実行する。ステップS113では、温度検出部50を構成するADコンバータ44が、ソレノイドバルブ100の温度T1を検出(取得)する。マイコン40は、温度取得後に、ステップS114の電流検出処理を実行する。ステップS114は、ステップS103の処理と同様である。
【0070】
このように本実施形態では、初回駆動時において、電圧、電流、および温度を検出する。なお、電圧、電流、および温度の検出順序は上記した例に限定されない。たとえば電圧、電流、および温度を実質的にほぼ同じタイミングで検出してもよい。マイコン40は、初回駆動時の温度T1を取得して、図示しない温度記憶部に保存する。温度記憶部は、RAM43に構築される。
【0071】
次いでマイコン40は、ステップS115の抵抗推定処理およびステップS116の異常判定処理を実行する。ステップS115はステップS104の処理と同様であり、ステップS116はステップS105の処理と同様である。抵抗R1が異常閾値Rth以下の場合、マイコン40はステップS117の第1演算式生成処理を実行し、次いでステップS118の駆動停止処理を実行する。ステップS117はステップS106の処理と同様であり、ステップS118はステップS107の処理と同様である。
【0072】
抵抗R1が異常閾値Rthより大きい場合、マイコン40はステップS119の異常通知処理を実行し、次いでステップS120の駆動禁止処理を実行する。ステップS119はステップS108の処理と同様であり、ステップS120はステップS109の処理と同様である。
【0073】
図10は、通常駆動時処理を示すフローチャートである。図10は、図6に対応している。図10に示すように、まずマイコン40は、ステップS221の駆動開始処理を実行し、次いでステップS222の電圧検出処理を実行する。ステップS221はステップS201の処理と同様であり、ステップS222はステップS202の処理と同様である。
【0074】
次いで本実施形態のマイコン40は、ステップS223の温度検出処理を実行する。ステップS223では、温度検出部50を構成するADコンバータ44が、ソレノイドバルブ100の温度T2を検出(取得)する。
【0075】
次いでマイコン40は、ステップS224の温度差判定処理を実行する。一例として本実施形態では、抵抗推定部401が、温度差判定処理を実行する。抵抗推定部401は、初回駆動時に検出された温度T1と今回の検出周期において検出された温度T2との差分(=T2-T1)を演算する。そして温度差とROM42に予め記憶された所定の閾値ΔTthとを比較し、温度差が閾値ΔTthよりも大きいか否かを判定する。
【0076】
温度差が閾値ΔTthよりも大きい場合、マイコン40は、ステップS225の抵抗R2(第2抵抗)の推定処理を実行する。抵抗推定部401が、今回の検出周期において検出された温度T2と、抵抗-温度データ記憶部406に予め記憶された、ソレノイドバルブ100の温度とコイル100Cの抵抗Rcとの対応関係を示すデータに基づいて、抵抗R2を推定する。
【0077】
次いでマイコン40は、ステップS226の異常判定処理を実行する。ステップS226はステップS105,S116と同様である。抵抗推定部401は、推定した抵抗R2が異常閾値Rth以下か否かを判定する。異常閾値Rthは、たとえばステップS105,S116で用いる異常閾値Rthと共通である。抵抗推定部401は、抵抗R2が異常閾値Rth以下、つまり抵抗R2が小さい場合、ソレノイドバルブ100のコイル100Cに対して必要な電流が流せると判断する。この場合、異常時処理部402に対して、異常を示す信号を出力しない。
【0078】
抵抗R2が異常閾値Rth以下の場合、つまり抵抗R2が小さい場合、次いでマイコン40は、ステップS227の第2演算式生成処理を実行する。演算式生成部403は、ステップS225で推定された抵抗R2に基づいて、電源の電圧とデューティ比との対応関係を示す演算式(第2演算式)を生成し、生成した第2演算式を演算式記憶部404に保存(格納)する。演算式生成部403は、第1演算式と同様にして第2演算式を生成する。
【0079】
演算式生成部403は、目標電流値とステップS222で検出された電圧とに基づいて、基準抵抗R0を算出する。そして、演算式生成部403は、ステップS225で推定された抵抗R2と基準抵抗R0とに基づいて、第2演算式を生成し、演算式記憶部404に保存する。一例として本実施形態の演算式生成部403は、第2演算式として、(R0-R2)/R0を傾きとし、目標電流値の時のデューティ比を切片とする一次関数を生成する。
【0080】
次いでマイコン40は、ステップS228の第2演算式による設定処理を実行する。駆動部405は、演算式記憶部404から第2演算式を取得し、第2演算式とステップS222で取得した電圧とに基づいて、デューティ比を設定する。
【0081】
次いでマイコン40は、ステップS229の駆動処理を実行する。ステップS229は、ステップS204と同様の処理である。マイコン40の駆動部405は、設定したデューティ比の駆動信号を生成し、スイッチ12のゲートに出力する。つまり、設定したデューティ比でスイッチ12を駆動する。
【0082】
次いでマイコン40は、ステップS230の停止判定処理を実行する。ステップS230は、ステップS205と同様の処理である。駆動停止指令がある場合、マイコン40は、ステップS231の駆動停止処理を実行し、一連の処理を終了する。ステップS231は、ステップS206と同様の処理である。
【0083】
ステップS224において、温度差が閾値ΔTth以下の場合、マイコン40は、ステップS232の第1演算式による設定処理を実行する。ステップS232は、ステップS203と同様の処理である。駆動部405は、演算式記憶部404から第1演算式を取得し、第1演算式とステップS222で取得した電圧とに基づいて、デューティ比を設定する。ステップS232の実行後、マイコン40はステップS229の駆動処理を実行する。
【0084】
ステップS226において、抵抗R2が異常閾値Rthよりも大きい場合、つまり抵抗R2が大きい場合、抵抗推定部401は、ソレノイドバルブ100のコイル100Cに対して駆動に必要な電流が流せないと判断する。抵抗推定部401は、異常時処理部402に対して、異常を示す信号を出力する。
【0085】
次いでマイコン40の異常時処理部402は、ステップS233の異常通知処理を実行する。ステップS233は、ステップS108,S119と同様の処理である。また、異常時処理部402は、ステップS234の駆動禁止処理を実行し、一連の処理を終了する。ステップS234は、ステップS109,S120と同様の処理である。
【0086】
ステップS230において駆動停止指令がない場合、マイコン40は、ステップS235の経過時間判定処理を実行する。ステップS235は、ステップS207と同様の処理である。ステップS222の電圧検出から所定時間が経過している場合、マイコン40は、再びステップS222以降の処理を実行する。マイコン40は、所定時間ごとに電圧および温度を検出する。マイコン40は、所定時間ごとに検出する電圧に基づいてデューティ比を設定する。マイコン40は、温度差が大きい場合に、所定時間ごとに検出する温度に基づいて抵抗R2を推定し、ひいては第2演算式を生成する。マイコン40は、新たに取得した温度T2に基づいて抵抗R2を推定し、新たに推定した抵抗R2に基づいて第2演算式を生成する。マイコン40は、新たに生成した第2演算式を演算式記憶部404に保存する。演算式記憶部404に格納される第2演算式は、保存処理によって更新される。
【0087】
ステップS235において所定時間が経過していない場合、マイコン40は、ステップS229の処理を継続する。マイコン40は、現在設定されているデューティ比での駆動を継続する。
【0088】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態のECU10によれば、先行実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに本実施形態のECU10は、ソレノイドバルブ100の温度を検出する温度検出部50を備えている。マイコン40は、通常駆動時の温度T2と初回駆動時の温度T1との差分が予め設定された閾値ΔTthよりも大きい場合に、抵抗R2(第2抵抗)を推定する。マイコン40は、抵抗R2が推定された場合に、抵抗R2に基づいて第2演算式を生成する。マイコン40は、通常駆動時において、温度の差分が閾値以下の場合に、第1演算式に基づいてデューティ比を設定し、差分が閾値よりも大きい場合に、第2演算式に基づいてデューティ比を設定する。
【0089】
このように、温度差が小さいときには、初回駆動時の抵抗R1に対する通電経路の抵抗の変化が小さいと判断し、初回駆動時に生成された第1演算式と通常駆動時に検出される電源の電圧とに基づいて、デューティ比を設定する。よって、都度電流を検出し、電流フィードバック方式でデューティ比を設定する構成に較べて、処理負荷を低減することができる。たとえばマイコン40の処理負荷を低減することができる。
【0090】
また、温度差が大きいときには、初回駆動時の抵抗R1に対する通電経路の抵抗の変化が大きいと判断し、通常駆動時に検出される温度に基づいて抵抗R2を推定し、抵抗R2に基づいて生成される第2演算式を用いてデューティ比を設定する。このように、ソレノイドバルブ100の温度変化による抵抗Rcの変動を考慮するため、ソレノイドバルブ制御の精度を向上することができる。
【0091】
一例として本実施形態のマイコン40は、温度差が閾値ΔTthよりも大きい場合に、予め設定された温度と抵抗との対応関係に基づいて抵抗R2(第2抵抗)を推定する。温度と抵抗との対応関係は、抵抗-温度データ記憶部406に予め記憶されている。この対応関係と通常駆動時に取得する温度T2とにより抵抗R2を推定することができるため、マイコン40の処理負荷を低減することができる。
【0092】
一例として本実施形態のマイコン40は、通常駆動時において予め設定された時間ごとに、電源の電圧およびソレノイドバルブ100の温度を検出する。定期的にソレノイドバルブ100の温度を取得するため、温度変化にともなう通電経路の抵抗変化を考慮した演算式(第2演算式)を生成することができる。よって、ソレノイドバルブ制御の精度を向上することができる。
【0093】
一例として本実施形態では、推定した抵抗R2(第2抵抗)が異常閾値Rthを超える場合に、外部に通知する。これにより、異常が生じていることをユーザに通知することができる。たとえば、ユーザの安全確保に貢献することができる。
【0094】
<変形例>
推定した抵抗R2と異常閾値Rthとを比較し、抵抗R2が異常閾値Rthを超える場合に、異常通知処理と駆動禁止処理を実行する例を示したが、これに限定されない。駆動禁止処理を実行しない構成、つまり異常判定処理と異常通知処理のみを実行する構成としてもよい。異常判定処理、異常通知処理、および駆動禁止処理を実行しない構成、つまり図10においてステップS226,S233,S234を排除した構成としてもよい。
【0095】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0096】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0097】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0098】
本開示に示す種々のフローチャートはいずれも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。また、本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化されたひとつ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサとひとつ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成されたひとつ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0099】
たとえばプロセッサが備える機能の一部または全部はハードウェアとして実現されてもよい。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、ひとつまたは複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。プロセッサ(演算コア)としては、CPUや、MPU、GPU、DFPなどを採用可能である。CPUは、Central Processing Unitの略称である。MPUは、Micro-Processing Unitの略称である。GPUは、Graphics Processing Unitの略称である。DFPは、Data Flow Processorの略称である。
【0100】
プロセッサが備える機能の一部または全部は、複数種類の演算処理装置を組み合わせて実現されていてもよい。プロセッサが備える機能の一部又は全部は、SoC、ASIC、FPGAなどを用いて実現されていてもよい。SoCは、System on Chipの略称である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略称である。
【0101】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に記憶されていてもよい。プログラムの保存媒体としては、HDD、SSD、フラッシュメモリ等を採用可能である。HDDは、Hard-disk Driveの略称である。SSDは、Solid State Driveの略称である。
【0102】
ECU10が、スイッチ12,14を備える例を示したが、これに限定されない。スイッチ14を排除した構成としてもよい。スイッチ14を排除した構成において、スイッチ12をハイサイド側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0103】
10…ECU10、12,14…スイッチ、16,18…ダイオード、20…電流検出部、21…抵抗、22…差動増幅回路、30…電圧検出部、31,32…抵抗、40…マイコン、401…抵抗推定部、402…異常時処理部、403…演算式生成部、404…演算式記憶部、405…駆動部、406…抵抗-温度データ記憶部、41…CPU、42…ROM、43…RAM、44…ADコンバータ、50…温度検出部、100…ソレノイドバルブ、100C…コイル、102…ワイヤハーネス、104…表示装置、106…温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10