(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100119
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】梱包バンド
(51)【国際特許分類】
B65D 63/10 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
B65D63/10 C
B65D63/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003865
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山根 進
(72)【発明者】
【氏名】田近 悟
【テーマコード(参考)】
3E085
【Fターム(参考)】
3E085BA21
3E085BB32
3E085BD08
3E085BE04
3E085BH03
(57)【要約】
【課題】バンドの厚さが出やすく、かつ厚みむらが生じにくく、しかも、梱包バンドとして必要な引張強度を維持することができる梱包バンドを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂製の基材の表裏両面それぞれに互いに間隔をあけて多数の菱形の凸部110が形成されており、凸部110が長手方向に千鳥状に配置され、該凸部110、110間に形成された第一の凹部120が一体となされた梱包バンド100において、凸部110と該凸部110から長手方向に千鳥状に配置された他の凸部110とは、側面視において重なる重なり部を有しており、凸部110は、その内側に菱形で第一の凹部120とは離間された第二の凹部130を有するとともに、凸部110の長手方向の端部と第二の凹部130との間の距離Rに対して、前記重なり部の寸法Sは0.5~1.5倍となるように構成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の基材の表裏両面それぞれに互いに間隔をあけて多数の菱形の凸部が形成されており、前記凸部が長手方向に千鳥状に配置され、該凸部間に形成された第一凹部が一体となされた梱包バンドにおいて、
前記凸部と該凸部から長手方向に千鳥状に配置された他の凸部とは、側面視において重なる重なり部を有しており、
前記凸部は、その内側に菱形で第一の凹部とは離間された第二の凹部を有するとともに、該凸部の長手方向の端部と第二の凹部との間の距離に対して、前記重なり部の寸法は0.5~1.5倍である
ことを特徴とする梱包バンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包機に用いられる熱可塑性樹脂性の梱包バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、梱包バンドは、ポリプロピレン樹脂を押出して原反を成形し、6~16倍に延伸しエンボス処理により原反の表裏に互いに斜交する凸条を施して作製されている。エンボス処理は、延伸による繊維化された表面層からの毛羽立ちを抑えるためや、延伸による配向を横方向に乱すことによって縦割れを防止するためや、見かけの厚さを増すことによる剛性を高め梱包機のアーチ内の走行性を良くするためなどになされていた。
【0003】
本出願人においても、例えば、特許文献1において、熱可塑性合成樹脂製基材の表裏に互いに斜交する多数の平行凸条が形成されてなる梱包用熱可塑性合成樹脂バンドにおいて、凸条の長手方向の交差角度が10~30度となされた梱包用熱可塑性合成樹脂バンドを提案しており、また、特許文献2において、熱可塑性樹脂を押出成形してなるバンド基材が長手方向に延伸されると共に、その表裏両面に互いに斜交する方向に多数の平行凸条が形成された熱可塑性樹脂バンドであって、互いに斜交する方向の平行凸条によってひし形状に形成される斜交部分の面積が比較的小面積化され、前記小面積化は、凸条の両側面を形成する傾斜面とバンド基材の表面とがなす傾斜角度をそれぞれ120~150度とすることによりなされた熱可塑性樹脂バンドを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-1679号公報
【特許文献2】特開2008-87824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、梱包バンドは、昨今の環境問題から需要者から使用量の削減が望まれており、梱包バンドの軽量化が検討されている。軽量化の手法としては、例えば、バンド幅を狭くする方法があるが、引張強度が低下するので、所定の引張強度を保持するためにはバンド幅の狭くする方法にも限界がある。他の方法としては、バンドの厚さを保持しつつ、単位長さ当たりの重量、いわゆる、目付量を減らす方法である。目付量を減らす方法としては、バンド成形時に原反をエンボス加工する工程、つまり、一対のエンボスロールの間に原反を挟んでエンボス加工する工程において、原反を深く押すことで、押された部分が凸条として形成されるので、これにより、同じ厚さの原反であっても、エンボス加工後のバンドの厚さを相対的に増やすことができる。ただ、エンボスの形状として、特許文献のような、互いに斜交する凸条を形成する場合は、エンボスロールで原反を深く押してもバンドの厚さが出ず、強度低下につながり、また、バンドの長手方向に対して厚さのむらが生じやすく、梱包機で使用する際に走行不良が生じやすくなるため、バンドの厚さを増やすことに限界があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、バンドの厚さが出やすく、かつ厚みむらが生じにくく、しかも、梱包バンドとして必要な引張強度を維持することができる梱包バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。すなわち本発明に係る梱包バンドは、熱可塑性樹脂製の基材の表裏両面それぞれに互いに間隔をあけて多数の菱形の凸部が形成されており、前記凸部が長手方向に千鳥状に配置され、該凸部間に形成された第一凹部が一体となされた梱包バンドにおいて、前記凸部と該凸部から長手方向に千鳥状に配置された他の凸部とは、側面視において重なる重なり部を有しており、前記凸部は、その内側に菱形で第一の凹部とは離間された第二の凹部を有するとともに、該凸部の長手方向の端部と第二の凹部との間の距離に対して、前記重なり部の寸法は0.5~1.5倍であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、梱包バンドの厚さむらが生じにくく、しかも、梱包バンドとして必要な引張強度を保持することができるので、当該梱包バンドを用いた梱包機においては、梱包不良が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】従来の梱包バンドの実施の一形態を示す平面図である。
【
図2】本発明に係る梱包バンドを用いた梱包機の一形態を示す説明図である。
【
図3】本発明に係る梱包バンドの実施の一形態を示す平面図である。
【
図5】本発明に係る梱包バンドの他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1は従来の梱包バンドの実施の一形態を示す平面図である。梱包バンド200は、熱可塑性樹脂を扁平な帯状に押出成形し、強度を付与するために押出軸方向に延伸して表裏両面に互いに斜交する方向に多数の平行な平行凸条210、210、平行凸条220、220が形成されたものである。梱包バンド200は、延伸倍率は8~16倍となされ、幅は9~30mm程度のものが用いられる。本形態に係る梱包バンド200の幅寸法は15mmである。
【0012】
図2は梱包バンドを用いる梱包機の説明図である。梱包機300は、梱包バンド100を取付けるリール部301、被梱包物Mの周囲に梱包バンド100を巻き付けて梱包する梱包部302を備えている。リール部301に取付けられた梱包バンド100はプールボックス303に送られて所定量蓄えられ、梱包バンド100の先端側は一対の供給ローラ304に挟持されている。梱包部302は、被梱包物Mを周回するようにアーチ状に配置されたガイド部305と、被梱包物Mに巻き付けた梱包バンド100を溶着する溶着部306を有している。
【0013】
被梱包物Mの梱包手順について説明する。供給ローラ304が正転すると、梱包バンド100は、梱包部302に送り出され、四角形状のガイド部305に沿って被梱包物Mを周回し、梱包バンド100の先端部が供給ローラ304側の梱包バンド100と上下に重なる位置で固定される。続いて、供給ローラ304を反転すると、梱包バンド100がガイド部305から外れ、被梱包物Mの周囲に沿うように引き締められる。梱包バンド100が上下に重なる位置に配置された溶着部306によって梱包バンド100同士が溶着されると同時に、溶着箇所から供給ローラ304側の梱包バンド100を切り離して梱包作業が完了する。
【0014】
図3は、本発明に係る梱包バンドの実施の一形態を示す平面図である。
図1に示した従来の梱包バンド200との相違点を示し、本形態の梱包バンド100について説明する。梱包バンド100は、熱可塑性樹脂を扁平な帯状に押出成形し、強度を付与するために押出軸方向に延伸する点は梱包バンド200と同様であるが、表裏両面に形成される凸部110の形態が異なる。なお、延伸倍率は8~16倍となされ、幅は9~30mm程度のものが用いられる。本形態に係る梱包バンド100の幅寸法は15mmである。
【0015】
具体的には、互いに間隔をあけて多数の菱形の凸部110が形成されている。凸部110同士は長手方向に千鳥状に配置されている。凸部110と他の凸部110との間には第一の凹部120が形成されており、表裏両面それぞれにおいて一体となされた、いわゆる、海島構造となされている。島部が凸部110に当たり、海部が第一の凹部120に当たる。
【0016】
凸部110は、その菱形の頂点を結ぶ対角線が、梱包バンド100の長手方向及び幅方向に沿って配置されている。そして、梱包バンド100の幅方向に所定の間隔をあけて配置されている。この凸部110に対して梱包バンド100の長さ方向に間隔をあけて、かつ、梱包バンド100の幅方向に半ピッチずれて凸部110が配置されており、この半ピッチずれた凸部110に対して、梱包バンド100の長さ方向に間隔をあけて、梱包バンド100の幅方向に更に半ピッチずれて、つまり最初の凸部110に対して梱包バンド100の長さ方向のピッチのずれがなくなった同ピッチで配置されている。
【0017】
凸部110は、内側に菱形の第二の凹部130を有している。第二の凹部130は、第一の凹部120とは離間されている。第一の凹部120において、菱形の頂点を結ぶ対角線は、梱包バンド100の長手方向及び幅方向に沿って配置されている。凸部110の菱形の各頂点の対角線に第二の凹部130の菱形における各対角線の位置を合わせたものとなっている。
【0018】
凸部110において、梱包バンド100の長手方向における頂点を結ぶ対角線の長さは4~7mmが好ましい。長さが4mm未満では所定の厚さが出にくく、長さが7mmを超えると長手方向に対する剛性が出にくくなる。
【0019】
凸部110において、梱包バンド100の長手方向における頂点の角度は25~45°が好ましい。25°未満では所定の厚さがでにくく、45°を超えると長手方向に対する剛性が出にくくなる。
【0020】
図4は
図3の部分拡大図である。凸部110において菱形の長手方向の一つの頂点と、この凸部110の内側の第二の凹部130において菱形の長手方向の一つの頂点との側面視における距離Rは1~2mmが好ましい。
【0021】
図4において、一つの凸部110と、長手方向に千鳥状に配置された他の凸部110は、側面視において一部が重なり合っている。この重なり合いの寸法Sとする。
【0022】
距離Rと寸法Sとの関係を所定の関係とすることにより、梱包バンドの厚さのむらが生じにくく、しかも、梱包バンドとして必要な引張強度を維持することができることを見いだした。具体的には、距離Rに対する寸法Sの比率S/Rが0.5~1.5である。
【0023】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0024】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂を押出成型機により樹脂温度240~245で溶融押出し、得られた帯状物を冷却固化した後、加熱下でその帯状物を長さ方向に延伸し、延伸倍率を11倍としたバンド基材を得た。バンド基材を一対のエンボスロールの間に挟んで表裏両面に所定の間隔で凸部を形成させた後、アニール処理を施して本発明に係る梱包バンドを得た。
【0025】
なお、梱包バンドの単位重量は3.2g/m、梱包バンドの幅寸法は15mm、凸部において、長手方向側の頂点の角度は38°、凸部の長手方向の長さは6.5mm、前述の距離Rは1.2mmであった。また、エンボスロールによる押し深さは上下いずれも0.05mmであった。
【0026】
(重なり度合いの測定)
梱包バンドにおける、一つの凸部と千鳥状に配置された他の凸部との側面視において、重なり合いの寸法Sは1.2mmであった。距離R、凸部の重なり度合いS/Rを表1に示す。
【0027】
(厚さ測定)
得られた梱包バンドにおいて、10箇所測定し、最大値、最小値、範囲(最大値から最小値を減じたもの)を表1に示す。なお、測定方法としては、マイクロメーターの可動側及び固定側の測定面に表裏の凸部がそれぞれ位置するように梱包バンドを挟んで測定した。「厚さむら」の評価指標は以下の通りである。
「×」:厚さの範囲が0.1mm以上
「○」:厚さの範囲が0.1mm未満
【0028】
(引張強さ)
得られた梱包バンドの引張強度を測定した。3試料の測定値の平均値を表1に示す。なお測定条件は以下の通りである。
・測定機:島津製作所(株)製オートグラフAG2000E
・測定スパン:200mm
・引張スピード:200mm/min
・測定室温:20℃
【0029】
(梱包機適性)
梱包機適性を以下の評価条件に基づき評価した。ナイガイ(株)社製F11梱包機にて1000回結束し、アーチ送り不良の回数で評価した。評価結果を表1に示す。なお、評価指標は以下の通りである。
「×」:1000回結束中4回以上アーチ送り不良が発生する
「○」:1000回結束中1から3回アーチ送り不良が発生する
「◎」:1000回結束中アーチ送り不良がゼロ
【0030】
【0031】
(実施例2)
実施例1に対して、重なり合いの寸法Sが大きくなるようにエンボスロールを作成して、梱包バンドを得た。梱包バンドにおける、一つの凸部と千鳥状に配置された他の凸部との側面視において、重なり合いの寸法Sは1.8mmであった。実施例1と同様に寸法測定結果、評価試験結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
実施例1に対して、
図5に示すように、重なり合いの寸法Sが小さくなるようにエンボスロールを作成して梱包バンドを得た。梱包バンドにおける一つの凸部と千鳥状に配置された他の凸部との側面視において、重なり合いの寸法Sは0.6mmであった。実施例1と同様に寸法測定結果、評価試験結果を表1に示す。
【0033】
(比較例1)
実施例1に対して、
図1に示すように従来の梱包バンドのように互いに斜交する平行凸条からなるようにエンボスロールを作成して梱包バンドを得た。実施例1と同様に寸法測定結果、評価試験結果を表1に示す。なお、実施例1とは梱包バンドの表面の凹凸の形態が異なるので、重なり合いの寸法Sは測定していない。
【0034】
(比較例2)
実施例2に対して、重なり合いの寸法Sが更に大きくなるようにエンボスロールを作成して、梱包バンドを得た。梱包バンドにおける、一つの凸部と千鳥状に配置された他の凸部との側面視において、重なり合いの寸法Sは2.4mmであった。実施例1と同様に寸法測定結果、評価試験結果を表1に示す。
【0035】
(比較例3)
実施例3に対して、重なり合いの寸法Sを更に小さくなるようにエンボスロールを作成して、梱包バンドを得た。梱包バンドにおける、一つの凸部と千鳥状に配置された他の凸部との側面視において、重なり合いの寸法Sはなかった。つまり、側面視において、一つの凸部の長手方向の頂点と他の凸部の頂点とがほぼ重なる位置であった。実施例1と同様に寸法測定結果、評価試験結果を表1に示す。
【0036】
エンボスロールにおいて、第一の凹部及び第二の凹部に相当する箇所でバンド基材を厚さ方向に押圧し、押し出された樹脂によって菱形の凸部が形成される。また、エンボスロールに押された樹脂は、長手方向の頂点付近に最も樹脂が集まりやすいと考えられる。比較例2に示すように、凸部同士の配置が近すぎると、第一の凹部によって押し出された樹脂の量が相対的に少ないため、僅かな押し加減の違いで厚みに差が出やすくなって、梱包機適性が低下すると考えられる。
【0037】
比較例3のように、凸部同士の配置が遠くなりすぎると、梱包バンドの側端部において、いわゆる、幅むらが目立つ結果となって、それにより梱包機適性が低下したものと考えられる。
【符号の説明】
【0038】
100 梱包バンド
110 凸部
120 第一の凹部
130 第二の凹部
200 梱包バンド
210 平行凸条
220 平行凸条
300 梱包機
301 リール部
302 梱包部
303 プールボックス
304 供給ローラ
305 ガイド部
306 溶着部
M 被梱包物
R 距離
S 寸法