(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100118
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
G05B 19/409 20060101AFI20240719BHJP
B23Q 3/157 20060101ALI20240719BHJP
G06F 3/0482 20130101ALI20240719BHJP
【FI】
G05B19/409 C
B23Q3/157 C
G06F3/0482
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003864
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
【テーマコード(参考)】
3C002
3C269
5E555
【Fターム(参考)】
3C002HH01
3C269AB02
3C269AB31
3C269BB07
3C269CC19
3C269EF15
3C269QC01
3C269QD02
3C269QD10
3C269QE12
3C269QE22
5E555AA02
5E555BA36
5E555BB36
5E555DB04
5E555DB20
5E555DC21
5E555DC35
5E555DC37
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】工作機械が実行する一連の動作の途中で停止した場合に、状態を復帰させるまでの操作負荷を軽減できる工作機械を提供すること。
【解決手段】工作機械は、表示操作装置と、複数の各個操作ボタン及び表示切替ボタンを表示操作装置に表示し、複数の各個操作ボタン及び表示切替ボタンに対する操作に応じて、複数の各個操作ボタン及び表示切替ボタンが示す制御を実行する制御装置と、を備える。複数の各個操作ボタンは、工作機械が実行する一連の動作を、複数の段階に分けて指示するボタンである。制御装置は、複数の各個操作ボタンのうち、工作機械の状態に応じた各個操作ボタンを示すボタン情報を表示切替ボタンに表示させ、表示切替ボタンを実行する操作に応じて表示切替ボタンに表示するボタン情報を切り替え、且つ、一連の動作の順番にボタン情報を切り替える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示操作装置と、
複数の各個操作ボタン及び表示切替ボタンを前記表示操作装置に表示し、複数の前記各個操作ボタン及び前記表示切替ボタンに対する操作に応じて、複数の前記各個操作ボタン及び前記表示切替ボタンが示す制御を実行する制御装置と、
を備える工作機械であって、
複数の前記各個操作ボタンは、
前記工作機械が実行する一連の動作を、複数の段階に分けて指示するボタンであり、
前記制御装置は、
複数の前記各個操作ボタンのうち、前記工作機械の状態に応じた前記各個操作ボタンを示すボタン情報を前記表示切替ボタンに表示させ、前記表示切替ボタンを実行する操作に応じて前記表示切替ボタンに表示する前記ボタン情報を切り替え、且つ、前記一連の動作の順番に前記ボタン情報を切り替える、工作機械。
【請求項2】
前記制御装置は、
複数の前記各個操作ボタン及び前記表示切替ボタンを、前記表示操作装置において1つの画面内に並べて表示し、且つ、前記ボタン情報を表示した状態で前記表示切替ボタンを実行する操作を受け付けた場合、前記ボタン情報が示す前記各個操作ボタンを、前記各個操作ボタンが示す制御を実行中である表示態様にする、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記表示切替ボタンを実行する操作を受け付けると、前記表示切替ボタンに表示中の前記ボタン情報が示す前記各個操作ボタンに対応する段階まで前記工作機械の状態を遷移させ、状態の遷移中は前記表示切替ボタンに表示中の前記ボタン情報を変更せず、遷移が完了すると前記表示切替ボタンに表示する前記ボタン情報を次の段階の前記ボタン情報に切り替える、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記表示切替ボタンとして、前記一連の動作の順番において前の段階を示す前段階表示切替ボタンと、前記一連の動作の順番において後の段階を示す後段階表示切替ボタンの2つの前記表示切替ボタンを前記表示操作装置に表示させ、前記一連の動作が停止した場合に、前記一連の動作のうち、停止した状態の前の段階に対応する前記各個操作ボタンを示す前記ボタン情報を前記前段階表示切替ボタンに表示させ、停止した状態の後の段階に対応する前記各個操作ボタンを示す前記ボタン情報を前記後段階表示切替ボタンに表示させる、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記工作機械の状態を検出するのに用いる状態検出装置を、さらに備え、
前記制御装置は、
前記工作機械の動作が停止したことに応じて、前記状態検出装置により前記工作機械の状態を検出し、検出した状態に基づいて前記一連の動作のうち停止した状態を判断し、判断結果に基づいて前記前段階表示切替ボタン及び前記後段階表示切替ボタンに前記ボタン情報を表示し、且つ、判断した結果、停止した状態が不明であれば、前記前段階表示切替ボタン及び前記後段階表示切替ボタンの前記ボタン情報を非表示とする、請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記一連の動作の最初の段階を示す情報を、前記前段階表示切替ボタンの周囲に表示し、且つ、前記一連の動作の最後の段階を示す情報を、前記後段階表示切替ボタンの周囲に表示する、請求項4に記載の工作機械。
【請求項7】
主軸ヘッドに着脱可能に取り付けられるツールによりワークに対する加工を実行する工具主軸装置と、
交換用の前記ツールを収容し、割り出し位置に交換用の前記ツールを割り出すツールマガジンと、
工具交換位置に配置された交換用の前記ツールと、前記主軸ヘッドに取り付けられた前記ツールの交換を実行するツールチェンジャと、
前記ツールマガジンの前記割り出し位置から前記工具交換位置まで、交換用の前記ツールを搬送するシフト装置と、
を、さらに備え、
前記一連の動作は、
交換用の前記ツールを前記ツールマガジンから取り出して、取り出した交換用の前記ツールを前記工具交換位置まで搬送する取り出し動作、及び前記ツールチェンジャにより前記主軸ヘッドから取り外した使用後の前記ツールを前記ツールマガジンに返却する返却動作のうち、少なくとも一方の動作である、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械における操作の表示処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ユーザの操作に応じて操作盤の表示内容を変更するプレスシステムについて記載されている。特許文献1のプレスシステムは、ユーザによって選択されたガイダンスメニューをガイダンスメニュー表示部に表示し、そのガイダンスメニューに関連する関連操作に対応するガイダンスメッセージをガイダンスメッセージ表示部に表示する。また、操作盤には、ガイダンスメッセージ表示部の下に、複数の個別操作スイッチと、切替画面状態表示部が設けられている。プレスシステムは、複数の個別操作スイッチのうち1つが操作されると、操作された個別操作スイッチに対応する機能を切換画面状態表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工作機械では、複数のアクチュエータや複数のモータを適宜動作させて一連の動作を実行する。例えば、工作機械は、ツールマガジンから工具主軸装置へ交換用のツールを運ぶ場合や使用後のツールを工具主軸装置からツールマガジンへ返却する場合など、複数のアクチュエータなどを制御して一連の動作を実行する。このような一連の動作の途中でエラー等が発生して停止した場合、ユーザは、操作盤を操作して所定の状態まで工作機械を復帰させる必要がある。しかしながら、一連の動作が複雑化し操作するボタンが増加すると、停止した状態から復帰させるまでの手順が難しくなり、ユーザの作業負荷が増加することが問題となる。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、工作機械が実行する一連の動作の途中で停止した場合に、状態を復帰させるまでの操作負荷を軽減できる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書は、表示操作装置と、複数の各個操作ボタン及び表示切替ボタンを前記表示操作装置に表示し、複数の前記各個操作ボタン及び前記表示切替ボタンに対する操作に応じて、複数の前記各個操作ボタン及び前記表示切替ボタンが示す制御を実行する制御装置と、を備える工作機械であって、複数の前記各個操作ボタンは、前記工作機械が実行する一連の動作を、複数の段階に分けて指示するボタンであり、前記制御装置は、複数の前記各個操作ボタンのうち、前記工作機械の状態に応じた前記各個操作ボタンを示すボタン情報を前記表示切替ボタンに表示させ、前記表示切替ボタンを実行する操作に応じて前記表示切替ボタンに表示する前記ボタン情報を切り替え、且つ、前記一連の動作の順番に前記ボタン情報を切り替える、工作機械を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の工作機械によれば、制御装置は、エラーが発生して動作が停止した場合など、工作機械の状態に応じた各個操作ボタンを示すボタン情報を表示切替ボタンに表示させる。制御装置は、表示切替ボタンを実行する操作に応じて表示切替ボタンに表示するボタン情報を、一連の動作の順番に切り替える。これにより、制御装置が一連の動作の実行順に応じたボタン情報を表示切替ボタンに表示する。ユーザは、ボタン情報の表示が切り替わるごとに表示切替ボタンを実行することで、一連の動作のうち工作機械が実行する段階を順番に実行できる。従って、ユーザが状態を復帰させるまでの操作負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例に係わる工作機械を正面側から見た斜視図。
【
図3】
図1の工作機械の装置カバーを取り外した状態を示す図。
【
図5】自動工具交換装置を機体裏側から見た斜視図。
【
図6】前後シフタによって工具を移動させる状態を示す側面図。
【
図9】ツールチェンジャ工具交換ユニットを示す斜視図。
【
図10】取り出し動作及び返却動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の工作機械を具体化した一実施例について、図を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本実施例の工作機械1を正面側から見た斜視図を示している。
図2は、工作機械1のブロック図を示している。
図3は、工作機械1の装置カバー2(
図1参照)を取り外した状態を示している。以下の説明では、
図1に示すように、工作機械1を正面から見た方向を基準として、機械幅方向であって装置の設置面に水平な方向における右方向をZ方向、装置の設置面に平行でZ方向に垂直な前方向をY方向、Z方向及びY方向に垂直な上方向をX方向と称して説明する。また、以下の説明では、概ね、工作機械1の左側に配置された装置に関する符号に「L」の文字を、右側に配置された装置に関する符号に「R」の文字を付加する。
【0010】
(工作機械1の構成)
図1及び
図2に示すように、工作機械1は、前面を装置カバー2によって覆われており、機械正面には可動式の操作盤3が配置されている。装置カバー2は、工作機械1の左側に左側正面扉5Lが設けられ、右側に右側正面扉5Rが設けられている。左側及び右側正面扉5L,5Rは、例えば、スライド扉であり、扉を開けることで、扉の後方の加工スペースにアクセス可能となっている。
【0011】
図4は、工作機械1が備える複合加工機27の斜視図を示している。
図2~
図4に示すように、工作機械1は、操作盤3の他に、左側加工装置11L、右側加工装置11R、ワーク搬送装置14、制御装置15を備えている。
図1に示す左側正面扉5Lの後方には、左側加工装置11L及び左側加工装置11Lの加工スペースが設けられている。左側加工装置11Lは、例えば、タレット型の旋盤であり、左側主軸装置12Lと、左側タレット装置13Lを備えている。左側主軸装置12Lは、加工対象であるワークW(
図4参照)を把持する、又は把持を解放するチャック機構18(
図4参照)が組付けられている。尚、
図3は、チャック機構18及びワークWの図示を省略している。チャック機構18としては、例えば、ワークWを挟持する複数のチャック爪、あるいはコレットチャックを採用することができる。左側主軸装置12Lは、Z方向と平行な軸心を中心にワークWを回転させる。左側タレット装置13Lは、
図4に示す複数の工具T1(タレット工具、回転工具や切削工具)を取り付け可能なタレット19(
図4参照)を有し、工具T1の割り出しを実行する。左側タレット装置13Lは、割り出した工具T1によって左側主軸装置12Lに把持されたワークWに対する加工(切削加工や穴開け加工など)を実行する。
【0012】
また、
図1に示す右側正面扉5Rの後方には、右側加工装置11R及び右側加工装置11Rの加工スペースが設けられている。右側加工装置11Rは、左側加工装置11Lと装置の向きが左右対象であるものの、左側加工装置11Lと同一構成となっている。このため、右側加工装置11Rの説明において左側加工装置11Lと同様の内容については省略する。右側加工装置11Rは、右側主軸装置12Rと、右側タレット装置13Rを備えている。右側主軸装置12Rの主軸は、Z方向と平行であり、左側加工装置11Lの左側主軸装置12Lの主軸と左右方向で対向している(向き合っている)。従って、左側及び右側加工装置11L,11Rは、左右対称に配置された所謂、対向2軸型の旋盤である。右側加工装置11Rは、右側主軸装置12Rで把持したワークWに対する加工を右側タレット装置13Rの工具T1で実行する。尚、右側加工装置11Rは、左側加工装置11Lと同一構成でなくとも良い。例えば、左側加工装置11L及び右側加工装置11Rの少なくとも一方が、マシニングセンタなどの他の種類の加工装置でも良い。
【0013】
また、工作機械1は、NC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を備えている。
図4に示すように、工作機械1の機体中央には、旋盤である左側及び右側加工装置11L,11Rでは難しい加工を実行するための工具主軸装置21が設けられている。工作機械1は、左側及び右側加工装置11L,11R、及び工具主軸装置21を備える複合加工機27(
図4参照)を一つのベッド22の上に備えている。ベッド22は、例えば、スラントベッド構造をなしている。ベッド22の前面には、前方且つ下方へ傾斜した傾斜面23が形成されている。傾斜面23には、ボールネジ機構20と、ボールネジ機構20を間に挟んで設けられる一対のガイドレール24が設けられている。
【0014】
左側及び右側主軸装置12L,12Rは、ボールネジ機構20によりスライド移動する主軸スライド26に搭載され、ボールネジ機構20を駆動されることで一対のガイドレール24(傾斜面23)に沿ってZ方向と平行な方向にスライド移動可能となっている。左側及び右側タレット13L,13Rと工具主軸装置21は、何れも主軸(Z方向)と直交する機体前後方向と機体上下方向に移動可能となっている。特に、工具主軸装置21の移動方向が水平なY方向と鉛直なX方向であるのに対し、左側及び右側タレット13L,13Rの移動方向は、タレットスライド機構28によってY方向及びX方向を45度傾けたYL方向とXL方向となっている。
【0015】
また、
図3に示すように、工作機械1の前方には、自動工具交換装置25が設けられている。工具主軸装置21は、Z方向における工作機械1の中央に設けられ、自動工具交換装置25との間で工具T2(主軸ヘッド工具、
図4参照)を取り替え可能となっている。工具T2は、本開示のツールの一例であり、例えば、ドリル、エンドミルなどである。尚、本開示のツールは、ドリル、エンドミルなどの一体的な切削工具に限らず、切削用の刃を取り付けた段付工具などの刃が分離可能な工具でも良い。
図4に示すように、工具主軸装置21は、主軸ヘッド21A内に主軸用サーボモータや工具スピンドルが内蔵され、その下端部に設けられた工具装着部に対して、自動工具交換装置25に収められた様々な工具T2の取り替えが可能になっている。また、
図3に示すように、自動工具交換装置25は、設置面に起立した交換装置本体25Aと、交換装置本体25Aの上部に設けられたツールマガジン25Bと、工具T2を移動させるシフト装置25C(
図5参照)と、工具T2を交換するツールチェンジャ25D(
図5参照)を備えている。ツールマガジン25Bは、工具主軸装置21の上方で、且つ工作機械1における前方側となる位置に配置されている。尚、自動工具交換装置25の詳細については後述する。また、各図面で示した工具T2は全て円柱形状であるが、これは様々な工具T2を具体的に示すことなく省略して表現したに過ぎない。
【0016】
また、工作機械1は、左側及び右側加工装置11L,11Rで同時にワークWを加工するほか、工具主軸装置21における工具T2の交換も行うことが可能である。
図4に示すように、工作機械1は、Z方向における工具主軸装置21の左右両側にそれぞれ配置された一対の分離シャッタ29を備えている。工作機械1は、駆動機構(図示略)によってY方向に2枚の分離シャッタ29を個別に移動可能となっている。工作機械1は、2枚の分離シャッタ29により、左側加工装置11L、右側加工装置11Rの各々の加工スペースと、工具主軸装置21の工具交換スペースを分離する。また、一方の分離シャッタ29だけを閉じることにより、工具交換スペースを含めた空間を左側加工装置11Lの加工スペース等とすることもできる。
【0017】
また、
図1及び
図3に示すように、ワーク搬送装置14は、例えば、ガントリ式のワーク搬送装置であり、フレーム構体31に支持された走行レール32等を有し、ヘッド(図示略)をXYZの各方向へ移動させることができる。ワーク搬送装置14は、左側及び右側加工装置11L,11R、ワークWを搬入する入口装置、ワークWを排出する出口装置等と、ヘッドの間でワークWの受け渡しを実行する。また、左側及び右側主軸装置12L,12Rは、Z方向において互いに近づく方向へスライド移動することでワークWの受け渡しを直接実行することもできる。また、
図1及び
図2に示すように、操作盤3は、装置カバー2の前面に設けられ、タッチパネル3Aや操作部3Bを備えている。装置カバー2の前面における右下には、Z方向と平行な方向に沿ったレール6が設けられている。操作盤3は、レール6に取り付けられた保持部材7に取り付けられ、保持部材7とともにレール6に沿って装置前面の中央から右端までZ方向へ移動可能となっている。また、操作盤3は、保持部材7に保持された状態でX方向と平行な回転軸を中心に左右方向へ回転可能となっている。操作部3Bは、例えば、操作スイッチ、押しボタン(後述する実行ボタンなど)、ダイヤル、表示ランプ等を備えている。操作盤3は、タッチパネル3Aや操作部3Bに対する操作入力をユーザから受け付け、受け付けた操作入力に応じた信号を制御装置15に出力する。また、操作盤3は、制御装置15の制御に基づいてタッチパネル3Aの表示内容や操作部3Bの表示ランプの点灯状態を変更する。尚、装置カバー2の中央の下方には、工作機械1を操作するペンダント8が吊り下げ可能となっている。
【0018】
また、
図2に示すように、工作機械1の制御装置15は、CPU15Aと、記憶装置15Bを備え、コンピュータを主体とする処理装置である。記憶装置15Bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を備える。尚、記憶装置15Bの構成は、上記した構成に限らず、HDD、SSDなどの他の記憶装置、USBメモリなどの外部記憶装置、DVD-RAMなどの記憶メディア、あるいはこれらを組み合わせたものでも良い。制御装置15は、各装置(左側加工装置11Lやワーク搬送装置14等)と電気的に接続され、各装置を制御可能となっている。記憶装置15Bには、制御プログラム16が記憶されている。制御プログラム16には、例えば、ワークWに対する加工において左側及び右側加工装置11L,11Rの各々の動作を制御するNCプログラム、ワーク搬送装置14の動作を制御するプログラム、自動工具交換装置25の動作を制御するプログラム、各種の信号を処理するラダー回路用のラダープログラム等が含まれている。
【0019】
また、制御プログラム16には、後述する工作機械1の状態を判断するプログラムや、表示切替ボタン115(
図11参照)の表示を切り替えるプログラムが含まれている。また、制御装置15は、工作機械1の状態を検出するのに用いる状態検出装置40を備えている。制御装置15は、状態検出装置40で検出した信号や情報に基づいて工作機械1の状態を判断し、判断した状態に応じて表示切替ボタン115の表示の変更等を実行する。状態検出装置40を用いた状態の判断処理や表示の切り替え処理の詳細については後述する。
【0020】
(自動工具交換装置25について)
次に、自動工具交換装置25について説明する。ここで、
図2、
図3に示すように、本実施例の複合加工機27は、左側及び右側主軸装置12L,12R、左側及び右側タレット13L,13R、工具主軸装置21が、スラントベッドタイプのベッド22上にコンパクトに構成され、省スペース化を可能にしている。特に複合加工機27は、機体前後方向の寸法が抑えられているほか、各装置の移動範囲が狭くなるように設計されている。即ち、複合加工機27の機体前側の中央部分が加工室となり、狭い空間において各装置が退避位置と加工位置との間を移動するよう構成されている。
【0021】
しかしながら、従来のようにベッド22上の離れた位置に自動工具交換装置25を配置し、そこへ工具主軸装置21の主軸ヘッド21Aを移動させ工具T2の交換を実施しようとすると、加工スペースの大型化や複合加工機27全体の大型化を招く虞がある。そこで、本実施例の工作機械1において、主軸ヘッド21Aの可動範囲は、機体の前後及び上下方向の僅かな距離となっている。そして、左側及び右側主軸装置12L,12Rなどをコンパクトに配置した複合加工機27の効果を損なわないように、自動工具交換装置25は、可動範囲の狭い工具主軸装置21に対して工具T2を交換しに行く構造となっている。
【0022】
詳述すると、
図5は、自動工具交換装置25を機体裏側から見た斜視図を示している。
図3及び
図5に示すように、自動工具交換装置25は、工作機械1の機体前部中央に配置され、複数の工具T2を割出し可能に収納したツールマガジン25Bが機体上部に設けられている。自動工具交換装置25のシフト装置25Cは、機体上部に位置するツールマガジン25Bと、それより低い位置にある主軸ヘッド21Aとの間で工具T2を移動させる。また、ツールマガジン25Bは、機体前面の左側及び右側正面扉5L,5Rよりも前方に突き出すようにして配置され、マガジンカバー2Aによって覆われている(
図1参照)。
【0023】
図5に示すように、ツールマガジン25Bは、天板41と、ローラチェーン42と、サーボモータ43を備えている。ツールマガジン25Bは、天板41に吊り下げられるようにして複数(例えば、40個)の工具T2を取り付けられ、左右方向の中央後部に設けられた割り出し位置P11に、任意の工具T2を移動させる。割り出し位置P11に位置決めされ工具T2は、シフト装置25Cによって工具主軸装置21における工具交換位置P3(
図8参照)まで搬送され交換が行われる。左右方向における天板41の両端部の下側には、スプロケット(図示略)がそれぞれ設けられている。ローラチェーン42は、無端の環状をなし、一対のスプロケットに掛け渡されている。サーボモータ43の出力軸は、一対のスプロケットのうち、右側のスプロケットに連結されている。サーボモータ43は、制御装置15の制御に基づいて回転動作を制御され、ローラチェーン42を回転させる。
【0024】
図6は、後述する前後シフタ51によって工具T2を移動させる状態を示す側面図である。
図5及び
図6に示すように、ローラチェーン42には、一定の間隔でポットホルダ45が設けられている。複数のポットホルダ45の各々には、工具T2を着脱可能に保持する工具保持具47が着脱可能に取り付けられる。工具T2は、この工具保持具47に対して着脱可能に取り付けられる。工具保持具47は、把持穴47Aにポットホルダ45を挿入され、ローラチェーン42に対して引掛けられるようにして保持される。ツールマガジン25Bに収納された複数の工具保持具47(工具T2)は、環状のローラチェーン42に取り付けられて長円形の移動ライン(周方向)に沿って等間隔で並べられ、円周の外側に向けて取り外しが可能となっている。工具T2は、工具保持具47、ポットホルダ45を介してローラチェーン42に保持された状態で、ローラチェーン42の回転に合わせて、ローラチェーン42の移動ライン(周方向)に移動する。
【0025】
工具保持具47は、工具T2のヘッド部分に嵌め合わせるキャップ状の部材であり、ローラチェーン42やシフト装置25Cにおいて工具T2の取り扱いを可能にするための形状が施されている。工具保持具47に嵌められた工具T2は、刃先などの加工部を下にした吊下げ姿勢でローラチェーン42に保持されている。自動工具交換装置25のシフト装置25Cは、工具T2を吊下げ姿勢のまま、工具主軸装置21の工具交換位置P3まで搬送する。シフト装置25Cは、ローラチェーン42に対する工具T2の着脱を行う前後シフタ51と、工具T2を工具交換位置P3へと移動させるツールシフタ52を備えている。そして、自動工具交換装置25は、主軸ヘッド21Aとツールシフタ52との間で工具T2を取り替えるため、工具交換位置P3にツールチェンジャ25Dを備えている。
【0026】
図6は、前後シフタ51によって工具T2を移動させる状態を示している。前後シフタ51は、ツールマガジン25Bの上部中央に組付けら、エアシリンダ53のピストンロッド55を機体後方(
図6の右側)に突き出した状態で天板41に固定されている。ピストンロッド55の先端には、ポットクランパヘッド57が固定されている。前後シフタ51は、ポットクランパヘッド57に対して着脱可能なポットクランパ59を備えている。ポットクランパヘッド57は、ポットクランパ59を取り付けられた状態で、前後方向に沿ったガイドロッド61に保持され、エアシリンダ53の伸縮により前後方向にスライド移動する。ポットクランパヘッド57の下部には、ポットクランパ59の上面に設けられたプルボルト59Aを着脱可能に把持するプルクランプ(図示略)が設けられている。このプルクランプは、制御装置15の制御に基づいてアクチュエータが駆動されることでプルボルト59Aを締め付ける量を調整される。ポットクランパヘッド57は、プルクランプをゆるめられることでプルボルト59Aを離脱しポットクランパ59を離脱する。また、ポットクランパヘッド57は、プルクランプを締め付けられることでプルボルト59Aを保持しポットクランパ59を保持する。また、工具保持具47は、ポットクランパ59に対して着脱可能に構成されている。
【0027】
前後シフタ51は、
図6に示す前後変換位置P1と上下変換位置P2との間で工具T2を移動させる。前後変換位置P1は、
図5に示す割り出し位置P11であり、工具T2についてローラチェーン42による周方向の移動と、前後シフタ51による機体前後方向の移動とが切り換えられる位置である。ポットクランパ59は、前後変換位置P1に配置されると、割り出し位置P11に割出しされた工具T2の工具保持具47をクランプ可能となる。ポットクランパ59は、L字形の固定ブロック59Bに対して板状の可動ブロック59Cが前後方向に変位可能な状態で組付けられ、バネにより可動ブロック59Cを固定ブロック59B側に常に引き寄せている。固定ブロック59B及び可動ブロック59Cは、対向する内側面に設けられたクランプ突起59Dを、工具保持具47のクランプ溝47Bにはめ込んで保持する。
【0028】
ポットクランパ59は、上下変換位置P2において、バネの付勢力により、工具保持具47を挟むように保持する。また、可動ブロック59Cは、移動方向と直交する横方向両側に係止ピン59Eが突き出している。ポットクランパ59は、上下変換位置P2から前後変換位置P1へ移動した場合、天板41から下方に突き出した止めピン63に係止ピン59Eが当たることで可動ブロック59Cの固定ブロック59B側への移動が規制され、前後変換位置P1において開いた状態となる。前後変換位置P1において、割り出し位置P11に割り出された工具保持具47の把持穴47Aにポットホルダ45が嵌り込んだ状態となっており、割り出された工具T2は、工具保持具47を介してローラチェーン42に保持された状態となる。制御装置15は、工具T2をツールマガジン25Bから取り出す場合、エアシリンダ53を駆動してポットクランパ59を前後変換位置P1へ移動させ、サーボモータ43を駆動してローラチェーン42を回転させ割り出す工具T2の工具保持具47を可動ブロック59Cと固定ブロック59Bの間に配置する。制御装置15は、エアシリンダ53を駆動してポットクランパ59を前後変換位置P1から上下変換位置P2へ移動させつつポットクランパ59を閉じ、工具保持具47をポットホルダ45から取り外す。前後シフタ51は、上下変換位置P2において、ツールシフタ52との間で工具保持具47(工具T2)の受け渡しを実行する。また、制御装置15は、工具T2をツールマガジン25Bに返却する場合、上下変換位置P2から前後変換位置P1へポットクランパ59を移動させることで、工具保持具47の把持穴47Aにポットホルダ45を嵌め込み、ポットクランパ59による挟持を解除し、工具T2をローラチェーン42に取り付ける。
【0029】
上下変換位置P2では、工具T2の搬送方向を、前後シフタ51による機体前後方向の移動と、ツールシフタ52による機体上下方向の移動とに切り換えられる。上下変換位置P2では前後シフタ51とツールシフタ52による工具T2の移し替えが、ポットクランパヘッド57とポットクランパ59との着脱によって行われる。上下変換位置P2に配置された工具T2は、ツールシフタ52及びツールチェンジャ25Dを介して工具主軸装置21の主軸ヘッド21Aの工具T2と交換される。
【0030】
図7は、上昇位置のツールシフタ52を示す斜視図であり、
図8は、下降位置のツールシフタ52を示す斜視図である。ポットクランパ59は、係止ピン59Eと同様に横方向両側に張出した把持ブロック59Fを有する。ポットクランパ59は、上昇位置(上下変換位置P2)において、把持ブロック59Fの切欠き部に、ツールシフタ52のクランプ部65に設けられたクランプピン67が挿入されることで、ツールシフタ52側に掴み取られる。詳述すると、ツールシフタ52は、昇降フレーム69にクランプ部65が取り付けられ、上下方向に沿った一対のガイドレール71に沿って上下にクランプ部65を移動させる。一対のガイドレール71は、自動工具交換装置25の骨組み等に固定された上側ブロック73と下側プレート74によって支持されている。昇降フレーム69は、上下左右の4箇所に設けられたスライド部75によってガイドレール71を摺動するよう構成されている。クランプ部65は、昇降フレーム69の上梁77に組付けられ、保持した工具T2が枠内に収まるように形成されている。
【0031】
クランプピン67は、上梁77に固定された下向きの筒状ガイドを貫通し、上梁77の上面に固定されたエアシリンダ79に連結され、エアシリンダ79の駆動に応じて上下方向へ移動する。上梁77の下側には、工具保持具47を位置決めする位置決めフレーム81が固定されている。
図7に示す上下変換位置P2では、工具保持具47が位置決めフレーム81の切欠き部(図示略)に嵌り込み、把持ブロック59Fの切欠き部にクランプピン67が入り込む。制御装置15は、この状態においてエアシリンダ79を駆動しクランプピン67を引き上げることで、クランプピン67の先端のフランジ部と円筒ガイドによって把持ブロック59Fを挟み込み、ポットクランパ59をクランプ部65で保持する。
【0032】
ツールシフタ52は、昇降フレーム69を昇降させるボールねじ機構83を備え、下側プレート74に固定された昇降用サーボモータ84を駆動することで、昇降フレーム69を昇降させる。ツールシフタ52は、ポットクランパ59をクランプ部65で保持した状態でボールねじ機構83を駆動することで、ポットクランパヘッド57からポットクランパ59を掴み取るように取り外し工具T2を下降させる。
【0033】
図8に示す昇降フレーム69の下降位置は工具交換位置P3である。
図9に示すツールチェンジャ25Dは、この工具交換位置P3(下降位置)の高さに合わせて設けられている。ツールチェンジャ25Dは、工具T2を把持するチャック91を両端部に有する工具交換アーム93と、その工具交換アーム93を旋回させるカム装置95と、そのカム装置95に回転を出力する旋回用サーボモータ97を備えている。カム装置95は、上方に入力軸95Aを突出させ、旋回用サーボモータ97の出力軸との間に、各軸のプーリを介してタイミングベルト99が掛け渡されている。
【0034】
カム装置95は、入力軸95Aから入力された回転により、下方に突き出した出力軸95Bから回転運動と上下運動とを出力することができるように、入力側の回転角度に従って所定の運動を出力するように設計された溝カムやグロボイダルカムなど(図示略)を備えている。従って、制御装置15は、旋回用サーボモータ97の回転を制御することで、工具交換アーム93の旋回角度や上下方向の変位を調整可能となっている。
【0035】
工具交換アーム93は、半径方向に延びる板状の部材であり、回転中心を基準に一対のチャック91が対称的に構成されている。一対のチャック91には、固定爪及び可動爪が設けられている。工具T2の首部には、この固定爪及び可動爪の凸部が入り込む凹部101(
図6参照)が形成されている。また、工具交換アーム93内には、チャック用のバネ(図示略)が組み込まれ、通常時には可動爪の開状態を維持するよう構成されている。工具交換アーム93が工具T2を把持する場合には、旋回用サーボモータ97の駆動により工具交換アーム93の上下方向の位置が変更され、図示を省略したロックピンがロック機構に挿入されることで可動爪が工具T2を把持する位置で固定される。これにより、工具交換アーム93は、旋回に応じて主軸ヘッド21Aから使用後の工具T2を取り外す、あるいは、ツールシフタ52から交換用の工具T2を受け取ることができる。同様に、制御装置15は、旋回用サーボモータ97を駆動し工具交換アーム93の上下方向の位置を変更することで、ロック機構によるロックを解除し、固定爪と可動爪による工具T2の把持を解除する。これにより、工具交換アーム93は、旋回に応じて主軸ヘッド21Aに交換用の工具T2を取り付ける、あるいは、ツールシフタ52に使用後の工具T2を取り付けることができる。即ち、ツールチェンジャ25Dは、工具交換アーム93を旋回させることで、ツールシフタ52に保持された工具T2と、主軸ヘッド21Aの工具T2を交換する。また、主軸ヘッド21Aから取り外した使用後の工具T2については、上記したツールマガジン25Bから主軸ヘッド21Aへの搬送とは逆方向(逆の手順)に搬送することで、工具T2の返却を実行することができる。
【0036】
また、
図3に示すように、交換装置本体25Aの外側カバー103にはガラスを嵌めた覗き窓103Aが形成されている。また、
図5に示すように、交換装置本体25Aの機内側カバー105には交換窓105Aが形成されている。また、交換窓105Aの加工室側には、工具T2の交換に合わせて交換窓105Aを開閉させる工具交換シャッタ107が設けられている。工具交換シャッタ107は、昇降用エアシリンダ(図示略)を備え、制御装置15により昇降用エアシリンダを制御されることで、
図5に実線で示す位置まで上昇して交換窓105Aを閉じる、又は二点鎖線で示す位置まで下降して交換窓105Aを開くように構成されている。また、工具交換シャッタ107には、ツールチェンジャ25Dの工具交換アーム93を収容するアーム収納ボックス107Aが設けられている。制御装置15は、ツールチェンジャ25Dと工具主軸装置21との間で工具T2の交換を実行する場合、工具交換シャッタ107を下降させて交換窓105Aを開くとともに、工具交換アーム93をアーム収納ボックス107Aから外に出す。そして、ツールチェンジャ25Dは、工具交換アーム93を旋回させることにより、工具T2の交換を実行する。制御装置15は、工具T2の交換が終了すると、工具交換シャッタ107を上昇させて交換窓105Aを閉じ工具主軸装置21による加工等を実行する。
【0037】
(制御装置15の表示処理について)
次に、制御装置15が実行する表示処理について説明する。ここで、工作機械1は、上記したように様々な作業を実行する。この様々な作業の中には、複数のアクチュエータや複数のモータ等を適宜動作させて一連の動作として実行されるものがある。以下の説明では、一連の動作として、上記した工具T2を交換する動作を採用した場合について説明する。具体的には、一連の動作として、
図10に示すように、交換用の工具T2をツールマガジン25Bから取り出して、取り出した交換用の工具T2を工具交換位置P3まで搬送する取り出し動作、及びツールチェンジャ25Dにより交換し主軸ヘッド21Aから取り外した使用後の工具T2をツールマガジン25Bに返却する返却動作の2つの動作を採用する。また、以下の説明では、取り出し動作について主に説明し、返却動作の説明において取り出し動作と同様の内容については適宜省略する。
【0038】
尚、本開示の一連の動作は、上記した取り出し動作や返却動作に限らない。一連の動作としては、例えば、入口装置から左側主軸装置12Lまでワーク搬送装置14によってワークWを搬送する一連の搬送動作、左側及び右側主軸装置12L,12Rをスライド移動させてワークWを受け渡す(反転する)一連の反転動作、あるいは、左側及び右側加工装置11L,11Rの各装置の位置や分離シャッタ29の位置を変更して加工室を変更する一連の加工室変更動作などを採用できる。この場合にも、後述する取り出し動作や返却動作を各段階に分けて各個操作ボタン113で実行するとともに、表示切替ボタン115でも順次実行できるようにしても良い。
【0039】
工具T2の交換のような一連の動作の途中で何らかの理由で停止した場合、ユーザは、操作盤3あるいはペンダント8等を操作して所定の状態まで工作機械1を復帰させる必要がある。動作が停止する原因としては、例えば、工具T2の交換中にエラーが発生した場合、電源断が発生した場合、ユーザが操作盤3を操作して一連の動作のうちの所定の段階まで進めて止めた場合などである。このような場合に、ユーザは、例えば、停止した状態から1つ1つ段階を進め、エラー等が発生しないか確認しつつ、所定の段階まで順番に進める必要が生じる。しかしながら、一連の動作が複雑化し操作するボタンが増加すると、停止した状態から所定の段階まで復帰させる手順が難しくなり、ユーザの作業負荷が増加する。そこで、本実施例の制御装置15は、工作機械1が一連の動作の途中で何らかの理由で停止した場合、停止した状態に応じた表示を実行し、一連の動作の最初の段階又は最後の段階まで段階順の案内を行う。
【0040】
図10に示すように、取り出し動作及び返却動作は、例えば、複数の段階(1)~(16)に分けることができる。制御装置15は、この16段階に分けて案内の表示を実行する。尚、
図10に示す各段階の名称や段階の分け方は一例である。
図11は、操作盤3のタッチパネル3Aに表示するボタン操作画面111を示している。
図11に示すように、制御装置15は、複数の各個操作ボタン113、表示切替ボタン115、ツール選択ボタン117をボタン操作画面111に表示する。尚、
図11は、説明を理解し易くするように、複数の各個操作ボタン113の各々に、
図10に示す各段階(1)~(16)に対応する数字を付加しているが、この数字については実際のボタン操作画面111に表示しても良く、表示しなくとも良い。
【0041】
制御装置15は、所定の条件に応じてボタン操作画面111をタッチパネル3Aに表示する。ここでいう所定の条件としては、例えば、工具T2の交換中にエラー等により工作機械1の動作が停止した後にエラーが解除された条件、あるいは工具T2の交換中にエラー等により工作機械1の動作が停止する条件を採用できる。また、所定の条件としては、ボタン操作画面111を表示する操作指示をタッチパネル3Aで受け付ける条件でも良い。また、所定の条件としては、エラーが発生し停止し状態のまま電源が切断された後、再度出源が投入される条件でも良い。以下の説明では、工具T2の交換中にエラー等により工作機械1の動作が停止した後にエラーが解除されボタン操作画面111を表示した場合について説明する。この場合、ユーザは、各個操作ボタン113や表示切替ボタン115を操作することで、エラーで停止していた交換中の工具T2を工具主軸装置21まで搬送して交換する、あるいは、ツールマガジン25Bまで搬送して返却することができる。
【0042】
制御装置15は、複数の各個操作ボタン113、表示切替ボタン115、ツール選択ボタン117に対する操作に応じて、各個操作ボタン113、表示切替ボタン115、ツール選択ボタン117が示す制御を実行する。制御装置15は、複数の各個操作ボタン113、表示切替ボタン115の各々について、その各個操作ボタン113や表示切替ボタン115を選択して実行した場合に実行される制御内容(本開示のボタン情報の一例)を表示させる。
図11に示す例では、
図10に示す各段階と同一内容の文字又は簡略化した文字を、ボタン情報として各個操作ボタン113や表示切替ボタン115に表示している。尚、本開示のボタン情報は、各段階を示す文字情報に限らず、段階(1)~(16)を示す数字でも良く、各段階の状態・動作を模式的に示した図(絵)でも良い。従って、表示切替ボタン115に表示するボタン情報は、各個操作ボタン113のボタン情報と対応していれば良く、同じボタン情報でなくとも良い。
【0043】
制御装置15は、例えば、任意の各個操作ボタン113をタッチ操作されると、その各個操作ボタン113の色を変更し(赤色や黄色に変更し)、選択されたことを報知する。そして、制御装置15は、任意の各個操作ボタン113が選択された状態で、操作部3Bに設けられた実行ボタン(押しボタンなどのハードキー)を操作されると、選択中の各個操作ボタン113が示すボタン情報、即ち、各段階(1)~(16)の制御内容を実行する。任意の各個操作ボタン113を選択して実行(以下、単に実行という場合がある)することで、工具T2の交換を、段階(1)~(16)のうち、任意の段階まで進めることができる。制御装置15は、選択された各個操作ボタン113の制御内容を実行中の間、各個操作ボタン113を点滅させ、実行中であることを報知する。制御装置15は、制御内容の実行が完了する、即ち、選択された各個操作ボタン113の段階まで工作機械1の状態を遷移させると、点滅表示を終了させ、何れの各個操作ボタン113も選択されていない状態とする。尚、上記した操作手順は、一例である。例えば、実行ボタンは、タッチパネル3Aに表示されるソフトキーでも良い。あるいは、制御装置15は、各個操作ボタン113をタッチ操作するだけで実行を開始しても良い。
【0044】
図10に示すように、本実施例では、段階(1)~(8)までを取り出し動作として設定され、取り出し動作は、交換用の工具T2をツールマガジン25Bから工具交換位置P3まで搬送する一連の動作である。
図10及び
図11に示す段階(1)「マガジン正転割出」は、エラーで動作を停止する際に交換する予定であった交換用の工具T2を割り出し位置P11に割り出す段階である。制御装置15は、(1)「マガジン正転割出」の各個操作ボタン113の実行を受け付けると、(1)「マガジン正転割出」の各個操作ボタン113を点滅表示させ、サーボモータ43を駆動して交換予定の工具T2を割り出し位置P11に割り出す。また、前後シフタ51のポットクランパヘッド57は、工具T2の割り出しに応じて割り出し位置P11に待機した状態となっている。段階(1)が完了すると、割り出された工具T2は、ポットクランパヘッド57の固定ブロック59Bと可動ブロック59Cの間に工具保持具47を配置した状態となる。制御装置15は、工具T2を割り出し位置P11に割り出す動作、即ち、段階(1)「マガジン正転割出」が完了すると、点滅表示を終了させ、何れの各個操作ボタン113も選択されていない状態とする。
【0045】
尚、
図11に示すように、ボタン操作画面111には、「マガジン正転割出」、「マガジン逆転割出」の2つの各個操作ボタン113が表示されている。この2つの各個操作ボタン113は、ローラチェーン42の回転方向を逆にする割り出し方法であり、段階(1)としては、「マガジン正転割出」に替えて「マガジン逆転割出」を採用しても良い。また、制御装置15は、後述する表示切替ボタン115の実行において、エラーで停止した工具T2の位置に応じて、割り出しの効率が良い割り出し方向を採用しても良い。
【0046】
次に、他の段階(2)~(16)について説明する。他の段階(2)~(16)の各個操作ボタン113についても上記した(1)「マガジン正転割出」と同様に、各個操作ボタン113を操作することで各段階の制御を実行できる。このため、他の段階(2)~(16)がどういった状態の段階であるのかのみ説明し、操作方法等の説明を省略する。また、任意の段階と逆の制御を実行する場合など、既に説明した内容については適宜省略する。
【0047】
段階(2)「前後シフタ前進」は、前後シフタ51のポットクランパヘッド57を前後変換位置P1(割り出し位置P11)から上下変換位置P2まで移動させる段階である。制御装置15は、エアシリンダ53を駆動してポットクランパヘッド57を前後変換位置P1から上下変換位置P2へ移動させる。また、制御装置15は、段階(2)の実行に合わせてツールシフタ52のクランプ部65を上下変換位置P2に配置させる。段階(2)が完了すると、工具T2は、上下変換位置P2に配置され、ポットクランパ59の把持ブロック59Fの切欠き部にツールシフタ52のクランプピン67が挿入される。
【0048】
段階(3)「ポットゆるめ」は、ポットクランパヘッド57のプルクランプ(図示略)をゆるめる段階である。制御装置15は、ポットクランパヘッド57のアクチュエータを駆動してプルクランプをゆるめる。これにより、ポットクランパ59は、ポットクランパヘッド57(前後シフタ51)から離脱される。
【0049】
段階(4)「ツールシフタ中間位置」は、上下変換位置P2の位置よりも若干だけ下方にクランプ部65を下げる段階である。段階(3)では、クランプ部65は、上下変換位置P2に配置されY方向(前後方向)において割り出し位置P11と対向する位置に配置されている。制御装置は、昇降用サーボモータ84を駆動してクランプ部65を上下変換位置P2から若干だけ下げる。これにより、ポットクランパ59、工具保持具47及び工具T2は、クランプ部65によって保持された状態となる。
【0050】
段階(5)「シフタ締め」は、上記した中間位置においてクランプ部65によってポットクランパ59を固定する段階である。制御装置15は、エアシリンダ79を駆動してクランプピン67を引き上げることでポットクランパ59をクランプ部65で固定的に保持する。段階(6)「前後シフタ後退」は、段階(2)とは逆に、ポットクランパヘッド57を上下変換位置P2から前後変換位置P1へ移動させる段階である。制御装置15は、エアシリンダ53を駆動してポットクランパヘッド57を前後変換位置P1へ移動させ、クランプ部65からポットクランパヘッド57を退避させる。
【0051】
段階(7)「ツールシフタ下降位置」は、ツールシフタ52のクランプ部65を、下降位置、即ち、工具交換アーム93と工具T2の受け渡しを実行する工具交換位置P3に配置する段階である。制御装置15は、昇降用サーボモータ84を駆動してクランプ部65を中間位置から下降位置まで下降させる。段階(8)「工具交換シャッタ開き」は、工具交換シャッタ107を開ける段階である。制御装置15は、昇降用エアシリンダ(図示略)を駆動して
図5の二点鎖線で示す位置まで工具交換シャッタ107を下降させて交換窓105Aを開く。これにより、取り出し動作が完了する。
【0052】
段階(9)「ATCアーム起動」は、工具交換アーム93によってクランプ部65と主軸ヘッド21Aとの間で工具T2を交換する段階である。制御装置15は、旋回用サーボモータ97(
図9参照)の回転を制御して工具交換アーム93の回転位置や上下の位置を変更し工具T2の交換を実行する。
【0053】
図11に示すように、段階(10)~(16)は、本実施例では返却動作として設定され、工具T2を下降位置(工具交換位置P3)からツールマガジン25Bまで搬送する一連の動作である。以下の返却動作の説明では、上記した取り出し動作と同様の内容については、その説明を適宜省略する。段階(10)「工具交換シャッタ閉じ」は、段階(8)とは逆に、昇降用エアシリンダ(図示略)を駆動して
図5の実戦で示す位置まで工具交換シャッタ107を上昇させて交換窓105Aを閉じる段階である。段階(11)「ツールシフタ中間位置」は、ツールシフタ52のクランプ部65を工具交換位置P3から中間位置まで上昇させて待機させる状態である。この段階で、主軸ヘッド21Aから取り外した工具T2は、中間位置(上下変換位置P2から若干だけ下降した位置)に配置される。
【0054】
段階(12)「前後シフタ前進」は、ポットクランパヘッド57を前後変換位置P1から上下変換位置P2へ移動させる段階である。この段階(12)は、段階(2)とは異なり、ポットクランパ59(工具T2)を保持していない空のポットクランパヘッド57を前後変換位置P1まで移動させる。これにより、ツールシフタ52から前後シフタ51へ工具T2を受け取る準備が完了する。
【0055】
段階(13)「シフタゆるめ」は、段階(5)とは逆に、エアシリンダ79を駆動してクランプピン67によるポットクランパ59の固定を解除する段階である。段階(14)「ツールシフタ上昇位置」は、段階(4)とは逆に、クランプ部65を中間位置から上下変換位置P2まで上昇させる段階である。これにより、工具保持具47(工具T2)は、Y方向において前後変換位置P1と対向する位置となり、把持穴47Aにポットホルダ45をY方向の前方側から適切に挿入可能な位置となる。
【0056】
段階(15)「ポット締め」は、段階(3)とは逆に、ポットクランパヘッド57のアクチュエータを駆動してプルクランプを締める段階である。これにより、工具T2は、ポットクランパヘッド57に取り付けられ前後シフタ51によって搬送可能な状態となる。そして、段階(16)「前後シフタ後退」は、前後シフタ51を上下変換位置P2から前後変換位置P1に移動させる段階である。これにより、工具保持具47の把持穴47Aにポットホルダ45が挿入され、工具T2がツールマガジン25Bに返却される。
【0057】
尚、ツール選択ボタン117は、工具T2を選択し、選択した工具T2を所定の段階まで移動させるボタンである。
図11に示す例では、4つのツール選択ボタン117と、工具T2を選択するツール番号入力欄119が、各個操作ボタン113の左側に表示されている。ツール番号入力欄119は、ツールマガジン25Bに収容された工具T2を識別する識別番号を入力する欄である。制御装置15は、ツール番号入力欄119に識別番号を入力され、任意のツール選択ボタン117を選択された状態で、操作部3Bの実行ボタンを押下されると、識別番号が示す工具T2を、ツール選択ボタン117が示す位置まで搬送する。例えば、制御装置15は、「シフタ位置」のツール選択ボタン117の実行を受け付けると、識別番号が示す工具T2をツールマガジン25Bから取り出して、工具交換位置P3まで工具T2を搬送する。
【0058】
上記したように、複数の各個操作ボタン113は、取り出し動作及び返却動作を、複数の段階に分けて指示するボタンである。ユーザは、任意の各個操作ボタン113を実行することで、任意の段階まで進めることができる。しかしながら、ユーザは、エラーの原因、エラーによって発生した不具合などを確認したい場合、各段階を順番に実行しながら装置の状態を確認する必要がある。一方で、
図11に示すように、複数の各個操作ボタン113は、ボタン操作画面111の画面中央や右側などに配置され、段階(1)~(16)の順番とは異なる順番や配置となっている。これは、例えば、「マガジン正転割出」の各個操作ボタン113と、その隣に表示される「マガジン逆転割出」の各個操作ボタン113など、一ヵ所にまとめて表示する方が、操作性、見やすさが向上するボタンや、誤操作の発生を抑制できるボタンがある。あるいは、ツールシフタ52の位置を操作する各個操作ボタン113をボタン操作画面111の画面右側に集めて表示することで、ツールシフタ52に対する操作性等を向上できる。このため、操作性等を考慮して操作対象の装置ごとに各個操作ボタン113を配置すると、段階(1)~(16)の順番と、表示される各個操作ボタン113の配置の関連性が低くなる。その結果、段階(1)~(16)の何れかの段階で動作が停止した場合、ユーザは、次の段階や前の段階の各個操作ボタン113がどのボタンかわからなくなる。工作機械1の状態の確認や復帰させる作業時間が長くなる。
【0059】
そこで、制御装置15は、複数の各個操作ボタン113のうち、工作機械1の状態に応じた各個操作ボタン113を示すボタン情報を表示切替ボタン115に表示させる。そして、制御装置15は、表示切替ボタン115を実行する操作に応じて表示切替ボタン115に表示するボタン情報を切り替え、且つ、一連の動作の順番にボタン情報を切り替える。詳述すると、
図11に示すように、制御装置15は、各個操作ボタン113の左側で、且つツール選択ボタン117の下側に、各個操作案内画面120を表示する。制御装置15は、各個操作案内画面120に、前段階表示切替ボタン115Aと、後段階表示切替ボタン115Bの2つの表示切替ボタン115を表示する。前段階表示切替ボタン115Aは、一連の動作の順番において前の段階のボタン情報を表示する表示切替ボタン115であり、後段階表示切替ボタン115Bは、後の段階のボタン情報を表示する表示切替ボタン115である。以下、前段階表示切替ボタン115A及び後段階表示切替ボタン115Bを総称する場合は、表示切替ボタン115と記載する。
【0060】
制御装置15は、例えば、エラーで動作が停止し、発生したエラーが解除されると、状態検出装置40(
図2参照)を用いて、工作機械1の状態を検出する。工作機械1の状態とは、例えば、段階(1)~(16)のうちの何れかの段階、あるいは、各段階の間の状態である。このため、状態検出装置40としては、一連の動作のどの段階の状態や、その間の状態にあるのかを検出するための装置、例えば、各種のセンサ、モータの回転位置を検出するエンコーダ、接点情報を出力するリレー、電流計や電圧計など、あるいはこれらを組み合わせたものを採用できる。制御装置15は、状態検出装置40を用いてツールマガジン25Bやツールチェンジャ25Dの状態、記憶装置15Bに記憶された使用中の工具T2の情報などに基づいて工作機械1の状態を判断する。尚、
図2は、図面が煩雑となるのを避けるため、状態検出装置40を1つのブロックとして図示している。
【0061】
取り出し動作及び返却動作では、ポットクランパヘッド57や工具交換アーム93といったアクチュエータ、エアシリンダ53や昇降用サーボモータ84といた駆動源を動作させる。状態検出装置40としては、例えば、ポットクランパヘッド57や工具交換アーム93の位置を検出する位置センサを採用できる。また、状態検出装置40としては、例えば、エアシリンダ53のピストンの位置を検出するシリンダスイッチを採用できる。また、状態検出装置40としては、昇降用サーボモータ84の回転位置を検出するエンコーダや、ボールねじ機構83や昇降フレーム69の上下方向における位置を検出するリニアスケールなどを採用できる。
【0062】
図11は、段階(1)~(16)のうち、(2)前後シフタ前進と、(3)ポットゆるめの間の状態で停止したことを状態検出装置40で検出した場合を示している。この場合、制御装置15は、状態検出装置40で検出した状態に基づいて、工作機械1の状態を、段階(2)(3)の間の状態と判断する。制御装置15は、判断した状態の前の段階である(2)「前後シフタ前進」を示すボタン情報(「前後シフタ前進」の文字)を前段階表示切替ボタン115Aに表示し、後の段階である(3)「ポットゆるめ」を示すボタン情報を後段階表示切替ボタン115Bに表示させる。これにより、停止した状態の前後の段階を表示切替ボタン115に自動で表示できる。ユーザは、表示切替ボタン115を操作することで停止した状態から前後の段階に工作機械1の状態を遷移させることができる。
【0063】
尚、制御装置15は、状態検出装置40で検出した状態が特定の段階であれば、その段階の前後の段階を表示切替ボタン115に表示しても良い。例えば、制御装置15は、状態検出装置40により段階(3)「ポットゆるめ」の状態で停止したと判断した場合、前段階表示切替ボタン115Aに段階(2)「前後シフタ前進」を表示し、後段階表示切替ボタン115Bに段階(4)「ツールシフタ中間位置」を表示しても良い。
【0064】
また、制御装置15は、状態検出装置40により判断した結果、停止した状態が不明であれば、前段階表示切替ボタン115A及び後段階表示切替ボタン115Bのボタン情報を非表示とする。例えば、センサが故障した場合、信号線が切断された場合など、制御装置15は、工作機械1の状態を判断できなくなる可能性がある。この場合、制御装置15は、例えば、2つの表示切替ボタン115に文字を表示しない状態とする。これにより、工作機械1側で状態を判断できない不具合が発生していることを、表示切替ボタン115の非表示状態でユーザに認識させることができる。尚、制御装置15は、停止した状態が不明である場合、表示切替ボタン115の非表示に加え、「状態が検出できないため表示切替ボタン115を表示できません」などのメッセージをボタン操作画面111に表示しても良い。
【0065】
制御装置15は、前段階表示切替ボタン115A及び後段階表示切替ボタン115Bを実行する操作に応じて前段階表示切替ボタン115A及び後段階表示切替ボタン115Bに表示するボタン情報を切り替え、且つ、一連の動作の順番にボタン情報を切り替える。制御装置15は、
図11の太い破線で示すように、例えば、後段階表示切替ボタン115Bをタッチ操作され選択されると、後段階表示切替ボタン115Bの色を変更し選択されたことをユーザに報知する。制御装置15は、後段階表示切替ボタン115Bを選択された状態で操作部3Bの実行ボタンを押下されると、後段階表示切替ボタン115Bが示すボタン情報の段階(
図11の例では段階(3))まで状態を遷移させる制御を実行する。制御装置15は、段階(3)まで状態を遷移させる制御を完了させると、前段階表示切替ボタン115Aのボタン情報を次の段階である段階(4)「ツールシフタ中間位置」に変更する。また、制御装置15は、前段階表示切替ボタン115Aのボタン情報を段階(3)に変更する。従って、後段階表示切替ボタン115Bが実行されると、前段階表示切替ボタン115A及び後段階表示切替ボタン115Bのボタン情報を1つ進める。また、制御装置15は、後段階表示切替ボタン115Bが選択された状態を維持する。ユーザは、再度、実行ボタンを押下することで工作機械1の状態を、次の段階(4)まで進めることができる。ユーザは、実行ボタンを繰り返し押すことで、工作機械1の状態を所望の段階(例えば、段階(9)など)まで進めることができる。
【0066】
同様に、制御装置15は、前段階表示切替ボタン115Aを実行する操作を受け付けた場合、前段階表示切替ボタン115Aが示すボタン情報(
図11の例では段階(2))まで状態を遷移させる制御を実行する。制御装置15は、制御を完了させ一つ前の段階まで遷移させると、前段階表示切替ボタン115Aのボタン情報を段階(1)に変更し、後段階表示切替ボタン115Bのボタン情報を段階(2)に変更する。従って、前段階表示切替ボタン115Aが実行されると、前段階表示切替ボタン115A及び後段階表示切替ボタン115Bのボタン情報を1つ戻す。ユーザは、後段階表示切替ボタン115Bと同様に、前段階表示切替ボタン115Aを繰り返し実行することで、工作機械1の状態を所望の段階まで戻すことができる。これにより、ユーザは、前段階表示切替ボタン115A及び後段階表示切替ボタン115Bを選択し、実行ボタンを連続して押下するだけで、複雑な一連の動作の各段階を順番に進めることができる。尚、制御装置15は、状態検出装置40で検出した状態が最初の段階(1)である場合や、ユーザの操作により段階(1)に到達した場合、それよりも前の段階がないため、前段階表示切替ボタン115Aを非表示としても良い。同様に、制御装置15は、最後の段階(16)の場合、それよりも後の段階がないため、後段階表示切替ボタン115Bを非表示としても良い。
【0067】
また、制御装置15は、表示切替ボタン115の実行を受け付けると、表示切替ボタン115に表示中のボタン情報が示す各個操作ボタン113に対応する段階まで工作機械1の状態を遷移させ、状態の遷移中は表示切替ボタン115に表示中のボタン情報を変更しない。例えば、制御装置15は、後段階表示切替ボタン115Bの実行を受け付け、段階(3)まで遷移する間、後段階表示切替ボタン115Bのボタン情報を「ポットゆるめ」のまま維持する。そして、制御装置15は、段階(3)までの遷移が完了すると後段階表示切替ボタン115Bのボタン情報を次の段階(4)「ツールシフタ中間位置」にする。これにより、表示切替ボタン115の点滅表示だけでなく、ボタン情報の表示によっても表示切替ボタン115が実行中であるか否か(状態遷移中、制御の実行中であるのか)を報知できる。実行ボタンなどの誤操作の発生を抑制できる。
【0068】
また、制御装置15は、例えば、表示切替ボタン115が選択されると、選択された表示切替ボタン115のボタン情報と同じ文字の各個操作ボタン113についても選択されたことを示す表示状態とする。例えば、
図11の太い破線で示すように、制御装置15は、段階(3)「ポットゆるめ」を表示する後段階表示切替ボタン115Bがタッチ操作されると、その後段階表示切替ボタン115Bの色を赤色に変更するとともに、「ポットゆるめ」の文字を表示する各個操作ボタン113の色も赤色に変更する。即ち、表示切替ボタン115の表示の変更と連動させて各個操作ボタン113の表示も変更する。これにより、表示切替ボタン115を操作した結果、どの位置の各個操作ボタン113を選択、実行するのかをユーザに認識させることができる。
【0069】
また、制御装置15は、
図11に示すように、複数の各個操作ボタン113及び表示切替ボタン115を、1つの画面(ボタン操作画面111)内に並べて表示する。そして、制御装置15は、表示切替ボタン115を実行する操作を受け付けた場合、表示切替ボタン115のボタン情報が示す各個操作ボタン113を、実行中である表示態様にする。
図11の太い破線で示すように、例えば、後段階表示切替ボタン115Bを実行する場合、後段階表示切替ボタン115Bに表示した文字情報(ポットゆるめ)と同一の文字情報の各個操作ボタン113についても実行中である表示を行う。制御装置15は、後段階表示切替ボタン115Bの制御を実行中である間、後段階表示切替ボタン115B、及びそれに対応する各個操作ボタン113の両方を点滅状態とする。制御装置15は、実行が完了すると、後段階表示切替ボタン115Bの表示を段階(4)に切り替えるとともに、段階(3)「ポットゆるめ」の各個操作ボタン113の選択中を示す表示(赤色など)を通常の状態に戻す。これにより、表示切替ボタン115を実行した場合に、1画面内において、どの位置の各個操作ボタン113を実行中であるのかを確認できる。また、制御装置15は、後段階表示切替ボタン115Bの表示を段階(4)に切り替えるのに合わせて、後段階表示切替ボタン115Bと段階(4)「ツールシフタ中間位置」の各個操作ボタン113の両方の色を赤色等の選択中を示す表示に変更する。尚、制御装置15は、上記した表示切替ボタン115の選択に合わせて各個操作ボタン113の表示を選択中に変更する処理、及び表示切替ボタン115の実行に合わせて各個操作ボタン113の表示を実行中に変更する処理のうち、少なくとも一方の処理のみを実行しても良い。
【0070】
また、制御装置15は、一連の動作の最初の段階を示す情報を、前段階表示切替ボタン115Aの周囲に表示し、且つ、一連の動作の最後の段階を示す情報を、後段階表示切替ボタン115Bの周囲に表示する。具体的には、
図10に示すように、取り出し動作の場合、最初の段階は段階(1)「マガジン割出」である。このため、制御装置15は、例えば、前段階表示切替ボタン115Aの上に「マガジンへ」の文字121を表示する。また、取り出し動作の場合、最後の段階は、段階(8)「シャッタ開き」であり、主軸ヘッド21A側の作業である。このため、制御装置15は、例えば、後段階表示切替ボタン115Bの上に「工具主軸へ」の文字121を表示する。これにより、前段階表示切替ボタン115Aと後段階表示切替ボタン115Bのどちらが、ツールマガジン25B又は主軸ヘッド21Aのどちらに工具T2を運ぶためのボタンであるのかをユーザに正しく認識させることができる。
【0071】
図12は、一例として、返却動作の段階(12)と(13)の間で停止した場合の表示状態を示している。
図12に示すように、制御装置15は、返却動作の場合、最初の段階が段階(10)(主軸ヘッド21A側)であるため、前段階表示切替ボタン115Aの上に「工具主軸へ」の文字121を表示する。また、制御装置15は、最後の段階が段階(16)(ツールマガジン25B側)であるため、後段階表示切替ボタン115Bの上に「マガジンへ」の文字121を表示する。これにより、返却動作においても、前段階表示切替ボタン115Aと後段階表示切替ボタン115Bのどちらが、工具T2をどちらに運ぶためのボタンであるのかをユーザに正しく認識させることができる。尚、制御装置15は、現在の工作機械1の状態が取り出し動作中であるのか、返却動作中であるのかを文字で表示しても良い。例えば、
図12に示すように、制御装置15は、返却動作中に停止し表示切替ボタン115を表示する場合、文字121の上に「返却動作中」の文字123を表示しても良い。同様に、制御装置15は、
図11に示す取り出し動作においても、「取り出し動作中」の文字を表示しても良い。
【0072】
また、制御装置15は、取り出し動作から返却動作のへの連続した実行に合わせて文字121の表示を変更しても良い。例えば、制御装置15は、
図10に示す段階(8)、即ち、取り出し動作の最後の段階の実行が完了すると、前段階表示切替ボタン115Aのボタン情報を段階(8)にし、後段階表示切替ボタン115Bのボタン情報を段階(9)にする。この際、文字121の表示を、そのまま維持しても良く、非表示としても良い。制御装置15は、段階(9)の実行が完了すると、
図12に示すように、前段階表示切替ボタン115Aと後段階表示切替ボタン115Bの上の文字121を入れ替える。また、制御装置15は、後段階表示切替ボタン115Bが選択された状態を維持する。これにより、ユーザは、後段階表示切替ボタン115Bを選択した後、実行ボタンを連続して押すことで、取り出し動作から返却動作まで一連の動作を連続して実行できる。尚、制御装置15は、取り出し動作と返却動作で文字121の位置を入れ替えずに、前段階表示切替ボタン115Aと後段階表示切替ボタン115Bを入れ替えても良い。
【0073】
また、本実施例のでは、一連の動作として、工具T2の取り出し動作と返却動作を採用し、表示切替ボタン115の表示の切り替えを実行した。本実施例の工作機械1は、左側及び右側主軸装置12L,12Rなどをコンパクトに配置した複合加工機27の効果を損なわないように、自動工具交換装置25が可動範囲の狭い工具主軸装置21に対して工具T2を交換しに行く構造となっている。このような構造とすることで、工作機械1の小型化を図れるものの、交換動作が複雑化する虞がある。このため、工具T2を交換する一連の動作を対象に、表示切替ボタン115の表示の切り替えを実行することは、装置の小型化を図って工具T2の交換動作が複雑化した工作機械1において極めて有効である。尚、制御装置15は、一連の動作として、取り出し動作又は返却動作の一方のみについて表示切替ボタン115の表示を切り替える処理を実行しても良い。
【0074】
因みに、上記実施例において、操作盤3は、表示操作装置の一例である。ボタン操作画面111は、画面の一例である。工具T2は、ツールの一例である。文字121は、一連の動作の最初の段階を示す情報、及び一連の動作の最後の段階を示す情報の一例である。
【0075】
以上、上記した本実施例によれば以下の効果を奏する。
本実施例の一態様の制御装置15は、各個操作ボタン113及び表示切替ボタン115に対する操作に応じた制御を実行する。制御装置15は、エラー等で停止した工作機械1の状態に応じた各個操作ボタン113を示すボタン情報を、表示切替ボタン115に表示させる。制御装置15は、表示切替ボタン115を実行する操作に応じて表示切替ボタン115に表示するボタン情報を切り替え、且つ、一連の動作の順番にボタン情報を切り替える。これにより、制御装置15が取り出し動作や返却動作の実行順に応じたボタン情報を表示切替ボタン115に表示する。ユーザは、ボタン情報の表示が切り替わるごとに表示切替ボタン115を実行することで、一連の動作のうち工作機械1が実行する段階を順番に実行できる。結果として、ユーザが状態を復帰させるまでの操作負荷を軽減できる。
【0076】
尚、本開示は上記の実施例に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施例では、本開示の表示操作装置として操作盤3のタッチパネル3Aと操作部3Bを採用したが、これに限らない。本開示の表示操作装置は、タッチパネル3Aのみの構成でも良く、液晶とハードキーのようなタッチパネル3Aを備えない構成でも良い。また、表示操作装置は、ペンダント8や工作機械1と通信可能なタブレットなどのような可搬型の装置でも良い。
また、上記実施例では、各個操作ボタン113と表示切替ボタン115を1つのボタン操作画面111内に表示したが、別々の画面、切り替え前後の画面などに表示しても良い。
また、制御装置15は、表示切替ボタン115を実行中の間、表示切替ボタン115のボタン情報を変更しなかったが、これに限らない。制御装置15は、例えば、実行が開始されたら前段階表示切替ボタン115Aや後段階表示切替ボタン115Bのボタン情報を更新しても良い。
制御装置15は、前段階表示切替ボタン115A又は後段階表示切替ボタン115Bの一方のみを表示する構成でも良い。
【0077】
また、工作機械1は、状態検出装置40を備えなくとも良い。制御装置15は、管理装置やユーザからの入力情報など、外部からの情報に基づいて工作機械1の状態を判断し表示切替ボタン115のボタン情報を表示しても良い。
また、制御装置15は、文字121を表示しなくとも良い。
また、上記実施例では、本開示の一連の動作としてツールマガジン25B、ツールチェンジャ25D、工具主軸装置21、工具T2に係る動作を採用したが、これに限らない。本開示の一連の動作としては、左側及び右側主軸装置12L,12R、左側及び右側タレット装置13L,13R、ワーク搬送装置14などの他の装置が実行する一連の動作でも良い。
また、左側及び右側加工装置11L,11Rは、対向2軸の旋盤に限らず、平行2軸の旋盤でも良い。また、左側及び右側加工装置11L,11Rとしては、例えば、横型旋盤、正面旋盤、立型旋盤、マシニングセンタ、フライス盤、ボール盤など、様々な構成を採用できる。
また、工作機械1は、複合加工機27を備えず、単一の旋盤や工具主軸装置を備える構成でも良い。
【0078】
尚、本開示の範囲は、特許請求の範囲に記載された従属関係に限定されない。例えば、本明細書では、請求項4において「請求項1又は請求項2に記載の工作機械」を「請求項1~3の何れか1項に記載の工作機械」に変更した技術思想も開示されている。また、本明細書では、請求項6において「請求項4に記載の工作機械」を「請求項4又は5に記載の工作機械」に変更した技術思想も開示されている。また、請求項7において「請求項1又は請求項2に記載の工作機械」を「請求項1~6の何れか1項に記載の工作機械」に変更した技術思想も開示されている。
【符号の説明】
【0079】
1 工作機械、3 操作盤(表示操作装置)、15 制御装置、21 工具主軸装置、21A 主軸ヘッド、25B ツールマガジン、25C シフト装置、25D ツールチェンジャ、111 ボタン操作画面(画面)、113 各個操作ボタン、115 表示切替ボタン、115A 前段階表示切替ボタン、115B 後段階表示切替ボタン、121 文字(段階を示す情報)、T2 工具(ツール)、P11 割り出し位置、P3 工具交換位置、W ワーク。